(58)エンジェル
日が沈み、夜空に星が輝き始める頃、一人の少年が宿屋の一室に入った。
身に纏う鎧には、いくつもの傷が刻まれており、少年が鎧を使い込んでいることがわかる。
少年は、ベッドの前に立つと剣を腰から外し、鎧を脱いだ。
「はぁ・・・」
彼は下着だけになると、ベッドの上に勢いよく倒れ込みながら、ため息をついた。今日一日分の疲れが、吐息とともに宿の一室に散っていく。
少年が勇者として送り出されてどれぐらいになるだろう。いや、鍛錬と路銀を稼ぐため、この街に滞在するようになって、結構経った気がする。
街の境界警備や、用心棒、近隣の村落への定期馬車の護衛など、腕を必要とされる仕事を少年は積極的に受けてきた。
だが、この街の近隣に現れる魔物はそう凶暴ではなく、むしろ少年のような勇者を狙ってくる場合が多いぐらいだ。
おかげで定期馬車の仕事はなくなり、最近は酒場の用心棒ばかり。しかしそれも、最近は腕の立つ魔物が請け負いつつある。
「あーあ・・・やめようかなあ・・・」
徐々に、勇者としての自分が求められなくなりつつある日々に、少年はそう呟いた。
実は、今用心棒をしている酒場の一つで、リザードマンの剣士から言い寄られているのだ。数日前に酔って暴れた彼女を適度におとなしくさせたところ、気に入られてしまったらしい。
彼女は実は剣士業の傍ら、行商の真似事もしており、腕の立つ二人ならば運べるに持つも増えるということで、相棒が必要らしい。
妙に熱のこもった彼女の言葉は、その裏に込められた、一緒になってほしいという願いを滲ませていた。
だが、彼女とともに街を離れれば、もはや勇者として剣を握ることはないだろう。
「はぁ・・・・・・」
故郷を送り出されたときの、世界を救ってやるという熱い思いの残り火が、彼の口からため息を出させた。
すると、少年の耳をノックの音が叩いた。
「・・・どうぞ」
「失礼します」
少年の返事の直後、扉が開いて一人の少女が部屋に入ってきた。
年の頃は少年より少し下ほどの、ふわふわとした金髪を短く揃えた少女だ。真っ白な丈の短い、見ようによっては扇情的なワンピースを纏っているが、彼女がそういう商売に関わる者ではないことは、少年がよく知っていた。
背中に真っ白な翼を備えた彼女こそ、勇者として旅立った少年の側に現れる、エンジェルだからだ。
「勇者よ、今日も一日お疲れさまでした」
ベッドの側に歩み寄ると、エンジェルはイスを引き寄せ、腰掛けた。
「今日も怪我なく、無事に過ごせたことを嬉しく思います」
「ああ、ありがと・・・」
「明日も怪我をしないよう、注意して過ごすのですよ。喧嘩があっても、無理に止めようとしないように」
「はいはい」
旅に出た当初は少し年上のお姉さんに見えたエンジェルだが、今では
どこか抜けた心配ばかりする妹のように感じられた。
「どうしました、勇者?」
生返事ばかりの少年に、エンジェルが問いかけた。いつもならば、適当に疲れているなどの理由を付けて納得させるのだが、今日は違った。
「・・・実は、魔物から、一緒に旅をしないかと誘われていて・・・」
「え?」
エンジェルは少年の言葉に一瞬唖然とすると、ぶんぶんと勢いよく顔を左右に振った。
「い、いけませんいけません!勇者ともあろう者が、魔物などと旅をしては・・・」
「でも、その魔物は行商みたいなことをしていて、腕の立つ僕みたいな相棒が必要らしいんだ」
「あ、愛棒・・・いけませんいけません!」
彼女は顔を振ってから、どこかぽやんとした顔に目一杯の険しさを宿らせてから、身を乗り出しながら言葉を続けた。
「行商の相棒だなんて、事実上の夫婦ですよ!最初のうちはただの護衛と雇用主の関係でも、次の街に着く頃には関係が変わっています!絶対認められません!」
「でもさあ・・・」
少年はエンジェルの方に目を向けながら、続けた。
「最近、この街で仕事がなくなってきてるんだよ・・・もう、用心棒みたいな仕事ぐらいしかないんだ・・・だから、いっそのこと・・・」
「だめです!勇者をやめるようなことは・・・」
「じゃあ、このままこの街で、勇者のくせに用心棒してろって言うの?勇者じゃなくてもつとまる仕事なのに・・・」
少年は一度言葉を切ってから、続けた。
「それに、お金を貯めて次の街に行ったとしても、仕事があるとは限らないし・・・この街で用心棒を続けるか、先の見えない旅を続けるか、それとも僕を必要としてくれる人と旅をするか・・・」
ちらりとエンジェルを見上げながら、彼は問いかけた。
「ねえ、どうしたらいいの?」
「うー・・・」
少年の言葉に言い返せにのか、エンジェルはうめき声を漏らした。
「ごめん・・・疲れてるんだと思う」
エンジェルの、どうにかして答えを出そうという苦悶の表情に、少年は胸の奥がチクリと痛んだ。
「とりあえず、もう少しお金を貯めて、次の街に行こう。本当に僕を必要としている人がいるかもしれないし」
でも、いなかったらどうしよう。
不安を内心に押し込めながら、少年はエンジェルを安心させようとそう言った。
「うー・・・わかりました・・・」
エンジェルはうなり声を止めると、なにやら決心した様子で口を開いた。
「もう少し頑張って、お金を貯めるのは決まりです・・・ですけど、また魔物の誘いがあるかもしれません。ですから、あなたが誘いを拒むことができたら、私がご褒美をあげます!」
「ご褒美?」
旅を始めて、エンジェルが現れるようになってそれなりになるが、彼女の口からご褒美などと言う言葉が出たのは初めてだ。
「ご褒美って・・・」
どうせ、頭なでなでとか、どこかで貰ってきた飴を予想している少年に返ってきたのは、予想もしていない言葉だった。
「わ、私を・・・好きにしていいです・・・」
「・・・・・・あぁうん、うん?うん!?」
一瞬聞き逃しかけ、頭の中で反芻するうち、エンジェルの申し出の異常さを少年は理解していった。
「いや、好きにしていいって、意味理解して・・・」
「どのぐらい承知の上!ほら、ベッドを空けてください!」
彼女の剣幕に、少年は思わずベッドから起きあがり、彼女の反対側に立った。するとエンジェルは、イスをならして立ち上がり、ベッドの上にごろりと横になった。
両手両足に力を込め、仁王立ちの姿勢のまま倒れ込んだ、まさに仁王寝とも言うべき姿勢だ。
「さあ、来なさい!」
前進をこわばらせたまま、エンジェルが声を上げる。
「ええと・・・ご褒美、早すぎないかな・・・?」
魔物の誘いに屈しなかったらご褒美、とエンジェルは言ったはずだ。
「勇者よ、あなたは先ほど魔物の行商の相棒にならないかと誘われた、と言いましたね?ですがあなたは今、旅を続ける決心をしています。その決心に対するご褒美です!」
彼女はそう弁明した。
「さあ、来なさい!」
彼女はがちがちになりながら、腕を広げた。
「ええと・・・」
旅を始めた頃から、幾度かそう言う目で見てしまうこともあったが、彼女は主神の遣いで神聖な存在だ。そう言われても困る、というのが少年の本心だ。
だが、その一方で、ズボンの内側で彼の分身は固くなっていた。丈の短いスカートの裾からのぞく、白い太腿とその奥の影が、彼の目に入ってしまったからだ。
腰から下が『やっちまおうぜ』と少年にささやき、頭の中で『もう少しシチュエーションを選びましょう』と言う声が響く。
そうだ、旅に出た当初、まだまだ子供だった少年を導いてくれたのは、彼女だった。あのころは優しく頼もしいお姉さんに見えていたが、今では背丈でも外見年齢でも彼女を追い越し、最近は心配性の妹のような気さえしている。
それだけ、少年が成長したということだが、彼女はさらにその先に彼を導こうとしている。
そうだ、エンジェルが来いと言っているのだから、行くのが礼儀だろう。
「わかった・・・」
少年は、妙に震えた声でそう答えると、なぜか手足をぎこちなく操り、エンジェルの横たわるベッドに乗った。
そして、彼女の太腿のあたりを跨ぐようにひざを突き、両手を彼女の顔の左右に置いたところで、少年の動きが止まった。
「・・・さあ、どうしたのですか」
「どうした、って、その・・・」
少年はいくらか頬を赤らめながら、どうにか続ける。
「なにを、どうすればいいか、全くわからなくて・・・」
今まで、魔物に襲われかけたり、誘いを受けたことはあったが、具体的な行為に至ったことはなかった。毎日顔を合わせるエンジェルの姿が脳裏に浮かび、魔物と行為に至ることを押しとどめていたからだ。
そして、少年は自慰においてもエンジェルの姿態を思い浮かべるだけで、具体的に彼女となにをするかまでは考えていなかった。
つまり、なにをどうすればよいのか、全くわかっていないのだ。
「ええと・・・こういうときは、まずキスをするものだと聞きました・・・」
エンジェルが、顔を真っ赤にしながらどこからか聞きかじった知識を口にする。
「キス・・・」
少年の一言に、彼もエンジェルも妙に相手の唇を意識してしまう。
だが、ここで恥ずかしがっていては先に進まない。
「キス・・・するよ・・・」
「はい・・・」
少年が肘を曲げ、上半身を傾かせて、ゆっくりと顔をエンジェルの顔に近づける。
エンジェルは迫りつつある少年の顔に、きょろきょろと視線をさまよわせていたが、遂に耐えられないといった様子で目を閉じた。
ぎゅっと目をつむる彼女の唇に、少年のそれが触れる。
少年とエンジェルの初めてのキスに味はなかった。ただ、唇というものが意外と柔らかく、温かいものだと互いに知っただけだった。
「・・・ん・・・」
少年は数秒間唇を触れさせると、顔を離した。唇を触れ合わせるだけのキスだったというのに、唇には妙に彼女のそれの感触が残っていた。
「それで、次は?」
手の甲で唇を擦り、気を紛らわせながら少年はエンジェルに先を求めた。しかし、エンジェルは少年の言葉に、首を振って答えた。
「だめです・・・今のキスは、ちょっと違う気がします・・・」
「違うって・・・」
「もう一度お願いします」
「・・・分かった・・・」
エンジェルの求めに、少年は頷いた。この場で、次になにをすればいいか知っているのは彼女なのだ。エンジェルに従うほか、少年にできることはなかった。
再び彼は顔を近づける。エンジェルも目を閉ざして、少年の唇を待っていたが、今度は目蓋を下ろす程度だった。
穏やかな彼女の顔が少年の視界に広がり、再び唇が触れ合う。
柔らかな唇が触れ合う感触が、少年に伝わる。だがその直後、彼女の唇が開き、塗れた何かが少年の唇に触れた。
「っ!?」
何が触れたのか一瞬理解できず、少年はエンジェルの舌に身をこわばらせてしまう。彼女は、少年の硬直に対し唇を優しく舐め、軽く唇を動かした。
唇を這い回る温もりと柔らかさは、少年のうなじのあたりにぞくぞくとするものを与えた。
そして、左右に広げられていた彼女の腕が少年の首筋に絡みつき、唇と唇がより深くふれあう。エンジェルの唇が少年のそれを柔らかく挟み、口内で舌が軽く唇を舐める。
そして、どれほどそうしていただろうか。不意に彼女が腕をゆるめ、少年の唇を解放した。
「ぷは・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」
キスに集中しすぎていたためか、エンジェルは荒く息をついた。彼女の瞳は涙に潤み、額には汗が微かに滲んでいる。その様は、あたかも彼女が興奮しているようだった。
「キス・・・すごいですね・・・」
荒い息の中、エンジェルが少年に向けてつぶやく。
「ただ、口と口を重ねているだけなのに、あなたと一つになっているような気分になってました・・・あなたは、どうでしたか・・・?」
「え、えぇと・・・」
少年は口ごもった。彼女と唇が触れ合い、あまつさえ彼女が舌を触れさせているというだけで、頭の中がいっぱいになっていたのだ。一新に何か気の利いたことを言おうとするが、何も思い浮かばない。
「ふふ、私も今の今、ようやく思いついて口にしただけで、あなたと同じ気分でした」
ぱくぱくと酸欠の魚のように口を開閉するばかりの少年に、彼女はそう助け船を出した。
「さあ、キスの次は・・・分かりますか・・・?」
少年は、彼女の言葉に思わず、エンジェルの体にのしかかりながら抱きついた。
ベッドのシーツとエンジェルの背中の間に腕を差し入れ、背中の小さな翼ごと抱きしめる。彼の腰を支えていた両足は、エンジェルの太腿を挟み込み、腰を彼女の体に押しつけていた。そして、彼は顎の下ほどにあった、ふわふわの金髪の間に鼻を押しつけ、深く息を吸った。
腕の中の細い体、足の間の柔らかな太腿、胸に押し当てられる温もり、頭髪から立ち上る甘い香り。ほぼ体の欲するまま、彼は彼女を全身で感じていた。
「ん・・・」
少年の抱擁に、エンジェルは腕の中で小さく声を漏らした。しかしそれは、息苦しさや嫌悪によるものではなく、単に肺から漏れ出た吐息が、、のどを鳴らしただけのようだった。
少年に肩を抱かれながらも、彼女は肘から先を操り、少年の腰のあたりにそっと手を添えた。
拒みもせず、ただじっと少年の抱擁を受け入れ、軽く彼の腰に触れる。たったそれだけだというのに、少年にはエンジェルに自信のすべてを受け入れてもらい、かつ自分が抱かれているような安堵感を得られた。
それは、旅に出てから久しく感じることのなかった感情だった。
胸の奥が熱くなり、少年の目元から滴があふれ出す。
「うぅ・・・」
「・・・大丈夫ですよ・・・私は、ずっと一緒ですよ・・・」
少年の漏らし始めた嗚咽に、彼女は彼の腕の中でささやいた。
そうだ、自分を必要としてくれる大切な人は、こんな側にいたではないか。少年が抱えていた不安や不満が、涙とともに心の中から押し出されていった。
そして、どれほど抱き合っていただろうか、ベッドと少年に挟まれたエンジェルが、小さく声を紡いだ。
「ん・・・その、ちょっと固いのが・・・」
少年はその言葉に、自身が下着越しに屹立を彼女の下腹に押し当ててしまっていることに気がついた。
「ご、ごめん・・・!」
キスによって燃え上がった情欲の炎は、彼女に抱きつくまでは赤々と燃えていたが、こうして抱き合っているうちにいつしか収まってしまっていた。
しかし、彼の言葉とは裏腹に、肉棒は固く大きく屹立し、小さく脈打っている。
自身の劣情を晒してしまったことが、今更ながら気恥ずかしくなり、壮年は腕を解いて体を離そうとした。
しかし、彼がベッドに手を突いて身を起こそうとしても、エンジェルは彼の腰に回した手を緩めなかった。
「いいんですよ」
腰を浮かし、屹立を少しでも離そうとする少年に、エンジェルが言う。
「これはご褒美です。今日までがんばってきた、あなたへのご褒美です。あなたのしたいことを・・・」
ベッドに横たわり、短い金色の髪を少しだけ乱れさせながら、エンジェルは少年を見上げてにっこりとほほえんだ。
その笑顔に、少年の胸の中で心臓が大きく鼓動を打ち、彼の屹立が一つ震えた。
「いい・・・の・・・?」
「はい」
彼の中で、再び情欲の炎が燃え上がった。しかし、意識を焦がすような大きな炎ではなく、炭火のようにじわじわと彼を熱していく穏やかな火だった。
エンジェルが手を離し、少年が腰を浮かせる。そして、彼女が両足を開き、少年はその間に膝立ちになった。短いスカートの裾が大きく広がり、股間を覆う白い布が少しだけ覗いている。
エンジェルは、スカートの裾に指を入れ、下着をつまむとゆっくりと引き下ろしていった。太腿をあげ、膝を曲げ、足から白い布を引き抜く。
やがて、彼女の股間がむき出しになり、少年の目の前に晒された。
無毛の、すべすべとした股間に刻まれた、慎ましやかな一本の筋。幾度となく夢想しては自らを慰めたことのある、彼女のそこが、少年の眼前にあった。
「さあ、どうぞ・・・」
羞恥のためか、未知の領域に踏み出す不安のためか、微かに声を震わせながら、彼女は少年に向けて言った。
彼は、彼女の言葉に無言で下着の内から屹立を取り出した。
上下に揺れる肉棒を掴み、先端をエンジェルの股間の亀裂に当てた。
「い、入れるよ・・・」
「はい・・・」
エンジェルはシーツを掴みながら、彼に応じる。
直後、少年は屹立を挿入すべく腰を突き出した。しかし、肉棒の先端はぬるりと亀裂を擦るばかりで、内側には入らなかった。
「あれ・・・?」
「あ・・・もう少し、下・・・」
「ここ・・・?」
エンジェルの導きに、少年は亀裂のやや下方に先端を押し当てながら尋ねた。
「そう、そこです・・・多分・・・」
エンジェル自身、あまり触れたことのない場所のため、おおよそでしか彼を受け入れる場所は分からなかった。
だが、それで十分だった。
「よっ・・・」
「っ!」
少年が腰を突き出すと同時に、エンジェルが一瞬呼吸をひきつらせた。
腹の奥に屹立が入る感触のためだ。痛みが彼女の股間を走ると同時に、エンジェルの純潔が失われた証が、亀裂から一筋あふれた。
「い・・・」
「・・・大丈夫・・・?」
表情をゆがめ、小さくうめくエンジェルに、少年は情欲の火に炙られつつも思わず尋ねていた。
「だ、大丈夫、です・・・」
しかしエンジェルは、痛みをこらえながら無理矢理ほほえんだ。
キスと抱擁によりいくらか体が熱を帯び、亀裂の奥に湿り気が生じてたとはいえ、十分濡れているとは言い難く、粘膜を擦られる痛みが破瓜の痛みに加わる。
だが、エンジェルは耐えた。勇者として少年が過ごした日々の間で、彼が負った傷の痛みの方が、もっと大きかっただろうから。
「動いて、ください・・・」
「うん・・・」
エンジェルの気丈な言葉に、少年は頷いてから遠慮がちに、ゆっくりと腰を動かし始めた。
エンジェルの窮屈な内側が、少年の肉棒をきゅうきゅうと締め付ける。そして、破瓜の血がぬめりとなり、出入りする屹立の動きをなめらかにした。
「ん・・・ぅ・・・く・・・!」
腹の中を前後に動く屹立の感触は、エンジェルに痛みと違和感を与えていた。しかし、しばらくそうしている内に、エンジェルは膣内の肉棒の感触が徐々に柔らかなものに変わっていくのを感じた。
彼女の膣壁が愛液を滲ませたためだ。亀裂の内側の滑りがよくなり、少年の快感も大きくなっていく。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
エンジェルの痛みをこらえる表情に、最初はおっかなびっくりだった少年の腰の動きが、徐々に早く、大きくなっていく。彼の肉体が、快感を欲しているためだ。
少年の理性が、徐々に情欲の炎に炙られ、燃え上がっていく。そして、彼の屹立も体の内で膨れ上がる絶頂の気配に、脈動を繰り返していた。
「う・・・ん・・・ん・・・!」
エンジェルは十分に濡れ、痛みの弱まった膣内で痙攣する肉棒に、自分の腹の中でじわじわと何かが芽生えてくるのを感じていた。
しびれのような、温もりのような、切なさのような、いくつもの感覚が同居している。
今まで感じたことのない、肉体の生み出す快感。それが、エンジェルを絶頂に導きつつあった。
「はぁはぁはぁ・・・!」
「んっ・・・あぁ・・・!」
少年とエンジェル、二人の口から荒い息と短い喘ぎが溢れだし、互いが互いの興奮を高めあっていく。
そして、互いに性器だけでの接触では物足りないといった様子で、どちらからともなく二人が動いた。
エンジェルが腕を少年の首筋にのばし、少年がエンジェルの上に覆い被さる。
エンジェルの体にのしかかり、少年の背中に腕を回し、互いに抱きしめあった。
二人の肌に触れたのは、驚くほど熱を帯びた相手の肌だった。相手が自分で興奮していることに、二人は本能的に気がつき、ともに意識の内の火を燃え上がらせていった。
「はぁはぁはぁ・・・ん・・・!」
少年の唇がエンジェルのそれによって塞がれ、荒い息が止まる。直後、エンジェルの膣がきゅっと引き締まり、少年を限界に押し上げた。
エンジェルの膣内に、興奮に煮えたぎった白濁が放たれた。
「・・・!」
唇を重ねたまま、エンジェルは体内に注ぎ込まれる粘液の熱と勢いに声を漏らし、小さく体を震わせた。
すると少年は、彼女のふるえを止めようとするかのように、彼女の体を抱きしめた。
肉体がもたらした絶頂に、少年と触れあっているという実感が加わり、エンジェルの快感が大きなものになっていく。
そして、しばしの間桃源郷をさまよった後、二人の意識はベッドの上の肉体に戻された。
「はぁはぁはぁ・・・」
唇を離し、喘ぎながら息を吸い、全身に残る絶頂の余韻に二人は浸った。
「・・・勇者・・・」
体を重ねあい、肉棒を亀裂に挿入したまま、エンジェルが少年に話しかけた。
「これで、もう・・・勇者をやめるなんて、言いませんね・・・?」
エンジェルの言葉に、少年は小さく頷いてから口を開いた。
「・・・・・・ご褒美、ありがとう・・・」
「いいのです・・・これからもがんばってくださいね・・・主神と、私のために・・・」
少年の下で、エンジェルはほほえんだ。
身に纏う鎧には、いくつもの傷が刻まれており、少年が鎧を使い込んでいることがわかる。
少年は、ベッドの前に立つと剣を腰から外し、鎧を脱いだ。
「はぁ・・・」
彼は下着だけになると、ベッドの上に勢いよく倒れ込みながら、ため息をついた。今日一日分の疲れが、吐息とともに宿の一室に散っていく。
少年が勇者として送り出されてどれぐらいになるだろう。いや、鍛錬と路銀を稼ぐため、この街に滞在するようになって、結構経った気がする。
街の境界警備や、用心棒、近隣の村落への定期馬車の護衛など、腕を必要とされる仕事を少年は積極的に受けてきた。
だが、この街の近隣に現れる魔物はそう凶暴ではなく、むしろ少年のような勇者を狙ってくる場合が多いぐらいだ。
おかげで定期馬車の仕事はなくなり、最近は酒場の用心棒ばかり。しかしそれも、最近は腕の立つ魔物が請け負いつつある。
「あーあ・・・やめようかなあ・・・」
徐々に、勇者としての自分が求められなくなりつつある日々に、少年はそう呟いた。
実は、今用心棒をしている酒場の一つで、リザードマンの剣士から言い寄られているのだ。数日前に酔って暴れた彼女を適度におとなしくさせたところ、気に入られてしまったらしい。
彼女は実は剣士業の傍ら、行商の真似事もしており、腕の立つ二人ならば運べるに持つも増えるということで、相棒が必要らしい。
妙に熱のこもった彼女の言葉は、その裏に込められた、一緒になってほしいという願いを滲ませていた。
だが、彼女とともに街を離れれば、もはや勇者として剣を握ることはないだろう。
「はぁ・・・・・・」
故郷を送り出されたときの、世界を救ってやるという熱い思いの残り火が、彼の口からため息を出させた。
すると、少年の耳をノックの音が叩いた。
「・・・どうぞ」
「失礼します」
少年の返事の直後、扉が開いて一人の少女が部屋に入ってきた。
年の頃は少年より少し下ほどの、ふわふわとした金髪を短く揃えた少女だ。真っ白な丈の短い、見ようによっては扇情的なワンピースを纏っているが、彼女がそういう商売に関わる者ではないことは、少年がよく知っていた。
背中に真っ白な翼を備えた彼女こそ、勇者として旅立った少年の側に現れる、エンジェルだからだ。
「勇者よ、今日も一日お疲れさまでした」
ベッドの側に歩み寄ると、エンジェルはイスを引き寄せ、腰掛けた。
「今日も怪我なく、無事に過ごせたことを嬉しく思います」
「ああ、ありがと・・・」
「明日も怪我をしないよう、注意して過ごすのですよ。喧嘩があっても、無理に止めようとしないように」
「はいはい」
旅に出た当初は少し年上のお姉さんに見えたエンジェルだが、今では
どこか抜けた心配ばかりする妹のように感じられた。
「どうしました、勇者?」
生返事ばかりの少年に、エンジェルが問いかけた。いつもならば、適当に疲れているなどの理由を付けて納得させるのだが、今日は違った。
「・・・実は、魔物から、一緒に旅をしないかと誘われていて・・・」
「え?」
エンジェルは少年の言葉に一瞬唖然とすると、ぶんぶんと勢いよく顔を左右に振った。
「い、いけませんいけません!勇者ともあろう者が、魔物などと旅をしては・・・」
「でも、その魔物は行商みたいなことをしていて、腕の立つ僕みたいな相棒が必要らしいんだ」
「あ、愛棒・・・いけませんいけません!」
彼女は顔を振ってから、どこかぽやんとした顔に目一杯の険しさを宿らせてから、身を乗り出しながら言葉を続けた。
「行商の相棒だなんて、事実上の夫婦ですよ!最初のうちはただの護衛と雇用主の関係でも、次の街に着く頃には関係が変わっています!絶対認められません!」
「でもさあ・・・」
少年はエンジェルの方に目を向けながら、続けた。
「最近、この街で仕事がなくなってきてるんだよ・・・もう、用心棒みたいな仕事ぐらいしかないんだ・・・だから、いっそのこと・・・」
「だめです!勇者をやめるようなことは・・・」
「じゃあ、このままこの街で、勇者のくせに用心棒してろって言うの?勇者じゃなくてもつとまる仕事なのに・・・」
少年は一度言葉を切ってから、続けた。
「それに、お金を貯めて次の街に行ったとしても、仕事があるとは限らないし・・・この街で用心棒を続けるか、先の見えない旅を続けるか、それとも僕を必要としてくれる人と旅をするか・・・」
ちらりとエンジェルを見上げながら、彼は問いかけた。
「ねえ、どうしたらいいの?」
「うー・・・」
少年の言葉に言い返せにのか、エンジェルはうめき声を漏らした。
「ごめん・・・疲れてるんだと思う」
エンジェルの、どうにかして答えを出そうという苦悶の表情に、少年は胸の奥がチクリと痛んだ。
「とりあえず、もう少しお金を貯めて、次の街に行こう。本当に僕を必要としている人がいるかもしれないし」
でも、いなかったらどうしよう。
不安を内心に押し込めながら、少年はエンジェルを安心させようとそう言った。
「うー・・・わかりました・・・」
エンジェルはうなり声を止めると、なにやら決心した様子で口を開いた。
「もう少し頑張って、お金を貯めるのは決まりです・・・ですけど、また魔物の誘いがあるかもしれません。ですから、あなたが誘いを拒むことができたら、私がご褒美をあげます!」
「ご褒美?」
旅を始めて、エンジェルが現れるようになってそれなりになるが、彼女の口からご褒美などと言う言葉が出たのは初めてだ。
「ご褒美って・・・」
どうせ、頭なでなでとか、どこかで貰ってきた飴を予想している少年に返ってきたのは、予想もしていない言葉だった。
「わ、私を・・・好きにしていいです・・・」
「・・・・・・あぁうん、うん?うん!?」
一瞬聞き逃しかけ、頭の中で反芻するうち、エンジェルの申し出の異常さを少年は理解していった。
「いや、好きにしていいって、意味理解して・・・」
「どのぐらい承知の上!ほら、ベッドを空けてください!」
彼女の剣幕に、少年は思わずベッドから起きあがり、彼女の反対側に立った。するとエンジェルは、イスをならして立ち上がり、ベッドの上にごろりと横になった。
両手両足に力を込め、仁王立ちの姿勢のまま倒れ込んだ、まさに仁王寝とも言うべき姿勢だ。
「さあ、来なさい!」
前進をこわばらせたまま、エンジェルが声を上げる。
「ええと・・・ご褒美、早すぎないかな・・・?」
魔物の誘いに屈しなかったらご褒美、とエンジェルは言ったはずだ。
「勇者よ、あなたは先ほど魔物の行商の相棒にならないかと誘われた、と言いましたね?ですがあなたは今、旅を続ける決心をしています。その決心に対するご褒美です!」
彼女はそう弁明した。
「さあ、来なさい!」
彼女はがちがちになりながら、腕を広げた。
「ええと・・・」
旅を始めた頃から、幾度かそう言う目で見てしまうこともあったが、彼女は主神の遣いで神聖な存在だ。そう言われても困る、というのが少年の本心だ。
だが、その一方で、ズボンの内側で彼の分身は固くなっていた。丈の短いスカートの裾からのぞく、白い太腿とその奥の影が、彼の目に入ってしまったからだ。
腰から下が『やっちまおうぜ』と少年にささやき、頭の中で『もう少しシチュエーションを選びましょう』と言う声が響く。
そうだ、旅に出た当初、まだまだ子供だった少年を導いてくれたのは、彼女だった。あのころは優しく頼もしいお姉さんに見えていたが、今では背丈でも外見年齢でも彼女を追い越し、最近は心配性の妹のような気さえしている。
それだけ、少年が成長したということだが、彼女はさらにその先に彼を導こうとしている。
そうだ、エンジェルが来いと言っているのだから、行くのが礼儀だろう。
「わかった・・・」
少年は、妙に震えた声でそう答えると、なぜか手足をぎこちなく操り、エンジェルの横たわるベッドに乗った。
そして、彼女の太腿のあたりを跨ぐようにひざを突き、両手を彼女の顔の左右に置いたところで、少年の動きが止まった。
「・・・さあ、どうしたのですか」
「どうした、って、その・・・」
少年はいくらか頬を赤らめながら、どうにか続ける。
「なにを、どうすればいいか、全くわからなくて・・・」
今まで、魔物に襲われかけたり、誘いを受けたことはあったが、具体的な行為に至ったことはなかった。毎日顔を合わせるエンジェルの姿が脳裏に浮かび、魔物と行為に至ることを押しとどめていたからだ。
そして、少年は自慰においてもエンジェルの姿態を思い浮かべるだけで、具体的に彼女となにをするかまでは考えていなかった。
つまり、なにをどうすればよいのか、全くわかっていないのだ。
「ええと・・・こういうときは、まずキスをするものだと聞きました・・・」
エンジェルが、顔を真っ赤にしながらどこからか聞きかじった知識を口にする。
「キス・・・」
少年の一言に、彼もエンジェルも妙に相手の唇を意識してしまう。
だが、ここで恥ずかしがっていては先に進まない。
「キス・・・するよ・・・」
「はい・・・」
少年が肘を曲げ、上半身を傾かせて、ゆっくりと顔をエンジェルの顔に近づける。
エンジェルは迫りつつある少年の顔に、きょろきょろと視線をさまよわせていたが、遂に耐えられないといった様子で目を閉じた。
ぎゅっと目をつむる彼女の唇に、少年のそれが触れる。
少年とエンジェルの初めてのキスに味はなかった。ただ、唇というものが意外と柔らかく、温かいものだと互いに知っただけだった。
「・・・ん・・・」
少年は数秒間唇を触れさせると、顔を離した。唇を触れ合わせるだけのキスだったというのに、唇には妙に彼女のそれの感触が残っていた。
「それで、次は?」
手の甲で唇を擦り、気を紛らわせながら少年はエンジェルに先を求めた。しかし、エンジェルは少年の言葉に、首を振って答えた。
「だめです・・・今のキスは、ちょっと違う気がします・・・」
「違うって・・・」
「もう一度お願いします」
「・・・分かった・・・」
エンジェルの求めに、少年は頷いた。この場で、次になにをすればいいか知っているのは彼女なのだ。エンジェルに従うほか、少年にできることはなかった。
再び彼は顔を近づける。エンジェルも目を閉ざして、少年の唇を待っていたが、今度は目蓋を下ろす程度だった。
穏やかな彼女の顔が少年の視界に広がり、再び唇が触れ合う。
柔らかな唇が触れ合う感触が、少年に伝わる。だがその直後、彼女の唇が開き、塗れた何かが少年の唇に触れた。
「っ!?」
何が触れたのか一瞬理解できず、少年はエンジェルの舌に身をこわばらせてしまう。彼女は、少年の硬直に対し唇を優しく舐め、軽く唇を動かした。
唇を這い回る温もりと柔らかさは、少年のうなじのあたりにぞくぞくとするものを与えた。
そして、左右に広げられていた彼女の腕が少年の首筋に絡みつき、唇と唇がより深くふれあう。エンジェルの唇が少年のそれを柔らかく挟み、口内で舌が軽く唇を舐める。
そして、どれほどそうしていただろうか。不意に彼女が腕をゆるめ、少年の唇を解放した。
「ぷは・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」
キスに集中しすぎていたためか、エンジェルは荒く息をついた。彼女の瞳は涙に潤み、額には汗が微かに滲んでいる。その様は、あたかも彼女が興奮しているようだった。
「キス・・・すごいですね・・・」
荒い息の中、エンジェルが少年に向けてつぶやく。
「ただ、口と口を重ねているだけなのに、あなたと一つになっているような気分になってました・・・あなたは、どうでしたか・・・?」
「え、えぇと・・・」
少年は口ごもった。彼女と唇が触れ合い、あまつさえ彼女が舌を触れさせているというだけで、頭の中がいっぱいになっていたのだ。一新に何か気の利いたことを言おうとするが、何も思い浮かばない。
「ふふ、私も今の今、ようやく思いついて口にしただけで、あなたと同じ気分でした」
ぱくぱくと酸欠の魚のように口を開閉するばかりの少年に、彼女はそう助け船を出した。
「さあ、キスの次は・・・分かりますか・・・?」
少年は、彼女の言葉に思わず、エンジェルの体にのしかかりながら抱きついた。
ベッドのシーツとエンジェルの背中の間に腕を差し入れ、背中の小さな翼ごと抱きしめる。彼の腰を支えていた両足は、エンジェルの太腿を挟み込み、腰を彼女の体に押しつけていた。そして、彼は顎の下ほどにあった、ふわふわの金髪の間に鼻を押しつけ、深く息を吸った。
腕の中の細い体、足の間の柔らかな太腿、胸に押し当てられる温もり、頭髪から立ち上る甘い香り。ほぼ体の欲するまま、彼は彼女を全身で感じていた。
「ん・・・」
少年の抱擁に、エンジェルは腕の中で小さく声を漏らした。しかしそれは、息苦しさや嫌悪によるものではなく、単に肺から漏れ出た吐息が、、のどを鳴らしただけのようだった。
少年に肩を抱かれながらも、彼女は肘から先を操り、少年の腰のあたりにそっと手を添えた。
拒みもせず、ただじっと少年の抱擁を受け入れ、軽く彼の腰に触れる。たったそれだけだというのに、少年にはエンジェルに自信のすべてを受け入れてもらい、かつ自分が抱かれているような安堵感を得られた。
それは、旅に出てから久しく感じることのなかった感情だった。
胸の奥が熱くなり、少年の目元から滴があふれ出す。
「うぅ・・・」
「・・・大丈夫ですよ・・・私は、ずっと一緒ですよ・・・」
少年の漏らし始めた嗚咽に、彼女は彼の腕の中でささやいた。
そうだ、自分を必要としてくれる大切な人は、こんな側にいたではないか。少年が抱えていた不安や不満が、涙とともに心の中から押し出されていった。
そして、どれほど抱き合っていただろうか、ベッドと少年に挟まれたエンジェルが、小さく声を紡いだ。
「ん・・・その、ちょっと固いのが・・・」
少年はその言葉に、自身が下着越しに屹立を彼女の下腹に押し当ててしまっていることに気がついた。
「ご、ごめん・・・!」
キスによって燃え上がった情欲の炎は、彼女に抱きつくまでは赤々と燃えていたが、こうして抱き合っているうちにいつしか収まってしまっていた。
しかし、彼の言葉とは裏腹に、肉棒は固く大きく屹立し、小さく脈打っている。
自身の劣情を晒してしまったことが、今更ながら気恥ずかしくなり、壮年は腕を解いて体を離そうとした。
しかし、彼がベッドに手を突いて身を起こそうとしても、エンジェルは彼の腰に回した手を緩めなかった。
「いいんですよ」
腰を浮かし、屹立を少しでも離そうとする少年に、エンジェルが言う。
「これはご褒美です。今日までがんばってきた、あなたへのご褒美です。あなたのしたいことを・・・」
ベッドに横たわり、短い金色の髪を少しだけ乱れさせながら、エンジェルは少年を見上げてにっこりとほほえんだ。
その笑顔に、少年の胸の中で心臓が大きく鼓動を打ち、彼の屹立が一つ震えた。
「いい・・・の・・・?」
「はい」
彼の中で、再び情欲の炎が燃え上がった。しかし、意識を焦がすような大きな炎ではなく、炭火のようにじわじわと彼を熱していく穏やかな火だった。
エンジェルが手を離し、少年が腰を浮かせる。そして、彼女が両足を開き、少年はその間に膝立ちになった。短いスカートの裾が大きく広がり、股間を覆う白い布が少しだけ覗いている。
エンジェルは、スカートの裾に指を入れ、下着をつまむとゆっくりと引き下ろしていった。太腿をあげ、膝を曲げ、足から白い布を引き抜く。
やがて、彼女の股間がむき出しになり、少年の目の前に晒された。
無毛の、すべすべとした股間に刻まれた、慎ましやかな一本の筋。幾度となく夢想しては自らを慰めたことのある、彼女のそこが、少年の眼前にあった。
「さあ、どうぞ・・・」
羞恥のためか、未知の領域に踏み出す不安のためか、微かに声を震わせながら、彼女は少年に向けて言った。
彼は、彼女の言葉に無言で下着の内から屹立を取り出した。
上下に揺れる肉棒を掴み、先端をエンジェルの股間の亀裂に当てた。
「い、入れるよ・・・」
「はい・・・」
エンジェルはシーツを掴みながら、彼に応じる。
直後、少年は屹立を挿入すべく腰を突き出した。しかし、肉棒の先端はぬるりと亀裂を擦るばかりで、内側には入らなかった。
「あれ・・・?」
「あ・・・もう少し、下・・・」
「ここ・・・?」
エンジェルの導きに、少年は亀裂のやや下方に先端を押し当てながら尋ねた。
「そう、そこです・・・多分・・・」
エンジェル自身、あまり触れたことのない場所のため、おおよそでしか彼を受け入れる場所は分からなかった。
だが、それで十分だった。
「よっ・・・」
「っ!」
少年が腰を突き出すと同時に、エンジェルが一瞬呼吸をひきつらせた。
腹の奥に屹立が入る感触のためだ。痛みが彼女の股間を走ると同時に、エンジェルの純潔が失われた証が、亀裂から一筋あふれた。
「い・・・」
「・・・大丈夫・・・?」
表情をゆがめ、小さくうめくエンジェルに、少年は情欲の火に炙られつつも思わず尋ねていた。
「だ、大丈夫、です・・・」
しかしエンジェルは、痛みをこらえながら無理矢理ほほえんだ。
キスと抱擁によりいくらか体が熱を帯び、亀裂の奥に湿り気が生じてたとはいえ、十分濡れているとは言い難く、粘膜を擦られる痛みが破瓜の痛みに加わる。
だが、エンジェルは耐えた。勇者として少年が過ごした日々の間で、彼が負った傷の痛みの方が、もっと大きかっただろうから。
「動いて、ください・・・」
「うん・・・」
エンジェルの気丈な言葉に、少年は頷いてから遠慮がちに、ゆっくりと腰を動かし始めた。
エンジェルの窮屈な内側が、少年の肉棒をきゅうきゅうと締め付ける。そして、破瓜の血がぬめりとなり、出入りする屹立の動きをなめらかにした。
「ん・・・ぅ・・・く・・・!」
腹の中を前後に動く屹立の感触は、エンジェルに痛みと違和感を与えていた。しかし、しばらくそうしている内に、エンジェルは膣内の肉棒の感触が徐々に柔らかなものに変わっていくのを感じた。
彼女の膣壁が愛液を滲ませたためだ。亀裂の内側の滑りがよくなり、少年の快感も大きくなっていく。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
エンジェルの痛みをこらえる表情に、最初はおっかなびっくりだった少年の腰の動きが、徐々に早く、大きくなっていく。彼の肉体が、快感を欲しているためだ。
少年の理性が、徐々に情欲の炎に炙られ、燃え上がっていく。そして、彼の屹立も体の内で膨れ上がる絶頂の気配に、脈動を繰り返していた。
「う・・・ん・・・ん・・・!」
エンジェルは十分に濡れ、痛みの弱まった膣内で痙攣する肉棒に、自分の腹の中でじわじわと何かが芽生えてくるのを感じていた。
しびれのような、温もりのような、切なさのような、いくつもの感覚が同居している。
今まで感じたことのない、肉体の生み出す快感。それが、エンジェルを絶頂に導きつつあった。
「はぁはぁはぁ・・・!」
「んっ・・・あぁ・・・!」
少年とエンジェル、二人の口から荒い息と短い喘ぎが溢れだし、互いが互いの興奮を高めあっていく。
そして、互いに性器だけでの接触では物足りないといった様子で、どちらからともなく二人が動いた。
エンジェルが腕を少年の首筋にのばし、少年がエンジェルの上に覆い被さる。
エンジェルの体にのしかかり、少年の背中に腕を回し、互いに抱きしめあった。
二人の肌に触れたのは、驚くほど熱を帯びた相手の肌だった。相手が自分で興奮していることに、二人は本能的に気がつき、ともに意識の内の火を燃え上がらせていった。
「はぁはぁはぁ・・・ん・・・!」
少年の唇がエンジェルのそれによって塞がれ、荒い息が止まる。直後、エンジェルの膣がきゅっと引き締まり、少年を限界に押し上げた。
エンジェルの膣内に、興奮に煮えたぎった白濁が放たれた。
「・・・!」
唇を重ねたまま、エンジェルは体内に注ぎ込まれる粘液の熱と勢いに声を漏らし、小さく体を震わせた。
すると少年は、彼女のふるえを止めようとするかのように、彼女の体を抱きしめた。
肉体がもたらした絶頂に、少年と触れあっているという実感が加わり、エンジェルの快感が大きなものになっていく。
そして、しばしの間桃源郷をさまよった後、二人の意識はベッドの上の肉体に戻された。
「はぁはぁはぁ・・・」
唇を離し、喘ぎながら息を吸い、全身に残る絶頂の余韻に二人は浸った。
「・・・勇者・・・」
体を重ねあい、肉棒を亀裂に挿入したまま、エンジェルが少年に話しかけた。
「これで、もう・・・勇者をやめるなんて、言いませんね・・・?」
エンジェルの言葉に、少年は小さく頷いてから口を開いた。
「・・・・・・ご褒美、ありがとう・・・」
「いいのです・・・これからもがんばってくださいね・・・主神と、私のために・・・」
少年の下で、エンジェルはほほえんだ。
12/10/17 21:02更新 / 十二屋月蝕
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