(56)ミノタウロス
大きな町から少しだけ離れた村落の一角に、小さな牧場があった。
柵で囲まれた敷地には草が生え、その一角に畜舎とは名ばかりの小屋と母屋が寄り添うように建っている。
敷地の一角には野菜も育てられているため、牧場と言うよりは、自給自足レベルの農場と呼ぶべきだろう。
そして、母屋の中に目を向けてみれば、三つの影がテーブルを囲んでいた。
人間の男が一人に、おっとりとした顔立ちのホルスタウロス。そしてイスに腰掛けてもほかの二人より頭一つ分は大きいミノタウロスだった。
「はい、今日もみんなの協力で、一日無事に過ごせました」
テーブルの上の夕食を前に、男が口を開く。
「そして、今日もおいしい晩御飯が食べられることを、互いに感謝しましょう。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとさん」
男の礼の言葉に、ホルスタウロスはそのまま続け、ミノタウロスは多少粗野ではあるものの礼を口にした。
「じゃ、いただきます」
「いただきます!」
「いただきます」
三人は同時に手を合わせると、めいめい食器を手に取り、盛られた料理を口に運び始めた。
「それにしても、今日もいっぱい出したね、ホリー」
ふと男が、ホルスタウロスの名を呼びながら、そう声をかけた。
「今月結構調子がいいから、来月はごちそうが食べられるかもしれないよ」
「えへへ、がんばります」
ホルスタウロスのホリーは、頭髪の間からのぞかせた耳を動かしながら、男に向けて笑った。
「何だよー。ホリーばっかり誉めやがって。アタシも誉めてくれよー」
嬉しそうにするホルスタウロスの様子に悔しくなったのか、ミノタウロスが食事の手を止め、唇をとがらせた。
「今日は、畑の虫を何十匹も取ったし、ワライチゴを取ろうとしていたガキも追い払ったんだぜ」
「おー、よくやったね、ミナ」
男がミノタウロスの名を呼ぶと、ホルスタウロスが続いた。
「ワライチゴはそろそろ収穫ですからねえ」
赤く甘い果実は、甘いものに飢えている子供たちにとっては、盗んででも食べたいものだろう。
「明後日頃に収穫して、村のみんなに配ろうか」
「そうですね。私たちだけじゃ、食べ切れませんし」
ジャムにして売る分と家で食べる分、そしてお裾分けする分について、どのぐらいの分配にしたものかと男が考えていると、ミノタウロスがテーブルを叩いた。
「何だよ!いつもいつも!」
「ど、どうしたミナ?」
突然声を荒げたミノタウロスに、男は目を丸くした。
「いつもいつも、ホリーばっかり誉めて、アタシのことは適当に放っておいて・・・!」
起こっているにも関わらず、目元に涙を滲ませながら、ミナは男を睨んだ。
「別に、ミナのことを適当に放ってなんか・・・」
「今さっき、アタシが今日した仕事を言ったよな?でも、『よくやった』で終わって、後はワライチゴの話じゃないか」
「そ、そういえば・・・」
確かに彼女の指摘通り、話題は即座にワライチゴに移ってしまった。
「アタシの仕事が簡単で、誉めるほどのものじゃないなら、ミナみたいな仕事をさせてくれよ・・・アタシのこともホリーみたいに誉めてくれよ・・・」
言いながら悲しくなってきたのか、ぐすん、とミナは鼻を鳴らした。
「お願いだ・・・ホリーと同じぐらい、アタシも・・・」
「・・・すまない、ミナ・・・」
男は、涙声になりつつあるミナに、そう謝った。
「『二人とも平等に愛する』そういう約束だったな」
ミナとホリーの二人を迎える際に、三人で交わした約束を、男は口にした。
「ホリーのお乳が売り物になるから、知らないうちに特別扱いしてしまっていたみたいだ」
「だったら、アタシのことも・・・」
「ああ、わかってる」
ミナの手を取り、男は頷いた。
「だけどその前に・・・一つ提案があるんだ」
ミナの手を握り、ホリーの方にも顔を向けながら、男は続けた。
「明日、ミナとホリーの仕事を一日だけ交代してみたらどうかな?」
「交代?」
「一日だけ?」
ミノタウロスとホルスタウロスは、同時に首を傾げた。
「ああ。僕は二人ともがんばっているのは知っているけど、ミナもホリーも、互いの仕事をよく知らないから、自分はがんばっているのにとか思っちゃうんだ。だから、二人で一日だけ仕事を交代すれば、相手がどれだけ毎日がんばっているかわかるんじゃないかな」
ミナはホリーの方に目を向けた。確かに、畜舎でお乳を出すだけのホリーに、一日だけ作物の虫取りや、敷地の見張りをさせれば、自分がどれだけがんばっているか分かるだろう。そうすれば、ホリーも自分に対して感謝の感情を抱き、旦那がミナを誉めているときに口を挟むことも少なくなるはずだ。
「分かった」
ミナは男に顔を向け、大きく一つ頷いた。
「明日一日だけ、ホリーと仕事を交代しよう」
「え?いいのミナ?」
ホリーが目を丸くした。
「ホリーはどうする?」
「まあ、一日だけなら私もいいですけど・・・」
「最近ホリーはお乳一杯出してるから、一日休んでも大丈夫だよ」
「それなら、私も明日はミナのお仕事を・・・」
「よし、決まりだ」
二人の同意を得て、男はにっこりと笑った。
そして翌日、ミナはホリーに一日の仕事について教えた後、彼女の代わりに畜舎に入った。
畜舎には大きなバケツや、お乳を入れるための金属容器、大きな漏斗、そして、座面に穴のあいたベンチのように見える、頑丈そうな台があった。
「さあて、と」
ミナは強い日差しから畜舎の中の日影に入ると、ごろりとベンチめいた台に寝転がった。
元来、ミノタウロスは怠惰な魔物なのだ。それにミナはホリーと違ってお乳も出ないため、こうして日暮れ頃まで時間をつぶすしかない。
ホリーは大変だろうが、今日一日ぐらいこうしても罰は当たらないだろう。
「あれ?ミナ、なにやってるの?」
バケツを手に畜舎に入ってきた男が、ミナにそう問いかけた。
「ん?ああ、ホリーの代わりに仕事したいけど、アタシおっぱいでないからさあ・・・」
「それで、ごろごろして時間つぶしてる訳か」
男はミナの側に歩み寄ると、台の下にバケツを置いた。
「でもねえ、一度仕事やるって決めたんだから、ホリーの代わりを勤めてくれないと」
「ンなこと言ったって」
「ホリーは今、ミナの代わりに虫取りと見回りをがんばっているよ。ミナと違って、日差しの下で働くのに慣れていないのに」
「うー・・・」
ミナは台の上に身を起こすと、低く呻いた。確かにホリーに彼女の仕事の辛さを教えることはできたが、これでは、自分が楽するためだけに仕事を代わったようではないか。
「分かったよ・・・アタシもホリーと同じ仕事するから・・・」
「ん、それでいい」
男は頷いた。
「じゃあ、おっぱい出して、そこにうつ伏せになってくれないかな」
「ええと・・・」
ミナは男の指示のまま、胸元を覆っていた布を外す。彼女の元来の褐色の肌と日に焼けた濃い色の肌で彩られた乳房が露わになる。そしてミナは、ベンチの上にうつ伏せになった。
「こ、こうか?」
「もう少し上だね、その穴から胸が下に出るように」
ベンチの座面に開いた穴をのぞき込んでいたミナは、言われるがまま体を動かし、穴から胸を出した。板と自分の体重で圧迫されていた乳房が解放され、かすかな息苦しさがなくなる。
そして、ホルスタウロスのホリーほどではないが、それなりに大きいミナの乳房の重みが、彼女の胸元に加わった。
「あーなるほど・・・こうなるのか・・・」
穴の下には、先ほど男が持ってきたバケツが置いてあり、ミナはどういう姿勢でホリーが乳を搾られているかを理解した。
すると、彼女のむき出しの背中に、ふわりとタオルが掛けられた。
「ん?何だ?」
「ああ、上がむき出しだから、寒くないかと思って」
「まさか、暑いぐらいだ」
ミナはそう言うが、タオルを除けるまではしなかった。男の気遣いが、嬉しかったからだ。
「それじゃあ、腰の上、失礼するね」
男はそう告げると、ひょいと台の上に上がり、ミナの腰を跨いだ。そしてそのまま、彼は上半身を倒し、タオル越しにミナの背中に胸板を押し当ててきた。
「え?なに?ホリーの奴、いつもこうしてもらってるの?」
自身の背中にのしかかる男に、ミナは胸の奥で心臓を跳ねさせながら思わず問いかける。
「いや、普段は横から手を入れて絞ってるだけど、ミナは初めてだからね」
男は彼女の耳元で、微笑みを言葉に込めながらそう答えると、台の左右から座面の下に手を差し入れた。
直後、彼女の褐色の乳房に、男の指が触れた。
「んぁ・・・!」
ベッドの上とは違う、やや力のこもった、指を乳房に埋めるような動きに、ミナは口から声を絞り出した。
「ごめん、痛かった?」
「ああ、大丈夫だけど・・・そんなに揉んでも出ないぞ?」
痛みが掻き消えた後に残された、乳房の芯の微かな甘い痺れを感じながら、ミナは問いかけた。
「ああ、大丈夫。これはおっぱいが出るようになるマッサージだから」
「マッサージ?」
男の言葉を彼女は繰り返した。
「うん、ホルスタウロスは環境が大きく変化した時、お乳が楽に出なくなることがあるんだ。でも、胸の中でお乳が作られるから、胸が苦しくなるんだよ。そんなときに、こうやってマッサージしてやったら、お乳が出るようになるんだ」
「ふぅん・・・」
ホリーもこうやって乳房を揉んでもらったことがあるのだろうか。男に生返事をしながら、ミナは脳裏で思い浮かべた。
「それと逆に、お乳が作られなくなることもあるけど、そんなときにも効くマッサージがある」
「ふんふん」
ホリーは時々調子が悪いと言うことがあるが、そんなときにこうしてお乳が作られるようになるマッサージをしてもらうのだろうか。乳房の芯に残っていた甘い疼きが、ずきんとミナの胸の奥を刺した。
「それで、今からミナには両方のマッサージを受けてもらう」
「ふんふん・・・・・・・・・うん?」
そのまま聞き流しそうになっていたところに届いた言葉に、ミナは声を漏らした。
「それって・・・あぅ!」
聞き返すために身を起こそうとしたところで、男の指がぐいと乳房に食い込んだ。
「うぅ・・・あぁぅ・・・!」
乳房の根本、肉に埋もれた肋骨のあたりを探るように、男の指が圧迫する。ほんの少しの圧力にも関わらず、そこから生じる熱と妙な痛みは、ミナの乳房の内側を駆け回っていた。
「ミノタウロスもホルスタウロスも、多少の違いはあるとはいえ元は同じ魔物なんだ。ミノタウロスは体に筋肉が付きやすく、ホルスタウロスは胸に肉が付きやすい。違いはその程度なんだよ」
ミナの漏らす声に、指の力を緩めつつ、男は胸の根本を圧迫し、ゆっくりと擦っていく。
「だから、ホリーも鍛えればミナみたいにがっちりした体になるだろうし、ミナもホリーみたいにお乳が出るようになるはずなんだ。だって、こんなに立派なおっぱいがついてるだろ?」
「立派じゃ・・・ないぃ・・・!」
胸の筋肉の上にへばりついた、片手で握って余るほどの乳房。イスを寄せて背中を曲げれば、食卓に乗らないでもないほどの大きさだったが、ホリーの乳房に比べれば遙かに小さいと彼女は思っていた。
「立派だよ・・・それに、お乳を作る能力も立派にある」
男は、ミナに言い聞かせるように小声で囁きながら、乳房の下部を指で押した。
その瞬間、彼女の脳裏に稲光が走り、鈍い痛みがじわりと胸に生じる。思い切り何かにぶつけた後の、瞬間的な鋭い痛みの後から広がる、じわじわとした鈍い痛みだ。
痛みは、彼女の乳房の中を満たしていき、もぞもぞと内側で蠢いた。
「うぐ、ぅ・・・!」
ミナは声を漏らし、台の縁を掴んだ。木製の座面の縁が、小さくきしみを立てる。
「痛い?」
「いた、いぃ・・・!」
男に訴えるように、ミナは呻いた。
「うん、それはお乳を作る能力がある証拠だ。今僕が刺激しているのは、お乳を作る部分のツボだよ。ほら」
男が不意に手を離すと、痛みが潮が引いていくように消えた。そして、痛みの代わりに痺れが乳房の芯に取り残された。
「おっぱいの中、なんか痺れてない?」
「あ、あぁ・・・」
痛みをこらえていた疲労と、取り残された痺れに、ミナは戸惑いながら答えた。
「そこが、ミナのお乳を作る部分。今まで使ってなかったから、僕のマッサージで急に動かす準備をして痛んでたんだよ。ほら、慣れてない仕事をしたら、変なところの筋肉が痛くなるだろ?それだよ」
男は、ミナにそう説明した。
「それで、今どんな感じ?」
「ああ・・・なんか、おっぱいの中がじんじんして、ぽかぽか温かくて・・・」
胸の芯に残る痺れは、徐々に大きくなっていき、同時に胸全体が温まっていた。
するとミナの返答に、男は彼女の背中で頷いた。
「うん、胸の中でお乳が作られてる」
「ほ、本当か・・・?」
ミナはそう返しながらも、わずかに嬉しくなっていた。ミナは、自分が母乳を出せるようになるのは子を宿したときだと朧気ながら思っていた。だが、今母乳が作られているという言葉に、まるで彼の子を身ごもった時の分を先取りしたような気分になったからだ。
「このまましばらく待っていれば、お乳がおっぱいに溜まってくるはず。でもその前に、通りをよくしないと・・・」
男の指が、ミナの乳房の先端、褐色の肌を彩る淡い桃色の乳頭を軽く摘んだ。そして、二本の指で軽く挟みつつ、指の間で転がした。
「んぃ・・・!」
乳房の先端に生じた、鋭い刺激にミナが声を上げる。
しかし、男は彼女の声に拘泥することなく、彼女の乳首を指で軽く圧した。
「ん・・・ぅう・・・」
「乳首には、お乳の通り道があるんだ。細い細い、毛穴ぐらいの太さのね」
指の間で乳首を転がし、親指と人差し指で作った輪ほどの広さの乳輪を摘み、先端に向けて軽く擦りながら、男は続ける。
「でも、生まれてこの方使ったことがないだろうから、少し詰まり気味なんだよ。だから、こうやって通りをよくしないとお乳が出なくて、作られたお乳の圧力で無理矢理通り道が開いちゃうんだ」
「ん・・・ぁっ・・・」
乳首への強い刺激と、乳首の内側が擦られる未知の感覚に、ミナは自分の体が変わっていく確信を得た。しかし彼女は、背中に触れる男の体温と圧力、そして彼の言葉にすがり、己の恐怖心を押さえ込んだ。
「これで、もうすぐお乳がでる」
そう、男の手で自分を作り替えてもらっているのだ。恐れることがあるだろうか。
「あぁぁぁ・・・!」
彼女は、胸の熱が一層高まるのを感じながら、乳首の内側を熱い物が擦っていくのを感じた。
直後、台の下のバケツの底を何かが叩く音が響き、同時に彼女の胸の中の圧力が少しだけ弱まった。
「あ・・・出た・・・」
自分の乳房の先端から、液体が迸った。その事実が、じわりとミナの脳裏に染み込み、自身が母乳を放ったことを自覚した。
「おめでとう、ミナ」
乳首を摘む指を離しながら、男がどこか嬉しげに囁く。
「これで、ミナがお母さんになっても大丈夫だね」
「う、うん・・・」
今し方起こった母乳の分泌と、未来の自分の子供。その二つが、ミナの内側でゆっくりとくっつき、じわりと胸の奥で実感となっていく。
そう、ミナも自分の母乳で、子供を育てられるのだ。
「へへへ・・・」
バケツの底を、すたんすたんと叩く水音を聞きながら、ミナは笑った。
「それじゃあ、お乳絞りをしようか」
男がそう言った瞬間、彼はミナの乳房の半ばほどを掴んだ。そして根本側から先端に向けて、彼は指を順番に握っていく。
乳房の内側、乳腺で作られ、蓄え込まれていた母乳が、彼の指によって行き場を遮られ、乳房の先端へ集まっていく。
そして彼女の乳房内の圧力が高まり、ついに先端から迸った。
「っ・・・!」
胸の内側、つい先ほどようやく母乳が通ったばかりの乳腺を、母乳が勢いよく擦っていく感触に、ミナは小さく仰け反りながら震えた。
彼女の乳首は小さくはあるものの膨らみ、白い液体を放っていた。
やがて、男の指がすべて曲がりきり、彼女の乳房から母乳が絞り出される。母乳の迸りの勢いが弱まり、乳頭から滴がこぼれ落ちていたが、それも男が指を緩めると同時に止まった。
「はぁ、はぁ・・・」
乳房への圧迫感と乳房の内側を擦る感覚の消失に、ミナは荒く息を吐いた。
しかし、彼女が呼吸を整えるより先に、男は再び指を乳房に埋めた。
「ま、待っ・・・てぇぇっ!」
ミナが制止の声を上げるが、その語尾は喘ぎ声の中に掻き消えた。
再び高まった胸の内の圧力に、彼女の乳房が再び母乳を放ったからだ。
一度絞られたにも関わらず、放たれる液体の量と勢いは、先ほどの迸りと変わらなかった。それだけ彼女の内側に母乳が溜め込まれているのか、それとも今この瞬間も乳腺が母乳を作っているのか。
「あぁぁ・・・あぁ・・・!」
乳房を掴まれ、敏感な乳首の内側を液体が擦っていく。その鋭い刺激は彼女の脳裏で快感として処理され、興奮が彼女の全身を高めていく。
顔は赤く、息は荒く、目は涙に潤み、体は細かく震え、両足の付け根では滲み出す液体が下着に染みを作っている。そして、下腹の内側にぽっかりと穴が開いたような感覚が生じ、そこを埋める物を身体が欲していた。
だが、彼女がそれを求めようとしても、断続的に胸に生じる快感が、彼女の身体から力を奪っていく。
まるで、男が射精するときのように、ミナは全身を震わせながら乳を放ち、無抵抗になっていった。
そして、どれほどの時間がたっただろうか。ついに、男がミナの乳房を握っても、先端から白い滴が滲むぐらいになった。
「うん、いっぱい出たね」
彼女の乳房を解放しながら、男が頷く。だが、ミナに返答する余裕はなかった。
ようやく止まった、乳房への刺激と射乳の快感に、彼女は全身を弛緩させて台の上に寝そべるばかりだった。快感をこらえるため、必死に台の縁を掴んでいた指は、ただ台に添えているだけになっている。そして彼女の下着は、立て続けの乳房絶頂によりしとどに濡れそぼち、さながら失禁した様相だった。
「あー・・・」
全身を満たす興奮と絶頂の残滓に身を委ねながら、ミナは低く呻いた。
「よっと・・・」
男は身を起こし、台から降りると、台の下のバケツを取った。予想以上の重みが、彼の手に加わる。
「どれどれ・・・おお・・・!」
バケツの内側を目にした男が、声を上げた。バケツの底から、手の幅ほどを満たす白い液体を目にしたからだ。
ミナの母乳はかなり濃厚で、バケツを傾けると心なしかバケツの壁面にへばりつこうとしているかのように見えた。
「すごいよミナ!こんな濃いお乳をこんなに出すなんて!」
男の賞賛を、ミナは淡々と聞き流していた。
「できれば、ホリーと一緒に毎日お乳を出してもらいたいけど・・・まあ、お疲れさま」
「あー・・・」
男の言葉に、ミナは低く返した。
だが、その内側では、期待の炎がじわじわと燃えていた。
毎日、ホリーとともに乳を搾ってもらえることに対する期待と、これから先、男と自分の子供に乳を吸ってもらう期待。
疲労か、立て続けの絶頂の余韻がもたらす錯覚か、ミナはそんな期待を抱いていた。
柵で囲まれた敷地には草が生え、その一角に畜舎とは名ばかりの小屋と母屋が寄り添うように建っている。
敷地の一角には野菜も育てられているため、牧場と言うよりは、自給自足レベルの農場と呼ぶべきだろう。
そして、母屋の中に目を向けてみれば、三つの影がテーブルを囲んでいた。
人間の男が一人に、おっとりとした顔立ちのホルスタウロス。そしてイスに腰掛けてもほかの二人より頭一つ分は大きいミノタウロスだった。
「はい、今日もみんなの協力で、一日無事に過ごせました」
テーブルの上の夕食を前に、男が口を開く。
「そして、今日もおいしい晩御飯が食べられることを、互いに感謝しましょう。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとさん」
男の礼の言葉に、ホルスタウロスはそのまま続け、ミノタウロスは多少粗野ではあるものの礼を口にした。
「じゃ、いただきます」
「いただきます!」
「いただきます」
三人は同時に手を合わせると、めいめい食器を手に取り、盛られた料理を口に運び始めた。
「それにしても、今日もいっぱい出したね、ホリー」
ふと男が、ホルスタウロスの名を呼びながら、そう声をかけた。
「今月結構調子がいいから、来月はごちそうが食べられるかもしれないよ」
「えへへ、がんばります」
ホルスタウロスのホリーは、頭髪の間からのぞかせた耳を動かしながら、男に向けて笑った。
「何だよー。ホリーばっかり誉めやがって。アタシも誉めてくれよー」
嬉しそうにするホルスタウロスの様子に悔しくなったのか、ミノタウロスが食事の手を止め、唇をとがらせた。
「今日は、畑の虫を何十匹も取ったし、ワライチゴを取ろうとしていたガキも追い払ったんだぜ」
「おー、よくやったね、ミナ」
男がミノタウロスの名を呼ぶと、ホルスタウロスが続いた。
「ワライチゴはそろそろ収穫ですからねえ」
赤く甘い果実は、甘いものに飢えている子供たちにとっては、盗んででも食べたいものだろう。
「明後日頃に収穫して、村のみんなに配ろうか」
「そうですね。私たちだけじゃ、食べ切れませんし」
ジャムにして売る分と家で食べる分、そしてお裾分けする分について、どのぐらいの分配にしたものかと男が考えていると、ミノタウロスがテーブルを叩いた。
「何だよ!いつもいつも!」
「ど、どうしたミナ?」
突然声を荒げたミノタウロスに、男は目を丸くした。
「いつもいつも、ホリーばっかり誉めて、アタシのことは適当に放っておいて・・・!」
起こっているにも関わらず、目元に涙を滲ませながら、ミナは男を睨んだ。
「別に、ミナのことを適当に放ってなんか・・・」
「今さっき、アタシが今日した仕事を言ったよな?でも、『よくやった』で終わって、後はワライチゴの話じゃないか」
「そ、そういえば・・・」
確かに彼女の指摘通り、話題は即座にワライチゴに移ってしまった。
「アタシの仕事が簡単で、誉めるほどのものじゃないなら、ミナみたいな仕事をさせてくれよ・・・アタシのこともホリーみたいに誉めてくれよ・・・」
言いながら悲しくなってきたのか、ぐすん、とミナは鼻を鳴らした。
「お願いだ・・・ホリーと同じぐらい、アタシも・・・」
「・・・すまない、ミナ・・・」
男は、涙声になりつつあるミナに、そう謝った。
「『二人とも平等に愛する』そういう約束だったな」
ミナとホリーの二人を迎える際に、三人で交わした約束を、男は口にした。
「ホリーのお乳が売り物になるから、知らないうちに特別扱いしてしまっていたみたいだ」
「だったら、アタシのことも・・・」
「ああ、わかってる」
ミナの手を取り、男は頷いた。
「だけどその前に・・・一つ提案があるんだ」
ミナの手を握り、ホリーの方にも顔を向けながら、男は続けた。
「明日、ミナとホリーの仕事を一日だけ交代してみたらどうかな?」
「交代?」
「一日だけ?」
ミノタウロスとホルスタウロスは、同時に首を傾げた。
「ああ。僕は二人ともがんばっているのは知っているけど、ミナもホリーも、互いの仕事をよく知らないから、自分はがんばっているのにとか思っちゃうんだ。だから、二人で一日だけ仕事を交代すれば、相手がどれだけ毎日がんばっているかわかるんじゃないかな」
ミナはホリーの方に目を向けた。確かに、畜舎でお乳を出すだけのホリーに、一日だけ作物の虫取りや、敷地の見張りをさせれば、自分がどれだけがんばっているか分かるだろう。そうすれば、ホリーも自分に対して感謝の感情を抱き、旦那がミナを誉めているときに口を挟むことも少なくなるはずだ。
「分かった」
ミナは男に顔を向け、大きく一つ頷いた。
「明日一日だけ、ホリーと仕事を交代しよう」
「え?いいのミナ?」
ホリーが目を丸くした。
「ホリーはどうする?」
「まあ、一日だけなら私もいいですけど・・・」
「最近ホリーはお乳一杯出してるから、一日休んでも大丈夫だよ」
「それなら、私も明日はミナのお仕事を・・・」
「よし、決まりだ」
二人の同意を得て、男はにっこりと笑った。
そして翌日、ミナはホリーに一日の仕事について教えた後、彼女の代わりに畜舎に入った。
畜舎には大きなバケツや、お乳を入れるための金属容器、大きな漏斗、そして、座面に穴のあいたベンチのように見える、頑丈そうな台があった。
「さあて、と」
ミナは強い日差しから畜舎の中の日影に入ると、ごろりとベンチめいた台に寝転がった。
元来、ミノタウロスは怠惰な魔物なのだ。それにミナはホリーと違ってお乳も出ないため、こうして日暮れ頃まで時間をつぶすしかない。
ホリーは大変だろうが、今日一日ぐらいこうしても罰は当たらないだろう。
「あれ?ミナ、なにやってるの?」
バケツを手に畜舎に入ってきた男が、ミナにそう問いかけた。
「ん?ああ、ホリーの代わりに仕事したいけど、アタシおっぱいでないからさあ・・・」
「それで、ごろごろして時間つぶしてる訳か」
男はミナの側に歩み寄ると、台の下にバケツを置いた。
「でもねえ、一度仕事やるって決めたんだから、ホリーの代わりを勤めてくれないと」
「ンなこと言ったって」
「ホリーは今、ミナの代わりに虫取りと見回りをがんばっているよ。ミナと違って、日差しの下で働くのに慣れていないのに」
「うー・・・」
ミナは台の上に身を起こすと、低く呻いた。確かにホリーに彼女の仕事の辛さを教えることはできたが、これでは、自分が楽するためだけに仕事を代わったようではないか。
「分かったよ・・・アタシもホリーと同じ仕事するから・・・」
「ん、それでいい」
男は頷いた。
「じゃあ、おっぱい出して、そこにうつ伏せになってくれないかな」
「ええと・・・」
ミナは男の指示のまま、胸元を覆っていた布を外す。彼女の元来の褐色の肌と日に焼けた濃い色の肌で彩られた乳房が露わになる。そしてミナは、ベンチの上にうつ伏せになった。
「こ、こうか?」
「もう少し上だね、その穴から胸が下に出るように」
ベンチの座面に開いた穴をのぞき込んでいたミナは、言われるがまま体を動かし、穴から胸を出した。板と自分の体重で圧迫されていた乳房が解放され、かすかな息苦しさがなくなる。
そして、ホルスタウロスのホリーほどではないが、それなりに大きいミナの乳房の重みが、彼女の胸元に加わった。
「あーなるほど・・・こうなるのか・・・」
穴の下には、先ほど男が持ってきたバケツが置いてあり、ミナはどういう姿勢でホリーが乳を搾られているかを理解した。
すると、彼女のむき出しの背中に、ふわりとタオルが掛けられた。
「ん?何だ?」
「ああ、上がむき出しだから、寒くないかと思って」
「まさか、暑いぐらいだ」
ミナはそう言うが、タオルを除けるまではしなかった。男の気遣いが、嬉しかったからだ。
「それじゃあ、腰の上、失礼するね」
男はそう告げると、ひょいと台の上に上がり、ミナの腰を跨いだ。そしてそのまま、彼は上半身を倒し、タオル越しにミナの背中に胸板を押し当ててきた。
「え?なに?ホリーの奴、いつもこうしてもらってるの?」
自身の背中にのしかかる男に、ミナは胸の奥で心臓を跳ねさせながら思わず問いかける。
「いや、普段は横から手を入れて絞ってるだけど、ミナは初めてだからね」
男は彼女の耳元で、微笑みを言葉に込めながらそう答えると、台の左右から座面の下に手を差し入れた。
直後、彼女の褐色の乳房に、男の指が触れた。
「んぁ・・・!」
ベッドの上とは違う、やや力のこもった、指を乳房に埋めるような動きに、ミナは口から声を絞り出した。
「ごめん、痛かった?」
「ああ、大丈夫だけど・・・そんなに揉んでも出ないぞ?」
痛みが掻き消えた後に残された、乳房の芯の微かな甘い痺れを感じながら、ミナは問いかけた。
「ああ、大丈夫。これはおっぱいが出るようになるマッサージだから」
「マッサージ?」
男の言葉を彼女は繰り返した。
「うん、ホルスタウロスは環境が大きく変化した時、お乳が楽に出なくなることがあるんだ。でも、胸の中でお乳が作られるから、胸が苦しくなるんだよ。そんなときに、こうやってマッサージしてやったら、お乳が出るようになるんだ」
「ふぅん・・・」
ホリーもこうやって乳房を揉んでもらったことがあるのだろうか。男に生返事をしながら、ミナは脳裏で思い浮かべた。
「それと逆に、お乳が作られなくなることもあるけど、そんなときにも効くマッサージがある」
「ふんふん」
ホリーは時々調子が悪いと言うことがあるが、そんなときにこうしてお乳が作られるようになるマッサージをしてもらうのだろうか。乳房の芯に残っていた甘い疼きが、ずきんとミナの胸の奥を刺した。
「それで、今からミナには両方のマッサージを受けてもらう」
「ふんふん・・・・・・・・・うん?」
そのまま聞き流しそうになっていたところに届いた言葉に、ミナは声を漏らした。
「それって・・・あぅ!」
聞き返すために身を起こそうとしたところで、男の指がぐいと乳房に食い込んだ。
「うぅ・・・あぁぅ・・・!」
乳房の根本、肉に埋もれた肋骨のあたりを探るように、男の指が圧迫する。ほんの少しの圧力にも関わらず、そこから生じる熱と妙な痛みは、ミナの乳房の内側を駆け回っていた。
「ミノタウロスもホルスタウロスも、多少の違いはあるとはいえ元は同じ魔物なんだ。ミノタウロスは体に筋肉が付きやすく、ホルスタウロスは胸に肉が付きやすい。違いはその程度なんだよ」
ミナの漏らす声に、指の力を緩めつつ、男は胸の根本を圧迫し、ゆっくりと擦っていく。
「だから、ホリーも鍛えればミナみたいにがっちりした体になるだろうし、ミナもホリーみたいにお乳が出るようになるはずなんだ。だって、こんなに立派なおっぱいがついてるだろ?」
「立派じゃ・・・ないぃ・・・!」
胸の筋肉の上にへばりついた、片手で握って余るほどの乳房。イスを寄せて背中を曲げれば、食卓に乗らないでもないほどの大きさだったが、ホリーの乳房に比べれば遙かに小さいと彼女は思っていた。
「立派だよ・・・それに、お乳を作る能力も立派にある」
男は、ミナに言い聞かせるように小声で囁きながら、乳房の下部を指で押した。
その瞬間、彼女の脳裏に稲光が走り、鈍い痛みがじわりと胸に生じる。思い切り何かにぶつけた後の、瞬間的な鋭い痛みの後から広がる、じわじわとした鈍い痛みだ。
痛みは、彼女の乳房の中を満たしていき、もぞもぞと内側で蠢いた。
「うぐ、ぅ・・・!」
ミナは声を漏らし、台の縁を掴んだ。木製の座面の縁が、小さくきしみを立てる。
「痛い?」
「いた、いぃ・・・!」
男に訴えるように、ミナは呻いた。
「うん、それはお乳を作る能力がある証拠だ。今僕が刺激しているのは、お乳を作る部分のツボだよ。ほら」
男が不意に手を離すと、痛みが潮が引いていくように消えた。そして、痛みの代わりに痺れが乳房の芯に取り残された。
「おっぱいの中、なんか痺れてない?」
「あ、あぁ・・・」
痛みをこらえていた疲労と、取り残された痺れに、ミナは戸惑いながら答えた。
「そこが、ミナのお乳を作る部分。今まで使ってなかったから、僕のマッサージで急に動かす準備をして痛んでたんだよ。ほら、慣れてない仕事をしたら、変なところの筋肉が痛くなるだろ?それだよ」
男は、ミナにそう説明した。
「それで、今どんな感じ?」
「ああ・・・なんか、おっぱいの中がじんじんして、ぽかぽか温かくて・・・」
胸の芯に残る痺れは、徐々に大きくなっていき、同時に胸全体が温まっていた。
するとミナの返答に、男は彼女の背中で頷いた。
「うん、胸の中でお乳が作られてる」
「ほ、本当か・・・?」
ミナはそう返しながらも、わずかに嬉しくなっていた。ミナは、自分が母乳を出せるようになるのは子を宿したときだと朧気ながら思っていた。だが、今母乳が作られているという言葉に、まるで彼の子を身ごもった時の分を先取りしたような気分になったからだ。
「このまましばらく待っていれば、お乳がおっぱいに溜まってくるはず。でもその前に、通りをよくしないと・・・」
男の指が、ミナの乳房の先端、褐色の肌を彩る淡い桃色の乳頭を軽く摘んだ。そして、二本の指で軽く挟みつつ、指の間で転がした。
「んぃ・・・!」
乳房の先端に生じた、鋭い刺激にミナが声を上げる。
しかし、男は彼女の声に拘泥することなく、彼女の乳首を指で軽く圧した。
「ん・・・ぅう・・・」
「乳首には、お乳の通り道があるんだ。細い細い、毛穴ぐらいの太さのね」
指の間で乳首を転がし、親指と人差し指で作った輪ほどの広さの乳輪を摘み、先端に向けて軽く擦りながら、男は続ける。
「でも、生まれてこの方使ったことがないだろうから、少し詰まり気味なんだよ。だから、こうやって通りをよくしないとお乳が出なくて、作られたお乳の圧力で無理矢理通り道が開いちゃうんだ」
「ん・・・ぁっ・・・」
乳首への強い刺激と、乳首の内側が擦られる未知の感覚に、ミナは自分の体が変わっていく確信を得た。しかし彼女は、背中に触れる男の体温と圧力、そして彼の言葉にすがり、己の恐怖心を押さえ込んだ。
「これで、もうすぐお乳がでる」
そう、男の手で自分を作り替えてもらっているのだ。恐れることがあるだろうか。
「あぁぁぁ・・・!」
彼女は、胸の熱が一層高まるのを感じながら、乳首の内側を熱い物が擦っていくのを感じた。
直後、台の下のバケツの底を何かが叩く音が響き、同時に彼女の胸の中の圧力が少しだけ弱まった。
「あ・・・出た・・・」
自分の乳房の先端から、液体が迸った。その事実が、じわりとミナの脳裏に染み込み、自身が母乳を放ったことを自覚した。
「おめでとう、ミナ」
乳首を摘む指を離しながら、男がどこか嬉しげに囁く。
「これで、ミナがお母さんになっても大丈夫だね」
「う、うん・・・」
今し方起こった母乳の分泌と、未来の自分の子供。その二つが、ミナの内側でゆっくりとくっつき、じわりと胸の奥で実感となっていく。
そう、ミナも自分の母乳で、子供を育てられるのだ。
「へへへ・・・」
バケツの底を、すたんすたんと叩く水音を聞きながら、ミナは笑った。
「それじゃあ、お乳絞りをしようか」
男がそう言った瞬間、彼はミナの乳房の半ばほどを掴んだ。そして根本側から先端に向けて、彼は指を順番に握っていく。
乳房の内側、乳腺で作られ、蓄え込まれていた母乳が、彼の指によって行き場を遮られ、乳房の先端へ集まっていく。
そして彼女の乳房内の圧力が高まり、ついに先端から迸った。
「っ・・・!」
胸の内側、つい先ほどようやく母乳が通ったばかりの乳腺を、母乳が勢いよく擦っていく感触に、ミナは小さく仰け反りながら震えた。
彼女の乳首は小さくはあるものの膨らみ、白い液体を放っていた。
やがて、男の指がすべて曲がりきり、彼女の乳房から母乳が絞り出される。母乳の迸りの勢いが弱まり、乳頭から滴がこぼれ落ちていたが、それも男が指を緩めると同時に止まった。
「はぁ、はぁ・・・」
乳房への圧迫感と乳房の内側を擦る感覚の消失に、ミナは荒く息を吐いた。
しかし、彼女が呼吸を整えるより先に、男は再び指を乳房に埋めた。
「ま、待っ・・・てぇぇっ!」
ミナが制止の声を上げるが、その語尾は喘ぎ声の中に掻き消えた。
再び高まった胸の内の圧力に、彼女の乳房が再び母乳を放ったからだ。
一度絞られたにも関わらず、放たれる液体の量と勢いは、先ほどの迸りと変わらなかった。それだけ彼女の内側に母乳が溜め込まれているのか、それとも今この瞬間も乳腺が母乳を作っているのか。
「あぁぁ・・・あぁ・・・!」
乳房を掴まれ、敏感な乳首の内側を液体が擦っていく。その鋭い刺激は彼女の脳裏で快感として処理され、興奮が彼女の全身を高めていく。
顔は赤く、息は荒く、目は涙に潤み、体は細かく震え、両足の付け根では滲み出す液体が下着に染みを作っている。そして、下腹の内側にぽっかりと穴が開いたような感覚が生じ、そこを埋める物を身体が欲していた。
だが、彼女がそれを求めようとしても、断続的に胸に生じる快感が、彼女の身体から力を奪っていく。
まるで、男が射精するときのように、ミナは全身を震わせながら乳を放ち、無抵抗になっていった。
そして、どれほどの時間がたっただろうか。ついに、男がミナの乳房を握っても、先端から白い滴が滲むぐらいになった。
「うん、いっぱい出たね」
彼女の乳房を解放しながら、男が頷く。だが、ミナに返答する余裕はなかった。
ようやく止まった、乳房への刺激と射乳の快感に、彼女は全身を弛緩させて台の上に寝そべるばかりだった。快感をこらえるため、必死に台の縁を掴んでいた指は、ただ台に添えているだけになっている。そして彼女の下着は、立て続けの乳房絶頂によりしとどに濡れそぼち、さながら失禁した様相だった。
「あー・・・」
全身を満たす興奮と絶頂の残滓に身を委ねながら、ミナは低く呻いた。
「よっと・・・」
男は身を起こし、台から降りると、台の下のバケツを取った。予想以上の重みが、彼の手に加わる。
「どれどれ・・・おお・・・!」
バケツの内側を目にした男が、声を上げた。バケツの底から、手の幅ほどを満たす白い液体を目にしたからだ。
ミナの母乳はかなり濃厚で、バケツを傾けると心なしかバケツの壁面にへばりつこうとしているかのように見えた。
「すごいよミナ!こんな濃いお乳をこんなに出すなんて!」
男の賞賛を、ミナは淡々と聞き流していた。
「できれば、ホリーと一緒に毎日お乳を出してもらいたいけど・・・まあ、お疲れさま」
「あー・・・」
男の言葉に、ミナは低く返した。
だが、その内側では、期待の炎がじわじわと燃えていた。
毎日、ホリーとともに乳を搾ってもらえることに対する期待と、これから先、男と自分の子供に乳を吸ってもらう期待。
疲労か、立て続けの絶頂の余韻がもたらす錯覚か、ミナはそんな期待を抱いていた。
12/10/15 10:19更新 / 十二屋月蝕
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