(55)クイーンスライム
森の一角、周囲から完全に孤立した場所に、小さな集落があった。
元は人が住んでいたのだろうが、今はほとんど誰もいないのが見て取れる。なぜなら、並ぶ建物のすべてに、青い粘液が絡み付いていたからだ。
一見すると、青い粘液が家屋を象っているかのように見えるが、透明な粘液を透かして見える壁や屋根が、家屋が実在することを示していた。
そして、並ぶ家屋の一軒の中を、男が一人歩いていた。外壁はもちろん、家屋の内側も粘液が覆っている。壁や天井を粘液が完全に包み込み、床にはくるぶしに達するほどの厚さで粘液が積もっている。
男は、床の粘液から足を引き抜き、音を立てて沈めながら、一歩ずつ老化を進んでいた。
肩に届くほど髪を伸ばした男は、一糸纏わぬ姿で、粘液に臆することなく、黙々と家屋の廊下を進んでいた。
すると、廊下の壁に設けられた扉の前で、彼は足を止めた。扉の傍らの壁には、板切れが掲げられており、その板だけが粘液に包まれていなかった。
板には青い文字でこう記されていた。
『理容女王』
男は青い粘液に包まれた扉に手を伸ばすと、粘液越しにドアノブをつかみ、軽く回して押し開いた。
「いらっしゃいませぇ〜」
扉を開くと同時に、部屋の中から複数の声が響く。
声とともに男を迎えたのは、青い粘液で身体を構成した、三人の女だった。
「いらっしゃいませ!今空いてますから、どうぞ!」
部屋の入り口に駆け寄った、十代半ばほどの外見の、短髪のスライム少女が、部屋の中心に置かれた安楽イスを示しながら微笑んだ。
「ああ、頼む」
延び放題の髪の毛に触れ、口元や顎の肌の色を隠すほど髭を撫でながら、男は安楽イスに向かい、腰を下ろした。
安楽イスを包み込み、奥まで浸透していた粘液が、くたびれたイスのクッションの代わりに彼の体重を柔らかく受け止め、イスの向かいに置かれた大きな鏡が彼の姿を映す。
男のむき出しの尻や太股に触れる粘液は、人肌程度の温もりを帯びており、少なくとも冷たさに声を上げることはなかった。
「はぁい、きょうはどんな感じにしようかしら?」
部屋の奥から、粘液の塊を手にした、二十代半ば過ぎほどのスライム女が、にこにこと男に問いかける。
体つきこそ、先ほどのスライム少女より遙かに豊満ながらも、顔立ちや声に似たものがあった。
「とりあえず、髪を短く。髭も剃ってくれ」
「頭は洗いますかぁ?」
男に問いかけながら、彼女は手にしていた粘液の塊を両手で広げた。すると粘液は、一枚の布のように膜状に広がり、彼女の導きのまま男の上に被せられた。
「うん、そっちも頼もうか」
「かしこまりましたわ」
スライム女は、にっこり微笑むと、両手を男の頭に触れた。
彼女の手の表面から滲み出す、純粋な水分が男の髪の毛を濡らしていく。乾き、互いに絡み合った男の頭髪が、濡れたことで柔らかく、しなやかになっていく。
そして、十分に髪の毛を湿したところで、スライム女は手を離した。
「じゃあ、切っていきますねぇ」
手を構成する粘液から二本の突起が延び、ハサミを握っているような形になる。彼女は、青く透き通った、切れ味もないはずのハサミを男の頭に近づけると、一房の髪を手に取り、粘液の刃を入れた。
頭髪を伝わり、男の頭皮に髪の毛が切断されていく感覚が伝わる。
切り落とされた毛先は、男の身体と安楽イスを覆う粘液膜の上に落ち、青い粘液の中にとけ込んでいった。
「♪〜」
鼻歌を歌いながら、スライム女は男の髪を粘液で切断していった。
「ところでお客さん、なんでウチに来られたんですか?」
ふと彼女が、男に問いかけた。
「ああ、近いし、安心できるからな」
「安心できるから、っていうのは嬉しいですけど、隣町にはちゃんとした床屋さんがありますよね?ウチみたいに半分素人がやってるような店じゃなくて」
「ああ、俺が前に一度行った、レッサーサキュバスがいる店だな」
「ええ」
「あそこは腕はいいが、店主が怖いんだよ」
「怖い?」
小刻みに粘液のハサミを開閉させ、切り落とした毛髪を粘液に溶かしながら、彼女は繰り返した。
「店主がね、毛がないんだ」
「毛が、ない?」
「ああ。禿とかじゃなくて、毛を剃っているんだ」
「スキンヘッドって奴ですね」
おおかた、店員のレッサーサキュバスに自分の頭で剃刀の練習でもさせたのだろう。そんなことをスライム女が考えていると、男は言葉で否定した。
「いや、頭だけじゃなくて、眉毛もなかった」
「眉毛も?」
「まつげもないし、半袖だったが腕の産毛もなかった。多分、前進の毛を剃り落としているんだと思う」
「そこまで」
頭頂部の毛を切りながら、彼女は感嘆の声を漏らした。
「そういうわけで、俺はあの店主が怖くて、あの店に行くことができないんだ」
「そういうわけだったんですねえ・・・はい、出来上がりました」
ハサミを頭から離し、二本の突起を絡めあわせて櫛状に整形しながら、スライム女は男に問いかけた。
「このぐらいでいいですか?」
「ああ」
だいぶすっきりした自分の姿に男がうなづくと、店の隅から小さな鏡を手にした長髪のスライム少女が駆け寄り、男の後頭部を映した。
「うん。いい感じだ」
正面の鏡越しに映る、自身の後頭部に、男は満足した。
「それでは、顔剃り、洗髪の順でいきまぁす」
女は粘液で構成した櫛を男の頭に入れ、頭髪の間に絡みつく切れ端を払い落としていった。
そして、一通り切れ端を落としたところで、鏡を持っていたスライム少女が安楽イスに手をかける。
「倒しまーす」
彼女の操作に、安楽イスの背もたれがゆっくりと傾き、男の膝から上が仰向けになる。
「お顔、失礼しますね」
スライム女は手の中に粘液の塊を作り出すと、男に一度声をかけた。
そして、ホカホカと湯気を立てる粘液の塊を広げ、男の口元に乗せてきた。やや熱い、蒸しタオルのように熱を帯びた粘液が男の口元を覆う。
「・・・」
男の鼻が粘液の縁を押し上げることで空気の通り道ができているためか、息苦しさはなかった。男は粘液により熱と湿気を与えられた空気を、鼻から肺に吸った。
「ん〜、そろそろかしら・・・?」
しばしの間をおいて、スライム女が粘液に手を触れ、男の口元を覆うそれを回収する。
ひやりとした空気が、男の髭越しに顎や口元の肌に触れた。
「剃りますね。じっとしていてくださ〜い」
女は、左手で男の髭に粘液を塗りたくると、右手の突起を彼の頬に触れさせた。
一見するとただの棒状の粘液の塊にしか見えないが、剃刀のようだ。
「・・・・・・」
左手で頬の肌を伸ばし、粘液の剃刀を動かす。すると、ぶつぶつぶつと髭が切断され、粘液でできた刃が肌を擦っていく感触が、彼の頬に伝わった。
青い粘液に濡れ、粘液の剃刀によって剃り落とされた髭は、粘液の中にとけ込み、刃を伝ってスライム女に回収されていった。
本物の剃刀ならば時折刃についた毛や泡を落とさなければならないが、スライム女の顔剃りにはそれがなかった。
肌を刃が擦り、一瞬離れ、別の場所を擦る。中断を挟むことなく、繰り返されるひげ剃りは、リズミカルで心地よかった。
そして、左右の頬から顎、鼻の下、首筋などを剃り終えると、彼女は粘液の剃刀を離した。
「はい、おしまいです。保湿ローション塗っておきますね」
粘液の剃刀を手の中にとけ込ませ、彼女は両手を男の肌に触れさせた。スライム女の、青い粘液で作られた肌には、水とは異なる湿り気が滲んでおり、剃刀で擦られた肌に塗り付けられていく。
ひやりとしたその感触は、非常にさわやかなものだった。
「はい、顔剃りおしまいです」
「ここからは交代して、洗髪しますね!」
スライム女の言葉を引き継ぐように、短髪のスライム少女が声を上げた。
「濡らしまーす」
最初に頭髪に湿り気を与えたときの要領で、スライム少女が手の表面に水分を滲ませ、髪を濡らしていく。
「じゃあ、洗いながら頭皮マッサージもしますねー」
スライム少女はそう告げると、男の頭髪の中で指を動かした。
指先を頭皮に押し当て、頭頂に向けて皮を寄せるようにしながら、髪を洗っていく。
髪を湿らせる粘液が、髪の切れ端や汚れを溶かせるよう、彼女はよくかき回しては頭皮を圧迫した。
彼女の指の動きに、毛根に溜まっていた脂質や汚れが絞り出され、青い粘液が溶かしていく。同時に、皮膚を揉むことで頭部のコリがほぐれていくようだった。
「あぁ・・・」
スライム少女の指に、のどから声を絞り出しながら、男は心地よさに身をゆだねた。
髪と粘液と指がこすれる音が頭に響き、頭皮と頭蓋骨の間の血液が指の動きによって攪拌されていく。
心地よさが、男に眠気をもたらし、意識を奪っていった。
「はい、おしまいです」
だが、男が眠りに至るより前に、スライム少女が頭皮に押しつけていた指をゆるめた。
頭を圧迫していた指先が離れ、髪にへばりつく粘液がスライム少女の指へと吸い上げられていく。
手櫛で髪を梳くように、男の髪を一通り拭うと、彼女は指を頭から離した。
「はーい、きれいになりましたー」
髪にかすかに残る水分が、男の頭に程良い涼しさとさわやかさをもたらした。
「頭、失礼しますね」
いつの間にか歩み寄っていたのか、長髪のスライム少女が、手にしていた粘液の固まりを男の頭に押し当てた。すると粘液は、男の頭髪の間に入り込み、残る水分を吸い上げていった。
「はい、これで全部おしまいです」
「お疲れさまでしたー」
二人のスライム少女が、散髪の終了を男に告げた。
しかし二人とも男の左右に立ったまま、安楽いすを起こして男を起こそうとする気配がなかった。
「ええと・・・」
「あ、料金のお支払いですが・・・」
「想像ついていると思うけど、いつも通り」
「精液払いでお願いしますね」
スライム少女二人の言葉を引き継ぐように、男の頭の方からスライム女の声が響いた。
直後、男の頭に弾力のある塊が押し当てられた。同時に、安楽いすと男の上に覆い被さる粘液膜にスライム少女が手を触れ、粘液が男の肌をなで始めた。
「うぉ・・・!」
「ご気分、いかがですかぁ?」
男の頭に乳房を押し当て、顔をのぞき込みながらスライム女が問いかける。
だが、男に答える余裕はなかった。スライム少女二人が体にのしかかる圧迫感と、イスと体に被せられた粘液膜のうごめきが、体全体を苛んでいるからだ。
「いつもなら、体の末端からですけど、今日は趣向を変えてみました〜」
男はスライム女の言葉に、胸の内のいやな予感が的中したことを悟った。
もともと、床屋で髪をすっきりしたいと言い出し、妻であるクィーンスライムと床屋プレイをする事にしたのは彼だったが、ここまでされるとは思わなかった。
「はぁい、お顔失礼しま〜す」
スライム女は、頭に押しつけていた乳房を離すと、男の顔の上で一度膨張させてから、ゆっくりと乗せた。
青く透き通った粘液が男の視界一杯に広がり、男が目を閉じた直後、圧迫感が額から口元までをおそった。
粘液が男の鼻や口を押さえるが、ごくわずかな隙間を通じて呼吸はできる。しかし、十分に呼吸できるとはいえず、息苦しさが男にもたらされた。
一方、二人のスライム少女は、男の胸と太腿に、それぞれ自身の胸を押しつけ、両手で薄く広がる粘液膜越しに男の体を撫でていた。
二組四つの手のひらが、青い粘液を擦り、男の肌をくすぐる。スライム少女の手が通り過ぎると、粘液膜の表面にごく僅かなさざ波が生じ、粘液膜を通じて男の肌にうねりをもたらした。
「うふふー」
「ふふっ・・・」
短髪と長髪、二人のスライム少女は口元に笑みを浮かべながら、手のひらで男の二の腕を、腹を、腰を、足を撫でつつ、薄い胸を押し当てながら体を揺すった。
手のひらより遙かに広く、圧迫感も強い二人分の擦り付けは、男の太腿と胸板を強く刺激する。
男の体を覆う粘液も、二人の動きに大きなうねりを生み出し、彼の体をくすぐった。
二人の胸と手。たった六つしか彼の体を擦っていないにも関わらず、粘液膜の内側では無数の指や手が、彼の体を撫で擦り、くすぐっているかのようだった。
「・・・!・・・っ・・・!」
スライム女の乳房の下で、男が低く声を漏らした。
すでに彼の股間は、青い粘液膜を押し上げて屹立しており、小さく揺れている。
しかし、スライム少女たちは肉棒に触れることなく、男の体を撫でるばかりだった。
「そろそろですかぁ?」
スライム女がそう問いかけると同時に、彼の顔を覆っていた粘液の塊が持ち上げられた。
「ぷはっ!」
口元から鼻が解放され、男は飛び上がらんばかりの勢いで顔を持ち上げ、空気を求めてあえいだ。
興奮と酸欠で荒く息をついていると、スライム女が彼の横へ移動し、スライム少女は手と胸を離して男の頭を挟むように立った。
「上、乗りまーす」
床を覆う粘液が盛り上がり、スライム女の足下に足場を作る。彼女はそのまま安楽イスをまたぐと、男の腰のあたりで膝立ちになった。
ちょうど、屹立の真上に彼女の両足の付け根が来る位置だ。スライム女の股間は、もちろん一本の毛も生えておらず、それどころか亀裂すらないつるりとしていた。
「ふふ・・・」
彼女は股間に手を伸ばすと、粘液で構成された指を、なにもない股間に押し当て、突き入れた。
粘液は彼女の指をにゅるりと受け入れ、下腹の青を透して淡く見せていた。
彼女の下腹の中で、指先が小さく円を描くように動き、くちゅくちゅと濡れた音を立てる。
指に粘り付く、青いスライム女の体は、男にその内側の感触を容易に伝えた。
やがて彼女は指を股間から引き抜くと、ゆっくりと膝を屈めて腰を下ろし始めた。同時に、ベールのように肉棒を覆っていた粘液膜が破れ、男の屹立が空に晒された。
やがてスライム女の股間と男の肉棒が触れあい、粘液の中に屹立が入り込む。
「うぅ・・・!」
温もりを帯びた粘液をかき分けていく感触に、男は声を漏らした。
スライム女は男の表情に笑みを浮かべながら、静かに腰をおろし、ついに男の腰の上に座った。
屹立の根本までが彼女の体内に没し、青い粘液の体を透かして肉棒がふるえていた。
「うぅ、ぐ・・・!」
「あれー?入れただけなのに、急に静かになりましたねー?」
「そんなに気持ちいいんですかー?」
男の頭を挟むように立つスライム少女が、くすくすと笑いながら言った。
「気持ちよすぎて動けないなら」
「わたしたちが気を逸らさせてあげまーす」
彼女たちは膝を屈めると、左右から男の頭に、そのスレンダーな体を押しつけた。
薄いながらも柔らかな胸が左右から押しつけられる。スライム女の時のような重量感や圧迫感はないが、それでも乳房の柔らかさは男に十分伝わった。
「よい・・・しょ・・・」
「ん・・・っと・・・」
スライム少女たちが、体を上下左右に揺らし、男の顔をゆっくりと擦る。
バラバラな動きではあったが、それでも男の意識を股間から剃らすには十分だった。
「うぅ・・・」
「あらあら、女の子二人に奉仕してもらって夢見心地・・・」
スライム女は男にそういうと、小さく腰を動かした。
軽く、円を描くような動きをほんの一度だけ。しかし、その身じろぎと対して変わりないように見えた動きとは裏腹に、彼女の体内では粘液が大きく蠢いた。
屹立を包み込む粘液が、渦を巻くように動き始めたのだ。
屹立の形に合わせ、ゼリー状に凝固していた彼女の体内の粘液が、渦によって砕け、いくつかの塊になりながら肉棒の周りを巡り始める。
塊の作り出す僅かな凹凸が、間を埋めるように滲んだ粘液とともに、屹立の表面を擦った。
「っ!」
スライム少女二人の乳房の間で、凝固した粘液の摩擦の刺激を受けながら、男は体をこわばらせた。
根本近くも、張り出したカリ首も、先走りを滲ませる鈴口も、弱いところも堅いところも関係なく、粘液が擦るからだ。
敏感な亀頭を粘液の塊が、己を削りながら擦っていく。そしてかすかな痛みさえ感じそうな摩擦の直後、柔らかな粘液が粘膜を優しく愛撫する。
硬度の異なる二種類の粘液の摩擦が、男を責め立てた。
「うー・・・こんなにがんばってるのにー」
「もー!こっちも気持ちいいでしょー!」
スライム少女二人が、身悶えする男にそう声をかけるが、男に返事する余裕はなかった。
「えーい、仕方ない」
「わたしたちも!」
二人は安楽イスを包み込む粘液に体を押しつけると、その体を構成していた粘液をイスの粘液にとけ込ませた。
直後、男の胸の上を覆っていた粘液膜が膨れ上がり、スライム少女二人の上半身が現れる。
「これなら」
「どうだ!」
二人は同時に声を上げると、男の上半身に左右から抱きついた。
先ほどまで膜状に男を覆っていた粘液が、二人のスライム少女となったため、男の胸板に二人の乳房が直接押しつけられる。
彼女たちの乳房の先の、粘液を凝固させて再現した突起が、男の体に押し当てられた。
「えいえい!」
「どうだ!」
男の体を直接体で擦りながら、二人はスライム女が男に与えている快感に立ち向かった。
「あらあら、一生懸命ねえ」
スライム女は、二人の少女の背中を見下ろしながらほほえむと、両手を伸ばした。
そして、男のへそのあたりから生えている二人の背中に、手のひらを当てた。一瞬の接触の後、彼女の手のひらがスライム少女たちの粘液にとけ込む。
その瞬間、二人は動きを止めた。
「ふゃぁああああっ!?」
「んんっ・・・!?」
体に直接そそぎ込まれた快感に、短髪が口を開いて声を上げ、長髪が喘ぎ声をかみ殺す。
スライム女の手を伝い、男の屹立の感触が、スライム少女たちに届けられたのだ。
腹の奥を押し広げる肉棒と、体の芯を炙る熱。その二つがもたらす快感さえもが、直接スライム少女たちの意識にたたき込まれた。
「さ、この娘たちも楽しみたいそうですから・・・」
スライム女の言葉の後、屹立を包み渦を巻く粘液が、回転をそのままに屹立を軽く締めた。
凝固した粘液の破片も、さらさらと流れる粘液もそのまま、圧力だけが屹立を襲う。同時に、彼女の体内の熱が少しだけ高まり、男に快感をもたらした。
「ぐぅ・・・!」
男が、腹の奥で膨らみつつある射精の予感に、声を漏らした
「ほら、あなたたちも・・・」
「んぁあ・・・!」
「っ・・・!」
スライム女がそういうと、スライム少女たちは声を漏らしながら、ぎこちない動きで男への愛撫を再会した。
両腕に力を込め、体を揺すり、薄い乳房とその先端、鳩尾から腹にかけてを男の体に擦りつける。
粘液が構成する柔らかな体が、熱を帯び、圧力を変えながら押し当てる様子は、男にその全身を巨大な女陰に挿入しているかのような錯覚を与えた。
いや、それは錯覚でも何でもなかった。この集落跡こそクィーンスライムの巣で、この建物はクィーンスライムの体内。その中でこうして体を重ねているのは、もはや全身を突き入れているに等しかった。
「・・・っ!」
男が声にならないうめき声を漏らし、精液を迸らせた。
スライム女の体内の渦の中に、一筋の白が混ざり込み、渦の流れにあわせて広がっていく。
「ん・・・!」
「あぁぁ・・・」
「あふ・・・ぅ・・・」
スライム女が唇を軽く噛みながら声を漏らし、スライム少女二人が喘ぎ声をあげる。
三者が共有していた体内の感覚に、射精の勢いと熱が加わり、同時に達してしまったのだ。
男とスライム女とスライム少女たち。四人はしばしの間、同時に絶頂すると、ほぼ同時に全身を脱力させた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
絶頂の余韻に浸りながら、男は喘ぎ、スライム少女たちは体を男に預け、スライム女は虚空を見つめていた。
そして、スライム女の体内で、屹立から延びる白濁の渦が、青い粘液の中に溶けて消えていった。
「ふふ・・・ごちそうさま・・・」
一人早く呼吸を落ち着かせたスライム女が、そう呟いた。
「さ、みんな寝室に戻りましょうか」
「えぇ・・・?」
「わたし、まだ・・・」
スライム女の言葉に、短髪が声を上げ、長髪がゆるゆるとスライム女を見上げた。
「ここではおしまい。続きは寝室で、よ」
彼女は男に顔を向けながら続けた。
「まだ、頑張れますよね?」
「あぁ・・・支払いも終わってないしな・・・」
彼女の問いかけに、男は頷いた。
元は人が住んでいたのだろうが、今はほとんど誰もいないのが見て取れる。なぜなら、並ぶ建物のすべてに、青い粘液が絡み付いていたからだ。
一見すると、青い粘液が家屋を象っているかのように見えるが、透明な粘液を透かして見える壁や屋根が、家屋が実在することを示していた。
そして、並ぶ家屋の一軒の中を、男が一人歩いていた。外壁はもちろん、家屋の内側も粘液が覆っている。壁や天井を粘液が完全に包み込み、床にはくるぶしに達するほどの厚さで粘液が積もっている。
男は、床の粘液から足を引き抜き、音を立てて沈めながら、一歩ずつ老化を進んでいた。
肩に届くほど髪を伸ばした男は、一糸纏わぬ姿で、粘液に臆することなく、黙々と家屋の廊下を進んでいた。
すると、廊下の壁に設けられた扉の前で、彼は足を止めた。扉の傍らの壁には、板切れが掲げられており、その板だけが粘液に包まれていなかった。
板には青い文字でこう記されていた。
『理容女王』
男は青い粘液に包まれた扉に手を伸ばすと、粘液越しにドアノブをつかみ、軽く回して押し開いた。
「いらっしゃいませぇ〜」
扉を開くと同時に、部屋の中から複数の声が響く。
声とともに男を迎えたのは、青い粘液で身体を構成した、三人の女だった。
「いらっしゃいませ!今空いてますから、どうぞ!」
部屋の入り口に駆け寄った、十代半ばほどの外見の、短髪のスライム少女が、部屋の中心に置かれた安楽イスを示しながら微笑んだ。
「ああ、頼む」
延び放題の髪の毛に触れ、口元や顎の肌の色を隠すほど髭を撫でながら、男は安楽イスに向かい、腰を下ろした。
安楽イスを包み込み、奥まで浸透していた粘液が、くたびれたイスのクッションの代わりに彼の体重を柔らかく受け止め、イスの向かいに置かれた大きな鏡が彼の姿を映す。
男のむき出しの尻や太股に触れる粘液は、人肌程度の温もりを帯びており、少なくとも冷たさに声を上げることはなかった。
「はぁい、きょうはどんな感じにしようかしら?」
部屋の奥から、粘液の塊を手にした、二十代半ば過ぎほどのスライム女が、にこにこと男に問いかける。
体つきこそ、先ほどのスライム少女より遙かに豊満ながらも、顔立ちや声に似たものがあった。
「とりあえず、髪を短く。髭も剃ってくれ」
「頭は洗いますかぁ?」
男に問いかけながら、彼女は手にしていた粘液の塊を両手で広げた。すると粘液は、一枚の布のように膜状に広がり、彼女の導きのまま男の上に被せられた。
「うん、そっちも頼もうか」
「かしこまりましたわ」
スライム女は、にっこり微笑むと、両手を男の頭に触れた。
彼女の手の表面から滲み出す、純粋な水分が男の髪の毛を濡らしていく。乾き、互いに絡み合った男の頭髪が、濡れたことで柔らかく、しなやかになっていく。
そして、十分に髪の毛を湿したところで、スライム女は手を離した。
「じゃあ、切っていきますねぇ」
手を構成する粘液から二本の突起が延び、ハサミを握っているような形になる。彼女は、青く透き通った、切れ味もないはずのハサミを男の頭に近づけると、一房の髪を手に取り、粘液の刃を入れた。
頭髪を伝わり、男の頭皮に髪の毛が切断されていく感覚が伝わる。
切り落とされた毛先は、男の身体と安楽イスを覆う粘液膜の上に落ち、青い粘液の中にとけ込んでいった。
「♪〜」
鼻歌を歌いながら、スライム女は男の髪を粘液で切断していった。
「ところでお客さん、なんでウチに来られたんですか?」
ふと彼女が、男に問いかけた。
「ああ、近いし、安心できるからな」
「安心できるから、っていうのは嬉しいですけど、隣町にはちゃんとした床屋さんがありますよね?ウチみたいに半分素人がやってるような店じゃなくて」
「ああ、俺が前に一度行った、レッサーサキュバスがいる店だな」
「ええ」
「あそこは腕はいいが、店主が怖いんだよ」
「怖い?」
小刻みに粘液のハサミを開閉させ、切り落とした毛髪を粘液に溶かしながら、彼女は繰り返した。
「店主がね、毛がないんだ」
「毛が、ない?」
「ああ。禿とかじゃなくて、毛を剃っているんだ」
「スキンヘッドって奴ですね」
おおかた、店員のレッサーサキュバスに自分の頭で剃刀の練習でもさせたのだろう。そんなことをスライム女が考えていると、男は言葉で否定した。
「いや、頭だけじゃなくて、眉毛もなかった」
「眉毛も?」
「まつげもないし、半袖だったが腕の産毛もなかった。多分、前進の毛を剃り落としているんだと思う」
「そこまで」
頭頂部の毛を切りながら、彼女は感嘆の声を漏らした。
「そういうわけで、俺はあの店主が怖くて、あの店に行くことができないんだ」
「そういうわけだったんですねえ・・・はい、出来上がりました」
ハサミを頭から離し、二本の突起を絡めあわせて櫛状に整形しながら、スライム女は男に問いかけた。
「このぐらいでいいですか?」
「ああ」
だいぶすっきりした自分の姿に男がうなづくと、店の隅から小さな鏡を手にした長髪のスライム少女が駆け寄り、男の後頭部を映した。
「うん。いい感じだ」
正面の鏡越しに映る、自身の後頭部に、男は満足した。
「それでは、顔剃り、洗髪の順でいきまぁす」
女は粘液で構成した櫛を男の頭に入れ、頭髪の間に絡みつく切れ端を払い落としていった。
そして、一通り切れ端を落としたところで、鏡を持っていたスライム少女が安楽イスに手をかける。
「倒しまーす」
彼女の操作に、安楽イスの背もたれがゆっくりと傾き、男の膝から上が仰向けになる。
「お顔、失礼しますね」
スライム女は手の中に粘液の塊を作り出すと、男に一度声をかけた。
そして、ホカホカと湯気を立てる粘液の塊を広げ、男の口元に乗せてきた。やや熱い、蒸しタオルのように熱を帯びた粘液が男の口元を覆う。
「・・・」
男の鼻が粘液の縁を押し上げることで空気の通り道ができているためか、息苦しさはなかった。男は粘液により熱と湿気を与えられた空気を、鼻から肺に吸った。
「ん〜、そろそろかしら・・・?」
しばしの間をおいて、スライム女が粘液に手を触れ、男の口元を覆うそれを回収する。
ひやりとした空気が、男の髭越しに顎や口元の肌に触れた。
「剃りますね。じっとしていてくださ〜い」
女は、左手で男の髭に粘液を塗りたくると、右手の突起を彼の頬に触れさせた。
一見するとただの棒状の粘液の塊にしか見えないが、剃刀のようだ。
「・・・・・・」
左手で頬の肌を伸ばし、粘液の剃刀を動かす。すると、ぶつぶつぶつと髭が切断され、粘液でできた刃が肌を擦っていく感触が、彼の頬に伝わった。
青い粘液に濡れ、粘液の剃刀によって剃り落とされた髭は、粘液の中にとけ込み、刃を伝ってスライム女に回収されていった。
本物の剃刀ならば時折刃についた毛や泡を落とさなければならないが、スライム女の顔剃りにはそれがなかった。
肌を刃が擦り、一瞬離れ、別の場所を擦る。中断を挟むことなく、繰り返されるひげ剃りは、リズミカルで心地よかった。
そして、左右の頬から顎、鼻の下、首筋などを剃り終えると、彼女は粘液の剃刀を離した。
「はい、おしまいです。保湿ローション塗っておきますね」
粘液の剃刀を手の中にとけ込ませ、彼女は両手を男の肌に触れさせた。スライム女の、青い粘液で作られた肌には、水とは異なる湿り気が滲んでおり、剃刀で擦られた肌に塗り付けられていく。
ひやりとしたその感触は、非常にさわやかなものだった。
「はい、顔剃りおしまいです」
「ここからは交代して、洗髪しますね!」
スライム女の言葉を引き継ぐように、短髪のスライム少女が声を上げた。
「濡らしまーす」
最初に頭髪に湿り気を与えたときの要領で、スライム少女が手の表面に水分を滲ませ、髪を濡らしていく。
「じゃあ、洗いながら頭皮マッサージもしますねー」
スライム少女はそう告げると、男の頭髪の中で指を動かした。
指先を頭皮に押し当て、頭頂に向けて皮を寄せるようにしながら、髪を洗っていく。
髪を湿らせる粘液が、髪の切れ端や汚れを溶かせるよう、彼女はよくかき回しては頭皮を圧迫した。
彼女の指の動きに、毛根に溜まっていた脂質や汚れが絞り出され、青い粘液が溶かしていく。同時に、皮膚を揉むことで頭部のコリがほぐれていくようだった。
「あぁ・・・」
スライム少女の指に、のどから声を絞り出しながら、男は心地よさに身をゆだねた。
髪と粘液と指がこすれる音が頭に響き、頭皮と頭蓋骨の間の血液が指の動きによって攪拌されていく。
心地よさが、男に眠気をもたらし、意識を奪っていった。
「はい、おしまいです」
だが、男が眠りに至るより前に、スライム少女が頭皮に押しつけていた指をゆるめた。
頭を圧迫していた指先が離れ、髪にへばりつく粘液がスライム少女の指へと吸い上げられていく。
手櫛で髪を梳くように、男の髪を一通り拭うと、彼女は指を頭から離した。
「はーい、きれいになりましたー」
髪にかすかに残る水分が、男の頭に程良い涼しさとさわやかさをもたらした。
「頭、失礼しますね」
いつの間にか歩み寄っていたのか、長髪のスライム少女が、手にしていた粘液の固まりを男の頭に押し当てた。すると粘液は、男の頭髪の間に入り込み、残る水分を吸い上げていった。
「はい、これで全部おしまいです」
「お疲れさまでしたー」
二人のスライム少女が、散髪の終了を男に告げた。
しかし二人とも男の左右に立ったまま、安楽いすを起こして男を起こそうとする気配がなかった。
「ええと・・・」
「あ、料金のお支払いですが・・・」
「想像ついていると思うけど、いつも通り」
「精液払いでお願いしますね」
スライム少女二人の言葉を引き継ぐように、男の頭の方からスライム女の声が響いた。
直後、男の頭に弾力のある塊が押し当てられた。同時に、安楽いすと男の上に覆い被さる粘液膜にスライム少女が手を触れ、粘液が男の肌をなで始めた。
「うぉ・・・!」
「ご気分、いかがですかぁ?」
男の頭に乳房を押し当て、顔をのぞき込みながらスライム女が問いかける。
だが、男に答える余裕はなかった。スライム少女二人が体にのしかかる圧迫感と、イスと体に被せられた粘液膜のうごめきが、体全体を苛んでいるからだ。
「いつもなら、体の末端からですけど、今日は趣向を変えてみました〜」
男はスライム女の言葉に、胸の内のいやな予感が的中したことを悟った。
もともと、床屋で髪をすっきりしたいと言い出し、妻であるクィーンスライムと床屋プレイをする事にしたのは彼だったが、ここまでされるとは思わなかった。
「はぁい、お顔失礼しま〜す」
スライム女は、頭に押しつけていた乳房を離すと、男の顔の上で一度膨張させてから、ゆっくりと乗せた。
青く透き通った粘液が男の視界一杯に広がり、男が目を閉じた直後、圧迫感が額から口元までをおそった。
粘液が男の鼻や口を押さえるが、ごくわずかな隙間を通じて呼吸はできる。しかし、十分に呼吸できるとはいえず、息苦しさが男にもたらされた。
一方、二人のスライム少女は、男の胸と太腿に、それぞれ自身の胸を押しつけ、両手で薄く広がる粘液膜越しに男の体を撫でていた。
二組四つの手のひらが、青い粘液を擦り、男の肌をくすぐる。スライム少女の手が通り過ぎると、粘液膜の表面にごく僅かなさざ波が生じ、粘液膜を通じて男の肌にうねりをもたらした。
「うふふー」
「ふふっ・・・」
短髪と長髪、二人のスライム少女は口元に笑みを浮かべながら、手のひらで男の二の腕を、腹を、腰を、足を撫でつつ、薄い胸を押し当てながら体を揺すった。
手のひらより遙かに広く、圧迫感も強い二人分の擦り付けは、男の太腿と胸板を強く刺激する。
男の体を覆う粘液も、二人の動きに大きなうねりを生み出し、彼の体をくすぐった。
二人の胸と手。たった六つしか彼の体を擦っていないにも関わらず、粘液膜の内側では無数の指や手が、彼の体を撫で擦り、くすぐっているかのようだった。
「・・・!・・・っ・・・!」
スライム女の乳房の下で、男が低く声を漏らした。
すでに彼の股間は、青い粘液膜を押し上げて屹立しており、小さく揺れている。
しかし、スライム少女たちは肉棒に触れることなく、男の体を撫でるばかりだった。
「そろそろですかぁ?」
スライム女がそう問いかけると同時に、彼の顔を覆っていた粘液の塊が持ち上げられた。
「ぷはっ!」
口元から鼻が解放され、男は飛び上がらんばかりの勢いで顔を持ち上げ、空気を求めてあえいだ。
興奮と酸欠で荒く息をついていると、スライム女が彼の横へ移動し、スライム少女は手と胸を離して男の頭を挟むように立った。
「上、乗りまーす」
床を覆う粘液が盛り上がり、スライム女の足下に足場を作る。彼女はそのまま安楽イスをまたぐと、男の腰のあたりで膝立ちになった。
ちょうど、屹立の真上に彼女の両足の付け根が来る位置だ。スライム女の股間は、もちろん一本の毛も生えておらず、それどころか亀裂すらないつるりとしていた。
「ふふ・・・」
彼女は股間に手を伸ばすと、粘液で構成された指を、なにもない股間に押し当て、突き入れた。
粘液は彼女の指をにゅるりと受け入れ、下腹の青を透して淡く見せていた。
彼女の下腹の中で、指先が小さく円を描くように動き、くちゅくちゅと濡れた音を立てる。
指に粘り付く、青いスライム女の体は、男にその内側の感触を容易に伝えた。
やがて彼女は指を股間から引き抜くと、ゆっくりと膝を屈めて腰を下ろし始めた。同時に、ベールのように肉棒を覆っていた粘液膜が破れ、男の屹立が空に晒された。
やがてスライム女の股間と男の肉棒が触れあい、粘液の中に屹立が入り込む。
「うぅ・・・!」
温もりを帯びた粘液をかき分けていく感触に、男は声を漏らした。
スライム女は男の表情に笑みを浮かべながら、静かに腰をおろし、ついに男の腰の上に座った。
屹立の根本までが彼女の体内に没し、青い粘液の体を透かして肉棒がふるえていた。
「うぅ、ぐ・・・!」
「あれー?入れただけなのに、急に静かになりましたねー?」
「そんなに気持ちいいんですかー?」
男の頭を挟むように立つスライム少女が、くすくすと笑いながら言った。
「気持ちよすぎて動けないなら」
「わたしたちが気を逸らさせてあげまーす」
彼女たちは膝を屈めると、左右から男の頭に、そのスレンダーな体を押しつけた。
薄いながらも柔らかな胸が左右から押しつけられる。スライム女の時のような重量感や圧迫感はないが、それでも乳房の柔らかさは男に十分伝わった。
「よい・・・しょ・・・」
「ん・・・っと・・・」
スライム少女たちが、体を上下左右に揺らし、男の顔をゆっくりと擦る。
バラバラな動きではあったが、それでも男の意識を股間から剃らすには十分だった。
「うぅ・・・」
「あらあら、女の子二人に奉仕してもらって夢見心地・・・」
スライム女は男にそういうと、小さく腰を動かした。
軽く、円を描くような動きをほんの一度だけ。しかし、その身じろぎと対して変わりないように見えた動きとは裏腹に、彼女の体内では粘液が大きく蠢いた。
屹立を包み込む粘液が、渦を巻くように動き始めたのだ。
屹立の形に合わせ、ゼリー状に凝固していた彼女の体内の粘液が、渦によって砕け、いくつかの塊になりながら肉棒の周りを巡り始める。
塊の作り出す僅かな凹凸が、間を埋めるように滲んだ粘液とともに、屹立の表面を擦った。
「っ!」
スライム少女二人の乳房の間で、凝固した粘液の摩擦の刺激を受けながら、男は体をこわばらせた。
根本近くも、張り出したカリ首も、先走りを滲ませる鈴口も、弱いところも堅いところも関係なく、粘液が擦るからだ。
敏感な亀頭を粘液の塊が、己を削りながら擦っていく。そしてかすかな痛みさえ感じそうな摩擦の直後、柔らかな粘液が粘膜を優しく愛撫する。
硬度の異なる二種類の粘液の摩擦が、男を責め立てた。
「うー・・・こんなにがんばってるのにー」
「もー!こっちも気持ちいいでしょー!」
スライム少女二人が、身悶えする男にそう声をかけるが、男に返事する余裕はなかった。
「えーい、仕方ない」
「わたしたちも!」
二人は安楽イスを包み込む粘液に体を押しつけると、その体を構成していた粘液をイスの粘液にとけ込ませた。
直後、男の胸の上を覆っていた粘液膜が膨れ上がり、スライム少女二人の上半身が現れる。
「これなら」
「どうだ!」
二人は同時に声を上げると、男の上半身に左右から抱きついた。
先ほどまで膜状に男を覆っていた粘液が、二人のスライム少女となったため、男の胸板に二人の乳房が直接押しつけられる。
彼女たちの乳房の先の、粘液を凝固させて再現した突起が、男の体に押し当てられた。
「えいえい!」
「どうだ!」
男の体を直接体で擦りながら、二人はスライム女が男に与えている快感に立ち向かった。
「あらあら、一生懸命ねえ」
スライム女は、二人の少女の背中を見下ろしながらほほえむと、両手を伸ばした。
そして、男のへそのあたりから生えている二人の背中に、手のひらを当てた。一瞬の接触の後、彼女の手のひらがスライム少女たちの粘液にとけ込む。
その瞬間、二人は動きを止めた。
「ふゃぁああああっ!?」
「んんっ・・・!?」
体に直接そそぎ込まれた快感に、短髪が口を開いて声を上げ、長髪が喘ぎ声をかみ殺す。
スライム女の手を伝い、男の屹立の感触が、スライム少女たちに届けられたのだ。
腹の奥を押し広げる肉棒と、体の芯を炙る熱。その二つがもたらす快感さえもが、直接スライム少女たちの意識にたたき込まれた。
「さ、この娘たちも楽しみたいそうですから・・・」
スライム女の言葉の後、屹立を包み渦を巻く粘液が、回転をそのままに屹立を軽く締めた。
凝固した粘液の破片も、さらさらと流れる粘液もそのまま、圧力だけが屹立を襲う。同時に、彼女の体内の熱が少しだけ高まり、男に快感をもたらした。
「ぐぅ・・・!」
男が、腹の奥で膨らみつつある射精の予感に、声を漏らした
「ほら、あなたたちも・・・」
「んぁあ・・・!」
「っ・・・!」
スライム女がそういうと、スライム少女たちは声を漏らしながら、ぎこちない動きで男への愛撫を再会した。
両腕に力を込め、体を揺すり、薄い乳房とその先端、鳩尾から腹にかけてを男の体に擦りつける。
粘液が構成する柔らかな体が、熱を帯び、圧力を変えながら押し当てる様子は、男にその全身を巨大な女陰に挿入しているかのような錯覚を与えた。
いや、それは錯覚でも何でもなかった。この集落跡こそクィーンスライムの巣で、この建物はクィーンスライムの体内。その中でこうして体を重ねているのは、もはや全身を突き入れているに等しかった。
「・・・っ!」
男が声にならないうめき声を漏らし、精液を迸らせた。
スライム女の体内の渦の中に、一筋の白が混ざり込み、渦の流れにあわせて広がっていく。
「ん・・・!」
「あぁぁ・・・」
「あふ・・・ぅ・・・」
スライム女が唇を軽く噛みながら声を漏らし、スライム少女二人が喘ぎ声をあげる。
三者が共有していた体内の感覚に、射精の勢いと熱が加わり、同時に達してしまったのだ。
男とスライム女とスライム少女たち。四人はしばしの間、同時に絶頂すると、ほぼ同時に全身を脱力させた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
絶頂の余韻に浸りながら、男は喘ぎ、スライム少女たちは体を男に預け、スライム女は虚空を見つめていた。
そして、スライム女の体内で、屹立から延びる白濁の渦が、青い粘液の中に溶けて消えていった。
「ふふ・・・ごちそうさま・・・」
一人早く呼吸を落ち着かせたスライム女が、そう呟いた。
「さ、みんな寝室に戻りましょうか」
「えぇ・・・?」
「わたし、まだ・・・」
スライム女の言葉に、短髪が声を上げ、長髪がゆるゆるとスライム女を見上げた。
「ここではおしまい。続きは寝室で、よ」
彼女は男に顔を向けながら続けた。
「まだ、頑張れますよね?」
「あぁ・・・支払いも終わってないしな・・・」
彼女の問いかけに、男は頷いた。
12/10/14 12:44更新 / 十二屋月蝕
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