連載小説
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一話 条件って、そんなんでいいの?
―――――― 天界 主神の宮殿


よう、おっさん。

「何じゃ、お主か。つい先程警備からアホみたいなスピードで扉を蹴破った者いると報告が来たから敵かと思うたわい。」

呆れた様子で、おっさん(主神)が俺を見据えた。

うっせ、一々面倒なんだよ。手続きに二時間なんか待ってられるかっつーの。

「やはり、こんな厳重にする意味無いかのう…?」

無ぇよ。ってか、何で手続きあんだよ?ここにゃアンタの命狙うような奴なんて居ねぇんだし。

「何分、周りがうるさくてのう。特にウリエルとかラファエルとか。」

ああ、あの堅物共なら言い兼ねねぇな…。

「で、何用なんじゃ?」

ああ、忘れる所だった。俺、下界に行きたいんだよ。

「なるほど…って何じゃとお!?」

うるせぇな、宮殿に響いてんだよ。

「ラグナお主、今天界がどのような状況か分かって言うておるのか!?」

勿論、おっさんを信仰してる教団って奴等がこないだ魔王が代替わりした魔物絶滅させようとしてんだろ?

「そうじゃ。…全く、ワシの教えは人間達の繁栄ではないというのに。」

ま、人間達も必死なんだろ。気を落とすなって、おっさん。

「うるさいわい…。で、理由は何じゃ?」

あ、やっぱ理由無いとダメ?

「当然じゃ!お主は運命神、今この状態を解決出来るのはお主しかおらんのじゃ!!」

えー…。
あ、強いて言うならバカンスだな、バカンス。

「バカンスって…。」

ほら、飯を食わなきゃ戦は出来ぬって言うじゃねぇか。

「意味が違うわバカタレが!」

怒ると血圧上がるぜ、おっさん。

「大きな世話じゃ!!」

何でも良いからさ、早く許可出してくれよ。

「まあよい、確かにお主にはここ最近休みがなかったからのう。」

やりぃ!やっぱおっさんは話が分かるぜ!
さぁて、下界着いたら何すっかな〜。あ、確か「かふぇ」ってとこで「こーひー」って飲み物あったな、あれ飲みたいな♪

「…但し!」

なんだよ、出鼻挫きやがって…。

「一つ条件がある。」

めんどくせぇな…。条件?

「下界で恋人百組結んでこい。」

は?

「聞こえんかったか?下界で恋人を百組結んでこいと言ったんじゃ。」

…条件って、そんなんでいいの?

「何か文句でもあるのか?」

いや、楽できたらそれに越したことはねぇ。
その条件、飲むぜ。

「では、達者でな。」

おっさんもな。ポックリ逝くなよ。

「早く行かんか。」

んじゃな!


俺は宮殿を後にし、下界の入り口であり、天界の出口である門へと急いだ。


―――――― 天界の門

「あら、ラグナ君じゃない。」

あ?

一時的に人間になるための手続きを待っている途中、不意に声を掛けられたので振り返ってみる。

あ、姐さん。何してんだ?こんなとこで。

そこにはこれ以上無いというくらい極どい格好をした女性、姐さん(堕落神)が立っていた。

「まあ、ちょっとね。ここに来る子達をパンモデウムに堕落させようと思って♪」

相変わらずえげつねぇな…。そんなだからおっさんに怒られて堕天すんだよ。

「ラグナ君も堕天してみない?楽しいわよ?」

結構だよ。今のままの方が性に合ってるからな。

「あら残念…。でも、堕天したくなったらいつでも言ってね♪」

へーへー。

「ラグナ様、準備ができましたので此方へ。」

見るからに堅そうな天使が
門から顔を出した。

あいよ。

「ラグナ君、下界に行くの?」

あ?ああ。久しぶりに休暇取れてさ、条件付きだったけど…。

「条件?」

ああ、下界で恋人百組結んでこいってさ。

「ふ〜ん…。」

んじゃな、姐さん。

「ちょっと待って。」

ん?

「じゃあ、私の頼みも聞いてくれないかしら?」

えー…。

「そんな事言わずに、お願い♪」

…ま、言ってみ。

「魔物増やしてきて♪」

…は?

「どう?ラグナ君がおじ様に頼まれた頼みにピッタリだと思うんだけど?」

つまり、俺は魔物のアベックを百組結んでこいと?

「ええ、流石ラグナ君は物分かりが良いわね♪」

それやって俺に何か利点あんのかよ。

「ラグナ君の仕事が楽になるわ♪」

…マジで?

「マジもマジ、大マジよ♪」

なら受けてやるよ。

「ありがとう♪人間相手よりはやり易い筈だから、頑張ってね♪」
「あの、まだでしょうか?」

痺れを切らしたのか、門から天使が顔を出した。

ああ、悪い悪い。
んじゃ、またな姐さん。

「気をつけてね。」

堕落神に見送られながら、俺は天使に続いて天界の門を出て人間界の門を潜った。
11/12/03 04:19更新 / 二文字(携帯版一文字)
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■作者メッセージ
運命神のハチャメチャ奮闘記、始まるよ!

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