連載小説
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何か…すいません
―――――― 魔王城 地下牢


「何なんだよ…一体…。」

さっきの騒動から数十分、抵抗も虚しくあっしは今両腕を後ろ手に縛られて牢屋に入れられている。つーかあんな大人数の番兵相手に逃げ切れるかっつの。しかも何人か人間として疑うような、まるで魔物みてぇな体してたし全員女だったし。…ん?魔物?全員女?……………まさか、まさか…な?無い無い、あり得んって。うん、そう。これは夢、夢なんだ。イッツドリーム。ほら、目を覚ませあっし。さっさと起きて愛猫を撫でまわそう。ほら起きろ。起きろって!そうか、起きるための刺激が足りないんだな。待ってろ、今そこの壁に頭打ちつけてこのカオス☆ドリームから覚めるから。

「ふんっ!」

ゴッ!!

「うごふっ!!」

痛ぇ…痛ぇよ…。中学生の頃の黒い歴史よりも痛い…。じゃあ…これは夢じゃねぇって事だよな。此処はクロビネガの図鑑世界なんだな?そうなんだな?嘘だと言ってくれよバーニィ!!

「ドタバタ煩い。静かにしていろ。」
「…………あ、はい。」

牢番をしている薄い水色の髪をした騎士風の女性にたしなめられてしまった。
…多分、あの人(?)はデュラハンだな。図鑑と鎧がそっくりだし。美人だなー…。
…万事休すか。此処が本当にクロビネガの世界なら多分殺される事は無いだろう。だがまぁ、強姦されるかレイプされるか姦淫されるかのどれかなんだろうな。何この世界怖い。

「…すいません。」
「…何だ?」
「…あっし、このままだとどうなってしまうんです?」
「…………………大丈夫だろう。…多分。」

あ、大丈夫じゃ無いっぽい。十中八九〇される(性的な意味で)。流れ出る汗が止まらない。栓の壊れた蛇口みたいに背中を冷たい汗が伝っていく。


―――――― 一方、魔王城 謁見の間


バァン!!

荘厳な雰囲気を漂わせる室内に、大きな音を立てて扉が開かれる。

「あら、ネリダじゃない。どしたの?血相かえて。」
「ま、魔王様!侵入者を捕らえたとは本当ですか!?」
「え?…ああ、確かさっきそんな報告があったわね。それがどうかしたの?」
「実は――」


―――――― 再び地下牢

「…おいお前、出ろ。」
「…………は?」
「魔王様がお呼びだ。さっさと出ろ。」

牢屋の端でいじけてたら牢屋の扉が開かれてさっきのデュラハンっぽい女性が目の前まで来ていた。
…え?今なんて?魔王?まおー?それってあれ?シ〇ー?それともエス〇ーク?…まあ、冗談は置いといて。魔王…って事はアレか、サキュバスか。

「早く立て。魔王様を待たせてはならん。」
「ヤです。」

いくら此処がクロビネガの図鑑世界だっても命と貞操の保証が無い。特に後者。しかも魔王。いくらサキュバスでもそれは変わりないしきっとアレだ、使ってくる魔法はメラ〇ーマとかマヒ〇ドクラスに違いない。んな蟻が竜巻に特攻するような自殺行為は御免だ。

「いいから来い。」
「いやっ、ちょっ…待っ!HA☆NA☆SE!!」

引きずらないで、っていうか首!首入ってる!!ギブギブウウゥ…………!!


―――――― 謁見の間


「魔王様、件の人間を連れて来ました。」
「ご苦労様♪」

暫く引きずられてたどり着いたのは、いやに重圧的な雰囲気の部屋だった。来る途中、やたらと魔物の皆々様に熱視線を送られた。恥ずかしさで軽く心が折れかけたよコンチクショウ。…まあ、お陰で腕の縄はほどけたけどな。せめて固結にしとけよ、何で二重蝶結。

「おい、早く立たないか。」
「はいはい…。」

ここまで来たらもう覚悟を決めるしかない。えーい煮るなり焼くなり好きにしろってんだい!立ち上がる序に縄を掴む手を離して今まであっしの動きを阻害していた物を地面に落とす。

「な…っ!?」
「あら…。」

予想通りの反応が返ってきた。デュラハンっぽい女性は目を見開かせている。あまりにささやか過ぎる抵抗だが、こうやってあからさまに驚いてくれるとやった甲斐があったと思える。ドヤァ。

「あ〜…抵抗する気は全く無いんでご安心を。」

デュラハンっぽい女性が腰の剣に手をかける前に両手を挙げて降参しておく。驚いてくれりゃそれでいいし。

「うふふ…。いいわ、外して頂戴。」
「はっ。」

デュラハンっぽい女性は一言返事をすると、すぐに礼をして部屋を立ち去っていった。

「…貴方、面白いわねぇ。」
「そいつぁどうも。」

うわ、すっげー美人。デュラハンっぽい女性はクールビューティーって感じだったけどこの人はアレだ…えっと…形容し難い位の美人。け…決して言葉が思い付かなかったとかそんなんじゃ無いんだからね!

「…で?あっしに何か用ですか?レイプですか、レイプなんですか。」
「あら、して欲しいの?」
「嫌だから言ってるンですよ。誰が望んでされるんですか。」
「うちの旦那♪」

うおーう、マジでか。元勇者様はドマゾなのかよ。仕事しろよ。…いや、今は魔界広げる事だから仕事はしてるか。

「ねぇねぇ。貴方、異世界の住人なんでしょ?」
「…へ?あ、ええ。」

あれ…あっし、自分が異世界人なんて自己紹介したっけ?…いやいや、してないしてない。

「先に謝っておくわ。うちの部下の失態を。」
「…失態?」
「ええ。…ネリダ、此方へ。」
「はい。」

突然、すぐそこの暗がりから幼女が二人出てきた。しかも歳二桁いくかいかないかって位の幼女。片や見た目からおもっくそ魔女だしもう片方もやたら露出が高い服を着ていた。

「初めましてなのじゃ。わしは魔王様の相談役であり魔法実験署長のバフォメットのネリダ=ランプロン。ネリダと呼んでくれて構わん。」
「助手のマリネ=ウェリタースと申します。すいません、私が誤って魔法を一文字読み間違えてしまったばっかりに…。」

…ん?今何つった?

「『魔法を一文字読み間違えた』?」
「は、はいぃ…!ごめんなさいぃ!」

マリネと自己紹介した魔女は顔を隠すように被っている帽子のつばを引っ張る。つまり何だ、あっしは手違いで平穏な毎日からこんなカオス空間へ飛ばされたのか。

「…ふ」
「「「ふ?」」」
「ふざけんなああああああ!!」


――――――


「………………。」

ふと気が付くと周りには誰も居らず、部屋は半分ぶっ壊れた玉座や所々抉れた柱等戦争でも起きたのかというような惨状になっていた。

「…お、落ち着いたかの?」
「もう暴れない?」
「あうあうあうあ…!」

唯一無事な柱の影から件の幼女二人と魔王がひょっこりと顔を出してきた。約一名は大分混乱しているが。言葉から察するにこの惨状はあっしがやったらしい。空手やってるからって玉座破壊とか石柱抉るとかどこの独歩。そして今気がついた。手が凄く痛い。

「…あー…。すいません、取り乱しました。もう大丈夫ですよ。」
「ほ、本当じゃな?奇声とかあげんな?」
「はい。」
「針みたいなやつも投げない?」
「投げません。」
「あうあうあうあ…。」
「何か…すいません。」

凄い恐る恐る石柱から出てくる三人。仮にも魔王をこんなにビビらす程暴れたのか、あっしは。針…?そんなモン持って…あ、ドライバーが無い。何処に…うおっ!?玉座に刺さってる!?

「い…一時はどうなるかと思ったのじゃ…。」
「全くね…。この城が壊れちゃうんじゃないかと思ったもの。」

あっし暴れすぎ。
12/06/17 23:40更新 / 二文字(携帯版一文字)
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■作者メッセージ
明日小説で使える(かもしれない)無駄知識コーナー!

皆さんは稲荷っていうと誰を思い浮かべますか?
多分大半の方が元妲己の「玉藻」とか安倍晴明の親と伝えられる「葛葉(くずのは)」とか「九重」を思い浮かべるでしょう。
ですが、彼女たちは元々は妖怪であり神様ではありません。
彼女たちは地元の人達が祟りを恐れて祭り上げた所謂「偽」神様なんです。まあ、神様に変わりは無いので偽物も糞もないんですが。

さて、実は本当のお稲荷様は他に居ます。
お名前は「荼吉尼(だきに)」と言い、現在は稲荷大明神(主に妙教寺)に鎮座なさっておいでです。
元々は仏教の女神様で、持物は宝玉や剣、稲束などで五穀豊穣や憑き物落とし、開運出世など様々なご利益があります。
ところが一つ注意。稲荷信仰は一度祀ると自分の命と引き換えに最後までその信仰を受持しなくてはなりません。下手に途中で止めてしまうとそこでお家か本人が没落、もしくは災厄が訪れるとされています。
ゆえにそこなモフモフスキーの方!そして稲荷好きの方!!迂闊に「俺稲荷信仰だからwww」とか言わないように!!言霊が幸う国である日本では神様といえどマジに取っちゃうから!!いいね、わかった!?

因みに妲己は日本に来て「玉藻前」という女性になって鳥羽上皇を惑わしたけど正体見破られたから安倍泰成(晴明の子孫)に追われて蝉に化けたけど鏡ヶ池という池に正体映ってバレてフルボッコにされて殺生石になりました。


…このコーナーではこんな感じに知ってる事を晒していきます。皆様の小説作成に少しでも役に立てばとおもいます。
ではまた次回

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