第一夜
とある日の昼間、アカネと宴会をしていたミカゲの家に差出人不明の荷物が届いた。
その中には、一台のカラクリと一通の手紙が入っていた…。
手紙には「親愛なる貴女へ 初めまして、あっしは名もない科学者でございます。突然の荷物に驚かれているでしょうが、どうぞご安心を。爆発するような物ではございません。実は、友人伝で貴女がカラクリに興味があるとお聞きしました。不躾ではございますが、一つ頼まれて頂きたいのです。同封されているのは私が開発した「カメラ」なるもので、これは魔力を貯める事によって映像と音声を記録する事が出来るカラクリになります。さて、頼みと言うのは、このカメラのテストでございます。テストといっても、貴女方が撮影した内容を保存し、編集して放映していただければそれで構いません。」とだけ書いてあった。
それをミカゲと一緒に読んでいたアカネの一言で、全てが決まった。
「いいじゃない。面白そうだし、やろうよ!!」
「…そうですね。」
ミカゲは内心呆れながらも、一度言い出したら止まる事を知らない友人のアカオニに賛成する。
その後、話題は内容を何にするかというもので二人の会話は嘘の様に華やいだ。
そんな二人の元に、ある魔物からおいしい話が舞い込んできた。
『その「カメラ」とやらを使い、レスカティエでデルエラ様の取材をしませんか?』と、いうのである。
聞けば、レスカティエまでの旅費も負担してくれるらしい。
二人は一も二もなく飛びついた。
デルエラの噂より何より、楽だったからだ。更に、それだけではつまらないと思ったアカネは「せっかくレスカティエまで行くんなら、序に何かやろう!!」と言った。するとミカゲは、ある興味深い企画を提案した。
そして迎えた取材当日。二人は知り合いのリンとエリザを会社から無理矢理連れ出し、レスカティエのデルエラ城の一室でオープニングを飾るデルエラのインタビュー取材が行われた。
機材の調子は上々、出演者の二人も、最初こそぶつくさ文句を言っていたものの、デルエラと対面してからはウキウキでインタビューをしていた。
取材が終わると、出演者二名を前にミカゲがおもむろに件のカメラを回し始めた。
これから一体、何が始まるのか…。>一切内容を聞かされていない女が一人いた。
メデューサのリンである。
彼女は、アカネから「今夜はこの城に一泊し、そこで帰りの企画をみんなで考える」と言われていた。
思い切りにやけながらのアカネの巧妙な嘘を、彼女は信じていたのである。
―――――― レスカティエ
「…さて、ローズから出てきてデルエラ様にてインタビューをさせていただきました。」
カメラのフレームには、何故か意気揚々のアヌビスと何がなんだか分からない、と言った表情でカメラとアヌビスを交互にみるメデューサが映っている。
場所はレスカティエの街のど真ん中。魔界化した地域の特徴でまだ夕方だと言うのに、空はどんよりと暗い。しかも時間が時間で、辺りには人っ子一人、魔物一人もいない。
「さて、リン。」
「…何よ?」
「私達は一仕事終わったと言うことで、せっかくレスカティエまで来たんだからただで帰るじゃつまらないだろう?」
「まあ、確かにそうね…。」「だから、ここで企画を考えて帰ろうじゃないか。」
「…それって、普通は考えてから来るんじゃないの?」
リンがふと思った事を口にした途端、アカネの目がギラリと光り、手招きでエリザを呼んだ。
「実は、考えて来ているんだ。」
「…へ?」
企画を考えて来ている?おかしい、聞いていた話とは違う。
リンの控えめな胸に、大きな不安がよぎった。
そんなリンを尻目に、エリザはアカネからあるものを受け取り、フレームの中に戻ってきた。
「な、何だ安心したわ。もうあるんじゃないの、エリザ。」
「魔物娘どうでしょう、デルエラ様の取材でレスカティエまでせっかく来たんだから何かやってから帰ろりましょう企画第一弾!!」
エリザが持ってきたのは、サイコロの目と
@.ラ・コス
A.アスライナー
B.サッテライナー
C.らくらく
D.ドリームわらわら
E.ローズタウンリムジン
と書かれた一枚のプレート。
何だ、何を始める気だ!?不安がさらに募るも、彼女に考えている余裕などなく、とにかく話を合わせるしかなかった。
「リン、これは一体何だと思う?」
「これは…えーっと、観光地かなんかかしら?」
「観光地!」
「ぶふっ…!」
リンの発言に、アカネが小さく吹き出した。
一体何を笑う事があるのだろう、そうでなければなんなのだ。と半ば怒気を含んだ表情でアカネを睨むリン。
そんなリンに、エリザはいよいよ企画の全貌を明かした。
「これはな、馬車の名前だ。」
「ば、馬車…?」
「ああ、長距離馬車の名前だ。」
「な…何で?」
冷や汗を垂らしながら、小首を傾げるリン。
「我々はこれから、あてのない旅へ出発する。…つまり、任せるのはサイコロの出た目だけだ。」
「ちょっ…聞いてないわよ!?」
「ぶはははははっ!!」
リンの叫ぶ声と共に大爆笑するアカネ。
「何なのよ長距離馬車って!?そもそも企画はみんなで決めるって言ってたじゃないの!!」
「ああごめん、それ嘘。」
「はあああああっ!?」
聞いていたものと全く違う現状に絶叫するリンに、しれっと白状したアカネ。
但し、悪びれる様子は微塵もない。
「じゃじゃじゃじゃあ、行き先をぉ、説明しましょうかぁ。ミカゲ、よろしく。」
「聞きなさいよ!!」
「@のラ・コスはですねぇ、ローズから程近いクレイタウン行き。Aのアスライナーもラ・コス程近くまでは行きませんが、それでもミラータウン、まだローズへは近づきますね。Bのサッテライナーは…残念ですが、ローズとは反対のシム・シティ行きになります。」
「ちょっ、反対!?帰る為にやるのよねぇ、これ!?」
「まあ、そこはお約束ってことで…。」
「要らないわよ、そんなお約束!」
「はいミカゲ、続けて。」
「了解しました。Cのらくらくはその名の通り、楽にローズへ近づきます。Dのドリームわらわらは最悪です、反魔物国家のレイディア。しかもローズとは反対に位置してます。Eのローズタウンリムジン、これはもう言わずもがなですね。」
「何で企画なんかで命張らなくちゃいけないのよ!?」
「だって…ねぇ?」
「ねぇ?じゃないわよ!!」
「リン、落ち着け。」
今にもアカネに襲いかかりそうになっているリンを、エリザが肩を軽く叩いてひき止める。
「…じゃ、リンも落ち着いた所で、はい。」
そう言ってアカネがエリザに小さな箱の様な物を投げ渡した。
「…何だ、これは。」
「サイコロ。」
それは、アカネが先程まで酒の摘みにと食べていたキャラメルの空箱で作ったサイコロ。
「こんなサイコロに運命を決められるの、いやね…。」
「全くだな…。しかしまぁ、やるしかないだろう。これで。」
運命の第一選択
「「何が出るかな、何が出るかな♪それはサイコロ任せよ♪」」
妙にノリ良く歌を口ずさみながら、エリザは辺りをくるくると回る。
「とうっ!」
「Dは勘弁っ!」
ポイ、と投げられたサイコロは、石造りの街道をコロコロと転がってゆく。そして、小石に引っ掛かって止まった面に並んでいた○は三つ。
B.サッテライナー
=シム・シティ
=反対
「ぶわははははは!!」
「…最悪。」
「…………。」
呆然とサイコロの出目を見つめるエリザ。もう見るのも嫌だとばかりにサイコロから目を離し、一言呟くリン。そして、これ以上無いって位の大爆笑をするアカネ。
「…これ、本当に行くのか?」
「ふっふっふっふ…。行きましょう。」
その中には、一台のカラクリと一通の手紙が入っていた…。
手紙には「親愛なる貴女へ 初めまして、あっしは名もない科学者でございます。突然の荷物に驚かれているでしょうが、どうぞご安心を。爆発するような物ではございません。実は、友人伝で貴女がカラクリに興味があるとお聞きしました。不躾ではございますが、一つ頼まれて頂きたいのです。同封されているのは私が開発した「カメラ」なるもので、これは魔力を貯める事によって映像と音声を記録する事が出来るカラクリになります。さて、頼みと言うのは、このカメラのテストでございます。テストといっても、貴女方が撮影した内容を保存し、編集して放映していただければそれで構いません。」とだけ書いてあった。
それをミカゲと一緒に読んでいたアカネの一言で、全てが決まった。
「いいじゃない。面白そうだし、やろうよ!!」
「…そうですね。」
ミカゲは内心呆れながらも、一度言い出したら止まる事を知らない友人のアカオニに賛成する。
その後、話題は内容を何にするかというもので二人の会話は嘘の様に華やいだ。
そんな二人の元に、ある魔物からおいしい話が舞い込んできた。
『その「カメラ」とやらを使い、レスカティエでデルエラ様の取材をしませんか?』と、いうのである。
聞けば、レスカティエまでの旅費も負担してくれるらしい。
二人は一も二もなく飛びついた。
デルエラの噂より何より、楽だったからだ。更に、それだけではつまらないと思ったアカネは「せっかくレスカティエまで行くんなら、序に何かやろう!!」と言った。するとミカゲは、ある興味深い企画を提案した。
そして迎えた取材当日。二人は知り合いのリンとエリザを会社から無理矢理連れ出し、レスカティエのデルエラ城の一室でオープニングを飾るデルエラのインタビュー取材が行われた。
機材の調子は上々、出演者の二人も、最初こそぶつくさ文句を言っていたものの、デルエラと対面してからはウキウキでインタビューをしていた。
取材が終わると、出演者二名を前にミカゲがおもむろに件のカメラを回し始めた。
これから一体、何が始まるのか…。>一切内容を聞かされていない女が一人いた。
メデューサのリンである。
彼女は、アカネから「今夜はこの城に一泊し、そこで帰りの企画をみんなで考える」と言われていた。
思い切りにやけながらのアカネの巧妙な嘘を、彼女は信じていたのである。
―――――― レスカティエ
「…さて、ローズから出てきてデルエラ様にてインタビューをさせていただきました。」
カメラのフレームには、何故か意気揚々のアヌビスと何がなんだか分からない、と言った表情でカメラとアヌビスを交互にみるメデューサが映っている。
場所はレスカティエの街のど真ん中。魔界化した地域の特徴でまだ夕方だと言うのに、空はどんよりと暗い。しかも時間が時間で、辺りには人っ子一人、魔物一人もいない。
「さて、リン。」
「…何よ?」
「私達は一仕事終わったと言うことで、せっかくレスカティエまで来たんだからただで帰るじゃつまらないだろう?」
「まあ、確かにそうね…。」「だから、ここで企画を考えて帰ろうじゃないか。」
「…それって、普通は考えてから来るんじゃないの?」
リンがふと思った事を口にした途端、アカネの目がギラリと光り、手招きでエリザを呼んだ。
「実は、考えて来ているんだ。」
「…へ?」
企画を考えて来ている?おかしい、聞いていた話とは違う。
リンの控えめな胸に、大きな不安がよぎった。
そんなリンを尻目に、エリザはアカネからあるものを受け取り、フレームの中に戻ってきた。
「な、何だ安心したわ。もうあるんじゃないの、エリザ。」
「魔物娘どうでしょう、デルエラ様の取材でレスカティエまでせっかく来たんだから何かやってから帰ろりましょう企画第一弾!!」
エリザが持ってきたのは、サイコロの目と
@.ラ・コス
A.アスライナー
B.サッテライナー
C.らくらく
D.ドリームわらわら
E.ローズタウンリムジン
と書かれた一枚のプレート。
何だ、何を始める気だ!?不安がさらに募るも、彼女に考えている余裕などなく、とにかく話を合わせるしかなかった。
「リン、これは一体何だと思う?」
「これは…えーっと、観光地かなんかかしら?」
「観光地!」
「ぶふっ…!」
リンの発言に、アカネが小さく吹き出した。
一体何を笑う事があるのだろう、そうでなければなんなのだ。と半ば怒気を含んだ表情でアカネを睨むリン。
そんなリンに、エリザはいよいよ企画の全貌を明かした。
「これはな、馬車の名前だ。」
「ば、馬車…?」
「ああ、長距離馬車の名前だ。」
「な…何で?」
冷や汗を垂らしながら、小首を傾げるリン。
「我々はこれから、あてのない旅へ出発する。…つまり、任せるのはサイコロの出た目だけだ。」
「ちょっ…聞いてないわよ!?」
「ぶはははははっ!!」
リンの叫ぶ声と共に大爆笑するアカネ。
「何なのよ長距離馬車って!?そもそも企画はみんなで決めるって言ってたじゃないの!!」
「ああごめん、それ嘘。」
「はあああああっ!?」
聞いていたものと全く違う現状に絶叫するリンに、しれっと白状したアカネ。
但し、悪びれる様子は微塵もない。
「じゃじゃじゃじゃあ、行き先をぉ、説明しましょうかぁ。ミカゲ、よろしく。」
「聞きなさいよ!!」
「@のラ・コスはですねぇ、ローズから程近いクレイタウン行き。Aのアスライナーもラ・コス程近くまでは行きませんが、それでもミラータウン、まだローズへは近づきますね。Bのサッテライナーは…残念ですが、ローズとは反対のシム・シティ行きになります。」
「ちょっ、反対!?帰る為にやるのよねぇ、これ!?」
「まあ、そこはお約束ってことで…。」
「要らないわよ、そんなお約束!」
「はいミカゲ、続けて。」
「了解しました。Cのらくらくはその名の通り、楽にローズへ近づきます。Dのドリームわらわらは最悪です、反魔物国家のレイディア。しかもローズとは反対に位置してます。Eのローズタウンリムジン、これはもう言わずもがなですね。」
「何で企画なんかで命張らなくちゃいけないのよ!?」
「だって…ねぇ?」
「ねぇ?じゃないわよ!!」
「リン、落ち着け。」
今にもアカネに襲いかかりそうになっているリンを、エリザが肩を軽く叩いてひき止める。
「…じゃ、リンも落ち着いた所で、はい。」
そう言ってアカネがエリザに小さな箱の様な物を投げ渡した。
「…何だ、これは。」
「サイコロ。」
それは、アカネが先程まで酒の摘みにと食べていたキャラメルの空箱で作ったサイコロ。
「こんなサイコロに運命を決められるの、いやね…。」
「全くだな…。しかしまぁ、やるしかないだろう。これで。」
運命の第一選択
「「何が出るかな、何が出るかな♪それはサイコロ任せよ♪」」
妙にノリ良く歌を口ずさみながら、エリザは辺りをくるくると回る。
「とうっ!」
「Dは勘弁っ!」
ポイ、と投げられたサイコロは、石造りの街道をコロコロと転がってゆく。そして、小石に引っ掛かって止まった面に並んでいた○は三つ。
B.サッテライナー
=シム・シティ
=反対
「ぶわははははは!!」
「…最悪。」
「…………。」
呆然とサイコロの出目を見つめるエリザ。もう見るのも嫌だとばかりにサイコロから目を離し、一言呟くリン。そして、これ以上無いって位の大爆笑をするアカネ。
「…これ、本当に行くのか?」
「ふっふっふっふ…。行きましょう。」
11/12/08 20:46更新 / 二文字(携帯版一文字)
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