読切小説
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不思議の国の不思議な食事
 ふるん。ふるん。

「これはやっぱり……うん、さらに大きくなってるね」

 ジャケットをはだけ、ブラウスに包まれた胸を揺する。ブラはつけていない。
 え? 常識はどこ行った? おかしくないかって? 不思議な国で暮らす、淫らな茸のマッドハッターにはそんなもの必要ないのさ。

「どうだい? 前より大きくなってる気がするんだけど」

 ボクの愛しい伴侶に問いかける。返事はない。彼はテーブルに座り、黙々とボク特製の食事をとっていた。クロワッサンにハムエッグ、茸のソテーに茸スープ。茸多めなのはボクの趣味だ。
 全部平らげごちそうさまして、それでもキミは黙ったまま。ちょっと残念、キミが喜ぶ顔が見たかったんだけどなあ。
 いいさ。まだ、オードブルだからね。

「ごちそうさまかい? それじゃあ次の料理だよ」

 彼の手を引き寄せ、ボクの胸の下に押し当てる。手のひらが、ブラウスごしにボクの両胸を捉えた。それでも掌中に収まらず、あふれた肉がブラウスを擦る。肌がざわつき、微かに全身が弛緩した。ごつごつと角ばった男らしい手とは裏腹に、肌に触れる指の動きは繊細だ。薄い陶器に触れるように、服の上から肌の感触を確かめられる。

「ちゃんとつけてないよ……キミに外されるのは、なんだかこそばゆいからね」

 彼もここの流儀に随分染まってくれた。いつでもどこでも伴侶の体を貪れるのなら、必要のない下着をつける意味などないと、そう理解してくれた。
 その結果がこのたゆんたゆんのおっぱいなんだけれどね。ああいや、ボクは構わないよ? 乳首が擦れて気持ちよくなっちゃうのはちょっと困るけれど。
 それにね。

「そろそろ前を開けてくれるかな? ──まだ、服を汚すには早いだろう?」

 ぶるんっ。

 彼が三つ目のブラウスのボタンを外したところで、そんな音がした。まろび出たるは立派な双丘。表面をほんのり伝う甘い汗の雫。頂上には薄い桜色の突起。隆起したそれは外気に当たり、湧き上がる衝動に身をひくひくと震わせている。

「さ、メインディッシュだよ」

 かぷ、つぷ、と突起を──ボクの乳房の先端を唇で甘噛みされる。微かな甘い痛みと、ふつりと何かが切れる音。ボクの心臓の脈動に合わせ、白濁が彼の口内へとくん、とくんと流れ込む。
 彼が大好きな──ボクの母乳だ。

「う、ぁ……ぁ♡ ちゃん、とっ、こぼさ、ないで、味わってほしいな……♡」

 ゆっくりと、彼の吸引に合わせて母乳を流し出す。揉んだり、摘ままれたり、あまつさえ鷲掴みにされたりしなければ、勢いよくあふれ出すことはない。もう慣れたもので、彼の頭を撫でてあげるだけの余裕すらある。

「──はぁ、ぁ、……くく、まるで赤ちゃんみたいに……仕方ないなぁ♡ ちゃんとボクの分も残しておいてくれよ?」

 何せ、『食事』はまだまだこれからなんだから……♡





§





「さ。改めまして、いただきます」

 お色直しのティータイム。一仕事終えた後の紅茶は美味しい。味を確かめるために一口、唇を湿らせる程度に含む。舌を軽く左右に振ると、粘ついた糸が分かれて消えた。

「ん、紅茶の風味が台無しだって?」

 苦言に対するボクの反論に耳を貸さず、彼は二杯目の紅茶を注いでいた。湯気の立つ琥珀色の液体が注がれた後、ミルクを小さじに一杯だけ入れる。

「それだけで足りるのかい?」

 足りるそうだ。

「ふぅん……けど、せっかくボクが出したミルクなんだ、もっとたくさん味わってほしいんだけどな」

 ボクのみたいにね。そう言ってカップの中身の乳白色を傾けてみせる。しかし、彼は微妙な表情で無言を貫いた。どうやらミルクティーはお気に召さないらしい。

「美味しいんだけどな……飴玉食べてるみたいで」

 甘ったるいミルクの風味を口内で転がしながら考える。確かに、紅茶の味やら茶葉の香りやらがに甘ったるい乳の匂いで濁らされている。、紅茶として飲む分にはイマイチだろう。
 これはこれで、ボクは好きなのだけれど。

「ま、いいさ。ミルクティーが好みじゃないなら、別のやり方があるしね」

 カップを持ったまま席を立ち、彼の懐へ身を寄せる。椅子に座る彼の前に跪き、着直した衣装をさも当然のようにはだける。今度はボクだけじゃない、彼の下半身のそれも同じだ。

「わ、ぁ……♡」

 開いたジッパーの先、ボクの鼻先に隆々とそそり立つ陰茎。傘のように膨れた先端はてらてらとした赤黒い光沢を放っている。太い筋が入った幹は張りを保つための血を巡らせているようで、小刻みに脈動を繰り返していた。

「ふふっ……キミも待ちきれなかったんじゃないか♡」

 愛おしい。あぁ、何て愛おしいんだろう。こんなにも硬く、太く、張りつめて、ボクのためにここまで膨らませてくれて。鼻をつくような臭いでさえ、ボクの欲情を煽るだめのスパイスにしかなり得ない。
 キミがボクで欲情してくれている。たったそれだけのことが、こんなにも嬉しいなんて。

「ま、まずは慣らさないといけないね……」

 とはいえ今はティータイム。ボクは歓喜と欲情を内に押しとどめ、すみやかに準備を進めることにした。
 はだけた胸の上でゆっくりとカップを傾ける。たっぷりのミルクで人肌の温度になったミルクティーが、胸元を伝っていく。紅茶にしては粘り気のあるそれは、谷間の間で留まり溜まる。ボクが胸を揺すると、たぷん、たぷんと乳白の液面が揺れた。

「これで、よし……と。さ、じっくり味わってくれたまえ♡」

 ボクは両胸を持ち上げると、膨らんだ怒張の上まで持ってきた。彼ほど大きくない手ではしっかり支えることができず、溜まった白濁が垂れ落ちる。あっ、と少し甲高い彼の声が聞こえた。どうやら陰茎に触れてしまったらしい。その声を目安に、谷間に埋めるべきモノの場所を探り出す。そうして、そのままゆっくりと、手の力を抜けば──

(く、来る……にゅぷぷって、ボクの、胸、犯されてるっ……♡)

 彼の陰茎が、ボクの乳房の間を無理矢理にかき分けて、ねじ込まれて──

「──うぁ、あ、あぁっ……ぜ、全部、キたぁぁっ♡」

 ──ず、ちゅんっ♡

「あ、あぁ……ど、どう、かな……? ちゃんと、気持ち、い、いぃ、っ……♡」

 ぬらぬらとした液に浸された陰茎の雁首が、ボクの鼻先を文字通りくすぐる。ミルクティーとボクの汗と、そして彼の我慢汁とが混ざった匂いが、ボクの鼻孔から入っていく。
 口を付けなくても分かってしまう。これを嗅いでいるだけで、どうしようもないくらいに、身体が──

「そ、それじゃあ、動く、よ……キミも、ちゃんと、喘いで、感じて、くれ、たま……えっ♡」

 両手を胸の下から真横に持ってきて、横から乳房を挟み込む。こねるように両胸を上下へと動かす。ずりん、ずりんと、胸が擦れる度に、陰茎の脈動と熱が胸を通してボクに伝わってくる。

「ふ、ふふっ……そんなに、あっ、あっ、って喘いでっ……ボクの胸、そんなにいいのかい?」

 ボクを見下ろす彼の眼が、食いしばった口の端からこぼれる喘ぎ声が、ボクを正気でいさせてくれる。感じているはずなのに、快楽を得ているはずなのに、それを耐えようとする行為。
 あぁ、そんな目で見ないでくれ。そんな熱のこもった目で見られてしまっては、今すぐつまみ食いしたくなってしまうじゃないか♡

「それ、じゃあ……こういう、のは、どうっ……かなぁっ♡」

 規則的に上下に動かしていた手の動きを、互い違いなものへと変える。休む間もなく責められ続けている亀頭から、だらだらと透明な潤滑油が流れていく。
 ああ、もうすぐだ。キミもボクも我慢しなくていい。

「出そう、だよね……いいよ、我慢は体に、よく、ない、からさっ♡」

 幹の半ばで脈動する『それ』は、ボクの大好物。彼は出すまいと我慢しているけれど、そんなことボクには関係ない。食事はとうに済ませたはずなのに、お腹が空いて、喉が渇いて仕方がないんだ。

「さぁ、イけっ♡ ボクのおっぱいで、ミルク、びゅーびゅー出しちゃえっ♡」

 トドメを刺すために、ボクはいきなり彼のちんぽを咥えこんだ。口内、いや、喉奥にまで一気に突っ込ませ、幹を舌で絡め取る。
 ネバリタケ。雄の欲望──精液を粘つかせ、雌の体に染み込ませるための茸。それは、ボクのような魔物娘にとっても似たような効果があるらしい。それを食べたボクの体は、あちらこちらがドロドロに粘つくようになってしまった。愛液だけでなく、母乳も、唾液も、そしてそれらを生み出している口内や喉奥でさえも、雄を染み込ませてしまえる身体になってしまったのだ。
 彼を感じさせるための胸の圧迫とは違う、精を啜るだけの口内の圧搾。締め付けるどころではない、まさに搾りとるような圧搾感が彼を襲ったことだろう。

「──んぶぅううぅっ♡ んぐぅっ♡ ……っく、んっ……♡」

 口から頭まで犯されたように、全身が彼の精で染められていく。射精の勢いに耐えきれず、口内から跳ね上がった陰茎から噴水のように撒かれた精を浴びる。

「ひゃんっ♡ あ、ぅぁ、ぁ……ぁ♡ ぁは、ぁ、あぁ……これは、何とも……ふふ、爽快、だね……♡」

 彼に見下されながら、ボクは絶頂の最中にいた。一度も触れてさえないのに、秘所から愛液をだらだらと垂れ流して染みを作ってしまっている。
 あぁ、なんてもったいない。これだけの量、食べきれなかったのは仕方ないけれど、ちゃんとデザートでいただきたかったなあと。ほんの少しの後悔と、それを遥かに上回る恍惚に包まれて。 

「ふ、ふふ……つまみ食い、ごちそう、さま、でしたぁ……♡」





§





 少し時間が経って。ボクはテーブルの上で突っ伏しながら抗議の声を上げていた。

「なんだい? テーブルマナーがそれほど大切かい?」

 約束が違う、そう返す彼は、ほんの少しだけ怒っているように見えた。

「約束、ねぇ……ボクは食事当番だったから、今日の『食事』の準備をしただけだよ?」

 食事当番。それはボクと彼との間で交わされた約束。もちろん、ただ朝昼晩と料理を作るだけのお仕事ではない。自らの身体を色欲で彩り、『食べて』もらうための準備。

「キミがボクのおっぱいが好きだから、たぁーっぷり味わってもらいたかっただけ、なんだけどな♡」

 ボクはそう言いながら、ゆっくりと自分が履くズボンに手をかける。するり、と大した手間もなくズボンは足元まで滑り落ちた。先の余韻がまだ抜けておらず、ぽたぽたと愛液が垂れてしまっている。

「それに、こうしてデザートもいい仕上がりになったんだし、何の問題もないんじゃないかな♡」

 誘うようにお尻を二、三度、彼に向けて振る。どうも彼は胸どころか、お尻も大きければいいらしい。少しだけ弛みこそあるものの肉厚な、彼に育てられてしまったボクの身体。

「さ、じっくり味わってくれたまえ♡」

 ひた、と尻肉の間に肉棒が乗せられた。一度射精したはずなのに、お尻から伝わる熱と臭気は衰えるどころか、ますますその存在を強調している。
 うーん流石。つまみ食い、一度だけじゃ足りなかったかもしれないね。

「……んっ、く……あ、ふぅ……ふふ、まだ挿入れないのかい?」

 ボクの問いに、彼はあくまでも尻肉と大陰唇を交互になぞるだけ。この動きはボクを焦らそうとしている訳ではない。彼なりの細やかな抵抗だ。いつもいつも、ボクにいいように弄られていることへの反抗だ。

(ボクだってキミに変えられてしまってるんだ、おあいこなんだけどなぁ)

 初めて出会った時からずっと視線を感じていた胸とお尻は、触れられる度に敏感に、そしてだらしのない肉付きになってしまった。ブラもショーツもつけていないので、服が擦れる度に母乳や愛液が伝ってしまわないか気にしなければならない。
 そんなボクにキミは欲情し、たっぷりのミルクを全身にごちそうしてくれるのだけれど。淫猥な液体で全身ねばねばに汚される心地を知ってしまったんだ、いつもいつも乾いて渇いて仕方がない。ボクの口が、喉が、胸が、肌が、そして生殖器が。足りないタリナイとキミを求めてしまうのだ。

「ひゃっ……! き、聞こえてしまったのかい……?」

 気づかないうちに心の声が漏れてしまったようで、いきなり尻肉を揉みしだかれた。乱暴に掴まれて、乳頭を伸ばされて。陰茎に染み込んだいやらしい液を塗り擦られて。
 あぁ、早く犯してくれないかなぁ。キミのちんぽをボクのまんこに挿入して、ずっぷんずっぷん子宮まで乱暴に突き入れて。お腹いっぱいキミのミルクをご馳走してほしいのになぁ。

「──わざとだろって? 当たり前さ、だってこうでもしなきゃ、ちんぽ、挿入れようとしてくれないじゃないか♡ それとも、こうやって──」

 腰を浮かせ、陰茎の先端を膣口に当てる。ゆっくり腰を上下させて、ぷっくり膨れた大陰唇で幹を愛撫し始める。時折陰核で亀頭を刺激することも忘れない。

「舐られるだけでいいのかな? それこそマナー違反じゃないのかな」

 ずるいなあ。こんなに熟れた身体を放っておいて、どうするつもりなのかなあ。そこらの草むらで独りで致そうだなんてマナーが許してもボクが許さない。どこまでも追っかけてこっちから食べちゃうんだから。

「だからぁ♡ 大人しく、ボクを、食べて──ひゃうんっ♡」

 腰を掴まれた衝撃で、亀頭が肉襞にめり込む。とっくにこなれた膣口は、ボク自身の意思で蠢いて、幹を中ほどまで吞み込んだ。体内から肉が軋む音が響く。処女を失ったような微かな甘い痛みが秘所で生まれ、そしてすぐにそれ以上の多幸感が全身を包んだ。

「うぁ、あ……♡ なんだい、挿入ただけでまた射精しそうじゃないか……♡」

 挿入されただけで息を詰まらせ喘いでいるボクが言っても説得力はないけどね。キミは気づいてないかもしれないけれど。
 長く息を吐いてお腹の力を抜く。絡みつかせた膣肉を緩めると、背後から安堵と落胆の入り混じったようなため息が聞こえてきた。

「射精してしまいたかったかい?」

 ボクは別にいいんだよ? 一度でも二度でも何度でも、射精せるだけ射精してしまっても。食べ足りなかったら他の口を使ってもらっても構わない。どこだって準備はしてあるからね。
 後ろを振り向き下卑た笑みを浮かべる。これは性分だ。だって仕方ないじゃないか。こうしてボクを悦んで犯してくれる相手が居るなんて。魔物娘冥利に尽きるってものだ。

「──欲を言うなら、先にボクをイかせてほしいんだけどな♡」

 陰茎との接合部に手を添え、捲りあがった肉襞を、突き立った肉棒を確認する。冷えた金物の硬さと、溶けた金属の熱さを併せ持つ陰茎は、その熱で自ら達しそうになっていた。

「ほら、頑張れ♡ 今日はまだ膣内は精液おあずけなんだ。ぼやぼやしてると搾られちゃうよ♡」

 ねじるように腰を振る。右へ左へと振れる度に、結合していた肉襞が吸着を弱めていく。ひり出された陰茎はところどころ白濁し、ぬらついた光沢を放つ。

「あーあ、せっかく挿入したのに抜け出ちゃいそうだね♡」

 もちろん抜いてしまうはずないんだけれどね。ボクは頬を染めながら、それでも余裕の表情は崩さない。
 淫蕩な笑みをちらり見せ、彼を流し目で見上げながら元の位置へと腰を沈める。襞一つ一つが擦れる度、背筋に電流が走る。頭の奥で快楽の火花が散った。

「あはぁっ♡ キミはいい声で啼くね♡」

 今度は腰を一気に前に突き出す。肉襞の一つ一つに、亀頭や雁首で粘つく液体が塗りたくられる。視界が一瞬白く染まるほどの衝撃の後、一歩遅れて脳内に快楽が迸る。

「〜〜っ♡ い、いまのは、はぁっ、ちょっと、キた、かもね……ふふっ♡」

 続いて腰を小刻みに動かして、亀頭から雁首までを責め立てる。秘所で立てられていた粘液を打ちつけるような音が、空気が漏れる下品なものへと変わる。

「あ♡ あぁっ……ぶぼっ、ぶぼっって……こんなやらしい音立てて……んっ♡ ……キミとのセックスはたまらないな♡」

 与えられる快楽に悦んでいるのか、自然とボクの手足がかくかく震え出した。このまま一度、軽くイってしまうのも悪くないかもしれない。
 キミのちんぽも、いつ精を放ってもおかしくないみたいだし♡

「──でも、『ここ』で射精しちゃったら、子宮まで精液届かないよ♡」

 キミが喘いで、もがいて、溢れんばかりの快楽に蕩かされて。もしも射精してしまったら、まんこで精を味わえないじゃないか♡
 それはそれとして、キミが喘いで、もがいて、蕩かされている、可愛い姿をもっと見ていたいから。ちんぽの先っぽの弱いところばかり、こうしてこねくり回している訳だけれど。

「いじわる? そんなことはない。ボクはいつだって平等さ?」
 
 その証拠に、ほら。こうして動きを止めてあげたじゃないか。今すぐずこずこちんぽ突っ込んで、膣内を真っ白に染め上げてほしいのに。ちゃんとキミの『食事』のペースに合わせてあげてるんだから。

「それではマナーをご教授いたしましょう……なんてね」

 まず、ボクの腰をがっしり掴んでから、軽くボクの方に寄りかかってもらう。彼の体のずっしりした重みがかかる。当然、重みが増した分だけ性器も奥へと進む。具体的にはボクの子宮口まで。

「うぁ……♡ おく、までっ……ふふ、ボクの子宮と、キス、しちゃったね♡」

 お互いに喰らい合うような激しいキスをされて、流石にボクも余裕がない……フリをしている。実際はちょっと、ほんのちょっとだけ、我慢している。

「あは……また、息荒くなった……いいよ、深呼吸して落ち着かせて」

 密着した体から、彼の緊張が伝わってくる。息を体内に取り入れる度に、ちんぽがびくんと跳ね震える。その度に、ボクの膣内は甘く揺さぶられるのだ。
 物足りない刺激。もっと欲しい、早く欲しいと心ばかりが急いて、乾いた自分の唇を舐めとる。太い糸状になった唾液が欲望を潤し、滴り落ちた。
 ボクの膣内も、こんな風にドロドロになっているのかなぁ。

「……ぁえ? も、もう落ち着いたのかい?」

 そんなボクのピンクな想像は、彼の声で打ち破られる。それはよかった、と慌てて言葉を返す。
 あ、危なかった。今動かれてたら、ボクだけイっちゃってたかもしれない。

「そ、それじゃあ、一度抜いてみてくれないかな?」

 ボクの言葉通りに、膣内からちんぽが引き抜かれていく。ぞり、ぞり、と膣襞を擦る動きがもどかしい。さっきまでの亀頭責めのような、絡みつかせて離さない動きをしていないからだ。

「上の膣壁を擦るように……そうそう、上手──あ♡」

 ちゅぽんっ、と音を立てて陰茎が抜けた。穴に入れるために無理矢理傾けていた陰茎が一気に跳ね上がる。愛液とも我慢汁とも言えない、淫らな欲望が混ざった液体が飛散し、ボクのお尻を彩った。

「さて──今度は一気に、子宮まで犯しちゃおうか♡」

 両手を後ろに回し、秘所を弄る。次から次へと溢れてくる愛液でぐちゃぐちゃになった陰唇を開く。その奥を覗き込んだのだろう、彼が息を吞む音がはっきり聞こえる。
 興奮しているのはボクも同じだ。これからキミは、今キミ自身が見ている、ボクの大切なところを犯し、征服するのだろう。そう考えただけで、ボクは、もう。

「あっ……あ、あぁ、いいよ……先っぽぐりぐりって、押し付けて……一息ついてから、打ち付けるように……──っ!!」

 おあずけされるのは限界だったらしい。ボクの言葉が終わる前に、彼は陰茎を打ち付けていた。叩きつけるように、乱暴に、そして正確に。打ち込まれたそれは、一瞬でボクの子宮口まで届く。
   
「──くぅぅっ、ぁ、あ、あ゛ぁーーーーっ!!」

 訳も分からずボクは悲鳴を上げていた。絶頂した、彼にイかされた。突き入れられた肉棒を受け止めるために収縮した肉襞は、彼の肉棒から精を搾りとらんと本能だけで動く。彼はそれに耐えきれず、焦らされて溜められた精を放出したのだ。
 ボクの子宮の中で。

「──ぁ、うぁ……♡ ……はーっ、はーっ……はぁ、ぁっ♡」

 粘ついた精液が流れ込み、膣内をくつくつと甘く煮とろかす。肉襞の一枚一枚に染み込んでいき、ボクの身体を火照らせる。子宮からあぶれた精液はどろどろした塊となって押し流され、落ちてへばりつく。紅茶や母乳、愛液といった甘ったるい匂いを、雄の淫臭が塗りつぶす。
 ボクの余裕さえ、ぐずぐずの雌の貌に染めてしまうほどに。

「ぁ、ははっ……あぁ……射精、しちゃったねぇ……♡」

 絶頂の余韻か、ボクの上でくったりしている彼にそう囁く。
 あぁ、可愛くて愛しくて仕方がない。キミは否定するだろうけど、ボクのために頑張ってくれてることは十分知ってるよ。ボクに振り回されて嫌そうにすることもあるけれど、こうして付き合ってくれて嬉しいよ。
 我慢できずに射精しちゃって悪かっただなんて、そんなこと言わなくていいよ。

「だって……むしろこれからが本番なんだから、さ……♡♡」

 ボクたち魔物娘にとって伴侶の精は、子を成すためのモノであり、栄養源であり、そして媚薬である。射精されればそれを余すことなく受け止めようとするし、快感もまた然り。零れ落ちてしまった精には名残惜しさを感じつつも、眠りにつくまでの間余韻に浸り続けることだろう。
 しかし、今は違う。 

「……たった二回じゃあ、満足できない、よね?」

 腰を揺らすと、ネバリタケの効能でゼリー状になった精が膣内で揺れる。こぽり、とそれは震えるものの、しかし中で収まった分は落ちることはない。快楽の残り火が、いつまでもボクを内側から焦がし続ける。

「──ぅ、あ゛っ♡ あっ、あ、あぁっ……せい、えきでっ、なか、おされ、てぇっ……いいっ♡」

 ぱんっ、ぱんっと、腰を打ち付ける音が響く。残っている精に阻まれて、子宮までは辿り着かないストローク。無理もない。彼にも射精の余韻が残っているからだ。敏感になっている亀頭を子宮口で刺激してしまえば、たちまち達してしまうだろう。

(ちゃんと、ボクと一緒にイこうとしてる、なんてぇっ……キミはいじらしいなぁ……あっ♡)

 だがその行為は、ボクを嬲る最も最適な選択だった。前後する性器に連動して、膣内で精液の塊が動く。膣襞に、子宮口に、精液が擦り込まれていく。栄養分の精として体内に取り込もうとしても、へばりついたそれを消化するにはそれなりに集中力が必要だ。

(これっ……ダメっ、ダメだぁ……♡ ボクが、先に、溶かされるぅっ……♡♡)

 当然、彼の抽挿で甘く揺さぶられている状態で、そんなことができるはずもなく。性器を締めることさえ覚束ず、彼の陰茎と精に犯されるばかり。
 
「あは、ははっ……はぁっ、はぁっ、って、いき、ついちゃって……あっ♡ キミはまるで、わんちゃんみたいだねぇっ……くふぅぅっ♡♡」

 そう言ってるボク自身だって、まるで犬みたいだ。
 キミの動きに合わせてかくかく腰振って。荒い呼吸音と性器を打ち付ける音に耳朶を犯されて。キミから見えていないところで、涎やら母乳やらをまき散らしている。獣だってもう少し上品な交尾をするだろうにね。

「──お゛ぉっ♡ ……ぁ、くぅ……ん♡ ふふ、わんちゃん呼ばわりはイヤかい?」

 突っ伏していたテーブルから引き起こされ、彼に身を委ねる。今度はボクが寄りかかる番みたいだ。左腕で抱きかかえられ、空いた右手で胸を弄られる。
 あぁ、バレちゃった。ボクが後ろから突かれて母乳を噴いてもだえる変態さんだって。

「だってぇっ♡ しかたない、じゃないかっ♡ ひぅっ、くぅ……んっ♡ キミに抱かれることが、こんなにぃっ……はっ、あっ、あぁっ──んんっ♡ きもち、いいん、だか、ら、ぁっ♡♡」

 乳首を指で挟まれば嬌声が零れる。母乳が放たれる度に目から火花が散り、彼の支えなしでは立つことすらままならない。不規則な性器の刺激に身もだえし、得られた快感で身をよじれば、陰茎が意図せぬ責めを繰り出してさらに喘がされる。
 けれど、ボクだってただ喘がされているだけじゃない。

「くひっ、ぃぃいっ♡ わかる、よ……ボクの、なか、ぁ♡ でっ♡ キミの、ちんぽ、びくん、びくんってぇ……ふるえ、てぇっ♡ またぁ、だしたいんだろう♡」

 彼の腕を取り、ほんの少しだけボクが動けるスペースを作る。蛇みたいに体をくねらせて、大きくのけぞる姿勢をとった。だらんと首の力を抜けば、目の前にはすっかり快楽におぼれたキミの顔が。
 そんな顔していたら、わるぅい魔物娘に誑かされてしまっても文句は言えないよね?

「かお、こっち、近づけてくれるかい?」

 意図を把握した彼は体勢を変える。腰を掴んで後ろから犯す後背位から、片足を掴んでボクを支えながら愛してくれる立ち側位へと。どちらからともなく顔を近づけ合う。性交で乱れた呼気が、顔をさらに熱く火照らせる。
 そうして、唇が触れ合い、互いに絶頂に達しようとした時。

「──愛しているよ、ア・ナ・タ♡」

 ボクの方から、唇を、奪った。

「──むぐぅぅっっ♡ ひぐっ、んぅっ♡♡ くぅぅぅぅぅーーーーんっっ♡♡♡」 

 接吻しながらの絶頂。
 ボクの下半身、いや、思考を司る器官以外は、これまで幾度となく達してきた絶頂感に満たされていた。二度目の膣内射精を受けた膣襞や子宮は悦びのあまりに激しく収縮し、さらに深く長い絶頂を求め作り出している。絶頂の度、生産された母乳やら愛液やらが、行き場を求めて外に放出された。

「……あむ、ちゅ、ん……れろ、ちゅ……♡ っぷはぁっ♡ はむ、んっ……もっとぉ……♡」

 そしてボクの思考は、ただぼんやりとした多幸感に満たされていた。性交による快楽もある。しかしそれだけではない。

「ちゅ……くちゅ……ん♡ 愛してるよ♡ …………え、恥ずかしい?」

 聞いての通り、彼はボクの好意を真っ向から受けようとしてくれない。恥ずかしいそうだ。性行為は問題ないそうなのにね、変な話だと思わないかい?

「……いいよ♡ 今日もちゃんと愛してくれたからねぇ、伝わってるさ♡」

 だからボクたちはひとつの決まり事を作った。
 『食事』と称して、お互いの身体を求めあうこと。そして『食事』中は、言葉でも所作でも構わない、感謝の気持ち──愛していると伝え合うこと。
 もっとも、キミの口からは聞いたことはないんだけれどね。ひょっとしたら、これからも聞くことはないかもしれない。

「ボクの体を通して、キミも伝わってきてるだろう? ……これだけじゃ、ボクはまだ満足できないってさ♡」

 キミが観念するか、ボクを食べ尽くしてしまうまで。このおかしな交わりは続くだろう。時間はたっぷりあるんだ、ゆっくり楽しもうじゃないか♡

「さ、次はどんなことをしようかな♡」
21/06/12 19:16更新 / ナナシ

■作者メッセージ
なお彼氏くんに「愛している」と伝えられた場合、これまでの余裕が嘘のようにお顔真っ赤にしてちんぽ一突きされただけであひんあひん言わされる模様。

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