魅惑のチョコレートフォンデュ
二月十四日はバレンタイン。友人に、恋人に、あるいは配偶者に、感謝と親愛の気持ちを込めて贈り物をする日だと聞いています。
わたし、クー・シーもまた例外ではありません。わたしが小さいころから育ててくれただんな様に報いたいと、贈り物を考えていたのです。けれど、わたしは元々犬生まれ。魔物娘になったとはいえ、この身体にチョコレートは合いません。毒見もせずにお出しするのは少々はばかられまして、どうするべきか、いっそ思い切ってだんな様に相談に向かったのです。
「くふぅ……だ、だんな様ぁ……ほんとうに、なさるのです……?」
その結果、お姫様抱っこで連れていかれ服を剥かれ、お腹まわりの毛をそれはもうとても綺麗に剃られてしまったのでした。いやですおやめください、そんなところに押し当てないでと喚くわたしの鳴き声と、クー・シー用バリカンの無機質な音がしばらく響き渡ったでしょう。
他人事みたいなのは気にしないでください、別に気にしてません。……気にしてないです。ぷんぷん。
「ひゃっ♡」
ぺろり。
だんな様がわたしのお腹に舌を這わせました。今のわたしのお腹は、人間のそれと同じ状態です。お腹をわしゃわしゃ撫でられることはあっても、それは毛並みのクッションがあってこその感覚。直接肌を触られた経験はありません。ましてや犬がするように、舌で触れるなんて。
「だ、だんなさま……それは、あっ♡ くっ♡ くぅっ♡ くふっ♡ あ、や、やめ……ひゃんっ♡」
舐められる度に、だめ、やめてと否定の意思を告げようとしますが、漏れ出るのは甘い喘ぎ声ばかり。舌は鳩尾から下りていき、縦に割れたおへそのひだひだをひとつひとつこそぐ動きに変わります。
「ま、まってっ♡ だめっ、そこっ、おへそすっちゃやぁっ、やぁっ♡ やぁって、やぁですって、いって、あっあっ♡ いってるのにっ♡ くひぃぃぃいんっ♡」
わたしはただその動きに悶えるだけ。かつて犬だったころにもめったに見せないおへそにキスをされ、あまつさえ吸われてしまって。情けない声を上げて四肢をピンと伸ばしてしまうだけです。
そして、ほんとうに情けないことに、おへその下、赤ちゃんが宿る子宮の場所が、とくん、とくんと微かに熱を帯び始めたのでした。
「はーっ……はーっ……♡」
くたり脱力するわたしを置いて、だんな様は脇に置いてあったボウルを手に取ります。二重に重なったそれは、微かな湯気を放っていました。
すん。
すんすん。
「あ……♡ これって……♡」
まさか。
そのまさかを裏付けるかのように、だんな様はボウルを傾けます。ゆらりゆらめく茶褐色の液体からは、独特の香り。甘くとろけて、わたしの身体を焦がしていくようです。
「……ぁ♡ あむっ、ちゅ、くちゅ……♡ ん、んくっ……ぷぁっ、はぁ……はーっ……はーっ♡♡」
絶頂の感覚がさめないまま口移しで溶かしたチョコレートを口内に流し込まれ、わたしは息を荒げました。だんな様の唇や舌が、わたしのそれを唾液とチョコとでどろどろに汚していきます。漏れるため息は辛さや悲しさではなくもどかしさ。もしわたしが絶頂していなければ、わたしからもだんな様を求め、満足させることができるのに。
「らんなしゃまぁ……らんなしゃまぁ……♡」
もっと、もっと。
もっとキスして。もっと舌を絡めて。もっとわたしの口を犯して。
ふにゃふにゃになった手足とろれつの回らない言葉で、せめてとばかりに求めます。
「らんなしゃまぁ──あ♡ ああっ♡ おにゃか♡ おにゃか、あちゅ、あついぃぃいいっ♡」
とろ、とお腹にたれる熱い感触。涙でにじむ視界は、だんな様がボウルを傾けている様を見てしまいました。
元の犬の体にとっては毒ですが、魔物娘となり、人と似た姿になったわたしにとって、それは。
「あぁっ♡ やけるっ♡ おにゃかのなか灼けちゃうぅっ♡ だめっ♡♡ だめににゃっちゃうっっ♡」
体を快楽の炎で灼き焦がし、セックスしたい欲望で心を染めてしまう猛毒だったのです。
「ふにゃぁぁぁぁぁああっ♡♡♡」
垂らされたチョコを舐めとるため、もう一度だんな様が体に顔を近づけました。最初のなぞり這わす動きとは違い、舌べろ全体を体に触れさせて、首と体を動かして大胆に舐めています。まるでわたしの身体に刻み込むように。
「くぅぅんっ♡ やらぁっ♡♡ おにゃか、ぺろぺろしちゃやらぁっ♡ キちゃいましゅうぅっ♡ せっくしゅしてほしいってぇっ♡、せーしほしいってぇっ♡♡ しきゅうおりてきちゃいましゅぅぅっっ♡♡」
ここまできたら、恥も外聞も下手なウソも必要ありません。だって、今更隠したって全部バレてしまっているんですから。チョコと唾液が入れ替わる度、おまんこがきゅんきゅんうずいてえっちなお汁を飛ばして、中のひだひだが物足りなさ気に動くんです。
だんな様、いいですよね♡
だんな様がわたしの雄なんだって。
だんな様だけがわたしの雄なんだって。
こうして教え躾けられちゃったんですから。
「──あひぃぃぃぃいぃいいっっ♡♡♡」
たった一突き。おちんちんを取り出しただんな様はたった一突きでずぶずぶっとわたしの膣内をかき分け、子宮口の先端まで埋め尽くしてしまいました。すっかりだんな様の形になったわたしのおまんこは、ようやく収まるべきものを収めたのです。
「だんなさまぁ……♡ だんなしゃまぁ……♡」
わたしもだんな様も、はぁ、はぁ、と同じ荒い息をついています。今すぐ動きたい、動かしてほしい。だんな様の精液をお腹いっぱいになるまで注いでほしい。けれど、お互いが心も体もつながった、この時間をもっと長く味わっていたい。
「ん……ちゅ♡」
そうしてわたしたちは、お互いを繋げたままで唇を重ね合わせました。幾度も舌で愛撫を繰り返したせいで、だんな様の唇はすっかりとろとろに蕩けています。わたしが舌でぺろぺろ舐めて洗ってあげると、ちょっとくすぐったそうに顔をしかめてしまいました。
「だんなさまかわいい♡ ……きゃぅんっ♡」
わたしの悪戯を叱るように、こつん、と膣奥を突かれます。それだけでイってしまうな感覚が全身を通り抜けますが、それでもわたしはだんな様に笑顔で応えました。そんなわたしに気をよくしたのか、だんな様はわしゃわしゃとわたしの頭を、少し乱暴に撫でてくれました。
ほんとうに不思議なお話です。わたしにとって毒だったはずのチョコレートが、こんなにも甘く蕩かせてくれるものだったなんて。そんな媚薬を口にお腹に塗り付けられながらも、だんな様とのセックスの間はこうして笑い合うことができるなんて。
理由なんてないのかもしれません。ただ、今は、こうして触れ合えることが、何よりも幸せなのです。
「ひゃん♡ ……んもう、だんな様♡ ──しゃせい♡ したいんですね♡ あんっ♡」
有無を言わさず、だんな様が腰を振り始めました。子宮ごとお腹を突き上げる動き。両手首を捕まれたわたしはまともに身動きもできずに、だんな様に突かれるまま喘ぎ、体をのけ反らせます。
「くひぃんっ♡ いいですよっ♡ いつ、でもぉっ……あんっ♡ わたしの、ナカにぃっ♡ ひゃぁんっ♡ だんなさまのっ♡ だんなしゃまのぉせーえきぃっ♡ だしてぇっ♡ いっしょにっ♡ イかせてぇっっ♡♡」
だんな様が掴む場所が腰へと変わり、動きも体全体をぶつけるような力強いストロークへ変わっていきます。腰とおちんちんだけで支えられたわたしは折れてしまいそうなほどにがくがく揺さぶられてしまいました。お腹におちんちんの形が浮き出るほどにのけ反るのは苦しいはずなのに、それを遥かに上回る快楽が全身を満たしているのです。
そして。
「──あああぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ♡♡ イくぅっっ♡ だんなしゃまにせーえきなかだししゃれてイくぅぅぅーーーーっっ♡♡♡」
限界まで膨らんだおちんちんから射精された精液はたちまちわたしの膣内を埋め尽くし、快楽の波で理性も何もかも押し流していったのでした。
§
それからしばらく経って。
「ん……ちゅ、ぺろ…………あ、こんなところにもとんでます……♡」
気だるい心地よさの中、わたしはあちこちに飛んだえっちなお汁をぺろぺろと舐めとっていました。最初にだんな様を顔をぺろぺろし──もちろん微妙な表情をされましたが──今は自分のお腹をきれいにしています。
「だんな様、どうしましたか? ……汚くないか、ですか?」
だんな様は壁やら床やらに飛んだ飛沫を掃除しています。唾液、チョコ、愛液、そして精液。だんな様の感覚からすれば、汚いと思っても仕方ないかもしれません。
「だんな様がわたしを愛してくれた結果です、愛おしいですが、汚くなんてないですよ♡」
わたしからのバレンタインの贈り物なのに、貰ってばかりで申し訳ないくらいです。そう続く言葉を飲み込んで、心から笑ってみせました。だんな様は何も言わず、ただわしゃわしゃと頭を撫でてくれます。
わしゃわしゃ。
わしゃわしゃ。
わしゃわしゃ……ひょい。
「あの……だんな様?」
脇下で抱え上げたわたしの耳元で、だんな様がささやきます。
汚れちゃったからお風呂に行こう──こんな素敵な贈り物を貰えたんだ、もっと味合わせてくれないかな?
「──はい♡」
どうしようもなく顔が緩んでいきます。わたしが求めていることを、だんな様も求めてくれるなんて。
ああ、わたし、ほんとうに幸せです。
「たっぷり、召し上がってくださいな♡」
わたし、クー・シーもまた例外ではありません。わたしが小さいころから育ててくれただんな様に報いたいと、贈り物を考えていたのです。けれど、わたしは元々犬生まれ。魔物娘になったとはいえ、この身体にチョコレートは合いません。毒見もせずにお出しするのは少々はばかられまして、どうするべきか、いっそ思い切ってだんな様に相談に向かったのです。
「くふぅ……だ、だんな様ぁ……ほんとうに、なさるのです……?」
その結果、お姫様抱っこで連れていかれ服を剥かれ、お腹まわりの毛をそれはもうとても綺麗に剃られてしまったのでした。いやですおやめください、そんなところに押し当てないでと喚くわたしの鳴き声と、クー・シー用バリカンの無機質な音がしばらく響き渡ったでしょう。
他人事みたいなのは気にしないでください、別に気にしてません。……気にしてないです。ぷんぷん。
「ひゃっ♡」
ぺろり。
だんな様がわたしのお腹に舌を這わせました。今のわたしのお腹は、人間のそれと同じ状態です。お腹をわしゃわしゃ撫でられることはあっても、それは毛並みのクッションがあってこその感覚。直接肌を触られた経験はありません。ましてや犬がするように、舌で触れるなんて。
「だ、だんなさま……それは、あっ♡ くっ♡ くぅっ♡ くふっ♡ あ、や、やめ……ひゃんっ♡」
舐められる度に、だめ、やめてと否定の意思を告げようとしますが、漏れ出るのは甘い喘ぎ声ばかり。舌は鳩尾から下りていき、縦に割れたおへそのひだひだをひとつひとつこそぐ動きに変わります。
「ま、まってっ♡ だめっ、そこっ、おへそすっちゃやぁっ、やぁっ♡ やぁって、やぁですって、いって、あっあっ♡ いってるのにっ♡ くひぃぃぃいんっ♡」
わたしはただその動きに悶えるだけ。かつて犬だったころにもめったに見せないおへそにキスをされ、あまつさえ吸われてしまって。情けない声を上げて四肢をピンと伸ばしてしまうだけです。
そして、ほんとうに情けないことに、おへその下、赤ちゃんが宿る子宮の場所が、とくん、とくんと微かに熱を帯び始めたのでした。
「はーっ……はーっ……♡」
くたり脱力するわたしを置いて、だんな様は脇に置いてあったボウルを手に取ります。二重に重なったそれは、微かな湯気を放っていました。
すん。
すんすん。
「あ……♡ これって……♡」
まさか。
そのまさかを裏付けるかのように、だんな様はボウルを傾けます。ゆらりゆらめく茶褐色の液体からは、独特の香り。甘くとろけて、わたしの身体を焦がしていくようです。
「……ぁ♡ あむっ、ちゅ、くちゅ……♡ ん、んくっ……ぷぁっ、はぁ……はーっ……はーっ♡♡」
絶頂の感覚がさめないまま口移しで溶かしたチョコレートを口内に流し込まれ、わたしは息を荒げました。だんな様の唇や舌が、わたしのそれを唾液とチョコとでどろどろに汚していきます。漏れるため息は辛さや悲しさではなくもどかしさ。もしわたしが絶頂していなければ、わたしからもだんな様を求め、満足させることができるのに。
「らんなしゃまぁ……らんなしゃまぁ……♡」
もっと、もっと。
もっとキスして。もっと舌を絡めて。もっとわたしの口を犯して。
ふにゃふにゃになった手足とろれつの回らない言葉で、せめてとばかりに求めます。
「らんなしゃまぁ──あ♡ ああっ♡ おにゃか♡ おにゃか、あちゅ、あついぃぃいいっ♡」
とろ、とお腹にたれる熱い感触。涙でにじむ視界は、だんな様がボウルを傾けている様を見てしまいました。
元の犬の体にとっては毒ですが、魔物娘となり、人と似た姿になったわたしにとって、それは。
「あぁっ♡ やけるっ♡ おにゃかのなか灼けちゃうぅっ♡ だめっ♡♡ だめににゃっちゃうっっ♡」
体を快楽の炎で灼き焦がし、セックスしたい欲望で心を染めてしまう猛毒だったのです。
「ふにゃぁぁぁぁぁああっ♡♡♡」
垂らされたチョコを舐めとるため、もう一度だんな様が体に顔を近づけました。最初のなぞり這わす動きとは違い、舌べろ全体を体に触れさせて、首と体を動かして大胆に舐めています。まるでわたしの身体に刻み込むように。
「くぅぅんっ♡ やらぁっ♡♡ おにゃか、ぺろぺろしちゃやらぁっ♡ キちゃいましゅうぅっ♡ せっくしゅしてほしいってぇっ♡、せーしほしいってぇっ♡♡ しきゅうおりてきちゃいましゅぅぅっっ♡♡」
ここまできたら、恥も外聞も下手なウソも必要ありません。だって、今更隠したって全部バレてしまっているんですから。チョコと唾液が入れ替わる度、おまんこがきゅんきゅんうずいてえっちなお汁を飛ばして、中のひだひだが物足りなさ気に動くんです。
だんな様、いいですよね♡
だんな様がわたしの雄なんだって。
だんな様だけがわたしの雄なんだって。
こうして教え躾けられちゃったんですから。
「──あひぃぃぃぃいぃいいっっ♡♡♡」
たった一突き。おちんちんを取り出しただんな様はたった一突きでずぶずぶっとわたしの膣内をかき分け、子宮口の先端まで埋め尽くしてしまいました。すっかりだんな様の形になったわたしのおまんこは、ようやく収まるべきものを収めたのです。
「だんなさまぁ……♡ だんなしゃまぁ……♡」
わたしもだんな様も、はぁ、はぁ、と同じ荒い息をついています。今すぐ動きたい、動かしてほしい。だんな様の精液をお腹いっぱいになるまで注いでほしい。けれど、お互いが心も体もつながった、この時間をもっと長く味わっていたい。
「ん……ちゅ♡」
そうしてわたしたちは、お互いを繋げたままで唇を重ね合わせました。幾度も舌で愛撫を繰り返したせいで、だんな様の唇はすっかりとろとろに蕩けています。わたしが舌でぺろぺろ舐めて洗ってあげると、ちょっとくすぐったそうに顔をしかめてしまいました。
「だんなさまかわいい♡ ……きゃぅんっ♡」
わたしの悪戯を叱るように、こつん、と膣奥を突かれます。それだけでイってしまうな感覚が全身を通り抜けますが、それでもわたしはだんな様に笑顔で応えました。そんなわたしに気をよくしたのか、だんな様はわしゃわしゃとわたしの頭を、少し乱暴に撫でてくれました。
ほんとうに不思議なお話です。わたしにとって毒だったはずのチョコレートが、こんなにも甘く蕩かせてくれるものだったなんて。そんな媚薬を口にお腹に塗り付けられながらも、だんな様とのセックスの間はこうして笑い合うことができるなんて。
理由なんてないのかもしれません。ただ、今は、こうして触れ合えることが、何よりも幸せなのです。
「ひゃん♡ ……んもう、だんな様♡ ──しゃせい♡ したいんですね♡ あんっ♡」
有無を言わさず、だんな様が腰を振り始めました。子宮ごとお腹を突き上げる動き。両手首を捕まれたわたしはまともに身動きもできずに、だんな様に突かれるまま喘ぎ、体をのけ反らせます。
「くひぃんっ♡ いいですよっ♡ いつ、でもぉっ……あんっ♡ わたしの、ナカにぃっ♡ ひゃぁんっ♡ だんなさまのっ♡ だんなしゃまのぉせーえきぃっ♡ だしてぇっ♡ いっしょにっ♡ イかせてぇっっ♡♡」
だんな様が掴む場所が腰へと変わり、動きも体全体をぶつけるような力強いストロークへ変わっていきます。腰とおちんちんだけで支えられたわたしは折れてしまいそうなほどにがくがく揺さぶられてしまいました。お腹におちんちんの形が浮き出るほどにのけ反るのは苦しいはずなのに、それを遥かに上回る快楽が全身を満たしているのです。
そして。
「──あああぁぁぁぁぁぁあぁぁっっ♡♡ イくぅっっ♡ だんなしゃまにせーえきなかだししゃれてイくぅぅぅーーーーっっ♡♡♡」
限界まで膨らんだおちんちんから射精された精液はたちまちわたしの膣内を埋め尽くし、快楽の波で理性も何もかも押し流していったのでした。
§
それからしばらく経って。
「ん……ちゅ、ぺろ…………あ、こんなところにもとんでます……♡」
気だるい心地よさの中、わたしはあちこちに飛んだえっちなお汁をぺろぺろと舐めとっていました。最初にだんな様を顔をぺろぺろし──もちろん微妙な表情をされましたが──今は自分のお腹をきれいにしています。
「だんな様、どうしましたか? ……汚くないか、ですか?」
だんな様は壁やら床やらに飛んだ飛沫を掃除しています。唾液、チョコ、愛液、そして精液。だんな様の感覚からすれば、汚いと思っても仕方ないかもしれません。
「だんな様がわたしを愛してくれた結果です、愛おしいですが、汚くなんてないですよ♡」
わたしからのバレンタインの贈り物なのに、貰ってばかりで申し訳ないくらいです。そう続く言葉を飲み込んで、心から笑ってみせました。だんな様は何も言わず、ただわしゃわしゃと頭を撫でてくれます。
わしゃわしゃ。
わしゃわしゃ。
わしゃわしゃ……ひょい。
「あの……だんな様?」
脇下で抱え上げたわたしの耳元で、だんな様がささやきます。
汚れちゃったからお風呂に行こう──こんな素敵な贈り物を貰えたんだ、もっと味合わせてくれないかな?
「──はい♡」
どうしようもなく顔が緩んでいきます。わたしが求めていることを、だんな様も求めてくれるなんて。
ああ、わたし、ほんとうに幸せです。
「たっぷり、召し上がってくださいな♡」
21/02/11 18:20更新 / ナナシ