わんこのしつけ番外編〜アヌビスさん出番ですよ〜
「さて、これからお主には私をしつけてもらうことになるぞ」
「待てや」
アヌビスの突然の発言を受けて、男――アヌビスの旦那――は開口一番制止をかけた。
「どうした? 何か問題でもあるのか?」
「問題しかないわ。いきなり何を訳の分からんことを」
アヌビスは首を傾げると、顎に手を当てて考える素振りをする。
そのままの姿勢でしばらく硬直していたが、やがて得心したかのように頷いた。
「ふむ。私をどうしつければ良いのか分からないのだな。何、そんなこともあろうかとあらかじめリストを作っておいた。この通りにやれば何も問題はない」
「問題はそこじゃないんだよなあ……」
満面の笑みを浮かべつつリストを見せるアヌビス。
がっくりと肩を落とし、今にもその場に崩れ落ちそうな男。
傍からは、嫁の無茶ぶりに辟易する旦那の図のように見えるのだろう。
最も、無茶ぶりの内容は常識的な魔物娘の夫婦のものとはかけ離れているのだが。
「むう、何が納得いかないのだ。私には分からん」
「お前の口からそんな言葉を聞かされて納得いく訳がないだろう。というか嫁をしつけるって状況がすでにおかしいとは思わないのか」
「よ、嫁……。いかん、いかんぞ。そんなことを言われてしまっては嬉しくなってしまうではないか♡」
男の言葉を聞き、くねくねと身をよじらせるアヌビス。
その姿には、先ほどまでの理知的な面影は見られない。
夫に向けて尻尾を振る、一匹の雌犬の姿がそこにあった。
「おーい、聞こえてるかー? おーい」
「ハアハア……私は嫁、私はえっちなよめ、私は淫らな雌犬……ハアハア」
「これもうしつけいらねえんじゃねえかなあ……」
荒い息を吐き始めたアヌビスを見て、男はどこからともなく鞭を取り出すのだった。
――折檻中ですのでしばらくお待ちください――
「さてと。それじゃあ始めるぞー」 「うむ、いつでもよいぞ、どんとこい!」
「(なんでそんなやる気満々なんだ……?)えーっと、最初は……」 「(ドキドキ……)」
「おいでー」 「!! わんっわんっわんっ!」
「おー、よしよし」ナデナデ 「わん♡」
「んで、次は……」 「くぅん……」
「お手!」 「わんっ!」
「(やたら早いな……)よしよし」 「わんわんっ♡」
「んじゃどんどん行くかー……おかわり! お座り! ジャンプ!」 「わんっ(ポフン) わんっ(ペタン) わぅんっ!(ピョン)」
「よしよし、よく出来ましたー」ナデナデ 「はふぅ……ん♡」
「それじゃあ……。えっと、その……ち、ちんちん」 「!!! わんわんわんっ!!!」
「待てや! こっちのちんちんじゃないわ! ポーズ! ポーズの方!!」 「うー……ぐるる」
「唸るんじゃないよ! 真面目にやりなさいよ!」 「わぅう……」
「また折檻するぞ!」 「!!! わんっ! わんわんっ!」パタパタ
「喜んでんじゃないよ! 折檻してやらないぞ!」 「!!! わぅん……」
「よし、これでノルマは達成っと……」 「わんっ♡」
――閑話休題――
「さて、ちゃんとリストの内容は終わったぞ。これでいいんだろ?」
「うむ。ご苦労だったな」
アヌビスの無茶ぶりから解放されてため息を吐く男と、どこか嬉しそうなアヌビスはそんな会話を交わしていた。
「だがな、お主は一つ忘れてはいないか?」
「何をだ?」
アヌビスの問いかけに男は疑問を返す。
何も分かっていない様子の男を見て、アヌビスは呆れたように首をすくめた。
先程までの雌犬ぶりはすっかり鳴りを潜め、落ち着いた知的な顔を取り戻している。
「これだからお主は……。全く、乙女心を分かっておらぬ」
「鞭で叩かれて発情する雌犬には言われたくないわ」
「雌犬……はふぅ、何という甘美な響き……♡」
「おい、話が進まんから帰ってこい」
頬を平手でぺしぺしと叩かれるアヌビス。
幾発か叩かれてようやく、どこか物足りなさそうな顔をしながらも緩んだ表情を引き締めた。
「んで、何を忘れてるんだ?」
「仕方あるまい。私直々に教えてやろう」
アヌビスはそう言うと、徐にあるポーズをとった。
「……ちんちん?」
「うむ。お主よ、この姿を見て何か気づくことはないか?」
「……いやえっと、いざ正気に戻ると何やってたんだろうなって罪悪感が湧いてきて正直それどころじゃ――」
「莫迦者! 私の体を見て何とも思わんのか!」
そう怒鳴られて、男はしげしげとアヌビスの体を眺める。
「魔界銀製でも鞭の痕って残るものなのね、痛くない?」
「違うわ! ここだここ!!」
声を荒げてアヌビスはある一点を指し示した。
指し示された箇所――小さな下着で隠された秘部――には、粘性のある透明な液体がへばりついていた。
所謂、愛液という奴である。
「嫁のこんな姿を見ても何とも思わんのか! 全く嘆かわしい……」
「いや、してほしいんならそう言えばいいと思うんだが……」
男の反論を聞くと、アヌビスは複雑な表情を浮かべた。
目線は男と中空の間を行き来し、なかなか話そうとしない。
しかし、男から何の反応も得られないことを悟ったのか、観念したかのように顔を赤らめて俯き、
「だって、恥ずかしいもの……」
そんなことを宣った。
「…………」
「…………」
二人は真顔になって、お互いの顔を見つめ合った。
一瞬だけ、辺りが静かになった。
一瞬だけだった。
「なーにを今更恥ずかしがってんだ! 普段やってる行為の方が余程おかしいとは思わんのか!」
「莫迦者! そもそもお主が私を組み伏せてあんなことをしたからこのような性癖になってしまったのではないかもっと私を詰れ!」
「うっわ面倒臭え! そもそもそんな恰好してるのが悪いだろうが! 襲ってくれっていってるようなもんだぞ!」
「その通りだ、お主にならいつ何時でも構わぬわ! 逆にお主が嫌だといっても私が満足するまで付き合ってもらうことになるのだがな! ――ええいこうしている時間も惜しい、いいからとっとと犯すがよいわ! もちろんバックでスパンキングしながらだぞ!」
「そんな強気にマゾ気質をカミングアウトするんじゃねえぇぇーー!!」
その後、哀れな男の罵声と、嬉し気なアヌビスの嬌声が響き渡ったのは言うまでもない。
「待てや」
アヌビスの突然の発言を受けて、男――アヌビスの旦那――は開口一番制止をかけた。
「どうした? 何か問題でもあるのか?」
「問題しかないわ。いきなり何を訳の分からんことを」
アヌビスは首を傾げると、顎に手を当てて考える素振りをする。
そのままの姿勢でしばらく硬直していたが、やがて得心したかのように頷いた。
「ふむ。私をどうしつければ良いのか分からないのだな。何、そんなこともあろうかとあらかじめリストを作っておいた。この通りにやれば何も問題はない」
「問題はそこじゃないんだよなあ……」
満面の笑みを浮かべつつリストを見せるアヌビス。
がっくりと肩を落とし、今にもその場に崩れ落ちそうな男。
傍からは、嫁の無茶ぶりに辟易する旦那の図のように見えるのだろう。
最も、無茶ぶりの内容は常識的な魔物娘の夫婦のものとはかけ離れているのだが。
「むう、何が納得いかないのだ。私には分からん」
「お前の口からそんな言葉を聞かされて納得いく訳がないだろう。というか嫁をしつけるって状況がすでにおかしいとは思わないのか」
「よ、嫁……。いかん、いかんぞ。そんなことを言われてしまっては嬉しくなってしまうではないか♡」
男の言葉を聞き、くねくねと身をよじらせるアヌビス。
その姿には、先ほどまでの理知的な面影は見られない。
夫に向けて尻尾を振る、一匹の雌犬の姿がそこにあった。
「おーい、聞こえてるかー? おーい」
「ハアハア……私は嫁、私はえっちなよめ、私は淫らな雌犬……ハアハア」
「これもうしつけいらねえんじゃねえかなあ……」
荒い息を吐き始めたアヌビスを見て、男はどこからともなく鞭を取り出すのだった。
――折檻中ですのでしばらくお待ちください――
「さてと。それじゃあ始めるぞー」 「うむ、いつでもよいぞ、どんとこい!」
「(なんでそんなやる気満々なんだ……?)えーっと、最初は……」 「(ドキドキ……)」
「おいでー」 「!! わんっわんっわんっ!」
「おー、よしよし」ナデナデ 「わん♡」
「んで、次は……」 「くぅん……」
「お手!」 「わんっ!」
「(やたら早いな……)よしよし」 「わんわんっ♡」
「んじゃどんどん行くかー……おかわり! お座り! ジャンプ!」 「わんっ(ポフン) わんっ(ペタン) わぅんっ!(ピョン)」
「よしよし、よく出来ましたー」ナデナデ 「はふぅ……ん♡」
「それじゃあ……。えっと、その……ち、ちんちん」 「!!! わんわんわんっ!!!」
「待てや! こっちのちんちんじゃないわ! ポーズ! ポーズの方!!」 「うー……ぐるる」
「唸るんじゃないよ! 真面目にやりなさいよ!」 「わぅう……」
「また折檻するぞ!」 「!!! わんっ! わんわんっ!」パタパタ
「喜んでんじゃないよ! 折檻してやらないぞ!」 「!!! わぅん……」
「よし、これでノルマは達成っと……」 「わんっ♡」
――閑話休題――
「さて、ちゃんとリストの内容は終わったぞ。これでいいんだろ?」
「うむ。ご苦労だったな」
アヌビスの無茶ぶりから解放されてため息を吐く男と、どこか嬉しそうなアヌビスはそんな会話を交わしていた。
「だがな、お主は一つ忘れてはいないか?」
「何をだ?」
アヌビスの問いかけに男は疑問を返す。
何も分かっていない様子の男を見て、アヌビスは呆れたように首をすくめた。
先程までの雌犬ぶりはすっかり鳴りを潜め、落ち着いた知的な顔を取り戻している。
「これだからお主は……。全く、乙女心を分かっておらぬ」
「鞭で叩かれて発情する雌犬には言われたくないわ」
「雌犬……はふぅ、何という甘美な響き……♡」
「おい、話が進まんから帰ってこい」
頬を平手でぺしぺしと叩かれるアヌビス。
幾発か叩かれてようやく、どこか物足りなさそうな顔をしながらも緩んだ表情を引き締めた。
「んで、何を忘れてるんだ?」
「仕方あるまい。私直々に教えてやろう」
アヌビスはそう言うと、徐にあるポーズをとった。
「……ちんちん?」
「うむ。お主よ、この姿を見て何か気づくことはないか?」
「……いやえっと、いざ正気に戻ると何やってたんだろうなって罪悪感が湧いてきて正直それどころじゃ――」
「莫迦者! 私の体を見て何とも思わんのか!」
そう怒鳴られて、男はしげしげとアヌビスの体を眺める。
「魔界銀製でも鞭の痕って残るものなのね、痛くない?」
「違うわ! ここだここ!!」
声を荒げてアヌビスはある一点を指し示した。
指し示された箇所――小さな下着で隠された秘部――には、粘性のある透明な液体がへばりついていた。
所謂、愛液という奴である。
「嫁のこんな姿を見ても何とも思わんのか! 全く嘆かわしい……」
「いや、してほしいんならそう言えばいいと思うんだが……」
男の反論を聞くと、アヌビスは複雑な表情を浮かべた。
目線は男と中空の間を行き来し、なかなか話そうとしない。
しかし、男から何の反応も得られないことを悟ったのか、観念したかのように顔を赤らめて俯き、
「だって、恥ずかしいもの……」
そんなことを宣った。
「…………」
「…………」
二人は真顔になって、お互いの顔を見つめ合った。
一瞬だけ、辺りが静かになった。
一瞬だけだった。
「なーにを今更恥ずかしがってんだ! 普段やってる行為の方が余程おかしいとは思わんのか!」
「莫迦者! そもそもお主が私を組み伏せてあんなことをしたからこのような性癖になってしまったのではないかもっと私を詰れ!」
「うっわ面倒臭え! そもそもそんな恰好してるのが悪いだろうが! 襲ってくれっていってるようなもんだぞ!」
「その通りだ、お主にならいつ何時でも構わぬわ! 逆にお主が嫌だといっても私が満足するまで付き合ってもらうことになるのだがな! ――ええいこうしている時間も惜しい、いいからとっとと犯すがよいわ! もちろんバックでスパンキングしながらだぞ!」
「そんな強気にマゾ気質をカミングアウトするんじゃねえぇぇーー!!」
その後、哀れな男の罵声と、嬉し気なアヌビスの嬌声が響き渡ったのは言うまでもない。
18/07/15 00:05更新 / ナナシ