お姉ちゃんと一緒
お姉ちゃん、とボクが呼ぶその人とボクは、血の繋がりがある訳ではない。
共に両親のいなかったお姉ちゃんとボクは、同じような境遇の子どもたちの集まった孤児院で、小さい頃から一緒に過ごしてきた。
やがて、ボクより一足早く孤児院を卒業したお姉ちゃんは、その時にボクのことも一緒に引き取ると言い出した。
お姉ちゃんにはもっと仲のよかった友達もいたのに、何でボクを引き取ることにしたのかはわからない。実際、孤児院の人には反対した人もいたらしい。
それでもお姉ちゃんは意見を押し通して、結局お姉ちゃんとボクは一緒に暮らすことになった。
住宅街を少し外れたところにある、小さな家。そこでの暮らしは裕福では当然なかったけれども、幸せだった。ボクの傍には、優しいお姉ちゃんがいてくれたから。
傍に………いてくれた、のに。
「へいらっしゃい!!おう、坊主じゃねぇか!!元気そうだな!!」
八百屋のひげ面なおじさんはいつも通りに、豪快に笑いながら挨拶してくる。
ボクはそれに頷いて応えると、おじさんに買い物袋を差し出した。
「おじさん。いつものちょうだい」
「いつものだな!!わかった、まかせとけ!!」
おじさんは買い物袋を受け取ると、慣れた手つきで品物を中へと入れていく。あっという間に、袋の中は野菜や果物でいっぱいになった。
「今日はいつも一人で買い物する偉い坊主にサービスしておいたぜ!!」
「本当!?ありがとう、おじさん!!」
買い物袋を返してもらいながらお礼を言うと、おじさんはがっはっは、と笑いながら言った。
「いいってことよ!!お姉ちゃんにもよろしく言っておいてくれよな!!」
「………うん」
胸がずきん、と痛くなって、八百屋さんから逃げるように走って離れた。
とぼとぼと路地のはしっこを歩いて家へと向かう。
「お姉ちゃんによろしく、か……」
………おじさんは優しい人だから、悪気があったわけではないのはわかってる。
ボクたちの家の近所に住んでいる人達は、ボクたちが二人だけで暮らしていることを大体の人が知っている。中にはさっきのおじさんみたいにサービスしてくれたり、余り物のおかずをおすそわけしてくれるような優しい人もいる。
その人達には本当に感謝しているけれど、それでも今、お姉ちゃんの話は聞きたくなかった。
ゆっくり歩いたつもりだったのに、気がついたら自分の家の前に到着していた。
ドアノブを握る手に、少しだけ力が入る。
「お姉ちゃん……」
期待と不安を両方込めて、玄関の扉を勢いよく開けた。
「ただい、ま…………」
挨拶は元気よく言うつもりだった。けど、明かりも何もない薄暗い家の中を見た瞬間、気分も暗くなっちゃって、最後はとても小さな声になった。
家の中には、優しく「おかえり」って言ってくれるお姉ちゃんも、誰もいなかった。
三日前だった。
『ちょっと、隣町行ってくるね。夕飯までには必ず帰ってくるから』
そう言ってでかけたっきり、お姉ちゃんは帰ってこなかった。
初めてのお姉ちゃんが一緒に寝てくれない夜は怖くて布団をかぶりながらわんわん泣いて、窓から朝日が差し込んできた時になってようやく眠った。
探しに行こうにも、近所の人は何も聞いていなかったし、ボクみたいな子どもが一人で街の外に出たりはできないから、どうすることもできなかった。
自警団の人に相談しても、いなくなってから数日ではまともに話も聞いてくれなかった。
お姉ちゃんはどんなに帰りが遅くなってもボクが寝る前には帰ってきてくれたから、絶対に何かあったはずなんだ。そうやって言っても、笑い飛ばされるだけだった。
今日もお姉ちゃんが帰ってくることはなかった。
ボクが眠るまでいつも一緒の布団で寝てくれたお姉ちゃん。
お姉ちゃんがいた時にはなんとも思わなかったのに、今は暗い部屋の中がすごく怖い。
部屋の中ができるだけ見えないように、うつぶせに寝て枕に顔を埋める。枕はボクの涙で湿っていて気持ち悪かったけど、怖いのは嫌だからがまんした。
何も見えなくなったボクのまぶたの裏に、お姉ちゃんの顔が浮かびあがってくる。
ボクが眠るまでずっと隣にある、穏やかな笑顔………。
「………つっ…………ぐす………お姉ちゃん….........」
思い出すだけで、目から涙が溢れてきた。
お姉ちゃん、今どこにいるの？何をしているの？なんで帰ってこないの？ボクのことが嫌いになったの？そもそもお姉ちゃんはボクのことを好きだったの？なんであの時ボクを引き取ったの？
聞きたいことが山ほどあふれてくるのに、お姉ちゃんはいない。
寂しくて、悲しくて、たまらなかった。
泣きじゃくるボクの口から、勝手に願いごとがこぼれ落ちる。
「お姉ちゃん………!!早く帰ってきてよ…………!!」
「泣かないで。ほら、お姉ちゃんならここにいるよ」
その時、ボクの耳に聞き覚えのある声が届いた。
その声は、絶対に忘れない、優しくて、暖かくて、子守歌も歌ってくれた、ボクのたった一人の………。
「お姉ちゃん!!」
顔を上げた瞬間、言葉を失った。
ボクの部屋の窓、いつの間にか空いているそこの枠に座っている女の人はお姉ちゃんではなかった。
いや、確かに月明かりに照らされているその顔と窓から入ってくる風になびく桃色の髪は間違いなくお姉ちゃんのものだ。
だけど、あの人はお姉ちゃんじゃない。
頭の山羊みたいにねじれた短い角。背中には小さな羽と、先っぽがハート型の尻尾。そして何より、体中から生えた髪の色と同じ色の毛。
その姿はどう見ても、魔物。
「ただいま、ニコ」
窓枠から降りてボクの名前を呼ぶその人はお姉ちゃんと同じ顔なのに、それをお姉ちゃんの顔だと思えない。
「そ、それ………お姉ちゃん、なんで…………」
震える声でそう尋ねる。それだけ言うのが精一杯だった。
「驚いちゃった？隣町に行く途中で、サキュバスさんに襲われちゃったの。でもね、大したことじゃないんだよ。お姉ちゃんね、今とっても気分がいいの」
お姉ちゃんがとろんとした表情になる。
いいって、なんで？お姉ちゃん、もう人間じゃないんだよ？
「そんなことより今、お姉ちゃんはニコのことを食べてみたいな」
「ぼ、ボクを……？」
お姉ちゃんは、ライオンがシマウマを狙うときみたいに鋭い目をしていた。お姉ちゃんのそんな目は見たことがなくて、急に怖くなった。
もしかして、お姉ちゃんが戻ってきたのは、ボクを食べるため………？
だとしたら逃げないと……!!で、でも逃げようとしても、ドアも窓もお姉ちゃんの後ろだから、駄目だ。ど、どうしよう……。
「怖がらないでいいんだよ。食べる、っていってもあなたの考えてるような意味じゃないから。……そっかぁ、わかんないかぁ……」
ボクが考えていることがわかったみたいにお姉ちゃんは言ってくすり、と笑うと、ベッドに腰かける。
「それじゃあ、お姉ちゃんが優しく教えてあげる。心配しないで、お姉ちゃんがすぐに気持ちよくしてあげるからね」
そう言ったお姉ちゃんの目が怪しく光る。
あれ………なんだか頭がぼうっとして、むずかしいことが考えられなくなってきた………….
ボクの目の前には、お姉ちゃん……あ、お姉ちゃんがボクを呼んでる……行かないと………お姉ちゃんの、望むままにしないと………
孤児院にいた頃、お姉ちゃんはみんなから憧れられるような人だった。
小さい子の面倒は自分から見てくれるし、頼まれなくても誰かの手伝いをしてくれていたから、先生からもよく褒められていた。
ボクもそんなお姉ちゃんに憧れるうちの一人で、あの頃は将来お姉ちゃんみたいな人になるっていう夢を本気で持っていた。
『駄目だよぉ。ニコは男の子なんだから、私みたいな人じゃなくて、もっとかっこいい人にならなくちゃ』
その夢をお姉ちゃんに言ったら、お姉ちゃんに苦笑いされた。
その日以来、ボクの夢は『お姉ちゃんを支えられるようなかっこいい男の人になる』になった。
でもその夢を考えた時、心のすみっこでは違うことを考えていた。
もしボクが女の子だったら、お姉ちゃんみたいになっても良かったのかなぁ………。
「……あれ……ボク………？」
気がついた時、ボクはベッドで眠っていた。窓からは朝日が差し込んで、部屋の中を明るく照らしていた。
横を見たら、お姉ちゃんがすやすやと寝息をたてている。
「やっぱり、夢じゃなかったんだ…………」
『だ、駄目!!お姉ちゃんそこ汚いよぉ!!』
『うぅん、そんなことない。あなたのここ、とっても綺麗…………』
『何か出る!!何か、出ちゃうぅぅぅ!!』
『いいのよ、出して。あなたのを、私の口の中にちょうだい………』
『あ……入った……………♪』
『お、お姉ちゃんもうやめてぇ!!ボク、変になっちゃうぅぅ!!』
『ふふ……これで、いつまでもお姉ちゃんと一緒、だね…………』
『あ……………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
目を閉じると蘇る、昨日の光景。
……うぅ。ボク、お姉ちゃんになんてことを…………
恥ずかしくて頭を抱えると、何か固いものが手に触れた。
…固い物？何だろ、これ。
手に取ろうとして引っ張ってみたら、髪の毛を掴んだみたいに頭が引っ張られて取れなかった。
これ……生えてる…………？
確かめるために、お姉ちゃんが起きないようにベッドから出て、洗面所へと向かう。
そして、洗面台に顔を映したボクは、ショックのあまりに固まった。
「こ、この子……………ボク………………？」
鏡に映っていたのは、ボクそっくりの顔をした上着を何も着てない女の子。
でも、頭の角と背中の羽と尻尾は間違いなく、お姉ちゃんと同じ魔物である、ということを意味していた。
ためしにほっぺをつねってみると、鏡の中の女の子も同じことをする。
手を離すと、さっきまでつねっていたほっぺは当たり前に痛かった。
「夢じゃ、ない…………」
口にすると、ようやく自分の両足の付け根が、なんだかおかしく感じることに気づく。
まさかと思ってズボンとパンツを降ろすと、そこには昨日まであったものが何もなくて、代わりに一本の線みたいなものが引いてあるだけだった。
………昨日見たお姉ちゃんのやつと一緒だ。恐る恐る、そこに手を伸ばしてみる。
「ひゃうん!?」
軽く触っただけなのに体中がビリビリして、立っているのがやっとなぐらいに力が抜けた。
な、何なのこれ!?どうしてこうなっちゃったの？そこまで考えて、はっとした。
「………お姉ちゃん？」
「お姉ちゃん、起きて!!」
「ん……。もうちょっとだけ寝かせて………」
ボクが必死になって体をゆすっても、なかなかお姉ちゃんは起きない。
お姉ちゃん、いつもはここまで朝に弱くなかったんだけど。魔物になっちゃったせいかな？
「お願いだから起きて!!ボク、大変なことになっちゃったんだよ!!」
「んー…………。なにー？朝から…………？」
目をこすって、お姉ちゃんが半分寝ぼけたままようやくベッドから出てくる。
出てきたお姉ちゃんの姿は、昨日と変わっていた。体中の毛はなくなって、角は少し伸び、更に羽が大きくなっていた。………なにより、裸だった。
「………君、誰？」
どうやら目が完全に覚めたらしく、そんなことを聞いてきた。
「ぼ、ボクだよお姉ちゃん!!ニコだよ!!」
「でもニコは、サキュバスじゃないよ？」
「そ、それは……ボクもなんでか、わかんなくて………」
「ふ〜ん？…………」
納得できないみたいで、お姉ちゃんは手を口に当てて何かを考えている。
「じゃあさ、お姉ちゃんに話してくれた昔の夢って、なんだっけ？」
「……!!『お姉ちゃんみたいな人になること』!!」
「………正解。じゃあ、本当にニコみたいだね………」
問題にすぐに答えると、どうやらお姉ちゃんは信用してくれたみたいで、ほっと胸を撫でおろす。
お姉ちゃん以外の人に言ったことなくて、よかった………
「………ねぇ、それならちょっとこっち来て」
特に何も疑わず、お姉ちゃんが手招きするままに近づくと、腰に手を回されて抱き寄せられた。
そして、お姉ちゃんの顔が近づき、ボク達の唇が重なった。
「んむぅ!?」
それにびっくりする暇もなく、お姉ちゃんの舌がボクの口の中に入ってくる。
「ん……...ちゅ…………れろぉ………………」
お姉ちゃんの舌がボクの口の中を激しく動き回る。そのなめらかな感覚に、ボクはつたなくも無意識に自分の舌を絡ませることで応える。
やがてお姉ちゃんが唇を離すと、名残惜しむかのようにボク達の間に銀色の糸が繋がった。
「ふふ…………………♪確かにニコの味がするね」
満足げに微笑むお姉ちゃん。
―――なんだろ……………なんか体が、熱い……………
「はぁ…………はぁ……………はぁ……………」
「あらあら、キスだけで発情しちゃったの？その物欲しそうな目、まるで男の子みたいだよ？」
くすくすとお姉ちゃんは笑うと、ボクの両腕を掴んで、そのままベッドへと押し倒した。
「あ……あの………お姉ちゃん…………？」
「そんなえっちなニコが本当に女の子になっちゃったのか、お姉ちゃんが確かめてあげるね♪」
「い、いいよ別にそんな………あぅ!?」
お姉ちゃんの片方の手が腕から離れて、代わりにボクの胸を優しく掴む。
たったそれだけのことなのに、柔らかくなった胸から伝わってくるお姉ちゃんの手の感覚に、ボクは思わず声を出してしまった。
「ちょっとサイズ小さいみたいだけど、本当に女の子の胸なのかなぁ？これ」
「そ、そんなこと、言われても、わかんな、あっ!!」
手でゆっくりともみほぐしながら、お姉ちゃんは意地悪そうに言う。でも、初めての感覚で体中がおかしくなってるボクには、答える余裕すらもなかった。
「女の子だったら、そろそろ固くなってきた頃かな？」
二本の指がボクの胸の先をつまむと、軽く引っ張られる。
「い、痛い………」
「あ、ごめんね。なら、手以外を使って確かめないとね」
そう言ったお姉ちゃんの顔が近づいてきて、ボクの胸へとしゃぶりついた。
「あぁう!?」
舌でつんつんと突かれたり、全体をなめ回されたりして、ボクの胸はお姉ちゃんの口の中で遊ばれる。
そんなとこなめても、何も出ないよぉ………
そんな当たり前のことでさえも言えない。それぐらい、昨日とすら比べものにならないぐらいに強い電流のようなしびれが全身に流れる。
「ん……ぷはっ」
ようやく、お姉ちゃんの唇がボクから離れた。
「はぁ……はぁ……はぁ………」
「うーん、お胸は柔らかかったけど、これだけじゃ女の子かどうかわかんないなぁ？」
にやにやと笑いながら、お姉ちゃんはボクのズボンへと手を伸ばす。
「ちゃんとここも調べないと、ね？」
体に力が入らなくて止めることもできず、ズボンとパンツが降ろされて、朝の肌寒い空気にボクの足と足の間が晒される。
見なくても、そこはお漏らししちゃったようにぐっしょりと濡れているのがわかった。
お姉ちゃんが二本の指を使って、ボクのそこを押し広げる。
「わぁ……きれい………」
「や、やだぁ………見な、いで………」
じーっと、お姉ちゃんにボクもまだ見ていないそこを見つめられる。
じわり、とそこが熱くなって、シーツに新しい染みを作った。
「見られただけで感じちゃったんだ……えっちだね、ニコ」
うぅ………恥ずかしいよぉ………
「サキュバスだってこんなに敏感じゃないし……やっぱり、きちんと調べないとね♪」
「し、調べるって、何を、あぁぁぁぁっっ!?」
ぐちゅり、と音がしてお姉ちゃんの細くて白い指が、ゆっくりとボクのそこへと入ってきた。
指がこすれる度に広がるおかしな気持ちは、さっきのそれよりもすごく強い。
「あぁっ!!やら、ゆびっ、いれるの、やめれぇ!!あっ、うあっ!!」
もはやろれつすらも回らないぐらいに体中が変になっているのに、ずぶずぶと中に食い込んでいく指を逃がさないようにと、ボクの体は勝手にきゅっと締まる。
「へんだよぉ………なんれ、へんな、きもち、なのに、しま………？」
「ふふ、なんでだと思う？それはね…………」
お姉ちゃんがボクの耳元で、そっと囁く。
「『気持ちいい』、ってことなんだよ」
「気持ち、いい………？」
「そうだよ。ニコの体はね、お姉ちゃんの指が入ってきてね、喜んでるの。いじってもらえると気持ちいいから、もっとやってくださいって、きゅうっと締め付けるんだよ」
入れる動きしかしていなかった指が、不意に曲がって中で激しく動き回り出す。
「あっ、やっ、やぁぁぁぁ!!」
その刺激に耐えられなくて、大きな声を出してしまう。
「ね？『気持ちいい』、でしょ？」
………………気持ちいい。
ゆっくりと、その言葉がボクの中に染みこんでいく。
………そっか。昨日からずっと、ボクは気持ちよかったんだ…………
そして、ボクを人間でいさせてくれた何かが、音を立てて崩れていったのを感じた。
「うん………ボク、気持ちいいよ…………お姉ちゃぁん……………もっとぉ……………もっと気持ちよくしてぇ……………ボクのなか、ぐちゃぐちゃにかき混ぜてぇ……………」
「もちろん、いいよ」
そう言って、お姉ちゃんの指の動きが速くなった。
それがすごく気持ちいいって、ボクの体中から伝わってくる。
「ふぁっ、あっ、いいよぉ!!おねえちゃんのゆびぃ、きもちいい!!」
「ふふ、すっかり女の子みたいになっちゃったね。それじゃあ、調べ終わったことだし、お姉ちゃんが女の子の体の気持ちよさ、教えてあげる………」
「ふぇ？」
言いながら、お姉ちゃんの指がボクのなかから徐々に抜かれていく。
「やだぁ、抜かないでよぉ……………」
締め付けてもボクが気持ちよくなるだけで動きは止められず、お姉ちゃんの指はボクの外に出ていってしまった。
ぺろり、と濡れた指をお姉ちゃんは舐め取る。
「心配しないで。これからもっと、気持ちいいことするんだから…………」
お姉ちゃんが自分の尻尾を握って、ボクのそこを軽くつつく。ひょっとして、これが入るの…………？
「いくよ………」
ずぶり。
尻尾が、入ってきた。
「あっ…………ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!ああっ♪あっ♪あっ♪はあっ♪」
何コレ!?すごい!!すごいよ!!頭の中、ふわふわする!!真っ白になるぅ♪お姉ちゃんがごりごり入って来るよぉ!!こんなのボク、ぐちゃぐちゃになって、壊れちゃうぅ♪
「ニコ、ニコぉ…………!!」
あ…………お姉ちゃんも、叫んでる………♪お姉ちゃんも気持ちよくなってるのかな………♪なんでかわかんないけど、今、とっても、嬉しい………♪
「お姉ちゃん、お姉ちゃぁん…………!!」
「ニコぉ………ごめんね、私もう駄目ぇ…………出る、出ちゃうぅぅぅ!!」
出すってなんだかよくわかんないけど、なんでだろ♪ボク、今すごく出して欲しい♪
「いいよお姉ちゃん!!出してぇ!!ボクのなかに、いっぱい出してぇ!!」
「そんな……可愛いこと………言われ、たら…………あっ…………ああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」
びゅるるるるぅっ!!
目の前が真っ白になって、体中から伝わる『気持ちいい』の感覚に耐えられなくなったボクは、そこで意識を失った。
「ニコ…………大好き…………」
意識を失うほんの前、とろけた表情のお姉ちゃんが見えたような気がした。
「ニコは多分、アルプになっちゃったんだと思う」
目が覚めたボクに、お姉ちゃんはそう説明してくれた。
「アルプ……？」
「うん。お姉ちゃんみたいなサキュバスがね、男の人を襲うとたまに男の人が魔物になっちゃうんだって。それが、アルプっていう魔物」
「…………元には、戻れないの？」
少し黙りこくった後、お姉ちゃんはゆっくりと首を縦に振った。
「…………そっか」
「ニコ。怒るんだったらいいんだよ、怒って。全部お姉ちゃんが悪いんだから…………」
怒っていいなんて嘘だ。
だって、お姉ちゃん今すごく悲しそうな目をしてる。さっき、自分のことをサキュバスなんて言ってたけど、その表情は人間だった頃のお姉ちゃんそのものだった。
お姉ちゃん、魔物になっても嘘をつくのは下手なんだね。
「ううん。ボク怒ってないよ、お姉ちゃん。………むしろ、今は嬉しい」
ボクの言うべきことはもう決まっていた。
「だって、この体なら叶えられるんだもん。昔からの夢………」
「夢…………？まさか、それって………」
「そうだよ。ボク、お姉ちゃんみたいな人になりたい。今ならいいでしょ？もう、ボクは女の子なんだから」
そっと自分の胸に手を置いてみる。
そこには、小さいけれども柔らかい、ボクの体の膨らみが確かにあった。
「だから、そんな寂しいこと言わないで…………お姉ちゃん、一緒にいてよ……………」
言い終わると同時に、お姉ちゃんに強く抱きしめられた。
「…………ニコはすごいね。私の夢まで一緒に叶えちゃうなんて」
「え？お姉ちゃんの夢って………」
「お姉ちゃんの夢はね。いつまでもニコと一緒にいることなんだよ。孤児院にいた頃から、ずっと………」
驚いて顔を上げると、お姉ちゃんは優しく笑っていた。
「ニコ、これからも一緒だよ…………お姉ちゃんと二人で…………」
お姉ちゃんが一緒だから、もう夜は怖くない。
お姉ちゃんと一緒だから、ボクの夢はきっと叶う。
11/04/30 22:41更新 / たんがん