読切小説
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村を救った男の末路
俺の生まれた村はあまり裕福とは言えない村だったが俺はこの村が好きだった。

俺が十五の頃、村の作物が不作で飢饉に見舞われた。

なんとかして村を救いたくて考えてたところに少し遠くにある町のギルドの人が来て一泊させる代わりに相談したんだ。

「お前、ギルドに入ってみねぇか?」

それからその人のところでいろいろ教えてもらって、稼いだ金は全部村に送った。

必死に頑張ってた甲斐あって、村はなんとか飢饉を乗り越えれた。

だがまたあんなことにならないよう、その後も俺は村への仕送りはつつ、たまに村に戻るときもあるけど、依頼はきちんとこなしていた。



そんな時ギルドに一つの依頼が来たんだ。

依頼内容はとある男が持っている指輪を取り返してほしいとのこと。

報酬はいい感じの額だったが、誰も受けようとしないので俺が受けた。

個室で詳しい話を聞くと貴族の坊っちゃんが家出した時にその家の当主が代々受け継ぐ指輪を持って行ってしまったそうだ。

その坊ちゃんの場所はわかっているそうなので、その場所の地図をもらい俺は準備してその場所に向かった。



地図に書かれた場所は森の中に隠れた洞窟だった。

洞窟内は明るく壁に松明もあった。

家出した後は何をしたのだろうか?

多少の疑問を抱えながら俺は奥へ進む。



洞窟に入ってすぐだろうか少しふらついてきた。

少し休もうかと思ったがこの洞窟についたのが昼ごろだから、

もし指輪を見つけてでると外は夜になりかねない、

洞窟より夜の森の方が危険だろう、

・・・休んでる暇はないな。

少々フラフラしつつも俺は前へ進んだ。



奥に人影が見えた。

後をつけようと後を追って曲がり角から少し顔を出した。

見た先にいたのはジャイアントアント・・・となるとここはジャイアントアントの巣なのか。

あの子はおそらく巣の警備員なのだろう。

見つかるとよくなさそうだがてっとり早く聞き出した方がいいか。

コッソリ近づいて持ってきていた縄で後ろから腕を縛った。

縛った時このまま押し倒したい気持ちになったが・・・なんとか抑えれた。

縛った子に坊っちゃんの写真を見せて聞いたらすぐにわかった。

話を聞くと彼は女王蟻の伴侶で指輪は常に身に着けてるらしい。

そう話した後女王蟻に合わせる代わりに縄をほどいてほしいと言ったので、縄をほどいた。

その後、彼女の横を歩きながら女王蟻の部屋へ向かった。



歩きながらつい、彼女を横目で見ていた。

あの体を・・・そう思って彼女に手を伸ばそうとしていた。

いけない、いけない!仕事、仕事!

村を捨てて女に走るなんてことはしたくはないんだ。

あのまま縛ったままだったら部屋に行く前に襲っていたかもしれないな・・・



そうこう我慢していたらなんとか女王蟻の部屋の前へ着いた。

彼女に「少々待っていてください」といって先に中に入っていった。

中の状況を確認しに行ったのだろう。

少したったら彼女が「お待たせしました、お入りください」と呼ばれたので部屋に入った。



部屋に入り正面にいたのは写真と同じ坊っちゃんがベットに座ってその後ろから女王蟻が彼に抱きつくようにもたれかかっていた。

こちらの事情を話しなんとか条件付きで指輪はもらえるようになった。

条件は先ほど連れて来てもらった彼女を襲わずに巣の出口まで一緒に行ければいいそうだ。

指輪をもらいそのまま彼女と一緒に部屋を出た、坊っちゃんの企みに気付かずに・・・



彼女に案内してもらながら出口へと進んだ。

二人で歩いて、彼女は無言に耐えられなくなったのか話しかけてきた。

俺は襲いたくなるのを我慢しつつ彼女と他愛無い話をし始めた。

この巣の上の森の事だったり、俺の所属するギルドのことだったり、

いろいろ話していていつの間にか話が俺のことになっていた。

俺の村の事、今の仕事をしてるわけなど普段他人に言ってない事まで口走っていた。

そんな話をしていたら出口まで来れた。

日はまだ高い、日が暮れるまでには森の外に出れるだろう。

出口まで来れたので指輪はそのまま持って行ける・・・だが、そう考えてた時彼女に腕をつかまれた。

つかむ力は弱かったが彼女の顔は涙ぐんでいた。

止められないとわかっててつかんで泣いてくれているのだろうか?

「ごめんね」と言ったらゆっくり腕を放してくれた。

彼女を尻目に俺は依頼主との合流場所・・・俺の村に向かった。



依頼主に指輪を渡し報酬をもらった時すでに日は傾いていた。

日が暮れるまでにギルドに戻れないとは思ってたので、俺はギルドに戻らずに
昔慣れ親しんだ家に帰った。





翌日朝起きて村長に話をしようと家の扉を開けたら彼女がいた、

いや彼女だけじゃない他のジャイアントアントもいる!

彼女に問いただしたらあの坊っちゃんの企みで元々は俺の家を別荘にしようとしていたらしいが彼女が俺の事を話したら「ふむ・・・ならいっそのこと村ごと俺たちの愛の巣にしようか」と。

そう話し終わった後彼女は俺に抱きついてきた。

昨日、俺が返った後、女王に話して夜通し俺の村の地下まで頑張って掘っていて今日は一日お休みがもらえたと。

「ねぇ・・・わたし・・・もう・・・」

その言葉を聞いた瞬間理性が飛びそうになったが少し冷静に考えて彼女を家に引き入れベットへ運んだ。





あれから一週間たった。

村は活気に満ち溢れていた。

昔の村長は今の村長・・・あの坊っちゃんに村長の座を渡した。

あの坊っちゃんはそれから彼女たちやその伴侶を連れて来ていろいろしてくれてる。

結構いい人なのだがなぜ家出したか聞いたら領主である親のやり方が気に食わなかったそうだ。



今俺は彼女といる。

彼女は企みの事は聞いていたそうだ。

あの時の涙は一生の別れを悔やむ涙ではなく一時的な別れを惜しむ涙だったのか。

そんな話もしながら俺は活気づいている村を彼女と一緒に見れる幸せを今も享受している。


11/12/09 02:56更新 / LCND

■作者メッセージ

タイトルと本文に若干ズレを感じますが筆者の想像力不足ですすみませんm(_ _)m

ジャイアントアントの項を見て「これは町の乗っ取りいけるかな」と考えてなんとか書ききれました

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