読切小説
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崖の下の花
季節は冬から春の変わり目

俺は暇つぶしに外の景色を見ようと山を登って切りたった崖から顔を乗り出していた。

ふと気が付いた

他と比べると異様に大きい花がありそれは花弁が蕾ように閉じている。

その花を見ていた時だった。

花弁が開き中から女の人が出てきたんだ。

俺はその光景に目を奪われた。

綺麗だった。

彼女の姿すべてが綺麗だった。

その時わかったんだ、俺は一目ぼれをしたんだと。






俺の町は親魔物領に近い反魔物領で、町の周りはほぼ山で山の頂上から外は崖になってて外に行くには北と南にある門をくぐらなければならない、こんな地形だから特に目立った物はないのだが教団の人達がたまに来たりする。

そんな退屈な場所に俺は生まれた。

家業を適当に手伝いつつ生活してた俺は暇だった。

そもそも家業を継ぐのは兄なのだから俺はやらなくていいはずなのに「暇なら手伝え」と親父が言うからまあ暇だから手伝っている。

そんなときふと思ったんだ。

町の外を見たことないな、と。

だからと言って旅をする気のない俺は山の上から外の景色を眺めようと山に登ったんだ。



春、私にとっては憂鬱な季節。

だって私の周りには誰もいないのだもの。



帰ってた時、俺の頭の中は彼女のことでいっぱいだった。

翌日 親父に「お前・・・どうしたんだ?」と言われた。もう一度彼女を見たくて手伝いをさっさと終わらせたんだが、兄に「熱でもあるんじゃないか?」とまで言われた。いいじゃないかそんな事より彼女を見に行きたいんだ。

親父達から解放されてすぐに俺は山を登った。

登るのにそんなに時間はかからない、俺は全力で駆け上がった。



寂しい。

私には友達少ない。

たまに来るハーピー、町とは逆の方向の山の向こうに巣があるブラックハーピー、結構遠くから来るハニービーくらい、周りは崖と森なのだけど崖の向こうは反魔物領の町でそのせいで森には人は通らず野生動物くらいしかいない。

そして今も誰もいない・・・でもなぜだか視線を感じる。

森にツルをのばしたのだけど、やっぱり誰もいない・・・誰かいるなら話相手にでもなってほしいのに・・・



俺は夕方まで彼女を見ていた。

彼女はどこか寂しそうにしていた。

彼女に直接会いに行こうか、いや、彼女は魔物だ俺を食っちまうかもしれない、でも・・・

と、俺は考えながら山を下りた。

翌日 今日も手伝いをすぐさま終わらせて彼女を見に行こうとした時に「ちょっと、そこの少年」見た目は同じくらいの歳であろう行商人に呼び止められた。

ただの売り込みかと思って無視しようと思ったら「君、何か悩んでないか?」と言われ
急ぎたかったが売り込みではなく相談に乗ってくれるらしい、迷ったが俺はその言葉を聞き入れて相談することにした。

彼に相談していろいろな事を知ってやるべき事が分かったが、そうなると少し準備が必要だな。

俺はすぐに彼女に会いに行くための準備を始めた。



ハーピーが来てくれた。

昨日町の近くの空を飛んでいた時に私を崖の上から見ていた人がいたらしい。

崖の上ってことは町の人間かな?どんな人かな、流石に崖の上まではツルは伸ばせないと思うけど・・・頑張って伸ばしてみようかな。



準備するのに1日かかった、でもこれで彼女に会いに行ける。

彼女は俺を受け入れてくれるだろうか?

まだ一言も話をしたことはないが、彼女は寂しい顔よりも笑顔が似合うと思うんだ。

もし、会って寂しそうなら彼女が笑顔になるよう頑張らねば。



朝 私の周りには誰もいない。

だけど日が出るのは昼よりあと、朝は崖の陰になってしまう。

ふと昨日のハーピーの話を思い出して崖の上を見てみた。

私は驚いた、人間がロープからぶら下がっているのだから。



昨日すぐに準備して「明日(今日)は家の手伝いはできない」と親父に伝えておいた。

俺は彼女に会いに行く。

親魔物領に近いせいで普通に町の外へ行くには門を通らなければいけないが町の住民が通るには許可が要り、とくになにかなければ許可は下りない。

だが、崖から直接彼女のところまで下りられれば問題ない。

だから今、昨日彼から教えてもらった方法、ロープを使って直接会いに行こうとしているのだが、普段体を鍛えてるわけではないのでもう疲れて降りるペースが落ちてきた。

少し休んでまたおり始めようと下をみた時彼女と目が合った。



彼は私と目が合って手を振ってくれた。

会いに来てくれるの?私がそう思った時。

彼が真っ逆さまに落ちてきた。



油断した。

彼女と目が合ったのがうれしくて力を緩めてしまった。

手を振ったのがいけなかった。

手を振った勢いで真っ逆さまに落ちていくことになったのだから。

「このまま俺は死んでしまうのか、彼女と話せず一生を終えてしまうのか」そう思いながら俺の意識は落ちていた。


意識が戻った時俺は彼女の花の中で抱きしめられていた。



彼が真っ逆さまになって落ちてきた時、私はツタを伸ばして落ちてきた彼を捕まえた。

あんな事をしてまで私に会いに来てくれた人、絶対に離さないんだから!

彼の意識が戻って彼の第一声「あなたに一目惚れしました!付き合ってください!」いきなりそんなこと言われたけど私の返事はもう決まってる。



告白した。

話すとかいろいろすっ飛ばして告白してしまった。

でも彼女は「恋人じゃなくてお嫁さんにしてくれるならいいわよ」と言いながらキスしてくれた。











あれから数日がたった。

家の事や町の事は心配だけど

俺は今、彼女と話しをしたりエッチしたりで幸せです。


私は彼が来るまで寂しかった。

でも彼が来てくれたおかげで毎日が楽しいの。

近々とあるサバトが彼の町に攻めるみたい。

親魔物派の町になったら彼のお義父さんに会ってみたいな。
11/12/02 01:10更新 / LCND

■作者メッセージ
初投稿です

書こうとしたものは
教団の人間から逃げる→アルラウネがかくまう→そのまま結婚
だったはずなのだが・・・どうしてこうなった

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