連載小説
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第八楽章〜なぜ彼の者は追われるのか〜
母が、死んだ。
数ヶ月前から病に伏していたが、その病が原因で、息を引き取った。
それから一ヶ月ほど、僕は活動を休止した。
幼くして父親を亡くした僕にとって、母は僕の何よりも大切な人だった。
大好きなものは、全部母からもらっていた。
そんな母が、いなくなってしまった。
僕は、できうる限り盛大な葬儀を執り行った。
たくさんの人が葬儀に参列したのを見て、僕は本当に母がいなくなってしまったんだと、認識せざるを得なかった。
……葬儀を終えてから二週間ほど、僕はただ生きている人形のようになっていた。
ただ食事をし、寝るだけの生活を送っていた。
そんな僕を見た友人が、僕のことを叱ってくれた。
そして僕は、母のために頑張って生きていくことを決めた。
タイミング良く、僕に演奏して欲しいというところがあったので、僕はそこで母のためのレクイエムを演奏して、そこから始めていこうと思った。
それが、悲劇の始まりだった。
演奏会当日、僕は一心不乱にピアノを弾いた。
弦を一つ打つたびに、楽しかった母との思い出が思いだされ、そして、そんな時間はもう過ごすことが出来ないのだと、思い知らされる。
何度も暗闇に飲み込まれそうになりながら、僕は必死にピアノを弾く。
この演奏が終わったら、今度は、母が残してくれたものを誰かに伝えていこう。
そう思いながら、僕は最後の曲を弾き終える。
音の余韻が消え、静寂だけがその場を支配する。
拍手の音は、ない。
……失敗、したかな?
そう思いながら僕は椅子から立ち上がり、観客席の方を見る。
……最初は、なにも気づかなかった。
少しして、なにかがおかしいと気がついた。
なにかがおかしいは、観客がピクリとも動かないことだった。
……観客席には、生者はひとりもいなかった。


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「……そしてその惨状を見た僕の悲鳴を聞いて、警備をしていた騎士団の人たちが駆けつけて、怖くなって逃げ出して……そして追われるようになった。それが、僕がもうピアノを演奏できない理由で、教会に追われるようになった理由。そして、二年前に起きた大量殺人事件……“レクイエム事件”の概要です」
「………………」
「……そんなの、そんなの……ハーおにぃちゃんのせいじゃないよ!!」

話し終えると、メリカさんは黙り、アミリちゃんは僕を擁護する。
……でもねアミリちゃん、残念ながらその考えは簡単に崩せちゃうんだよ。
僕がそう思って説明しようとすると、メリカさんが、いや……とアミリちゃんの言葉を否定する。

「状況だけ見れば……いや聞けば、ハーラデス殿が原因であるとしか考えられんな、残念なことに……」
「なんで!?」
「場所はホールという狭い空間。その中で、殺人者が現れて人を殺したとしよう。誰にも気づかれずにホールの人間全員を殺せると思うか?……同様の理由で暗殺者という線もなしじゃ」
「それじゃあ……」
「“なにかたくさんの人が死んじゃうような術式を誰かが使ったんじゃないかな”、か?あながち間違えでもないが、それこそ無理じゃ。たしかにあるといえばあるが、それを使えばホール内など広くてもその効果は全域に及ぶ。つまり、術者以外は皆死ぬということになる。そして、あの事件の生き残りはハーラデス殿だけじゃから……」
「どちらにしても、まず僕が疑われるってことだね」

しかも、その状態で逃げちゃったんだから、もう犯人ですって言っちゃったのと同じだよね。
メリカさんの言葉を引き継いでそう説明すると、アミリちゃんは、でも、ハーおにぃちゃんは……と呟きながら、下にうつむいてしまった。

「しかし、状況的にハーラデス殿が犯人だとしても、わしはそれは事故のようなものだと思うんじゃが……というか、ピアノを弾いて人を殺す、などにわかに信じがたいしの」
「それでも、あそこには他に誰も生きていなかったし、侵入者がいたなら、警備をしていた人が気づく。扉以外から人は入れないですからね……だから、僕が犯人。そして、僕のピアノがみんなを殺した……」
「……腑に落ちんの……」

僕の言葉を聞いて、メリカさんは訝しげな顔をする。

「なぜ、お主は自分の演奏が人を殺したと断言できる?例えお主が人々を殺してしまったとしても、その原因がピアノだったとは思わないのではないか?」
「そうですね。一回だけなら、ピアノで人が死んじゃうなんて、思いませんでしたよ」
「一回だけなら……?まさか……!!」
「……ええ。事件は二回ありました」

僕がそう言うと、アミリちゃんはピクリと反応して、顔を上げる。

「……言い訳するわけじゃないですけど、やっぱり、原因がわからなかったですからね……お世話になってる村にピアノがあったから、弾かせてもらって、それで……」
「……なるほど、な。いや、仕方がなかろうよそれは、当然じゃ。普通は自らの演奏が人を殺すなんて考えもせんからの」

……それでも、人を殺した事実は、罪は消えないですよ。
メリカさんにそう反論しようとすると、その空気を察したのか、アミリちゃんが、キュッと僕の腕を引っ張って止める。
……それ以上は、言っちゃ駄目なの。
瞳が、そう語っていたような気がして、僕は何も言わないことにした。

「……そしたら、今後の方針は、どうにかしてハーラデス殿の手配をやめさせること、じゃな。一番手っ取り早いのは、ハーラデス殿が危険でないことの証明か。なぜピアノの演奏で人が死んでしまうか、まずはその原理を解明せんと、どうにもならんの……アミリ、お主はどう思う?」
「うーん、やっぱり、なにか魔術みたいなものじゃないかな?または……」
「……二人とも、なにやってるんですか……」

二人の話を聞いて、僕はそう呟く。そしてその僕の言葉に、二人は、?と当たり前のように疑問符を浮かべてきた。

「なにって、ハーラデス殿を助けるための作戦会議じゃが……」
「そうじゃなくて……なんで、そんなことするんですか……」
「だって、ハーおにぃちゃんは大切なお客さんだもん!」
「でも、それは僕が逃げればいい話で……」
「それじゃと、根本的な解決にならんじゃろうが」
「根本的な解決って、そんなの無理に決まってるじゃないですか……僕のピアノを聴いた人は、みんな死んじゃうんですよ?その危険性を、なくすことなんて、できるわけないでしょう……」
「いや、そうでもないかもしれんぞ?」

メリカさんの言葉に、僕は顔を上げて彼女の顔を見る。
彼女は、不敵な笑みを浮かべていた。

「ピアノの音で人が死ぬ、というのは普通ではありえない。つまりは、なにかしら魔術などが関わっているということじゃ。そして、ここはサバト。魔術の専門家の多い組織ぞ?どれくらいかかるかわからんが、解明してみせるさ」
「……どれくらいかかるかわからないって、それじゃ駄目じゃないですか。僕はそんなに長くいるつもり、ありませんって……僕がいたら、教団に狙われたり、迷惑がかかりますから……」
「ハーおにぃちゃんはそんなこと気にしなくていいんだよ!」

僕の言葉を聞いて、アミリちゃんはソファの上に立って僕の首元に抱きついてきた。
そんなアミリちゃんを、メリカさんは母親のように優しく微笑みながら、説明する。

「ここは元来よりその利便性から他の国に狙われている街じゃ。いまさら教団に狙われたところで変わるようなことなんてないさ。それに、ハーラデス殿の問題を解決するのは、個人的な理由もあるしの」
「個人的な理由?」
「ああ。わしはな、またお主の演奏を聴きたいのじゃよ。お主が演奏できるようになって、そうじゃのぉ、そしたら、わしのところで演奏会を再び開く、とか、どうじゃろうか?」
「アミィもハーおにぃちゃんのピアノ、聴きたいです!だから、ハーおにぃちゃんは気にせずアミィたちのお世話になっとくです!!」
「………………」

僕が人を殺していたとしても、それでも、まだ僕のピアノを、弾けるようなったら聴きたいと、そう言ってくれるのか、この人たちは。
アミリちゃんたちの言葉を聞いて、僕は少しだけ、心が軽くなった気がした。
でも、だからこそ、僕はこんな優しい人たちに、迷惑をかけたくない。
だから……

「出て行こう、なんて考えてるんじゃないかな?ノザーワ・ハーラデス君?」
「っ!?」

突然に男の人の声が後ろから聞こえたため、驚いて僕はとっさにソファから立ち上がって後ろを振り向いた。
そこにいたのは、白の短髪に翡翠色をした瞳の、眼鏡をかけた若い男の人だった。
服装は、どこか少しだけだらしなさのようなものを漂わせており、身に纏う雰囲気は、今みたいに誰にも気づかれることなく人の後ろを陣取ることなんてできなそうな、どこにでもいる普通の人のようなもの……
しかし、そんな彼から発せられた言葉に、僕はまた驚かされることになる。

「出ていかない方がいいよ。君がここを離れて行った方が、教団にとって都合がいいからね」
「……どういう、ことですか?というかあなたはいったい……」
「……ライカ殿、相変わらずの神出鬼没ぶりじゃが、客人を驚かすことはあまり良いこととは思えんの」

僕を驚かせた彼……どうやら、ライカさんというらしい……を見て、メリカさんは呆れたような顔で注意をした。
どうやら、メリカさんの知り合いであるらしい。
そんなメリカさんの様子を見て、ライカ……さんは、ああ、ごめんごめん。と謝りながら、自己紹介をする。

「突然すまないね。僕はライカ・鶴城・テベルナイト。よろしくね」
「ノザーワ・ハーラデスです。……そんなことより、さっきの言葉、どういう意味ですか?僕がここから離れた方が、教団に都合がいいって……」
「ああ、それは……そうだね、説明するから、座った方がいいね」
「……そうじゃの。ライカ殿はわしの隣にでも座ってくれ」
「ありがとう。……あとで不貞腐れなきゃいいけど……」

メリカさんに促され、ライカさんはブツブツとなにかつぶやきながらもメリカさんの方のソファに座り、そして、話し始める。

「さて、そしたらまず、ハーラデス君に訊きたい。君がお世話になった場所が、今どうなってるか知ってるかい?」
「……い、いえ。ずっと逃げていたんで、どうなったのかは……」
「うん、じゃあ教えると……」

教団側の場所は大丈夫だったけど、中立と親魔物側は教団に制圧されちゃったよ。大罪人を匿ったって理由で攻撃されてね。
……そんなライカさんの言葉に僕は言葉を失った。
そんな、まさかそれって……

「……君は、君を追ってきていた人たちの様子に、違和感を覚えたことはないかい?彼らは、本気で君を捕まえようとしていたかい?」
「……それは、どういう意味じゃ?」
「……本気で人を捕まえようとするなら、まず相手の逃げ道を防げばいい。それか、目的地に先回りする、とか。でも、教団はそのどちらの手も使わなかった。しかも、人数がおかしい。仮にもハーラデス君は大罪人。そんな人を捕まえるのに、たった一人で十分だと思うかい?どんなに優秀な人間も、一人の力ではたかがしれる。教団もそんなことに気がつかないほど馬鹿じゃない。だから教団師団なんてあるだから」
「つまり教団は……」

親魔物側や中立の地域を攻撃する正当な理由付のために、僕を泳がせてたんですね。

ライカさんの説明を聞いて、僕は自分で結論だけをまとめて言った。

「そう。最近は、反魔物でも理由もなくただ悪だからと魔物を狩ることに疑念を抱える人も出てきたからね、そういう人の……」
「……すみません。少し、席を外しますね」

ライカさんがなにか言っているけど、もう僕の耳にはなにも入らなかった。
ただ、呆然と部屋を出ていく。
今はただ、一人になりたかった。


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「……やっぱり、ハーラデス君には辛すぎることだったかな……」

ハーラデス君が部屋を出て行くのを見て、僕はポツリとそうつぶやいた。

「ハーおにぃちゃん……」
「……アミリ、ハーラデス殿のところに」
「……うん」

心配そうなアミリちゃんの様子を見て、メリカ君はアミリちゃんにハーラデス君のことを追わせる。
そして、アミリちゃんが部屋を出ていくのを見届けてから、僕のことを睨みつけてきた。

「ライカ殿、ハーラデス殿はお主がくる前から追い詰められていた。お主は、ハーラデス殿を地獄の淵に立たせるためにあんなことを言ったのか……?」

体からは、怒りと殺気がにじみ出ている。
よほど、怒っているな……
まぁ、仕方がないか。ここの教義は享楽。楽しみ、幸せを享受すること。だから、その逆の感情を引き起こすものを忌み嫌う。
だから、こんなにも過剰な反応をするんだろう。

「……大丈夫、そんなつもりはなかった。僕はその負の螺旋を、止めるために協力しに来た」
「……まさか、ハーラデス殿のピアノの……」
「そう……というか、“そもそもハーラデス君の力は人を殺すようなものじゃないんだよ”」
「なんじゃと……!?それはどういう……」
「……そのことを教える前に厄介な知らせが一つある。そっちをまず伝えよう」

驚くメリカ君に静止をかけて、僕はまず、この上なく厄介なことを伝えるのだった。
まったく、こっちも大変だっていうのに、参ったものだね……


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バルコニーの隅に寄りかかって、僕は一人夜風に当たっていた。
僕は、迷惑をかけないように、なるべく短い間隔で場所を移動していたつもりだった。
でも、逃げられたのは教団が僕を泳がせていたからであって、実際が、僕がその場所を訪れるだけで、迷惑が、不幸が起きていた。
それだったら、僕は……
教団に捕まった方が、よかったんじゃないか……?

「……ハーおにぃちゃん……」

気がつくと、バルコニーの出入り口の扉が開いていて、そこにアミリちゃんが立っていた。

「アミリちゃん……ごめんね、突然部屋を出たりしちゃって」
「いいのです。アミィがハーおにぃちゃんだったら、走って逃げ出しちゃったです」
「……そっか」

そこまで話すと、アミリちゃんはトテトテと小走りに僕のところにきて、ぎゅむっ、と抱きついてきた。

「アミリちゃん……?」
「夜風は冷たいですから、アミィを抱っこして温まるです」
「……ありがとう」

本来なら、僕が言うべき言葉なんだろうけど、気を使ってくれたのか、アミリちゃんから言ってきた。
ほんのりと、アミリちゃんが触れている部分に、暖かさを感じる。
このままだと、アミリちゃんの体も冷えてしまうだろう。
そう思って、僕はアミリちゃんを抱きかかえて床に座り、そして足と足の間に座らせて抱え込んだ。
ハーおにぃちゃん、あったかいね。
アミリちゃんも暖かいよ。
そう言葉を交わしているうちに、僕たちの周りの音がなくなったように、アミリちゃんの声だけがはっきりと聞こえた。

「ハーおにぃちゃんは、なにも悪くないよ」
「…………」
「ハーおにぃちゃんは、お母さんのためにピアノを弾いて、みんなのためにピアノを弾いてただけ。だから、悪くないよ。……アミィのお父さんと同じ。悪く……ないよ」
「アミリちゃん……?」

僕が、アミリちゃんのお父さんと同じ……?
アミリちゃんの言葉に疑問を覚えると、不意に、アミリちゃんは自分の過去について話し始めた。

「アミリはね、ここにくる前は、逃げてたらしいんだ。お父さんが追われてて、それで……」

おねぇちゃんたちが言ってた話だと……と、前置きを置いてから、アミリちゃんは話を続ける。

「お父さんはね、人を守るために、偉い人に逆らって、それで狙われちゃったの」
「……すごい人だね、アミリちゃんのお父さんは」
「うん。でもね、アミィは……私は、覚えてるんだ。お父さんを追ってた人たちがね、みんな……お前が悪いんだ。お前のせいで……って、すっごい怖い声で言ってた」
「……それは……その人たちが勝手なだけだよ」
「……おねぇちゃんたちもそう言ってた。でね、おにぃちゃんも、きっと同じだよ」
「……?」
「おにぃちゃんを追って、街を攻撃してるのは、教団のおにぃさんたちの勝手。だから、おにぃちゃんは、なにも悪くないんだよ」
「……ありがとう」

僕がお礼を言うと、アミリちゃんはなぜか、お礼なんていらないですっ、と言う。
そして、こう続けた。

「お礼の代わりに、ハーおにぃちゃんのことは、アミィたちに任せてくださいです。おにぃちゃんの演奏を邪魔してるの、全部なんとかするから、だからそれまででもいいから、アミィたちのとこにいてくださいです」

キュッと、アミリちゃんを抱きしめている僕の腕をつかみながら、アミリちゃんはそう言う。
……流石にこんなことを言われたら、逃げようなんて、考えない。
それに、逃げても逃げなくてもここは教団に襲われるんだ。
だから……

「うん、わかったよ。アミリちゃんたちに、全部任せる。助けてって、お願いするよ」
「は〜い!お願いされたですよ」
「……でも、無理はしないでね」
「わかってるよ〜」
「本当かなぁ……?」
「むぅ、ハーおにぃちゃん信じてくれないんだ〜」
「ごめんごめん。……じゃあ、アミリちゃんがちゃんと約束守って、僕のことを助けてくれたら、なんでもいうことを聞いてあげるよ」
「本当ですか!?」
「うん。助けてくれたってことは、命の恩人になるわけだからね。……でも、流石に無理な注文は聞けないからね?」
「大丈夫です!でも、後悔しないでくださいですよ〜!!」
「うーん、じゃあ、後悔したから前言撤回しようかなぁ〜?」
「あわわわわわ!?なし!やっぱり今のなしですぅ!!」
「冗談だよ冗談」
「むぅ、ハーおにぃちゃん意地悪です!」

あははははは……ごめんごめん、と謝りながらも、僕はコロコロと変わるアミリちゃんの表情を楽しんでいた。
しかし、本当に風邪を引いてしまうので長い時間ここにはいられない。

「……さて、そろそろメリカさんのところに戻ろっか。ずっとここにいちゃ風邪引いちゃうし」
「最初にここにいたのはハーおにぃちゃんだけどね〜」
「……そうだったね」

よいしょっ、とアミリちゃんは立ち上がり、出入り口の方に走って向かって行く。
なので僕は、転ばないように気をつけてね、と注意しながら、立ち上がってアミリちゃんのあとを追うのだった。
……まぁ結局、僕の注意は意味をなさなかったわけだけど。


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「む、おかえりハーラデス殿」
「すみません、突然出て行ったりして……」

メリカさんの部屋に戻って、僕は突然席を外したことへの謝罪をする。
しかし、メリカさんは気にするな、まぁ座れ、と勧めてくれた。

「あんなことを聞いては、出て行くのも無理はない。で、ある程度は落ち着いたかの?」
「ええ、お陰様で」
「そうか。それはよかった……ん?アミリ、どうかしたのか?額のあたりが少し赤いようじゃが……」
「え?な、なんでもないよ!?転んでなんかないよ!?」
「……そうか」

少し泣きそうな顔のアミリちゃんの様子とあからさまな発言になにが起こったのかを察して、メリカさんはそこから先は突っ込まないことになった。

「ところで、ライカさんはもうお帰りになったんですか?」
「ああ。向こうも向こうでなにかあるらしくての、必要なことだけ告げてさっさと帰ってしまったわい」
「そうですか……」

ライカさんにも、謝っておきたかったなぁ……と思っていると、メリカさんは、それはそうと、二つほど知らせたいことがあるんじゃが、いいか?と訊いてきたので、はい、大丈夫ですと答える。

「そうか、ならば早速。いい知らせが一つ、悪い知らせが一つじゃ。では、いい方から伝えるとするかの……ライカ殿が教えてくれたのじゃが、どうやら、あの事件で発現したハーラデス殿の力は、本来は人を殺してしまうようなものではないらしい」
「ということは、もしかして……」
「ハーおにぃちゃん、またピアノ弾けるようになる!?」
「ああ、そうじゃ。じゃが、詳しい話はまたあとでじゃ」
「……悪い方の知らせ、ですね?」
「ああ。やはりこれもライカ殿から聞いたものじゃが……どうやら、教団側はそろそろお主を理由に街を攻めて行くのも潮時と考えたらしいての……」

というと、もうここは攻撃されないのかな……?
そう思ったけど、それだと悪い知らせにはならない。
そして、一拍置いて伝えられたことに、僕は自分の考えの甘さを実感することとなった。

「……どうやら教団師団の複数部隊が、ハーラデス殿を捕まえるためにここに向かってるそうじゃ」

どうやら、教団は僕を完全に潰す気であるらしい。
11/12/20 21:15更新 / 星村 空理
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■作者メッセージ
いかがだったでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです。
さて、今回も説明回……
特に、ハーラデス君の過去についてでした。
ハーラデス君は、不幸な事故に巻き込まれて、教団に狙われてしまいました……
そして、その原因は、ライカが現れたことから、アレということになってしまいます。
ハーラデス君の力は、なんなのか
教団師団の魔の手から、彼を守ることはできるのか……
楽しみにしていただけたら、幸いです。
しかし、この執筆速度だと、今年中にもう一話かけるか心配ですね……
もしかすると、今年最後の話になってしまうかもしれません。
では、今回はここで。
感想をくださると楽しいです。
あ、最後に一言。

アミリちゃん可愛いよアミリちゃん!!

……星村でした。

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