連載小説
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元教団師団第三部隊戦技教官
「はい、お疲れ様〜!お昼休憩入るわよ〜!」

午前の訓練時間が終わり、昼食のためのお昼休みの時間となった。
私の終了の知らせを聞いて、みんなは、疲れたー!飯なににするー?などの会話を交わしながら、昼食を食べに外に出たり、お弁当を取りに行ったりしている。
かく言う私はと言うと、今日は愛h……ローランのお弁当はないため、外でなにか買って食べることになっている。
……やっぱり、お弁当作ってもらうために朝は大人しくしてようかな……?
でも、朝はローランに触ってないとエンジンかかんないし……
弁当をとるか、朝の目覚めをとるか……
迷うなぁ……
などと考えながら外に向かっていると、自警団の中では数少ない事務員が、私のことを呼び止めた。

「あ、デューナさん、お待ちください」
「ん?なにかしら?」
「えと、その……お客様がいらっしゃってるんですが……」
「………………またあいつか……」

事務員の若干隠しきれていない嫌そうな顔と、昨日おとといと連続で私にお客さんがきたという事実から、私は“お客様”が誰だかわかり、ため息をついた。

「これからお昼食べに行くから、あいつにはあとでまた来るように言っておいて……」
「別に、昼くらいなら、俺が奢るぜ?」

事務員に言伝を頼もうと内容を伝えたところで、後ろから声がかかる。
一昨日から必ず一日一回聞くようになったその声を聞き、私はうんざりしたような顔をしながらも、後ろにいる人物に振り返った。

「よぉ、デューナ」
「帰れひょっとこ」
「……いやだからさ、なんなのその変な呼び名?」
「あんたの通り名と同じだから気にしないでいいわよ。ほら、さっさと帰った帰った」
「そう釣れないこと言うなよ。一緒に昼飯食いに行こうぜ?」

私の言葉にめげずに話を続けているこの軟派で軽そうな男は、ジン。
事務員の言っていた、私にようのあるお客さんであり……
“教団師団第三部隊部隊長”である。
昼食のお誘いまでしてきたジンに、私は、嫌よ、と短い言葉で断る。

「あなたと一緒に食べて、変な噂を立てられたら困るからね」
「別に俺は教団側だから、そう変な噂は立たねーんじゃねぇか?」
「……あなた、自分の格好、言動を加味した上でそれ言ってるの?そしたら一度病院に行った方がいいわよ?」

私の言葉に疑問符を浮かべるこの男の服装は、軽装……というか、完全に私服。
言動と合わせると、どこからどう見ても女なら誰でも口説くような節操なしにしか見えない。

「ともかく、私はあなたと一緒に食べる気はないわ。どうしてもっていうなら、こっちで食べられるようなものを用意してきなさい。ファミリエのパンとかね」
「ん?あそこのパンでいいのか?じゃあなにがいい?」
「そうね……チョコパンと焼きそばパン、あと、クロワッサンがいいわ」
「ん、了解。じゃあ買ってくるわ」

私が言うと、ジンはすぐに外へ向かって走って行った。
それを見た事務員は、少し引きつったような顔をする。

「あ、あの、デューナさん?今の、完全にパシッてましたよね……?」
「あなたも学んだ方がいいわ。ああいう奴こそ、都合がいいってことを」

事務員の言葉に、私はおそらく、清々しい顔で答えたことは、自分でもよくわかった。


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「……で、要件はなに?」
「ひょうけんふぁ、ひほうとほはひ……」
「あー、喋るか食べるかどっちかにしてちょうだい」
「もぐもぐもぐもぐmgmgmgmg……」
「食べる方をとるのね……」

少しして、ジンは本当に私の頼んだ分と自分の分のパンを買って戻ってきたため、仕方がなく応接室に通して、話を聞くことにしたんだけど……
この男、部屋に入ってすぐに昼食を取りはじめた。
……まぁ、話をする前に食べた方がいいか。
無言でパンを食べるジンを見ながら、そう思って私もパンを食べ始めた。
黙々とパンを食べて十数分。
昼食を終え、よく冷えた水を一杯飲んでから、ぷはぁ!あ"ー!と、若いのか親父なのかわからない唸り声をあげてから、さて、じゃあ本題にはいるか、とジンは言って、至極真剣な顔になった。

「今回の本題は昨日おとといと同じ。……戻って来る気はないか?」
「ないわ」

ジンの誘いを、私は即座に断った。

「…………答えるのはえーよ……もうちっと悩むとか、そういうのはねーのかよ……」
「ないわね。私は教団側には二度とつかないわ。つけばまた騙されて罪を犯すのが明らかだもの」

私の言葉に、ジンはピクリと反応し、恨めしいような、羨ましいような目で私を睨んできた。

「……お前は、自由でいいよな……俺らは、真実を知っても、お前みたいに逃げることはできねーよ……」
「あら、教団から逃げたいんなら、私が手助けするけど?」
「無理だよ。俺たちだけで逃げたら、俺たちの両親や嫁さんが裏切り者の家族だなんだって、辛い目に遭う。それに、あいつらは熱心な信者だ。俺たちと一緒に出て行こうと言っても、理解してくれない」
「そう、それは可哀想ね。でも、だからといってそれは私を教団に引き入れる材料にはならないわ」
「わかってらぁ。だが、今回は昨日までみたいに簡単には引き下がれねーんだわ」
「……どういうことかしら?」

そろそろ諦めて欲しいんだけど……そう考えながら断り続けるが、今日は昨日おとといと違って、ジンは簡単には引き下がらなかった。
それがな……と、渋い顔をしながら、ジンは話を続ける。

「明日、第四部隊が到着するんだわ、応援で……」
「第四部隊……たしか、兵器の開発を主にしていたところ、だったかしら……?」
「ああ、そいつらが、俺らの任務……つまり、あんたの連行の応援でここに向かってるんだ。正直、こっちは穏便に話を済ませ、任務を終えたい。が、明日、あいつらが到着しても任務が達成できていないと……」
「力尽くになる、と。要するに脅しね」
「さっきも言ったように、こっちは穏便に話し合いですませたい。だから今のうちに……」
「……ここ数年であなたも愚かになったものね。まさか、私に力尽くが通じると思ってるの?」

交渉にも、うんざりしてきた。
最終的には脅してくるとは、まったく、10年ほどしかたっていないってのに、こんなにも人っていうのは変わりやすいのかしら……?

「あまり教団も舐めないほうがいい。第四部隊は、人間の限界を超えた兵士の開発に成功したらしく、今回の任務で機会があれば投入するらしい……」
「だから、私を力尽くで従わせるなんてこと、出来やしないわよ」
「そうじゃない。そうじゃないんだよ。あいつらは、なんでもやる。だからこそ、こうやって忠告してるんだ……!」
「……何度もいうように、私はそんな手にはのらな……」
「……よく聞け、“元教団師団第三部隊戦技教官”デューナ・ダラン」

私の言葉を遮り、ジンはなおも、しつこく、忠告する。

「第四部隊は、本当になんでもやる。“手段を選ばない。だから、“周りを不幸にしない”ためにも、我々につき従え」
「…………………………」
「…………………………」

張り詰める空気。
鋭い沈黙。
私も、ジンも、主張は変えない。
これでは、いつまで経っても平行線だ。
……仕方が無い。

「……このままだと、いつまでも平行線のままね」
「お前が俺たちについていくと言わない限り、俺はお前を説得し続けるぞ」
「……はぁ、それじゃ、“私達流”に、決着をつけましょ」
「……力ある方の意見を通す、か……」
「10年くらいたっても、流石にそれは覚えてるのね」
「当たり前だ。隊の方針だからな……わかった。受けて立つぜ」
「……そしたら、ついてきなさい。詰め所の中では戦いたくないわ。……午後の練習前に終わらせてやる」
「ふん、俺だって10年間、ずっと訓練を積んできたんだ。ぜってぇ負けねぇ」

視線を交わし、火花を散らしながら、私達は、ギャラリーのいない、街の外へ移動するのだった。
11/08/15 00:51更新 / 星村 空理
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■作者メッセージ
前回、バトルが入るといったな?
悪りぃ、次回になるわ。
……すみません、個人的な物語をアップしたいという欲望に負けて、バトルを入れませんでした。
いかがだったでしょうか?
楽しんで読んでいただけたら幸いです。
今回は、デューナさんと教団師団第三部隊部隊長、ジンとの会話がメインでした。
……バトルは次回持ち越しです。
皆さんの満足できるようなバトルがかけるか……
かなり不安です。
あ、どちらかというとバトルよりエロを求めているんだがというツッコミは勘弁してください。
この駄作者にエロは難しいです……
書いたシーンも忘却少年となにも考えずに〜の二つだけでしたしね……
あ、予定では星村と美核のエロ回も需要があれば書きたいなとか思ってます。
……ご、ごほん!
ともかく、今回はここで。
次回も楽しみにしてくださると嬉しいです。
感想をくださるとありがたいです。
……なんか毎回書いてるとしつこく感じられるかな、これ……?
ともかく、あとがきがめっちゃ口語でボイスレコーダーに収録した様な感じのあとがきを書く星村でした。

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