第一楽句〜邂逅は自然な流れで〜
港町“アリュート”
様々な国との貿易にて栄え、多様な文化を持つその街を、僕は訪れていた。
波の音や潮風を感じながら、スーツケースを引っ張って港から市場を探して歩く。
道の途中途中で、オカリナやピッコロ、コンガ、サックスなど、様々な人が、いろいろな楽器を使って演奏をし、人々がそれを楽しんで聞いていた。
ここアリュートは、港町というよりも、音楽の街として有名であり、演奏家、指揮者、歌手……多種多様な、優秀な人材を生み出している。
人々が自然に音楽と触れ合って、楽しんでいるからこそ、そんな人材が沢山でてくるんだろうな……
などと、まだ街にきてから数分しか経っていないにも関わらず、街の人々と音楽との親和性を感じ取りながら、僕は様々な音楽に耳を傾けて歩を進めた。
と……
「た〜す〜け〜て〜く〜だ〜さ〜い〜!!」
音楽に混じって、少し泣きそうに助けを求める女の子の声が聞こえた。
なんだろう、と気になってその声をする方向を見てみると、人々が端に退いて道を空け、その空いた部分から、10歳くらいの小さな女の子が、こちら目がけて走ってきていた。
彼女の後ろ側に視線を向けると、大きめの犬……あれは、シェパードだろうか……?が、同じくこちらに向かって走ってきている。
甘えるように犬が吠えているのと、街の人が微笑みながら様子を見ているのを見ると、どうやら、犬は遊んで欲しくて少女を追いかけているようだが、少女は追いかけてくる犬が怖くて逃げているらしい。
などと考えているうちに、少女はかなり僕の近くにきていて、周りの人が端に寄っているのに、僕だけが道のど真ん中に取り残されるように突っ立っていた。
そのため……
「そ、そこのおにぃさん!たたた助けてください!」
と、僕の後ろに隠れながら、犬を警戒して、彼女は僕に助けを求めてきた。
「そんなに焦らなくても……この犬は君と遊びたいだけだよ」
「そそそそれはわかってるけど、お犬さんは怖いのぉ!」
ううう〜、と涙目になりながら、少女は訴えてくる。
うーん、そしたら、この犬には申し訳ないけど……
と、僕は少女のために犬に諦めてもらうことにした。
「ごめんな、この子は今遊べないんだ。だから、また今度、な?」
「……くぅん……」
しゃがんで犬の頭を撫でながらそう言うと、その犬は、残念そうに鳴いて、クルリと後ろを向いて、その場を後にしたのだ。
それを見て、少女はホッとして僕の後ろから離れて、今度は前に出てきた。
背は僕の腰当たりと低く、服装は藍色のローブに同色の三角帽……典型的な魔女の格好をしているため、きっと魔女なのだろう。
瞳は碧色で、ジパング地方の子なのだろうか?髪の色は珍しい黒色で、腰のあたりまでまっすぐに伸ばされていた。
前に出てきた少女は、ぺこりと頭を下げてお礼を言う。
「ありがとうございます、おにぃさん!助かりました!」
「うん、それはよかった。そしたら、僕はここで」
「あああ待ってください!助けてくれたんだからお礼させておにぃさん!」
「いや、いいよこのくらい……」
その場を去ろうとすると、少女が引き止めてくる。
ん〜、あまりお礼とかそういうのはいらないんだけどなぁ……
「いいんです!アミィ…私がお礼したいんです!……それとももしかして、急ぎの用とか、ありましたか……?」
「いや……ないけど……」
少女はいきなりパタパタとわがままを言うように手を振り回したかと思うと、今度はジッと下から覗き込むようにして訊いてくる。
子供……しかも女の子に、こんなウルウルとした瞳をされたらそう答えるしかなく、言うと、パァッ!と明るくなって、僕の腕を掴み、引っ張ってきた。
「ならなら、ちょっとついてきて欲しいの!ここじゃなにもお礼できないから、アミィのお家に来て欲しいの!」
「えっ?あっ……うん、わかったわかった。ちゃんとついていくからあんまり強く引っ張らないで」
どうやら、普段は一人称なんかを矯正して子供らしさをなくそうとしてるけれど、興奮すると地が簡単にでてくるようだ。
本当に見た目も中身も子供みたいだな……
そんなことを考えながら歩いていると、少女……アミィちゃんって言うのかな……?が、また僕の腕を引っ張ってくる。
「はやく行こうよ〜!」
「あんまり急ぐと転んじゃうよ?」
「平気だもん!アミィは転ばないもん!……うにゃっ!?」
「言ったそばから……」
大丈夫と言って走り出した途端、アミィちゃん?は石か何かにつまづいて、ベチンッ!と転んでしまった。
はぁ、と少し呆れながら、僕は彼女に近づき、声をかける。
「大丈夫かい?」
「……だ、大JOB!」
「……明らかに大丈夫じゃないよね……」
声をかけると、ピョンっと見た目は元気いっぱいに起き上がって見せたが、どう見てもそう立ち上がった彼女自身は大丈夫そうではない。
目はウルウルと潤んでいるし、体はわなわなと小刻みに震えている。……なんか言ってることもちょっと変な感じだったし……
音からなんとなくわかったけど、結構痛かったらしい。
「歩けるかい?」
「はい……大丈夫です……」
「じゃあ、ゆっくり歩いていこっか?案内はお願いするよ?」
「……うぅ……」
少し泣きそうなアミィちゃんに案内を頼み、僕は彼女の隣でゆっくりと歩くのだった。
様々な国との貿易にて栄え、多様な文化を持つその街を、僕は訪れていた。
波の音や潮風を感じながら、スーツケースを引っ張って港から市場を探して歩く。
道の途中途中で、オカリナやピッコロ、コンガ、サックスなど、様々な人が、いろいろな楽器を使って演奏をし、人々がそれを楽しんで聞いていた。
ここアリュートは、港町というよりも、音楽の街として有名であり、演奏家、指揮者、歌手……多種多様な、優秀な人材を生み出している。
人々が自然に音楽と触れ合って、楽しんでいるからこそ、そんな人材が沢山でてくるんだろうな……
などと、まだ街にきてから数分しか経っていないにも関わらず、街の人々と音楽との親和性を感じ取りながら、僕は様々な音楽に耳を傾けて歩を進めた。
と……
「た〜す〜け〜て〜く〜だ〜さ〜い〜!!」
音楽に混じって、少し泣きそうに助けを求める女の子の声が聞こえた。
なんだろう、と気になってその声をする方向を見てみると、人々が端に退いて道を空け、その空いた部分から、10歳くらいの小さな女の子が、こちら目がけて走ってきていた。
彼女の後ろ側に視線を向けると、大きめの犬……あれは、シェパードだろうか……?が、同じくこちらに向かって走ってきている。
甘えるように犬が吠えているのと、街の人が微笑みながら様子を見ているのを見ると、どうやら、犬は遊んで欲しくて少女を追いかけているようだが、少女は追いかけてくる犬が怖くて逃げているらしい。
などと考えているうちに、少女はかなり僕の近くにきていて、周りの人が端に寄っているのに、僕だけが道のど真ん中に取り残されるように突っ立っていた。
そのため……
「そ、そこのおにぃさん!たたた助けてください!」
と、僕の後ろに隠れながら、犬を警戒して、彼女は僕に助けを求めてきた。
「そんなに焦らなくても……この犬は君と遊びたいだけだよ」
「そそそそれはわかってるけど、お犬さんは怖いのぉ!」
ううう〜、と涙目になりながら、少女は訴えてくる。
うーん、そしたら、この犬には申し訳ないけど……
と、僕は少女のために犬に諦めてもらうことにした。
「ごめんな、この子は今遊べないんだ。だから、また今度、な?」
「……くぅん……」
しゃがんで犬の頭を撫でながらそう言うと、その犬は、残念そうに鳴いて、クルリと後ろを向いて、その場を後にしたのだ。
それを見て、少女はホッとして僕の後ろから離れて、今度は前に出てきた。
背は僕の腰当たりと低く、服装は藍色のローブに同色の三角帽……典型的な魔女の格好をしているため、きっと魔女なのだろう。
瞳は碧色で、ジパング地方の子なのだろうか?髪の色は珍しい黒色で、腰のあたりまでまっすぐに伸ばされていた。
前に出てきた少女は、ぺこりと頭を下げてお礼を言う。
「ありがとうございます、おにぃさん!助かりました!」
「うん、それはよかった。そしたら、僕はここで」
「あああ待ってください!助けてくれたんだからお礼させておにぃさん!」
「いや、いいよこのくらい……」
その場を去ろうとすると、少女が引き止めてくる。
ん〜、あまりお礼とかそういうのはいらないんだけどなぁ……
「いいんです!アミィ…私がお礼したいんです!……それとももしかして、急ぎの用とか、ありましたか……?」
「いや……ないけど……」
少女はいきなりパタパタとわがままを言うように手を振り回したかと思うと、今度はジッと下から覗き込むようにして訊いてくる。
子供……しかも女の子に、こんなウルウルとした瞳をされたらそう答えるしかなく、言うと、パァッ!と明るくなって、僕の腕を掴み、引っ張ってきた。
「ならなら、ちょっとついてきて欲しいの!ここじゃなにもお礼できないから、アミィのお家に来て欲しいの!」
「えっ?あっ……うん、わかったわかった。ちゃんとついていくからあんまり強く引っ張らないで」
どうやら、普段は一人称なんかを矯正して子供らしさをなくそうとしてるけれど、興奮すると地が簡単にでてくるようだ。
本当に見た目も中身も子供みたいだな……
そんなことを考えながら歩いていると、少女……アミィちゃんって言うのかな……?が、また僕の腕を引っ張ってくる。
「はやく行こうよ〜!」
「あんまり急ぐと転んじゃうよ?」
「平気だもん!アミィは転ばないもん!……うにゃっ!?」
「言ったそばから……」
大丈夫と言って走り出した途端、アミィちゃん?は石か何かにつまづいて、ベチンッ!と転んでしまった。
はぁ、と少し呆れながら、僕は彼女に近づき、声をかける。
「大丈夫かい?」
「……だ、大JOB!」
「……明らかに大丈夫じゃないよね……」
声をかけると、ピョンっと見た目は元気いっぱいに起き上がって見せたが、どう見てもそう立ち上がった彼女自身は大丈夫そうではない。
目はウルウルと潤んでいるし、体はわなわなと小刻みに震えている。……なんか言ってることもちょっと変な感じだったし……
音からなんとなくわかったけど、結構痛かったらしい。
「歩けるかい?」
「はい……大丈夫です……」
「じゃあ、ゆっくり歩いていこっか?案内はお願いするよ?」
「……うぅ……」
少し泣きそうなアミィちゃんに案内を頼み、僕は彼女の隣でゆっくりと歩くのだった。
11/06/03 21:17更新 / 星村 空理
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