8:30〜10:00
「さてと、じゃあ、どこに行く?」
店の扉に鍵をかけながら、僕は美核に訊く。
今回は美核の為の買い物なんだ。ここは本人にちゃんと訊いておかなければ。
「うーん、そうだなぁ……いきなり出かける事になったから、どこに行こうか全く考えなかったのよね……今のところは何を買いたいかも決めてないし……」
むむむむ……!!と、美核は難しい顔をし始める。
それを見て、僕は面白いな、と微笑みながら別に君の行きたい所でいいんだよ、と言う。
「それに、今日はもう何もないんだし、いくらでも時間はあるよ?」
「そっか、そうだよね……一件だけって、言ってなかったもんね……そしたら、さ、最初のうちは行き先は空理が決めてくれないかな?」
「え?僕が?……なんで?」
「いや、買ってもらうんだし、お店くらいは空理が選んだ方がいいんじゃないかな、なんて思ってさ……お金の心配もあるし……」
「いや、いいんだよ。本当に美核が行きたい場所で」
「うーん、本当にいいのかな……」
「うん、気にしないで。全然大丈夫だから。ちゃんとお金も用意してあるし」
「そっか……そっかぁ……じゃ、じゃあ、本当に行きたい場所、行っちゃうからね?」
「うん。どうぞ。折角一緒に買い物なんだしね。遠慮はしないでよ」
「わかった。じゃあ、着いてきて」
「うん。了解」
しばらく悩んだあと、美核は決心し、僕に着いてくるように言ってから、店に向かい始めるのだった。
××××××××××××××××××××××××××××××
「……うーん、どんなのが似合うのかねぇ……」
商品として飾られている服を見ながら、僕は唸っていた。
美核が選んだ店は、服屋だった。
和服しか持ってなかったから、洋服も買って着てみたい、と言うのが理由らしい。
僕も美核に似合いそうな服を探してはいるんだけど、なかなか良さそうなものが見つからない。
まぁ、タートルネックの長袖にズボンという適当な服装の僕にオシャレを求めても仕方が無いことだとは思うけど。
「空理、なんかいいのなかった?」
「うーん、やっぱり、難しいかな?美核はいつも和服だったから、和服が一番だって先入観もあるしね……」
美核が様子を見てきて、僕は首を横に振った。
と、そっか……と少し残念そうに美核は呟く。
うーん、そんな顔を見せられると、弱いんだよなぁ……
「……っと、ん?あ、これなんてどうかな?」
そういいながら、僕は一着取った。
この時代には珍しい、僕の世界の現代的な服。
白いパーカーだった。
「……えっと、これ、何かの上に着るやつだよね?」
「うん、そうだよ。そうだな……美核が着るんだったら、赤いシャツに、ジーパン……はキツイかな……?あ、スカートなんていいかも!」
何かが弾けたみたいに僕は美核に似合いそうな服を選び、取っていく。
白いパーカーを始め、赤いシャツと、パーカーに合わせた白いスカート……
これで、取り敢えず一セットだろうか?
「取り敢えずはこんなもんだけど、買っちゃう?」
「え?あ、えと……」
「……試しに着てみたらどうかしら?」
僕がすぐに買おうと言ったからか、はたまた僕の選んだ服が似合わないと思ったのか、美核は少し戸惑った。
すると、さっきから僕たちの様子を見ていた店唯一の従業員兼店のオーナーであるアラクネさんが、試着を勧めてきた。
たしか、美核の知り合いで……ルーフェさん、だったっけかな?
「え、いいんですか?」
「いいわよ。その服、新しく取り入れた形だから、どんな風に着こなすのか見てみたいし……それに、あなたが着たなら似合いそうだしね……」
「えと、じゃあ、お願いするね?」
こっちよ、とルーフェさんは美核を店の奥に案内した。
あっちと違ってこの世界には試着とかは当たり前じゃないからな。
部屋を用意してないのは仕方が無いことだ。
「さてと……あとは何かいいの、あるかな……?」
「意外に、センスがいいのね?」
今度は別の組み合わせを探す。
と、奥から、美核を置いて、ルーフェさんがこちらに戻ってきて、話しかけてきた。
「初めまして、ルーフェさん、ですよね?」
「ええ、そうよ。たしか……星村さん、でよかったかしら?」
「はい。星村 空理です。よろしくお願いします」
「ええ、よろしく」
名前を確認しながら、互いに挨拶を交わす。
「さっきの組み合わせ、良かったわね。前に見た事でもあるのかしら?」
「いえいえ。たまたまフッと思い浮かんだだけですよ」
「嘘ね」
「はい、嘘です」
ニコニコしながら、僕は、疑いの目を向けるルーフェさんに、あっさりと白状する。
「僕の前いた世界には、こういう服がたくさんあったんですよ。で、美核に選んだやつは、その組み合わせの中の一つってわけです」
「……本当に、話に聞いたとおり、掴みどころがないわね……」
はぁ、とため息をつきながら、ルーフェさんは頭を押さえる。
「まぁ、あなたはとても鋭そうなんで、下手に猫をかぶるのをやめたんですが、ダメでしたか?」
「……いえ、この方が話しやすいから、正直助かったわ」
ありがとう、と微笑みながら、ルーフェさんは手を出し、握手を求めた。
いえいえ、と、僕も返して、握手をする。
「そういえば、今日はなんで美核と一緒にここに?いつもなら、美核だけが来てたんだけど……やっぱり、デートかしら?」
「いえ、違いますよ。2日前あたりから熱を出してしまいましてね、看病してもらったお礼に、なにか美核の好きなものを買ってあげる事にしたんです」
「それは、デートじゃないのかしら?」
「さて、どうでしょうかね?少なくとも、僕はそんな意識はしてませんよ」
そう言って、僕ははぐらかす。
まだ……まだ、吹っ切れていないから、美核への好意を知られたくはない。
だから、僕は思わせぶりな事は言っても、真実は絶対に言わない。
最後の一歩を踏み出させないように、僕は線を引く。
「本当に、掴めないわね……」
「そうですか」
「ルーフェ〜ちょっと来てー!」
「わかったわ、今行く!」
美核に呼ばれて、ルーフェさんは奥の部屋に向かおうとする。
と、数歩歩いた所で立ち止まり、こちらを向いてきた。
そして、一言。
「……美核はいい子なんだから、泣かせないで頂戴よ?」
「……努力はします……」
彼女の言葉に、僕は笑みを少し弱くしながら答える。
泣かせない、か……
出来るかな、こんな僕みたいなやつに、そんなことが……
「お待たせ。着替え終わったわよ」
自重気味に笑っていると、ルーフェさんがそう言い、ほら、早く来なさい、と少し嫌がる美核を僕の前に引っ張って来た。
「え、えと、どう……かな……?」
「あ……と……」
「ほら、早く言ってやりなさいよ」
着替え終わった美核を見て、僕は言葉を失った。
いつもの着物と違って、体のラインがはっきりと分かり、かつ、美核のイメージに合った、白を基調とした服のチョイス、そして、恥ずかしそうにペタッと下方向に垂れる耳に、同じように下方向に垂れる尻尾……
いつもと違う格好だったからかもしれない。
好きな人だからかもしれない。
魔物という、人を魅了する存在だからかもしれない。
でも、そのどれが原因でも、僕の感想は、一つに限った。
「……可愛い……」
「え?なんて言ったの?」
「……星村さんのセンス、やっぱり間違ってなかったわね」
ポソッ、と僕が感想を言ってしまうと、美核がよく聞こえないと聞き返し、なにを言ったのかわかったルーフェさんはニヤニヤとこちらを見る。
「い、いや、似合うんじゃないかな?」
「そっか、似合う、か……えへへへ……ありがとう」
たぶん、顔を真っ赤にしながら僕はそう言っていたのであろう。
ルーフェさんのニヤニヤ顏が、さらに濃くなってる。
まぁ、それはともかく、だ。
「じゃあ、その服、似合ってるし、買っちゃおっか?」
「え?いいの?」
「いや、そういう約束だったじゃん。何か好きなものを買うって。別に、個数を決めたつもりはないよ?」
「でも……高いよ?」
そういいながら、美核はルーフェさんから聞いたのであろう服の合計金額を僕に教える。
むむむ……二万はいくか……流石にこの世界ではあまりない服だから、高めの値段になるよな……
でもまぁ、これくらいなら……
「うん、問題ないね。じゃあ、ルーフェさんこれください」
「えと、空理。五桁もするんだよ?買っても大丈夫なの?」
「うん、余裕余裕。言っておくけど、僕、この街に来てからほとんどお金使ってないんだよ?だいたい二年分くらいの給料が手を付けずにそのまま……だったかな?ともかく、お金に余裕はあるから、大丈夫。それに、美核に初めて買ってあげるプレゼントだしね。いくらでも奮発出来るよ」
ニッコリと笑いながら、僕は先にルーフェさんにお金を渡して会計を済ませる。
それを見て、美核は顔を赤くしながら、あ、ありがとう……と言って下を向いた。
「で、美核。その服はどうするの?そのまま着ていくんだったらあの和服、袋にいれておくけど?」
「あ、着替えるわ。折角買ってもらったけど、まだそれを着て歩き回るのは、ちょっと怖そうだから……」
「そう。また着替えるのね。そしたら、また向こうの部屋を使って頂戴。その服を袋にいれるから、着替え終わったら呼ぶのよ?」
「うん。じゃあ、空理、ちょっと待っててね」
「うん。了解」
少し慌てるように美核は奥の部屋に移動した。
……そんなに焦んなくても僕はちゃんと待ってるのに……
そう思いながら微苦笑をしてると、ルーフェさんがポツリと一言。
「……これで付き合っていないなんて、おかしな話よね」
「あ、あははははは……」
微苦笑が、苦笑になった。
店の扉に鍵をかけながら、僕は美核に訊く。
今回は美核の為の買い物なんだ。ここは本人にちゃんと訊いておかなければ。
「うーん、そうだなぁ……いきなり出かける事になったから、どこに行こうか全く考えなかったのよね……今のところは何を買いたいかも決めてないし……」
むむむむ……!!と、美核は難しい顔をし始める。
それを見て、僕は面白いな、と微笑みながら別に君の行きたい所でいいんだよ、と言う。
「それに、今日はもう何もないんだし、いくらでも時間はあるよ?」
「そっか、そうだよね……一件だけって、言ってなかったもんね……そしたら、さ、最初のうちは行き先は空理が決めてくれないかな?」
「え?僕が?……なんで?」
「いや、買ってもらうんだし、お店くらいは空理が選んだ方がいいんじゃないかな、なんて思ってさ……お金の心配もあるし……」
「いや、いいんだよ。本当に美核が行きたい場所で」
「うーん、本当にいいのかな……」
「うん、気にしないで。全然大丈夫だから。ちゃんとお金も用意してあるし」
「そっか……そっかぁ……じゃ、じゃあ、本当に行きたい場所、行っちゃうからね?」
「うん。どうぞ。折角一緒に買い物なんだしね。遠慮はしないでよ」
「わかった。じゃあ、着いてきて」
「うん。了解」
しばらく悩んだあと、美核は決心し、僕に着いてくるように言ってから、店に向かい始めるのだった。
××××××××××××××××××××××××××××××
「……うーん、どんなのが似合うのかねぇ……」
商品として飾られている服を見ながら、僕は唸っていた。
美核が選んだ店は、服屋だった。
和服しか持ってなかったから、洋服も買って着てみたい、と言うのが理由らしい。
僕も美核に似合いそうな服を探してはいるんだけど、なかなか良さそうなものが見つからない。
まぁ、タートルネックの長袖にズボンという適当な服装の僕にオシャレを求めても仕方が無いことだとは思うけど。
「空理、なんかいいのなかった?」
「うーん、やっぱり、難しいかな?美核はいつも和服だったから、和服が一番だって先入観もあるしね……」
美核が様子を見てきて、僕は首を横に振った。
と、そっか……と少し残念そうに美核は呟く。
うーん、そんな顔を見せられると、弱いんだよなぁ……
「……っと、ん?あ、これなんてどうかな?」
そういいながら、僕は一着取った。
この時代には珍しい、僕の世界の現代的な服。
白いパーカーだった。
「……えっと、これ、何かの上に着るやつだよね?」
「うん、そうだよ。そうだな……美核が着るんだったら、赤いシャツに、ジーパン……はキツイかな……?あ、スカートなんていいかも!」
何かが弾けたみたいに僕は美核に似合いそうな服を選び、取っていく。
白いパーカーを始め、赤いシャツと、パーカーに合わせた白いスカート……
これで、取り敢えず一セットだろうか?
「取り敢えずはこんなもんだけど、買っちゃう?」
「え?あ、えと……」
「……試しに着てみたらどうかしら?」
僕がすぐに買おうと言ったからか、はたまた僕の選んだ服が似合わないと思ったのか、美核は少し戸惑った。
すると、さっきから僕たちの様子を見ていた店唯一の従業員兼店のオーナーであるアラクネさんが、試着を勧めてきた。
たしか、美核の知り合いで……ルーフェさん、だったっけかな?
「え、いいんですか?」
「いいわよ。その服、新しく取り入れた形だから、どんな風に着こなすのか見てみたいし……それに、あなたが着たなら似合いそうだしね……」
「えと、じゃあ、お願いするね?」
こっちよ、とルーフェさんは美核を店の奥に案内した。
あっちと違ってこの世界には試着とかは当たり前じゃないからな。
部屋を用意してないのは仕方が無いことだ。
「さてと……あとは何かいいの、あるかな……?」
「意外に、センスがいいのね?」
今度は別の組み合わせを探す。
と、奥から、美核を置いて、ルーフェさんがこちらに戻ってきて、話しかけてきた。
「初めまして、ルーフェさん、ですよね?」
「ええ、そうよ。たしか……星村さん、でよかったかしら?」
「はい。星村 空理です。よろしくお願いします」
「ええ、よろしく」
名前を確認しながら、互いに挨拶を交わす。
「さっきの組み合わせ、良かったわね。前に見た事でもあるのかしら?」
「いえいえ。たまたまフッと思い浮かんだだけですよ」
「嘘ね」
「はい、嘘です」
ニコニコしながら、僕は、疑いの目を向けるルーフェさんに、あっさりと白状する。
「僕の前いた世界には、こういう服がたくさんあったんですよ。で、美核に選んだやつは、その組み合わせの中の一つってわけです」
「……本当に、話に聞いたとおり、掴みどころがないわね……」
はぁ、とため息をつきながら、ルーフェさんは頭を押さえる。
「まぁ、あなたはとても鋭そうなんで、下手に猫をかぶるのをやめたんですが、ダメでしたか?」
「……いえ、この方が話しやすいから、正直助かったわ」
ありがとう、と微笑みながら、ルーフェさんは手を出し、握手を求めた。
いえいえ、と、僕も返して、握手をする。
「そういえば、今日はなんで美核と一緒にここに?いつもなら、美核だけが来てたんだけど……やっぱり、デートかしら?」
「いえ、違いますよ。2日前あたりから熱を出してしまいましてね、看病してもらったお礼に、なにか美核の好きなものを買ってあげる事にしたんです」
「それは、デートじゃないのかしら?」
「さて、どうでしょうかね?少なくとも、僕はそんな意識はしてませんよ」
そう言って、僕ははぐらかす。
まだ……まだ、吹っ切れていないから、美核への好意を知られたくはない。
だから、僕は思わせぶりな事は言っても、真実は絶対に言わない。
最後の一歩を踏み出させないように、僕は線を引く。
「本当に、掴めないわね……」
「そうですか」
「ルーフェ〜ちょっと来てー!」
「わかったわ、今行く!」
美核に呼ばれて、ルーフェさんは奥の部屋に向かおうとする。
と、数歩歩いた所で立ち止まり、こちらを向いてきた。
そして、一言。
「……美核はいい子なんだから、泣かせないで頂戴よ?」
「……努力はします……」
彼女の言葉に、僕は笑みを少し弱くしながら答える。
泣かせない、か……
出来るかな、こんな僕みたいなやつに、そんなことが……
「お待たせ。着替え終わったわよ」
自重気味に笑っていると、ルーフェさんがそう言い、ほら、早く来なさい、と少し嫌がる美核を僕の前に引っ張って来た。
「え、えと、どう……かな……?」
「あ……と……」
「ほら、早く言ってやりなさいよ」
着替え終わった美核を見て、僕は言葉を失った。
いつもの着物と違って、体のラインがはっきりと分かり、かつ、美核のイメージに合った、白を基調とした服のチョイス、そして、恥ずかしそうにペタッと下方向に垂れる耳に、同じように下方向に垂れる尻尾……
いつもと違う格好だったからかもしれない。
好きな人だからかもしれない。
魔物という、人を魅了する存在だからかもしれない。
でも、そのどれが原因でも、僕の感想は、一つに限った。
「……可愛い……」
「え?なんて言ったの?」
「……星村さんのセンス、やっぱり間違ってなかったわね」
ポソッ、と僕が感想を言ってしまうと、美核がよく聞こえないと聞き返し、なにを言ったのかわかったルーフェさんはニヤニヤとこちらを見る。
「い、いや、似合うんじゃないかな?」
「そっか、似合う、か……えへへへ……ありがとう」
たぶん、顔を真っ赤にしながら僕はそう言っていたのであろう。
ルーフェさんのニヤニヤ顏が、さらに濃くなってる。
まぁ、それはともかく、だ。
「じゃあ、その服、似合ってるし、買っちゃおっか?」
「え?いいの?」
「いや、そういう約束だったじゃん。何か好きなものを買うって。別に、個数を決めたつもりはないよ?」
「でも……高いよ?」
そういいながら、美核はルーフェさんから聞いたのであろう服の合計金額を僕に教える。
むむむ……二万はいくか……流石にこの世界ではあまりない服だから、高めの値段になるよな……
でもまぁ、これくらいなら……
「うん、問題ないね。じゃあ、ルーフェさんこれください」
「えと、空理。五桁もするんだよ?買っても大丈夫なの?」
「うん、余裕余裕。言っておくけど、僕、この街に来てからほとんどお金使ってないんだよ?だいたい二年分くらいの給料が手を付けずにそのまま……だったかな?ともかく、お金に余裕はあるから、大丈夫。それに、美核に初めて買ってあげるプレゼントだしね。いくらでも奮発出来るよ」
ニッコリと笑いながら、僕は先にルーフェさんにお金を渡して会計を済ませる。
それを見て、美核は顔を赤くしながら、あ、ありがとう……と言って下を向いた。
「で、美核。その服はどうするの?そのまま着ていくんだったらあの和服、袋にいれておくけど?」
「あ、着替えるわ。折角買ってもらったけど、まだそれを着て歩き回るのは、ちょっと怖そうだから……」
「そう。また着替えるのね。そしたら、また向こうの部屋を使って頂戴。その服を袋にいれるから、着替え終わったら呼ぶのよ?」
「うん。じゃあ、空理、ちょっと待っててね」
「うん。了解」
少し慌てるように美核は奥の部屋に移動した。
……そんなに焦んなくても僕はちゃんと待ってるのに……
そう思いながら微苦笑をしてると、ルーフェさんがポツリと一言。
「……これで付き合っていないなんて、おかしな話よね」
「あ、あははははは……」
微苦笑が、苦笑になった。
11/05/11 20:52更新 / 星村 空理
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