第四章「洞窟の主、ラナ」
「……はぁ…………はぁ……疲れたわね……」
「ふぅ…………ふぅ…………わしもじゃ……」
……しばらく暴れると、二人はぐったりとして床に倒れていた。
………………大変だッた。吹き飛ばされたり、攻撃が流れてきたり、天井から岩が降ってきたり…………
とにかく、よく洞窟が壊れなかったな。そう言えるくらい凄い戦いだった。
「これは…………引き分けね…………」
「そうじゃの…………」
「…………そういえば、私に何か用があったんだっけ?」
「ああ、そうじゃった………………まぁ、わしではなく、ルシアの用事だがの」
寝転んだまま、二人は話しを元に戻した。
というか、よく話しを元に戻せるな…………
「そうなの…………? じゃあ、あの子はどこかしら………………?」
「ここにいますよ」
ラナさんが僕を探してるので、隣に座ることにする。
ちなみに、スクンダとスロウの効果は大体メギドラを放った辺りから解けていた。
というか、あそこで解けてなかったらいろいろと攻撃くらって死んでいたに違いない…………
…………一応襲われるかもしれないので、警戒したんだけど、余程疲れているのか、全く動く様子がない。
どんだけ暴れてたんだよこの二人は…………
「で、ここに用とはいったい何かしら?」
「二人が戦う前に、フィスというアリスが彼女であると良いましたよね?」
「ええ。……まさか、それを探せって言うの?」
「いえ、ただ、ここに彼女が来たのか訊きたかっただけです」
「そう……でも、なんでそのフィスって子はあなたのそばにいないのかしら? ………………もしかして、振られた?」
「違います。これには、ちょっとしたわけがあるんです…………」
「そう。残念ね…………」
まぁ、二人ともおとなしいし、ちょうど良いから事情を説明することにした。
少年説明中……
「…………なるほど、ね…………呪い……か……俄かに信じがたいけど、たしかにそれなら辻褄が合うわね…………」
「そもそも、呪いという概念自体が曖昧じゃからの」
「でも、呪いがあるのは事実です。……しかも、魔術という観点で、です」
そう、呪いは魔法ではなく、魔術。
使おうと思えば、誰でも使える…………
「まぁ、それはともかく、今はフィスって子の話しよね…………うーん…………ちょっと手伝ってあげようか?」
「え…………? いいんですか?」
「ええ。なにせ、私の好みの子のためだしね。ただし…………」
「一応言っておきますが、僕を売ることは出来ませんよ? フィスに悪いですからね」
「ぶ〜…………」
やっぱり、僕を条件にしようとしてたのか…………
なんというか、嫌なところでアーシェと同じだな…………
ちらりとアーシェの方を見ると、何故か呆れたような顔をしていた。
「ほんと、お主は一途じゃのう…………少しくらいは他の女に手を出しても問題ないじゃろう……」
「駄目だよ……。まぁ、僕は売れませんが、強い……というより、面白い人達のいる場所は紹介出来ますよ」
「ああ、ラインか……たしかに、あそこの人間はおかしなのが多いじゃろうしのぅ…………とは言っても、わしが知っているのは4人だけじゃが……」
「………………うーん………………………………分かったわ。君じゃないのが残念だけど……仕方がないか。彼女がいるんじゃねぇ…………。それに、婿候補のいそうな場所へ行ってみるっていうのも、面白そうだし……」
そう言うと、ラナさんは着ていた服の隙間から紙切れを取り出した。
「ブッ!? ラナさん、あなたなんて場所から物出してるんですか!!」
「ええ〜? だって服からならすぐに取り出せるし……」
「まぁ、そこらへんは置いておくとしてじゃ。手伝うと言っても、いったいどうするつもりじゃ? まさか、一緒に行くなんて言うまいな?」
「まぁ、それも考えたには考えたんだけど、流石に時期の確定しない旅とかは二ティカとかが心配するかなぁ、と思ってやめたわ。…………あぁ、二ティカ? すまないけどこっち来てくんない?」
『あ、はーい。分かりましたー』
ラナさんが紙に向かって言うと、なんと、紙から二ティカさんの声が返ってきた。
その様子を、アーシェは興味深そうに見ながら、すぐそれが何かを理解した。
「ふむ、通信魔術か……珍しいの」
「ええ。しかも、複数の場所にも連絡出来る優れものよ! 二ティカが開発してくれたの」
「へぇ……二ティカさんって、凄いんですね」
「ええ。流石、私の片腕ってところかしら?」
「え? 二ティカさん、そんなに凄いんですか?」
「あなた、言ってることが矛盾してるわよ? ……まぁいいわ。そうよ。じゃなきゃ見回り役なんて難しい役割与えないわよ」
「……たしかに、ここの構造はあり得ないくらいに複雑じゃからの……」
そんな感じに話していると、それほど待たずに二ティカさんがここにやってきた。
……よくあんな迷宮みたいなところからここにこれるよなぁ…………
前に言ったことは撤回しよう。洞窟より魔物の方が怖いと思う。
「で、いったい何の用ですか?」
「ええ。ちょっと二人にここの地図を渡して欲しいのよ。あと、すぐにハーピーに、フィスというアリスが来ていないか、私の知り合い達に訊いてくるように伝えてちょうだい。たしか、一人ここに滞在してたわよね?」
「分かりました。では、お二人とも、こちらが地図になります。あと、地図には通信魔術も織り込んであるので、誰かと連絡を取りたい時にお使いください」
「ありがとう。最新のを持ってるの、あなたしかいないからね…………助かったわ」
「いえいえ。では、失礼しますね」
そう言うと、二ティカさんはそそくさと部屋を出ていった。
なんというか、優秀だなぁ…………
と、そんなことを考えていると、アーシェが感心したように頷いていた。
「考えたのぅ。まず知り合いにあたって情報を手に入れ、さらに足止めをするとは……」
「あ、やっぱりバレちゃった?」
え、ちょっと待って!?
今この二人変なこと口走らなかった!?
「まぁ、ということで、あなた達には結果が届くまでここに滞在してもらうわ」
「うむ、よろしく頼むの」
「………………はぁ、分かりました。どこにいるのか分かれば上々ですからね。元から、目的はあってもあてはない旅でしたし…………」
いろいろと心配はあったが、情報は欲しいので、僕は滞在することに決めた。
「じゃあ、ルシア君は私の部屋に…………」
「「ちょっと待てぃ!?」」
ラナさんの一言に、僕とアーシェは同時に突っ込んだ。
…………まぁ、そんな感じでこの後また二人が暴れたりするんだけど…………そこは、別の話ということで…………
「ふぅ…………ふぅ…………わしもじゃ……」
……しばらく暴れると、二人はぐったりとして床に倒れていた。
………………大変だッた。吹き飛ばされたり、攻撃が流れてきたり、天井から岩が降ってきたり…………
とにかく、よく洞窟が壊れなかったな。そう言えるくらい凄い戦いだった。
「これは…………引き分けね…………」
「そうじゃの…………」
「…………そういえば、私に何か用があったんだっけ?」
「ああ、そうじゃった………………まぁ、わしではなく、ルシアの用事だがの」
寝転んだまま、二人は話しを元に戻した。
というか、よく話しを元に戻せるな…………
「そうなの…………? じゃあ、あの子はどこかしら………………?」
「ここにいますよ」
ラナさんが僕を探してるので、隣に座ることにする。
ちなみに、スクンダとスロウの効果は大体メギドラを放った辺りから解けていた。
というか、あそこで解けてなかったらいろいろと攻撃くらって死んでいたに違いない…………
…………一応襲われるかもしれないので、警戒したんだけど、余程疲れているのか、全く動く様子がない。
どんだけ暴れてたんだよこの二人は…………
「で、ここに用とはいったい何かしら?」
「二人が戦う前に、フィスというアリスが彼女であると良いましたよね?」
「ええ。……まさか、それを探せって言うの?」
「いえ、ただ、ここに彼女が来たのか訊きたかっただけです」
「そう……でも、なんでそのフィスって子はあなたのそばにいないのかしら? ………………もしかして、振られた?」
「違います。これには、ちょっとしたわけがあるんです…………」
「そう。残念ね…………」
まぁ、二人ともおとなしいし、ちょうど良いから事情を説明することにした。
少年説明中……
「…………なるほど、ね…………呪い……か……俄かに信じがたいけど、たしかにそれなら辻褄が合うわね…………」
「そもそも、呪いという概念自体が曖昧じゃからの」
「でも、呪いがあるのは事実です。……しかも、魔術という観点で、です」
そう、呪いは魔法ではなく、魔術。
使おうと思えば、誰でも使える…………
「まぁ、それはともかく、今はフィスって子の話しよね…………うーん…………ちょっと手伝ってあげようか?」
「え…………? いいんですか?」
「ええ。なにせ、私の好みの子のためだしね。ただし…………」
「一応言っておきますが、僕を売ることは出来ませんよ? フィスに悪いですからね」
「ぶ〜…………」
やっぱり、僕を条件にしようとしてたのか…………
なんというか、嫌なところでアーシェと同じだな…………
ちらりとアーシェの方を見ると、何故か呆れたような顔をしていた。
「ほんと、お主は一途じゃのう…………少しくらいは他の女に手を出しても問題ないじゃろう……」
「駄目だよ……。まぁ、僕は売れませんが、強い……というより、面白い人達のいる場所は紹介出来ますよ」
「ああ、ラインか……たしかに、あそこの人間はおかしなのが多いじゃろうしのぅ…………とは言っても、わしが知っているのは4人だけじゃが……」
「………………うーん………………………………分かったわ。君じゃないのが残念だけど……仕方がないか。彼女がいるんじゃねぇ…………。それに、婿候補のいそうな場所へ行ってみるっていうのも、面白そうだし……」
そう言うと、ラナさんは着ていた服の隙間から紙切れを取り出した。
「ブッ!? ラナさん、あなたなんて場所から物出してるんですか!!」
「ええ〜? だって服からならすぐに取り出せるし……」
「まぁ、そこらへんは置いておくとしてじゃ。手伝うと言っても、いったいどうするつもりじゃ? まさか、一緒に行くなんて言うまいな?」
「まぁ、それも考えたには考えたんだけど、流石に時期の確定しない旅とかは二ティカとかが心配するかなぁ、と思ってやめたわ。…………あぁ、二ティカ? すまないけどこっち来てくんない?」
『あ、はーい。分かりましたー』
ラナさんが紙に向かって言うと、なんと、紙から二ティカさんの声が返ってきた。
その様子を、アーシェは興味深そうに見ながら、すぐそれが何かを理解した。
「ふむ、通信魔術か……珍しいの」
「ええ。しかも、複数の場所にも連絡出来る優れものよ! 二ティカが開発してくれたの」
「へぇ……二ティカさんって、凄いんですね」
「ええ。流石、私の片腕ってところかしら?」
「え? 二ティカさん、そんなに凄いんですか?」
「あなた、言ってることが矛盾してるわよ? ……まぁいいわ。そうよ。じゃなきゃ見回り役なんて難しい役割与えないわよ」
「……たしかに、ここの構造はあり得ないくらいに複雑じゃからの……」
そんな感じに話していると、それほど待たずに二ティカさんがここにやってきた。
……よくあんな迷宮みたいなところからここにこれるよなぁ…………
前に言ったことは撤回しよう。洞窟より魔物の方が怖いと思う。
「で、いったい何の用ですか?」
「ええ。ちょっと二人にここの地図を渡して欲しいのよ。あと、すぐにハーピーに、フィスというアリスが来ていないか、私の知り合い達に訊いてくるように伝えてちょうだい。たしか、一人ここに滞在してたわよね?」
「分かりました。では、お二人とも、こちらが地図になります。あと、地図には通信魔術も織り込んであるので、誰かと連絡を取りたい時にお使いください」
「ありがとう。最新のを持ってるの、あなたしかいないからね…………助かったわ」
「いえいえ。では、失礼しますね」
そう言うと、二ティカさんはそそくさと部屋を出ていった。
なんというか、優秀だなぁ…………
と、そんなことを考えていると、アーシェが感心したように頷いていた。
「考えたのぅ。まず知り合いにあたって情報を手に入れ、さらに足止めをするとは……」
「あ、やっぱりバレちゃった?」
え、ちょっと待って!?
今この二人変なこと口走らなかった!?
「まぁ、ということで、あなた達には結果が届くまでここに滞在してもらうわ」
「うむ、よろしく頼むの」
「………………はぁ、分かりました。どこにいるのか分かれば上々ですからね。元から、目的はあってもあてはない旅でしたし…………」
いろいろと心配はあったが、情報は欲しいので、僕は滞在することに決めた。
「じゃあ、ルシア君は私の部屋に…………」
「「ちょっと待てぃ!?」」
ラナさんの一言に、僕とアーシェは同時に突っ込んだ。
…………まぁ、そんな感じでこの後また二人が暴れたりするんだけど…………そこは、別の話ということで…………
10/10/02 21:38更新 / 星村 空理
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