連載小説
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一話 蛇の道は?
―――――― ????


あの後、確実に部屋から出るどころか近くのコンビニに着いてしまうであろう距離を歩かされた。

「ご主人、着いたニャ。」

不意にトウの声が聞こえ、服に掛かっていた力が弱まった。
…つ、遂にまた異界に入ったのか。
今までの経験からの緊張からか、思わず生唾を呑んでしまう。

「…宵、前見えないんだけど。」
「いやにゃ。」

答えにも理由にもなってねぇ…。
宵を顔から外そうとするが、引っ張ると余計に顔を掴む手の力を強めてくる。
クワガタかっ!!

「…ん?」

怪我させない程度に力を入れて宵を引っ張っていると、ふと遠くから祭り囃子が聞こえてきた。
…祭り?この地区の餅つき大会はまだ先だったよな…。
不可思議な事に疑問に思っていると、やっと宵の体がスポンと外れた。
一気に広がった視界一面に、生い茂った木々が映る。…ここ、森?
しかし、あっしの足元は獣道のように草一つ生えておらず、その道は丁度祭り囃子が聞こえてくる方向に続いていた。

「む〜…。」
「こ、こら宵。」
「宵ばっかりズルいニャ!」「トウまで…落ち着きなさい。」

外れた傍からまたへばり付こうとしてくる宵とトウを何とか抑える。
二人を降ろした時、祭り囃子の他に不可解な事があるのに気付いた。
この場所の気温だ。
本来なら秋も終わり、冬真っ盛りでいくら年中半袖ジーパンのあっしと言えど手には痛みを覚える気温の筈。
しかし、ここは夏も闌といった暖かさがあった。

「ごしゅじんしゃま、あっちからいいにおいするにゃ。」

ズボンの裾を掴んだ宵が、祭り囃子の聞こえてくる方向を指差す。

「?」

指差す方向を嗅いでみるがあっしには分からない。だが、宵達には分かるらしく二人とも声に出さないものの、ズボンの裾をクイクイと引っ張り続けて急かしてくる。

「…何があるか分からないから、出来れば行きたくないんだよなぁ…。」

思わず口に出てしまった本音。

「大丈夫ニャ。ここはご主人が思ってるほど危険な場所じゃないニャ。」

そんなあっしの本音にも気分を害した様子もなく、トウが答える。

「…分かった。じゃあ行こうか。」

…祭り囃子が聞こえるってことは、何かしらの大きな祭りがあるのだろう。
だとしたら、何か売ってるかな?と言うか、単位は円なのか?
様々な疑問が浮かぶが、まずは行ってみよう。
考えるのはそれからでも遅くは無いだろう。
万一あっしにとって、いやその前にトウや宵達にとって危険な場所なら走って逃げよう。

「ごしゅじんしゃま、どうしたにゃ?はやくいくにゃ〜。」
「ああ、ごめんな。ちょっと考え事してた。…んじゃ、行こうか。」

両サイドで甘えてくる愛猫もとい愛娘と手を繋ぎ、件の道をゆっくりと進んでいった。
12/01/15 12:32更新 / 一文字@目指せ月3
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■作者メッセージ
宵「かにっ!!」
トウ「鯖っ!!」
一文字「……………。」

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