第三話 親友と儀式 中篇
俺は彼女ラージマウスと共に、森の中を走っていた。
この先に親友が連れ去られたワーウルフ達の住処があるという。
彼女の話によればこうだ。
彼女と親友はこの近くで遊んでいたところをワーウルフに襲われた。
彼女が必死に抵抗するも敵わず親友は連れ去られてしまう。
一度住処へ乗り込んだものの彼女達の守りは厳重でとても入り込めたものではなく救出を断念した。
そして少しでも対抗するために、人間から武器を奪い、助け出そうとした。
お金を欲しがったのはそれで街へ行って武器を買おうとした為だそうだ。
それにしても…。
「まったく無茶な考えをする、人間の武器を使ったからって勝てるわけ無いだろ?それに街に行った所で魔物に武器を渡すようなやつがいると思うか?」
この近くには魔物を悪とする考えが大きく広まっており、討伐まではしないものの魔物を嫌うものが多く、店はおろか街にすら入れない。
横で一緒に走る彼女が悔しそうに言う。
「分かってたよ、そんなこと。…でもどうしても親友を助けたかったんだ!」
「人間は嫌いじゃなかったのか?」
「人間は嫌いさ、でも親友は違う。親友は私を見ても嫌な顔をせず好きだって言ってくれたんだ。」
「お前もその親友の事が好きなのか?」
「ああ、大好きだ、彼のためなら死んだって構わない。」
彼女は真剣な顔で親友の事を語った。
それを聞いた俺は少しばかり彼に興味を持った。
俺以外に彼女達を好きになれる人間がいたとは…。
そう思うと人間の中にも同じ思想のものは少なくないのかもしれない。
そして彼女自身も人間は嫌いだが気に入った者に好意を抱いている。
これこそが、俺の理想とした形。
人と魔物が手を取り合い、共に生きていく。
そのためにもまず、彼女の親友を取り戻さなくてはならない。
「ま、そのせいで群れからも放されちゃったんだけどね。人間に好意を持ってるってやっぱり変なのかな?」
俺が黙っていることを誤解したのか彼女は少し自嘲気味に言った。
「いいや?俺はとても素晴らしい事だと思うぜ?」
そういうと彼女は「そうかな?」と頬を赤らめて照れながら言った。
こういうときの彼女達は無性にかわいいと感じてしまう。
すこし親友が羨ましくなった。
「ここだ、ここがやつらの住処だよ。」
「住処?ここはどうみても…。」
俺は彼女に案内され彼女達ワーウルフの住処へとやってきた。
だがそこは住処や巣とは桁違いに大きくまるで、
「こりゃどう見ても集落だぞ…。」
周りには藁や木で作られた小屋が建ち、鉄やレンガが使われて無い分、少し古めかしいが人間が住んでいてもおかしくないほどの見事な集落だった。
その中央には大きな家が建っており推測からして、そこにはここの長となる者がいるのだろう。
「で、少年はどこにいる?」
「多分、あの大きな家の下、あそこに縛られてると思う。」
「あそこか、厄介だな。」
俺達は近くの茂みに隠れながら親友がいるであろう長の家の下を見た。
あまりよく見えないが見張りらしき者が立っているのが辛うじて分かった。
「さて、助けに行く前にいくつか確認しておくぞ?」
俺はなるべく小さな声で彼女に話した。
「まず俺があそこに忍び込んで親友を助ける、その後隙を見てお前が飛び出し親友を抱えて安全なところまで逃げる。簡単に言ってるが実際はシビアだ。心してかかれ?」
「わかってる、でもその後あんたはどうするの?」
「俺はここでやることがある、心配するな。最初に会った所で待っていてくれ。」
俺は彼女の不安そうな顔に見送られながら、辺りに誰もいないことを確認すると茂みからそっと出て小屋の影に隠れた。
…ふと思い出したかのように振り返る。
「忘れるとこだった、あんたの名前とその親友の名前は?」
こんな重要な時にそんな事言える俺は暢気なのかね。
と自分で自嘲しながら彼女に聞く。
彼女も同じ事を思ったのか少し苦笑しながら俺に伝えた。
「私はラズ、親友はロイスだよ。」
「ラズとロイス、いい名前だ。…必ず助け出す。」
俺はそのまま集落の中心へと入っていった。
建物の影を伝いながら俺は曲線を描くように前進していく。
この集落はどうやら月が欠けた様な形をしているようだ。
外周を柵で囲み、出口は一箇所だけ。そして中心に彼女の親友ロイスがいる。
ロイスを連れてラズの所まで戻り、追っ手を振り切りながら逃げるのはかなり難しい。やはり一番はロイスに出口の方向に真っ直ぐ突っ切らせるしかない。
その間俺は孤立した状態になってしまうが、まあ何とかなるだろう。
次の小屋にへと移動しようとしたときだった。
「……なったらあの男を食べれるの?」
移動している途中で小屋の中から声が聞こえた。
俺は気づかれないようにして聞く耳を立てた。
「族長様が帰ってくるまでよ?はじめに族長様が食べて、その後が私達、いつもそうでしょ?」
中からは二人の声がした。
どうやらここにロイスが捕まっているのは間違いないようだ。
ここで彼女達の言っている食べるとは性的な意味でである。
魔物娘は共通して人間に襲うことはあっても命までは取らないのだ。
さらに話を聞き続ける。
「いつごろ帰ってくるの?」
「さあ?狩りに出かけたはずだから少しかかるかもね?」
「はあ、それまでお預けか…。見張り係は良いな〜、つまみ食い出来るんだから。」
「でもばれたら大変よ?あ、そうそう見張りで思い出したんだけど…」
これ以上は情報は得られないと思い、俺は耳を離した。
これは好機だ。
今はここの親玉はいない、助け出すなら今だ。
俺はまた小屋伝いに進んでいった。
そろそろ中央が見えてくる辺りで止まった。
前から何か聞こえてくる…。
…!。足音だ!!
俺はすばやく屋根に上り、体を伏せる。
ワーウルフが目の前を通っていく。
「異常なしっと、後、一周で交代だ。」
独り言を言いながらそのまま俺の来た道を進んでいった。
何とか見つからずにすんだようだ。
見回してみると俺が入ったところから大分進んでいたようだ。
目的地である中央に目を凝らす。
…誰かが縛られてるようだが、ここからじゃ家が邪魔で見えない、もう少し回り込まないと。
俺は屋根から降り、中央へと回り込んでいく。
徐々に姿が見えてきた、ロイスと思われる少年が柱に縛り付けられている。
見張りが二人、一人は中央を見張っている、もう一人は…しゃがんでいる?
近づくにつれてロイスの顔の表情も見えてきた。
口が隠れていてよく分からないが悶えているようだ。
しばらくして、見張り達が何をしているのかが分かった。
「…なるほど、“つまみ食い”だ。」
ロイスの前にしゃがんでいたワーウルフは彼の肉棒を一心不乱に口淫していた。
もう一人のワーウルフも見張りをするものの、ちらちらと後ろを見ては、自分の胸や陰部を触り、犯したい衝動を抑えていた。
ロイスは縛られてる上に声も出せないので為すがままにされ、身体をよじらせるしかなかった。
さらに近づくと二人の声が聞こえてきた。
「ねえ、早く変わってよぉ。はあ…。私もしたいんだからぁ。」
嬌声が混じった声でもう一人に訴えかける見張り。
陰部からは愛液が滴り落ち、犬のように尻尾を振っている。
変わって欲しいと言われたもう一人の見張りは、目だけ向けた。
その間にも、手でしごきながらズポズポと音を立てて、肉棒を口で出し入れしている。
「ん、もうひょっとらけ、ん!すぐ、いひゃせるから!」
咥えながらそう言うと、彼女は畳み掛けるようにして激しく口淫する。
「んー!!んんー!!」
「ん!、ふ!、ふふ、はわいい、あふいの、ひっはいはしてね?」
そうしてロイスの身体はびくんと跳ね上がり、絶頂を向かえ射精した。
「んぶ!!ん、ふう、んく。」
予想より多かったのか彼女の口から精液が溢れでた、喉を鳴らし精液を飲み干すと口を離した。
「ぷは、ごちそうさま♪…服にまでかかっちゃった、ばれるとまずいからちょっと着替えてくる!」
見張りはそう言うと、近くの小屋へと入っていった。
行くなら今だな。
残ったほうの見張りはロイスへ近づくと尻尾を振りながら股を開き始めた。
ここからでも聞こえるくらい息を荒くしてロイスに抱きつこうとする。
俺はそのまま近づき…。
「んー!んぐー!!」
「はあ、ん、もう我慢できない、犯してや、ぎゃう!!」
「少しは我慢しろ。」
後ろから彼女を拘束した。
ロイスは目の前で何が起きているか理解できず、こっちを見ていた。
「がぁぁ!離せ!!離せぇー!!」
叫び声をあげながら暴れだす彼女を必死に抑えてると、騒ぎを聞きつけてさっきの見張りが小屋から出てきた。
「いったいどうしたの!?って人間?!」
「そら受け取れぇ!!」
俺は拘束した見張りを彼女に向かって投げ飛ばす。
うまく直撃し「ふぎゃ」と声を上げながら小屋の中に倒れた。
その間にロイスを縛っている縄と猿轡を解いてやる。
「ロイスだな?」
「は、はい、貴方…は?」
「お前の親友に頼まれて助けに来た、立てるか?」
「はい…うう。」
ロイスは立ち上がり、走ろうとするがふらふらと足がもつれてしまっている。
どうやらさっきの“余韻”がまだ残っているようだ。
くそ、こいつ初めてだったか?!
俺は見かねてロイスに肩を貸し集落の中を突っ切る。
周りが騒ぎ始めた…。
「なんだ?!何の騒ぎだ!」
「人間が脱走したぞ!!」
「いったい見張りは何をしてたんだ?!」
「探せ!!絶対に逃がすな!!」
次々とワーウルフが小屋から飛び出してくる。
このままじゃ囲まれるのも時間の問題だ。
少し遠いが仕方ない。
「ロイス!!このまま真っ直ぐ走り抜けろ!」
「そ、そんな、無茶だよ!!」
「俺が彼女達を引き付ける、さっさと行け!!」
俺はロイスの背中を突き飛ばし出口に向かって走らせた。
ロイスはよろめきながらも出口に向かっていった。
…逃げ切ってくれよ?
俺はそのまま振り返り、追いかけてきた一人に足払いを食らわせ転倒させる。
「さあこっちだ!俺について来い!!」
そう言いながら集落の中央に向かって逆送する。
「逃がすな!!そっちに行ったぞ!!」
「馬鹿め、そっちは行き止まりだ、追い詰めて取り囲め!!」
「あ、あっちに一人いた!!」
何人かはこっちに向かってくるが一人がロイスに気づいて追いかける。
まずい、ここからじゃ間に合わない。
「さあ捕まえ……あれ?」
ロイスを捕まえようと手を伸ばすが、彼の姿が一瞬消えた。
驚いてみてみるとラズが彼を背負い猛スピードで駆け抜けていた。
「ラズ?どうして…」
「喋ると舌を噛むよ!しっかり捕まって!!」
ラズとロイスは茂みを飛び越えていき、森の中へと消えていった。
よし、後は…。
俺はなるべく彼女達を引き付けるようにして走り、丁度ロイスが捕まっていたところ辺りで立ち止まる。
追いかけてきた彼女達は瞬時に俺を取り囲み、逃げ場がないようにした。
「ふふ、お前を完全に包囲した、もう逃げられないぞ?」
取り囲みながら彼女達が徐々に迫ってくる、誰もが息を荒げ、ひどく興奮した様子だった。
…どうやら彼女達は長い間“ご無沙汰”だったようだ。
俺は素手のまま身構える、木の棒は邪魔になるから置いてきてしまった事を少し後悔した。
素手でも戦えるが団体戦になると武器があるほうが幾分楽だ。
しかもこの中から俺の妻を選ばなくてはならない、下手をすればここにいる全員の夜の相手をすることになるかもしれないのだ。
俺は骨の折れる事にため息し、彼女達を見据える。
今にも襲い掛かってくる時だった。
「控えよ!!!」
怒声ともいえる声が響き、彼女達が我に返った。
しばらくして、俺の前を取り囲んでいた彼女達が道を開き、離れていく。
スタスタとこちらにやってくる人影が見えてきた。
「これは一体、何の騒ぎだ?!」
出てきたのは装飾品を身体に多く身につけ、マントのようなもの羽織ったワーウルフだった。
「「「族長様!!」」」
次々と周りから族長という名前が飛び交う。
なるほど、たしかにそれらしい雰囲気はかもし出しているな。
族長と言われたワーウルフは彼女達に向かって叫んだ。
「状況を報告できるものは前に出よ!!」
「「はっ!」」
彼女がそう言うと近くにいた二人が前に現れる。
…良く見ると先ほどロイスを見張っていたワーウルフだ。
「報告します、この人間が捕まえていた獲物を逃がし、脱走を手助けしました。」
族長が「ふむ」といい俺の方を見た、無意識に目が合う。
…彼女はとても美人だった。
瞳は綺麗な黄金色をしており、その目からは想像も出来ないほどに鋭い眼光を放っている。
俺は彼女が族長になった理由がそれでなんとなく分かった。
族長は視線を戻し話を続ける。
「お前達は見張りだな?何をしていたのだ?」
「はっ、不覚にも見張りの交代をしている際に、隙を突かれました。」
よくもまあそんな嘘がつけるものだ。
俺はそう思いながら、意地悪にも真相を言ってやる事にする。
「そりゃあ“つまみ食い”もすれば隙も出るだろうさ。」
「「な?!」」
「…ほう?」
真相を暴かれ二人はしどろもどろになりだした。
それを聞いた族長は二人を問いただすように睨み付けた。
彼女達はただ族長にすごまれ、縮こまるしかなかった。
「浮かれた奴らめ!!お前達は今から三日間外の見回りだ、任を終えるまでこの集落に返ってくることは許さん!下がれ!!」
怒鳴られた二人はいそいそと出て行き、恨めしそうに俺を睨み付けていたが俺は無視した。
これでロイスの始めてを奪った借りはチャラにしてやる。
「さて、人間よ。」
族長はこちらに向きながら話始めた。
「我らの集落へ入り込み、騒ぎ立てた挙句、あまつさえ獲物まで逃がしたのだ。…覚悟は出来ているのであろうな?」
威圧に満ちた眼光が俺を貫いた。
族長といわれるだけあってなかなかいい目をする。
俺は臆せず話を続けた。
「まあ、逃がしたのはついでだがな。それよりあんたに一つ提案がある。」
「提案だと?」
族長は俺の提案という言葉に疑いながらも聞いてきた。
良かった、まだ話は通じるようだ。
俺はそのまま話を続けた。
「簡単だ、俺とあんたで一騎打ちがしたい。」
「一騎打ち?」
「そうだ、一対一で戦う。…もしあんたが勝てば俺を好きにしてもいい、俺が勝ったら一つだけ願いを聞いてもらう。」
「…願いとは何だ?」
「あんたを俺の妻にする。」
「?!」
彼女達の間で動揺が走り、ざわざわと騒ぎ始めた。
族長自身も動揺が隠し切れず、尻尾を不規則に揺らしている。
…心なしか彼女が一瞬頬を赤らめた気がしたが、すぐに平静を取り戻した。
コホンと咳をし話し始める。
「いいだろう、受けて立とう。どの道お前は我らの慰み者になるのだからな。」
「話が早くて助かる、じゃあ、始めようか。」
俺は小屋に立てかけてあった木の長棒を手に取り、軽くまわしてみる。
邪魔にならず、適度な長さだ、それほど重くもない。
彼女のほうは着けていたマントを投げ捨て、戦闘態勢に入っていた。
マントで見えていなかったが彼女の身体は…一言で言えば凄い。
無駄が一切なく引き締まった身体、透き通るほどに綺麗な肌、そしてその身体に似合わないほどの胸元から開いた谷間。
それだけで俺は不謹慎にも彼女を選んでよかったと思った。
彼女が不意にこちらに語りかける。
「そんな棒で私に勝てるとでも?」
「ああ、じゃないと大変なんだよ。」
「…何がだ?」
俺は不敵にも笑いながら答えた。
「手加減が。」
「ほざけぇ!!」
俺の言葉を機に彼女が飛び掛り、手先から伸びた鋭い爪が襲い掛かる。
寸前で彼女の攻撃をかわし、俺は次に備え身を構えた。
彼女は続けて俺に攻撃を仕掛けてくる。
右、左、足と巧みに使いながら彼女は攻め立てる。
俺はかわし、時には防ぎながら反撃の機を待った。
攻撃をしながら彼女は語りかけてくる。
「どうした?避けているだけでは私は倒せないぞ!!」
「それは一撃でも当ててから言うもんだ。」
「戯言を!!」
怒鳴りながら彼女は大振りな回し蹴りを放ってきた。
風を切るようにして放たれた足が彼の横顔へと到達し、乾いた音を響かせた。
周囲から「やった!」と歓声があがる中、彼女の目が大きく開かれる。
「なに?!」
彼女が手応えありと思っていた感触は彼の顔ではなく、瞬時に防いだ長棒の一部だった。
長棒は衝撃に耐えられず二寸先ほど折れてしまったが、その間に彼女の懐へと入り込み、重心を支えていた片足に長棒の一撃を食らわせる。
「しま、が!!」
瞬時に察し避けようとしたが時すでに遅し、彼女は足をすくわれ転倒する。
俺はその様子を見ながら彼女に一言だけ忠告する。
「次は無いぜ?」
周囲がまた騒ぎ始めた。
自分達の中で一番強い族長が有効打も出せず押されている。
それは自分達が束になっても勝てないという証拠をあらわしていた。
彼女達はただ見ているしか出来ず、戦いを見守っていた。
彼女は反転し、すぐに体勢を整えた。
息を荒げながら彼女が話し出す。
「少々おまえを見くびっていたようだ、さすが私に求婚するだけはある。」
「そりゃどうも、だがそろそろ時間が無いんでな。終わらせるぞ?」
「ならば!」
そう言うと彼女は突然、別の方向へと走り出した。
「これならどうだ!!」
俺は何事かと見ていると彼女は小屋の壁を蹴って三角跳びをし、そのまま回転をかけて俺の頭上に向かって奇襲を仕掛けてきた。
なるほど、頭上からの攻撃とは考えたな。
「もらっ、?!」
落下してくる彼女の目の前に突如、何かが飛んで来た。
なんとか身体を反らし避けると、それは長棒だった。
だが身体を無理に反らしたためにバランスを崩してしまい、勢いを無くしてしまう。
それを俺は見逃さなかった。
「ふん!!」
俺は彼女の身体を掴むと、勢い良く地面に叩きつけた。
「がはっ!!」
地面に叩き付けられた彼女は堪らずうめき声をあげる。
俺は落ちてきた長棒を難なく掴むと容赦なく彼女の首筋にへと突きつけた。
勝敗は決した。
「俺の勝ちだな。」
俺は無用になった長棒を捨て彼女を抱き起こした。
幸い目立った傷も無くほっとした。
叩きつけたときは正直ひやっとしたが、彼女もそこまでやわでは無かったようだ。
俺は立ち上がり、辺りが静まり返る中、出口に向かって彼女に語りかけた。
「さあ、約束は守ってもらうぞ。その前に、向こうの様子も見なくちゃならないな、それまで…。」
言いかけて止まった。
彼女達の様子がおかしい。
さっきまで静まり返っていた彼女達が急に片ひざをつき、頭を垂れている。
そして族長はというと身体に付いたごみやらを取りながら俺に近づいてきた。
「ど、どうした?」
最初はまだ戦う気かと少し構えたが、予想とは裏腹に俺の前で膝を付きこう言った。
「不束者だが、私で良ければ。…良き妻になれるよう努力しよう。」
時は少し遡り…。
ラズはロイスを背負いながら走り、ついに森の外へと抜け出すことが出来た。
月明かりが辺りを照らし、その先には彼女とアレスが始めて会った草原が広がっていた。
追っ手が来てないことを確認すると、ラズは僕を下ろしその場に座り込んだ。
「ここまで、来れば…、大丈夫だね。」
彼女はそう言いながら息を整える。
必死に走ったせいで彼女の服は所々が破れ、肌が露出していた。
僕は彼女の肌をなるべく見ないようにしながら、彼女に気になっていた事を聞いてみる。
「ラズ、どうして僕を助けてくれたの?」
「だってあんたは私の親友でしょ?」
僕の問いに彼女はさも当たり前のように答えた。
僕は続けて話す。
「でも、いくら親友でもあんな危ないこと…。」
「なに?私に助けられるのが不満なの?!」
彼女は急に声を荒げていった。
僕もそれにつられて声を張り上げる。
「違うよ!君に危ないことはして欲しくないんだ!!」
「何言ってんのよ?!人間のくせに、弱いくせになんでそんなこと言うの!?」
僕は彼女の言葉に煮えくり返り、ついに言ってしまった。
「人間のくせに、君を好きだったら駄目なの!?」
「??!」
彼女は僕の言葉の意味に驚き、声を失っていた。
僕は今更後悔しながらも少しずつ告白した。
「僕は、君と出会って、一緒に遊んでいくうちに好きになったんだ。でもなかなか言い出せなくて。だから、君が傷つくのは見たくないんだ。」
「…。」
彼女は僕の言葉を聴き、ずっと黙っていた。
やっぱり駄目かな…ラズは人間が嫌いって言ってたんだし、こんな僕じゃ彼女を守れない。
そう思い諦めかけた時だった。
「…いいの?」
「え?」
ボソッと彼女が呟く。
みてみると彼女は瞳を潤ませていた。
「私なんかでいいの?」
「…うん。」
「だって、私は魔物なんだよ?!人間じゃないんだよ??!」
「そんなの関係ない、魔物の君じゃなきゃ駄目なんだ!!」
「?!」
僕は気が付くと彼女を強く抱きしめていた、この思いが嘘ではないことを示すために。
「ロイス…。」
抱きしめられた彼女はしきりに僕の名前を呼び涙を流した。
僕は彼女の髪を撫でながら抱きしめる。
「私もロイスの事が好き。」
そう言うと彼女は僕の唇を奪った。
絡めあうように舌を動かし濃厚な口づけをする。
僕は彼女を押し倒し、逆に唇を奪った。
「はあ…、ロイス、きて?」
そう言いながら彼女は下着をめくった。
いやらしく汁を垂らした陰部が僕を気持ちを淫靡にさせた。
僕はその時、
「ラズ!!」
一人の獣になった。
それからしばらくして場所は変わり森の中。
暗い森の中を一人の男が歩いていた。
「…。」
…体中べとべとにして。
彼女達の集落から抜け出してきた俺はラズとの約束の場所へと歩いていた。
なぜこんな事になっているのかと言うと、彼女達の“襲撃”にあったからだ。
聞くところによると彼女達は自分より弱い人間は犯し、逆に強い人間だと分かると忠実になるらしい。
あの後、族長と皆に少しだけ待って欲しいと話したところ、ずっとご無沙汰だったのが限界に来たようで族長率いる彼女達に襲われてしまった。
なんとか逃げ出せたものの顔や身体は彼女達の唾液やら汁やらでべとべとになってしまった。
あとで彼女達の集落で洗濯しよう。
もう少しで森が抜けるというところで声が聞こえてきた。
「?」
声というよりは叫び声に近く、良く聞いてみるとラズの声だった。
恐る恐る近づくと、それは叫びではなく喘ぎ声へと変わっていく。
お楽しみ中か…。
覗いてみると二人はお互いを性欲のままに貪りあっていた。
「ん、あぁ、ロイス、良いの、気持ちいの!」
「僕も、はぅ、気持ちいいよ、ラズ!」
ラズはロイスの身体に馬乗りになって激しく腰を振っていた。
…こんなことなら先に向こうを片付けるべきだったかも知れない。
そんなことを思いながら俺はやれやれとため息をつく。
二人の声が激しくなり絶頂を迎えようとしていた。
「はあ…僕、もう。」
「いいよ、私の中に、あん、精液だして!!」
そう言うと二人の動きは激しくなり、身体がびくんと跳ねた。
「うあぁ!!」
「ああぁぁ!!!」
二人は叫ぶと力なく倒れこんだ。
ロイスの上でラズは息を整えている。
そんな二人は口づけをし、語りかける。
「ねぇ、もう一回しよ?」
「うん…。」
そういうと彼らはまた腰を…。
「そこまでだ。」
「「ひゃあ!!」」
二人は俺の声を聞くと同時に跳び上がった。
俺は二人の前に仁王立ちし睨んだ。
二人はいそいそと服の乱れを直していく、俺も男だ、これ以上されたらどうにかなりそうだ。
服をちゃんと着た二人が向き直った。
ロイスは「ははは」と頬を掻きながら、ナズは恥ずかしそうに俯きながら立っていた。
「まったく、俺が苦労している時にお楽しみか?少年、いいご身分だな?」
「あはは…、すみません。」
ロイスはまんざらでもない顔をしていた。
すこし腹が立ったが抑えておこう。
不意にラズが顔を上げる。
「ワーウルフ達はどうなったの?」
「ああ、おとなしくさせたよ、そのせいでこのざまだ。」
俺は服や顔がべとべとになったのを二人に見せた、すると二人は申し訳なさそうに謝った。
「ごめんなさい、私達のために…。」
「別に良いよ、俺には元々やるべきことがあったからな。」
「やるべき事って?」
「…それはな。」
俺は二人にこれまでの経緯を話した。
二人ならこのことを理解してくれると思ったからだ。
俺の話を二人は真剣に聞いてくれた。
「…以上だ。何か質問は?」
冗談めいていうとロイスがおずおずと聞いてきた。
「じゃあ、ラズはどこかに言っちゃうの?」
「ロイス…。」
二人は不安げな顔で俺を見てきた。
そう、ラズはこのままヴェンの所へと連れて行かなければならない。
そうなると二人は離れ離れになってしまう。
ヴェンは確か新しく作った魔王城で研究しているといったが、俺もどこにあるかは知らない、会いに行くのは難しいだろう。
だが俺には一つの考えがあった。
「それなんだが、少年。いやロイス、俺に提案がある。」
「提案ですか?」
「ああ、お前も一緒に行けば良い。」
「え、ええ?!」
ロイスは俺の言葉に驚いていた。
俺の提案。
それは実に簡単なことだ。
離れたくなければ付いていけばいいのだ。
だが、そのためにはロイスの勇気が必要だ。
俺は真剣にロイスに問いただす。
「ロイス、お前はラズが好きか?」
「え、はい…。」
「どうなんだ?!」
「好き、いえ愛しています!!」
俺が怒鳴るとロイスはあわてて答えた。
ロイスの発言にラズは顔赤らめたが、無視して話を続ける。
「ラズを妻にしたいか?」
「はい。」
「それが人に理解されないことでもか?」
「はい。」
「この先辛い出来事があるかもしれない、死ぬほど苦しい目にあうかも知れない、それでも一緒にいたいか?」
「…はい!!」
俺の問いにロイスは力強く答える。
それを聞いたラズの目から大量の涙が零れ落ちていた。
ロイスは俺の言葉を待ち、緊張で拳が震える。
俺はふっと笑いロイスの肩を叩いた。
「合格だ、お前も一緒にいきな。」
「あ、ありがとうございます。」
そう言うと俺はイヤリング越しにヴェンの事を念じた。
しばらくしてヴェンが応答する。
「おお、アレス。どうした?」
「ヴェン、いい知らせだ。二人目を送る、三人目もいるが少しかかる。」
「二人もか?!君も意外と出来るな〜、早速送ってくれ。」
「ああ、それなんだが、二人目が厄介だ。」
「ん?どうしてだ?」
「実はな…。」
俺はヴェンに二人の事を話すとヴェンは意外にも快く承諾してくれた。
「それは大歓迎だ!!こちらは別に構わない、部屋も一杯あるし、食事も私が作ろう。」
「そいつは良かった、すぐ送る、じゃあな。」
俺はヴェンとの交信を切り、ケースを取り出して一枚札を引く。
二人を念じようと振り向くと二人は抱き合って口づけをしていた。
俺は半ば呆れながらも二人に語りかける。
「そういうのは向こうに着いてからしてくれないか?」
「あ、ごめんなさい、つい…。」
そう言うと二人から光があふれ出した。
二人は驚くようにして光を見つめている。
「じゃあ、二人とも幸せにな。」
「はい、ありがとうございました!!」
「アレス、本当にありがとう!」
そう言うと二人は強い光に包まれ、消えていった。
「さーて、俺も見せびらかされてばっかだし族長に慰めてもらうか。」
そう言いながら俺はまた森の中へと歩き出した。
心なしか、弾むような勢いで。
この先に親友が連れ去られたワーウルフ達の住処があるという。
彼女の話によればこうだ。
彼女と親友はこの近くで遊んでいたところをワーウルフに襲われた。
彼女が必死に抵抗するも敵わず親友は連れ去られてしまう。
一度住処へ乗り込んだものの彼女達の守りは厳重でとても入り込めたものではなく救出を断念した。
そして少しでも対抗するために、人間から武器を奪い、助け出そうとした。
お金を欲しがったのはそれで街へ行って武器を買おうとした為だそうだ。
それにしても…。
「まったく無茶な考えをする、人間の武器を使ったからって勝てるわけ無いだろ?それに街に行った所で魔物に武器を渡すようなやつがいると思うか?」
この近くには魔物を悪とする考えが大きく広まっており、討伐まではしないものの魔物を嫌うものが多く、店はおろか街にすら入れない。
横で一緒に走る彼女が悔しそうに言う。
「分かってたよ、そんなこと。…でもどうしても親友を助けたかったんだ!」
「人間は嫌いじゃなかったのか?」
「人間は嫌いさ、でも親友は違う。親友は私を見ても嫌な顔をせず好きだって言ってくれたんだ。」
「お前もその親友の事が好きなのか?」
「ああ、大好きだ、彼のためなら死んだって構わない。」
彼女は真剣な顔で親友の事を語った。
それを聞いた俺は少しばかり彼に興味を持った。
俺以外に彼女達を好きになれる人間がいたとは…。
そう思うと人間の中にも同じ思想のものは少なくないのかもしれない。
そして彼女自身も人間は嫌いだが気に入った者に好意を抱いている。
これこそが、俺の理想とした形。
人と魔物が手を取り合い、共に生きていく。
そのためにもまず、彼女の親友を取り戻さなくてはならない。
「ま、そのせいで群れからも放されちゃったんだけどね。人間に好意を持ってるってやっぱり変なのかな?」
俺が黙っていることを誤解したのか彼女は少し自嘲気味に言った。
「いいや?俺はとても素晴らしい事だと思うぜ?」
そういうと彼女は「そうかな?」と頬を赤らめて照れながら言った。
こういうときの彼女達は無性にかわいいと感じてしまう。
すこし親友が羨ましくなった。
「ここだ、ここがやつらの住処だよ。」
「住処?ここはどうみても…。」
俺は彼女に案内され彼女達ワーウルフの住処へとやってきた。
だがそこは住処や巣とは桁違いに大きくまるで、
「こりゃどう見ても集落だぞ…。」
周りには藁や木で作られた小屋が建ち、鉄やレンガが使われて無い分、少し古めかしいが人間が住んでいてもおかしくないほどの見事な集落だった。
その中央には大きな家が建っており推測からして、そこにはここの長となる者がいるのだろう。
「で、少年はどこにいる?」
「多分、あの大きな家の下、あそこに縛られてると思う。」
「あそこか、厄介だな。」
俺達は近くの茂みに隠れながら親友がいるであろう長の家の下を見た。
あまりよく見えないが見張りらしき者が立っているのが辛うじて分かった。
「さて、助けに行く前にいくつか確認しておくぞ?」
俺はなるべく小さな声で彼女に話した。
「まず俺があそこに忍び込んで親友を助ける、その後隙を見てお前が飛び出し親友を抱えて安全なところまで逃げる。簡単に言ってるが実際はシビアだ。心してかかれ?」
「わかってる、でもその後あんたはどうするの?」
「俺はここでやることがある、心配するな。最初に会った所で待っていてくれ。」
俺は彼女の不安そうな顔に見送られながら、辺りに誰もいないことを確認すると茂みからそっと出て小屋の影に隠れた。
…ふと思い出したかのように振り返る。
「忘れるとこだった、あんたの名前とその親友の名前は?」
こんな重要な時にそんな事言える俺は暢気なのかね。
と自分で自嘲しながら彼女に聞く。
彼女も同じ事を思ったのか少し苦笑しながら俺に伝えた。
「私はラズ、親友はロイスだよ。」
「ラズとロイス、いい名前だ。…必ず助け出す。」
俺はそのまま集落の中心へと入っていった。
建物の影を伝いながら俺は曲線を描くように前進していく。
この集落はどうやら月が欠けた様な形をしているようだ。
外周を柵で囲み、出口は一箇所だけ。そして中心に彼女の親友ロイスがいる。
ロイスを連れてラズの所まで戻り、追っ手を振り切りながら逃げるのはかなり難しい。やはり一番はロイスに出口の方向に真っ直ぐ突っ切らせるしかない。
その間俺は孤立した状態になってしまうが、まあ何とかなるだろう。
次の小屋にへと移動しようとしたときだった。
「……なったらあの男を食べれるの?」
移動している途中で小屋の中から声が聞こえた。
俺は気づかれないようにして聞く耳を立てた。
「族長様が帰ってくるまでよ?はじめに族長様が食べて、その後が私達、いつもそうでしょ?」
中からは二人の声がした。
どうやらここにロイスが捕まっているのは間違いないようだ。
ここで彼女達の言っている食べるとは性的な意味でである。
魔物娘は共通して人間に襲うことはあっても命までは取らないのだ。
さらに話を聞き続ける。
「いつごろ帰ってくるの?」
「さあ?狩りに出かけたはずだから少しかかるかもね?」
「はあ、それまでお預けか…。見張り係は良いな〜、つまみ食い出来るんだから。」
「でもばれたら大変よ?あ、そうそう見張りで思い出したんだけど…」
これ以上は情報は得られないと思い、俺は耳を離した。
これは好機だ。
今はここの親玉はいない、助け出すなら今だ。
俺はまた小屋伝いに進んでいった。
そろそろ中央が見えてくる辺りで止まった。
前から何か聞こえてくる…。
…!。足音だ!!
俺はすばやく屋根に上り、体を伏せる。
ワーウルフが目の前を通っていく。
「異常なしっと、後、一周で交代だ。」
独り言を言いながらそのまま俺の来た道を進んでいった。
何とか見つからずにすんだようだ。
見回してみると俺が入ったところから大分進んでいたようだ。
目的地である中央に目を凝らす。
…誰かが縛られてるようだが、ここからじゃ家が邪魔で見えない、もう少し回り込まないと。
俺は屋根から降り、中央へと回り込んでいく。
徐々に姿が見えてきた、ロイスと思われる少年が柱に縛り付けられている。
見張りが二人、一人は中央を見張っている、もう一人は…しゃがんでいる?
近づくにつれてロイスの顔の表情も見えてきた。
口が隠れていてよく分からないが悶えているようだ。
しばらくして、見張り達が何をしているのかが分かった。
「…なるほど、“つまみ食い”だ。」
ロイスの前にしゃがんでいたワーウルフは彼の肉棒を一心不乱に口淫していた。
もう一人のワーウルフも見張りをするものの、ちらちらと後ろを見ては、自分の胸や陰部を触り、犯したい衝動を抑えていた。
ロイスは縛られてる上に声も出せないので為すがままにされ、身体をよじらせるしかなかった。
さらに近づくと二人の声が聞こえてきた。
「ねえ、早く変わってよぉ。はあ…。私もしたいんだからぁ。」
嬌声が混じった声でもう一人に訴えかける見張り。
陰部からは愛液が滴り落ち、犬のように尻尾を振っている。
変わって欲しいと言われたもう一人の見張りは、目だけ向けた。
その間にも、手でしごきながらズポズポと音を立てて、肉棒を口で出し入れしている。
「ん、もうひょっとらけ、ん!すぐ、いひゃせるから!」
咥えながらそう言うと、彼女は畳み掛けるようにして激しく口淫する。
「んー!!んんー!!」
「ん!、ふ!、ふふ、はわいい、あふいの、ひっはいはしてね?」
そうしてロイスの身体はびくんと跳ね上がり、絶頂を向かえ射精した。
「んぶ!!ん、ふう、んく。」
予想より多かったのか彼女の口から精液が溢れでた、喉を鳴らし精液を飲み干すと口を離した。
「ぷは、ごちそうさま♪…服にまでかかっちゃった、ばれるとまずいからちょっと着替えてくる!」
見張りはそう言うと、近くの小屋へと入っていった。
行くなら今だな。
残ったほうの見張りはロイスへ近づくと尻尾を振りながら股を開き始めた。
ここからでも聞こえるくらい息を荒くしてロイスに抱きつこうとする。
俺はそのまま近づき…。
「んー!んぐー!!」
「はあ、ん、もう我慢できない、犯してや、ぎゃう!!」
「少しは我慢しろ。」
後ろから彼女を拘束した。
ロイスは目の前で何が起きているか理解できず、こっちを見ていた。
「がぁぁ!離せ!!離せぇー!!」
叫び声をあげながら暴れだす彼女を必死に抑えてると、騒ぎを聞きつけてさっきの見張りが小屋から出てきた。
「いったいどうしたの!?って人間?!」
「そら受け取れぇ!!」
俺は拘束した見張りを彼女に向かって投げ飛ばす。
うまく直撃し「ふぎゃ」と声を上げながら小屋の中に倒れた。
その間にロイスを縛っている縄と猿轡を解いてやる。
「ロイスだな?」
「は、はい、貴方…は?」
「お前の親友に頼まれて助けに来た、立てるか?」
「はい…うう。」
ロイスは立ち上がり、走ろうとするがふらふらと足がもつれてしまっている。
どうやらさっきの“余韻”がまだ残っているようだ。
くそ、こいつ初めてだったか?!
俺は見かねてロイスに肩を貸し集落の中を突っ切る。
周りが騒ぎ始めた…。
「なんだ?!何の騒ぎだ!」
「人間が脱走したぞ!!」
「いったい見張りは何をしてたんだ?!」
「探せ!!絶対に逃がすな!!」
次々とワーウルフが小屋から飛び出してくる。
このままじゃ囲まれるのも時間の問題だ。
少し遠いが仕方ない。
「ロイス!!このまま真っ直ぐ走り抜けろ!」
「そ、そんな、無茶だよ!!」
「俺が彼女達を引き付ける、さっさと行け!!」
俺はロイスの背中を突き飛ばし出口に向かって走らせた。
ロイスはよろめきながらも出口に向かっていった。
…逃げ切ってくれよ?
俺はそのまま振り返り、追いかけてきた一人に足払いを食らわせ転倒させる。
「さあこっちだ!俺について来い!!」
そう言いながら集落の中央に向かって逆送する。
「逃がすな!!そっちに行ったぞ!!」
「馬鹿め、そっちは行き止まりだ、追い詰めて取り囲め!!」
「あ、あっちに一人いた!!」
何人かはこっちに向かってくるが一人がロイスに気づいて追いかける。
まずい、ここからじゃ間に合わない。
「さあ捕まえ……あれ?」
ロイスを捕まえようと手を伸ばすが、彼の姿が一瞬消えた。
驚いてみてみるとラズが彼を背負い猛スピードで駆け抜けていた。
「ラズ?どうして…」
「喋ると舌を噛むよ!しっかり捕まって!!」
ラズとロイスは茂みを飛び越えていき、森の中へと消えていった。
よし、後は…。
俺はなるべく彼女達を引き付けるようにして走り、丁度ロイスが捕まっていたところ辺りで立ち止まる。
追いかけてきた彼女達は瞬時に俺を取り囲み、逃げ場がないようにした。
「ふふ、お前を完全に包囲した、もう逃げられないぞ?」
取り囲みながら彼女達が徐々に迫ってくる、誰もが息を荒げ、ひどく興奮した様子だった。
…どうやら彼女達は長い間“ご無沙汰”だったようだ。
俺は素手のまま身構える、木の棒は邪魔になるから置いてきてしまった事を少し後悔した。
素手でも戦えるが団体戦になると武器があるほうが幾分楽だ。
しかもこの中から俺の妻を選ばなくてはならない、下手をすればここにいる全員の夜の相手をすることになるかもしれないのだ。
俺は骨の折れる事にため息し、彼女達を見据える。
今にも襲い掛かってくる時だった。
「控えよ!!!」
怒声ともいえる声が響き、彼女達が我に返った。
しばらくして、俺の前を取り囲んでいた彼女達が道を開き、離れていく。
スタスタとこちらにやってくる人影が見えてきた。
「これは一体、何の騒ぎだ?!」
出てきたのは装飾品を身体に多く身につけ、マントのようなもの羽織ったワーウルフだった。
「「「族長様!!」」」
次々と周りから族長という名前が飛び交う。
なるほど、たしかにそれらしい雰囲気はかもし出しているな。
族長と言われたワーウルフは彼女達に向かって叫んだ。
「状況を報告できるものは前に出よ!!」
「「はっ!」」
彼女がそう言うと近くにいた二人が前に現れる。
…良く見ると先ほどロイスを見張っていたワーウルフだ。
「報告します、この人間が捕まえていた獲物を逃がし、脱走を手助けしました。」
族長が「ふむ」といい俺の方を見た、無意識に目が合う。
…彼女はとても美人だった。
瞳は綺麗な黄金色をしており、その目からは想像も出来ないほどに鋭い眼光を放っている。
俺は彼女が族長になった理由がそれでなんとなく分かった。
族長は視線を戻し話を続ける。
「お前達は見張りだな?何をしていたのだ?」
「はっ、不覚にも見張りの交代をしている際に、隙を突かれました。」
よくもまあそんな嘘がつけるものだ。
俺はそう思いながら、意地悪にも真相を言ってやる事にする。
「そりゃあ“つまみ食い”もすれば隙も出るだろうさ。」
「「な?!」」
「…ほう?」
真相を暴かれ二人はしどろもどろになりだした。
それを聞いた族長は二人を問いただすように睨み付けた。
彼女達はただ族長にすごまれ、縮こまるしかなかった。
「浮かれた奴らめ!!お前達は今から三日間外の見回りだ、任を終えるまでこの集落に返ってくることは許さん!下がれ!!」
怒鳴られた二人はいそいそと出て行き、恨めしそうに俺を睨み付けていたが俺は無視した。
これでロイスの始めてを奪った借りはチャラにしてやる。
「さて、人間よ。」
族長はこちらに向きながら話始めた。
「我らの集落へ入り込み、騒ぎ立てた挙句、あまつさえ獲物まで逃がしたのだ。…覚悟は出来ているのであろうな?」
威圧に満ちた眼光が俺を貫いた。
族長といわれるだけあってなかなかいい目をする。
俺は臆せず話を続けた。
「まあ、逃がしたのはついでだがな。それよりあんたに一つ提案がある。」
「提案だと?」
族長は俺の提案という言葉に疑いながらも聞いてきた。
良かった、まだ話は通じるようだ。
俺はそのまま話を続けた。
「簡単だ、俺とあんたで一騎打ちがしたい。」
「一騎打ち?」
「そうだ、一対一で戦う。…もしあんたが勝てば俺を好きにしてもいい、俺が勝ったら一つだけ願いを聞いてもらう。」
「…願いとは何だ?」
「あんたを俺の妻にする。」
「?!」
彼女達の間で動揺が走り、ざわざわと騒ぎ始めた。
族長自身も動揺が隠し切れず、尻尾を不規則に揺らしている。
…心なしか彼女が一瞬頬を赤らめた気がしたが、すぐに平静を取り戻した。
コホンと咳をし話し始める。
「いいだろう、受けて立とう。どの道お前は我らの慰み者になるのだからな。」
「話が早くて助かる、じゃあ、始めようか。」
俺は小屋に立てかけてあった木の長棒を手に取り、軽くまわしてみる。
邪魔にならず、適度な長さだ、それほど重くもない。
彼女のほうは着けていたマントを投げ捨て、戦闘態勢に入っていた。
マントで見えていなかったが彼女の身体は…一言で言えば凄い。
無駄が一切なく引き締まった身体、透き通るほどに綺麗な肌、そしてその身体に似合わないほどの胸元から開いた谷間。
それだけで俺は不謹慎にも彼女を選んでよかったと思った。
彼女が不意にこちらに語りかける。
「そんな棒で私に勝てるとでも?」
「ああ、じゃないと大変なんだよ。」
「…何がだ?」
俺は不敵にも笑いながら答えた。
「手加減が。」
「ほざけぇ!!」
俺の言葉を機に彼女が飛び掛り、手先から伸びた鋭い爪が襲い掛かる。
寸前で彼女の攻撃をかわし、俺は次に備え身を構えた。
彼女は続けて俺に攻撃を仕掛けてくる。
右、左、足と巧みに使いながら彼女は攻め立てる。
俺はかわし、時には防ぎながら反撃の機を待った。
攻撃をしながら彼女は語りかけてくる。
「どうした?避けているだけでは私は倒せないぞ!!」
「それは一撃でも当ててから言うもんだ。」
「戯言を!!」
怒鳴りながら彼女は大振りな回し蹴りを放ってきた。
風を切るようにして放たれた足が彼の横顔へと到達し、乾いた音を響かせた。
周囲から「やった!」と歓声があがる中、彼女の目が大きく開かれる。
「なに?!」
彼女が手応えありと思っていた感触は彼の顔ではなく、瞬時に防いだ長棒の一部だった。
長棒は衝撃に耐えられず二寸先ほど折れてしまったが、その間に彼女の懐へと入り込み、重心を支えていた片足に長棒の一撃を食らわせる。
「しま、が!!」
瞬時に察し避けようとしたが時すでに遅し、彼女は足をすくわれ転倒する。
俺はその様子を見ながら彼女に一言だけ忠告する。
「次は無いぜ?」
周囲がまた騒ぎ始めた。
自分達の中で一番強い族長が有効打も出せず押されている。
それは自分達が束になっても勝てないという証拠をあらわしていた。
彼女達はただ見ているしか出来ず、戦いを見守っていた。
彼女は反転し、すぐに体勢を整えた。
息を荒げながら彼女が話し出す。
「少々おまえを見くびっていたようだ、さすが私に求婚するだけはある。」
「そりゃどうも、だがそろそろ時間が無いんでな。終わらせるぞ?」
「ならば!」
そう言うと彼女は突然、別の方向へと走り出した。
「これならどうだ!!」
俺は何事かと見ていると彼女は小屋の壁を蹴って三角跳びをし、そのまま回転をかけて俺の頭上に向かって奇襲を仕掛けてきた。
なるほど、頭上からの攻撃とは考えたな。
「もらっ、?!」
落下してくる彼女の目の前に突如、何かが飛んで来た。
なんとか身体を反らし避けると、それは長棒だった。
だが身体を無理に反らしたためにバランスを崩してしまい、勢いを無くしてしまう。
それを俺は見逃さなかった。
「ふん!!」
俺は彼女の身体を掴むと、勢い良く地面に叩きつけた。
「がはっ!!」
地面に叩き付けられた彼女は堪らずうめき声をあげる。
俺は落ちてきた長棒を難なく掴むと容赦なく彼女の首筋にへと突きつけた。
勝敗は決した。
「俺の勝ちだな。」
俺は無用になった長棒を捨て彼女を抱き起こした。
幸い目立った傷も無くほっとした。
叩きつけたときは正直ひやっとしたが、彼女もそこまでやわでは無かったようだ。
俺は立ち上がり、辺りが静まり返る中、出口に向かって彼女に語りかけた。
「さあ、約束は守ってもらうぞ。その前に、向こうの様子も見なくちゃならないな、それまで…。」
言いかけて止まった。
彼女達の様子がおかしい。
さっきまで静まり返っていた彼女達が急に片ひざをつき、頭を垂れている。
そして族長はというと身体に付いたごみやらを取りながら俺に近づいてきた。
「ど、どうした?」
最初はまだ戦う気かと少し構えたが、予想とは裏腹に俺の前で膝を付きこう言った。
「不束者だが、私で良ければ。…良き妻になれるよう努力しよう。」
時は少し遡り…。
ラズはロイスを背負いながら走り、ついに森の外へと抜け出すことが出来た。
月明かりが辺りを照らし、その先には彼女とアレスが始めて会った草原が広がっていた。
追っ手が来てないことを確認すると、ラズは僕を下ろしその場に座り込んだ。
「ここまで、来れば…、大丈夫だね。」
彼女はそう言いながら息を整える。
必死に走ったせいで彼女の服は所々が破れ、肌が露出していた。
僕は彼女の肌をなるべく見ないようにしながら、彼女に気になっていた事を聞いてみる。
「ラズ、どうして僕を助けてくれたの?」
「だってあんたは私の親友でしょ?」
僕の問いに彼女はさも当たり前のように答えた。
僕は続けて話す。
「でも、いくら親友でもあんな危ないこと…。」
「なに?私に助けられるのが不満なの?!」
彼女は急に声を荒げていった。
僕もそれにつられて声を張り上げる。
「違うよ!君に危ないことはして欲しくないんだ!!」
「何言ってんのよ?!人間のくせに、弱いくせになんでそんなこと言うの!?」
僕は彼女の言葉に煮えくり返り、ついに言ってしまった。
「人間のくせに、君を好きだったら駄目なの!?」
「??!」
彼女は僕の言葉の意味に驚き、声を失っていた。
僕は今更後悔しながらも少しずつ告白した。
「僕は、君と出会って、一緒に遊んでいくうちに好きになったんだ。でもなかなか言い出せなくて。だから、君が傷つくのは見たくないんだ。」
「…。」
彼女は僕の言葉を聴き、ずっと黙っていた。
やっぱり駄目かな…ラズは人間が嫌いって言ってたんだし、こんな僕じゃ彼女を守れない。
そう思い諦めかけた時だった。
「…いいの?」
「え?」
ボソッと彼女が呟く。
みてみると彼女は瞳を潤ませていた。
「私なんかでいいの?」
「…うん。」
「だって、私は魔物なんだよ?!人間じゃないんだよ??!」
「そんなの関係ない、魔物の君じゃなきゃ駄目なんだ!!」
「?!」
僕は気が付くと彼女を強く抱きしめていた、この思いが嘘ではないことを示すために。
「ロイス…。」
抱きしめられた彼女はしきりに僕の名前を呼び涙を流した。
僕は彼女の髪を撫でながら抱きしめる。
「私もロイスの事が好き。」
そう言うと彼女は僕の唇を奪った。
絡めあうように舌を動かし濃厚な口づけをする。
僕は彼女を押し倒し、逆に唇を奪った。
「はあ…、ロイス、きて?」
そう言いながら彼女は下着をめくった。
いやらしく汁を垂らした陰部が僕を気持ちを淫靡にさせた。
僕はその時、
「ラズ!!」
一人の獣になった。
それからしばらくして場所は変わり森の中。
暗い森の中を一人の男が歩いていた。
「…。」
…体中べとべとにして。
彼女達の集落から抜け出してきた俺はラズとの約束の場所へと歩いていた。
なぜこんな事になっているのかと言うと、彼女達の“襲撃”にあったからだ。
聞くところによると彼女達は自分より弱い人間は犯し、逆に強い人間だと分かると忠実になるらしい。
あの後、族長と皆に少しだけ待って欲しいと話したところ、ずっとご無沙汰だったのが限界に来たようで族長率いる彼女達に襲われてしまった。
なんとか逃げ出せたものの顔や身体は彼女達の唾液やら汁やらでべとべとになってしまった。
あとで彼女達の集落で洗濯しよう。
もう少しで森が抜けるというところで声が聞こえてきた。
「?」
声というよりは叫び声に近く、良く聞いてみるとラズの声だった。
恐る恐る近づくと、それは叫びではなく喘ぎ声へと変わっていく。
お楽しみ中か…。
覗いてみると二人はお互いを性欲のままに貪りあっていた。
「ん、あぁ、ロイス、良いの、気持ちいの!」
「僕も、はぅ、気持ちいいよ、ラズ!」
ラズはロイスの身体に馬乗りになって激しく腰を振っていた。
…こんなことなら先に向こうを片付けるべきだったかも知れない。
そんなことを思いながら俺はやれやれとため息をつく。
二人の声が激しくなり絶頂を迎えようとしていた。
「はあ…僕、もう。」
「いいよ、私の中に、あん、精液だして!!」
そう言うと二人の動きは激しくなり、身体がびくんと跳ねた。
「うあぁ!!」
「ああぁぁ!!!」
二人は叫ぶと力なく倒れこんだ。
ロイスの上でラズは息を整えている。
そんな二人は口づけをし、語りかける。
「ねぇ、もう一回しよ?」
「うん…。」
そういうと彼らはまた腰を…。
「そこまでだ。」
「「ひゃあ!!」」
二人は俺の声を聞くと同時に跳び上がった。
俺は二人の前に仁王立ちし睨んだ。
二人はいそいそと服の乱れを直していく、俺も男だ、これ以上されたらどうにかなりそうだ。
服をちゃんと着た二人が向き直った。
ロイスは「ははは」と頬を掻きながら、ナズは恥ずかしそうに俯きながら立っていた。
「まったく、俺が苦労している時にお楽しみか?少年、いいご身分だな?」
「あはは…、すみません。」
ロイスはまんざらでもない顔をしていた。
すこし腹が立ったが抑えておこう。
不意にラズが顔を上げる。
「ワーウルフ達はどうなったの?」
「ああ、おとなしくさせたよ、そのせいでこのざまだ。」
俺は服や顔がべとべとになったのを二人に見せた、すると二人は申し訳なさそうに謝った。
「ごめんなさい、私達のために…。」
「別に良いよ、俺には元々やるべきことがあったからな。」
「やるべき事って?」
「…それはな。」
俺は二人にこれまでの経緯を話した。
二人ならこのことを理解してくれると思ったからだ。
俺の話を二人は真剣に聞いてくれた。
「…以上だ。何か質問は?」
冗談めいていうとロイスがおずおずと聞いてきた。
「じゃあ、ラズはどこかに言っちゃうの?」
「ロイス…。」
二人は不安げな顔で俺を見てきた。
そう、ラズはこのままヴェンの所へと連れて行かなければならない。
そうなると二人は離れ離れになってしまう。
ヴェンは確か新しく作った魔王城で研究しているといったが、俺もどこにあるかは知らない、会いに行くのは難しいだろう。
だが俺には一つの考えがあった。
「それなんだが、少年。いやロイス、俺に提案がある。」
「提案ですか?」
「ああ、お前も一緒に行けば良い。」
「え、ええ?!」
ロイスは俺の言葉に驚いていた。
俺の提案。
それは実に簡単なことだ。
離れたくなければ付いていけばいいのだ。
だが、そのためにはロイスの勇気が必要だ。
俺は真剣にロイスに問いただす。
「ロイス、お前はラズが好きか?」
「え、はい…。」
「どうなんだ?!」
「好き、いえ愛しています!!」
俺が怒鳴るとロイスはあわてて答えた。
ロイスの発言にラズは顔赤らめたが、無視して話を続ける。
「ラズを妻にしたいか?」
「はい。」
「それが人に理解されないことでもか?」
「はい。」
「この先辛い出来事があるかもしれない、死ぬほど苦しい目にあうかも知れない、それでも一緒にいたいか?」
「…はい!!」
俺の問いにロイスは力強く答える。
それを聞いたラズの目から大量の涙が零れ落ちていた。
ロイスは俺の言葉を待ち、緊張で拳が震える。
俺はふっと笑いロイスの肩を叩いた。
「合格だ、お前も一緒にいきな。」
「あ、ありがとうございます。」
そう言うと俺はイヤリング越しにヴェンの事を念じた。
しばらくしてヴェンが応答する。
「おお、アレス。どうした?」
「ヴェン、いい知らせだ。二人目を送る、三人目もいるが少しかかる。」
「二人もか?!君も意外と出来るな〜、早速送ってくれ。」
「ああ、それなんだが、二人目が厄介だ。」
「ん?どうしてだ?」
「実はな…。」
俺はヴェンに二人の事を話すとヴェンは意外にも快く承諾してくれた。
「それは大歓迎だ!!こちらは別に構わない、部屋も一杯あるし、食事も私が作ろう。」
「そいつは良かった、すぐ送る、じゃあな。」
俺はヴェンとの交信を切り、ケースを取り出して一枚札を引く。
二人を念じようと振り向くと二人は抱き合って口づけをしていた。
俺は半ば呆れながらも二人に語りかける。
「そういうのは向こうに着いてからしてくれないか?」
「あ、ごめんなさい、つい…。」
そう言うと二人から光があふれ出した。
二人は驚くようにして光を見つめている。
「じゃあ、二人とも幸せにな。」
「はい、ありがとうございました!!」
「アレス、本当にありがとう!」
そう言うと二人は強い光に包まれ、消えていった。
「さーて、俺も見せびらかされてばっかだし族長に慰めてもらうか。」
そう言いながら俺はまた森の中へと歩き出した。
心なしか、弾むような勢いで。
11/08/21 18:22更新 / ひげ親父
戻る
次へ