連載小説
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第七話 街頭にて

ヴェンの城から戻ってきた俺は街へと続く道を歩いていた。
話によるとこの先の街は貿易が盛んで、港から船が出ているようだ。
その船の行き先を聞いたとき、俺はその島に行ってみたいと思った。
名前は『ジパング』以前旅芸人がロークシナの村に来たとき彼はそこから来たといっていた。
彼が言うにはジパングでも同じように魔物が生息しているそうだ。
殆どが亜種だが、中にはその国特有の魔物も存在するらしい、行って損はないだろう。

「…なんだ?」

そうこう考えていると道の真ん中で四人ぐらいが固まって何かを話し合っていた。
近づいてみると一人がこちらに気づいて挨拶をした。

「どうも、旅のお方…貴方もこの先に用で?」

挨拶をしてきた男は大きい荷物を背負っていかにも旅商人らしい風体だった。
他の三人も同様で、街に物を売りに来た商人達といった所だろう。

「そのつもりなんだが…。」
「悪い事は言いません…この先には行かないほうがいいです。」
「何かあったのか?」
「あったというか…“いた”というか…。」
「いた?」

商人達はなんとも歯切れの悪い返答をした。
不思議に思った俺がもう一度聞くと彼らは恐る恐る話してくれた。

「実は…この道の先で魔物が立ち塞がっているのです。」
「魔物が…?」
「はい、なんでも…通りかかるものに会っては『持ってる物を置いていけ』と言って、断ったら着ている物さえ全部奪い取ってしまう恐ろしい魔物です。」
「物さえ渡せば通してくれるそうですが…殆ど奪われてしまうので街では商売もままならない状態だと…。」
「最初は私達も噂だろうと思っていたのですが…もしかしたらと思いまして…。」
「うーん…。」

追いはぎをする魔物か…。
確かにゴブリン等の魔物は追いはぎをすると言うのは(本人達からも)聞いた事があるが、その後大体は男性ごと巣に持ち帰るはずだ。
交尾目的でも街に攻めるでもなく…あくまで旅人に持っている物だけを狙う魔物はあまり聞いた事がないな…。
この商人達が嘘を言ってるようにも見えない…となると。

「その魔物の特徴は分かるか?」
「噂では…牛の姿をした魔物と、狐の尻尾が付いた魔物と聞いています。」
「二人も居るのか…。」

二人と聞くと以前のリザとレイの騒動を思い出した。
あの二人の時とは全く違うが…ただ一緒にいるというわけではないだろう。
これはまた…覚悟しておいたほうが良さそうだ。

「そこで私達は回り道を考えていたのですが…草原が続く上に近くには魔物が出没する森まであるというので、私達も困り果てて…。」
「その事なんだが…一つ提案がある。」
「…なんでしょう?」
「お前達もこの先の街に用があるんだろう?俺もどうしても港で船に乗らないといけない、そこでだ…。」

俺は全員を見渡しながら言った。

「俺がこの先の魔物を何とかするから…お前達は街に行った後、俺を船に乗れるよう手を回してもらえないか?」
「…え?!」

四人とも俺の言葉に耳を疑い、慌てて聞き返してきた。

「しょ…正気ですか、魔物ですよ?!」
「問題ないさ、それよりもどうなんだ、できそうか?」
「それは…街さえ行けば可能ですが…。」
「よし決まりだ、一日待って欲しい…それで通れるようにしてやる。」
「わ、わかりました…我々はここであなたを待ちます…御健闘を。」

彼らの言葉を背にして俺は先へと歩いていった。
理由があるにしろ…こんなことが続けば面倒な事になる。
彼女達も分かってくれればいいが。


場所は変わり…とある道では。

「ちょっと…聞いてるの?」
「…zzz…んぁ?なんか言ったか?」
「…また話してる途中で寝てたのね?」
「だってお前の話は長いし、聞いてたら眠くなっちまうよ。」

道の脇に置いてある大きな岩の上で牛の姿をした大きな女性『ミノタウロス』が寝転がっていた。
その横で草むらに隠れるようにして見ていた狐の姿をした女性『妖狐』が呆れる様子でため息をついた。

「…だからもうこんな事やめて静かに暮らそうよ?通りかかる人も減ってきたし…そろそろ勇者が討伐に来るかもしれないわよ?」
「なに言ってんだ、この方が食料も金も簡単に手に入るじゃねえか?それにこんな所に勇者なんてそうこねぇよ?」
「そうかもしれないけど…。」
「大丈夫だって?なにかあったら逃げりゃいいんだからよ、食料も貯まれば足洗って静かに暮らすさ。」
「うん…。…!誰か来たみたい、一人よ。」
「よっしゃ、じゃあいつもどおり行くぜ!!」

ミノタウロスがすぐさま岩の後ろへと隠れ、妖狐は草むらへと隠れた。
息を潜めじっと動かないまま二人は待ち続け、程なくして…一人の旅人が向こうから歩いてきた。

機を見計らって妖狐が草むらからゆっくりと姿を現す。

「あの…そこの殿方。」
「ん?」


−−−−−−。


大きな岩を通り過ぎようとしたとき、草むらから急に女性が現れ声をかけてきた。
何処もおかしくない、美しい人間の女性だった。

「…どうかしたのか?」
「実は私…足を怪我してしまいまして…思うように動けないのです、よかったら具合を見てくださいませんか?」
「足を…何かあったのか?」
「魔物に襲われてしまって…命からがら逃げてきたのですが…足を挫いてしまって。」
「それは大変だったな…どれ、見てやろう。」
「はい…こっちです。」

誘われるままに傍へと寄ると、彼女は足を崩して座り込んでいた。
服の間から見える綺麗な脚が見え隠れし、妙に艶かしく感じる。
思わず自分が見とれてしまっているのに気づき慌てて視線を引き剥がすと、その様子を見ていた彼女が「フフフッ」と笑った。

「私が…気になりますか?」
「いや、なんでもない…何処が痛いって?」
「はい、ここが…痺れるのです。」
「そうか…なるほどな。」

足首の部分を深々と見つめ、彼女の顔を見て言った。

「そういう手口か。」
「…え?」

彼女が聞き返すと同時に俺は横に飛び、回避した。
見てみると俺が居た場所には大きな腕が振り下ろされていた、…もう少し遅ければ捕まっていただろう。

「よく気づいたねぇ、どうしてわかったんだい?」
「なに、昔からこういう手は良くあるんでな…気づかないのは素人ぐらいだ。」
「へぇ〜?なら次までの参考にしとくよ。」
「残念だが…もう次は無い。」

俺は襲ってきた彼女、ミノタウロスと向き合った。
すぐ傍では先ほどの人間の…もとい魔物の彼女、妖狐がおろおろと二人を見ていた。

ミノタウロス、牛の姿をした獣人型の有名な魔物だ。
その性格は極めて凶暴で、魔物の中でもかなりの怪力の持ち主と聞いている。
見た限りでもかなりの巨体だ…皆が恐れるのも無理は無いな。

そしてその横にいるのが妖狐、狐の姿をした獣人型の魔物でこちらも有名だろう。
人間と殆ど区別が付かないが、獣耳と大きな尻尾が唯一の特徴だろう。
噂では9で最大だと聞いた事があるが、この妖狐は6本だ…まだ半人前なのだろう。

どちらも物品を盗むような魔物じゃないはずだが…何か事情があるのだろうか?
どちらにしても今の状況じゃ話は聞いてもらえそうになさそうだが…。

「本当なら羽織い攻めにした後に言うつもりだったが仕方ねぇ、人間…持ってるもん置いていきな?…素直に渡すんなら全部は盗らない、一泊分の金ぐらいは残してやるよ?」
「…一様聞いておくが断ったら?」
「そんときはあんたの着ているもんごと剥ぎ取るだけさ、そっちの方が楽で良いんだけどね。」
「どちらにしろ俺は渡す気は無い、欲しければ奪い取れ。」
「そうこなくちゃ…あたいを失望させるなよ?」

ミノタウロスは腕を鳴らしていかにも準備万端と言った様子だった。
それを傍で見ていた妖狐が慌てて二人の間に入ってきて、彼女に説得をし始めた。

「ちょ、ちょっとレジーナ?!」
「アヤ…お前は隠れてな?ちょっと騒がしくするよ。」
「相手は生身の人間よ?もし死んだりなんかしたら…。」
「それだけの手加減はするさ、それに…久しぶりに楽しめそうだ。」

彼女…レジーナが聞く耳を持たないと理解したとき、アヤと呼ばれた妖狐は今度は俺のほうに話しかけてきた。

「ちょっと貴方、持ってる物置いて早く逃げなさい!貴方が勝てるような相手じゃないわ!!」
「そちらから襲ってきて随分な物言いだな?」
「分かってるの、私達は魔物よ?!それもレジーナと戦ったら下手をすれば死ぬわよ?」
「その時は…俺がそこまでの男だったって事さ。」
「もう…これだから人間は!!」
「もういいアヤ、どきな。」

アヤを押しのけてレジーナが俺の前へと仁王立ちした。
太陽の光が遮られ、俺の身体をすっぽりと隠してしまっている。

「さて…せっかくの勝負だ、趣向を凝らしてみないかい?」
「趣向だと?」
「あたいは単純でフェアな勝負が好きでね…ルールとか決めるのも正直面倒なんだ、そこで良いやり方がある。」
「ほう…それは?」
「簡単さ、お互い動かずに交互に殴り合って耐え切れず倒れた方が負け…シンプルでいいだろ?」
「なるほど、確かに悪くない…いいだろう。」

俺がそう答えると彼女は不敵に笑った、…よほど自信があるらしい。

「気に入ったよあんた、決めた!もしあたいが勝ったら物だけじゃなく、“あんた”ごと持っていくよ?毎日あたいの相手をしてもらうからね。」
「好きにしろ…ただし俺が勝ったら俺の好きにさせてもらうぞ、いいな?」
「決まりだね…あんたが先で良いよ、どっからでもかかって来な?」
「いや、俺は後のほうにするさ。」
「あん?どうしてだい?」
「決まってるさ…それは。」

俺は手をひらひらとさせて言った。

「“レディ”ファーストって奴さ?」
「ば、馬鹿!それ禁句…。」
「…ぁあ”?」

アヤが途端に頭を抱えてうな垂れてしまった。
俺が不思議に思っていると目の前のレジーナが拳をわなわなと震わせていた。

「…そうかい、なら遠慮なく−」

彼女が腕を後ろに大きく振りかぶり…。

「喰らいなぁっっ!!」
「!!」

その瞬間、俺の顔面に鈍器で殴られたような衝撃が鈍い音と共に響いた。
身体は大きく仰け反り二、三歩後ず去った。

「だから言ったのに…。」
「へっ、まさかこれで終わりじゃねぇよな?言うからにはもっと楽しませてくれよ?」
「…そのつもり…だ。」
「…嘘!?」

アヤの同様を余所に俺は仰け反った身体を戻し、首を鳴らした。
少し意識が飛んだものの…問題は無い。

俺のなんとも無いという様子を見てレジーナは嬉しそうに笑った。

「ハハッ、そうこなくちゃな?さぁ、次はあんたの番だ…何処でも好きな所に来な?」
「そうか、なら肩だな。」
「肩だぁ?おいてめぇ、あたいを嘗めてんのか?」
「お前の部位で唯一硬そうなのはそこだ、それ以外は俺は殴れない。」
「はっ、たいした紳士精神だね?なら後悔させてやるよ。」

そう言って彼女は腕に力を込め、肩を前にし…まるで盾を構えるような体勢に入った。
いや、文字通り強硬な筋肉の盾が現れていた。

「さぁ、せいぜい自分の拳を痛めないよう−」

俺は拳を作り、彼女の肩へと静かに付けた。
そして…。

「フンッ!!」

彼女の肩に衝撃を当てた。

「グッ?!!」

思いがけない衝撃にレジーナが少し仰け反った。
腕はびりびりと震え、彼女の顔が一瞬歪む。

「レジーナ?!」
「大丈夫だ、何ともない…でも。」

腕を振るい痺れと痛みを紛らわした後、彼女は俺を睨みつけた。

「ちっとあんたを見くびってたようだね、今まで出会った人間で一番強いよ。」
「それは…光栄だな。」
「そんならあたいも…ちと本気を出させてもらうよ?」

肩を回して手に拳を叩きつけたかと思うと、レジーナは咆哮をあげて構えた。
地面を勢い良く足で鳴らし、歯を食いしばる。

「うぉらぁっ!!」

彼女は身体を大きく捻り、極限まで勢いを込めた大振りを放った。

「グォッ??!」

腹部に重い攻撃が伝わり、彼女の硬い拳が俺の身体にねじ込んだ。
くの字になり、俺はしばらく動けないでいた。

「ふぅ悪い、つい力入れすぎちまった…流石にもう−」
「もう…なんだ?」
「…嘘だろ?」

レジーナとアヤの視線の先にはむくりと体勢を整えたアレスがいた。

−−−−−。

「貴方…ほんとに人間なの?」

ポツリと呟くようにしてアヤが言った、レジーナも信じられないという目で見ている。

彼女達の今まで相手した人間であれば瀕死の状態で二発程度が限界であろう。
レジーナはこの時、趣向を凝らすという作戦をひどく後悔していた。
本来の彼女のこの作戦は『確実に相手に拳を当てる』という事に意味がある。
最初に自分の一撃を避けたアレスへの対策であり、すばやい動きに翻弄され隙を突かれるという最悪のケースを考慮しての彼女が瞬時に閃いた作戦である。
この作戦の利点は相手に必ず攻撃が当てられる上に武器の制限も出来、さらには唯一の欠点である自分も必ず攻撃を受けるという点も、防御にも特化した彼女にとっては最高の条件だった。
だが、どんな好条件にしろ…相手が悪ければ何の意味もないのである。

「さぁ、次は俺の番だな?」

アレスがそう言うとレジーナはギョッと身を固めた。

「クッ…。」
「右だ、構えろ?」
「?!」

アレスの言葉に反応して右肩を構えようとしたがそれよりも先に彼の回転を利用した裏拳が彼女の右肩に“被弾”した。

「あがぁっ!!!」

大きな巨体が揺れ、彼女の口から痛覚の叫びが漏れた。
右肩を押さえ、彼女は必死に痛みを堪える。

「そんな…。」

アヤはその光景が信じられずに居た。
本来であれば今頃、泣いて命乞いをするか身包みはがされた人間が二人の足元に居るはずだった。
だが今では魔物の中でも屈強のミノタウロス『レジーナ』が額に脂汗をかいて苦しんでいる。
こんなはずじゃない、こんな事が起こるわけ…。

「がぁぁぁぁぁっっ!!!!」

急に起き上がったレジーナが怒声を上げてアレスの顔を横振りに殴った。
傍から見れば強烈な一撃に見えたかもしれないが先ほどのものと比べれば大したことはなく、アレスはゆっくりと彼女のほうへ向きなおした。

「どうした、勢いが死んでるぞ?」
「はぁ…はぁ…はぁ。」

彼女は肩で息をし、アレスを見た。
今の彼女には彼が人間に見えていない。
もっと別の…そう、初めて勇者と対峙したような感覚。
殺されるかもしれない、死の恐怖。
彼女の中で野生としての本能が目覚めようとしていた。

「今降参するなら見逃してやる、約束もしなかった事にしよう…だからもう−」

アレスが彼女に語りかけた時、それは起きた。
鈍い音が鳴った後、彼は宙へと舞い上がりぐしゃりと地面に叩きつけられた。
何が起こったのかは本人を除いてアヤぐらいしか分からない。
アヤが見たのは、怒り狂った暴れ牛の如くアレスを頭に生えた角で勢い良く突き上げた友人の姿だった。

「れ、レジーナ?」

アヤが呼んでもレジーナは耳を貸さなかった。
彼女の目は赤く変色し、ミノタウロス特有の興奮状態に陥っていた。

「殺してやる…。」
「れ、レジーナ!!だめっ!!!!」

アヤの静止を振り切りレジーナは傍に置いてあった岩をずしりと持ち上げた。
ぐらぐらとしながらも確実に足を踏みしめ、アレスの傍へと着いた。

「…?」

アレスが目を開けると、怒り狂った彼女の姿と自分の向かってくる大きな岩が視線を黒く遮った。


−−−−−。


「…!!」

轟音が鳴り響いた後、私は思わず顔を背けた。
先ほどまで気楽に話していた者が今では肉の塊と化してしまったのだ、人間とはいえ気持ちの良いものじゃない。
程なくして正気に戻ったレジーナがこっちに歩いて来た。

「レジーナ…。」
「すまねぇ…ついカッとなっちまって。」
「…死んだの?」
「…。」

レジーナは黙ったまま俯いていた。
聞いた私が馬鹿だった、そんな事確認するまでもないというのに。

「と、とにかく…ここから離れましょう?死体が見つかったら騒がしくなるわ。」
「わかった…一旦あたいの家へ…。」

そう言い終わろうとした時だった。

ずしり。

「?」

向こうで物音がした。
レジーナが音に気づいて振り返ると固まったように動かなくなった。
なんだろう?そっちにはさっきの岩ぐらいしか…。
レジーナの脇からそっと覗くとそこには。

「?!」
「あ…あ…。」

二人とも声が出なかった。
身体の震えが止まらない、がちがちと歯が鳴るのを抑えられない。

「…。」

どうして?
さっきまで死んだはずの人間が…。

「…よぉ、どこに…いくんだ?」

岩を持ち上げて…立ってるのよぉ…?!

「さっきのは…なかなか面白かったぞ?…だが。」

持ち上げていた岩をひょいと後ろへ放り投げ、こちらへと近づいてきた。
軽々しく投げたその岩がどれくらいの重量かは、着地した後の音で痛いほど分かった。

「岩とはいえ…物を使うのは反則だよな?」

薄ら笑いを浮かべながら男は距離を狭めてくる。
男は流石に無傷とは行かず、額から血を流していた。
だが、私達にはもうどうしても彼に勝つ算段が浮かばない。
このままじゃ私達は…。

「くっ…。」
「レジーナ…逃げ-」
「くそったれぇぇ!!!」
「?!、駄目!!!」

咆哮をあげながらレジーナは突進して行った。
そして勢いをつけての強力な一撃を放ったが彼に簡単に止められてしまう。

「?!」
「遊びは終わりだ。」

受け止めた拳を腕ごと引き寄せられ、レジーナの身体は前屈みとなってしまった。
そしてそのまま彼に顔を鷲掴みにされてしまう。

「う、うがぁぁぁっ!!!」

顔を掴まれた彼女は逃れようとしてひどく暴れた。
だが何度彼に殴っても拳を叩きつけても彼はびくともしなかった。
彼は無言でレジーナの顔を締め上げ続けている。

「がぁ…がぁぁ!」

段々と動きが悪くなり、膝まで付いてしまった。
今のうちに逃げるべき?親友を置いて逃げられるわけない。
じゃあ、今の私に何が出来る?なにも出来ない。
私はこのまま…見ている事しか出来ない…!

「あ…ぁぁ。」

とうとう声も出なくなり、レジーナの巨体が地面へと突っ伏した。
その様子をただ黙々と見つめる男。

「…。」

殺される…、私達殺されちゃうんだ。
半ば諦めるようにして呆然とする。
魔法の一つでも当てれば勝てるかもしれないがもう私には戦う意志がない。
ならせめて…せめて!!
ゆっくりと男が私に近づいてきた、よく見れば肩にレジーナを軽々と担いでいる。
私は男の足にしがみ付き、震える声を大にして言った。

「お願いします、私はどうなっても構いません。…どうか彼女だけは…レジーナだけは助けてください!!」
「…どうしてこいつを庇う?」
「レジーナは私のたった一人の親友です、奴隷にでも何でもなります…だから!」
「そうか…なら-」

考えるそぶりを見せて彼は私にこう言った。

「こいつが休められる所はないか?」
「…へ?」


−−−−−−−−。


「う…、うん?」
「レジーナ…大丈夫?」

ベッドの上で彼女が目を覚ました。
彼女が身体を起こすとアヤが心配そうに顔を覗き込んでいる。

「ここはあたいの家?じゃあ、あたいは…いったい?」

彼女が部屋を見回すと俺と目が合った。

「て、てめぇ!!どうしてここに?!」
「待って!!気絶した貴方を運んでくれたのはこの人なの。」
「…?!こいつが…か?」

訝しげに俺のほうをみるレジーナ。
まぁ、信じろというほうが無理か…あれだけの事をすれば。

「それに落ち着いて聞いて…、彼は私達の味方よ?」
「味方ぁ?…どういうことだ?」
「だから落ち着いて聞いて、実は…。」

彼女は俺の代わりにさっき話したとおりに説明しはじめた。
最初は胡散臭そうに聞いていたが段々と聞くにつれてレジーナの顔つきも変わっていった。
彼女が話し終わるとレジーナがこちらに振ってきた。

「今の話…本当か?」
「あぁ…本当だ。」
「…。」

しばらく間があった後、彼女はベッドから飛び起き俺の前で土下座した。

「すまん、この通りだ!!」
「お、お前何を?!」
「あたいたちの恩人だとしらず危うく殺しちまう所だった!!…気の済むようにしていい、すまなかった!!」
「あ…いや、もういいんだ…俺も痛い目に合わせてしまったからな、俺のほうこそすまなかった。…顔を上げてくれ。」
「…本当に許してくれるのか?」
「元々恨んじゃいない。」
「なんて…。」
「?」

レジーナは急に身体を震わせたかと思うと突然。

「なんて器のでけぇ男なんだ!!」
「うぶわぁ!!」

彼女の巨体と豊満すぎる胸を使って俺を窒息させる勢いで抱きついてきた。
それに加えてぶんぶんと身体を震わせて喜びを表していた。

「まて…苦しい…やめ。」
「ちょっとレジーナ!?彼顔が青ざめてるわよ!!」
「あぁ、わりぃ。」

なんとか彼女から離れ、息を整える。
アヤに助けてもらわなかったら危ない所だった。

「それでさあんた、これからどうするんだい?」
「俺は港に行ってジパングを目指したいと−」
「じゃなくて…あたいたちをだよ?」
「お前達を?」
「話によると、私達魔物娘を妻として探しているのでしょう?」
「あぁ…そういうことか。」

ようするに彼女達が言いたいのは、私達は妻にするのかと聞いているわけだ。

「お前達が良いなら、是非頼みたいんだが。」
「ほんとかい?!あんな酷い事したのに?」
「それは仕方なくだ、俺も人の事言えないしな…。」
「ならあたいはOKだ、アヤは?」
「私は…ちょっと。」

レジーナが聞くとアヤは申し訳ない顔をした。

「なんだい、旦那じゃ不満かい?」
「そうじゃなくて…ちょっとまだやる事があるの。」
「やる事って?」
「それは…まだ言えない。」
「あたいにも言えない事かい?」
「…ごめんなさい。」

レジーナの問いかけにアヤは力なく謝った。
彼女を問いただそうとするレジーナを俺は黙って制した。

「そうか…わかった。」
「…良いのかい?」
「仕方あるまい、俺も無理強いはしたくないからな。」

なにか大切な事情があるのだろう…。
ヴェンには悪いがここは引いておこう。

「レジーナ…私。」
「いいさ、あんたも辛いのは分かった、一緒に行けないのは残念だけど…また会いに来てくれよ?」
「うん、レジーナも気をつけてね?」

そう言ってアヤは家を去って行った。
何処に行くかを聞いておこうかとも思ったが止めた。
多分彼女とはまた会える、そんな気がしたからだ。

「旦那…その…。」
「どうした?」
「あたいらが旅人を襲っていた理由なんだけどさ?」
「大丈夫だ、それはアヤから聞いた…その問題も解決できる。」
「そっか…。」

彼女達が旅人を襲っていた理由、それは至極簡単なことだった。
今魔王が倒されたために彼女達が住む森や住処が制限されてしまっている。
当然そのせいで食料も精も調達できず、二人以外にも飢える魔物たちが増えていった。
そして二人が考えたのはこの旅人を襲って食料と精を奪うという計画だ。
食料であれば皆に分け与え、精であれば身包みはがした後に男性ごと必要なものに渡し、物品についてはアヤが変装して売りに行き、食料を買い込むという無駄の無い計画だった。
だがその計画も決して長くは続かない。
危険だと分かっている道にわざわざ行く奴もいないからだ。
当然あの商人達のように回り道をする者も出てくるだろう。
俺が先に来たから良いものの最悪の場合、噂を聞きつけた兵士か勇者が来るかもしれない。

だから俺はアヤにある約束をした、もう危険なことをしないかわりに彼女達を救ってやるという約束だ。
ヴェンに頼み、レジーナが眠ってる間に彼女達をヴェンの元へと送った。
恐らく今頃は共存を望む村や町に送られている頃だろう。

「じゃあ、もう心配は無いわけだね?」
「あぁ、すまない…辛い思いをさせたな。」
「あんたが謝ることじゃないよ?それより…さ。」
「ん、どうし−」

俺が言いかけるとレジーナは俺をベッドの上へと押し倒してきた。


「ちょ、おまえ?!」
「やっぱ、夫婦になったらやることは一つだねぇ!」

彼女は俺の服を簡単に脱がすと胸を隠していたベルトを外し、無理やりに俺の肉棒を胸で挟み込んだ。

「ほら、早くおっ立ててくれよぉ?いいもん持ってんだろ?」
「いくらなんでもいきなり…うわぁ…。」

柔らかい胸の感触に俺の肉棒は簡単に盛り立ち、胸の谷間から亀頭を覗かせた。

「あたいの胸より大きいなんて…旦那は実戦でもHでも楽しませてくれるねぇ。」

意地悪く彼女が笑うと急に立ち上がり、俺に自分の秘部を開いて見せた。

「どうだい?あたいの蜜壷、旦那のを欲しがってひくひくしてるぜ?」

彼女の秘部は股下から足へと涎を垂らし、大きく口を開けていた。
あの中に挿れたらどれほど気持ちが良いのかと思わず想像してしまう。

「ふふ、旦那も挿れたそうだね?じゃあ、入るよ?」

ゆっくりと彼女が股を下ろしていき、ヌメリと音を立てて蜜壷が肉棒を咥えた。

「うああ…。」
「あはぁ…入っちまったよ…。」

彼女はそのまま乗馬するかの勢いで腰を上下にへと振り始めた。

「良い、良いよ!中で暴れて…んっ…あたいを…気持ち良くさせ…あんっ!!」

蜜壷からは洪水のように愛液が溢れ、尻尾をふりふりと震わせていた。
甘く淫らに口づけを交わしながら彼女は俺を求める。

「どうしたんだい?旦那は挿れただけで満足かい??」
「…なら。」
「いひゃぁ?!」

彼女の淫靡な挑発に俺は身体を起こして、上に突き上げる形で答えた。

「はぁ!!堪んない、もっと、もっとあたいを突いてくれ!」

興奮した彼女は俺の顔を胸に押し付け強く抱きしめてきた、愛液と汗の匂いに俺は堪らず気を失いそうになる。

「もう…出そう…。」
「もう出るのかい?いいよぉ、あたいを…孕ませてくれ!!」

最後の一突きを加えると彼女の中に一気に射精した。

「んくっ…あたいのに…入りきらないほど…濃いのが出てるよ。」

肉棒を抜くと愛液と一緒に白い液体が蜜壷から流れ出てきた。
終わったと俺は服を着ようとしたのだが…。

「どこに行こうってんだい?あたいはまだまだいけるよ?」
「…げ。」

見るとまだとろんとした表情で俺を見つめる彼女がいた。
肉棒を掴み、残った精液を綺麗に舐めとりはじめる。

「さすがに二回目は…。」
「はにひっへんはい?んぶ、あと三回はしないと収まりがつかないよ?」
「こいつはまずい…。」

言われるがまま、俺は彼女の夜通し相手をすることになった。
きっちり三回。




「ん、あれは?」

もと来た道を戻ってみると最初に会った商人達が俺を見つけこっちに走ってきた。

「よかった!無事だったんですね?」
「あぁ、なんとかな。」
「貴方が魔物を退治してくれたおかげで私達もここまで来ることが出来たんですよ、なんとお礼を言ったらいいか…。」
「礼には及ばない、約束さえ果たしてもらえればな。」
「勿論ですとも、さぁ行きましょう。」

そう言って商人達が先導して町へと道案内をしてくれた。
途中で一人が俺に聞いてきた。

「いやぁ、それにしても日中戦い続けるほどの強敵だったのですね、どんな魔物だったのですか?」
「そうだな…。」

俺は少し考えた後、適当に答えた。

「大きかったよ。(胸が)」
「ほう…巨大な敵と戦ったのですか…それに打ち勝つとは流石ですな!!」


意味は間違ってない…と思う。
そうして俺達は街へと着いた。


11/10/01 17:34更新 / ひげ親父
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■作者メッセージ
 
長らく間が空いてしまい申し訳ないです。
色々と忙しいひげ親父でございます。
なにが忙しいって?
決して「私のゴーストがそう囁くのよ。」とか「素子ぉぉぉぉっ!!」とか「かく言う私も童貞でね。」とか「ネットは広大だわ。」とかのア〇メを見ていたわけでは無いですよ?

次はジパングに向かうアレス、ただいまジパングブームにあやかりたいと思いすこし早めの展開となっております。
投稿は二週間以内を目標にしたいと思います。

ps紹介なのですが少し遅れるかもしれません。
出来れば次の時に出したいですね。

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