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第八話 海域に住む美女達 前編
ここは広大な海原、陸とは違った世界を見せてくれるもう一つの自然。
全ての生命が生まれた母なる海、その広大さと深さは未だに誰も知ることは出来ない。
物心着く前から船を走らせた俺ですら分からない、だがどれほど危険に満ち、どれほどの希望に満ち、どれほどの浪漫があるかは知っている。
まぁ昔の話だがな、今では貿易船の船長ってとこだ…地味なもんだがこれでもやりがいを持ってる。

「船長…積荷の確認、船員、食料、船の状態、全て確認終わりました…問題ありません。」
「よし、風も穏やかになってきたし…今のうちに全員に飯食わしとけ?」
「はい船長。」

部下の一人が報告を終え、船内へと戻っていった。
それにすれ違うようにして副船長が甲板へと上がってきた。

「船長、舵を。」
「あぁ、頼む。」

副船長のパズに舵を任せ、俺はパイプを吹かした。
風が心地よく、穏やかな波の音が心を安らげてくれる。

「良い航海日和ですね?」
「ああ、いつもこんな日が続けばいいのだがな。」
「それはそれで船長は飽きるんでしょう?」
「昔ならな、今では無事に着くことが最優先だ。」
「…そうでしたね。」

青い空を見上げ、紫煙が空気に溶けるのを見上げながら柵にもたれかかる。

ふと甲板の方に目を向けると怪しい人影が見えた。
そいつは寒くも無いのにコートを着込み頭をフードで覆いかぶさり甲板の隅でひっそりと座っていた。

「あいつが…例の?」
「えぇ、ジパングまで乗せて行って欲しいっていう客人です、商人が手引きしたそうですが…。」
「観光船のことは教えたのか?」
「伝えましたが…『この船じゃないと駄目だ』と聞かないもんで…。」
「不審な動きは?」
「一人が声をかけたそうですがウンともスンとも言わないもんで皆気味悪がってます。」
「まぁ、貰うもんはもらってるんだし…それにここは海のど真ん中だ、妙な真似もおこさんだろう。」
「そのときは丁重に“その場で”降りてもらいますよ。」
「そうだな…後は頼むぞ?」
「はい、船長。」

パズは決まりの返事を返すと正面を向き航海へと戻った。
俺も船内に入ろうと階段を下りようとしたときだった。


カンカンカンカンカンカンッ!!!

マストの上の見張りから緊急の鐘が鳴り響いた。
音を聞きつけて船内から船員が飛び出し、見張りの報告を待った。

「て、敵襲っ、敵襲っ!!!」
「落ち着け、落ち着いて詳細を伝えろ!」

マストから降りてきた船員にパズが落ち着かせ詳細を聞き出す。

「ぜ、前方より敵が接近中です!」
「海賊か?!」
「いえ、魔物です、数は一つ!」
「一つ…まさか?!」

俺は見張りから望遠鏡を引ったくり前方を覗いた。
腕から青い羽根の生えた少女がこちらへと向かって来ている。

「魔の歌姫…セイレーンだっ!!」

よりにもよってこんな静かなときに訪れるとは…。
今日の女神はかなり不機嫌らしい。

「全員、船内へと避難しろ!!心を強く持ち、決して歌を聞き入れるなっ!」
「射撃手は船首にて迎撃、奴が近づく前に打ち落とせっ!!」

数々の号令が飛び、船が慌しくなった。
射撃手は石弓を撃ちセイレーンを狙うが距離が開きすぎているため届かず、矢を海に捨てるばかりだった。
だが不幸はそれだけには留まらなかった。

「な、なんだこの声は…。」
「美しい…なんて美声なんだ。」
「あっちから聞こえてくるぞ…?」

射撃していたはずの船員が歌を聴いた途端、急に武器を捨て…愚考にもセイレーンの元へと歩み寄っていった。

「いかん…風で思ったよりも声が通ってしまう!」
「皆、声に惑わされるなっ、自身を保て!!」

俺とパズの号令も虚しく、セイレーンの歌声に心を奪われた船員達はそのまま海へと飛び込んでいった。

「くっ!!」

海面を見ると泳いで近づいていった者達が蛸の足のようなものに海へ引きずりこまれ、そのまま上がって来なかった。
おそらくスキュラの標的となったのだろう。

そして…俺は。


−−−−−−。

「よっと…んーっ!」

空からセイレーンが船首に降り立ち、ゆっくりと着地する。
彼女はうんと背伸びをして、自慢の羽根をファサファサと揺らした。

「天気も良いし、風も心地良いし、こういう日は歌うに限るね〜。セーレちゃんは今日も絶好調なのですよ♪」

静まり返った船を見渡しながら彼女は歩き出した。
視界には誰も映らない。

「ちょっと張り切りすぎちゃったかな…?」

本来なら彼女を求め、幾多の男が発情して寄ってくるはずなのだが殆どの者は海に落ちて同業者のスキュラに奪われてしまった。
どの道、海に落ちた者を拾い上げるのは至極面倒なので気にしないのだが…これはこれで死活問題だと彼女は考える。

「船の中にならまだ人がいるかも…。」

そう思って船内へ入ろうとしたとき、ふと隅で座っている人影を彼女は見つけた。

「あれ?」

何気なく近づいた所には先ほどのフードを被った人物がいた。
彼女がこれだけ近づいても何の反応もせず、俯いたまま微動だにしない。

(なんでこの人には何も起きないんだろう?)

不思議に思った彼女は顔を覗き込んだ後、恐る恐るフードを取ってみた。
そこには…。

「…。」

そこには目を瞑り、ゆっくりと寝息をたてる男の顔。
セイレーンはその彼の顔をただ惚けたように見つめていた。

「…わぁ。」

彼女からふとそんな言葉が漏れる。
…しばらく見惚れていた彼女はハッと慌てて視線を引き剥がした。

「きゃ、わ、わたしったら…。」

少し離れて顔を羽根で隠す彼女。
顔は真っ赤になり、心臓はまだドキドキとしていた。
なんとか深呼吸し頭を落ち着かせるが、ちらちらと様子を伺っては頬を赤く染めるばかりだった。

「今までがごつくて悪そうな顔の人間ばかりだったから…ちょっとびっくりしちゃった。…でもなんでだろう?私の歌は眠ってても効果あるはずなんだけどな…。」

しばらく考えていた彼女だったがそれはすぐにどうでも良くなった。
どちらにせよ、無防備になってることには変わりないのだし…これほどの自分好みの男性を手放す事も無いと思ったからである。

何事も例外はあるのだと自分に言い聞かせ、彼女は男性の服に手を掛けた。

「いつもは勝手に交尾してきてくれるけど、こういうのも悪くないよね〜♪」

コートを脱がし、少し露出した肌に興奮しながらゆっくりと顔を近づける。

「まずは…誓いのちゅ♪」

彼女は男性の唇を奪い、両方の唇を濡らした。
唇を離した後、恍惚な瞳で眠った男性を見つめる。

「ふふっ、これで貴方は私の恋人だよ?貴方が起きたら私の好きな歌いっぱい聞いてね?」

首に手を回しまた深く口づけをしようとした時、男性がゆっくりと目を開けた。

「……。」
「……。」

無言で目が合う二人。
男性の深く吸い込まれるような赤い目にセイレーンは釘付けになっていた。
しばらく間が空いた後、男性は突如。

「むぎゃっ!!」

セイレーンに袋を被せた。

「むぐーっ!!んぐぐぐーっ!!」

何とか袋から出ようとするものの羽根がつっかえて動けず、袋の中に押し込まれて封をされてしまった。
男性は袋を置き、ふぅ…と一息つく。

「テストは良好…かなり良い感じだ。」

空になったビンを見ながら呟き、そっとポケットへと直した。
目の前でもがもがと暴れてる袋を見ながらアレスは先ほどの事を思い出す。

「それにしても…いきなりキスしてくるとは思わなかったな…。」

彼女の柔らかな唇の感触が頭をよぎり、慌てて恍惚とした自分を打ち消した。
別にやましい事をするために彼女たちを捕まえているわけではないのだからこういう考えは止めよう、まぁ…最終的にはそうなってしまうのだろうが…。

と、一人自嘲しながら袋を担いで船内へと入ろうとしたときだった。

「…やったのか?」

彼が声がした方に振り向くと、船長らしき男が壁を伝って手を足で押さえながらこちらへと歩み寄ってきていた。

押さえてる足からは血で赤い染みが出来ており、それがもう片方の手に握られている短剣によって出来たものだとアレスは理解した。

「痛みで誘惑から逃れたのか…。」

確かに効果的ではあるが、それは並大抵の覚悟ではない。
アレスはその男に大した奴だと感心せざるを得なかった。
故にその男が(恐らく)船長である理由も頷ける。

「大したことはない…で、どうなんだ?」
「見ての通りだ。」

担いだ袋を見せると船長は訝しげな目で彼を睨んだ。

「…どうして止めを刺してない?」
「殺す理由が無いからな。」
「殺す理由が無いだと?!」

船長はアレスの言葉に怒鳴りながら彼の胸倉を掴んだ。
睨み続ける船長にアレスは表情を崩さない。

「そいつのせいで部下が何人やられたと思ってやがる!!てめぇが出来ないんなら俺が殺してやる、そいつをよこせ!!」
「こいつは俺が捕まえたんだ…俺の好きにさせてもらう。」
「ここは俺の船だぞ?船長である俺の命令に従えないんなら今すぐここで降りろ!」

船長の切り札ともいえる言葉に解放されたアレスの動きが止まった。
そしてその後、彼はわざとらしくため息をついた。

「そうか…なら厄介ごとが増える前にこいつを逃がしてやるか。」

そういってアレスは袋の封を−

「やめろっ!!」

慌てて止める船長の手をかわし、得意げな表情を見せるアレス。
それを見た船長は拳を作りながらも従うしかなかった。
今決定権があるのは魔物という名の“爆弾”を持った彼にあるのだから。

「わかった…奴隷商人に売るなり憲兵に突き出すなり好きにしろ!!そのかわりそいつを絶対に部屋から出すなっ、いいな?!」
「はい、船長。」

特に気にしたわけでもなく、颯爽と歩くアレス。
すれ違いざまに船長は独り言のように言った。

「…帰りを待つ部下の遺族に、一体なんて説明すりゃいいんだっ?!」

船長の叫びに彼は振り向かずに答えた。

「幸せに暮らしている…そう伝えろ。」

そう言って船内へと入っていくアレス。
船長はただ黙って、持っていたナイフを地面にへと叩き付けた。


−−−−−−−。

「せ、船長?」
「お前、無事だったのか?!」
「なんとか…。」

俺が近づくとパズはぐったりとしながら力なく返事をした。
見ると首にロープがかけられ、痛々しく痣が残っていた。

「お前まさか…。」
「へへ、息を止めりゃ音も聞こえないと思って…。」
「この馬鹿野郎…。」

パズを何とか抱き起こし、船内へと入った。
船内には幸い何ともなくパズを部下の一人に任せた後、俺は船の配置を立て直す作業に入った。
船員に詳細を聞かれたが俺は適当に誤魔化した。船に魔物が乗ってるなんて知ったら皆がパニックになるからだ。
だが、奴の言葉が頭に残ってしまう。

『幸せに暮らしている…そう伝えろ。』

「まさかな…。」

俺は馬鹿な考えを振り払って作業に戻った。



−−−−−−。

「…ふぅ。」

自室へと帰ってきた俺は扉に鍵を掛け、封を解いて袋を開けた。
中から彼女がバサバサと青い羽根を動かし、ベッドの隅へと逃げる。

「なぁ…仮にも−」
「やめてっ来ないでっ近寄らないでっ何もしないでっお家に帰してっ触れないでっ痛いことしないでっここから−!!!!」
「まてっ!!だまれっ!落ち着けっ!」

パニックを起こしてがなり騒ぐ彼女を俺は耳を押さえながら怒鳴った。
怒鳴られた彼女はびくっと身体を震わせ、しんと黙って俺を見つめた。

「よしそれで良い、最初に断っておくが俺はお前に危害を加える気は毛頭ない、ましてや役人や商人に引き渡したりもしない。」
「ほ、ほんとに?」
「あぁ、俺はただ−」
「やめてっ、まだ動かないでっ!!」
「…あ?」

俺が近寄ろうとすると彼女は極端に嫌がった。
そこまで怖かったのだろうか?

「まだ貴方の事を信用したわけじゃないんだから動かないで。」
「…動かなければいいのか?」
「ちょっとでも動いたら叫んでやる。」
「お前、自分の立場分かってないだろ…?」

はぁ…と俺は頭を抱えてため息をついた。

「動いたっ!動かないでって言ったのに!!」
「分かった分かった、悪かったよ…。」

仕方ないから言われたとおりに動かないでみた。
変な格好で止まる俺とそれを真剣な様子で睨む彼女。
傍から見ればこんな面白い光景はないだろう。

「…。」
「…。」
「…ふぅ。」
「動いたっ!動いたっ!絶対動いたっ!!」
「動いてないっ動いてないっやかましいっ!!」

船内の一室で不毛な戦いは続いた。


−−−−−−−。


一方その頃…海底では。

「どう?…巻きつかれて動けないまま犯される気分は?…堪らないでしょう?」
「んあっ!…良いわ…もっと突いてぇ?」
「ふふふっ、だらしない顔…そんなに私の蜜壷が気に入った?」

海底の沈没船の中で先ほどの船員達がスキュラによって蹂躙されていた。
男たちは「あぁ…。」と声を漏らしながら快楽に浸り、射精を繰り返した。
その顔は歓びに満ち、誰もそこから抜け出そうとするものはいなかった。

その隣の方ではスキュラ達が集まり、会議をしていた。

「遅いわね…。」
「いつもならもうとっくに上まで来てるはずなんだけど…。」

どうやら彼女達は先ほどのセイレーンが戻ってこないのを話しているようだった。

「どうせ選りすぐりの人間見つけてはしゃいでるんでしょ?大丈夫だって。」
「でも、遅くなるときは必ず一声はかけていたわよ?」
「じゃあ…捕まったとか?」
「そんな…あの子の歌に惑わされない人間なんて居るの?」
「でも、これだけ待っても来ないんならそう考えても良いんじゃない?」
「だとしたら…どうするの?」

その言葉に皆が身体を強張らせた。
もちろんここで助けに行くというのが筋だとは皆も分かってはいる。
だがあのセイレーンの歌が効かない…さらに言えば魔物の特性である誘惑が効かない相手となるとかなり厄介である…故に勇者クラスの精神を持つものの可能性が高い。
そんな相手に捕まったセイレーンを誰が助けに行けるのか?
皆は黙ったまま考えを凝らしていると一人のスキュラが名乗りを上げた。

「私が…助けに行く。」
「ユラ、貴女が?」
「元々彼女を連れて来たのは私よ、なら連れて帰るのも私の責任だわ。」
「…貴女が行くんなら私だって行く、貴女を死なせたくはない。」
「いや、大勢で行くとかえって見つかる…ここは私一人で行くわ。」
「駄目よっ、そんなの危険だわ!」
「大丈夫、でももし私が帰ってこないような事があればここから出来るだけ遠くに逃げて、頼むわよ?」
「ちょ、ちょっとユラ!!」

そう言ってユラは泳いでセイレーンがいると思われる船へと向かった。

(セーレ…無事でいなさいよ?)


−−−−−−。


その頃セーレは…。


「なんだっ、それならもっと早く言ってくれればいいのに!!」

キャハハと笑いながらぽんぽんと俺の肩を叩くセーレ。
彼女達と接してきた俺でもこいつほど説明に疲れた奴は初めてだ。

「分かって貰えて何よりだ…。」
「いやぁ…最初は私もどうなるかと思ったよ、でもよく私がここに来るって分かったね?」
「いや…お前と出会えた事自体は偶然だ…この船が魔物と接触しやすい海域に出ると聞いて乗り込んだだけだからな。」
「そっか…(私を求めてきたわけじゃないんだ…)。」
「…どうした?」
「ううん、なんでもない。…それより私はこれからどうすれば良いの?」
「お前さえ良ければヴェンのところに連れて行くが…。」
「それってつまり…私を貴方の妻にしてくれるってこと?」
「お前さえ良ければ…な?」
「嫌なわけ無いじゃんっ!!私達はもう恋人なんだし♪」
「こ、恋人?」

いつの間にそんな話になったんだろうか?
そう言えば彼女が口づけをしてきた時そんな事を言ってたような気もするが…。

「そ、恋人…誓いの口づけをした二人は永遠に結ばれるよう歌を歌い続ける。…セイレーンの言い伝えだよ?」
「言い伝え…ね。」

歌に特化した彼女達らしい言い伝えだが…それが本当だとするとこれから彼女がすることは…。

「じゃあいくよっ…!!」

徐に彼女は胸に手を当て息を吸い込んだ後、美しい声が部屋中に広がり…。

「ちょ、まてっ!やめろっ!」
「…ふぇ?まだ始まったばかりだよ?」

俺が慌てて止めると彼女は歌うのを止め、不思議そうに首をかしげた。

「こ、ここ…ここで歌ってもあまり声も通らないし…どうせなら広い所で聞かせてくれないか?」
「ふーん…ま、貴方がそういうならいいけど…その時はあたしの歌、ちゃんと聞いてね?」
「わ、わかった…約束する。」

なんとか歌うのは諦めてくれたようだ…こんな所で歌われたら部屋の中とはいえ外に漏れてしまう。
ただでさえ警戒されているんだ…大人しくしておかないとまずい事になる。

「じゃあ、先にヴェンの所に送る。」
「え?けっこう急なんだね??」
「場所が場所だからな…向こうについてから色々とするさ。」
「じゃあその時に私の歌を聞いてね?」
「わかったわかった。」

さっそく俺はイヤリングを通してヴェンに連絡をとってみた。
程なくしてヴェンが応答した…のだが。

「あ、アレス…!」
「ヴェン…どうした?」

ヴェンの様子がおかしい。
いつもより静か目に、緊張感が伝わってくるような話し方だった。

「何があったんだ?」
「実は…ここに、この島に人が上陸したようだ。」
「な、なんだって?!」

ヴェンの島に人…?
まさか…。

「まさか…勇者か?!」
「いや、それはありえない…来たのは少数だし攻め込みに来たという訳でもなさそうだ。」
「なら…いったい?」
「恐らく漂流者か…冒険家か…いずれにしろ確かめる必要がある、今リザとレイを連れて様子を見に行く所だ。」
「だがもし…。」
「心配するな、私もついてるし彼女達も君ほどではないが腕は立つ…任せてくれ。」
「…。」


彼の勇気ある言葉を俺は信じるしかなかった。
どのみちヴェンの力が無ければ俺はそこに行く事も出来ないのだから仕方ないのだが。

「それより…どうしたんだ?」
「あぁ…一人送ろうと思ったんだが、その様子じゃ難しそうだな。」
「…すまない、こっちが片付いたら合図を送る。」
「そっちからは交信出来ないんじゃ?」
「だから合図だ…イヤリングが光りだしたら交信してくれ、その時に引き受ける。」
「わかった…気をつけてな?」

交信を終えるとセーレは心配そうに顔を覗き込んできた。

「魔王様…大丈夫?」
「あぁ、心配ない…ただ少し送るのは先になった。」
「そうなんだ…。」

自分自身を落ち着かせる為に俺はベッドへと腰掛けた。
それを後ろからセーレが抱きしめる。

「どうしたんだ?」
「心配ないとか言って…顔は深刻な顔してるよ?」
「そう…か?」
「そんなんじゃ身が持たないよ、魔王様も大丈夫だって言ってたんでしょ?」
「まぁ…そうだが。」
「じゃあここで不安になっても仕方ないよ、今は私達だけでもしっかりしておこう?」
「…それもそうだな。」

至極彼女の言うとおりだ、ここで俺が沈んでたら任せたヴェンに示しがつかない。
ここは何事も無いように振舞うのが信じた仲間としてのあり方だ。

「ありがとう…セーレ。」
「ふふん、褒められるのも嬉しいけど…。」
「?」

彼女は思わせぶりな態度を取ると急に俺に口づけをした。


「お、お前?!」
「やっぱりこっちの方が私は好きだな〜♪」

急にとろんとした目つきになった彼女が腕を首に絡ませ、密着してきた。
青い羽根が柔らかく俺を包み込み、すこしくすぐったい。

「どうせ時間もあるしすること無いんだから…恋人同士、愛し合おう?」
「お前それが目当てだったな?」
「細かい事は良いの、ほら…ちゅーして?」

彼女の誘いを断る事が出来ず、俺は言われるがままに口づけをした。
柔らかい唇が当たり、徐々に舌を絡ませていく。

「んっ…んんっ…!」

激しく絡ませるたびに彼女は俺を強く抱きしめた。
消えるような彼女の喘ぐ声は俺の興奮をくすぶらせる。

「ぷはぁ…ちゅー、上手だね?」
「そうか?実感は無いんだが。」
「じゃあ今度は…ここにもキスして?」

彼女は立ち上がり、自分のスカートをゆっくりと器用に捲りあげる。
そこから一部分を湿らせた可愛らしい柄の下着が見え隠れしていた。

「私の下着…可愛い?」
「あぁ…とても可愛らしい。」
「…♪」

彼女は恥ずかしそうに頬を紅く染めて微笑んだ。
俺はゆっくりと脚から触れていき、スカートの中へと手を入れた。

「あんっ…んん…。」

下着に触れるとクチュクチュと下着の上からでも分かるぐらいに濡らしていた。
少し上の固くなった突起物を摘むと彼女の身体が電気が走ったように震わせる。

「ひぅっ!…そんなに焦らさないでよ…。」
「じゃあ…そろそろ。」

手で下着を横にずらすと綺麗なピンク色の秘部が口を開けてひくひくとさせていた。
そのままゆっくりと顔を近づけていき、ふっと息を吹きかける。

「ひやぁっ!」

足の力が一瞬抜け、転びそうになる彼女の足を俺は寸前で抱きかかえた。
だがそのせいで俺の顔がスカートの中に入り込む形になってしまった。

「大丈夫か?」
「ごめん大丈夫…続けて?」
「あ、あぁ。」

少し薄暗いが目の前に涎を垂らした彼女の秘部が諸に見えている。
彼女を虐めたいと思う悪戯心と魔物に対する魔力の興奮が高まってしまい、俺はその秘部にむしゃぶりついた。

「ひぁあっだめっ!!そんな、急にされたら…!!」

彼女は思いがけない快楽にどうして良いか分からず、ただがくがくと足を震わせるしか無かった。
舌を入れるほどに愛液が湧き水のように溢れ出て、ベッドにまで滴り落ちる。

「もう駄目…来ちゃう、来ちゃうよぉ!!」

彼女が叫ぶと同時に俺は顔を離し、股を広げさせた。
股を広げた彼女の秘部から噴水のように勢い良く潮が噴出し、床に水溜りが出来るほどに濡らした。

「わざわざ、ひぐっ…股を開かせるなんて…ひぐ、変態…。」

半泣きになりながら恨めしそうに彼女は俺を睨んだ。
その顔がとても可愛く思えたのは俺がおかしいからだろうか?

「いや…彼女達の中にこうすると喜ぶ奴がいてな、…嫌だったか?」
「…すごく良い。」

顔を背けながらも彼女は照れくさそうに言った。
リザ…お前と趣味が合う奴がいて良かったな…。

「そろそろ…挿れて?」

セーレは自分で股を開きながら俺を求めた、先ほど潮を吹いた秘部もまだ涎を垂れ流していてすごく淫靡に見えた。

「じゃあ…いくぞ?」

俺の肉棒がゆっくりと彼女の中に滑らせるように入っていき…根元まで入れると彼女は俺を強く抱きしめてきた。

「ああん、気持ちぃっ、もっとぎゅってして?」

彼女が望むように身体を強く抱きしめ、俺は獣のように腰を振り続けた。
いやらしい音が部屋中に広がり、愛液と汗の臭いに二人は酔いしれていった。


−−−−−−。


「何とか船に入り込めたわね。」

私は船体の側面から隙間を通して船内へと入り込んでいた。
辺りには物資やら食料やらの箱が積まれているので多分ここは貨物室で合ってるだろう。
彼女が監禁されているとしたらここかと思ったのだけれど予想は外れてしまったようだ。

「という事は…もっと上か?」

ここから上だと客室やらになるが…船を襲った魔物を客室などに置いたりするのだろうか?
もし相手が勇者ならそんなことはしないだろうしすぐに仕留めるだろう。
でも死体は見当たらなかったし勇者らしき強い存在も確認できない…。
だとしたら可能性は二つ、奴隷商人の類か彼女が自らここにいるか。

「どっちにしても様子を確かめないと。」

私は方針を決め、上につながる通風孔を通じて上へと上がることにした。



11/10/14 14:59更新 / ひげ親父
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■作者メッセージ
どうも、ひげ親父です。
展開が少し速いのはひげ親父が切羽詰っているからです。
仕事などが忙しくなったりと色々ある時期でございます。

さて…前編が出来て次は後半なのですが後半が終わった後、読み切りを作るかジパングに向かうかで迷っています。
読み切りを作るとしたら今回はネタか非日常で行きたいと思っています。
皆さんはどちらを先に見たいでしょうか?
何はともあれ…頑張るひげ親父でございます。
ここまで見てくださってありがとうございます。
票を下さってる皆様…感謝いたします!!

KOJIMA様、紹介なのですが…後半が終わり次第作りたいと思っています。
少し時間が掛かりますが…いいのを作りたいと思っています。

ネームレス様、リクエストを受けていただきありがとうございます!
良い作品が出来る事を祈っております。

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