真理 |
エーテル灯が霧の中に道を浮かび上がらせる。
ここは世界中から科学者が集まる機械都市ルガンゼロ。 世界中の異質を集結したような街。 エーテル灯の列の先には規則正しく並んだ黄色い光が見える。 科学技術振興財団の研究施設ビルだ。 あの事故から…。あそこを追われてから、数年が経過していた。 私は地上階層の片隅に在る地下への階段から、第一階層へ降りる。 水酸化魔晶石機構を搭載した列車が青白い魔硝酸三水和物の煙を吐いて第三階層へ向かう。 トンネルの内壁には魔硝酸の結晶がずいぶん成長している。 列車が進むにつれ、その結晶の色が青から紫に変わっていく。 この辺りの岩盤は鉄分を含んでいるのだろう。 その結晶が赤くなるころ、第三階層についた。 そこから半日も地下水路船でいけばこの国の外に出る。 私はそこに探しに行くのだ。私の真理を。 私の生きる意味を。 真理を求めて 蒼王の都市、ティントゥに入って3日が過ぎた。 私はその中の冒険者ギルドに来ていた。 本当はこんな賊っぽい仕事はしたくないのだが、私にはお金がいる。 掲示板にずらりと並べられた依頼書。 ここに張られているのは緊急のもの、もしくは新着の依頼書だった。 緊急の仕事依頼は報酬が高く、魅力的ではあるが、たいていは傭兵の様な事をやらされ、戦争に加担させられるような内容が多い。 私はそう言う荒事が嫌いだ。 「フユ様。ジンジャエールをお持ちしました」 「ん。ありがと」 この無駄に背の高い女性はアルマ。 表情が常に凍りついているのは彼女が自動人形、ゴーレムだからだ。 正式名称はPXW-001。 彼女は通常のゴーレムとは違い、原動力こそ魔法的な物だが、そこに科学技術を導入することで、精液などという馬鹿げた燃料ではなく、水素イオン干渉電池の電力で長時間の稼働が可能となった。もちろん性能も桁違いに高い。 しかし、このPX‐001シリーズの最大の特徴は、その頭脳に在る。 このゴーレムは脳領域の拡張により、経験したことから学習し、プログラムを自ら書き換え、成長する。 つまり、知能を持っているのだ。 これは父の生涯最高にして最悪の発明だと言われた。 人形が人間にとって代わる事を人々は恐れた。 そして彼女はその研究段階で構築され、正規版より遥かな高性能を誇る実験機である この旅で彼女にはとても世話になっている。 人間と違い、少し融通が利かない所があるが、父の思考データを学習しているおかげで、並のPXシリーズとは隔絶された知能の高さを持っている。 しかも、戦闘能力も非常に高いので旅の用心棒にもなる優れものだ。 何より、従順で、顔も身体もいい所が…ゲフンゲフン。 私が彼女からジンジャエールを受け取り、掲示板を眺めていると新着依頼の欄の、ある依頼に目が止まった。 〈遺跡発掘助手求む。性別年齢問わず、体力のある者、学のある者………〉 私はその依頼書を手に取ると、依頼料も確認せず、すぐさまギルドのカウンターに持っていく。 カウンターでは5台程の水晶式通信機が置かれ、その前で男が暇そうに腕杖を立てていた。 「おう、お嬢ちゃん。お子様ランチならここにはないよ?」 「…ロナウド…怒るわよ?」 「はは、こりゃ失礼。…………いや、俺が悪かったからその銃口降ろしてくんない?」 私は仕方なくアルマに銃を仕舞わせる。 彼はロナウド、このギルドの支部長でこの酒場のオーナーだ。 何度かこの街に来ているせいですっかり顔なじみだ。 今でも忘れはしない。 初めて会ったとき、こいつは私にこう言ったのだ。 『すみません。お客さん。ここは18歳未満の入店をお断りしてるんですよ』 当時、私は22だ!! そんなレディーに向かってなんてことを言うんだか…。 確かに、背はまだ低いし、胸も…。 いや、でも、これからすっぱり成長するはず!! だいたい、この外見は実験の失敗のせいなのよ。たぶん。 あれは魔物の遺伝子研究をしていた時のこと…。 サキュバスの血液から抽出したある酵素を培養して、それが製造するホルモンの研究をしていた。 その時、実験に使用していたラットが暴れて、ラットに注射するはずだったホルモンと補酵素を満載した注射針が私の腕に刺さった。 しかも不幸な事に、オートで注入されるタイプの注射器を使用していたため、中身が全部注射されてしまったのだ。 あの時私は14歳。 10年たった今でも外見は変わらない…。 拒絶反応や身的障害は出なかったのが不幸中の幸いだろうか。 しかし、いくつかの副作用的なものは確認している。 さらに悪い事には、研究は中断された為、そのホルモンの作用が未だにわかっていない。 「…そうよね。これは絶対アレのせいよ。それ以外に思いつかないもの。あのホルモンは絶対に成長因子に作用するものだったから…ぶつぶつ」 「……フユ嬢。俺も暇じゃないんだけど?いじけるなら外でやってくんない?」 私はロナウドを無視して考え込んだ。 「…アルマさん。何とかしてくれません?」 「……………(ふるふる)」 「……はぁ。 とりあえず、この依頼、承諾文送っとくよ?」 「そうよ!さっさとしなさい!この役立たず!」 「…はいはい…分かりましたよお嬢様……」 そう言ってロナウドは依頼書の刻印部分に水晶式通信機の付属機の解析光を当てる。 そして手元の文字盤をがちがちと押して受信機から出てきた紙を私に手渡した。 「三日以内にガルナバンに来てくれとよ。交通費は別途で出るそうだ」 「ありがと。それとごちそうさま」 私は空のグラスをロナウドに渡すとアルマに依頼書の返紙を渡す。 アルマはその場で返紙の内容を読み、暗記した。 ロナウドの店を出て、私達は宿に戻った。 「…そうよ、酵素の培養に使った細胞が私の体内に入って増殖したせいで…」 「………………フユ様」 私があの時の事について考え込んでいると、アルマが話しかけてきた。 「何?」 「質問してよろしいでしょうか?」 「許可するわ」 「あの依頼をお受けになったのは何故ですか?報酬額が他と比べて低かったと思われますが?」 「そうなの?見てなかったわ」 「…………」 「それよりあの内容よ! ムクシャの遺跡探索!」 「ムクシャ文明と言いますと、当時の大陸南西部の孤島に発足した小規模な文明であった、と私のデータベースには有りますが」 「そうよ。彼らは大陸とは独立した魔法技術を振興していたの。私が思うに、大陸の魔法技術よりも魔法の根源そのものに、より近い方法だったんじゃないかと予想しているわ」 「………………」 「わかる?つまり、これはもしかすると魔法の原理をつきとめる重要な手がかりになるかもしれないのよ!」 「……理解しました。しかし、それならば今まで、何故ご自分でいかれなかったのですか?」 「ムクシャの遺跡は何故だかわからないけどガルナバンの王族が侵入、調査を厳重に取り締まっているわ。こんな機会でもないと中に入る事も出来ないわ」 「了解しました」 「よろしい!じゃあ今日は寝るわよ!明日は起きたらガルナバンに向かうわよ」 「承知しました。起床予定時間はいかがなさいますか?」 「まかせるわ。おやすみ!」 そう言って私は布団にもぐった。 「……………フユ様………」 「ん?」 「…………」 なにかアルマが言ったような気がしたけど、彼女もベッドに入ったので、気の所為かと思い、私は深い眠りについた。 翌朝、私は蒸し暑さで目を覚ました。 季節が季節だとはいえ、何だろう、この熱さは。 私はベッドから身体を起こした。 その時、微かに甘い匂いがした気がした。 私は窓を開ける。 す〜っと涼しい朝の空気が部屋に入ってくる。 籠もった熱が抜けていく。 部屋を見ると、アルマがもう一つのベッドで眠っていた。 内部温度調節の為に昨夜は服を脱いで眠ったらしい。 ベッドサイドに綺麗にアルマの服が畳まれていた。 下腹部に熱が集まってくるのを感じる。 あの実験の失敗以来、私が身体的に受けた作用の一つだ。 私はゆっくりとアルマのシーツをめくった。 合成生体皮膚に覆われた、透き通るようなアルマの裸体が朝日に浮かび上がる。 シャープに整った顔。抜群のボディライン。ガラス繊維の様な白銀の長い髪。 「…きれい」 私は綺麗な顔に自分の顔を近づけ、ほっぺにキスをした。 アルマのほっぺは人間と変わりなくやわらかく、循環する冷却機構の排熱により、体温の様な温かみがあった。 私は着ていた下着を脱いでいく。 アルマと違ってこどもな身体。 少し恥ずかしくなる。 アルマのこぼれおちそうな大きな胸に顔を近づける。 その胸は人間と違い、大きく重そうだがその形は完璧と言ってもいい程の美しさがある。 私はその胸の間に耳をくっつける。 ゴォウ、ゴォウ。 アルマの独特の心拍音。 うんん。本当は循環式冷却機系の稼働音。 それでも、その音はアルマの生きている音。 何時頃からだろう? アルマを人形として見なくなったのは。 父を亡くし、母を失くした私に残された最後の家族。 気が付けば私は、自らの秘所に指を添え、ぐちゅぐちゅに濡れそぼったソコを撫でまわし始めた。 アルマの顔を見つめ、その閉じられた瞼の奥に在る真紅の瞳が、私に微笑みかけるのを想像する。 視線を降ろして、透き通る肌に浮かぶ薄桃の乳首を見る。 朝の涼しい外気が流れ込んできたことで、アルマの生体維持装置がそこを尖らせて籠もった体温を外に逃がそうとしている。 ピンと張ってプリンとした可愛い乳首。 さらに視線を降ろして、かわいいおへそを通り過ぎる。 そこには無毛の割れ目がある。 柔らかそうに膨らんだ恥丘。 こんなに大人っぽい身体をしているのに、そこだけはまるで赤ちゃんの様にぷっくり柔らか。 そんな所がたまらなく好き。 私の息が荒くなる。 アルマを起こさないように一生懸命声を抑える。 「……ん………ぁぅ……」 それでも抑えきれずに漏れてしまう声。 私は薬指と中指を自分の割れ目の中へ滑り込ませる。 左手は平らな胸へ。 こぼれ出す粘液を左手ですくって、こっそりとアルマのそこに塗りつける。 無毛の割れ目が私の愛液で濡れて光る。 私と同じ。 私のそこも毛が生えていない。 少し前までは薄らと生えていた。 でも、アルマのそこを初めて見たあの日。 こっそり手に入れた薬を使って永久脱毛した。 アルマと同じ。 アルマも私と同じ。 その事が私をさらに興奮させる。 量を増してこぼれそうになった愛液を再び掬い取り、今度は私のおっぱいに塗る。 アルマのおまんこと同じ。 そう思うと、おっぱいが本当におまんこのように敏感になってくる。 濡れた左手で体中を撫でる。 おまんこが、気持ちいいのが全身に広がっていく。 「…ゃっ…はぁ…くっ……ぁ……ん!」 もう、声を抑えるのも限界。 私はシーツの端を掴み、それを噛みしめる。 私はペースを上げて指を動かす。 跳ね上がる心拍。 熱さを増す、体温。 そして、最後に ――キュッ おまんことおっぱいの尖った蕾を同時に摘まんだ。 「……――っ!」 私は動く気が抜けてしまった身体を無理やり動かし起きあがる。 洗面所に行ってタオルを水でぬらす。 冷たいタオルが私の肌を撫でる度に心地良さとくすぐったさが駆けあがってくる。 一通り身体を清め終えるとベッドの上で未だ静かに眠っているアルマを見てほっと胸を撫で下ろす。 私は濡れている下着をベッドから拾い上げ、洗面所のバケツに放り込むと新しい下着に着替えた。 私がアルマより早く起きる様になったのは3年ほど前からだった。 あまりいい行為とは言えないが、これのおかげで昼間でもムラムラしていたのがうその様に収まる様になった。 あと、アルマを見ながらするようになったのは去年からだ…。 私が洗濯と身支度を終えると、7時ちょうどにアルマが目を覚ました。 「おはようございます。フユ様。お目覚めはいかがですか?」 「と、とっても良かったわ。ありがとう」 何に対してのありがとうだろう…? と自問自答してみる。 「準備は出来ているわ。あなたも支度しなさい」 「はい。只今」 そう言ってするりと磨りガラスの様な肌に服を通していくアルマ。 私は思わず見とれてしまう。 「………どうなさいました?」 「っ! い、いいえ。なにも無いわ。準備できたら出発しましょ」 「はい。3分ほどお時間をいただけますか?」 「いいわよ。何をするのかしら?」 「内蔵武器のメンテナンスを行います」 「あら。用心深いのね」 「…フユ様に万一の事があってはいけませんから」 「そ、それはいい心がけね」 ……………………………………………惚れてまうやろぉぉぉ! 惚れてるんだけど…ゲフンゲフン。 この気持ちは、もう自分には隠しきれなくなっていた。 町を30分ほど歩くと煙の立ち上る工場街に入る。 私達は、ここから魔石圧縮式蒸気機関車に乗る。 これで半日も行けば依頼人のいるガルナバンに到着する。 車内では、朝の行為の疲れからか、眠気に襲われ、眠りに落ちてしまった。 目が覚めると、ほっぺに柔らかな温かさを感じた。 目を開けると、目の前にはレース地の黒い下着が見える。 ――バっ! 私はすぐさま身体を起こした。 「お目覚めですか?フユ様」 どうやらいつの間にか私はアルマの膝枕で寝ていたらしい。 かぁ〜っと、顔が熱くなる。 「あ、あありがとう」 だから何のありがとうだ… 「い、今は何時かしら?」 「はい。14時28分52秒です」 「そろそろ到着ね」 「はい。あと5分23秒で着く予定です」 ここが個室で良かったと胸を撫で下ろした。 まだ頬にはアルマの膝枕の感触が残っていた。 アルマのスカートは短く、見えそうなのに絶対に見えないとギルドの男たちは嘆く。 それを思い出して、コレは役得だと思った。 まぁ、本人は誰に見られた所で気にも留めないのだろうが…。 ガルナバンに降りてその暑さに目がくらむ。 流石は砂の都市と呼ばれるだけはある。 とは言っても、町はオアシスの周囲に作られているため、砂ぼこりの心配はしなくて済みそうだ。 ギルド支部の近くに宿を借りると、私たちはさっそく依頼主の待つ宿に向かった。 そこは町の反対側だということだったが、町そのものが小さいので10分もかからなかった。 「あ、いらっしゃい!君たちがギルドの紹介の人?親子で冒険者なんて珍しいね」 部屋に通されると、そこには爽やかな感じの青年が居た。 しかし私はそいつの言葉でムッとした。 「あなたの眼は節穴かしら?私がアルマの娘に見えるの!?」 「え?違うのかい?」 「私はアルマの主人。それにアルマはゴーレムよ」 「え!? へぇ〜。すごいなぁ〜。どこからどう見ても人間だよ。この子」 そう言って依頼主はアルマの周りをぐるぐると回り観察し始めた。 ……………落ち着け、クールになるんだ、フユ! 「(ピクピク)で?依頼って言うのは?」 「あ、ごめんごめん。そうだったね。えっと。まずは自己紹介だね。僕はルイ。そちらはアルマさんだったね。お嬢さんは?」 「お嬢さんじゃないわ。フユよ。真葛 斑結(まくず ふゆ)。それに私は24歳よ」 「え!? すごいなぁ〜!14歳ぐらいかと思ってたよ」 イライライライライライライライ ライライライ。 「フユ様。血圧が上昇しております。体調がお悪いのですか?」 「いいえ。大丈夫よ」 「あ、ごめんごめん。脱線しちゃったね。依頼内容は大方依頼書に書いた通りだよ。で、実務の内容だけど」 「ルガンゼロで一般教養は習ったわ。専門は生物工学や生化学だけど、アルマの修理程度の工学の知識はあるわ」 「それは頼もしいね。じゃ、調査助手と…う〜ん、警備をお願いできるかな?」 「わかったわ。実際には何をやればいいの?」 「そうだね…。じゃ、明日も調査に遺跡に行くから、その時言うよ。いやぁ、助かったな。まさかこんなに早く来てくれるとは思わなかったよ。それに勉学にも通じてるなんて。あんな報奨金じゃ悪い気がしてきたなぁ」 「気にしなくていいわ。私の目的は報奨金じゃなくて、調査の方だから」 「わぁ。感激だなぁ。君も考古学に興味があるのかい?」 「いいえ。興味があるのはムクシャ文明の技術よ」 「あ。ならちょうど良かった。明日はきっとびっくりする物を見せられるよ」 その後適当な世間話をして、翌日の朝にこの宿に集合する事になった。 最後までなんとなくイライラする男だった。 ずっと考古学について好きなおもちゃを説明する子どもの様に話すのだ。 その上、デリカシーがない! 私は私の事をガキ扱いする男は大っきらいなの。 次の日の朝、いつもと違う乾いた暑さに気分を害されながらも、朝おな…ゲフンゲフン。 アルマの寝顔を見て、どうにか気分を回復させて目覚める事が出来た。 私達はルイの宿へ向かった。 昨日の話だと遺跡にはまだ未開の部分が多く、罠の解除がされていない場所があること、あと、魔物がいる場所があるということだったので、それなりの装備はしてきた。 宿に着くと入口の所で探索の準備をしているルイと、その助手らしき若い女性がいた。 私たちに気づくとルイはいつもの調子で話しかけてきた。 「あ、おはよう。昨日は眠れた?僕はワクワクして眠れなかったよ」 「………ええ」 「フユ様、また血圧が上がっていますが?」 なんだかせっかくのアルマのあられもな…ゲフンゲフン。 いい気分が台無しだわ。 「これでよし、っと。さ、行こうか」 「ちょっと待って、隣の人は誰?」 私はルイの隣に立っている包帯を巻いた女を指さした。 「私はシャルア。ルイの婚約者です」 「彼女は僕の助手だよ。かわいいでしょ?」 「ええ、あなたよりはまともそうね」 「あはは。確かに、彼女がいないとせっかくの研究資料も無くしちゃうんだ」 あはは。って、それ、考古学者として致命的なんじゃないの!? と、思ったが、この男に関してはあり得なくない話なので黙っていた。 「包帯を巻いているけど、怪我でもしたの?」 「え?ああ、彼女はちょっと特殊な事情があってね」 「?」 私は不思議に思って聞き返そうとした。 その時、アルマが私の肩を叩く。 「どうしたのよ?」 「フユ様、彼女からは人間とは違う生体反応があります」 「…ふぅん。そう言うことね」 アルマの話を聞いて私は納得した。 「じゃ、そろそろ行こうか。2日間の契約だし、急がないと勿体無いからね」 「そうしてちょうだい。私もタダで調査が出来る絶好の機会を台無しにはしたくないもの」 遺跡は町から馬を使って4時間ほどの所にあった。 それは正8面体を4辺で切り取ったような形の4面体で、ルイの話では地下に深く神殿の様な構造体があるらしい。 準備した今日の分の水はもう半分程しか残っていない。 「さ、着いたよ!」 「着いたよ!っじゃないわよ!こんなに遠いなんて聞いてないわよ!?」 「あれ?言ってなかったっけ?」 「ルイ、言ってなかったわよ」 「…伺っておりません」 ルイは「ごめんごめん」と笑顔で困った顔をする。 ………ィライライライライライラ。 「ま、とりあえず。中に入ろう。熱い所で立ち話もなんだしね」 「あったりまえよ!」 ルイは懐から書状を取り出すと入口の機械にそれをかざした。 古びた遺跡に置かれたその機械と入口をぐるっと囲む近代的な防御ゲートだけが異質で風景から浮いて見える。 「これがないと入口に入ったとたんにガルナバンの留置所に強制転送されちゃうんだ」 「知ってるわよ。だからこの依頼を受けたの」 私が怒りながら遺跡に入った時のことだった。 「ねぇ、ルイ。私、乾いてきたわ」 「シャ、シャルアッ!?」 シャルアさんの目が熱を帯びている。 人間だったら熱中症を心配する所だ。 「………いいわよ。私達は勝手に奥を調べさせてもらうから。調べたことは資料にまとめて後で渡せばいいかしら?」 「そ、そうしてもらえると助かるよ。あ、前の調査で調べたことはそこの鞄の中に入ってるから、目を通しておいて。 …ちょ、シャルア。もう少し我慢してよ」 「熱いよぉ。ルイ〜」 「はぁ…」 シャルアさんはルイに抱きついて、今にも押し倒さんばかりだった。 シャルアさんの気持ちはすこし理解できた。 「え、えっと。ぼ、僕らはここで本部テントを作ってるから、調査の方お願い!」 「………そうさせてもらうわ」 私達はすぐにその場を離れる事にした。 あまりあれを長く見ていると私もアルマを襲ってしまいそうだったから。 遺跡の奥は外とはちがって驚くほど涼しかった。 アルマはさっきからルイのまとめたレポートを読んでいた。 人間の様に読む必要がないため、大量のレポートをパラパラとめくるだけで読んでいく。 「フユ様、解析終了しました」 「ありがと。聴覚神経電位に変換してちょうだい」 「わかりました」 そう言ってアルマは髪の毛の中から聴覚用の情報電位伝達ケーブルを引っ張り出し、私に手渡した。 私はそれを受け取ると、髪の毛のように細いケーブルを耳の奥まで差し込む。 ケーブルは細いため、鼓膜を突き刺しても痛みはないが、違和感は拭えない。 「情報送信開始します」 「わかったわ」 しばらくすると耳に聞こえるか聞こえないかの高周波音が聞こえ、頭の中に吸い込まれていくような不思議な感覚がする。 アルマが読解したレポートの内容が情報として圧縮され、神経伝達電位に変換、つまり人間の脳に直接情報として入力されているのだ。 入力された情報は海馬までしか届かないため、短期で忘れてしまうが、調査するだけなら何の問題も無い。 「送信終了しました」 「ありがと」 ケーブルを外す頃には自分でそのレポートを書いたかのように内容を思い出すことが出来た。 この機能も研究途中のもので、どんな害があるか判明していないため、アルマ以外のPX-001には搭載されていない。 そもそも人体への実験が行われていないため、私も初めて使うときは怖かったが、使ってみればなんの害も無く、とても便利なので大量の情報を暗記するときなどに時々使用している。 しかし、1年程前から副作用なのかアルマの発する脳周波を音として聞くことが出来るようになり、脳周波の波長を操作することでテレパシーの様に会話が出来るようになってしまった。 恐らくはアルマからの神経電位を何度も受信していたせいで私の脳領域の一部がシナプス回路を新たに形成し、アルマから発せられる神経波長専用の回路が形成されてしまったせいだろう。 私の主観的な感覚では、心の中でアルマを描き、それに呼びかけるように喋るとアルマにもそれが伝わる。 なんとも不思議な感覚だが、アルマといつでも繋がっているようで嬉しくもある。 範囲は1km程も届かないが、十分に便利な能力である。 「さ、いきましょ。問題の「未開の扉」はこの先に在るみたいよ」 「了解しました」 アルマはケーブルを収納すると、私についてきた。 しばらく石でできた通路を下っていくと、突然壁が消える。 私は持っていたランプをかざすと、どうやら広い部屋のようだった。 「ここが「空席の部屋」のようね」 「照明灯、灯火します」 アルマが指先から光の粒を飛ばす。 すると粒が明るく発光し、部屋の全貌が浮かび上がる。 そこは正に空席の部屋と呼ぶにふさわしいものだった。 何もない空間に、立派な椅子が一つだけ横向きに置かれ、それ以外は何もないのだ。 まるで王を失った玉座の様に見える。 その光景にどこか違和感を覚える。 「あれが「未開の扉」ね」 玉座の裏にある扉らしき模様の前で私達は立ち止まった。 「アルマ、放射計の反応は?」 「この壁の4.7m先に広い空間がありますが、通路は有りません」 「…どういうことかしら?」 「この扉は、ダミー、もしくは非科学的、つまりは魔法によって閉ざされている可能性があります」 「…別に入口があるのかしら?」 「この部屋の壁にはそれらしきモノが見つかりません」 どういうことだろう。 この部屋の奥にあるもう一つの部屋へ侵入者を入れたくないのならば、わざわざここにこんな模様を付ける必要はない。 なのにわざわざ「奥の部屋」の存在を知らせたいかの様にここに扉の模様があるのだ。 「空席の玉座」に「未開の扉」 「んっしょ、っと」 私は椅子に座ってみた。 石でできた椅子は硬かったが、座り心地は良かった。 できればもう少しサイズが小さいと良いのだが…。 私はそんな事を思いながら宙に浮く形になった足をぶらぶらさせてみた。 「ん?まって…もしかして」 私はこの部屋に入った時に感じた違和感に気がついた。 何故この椅子は入口にも扉にも向いていないのだろう? 玉座なのだとしたら入口の方を向くべきだ。 しかしこの椅子は入口にも扉にも向かず、なにも無い壁に向いている。 「そうだ!この椅子、動かないかしら?」 「………向きを変える事が出来るようです」 「それよ!この椅子を入口の方か、扉の方に向けて見て」 私が言うと、アルマは私が座っている椅子を力を込めて回転させ始めた。 ガリガリと石の擦れる音を立てて椅子が動き始める。 そして…。 ――カチリ 椅子が沈みこみ始めた。 ぶら下がっていた脚が地面に着く。 「魔法周波観測。扉の方です」 アルマが言うが早いか、扉が輝き始めた。 そして一際強く光ると、突然扉部分の壁が消え、通路が現れる。 それと共に、遺跡の中全体がやんわりとした光に包まれる。 「どうやら正解だったみたいね」 「遺跡全体の何らかの装置が起動した可能性があります」 「そうね。これでランプもいらないわ」 私は椅子を下りて開いた「未開の扉」に向かって歩き始めた。 通路を抜けるとそこはさらに広い部屋になっていた。 部屋全体に明かりが満ちているおかげで部屋の様子がよく分かる。 そこには3段高くなった舞台の様な構造と、ここまでの部屋にはなかった円柱形の柱が10本円形に並べられていた。 「何かの儀式が行われていたのかしら?」 「わかりません。中央の台座に向けて柱から何らかの魔法周波が発せられているようですが…」 「罠の一種?」 「そこまではわかりません。ただ、構造としては転送装置の様なものかと」 「転送装置?ここは王の墓のはずよね?」 「はい。ルイ様の調査資料にはそのように書かれておりました」 「……………。分からないわね。王墓なら何故転送装置なんか?」 「調査資料によるとここを王墓と判断したのは別の資料による。とありました」 「という事は、ここは王墓では無くて、別の目的で建てられたものかもしれないってこと?」 「その可能性もあります」 「そう言えば一緒に添付されている文献には大まかな所在しか書かれていなかったものね」 「偶然、王墓の建てられたのとは別の時代に、この建物がここに建てられたのかもしれませんね」 「とにかく、あの台座を調べてみましょ」 「はい」 私は台座の上にあがって見る。 台座の上には不思議な事に他の床には積もっている埃が全くない。 「アルマ、ここに何か書かれている。でもかすれていてうまく読めないわ」 「解析します………」 アルマの紅い眼が輝きを増して細かく動く。 まるで目を開けたまま夢を見ているみたい。 「………解析終了しました」 「なんて書いてあるの?」 「『11次元補正式物質転換装置』『使用方法:10本の空間次元補正装置を起動させ、中央の時間次元補正装置に手を付く。尚、住民登録され…』この先は完全に字が消えていて解析できません」 「わかったわ。これ、起動させることって出来るのかしら?」 「未知の技術ですので起動させて何が起こるかわかりません。あまりお勧めは出来ませんが?」 「わかってるわよ!でも、気になるじゃない!」 「…分かりました。そういうところ、ナツヒコ様によく似ておられますね」 「なんでお父様の名前が出てくるのよ!私は私よ!「天才マクズナツヒコの娘」じゃない。マクズフユなの!」 「もうしわけありません。フユ様が心配だったもので」 「……あの事故でお父様が死んだのはお父様自身が悪いの。なにもあなたが罪悪を感じる事じゃないわ。それに、私はこんなことじゃ死なない」 「ありがとうございます」 そう言って頭を下げると、アルマは髪の毛の何本かを伸ばし、10本の柱に接続する。 「解析完了しました。起動させます」 「ありがと」 そう言うと柱が緩やかに、そして激しく光を放ち、先ほどまで茶色い石でできていた柱は、クリスタルのようになって輝き始めた。 「起動完了しました」 「ありがとう。あとはここに手を付けばいいのね?」 私は台座の上に浮かび上がった二つの丸い円に手をついた。 ゴゥゥンと低い音が響いて装置が起動する。 「やったわ!」 私が喜んだ、次の瞬間、私は重力を感じなくなった。 一瞬、何が起こったのか分からなかったが、アルマに受け止められて、気づいた。 私は何らかの力を受けて、台座から吹き飛ばされたのだ。 「――――――――――――――――――」 突然部屋全体に声が響き渡る。 しかし何を言っているのか分からない。 聞いたことのない言語だ。 「アルマ、なんて言ってるの?」 「ムクシャ語の様です。ルイ様の資料をもとに翻訳します『住民登録を確認できません。不法入国者として排除します』」 「まずいわ!どうしたらいいの?」 「…高エネルギー魔法周波観測。なにか転送されているようです」 「え!?」 部屋に満ちる柱からの光が強くなる。 そして、そこから光の筋が台座の上で焦点を作り、そこに光の球体が生まれた。 その球体が人の大きさぐらいになったところで、突然閃光が辺りを包む。 『我々は統治局の防御機構構成体として時空座標NH41589に時空移送されました。貴方達を外敵因子として排除します』 光が晴れたとき、台座の上に立っていたのは褐色の肌をした女性だった。 アルマから送られてくる翻訳された音声がテレパシーを通じて私に響いてくる。 女性の背丈はアルマと私の間くらいだろうか。 金色に輝く髪は腰下まであり、アルマと同じ真紅の瞳は危険色を発するように赤く燃えていた。 そしてその身体には鎧の様な物が張り付くように装着されている。 「な、なに…これ?」 「どうやらこの遺跡の守護者の様です。生体反応は有りません。放射計測定の結果、未知の物質で構成されたゴーレムの様です。戦闘能力は未知数」 「ま、まずいわね。逃げましょう」 「賢明です」 私達は元来た道をダッシュで駆けだした。 「ゴーレム、こちらを追跡開始しました。速力は時速120km」 「それはすごいわ。世界大会で金メダルが取れるわね」 「現在の世界記録を5.84秒更新するかと」 追いついてくるゴーレムを横目に確認しながら、私は腰に差した愛刀 冬峰を引き抜く。 そしてゴーレムが伸ばしてきた手を強く切りつけた。 ――ガキィン 鈍い金属音を立てるが、ゴーレムの身体にはほんの数ミリほどしか刃が通っていない。 「なんて硬さなのよ!オリハルコン製の刀身なのよ!?」 しかし、ゴーレムは一瞬ひるみ、速度が落ちる。 その隙に私達は全速力で逃げる。 入口までどうにかカーブを利用して逃げ切る。 「ルイ、まずい事になったわ!」 行為をおえて、テントを張っていたルイとシャルアさんに声をかける。 「ん?まずいって何が?お弁当?」 「そんな呑気な事言ってる場合じゃないわ!」 「フユ様、追いつかれたようです」 振り返ると、ゴーレムがこちらを見つめながらゆっくりと歩いて来ていた。 『戦闘機能展開します』 そう言うと、ゴーレムの腕は変形して銃の様な形になる。 ――ドッ 「え!?な、なに?」 ゴーレムの攻撃は私の足もとに穴を開けた。 それを見て、ルイが驚きの声を上げる。 「アルマ、応戦して」 私の命令でアルマが拳銃でゴーレムを狙撃する。 しかし、額に確かに命中した銃弾は彼女に傷一つつけることが出来ていない。 「まずいわね。どうしましょう?」 「彼女が追っているのは私達だけの様です。2人でこのまま外に逃げるべきかと」 「そ、そうした方がよさそうね」 私はこちらにゆっくりと歩いてくるゴーレムを見ながら言った。 「ルイ、シャルアさん。できれば街に戻って!私達は反対方向に逃げながら、あいつを倒すわ」 「反対って、砂漠以外何もないよ?」 「あんなのを街に案内したら大変でしょ!」 私はそう答えながら入口を出た。 「アルマ、複重合窒素砲のスタンバイを。あと、飛行機能は使えそうかしら?」 「複重合窒素砲の充填を行いながらですと、フユ様を乗せて飛ぶ場合、速度は3分の1程になってしまうかと」 「仕方ないわ。それでも走るよりは早いもの」 「了解しました。飛行翼、展開します」 そう言うと、アルマの背中から黒い無機質の翼が広がる。 そして、アルマは私を抱えると、地面を蹴った。 これで私はゴーレムを振り切れると思った。 しかし、入口を出ると、彼女の身体もアルマと同じく、いや、もっと大規模に変化を始めた。 「周囲の砂を巻き込んで、身体を再構成しているようです」 「何ですって!?あいつ、そんな事が出来るの!?」 見る見る間に砂に覆われていくゴーレム。 そしてその身体はどんどん大きくなっていく。 「なに?あれは…」 その姿は巨大な怪物のようになっている。 爬虫類の様な骨格で、翼を持っている。 「あれは、まるで先代魔王以前の時代のドラゴンの様ですね」 「ドラゴン!?それって、あの最強の生物と言われていた?」 そして出来上がった姿は、まさに陸空の王と呼ぶにふさわしい姿だった。 砂でできたドラゴン、サンドドラゴンはその大きな翼を広げると、その羽を一度羽ばたかせ、一気に浮き上がる。 次の人羽ばたきで一気にこちらに向けて飛び始めた。 「まずいわ。まだ追ってくる」 「敵、加速しています。このままでは追いつかれるのも時間の問題です」 サンドドラゴンは私達の後をものすごい速さで追いかけてきた。 「ったく、なんて速さなの!? アルマ、複重合窒素砲の進行状況は?」 「窒素圧縮率2400%、複重合窒素形成率12.7%」 「着弾時の被害予測は?」 「半径600m程度の焼却。範囲内の大型生物の生体反応は無いため、主な被害は標的のみです」 「十分ね。アルマ、ここに降ろして。私が時間を稼ぐから、あなたは爆破範囲を超えたら合図を出して、私も移動魔法で退避するわ」 「了解しました。御武運を」 「頼んだわよ」 私はアルマに降ろされ、砂の海に着地する。 それを見て、ドラゴンも高度を下げてくる。 どうやら私と戦ってくれるらしい。 私は鞘から正電式分子間力切断刀 冬峰を引き抜くと、持ち手のトリガーを引いた。 刀身が赤く燃える。 この刀はただ頑丈なだけではない。 オリハルコン合金に銀化魔石加工を施し、内部には特殊な装置が埋め込んである。 これを作動させることで刀身の表面は強い正電荷を帯び、触れる物の分子間結合力を反発させ、分子を崩壊させる。 つまり、触れるだけでどんな物であろうが分子レベルで切断できる特殊な刀なのだ。 考案したのは父だが、改良して完成させたのは私だ。 欠点は副作用として刀身が電子を吸収して加熱されるため、3分ほどで帯電を止め、冷めるまで待たなければ、刀身が熔解してしまうということ。 「いくわよ、トカゲちゃん」 私は刀を構えてドラゴンと向き直る。 ドラゴンも本能でこの刀の危険性を察したのか私の間合いの外から攻撃の機会を窺っている。 そしてしびれを切らした様に、ドラゴンは大きく息を吸い込んだ。 私はブレスが来ることを想定し、ドラゴンの腹の下に滑り込む。 しかしドラゴンもそこへ踏みつけを仕掛けてくる。 私は咄嗟に避けるが、砂に足を取られて体勢を崩す。 流石に最強の生物と言われるだけはある。 私は尻尾の薙ぎ払いを何とかよけながらも体制を整えると、攻撃後に止まったドラゴンの左脚を切り落とす。 刀の力で何の抵抗も無くすり抜ける刀身。 しかし、そのひと振りでドラゴンはその強靭な脚を失う。 ――グオォォォォン 響き渡る唸り声。 大きな音と砂ぼこりを上げて倒れる巨体。 しかし、ドラゴンはそれだけではくたばらなかった。 私は側面から強い衝撃を受けて吹っ飛ばされる。 受け身はとったが、砂ぼこりで発見が遅れたため、左肩にもろに食らってしまった。 「っく!…タフ…ね」 左腕が痺れたように熱い。 コレは骨が折れているかもしれない。 見ればドラゴンは再び翼を羽ばたかせ、空に舞い上がっていた。 「まずい…」 空から攻撃されては手の打ちようがない。 私がどうしようかと悩んでいたその時、頭に声が響く。 『フユ様。複重合窒素砲、発射準備整いました』 テレパスでアルマが合図してきたのだ。 『助かったわ、アルマ。私も退避するわ、すぐに発射して』 私は答えるとともに、移動魔法を使ってアルマの座標まで飛ぶ。 「はぁ、はぁ。ただいま、アルマ」 「お帰りなさいませ、フユ様」 アルマの細く綺麗な腕の代わりに突き出た3本のプラズマ磁界式複重合窒素安定装置が火花を散らしている。 私は移動魔法を使ったせいで体力を消耗していた。 本来私はこんな高度な魔法を使えない。 しかし、アルマに内蔵されている座標補正装置を使って、魔術師たちが脳内で行っている移動先の座標特定を省くことで、半分以下の魔力でこの魔法を使っている。 それでも、もともと魔法の素養のない私にはきつかった。 「標的確認、座標固定、発射反動補正完了」 「いいわ。撃ちなさい」 「複重合窒素砲、発射」 発射の衝撃と共にアルマは2、3メートル後ろにふっとぶ。 それとは正反対にプラズマ磁界に覆われ球状に一時安定した複重合窒素の弾が飛んでいく。 そして。 ――カッ 遠方から強烈な閃光と、少し遅れて鼓膜が破れそうな爆音が地響きと共にやってくる。 「……標的蒸発確認」 「よ、よくやったわ」 私は地平線の向こうに上がるキノコ雲を見ながら言った。 「まいったわねぇ、まさかあんなのが出てくるなんて思いもしなかったわ」 「……だかr 「『だから申し上げたではありませんか』ね。分かってるわよ。ごめんなさい」 「……その謝り方、ナツヒコ様とそっくりですよ」 「え゛!?じゃあ今度からやめるわ」 「ふふっ」 あ。アルマが笑った。 私はレアなモノを見れたと思った。 「さ、帰りましょ」 そう言って私がアルマに近寄った、その時だった。 「えっ!?」 足がずぶずぶと砂に埋まっていく。 「流砂!?まずいわ」 そんな事を言っている間に、私とアルマは流砂に飲まれてしまった。 「 …さま。フユ様」 「……ん…、大丈夫よアルマ」 私はアルマの声で目が覚める。 どうやら気を失っていたらしい。 周囲は暗い所であるらしく、アルマの照明弾で照らされているらしかった。 「ここはどこかしら?」 「先ほどの場所の地下の様です。恐らくは大昔に砂に埋もれた建築物かと」 「まいったわね。出られるかしら?」 「先ほど通った穴は、上に降り積もった砂が互いに押し合って均衡を取っているようです。下手に押し上げると、重みで建物全体の屋根が崩れて、今度こそ生き埋めになってしまうかもしれません」 「万事休す、ね」 「…フユ様、その左腕、いかがなさいました?」 「ん?あぁ、これ?あのドラゴンに、一発貰っちゃって」 「それはいけません!すぐに手当てを!」 珍しくアルマがあわてた素振りを見せる。 私はそれに驚き、左腕を素直に差し出した。 アルマが治療器具を鞄から出し、変形する腕のギミックを使い治療していく。 麻酔を打たれたとはいえ、痛みが完全に消えるわけではない。 私の額に汗が浮かぶ。 しかしその時、同時に汗が流れた跡が冷たくなる事に気がついた。 「ん?……これって…。アルマ、ここ、風が吹いているわ」 「………微弱ながら空気の流れが感知できました」 「どっちから吹いているか分かる?」 「…………。どうやらこちらからの様です」 「そっちに行ってみましょ。出口が在るのかもしれないわ」 「可能性はありますね」 「そうときまれば行くしかないわ!」 「もう少しお待ちください。あと少しで治療が終わります」 そう言ってアルマは私の腕に包帯を巻き、三角布で私の腕を吊ってくれた。 私達は、暗闇の中を歩き始めた。 「どうやらこの建築物は数層の階があるようです。当時は地上に在ったと考えると、1階に当たる部屋は5階下ですね」 「へぇ、ずいぶんな高さね。それにとても広いわ…」 「壁の材質の放射線強度からして、恐らくは6千年前の建築物だと思われます」 「6千年!?ってことは、さっきの遺跡の2千年も前に作られたって言うの?」 「柱の一部に木材が多く使用されています。この建物が出来た頃はこの辺りは砂漠では無かったのでしょう」 「へぇ、皮肉なものね」 下への階段は特に隠されているわけでもなく、すぐに見つける事が出来た。 そして、次の階に踏み込んだとき、私は驚きの声をあげた。 「なに?…これ」 アルマの照明に照らされて浮かび上がったのは黄金でできた兵士の像だった。 それも一体や二体では無い。 まるで道を作る様に規律正しく整列した何十もの兵士像が闇に隠れて見えなくなるまで続いているのだ。 「………どうやらここが王墓の様です」 「王墓?ってことは、ここに当時の女王が埋葬されているの?」 私達は像の間を進んでいく。 そして、黄金像の列が切れると、そこには黄金の棺が置かれていた。 「開けても大丈夫かしら?」 「……棺を開けるのはどうかと思いますが、どうやら罠は無いようです」 「この眼で見てみたいの。これほどの墓に葬られた女王がどんな人なのか」 私はゆっくりと黄金で装飾された木製の棺桶に手をかける。 そして、慎重にその蓋を開けた。 「っ!」 私は息を飲んだ。 そこには整然と全く変わらない姿の女王の姿が在った。 「え?…これって…」 「生体反応は有りません。どうやら、特殊な薬品で死体の腐敗を防止してあるのでしょう」 「すごい………まるで生きているみたい」 女王は金色のふわふわとした髪と、日焼けした褐色の肌をした美しい女性だった。 髪は長く、足もとまで続き、まるで身体全体が金色の絨毯の上に乗せられているようだ。 そしてその肌は生々しく、水気を持ち、その麗しい肌には金粉で化粧が施されている。 服は着ていないため、張りのある肌は外気にさらされ、金粉で幾何学模様が描かれている。 「…きれい」 私はその頬にゆっくりと手を伸ばす…。 ――ビクッ 「っ!………ひやぁぁぁぁぁっっ!!」 私は驚きのあまり尻もちをついてしまった。 6千年前の死体が動いたのだ、仕方ないじゃない。 「ど、どういうこと!?」 「…………微弱ながら魔物の生体反応があります」 「魔物?」 「どうやらこの棺が彼女を眠らせているようです」 そう言われ、私がもう一度立ち上がって棺の中をのぞいた、その時だった。 ――ぱちくり 「いひゃぁぁぁぁぁぁ!!」 私はまた驚いてしまった。 『ふぁぁぁあ!よく寝たぁ〜。 あれ?真っ暗ね』 女王の死体が起き上がってあくびをする。 その言語を翻訳したものがアルマを通して私に送られてくる。 「なに!?なんでこの人動いてるの!?」 『お!?あなた、ゴーレムね。ちょっと失礼。情報伝達ケーブルはどこかしら?』 そう言って棺桶から出てくると女王はアルマの傍まで歩み寄り、アルマの差し出したアルマの髪の毛の一本を自分の耳に接続する。 「………ふぅ。言語情報をもらったわ。どう?通じてるかしら?」 しかも今度は私達の言葉を話し始めた。 「こ、こここ…」 「…あなた、鶏の真似?」 「フユ様、心拍数が以上です。落ち着いてください。敵意は有りません」 敵意は無いって、あなた。 死体が突然よみがえって言葉をしゃべっているって言うのに、これを冷静にいられるはずがないじゃない! 「あらあら。ずいぶん眠っていたみたいね」 そう言って王女はパチンと指を鳴らす。 すると、突然部屋全体に明かりが灯る。 白い明かりに照らされた女王の姿はとても死人とは思えなかった。 「あなた、名前は?」 「アルマと申します。そちらは私の主人のフユ様です」 「そう。私はクレメンツィア」 堂々とした態度で話す女王。 素っ裸なのに何という威風堂々っぷりだろう。 「ふぅ〜ん。あなた、ずいぶん面白いゴーレムね。それにあなたのご主人様も」 「………………」 「そ、そんな事よりあなた。なんでそんなにゴーレムに詳しいのよ!?アルマは最新式のゴーレムよ?それが何で6千年に死んだはずのあなたが情報伝達ケーブルまで知ってるの?他のゴーレムにはまだ実用化もされていないのに!!?」 「へぇ〜。そうなんだ。まぁ、私としては、私の死んだあとに人間が生き残っているってことの方が驚きね。とっくに絶滅していると思っていたもの」 「え?どういうこと?」 私は女王の発言に思わず聞き返してしまう。 そうしている間に、女王は再びアルマの情報伝達ケーブルを使って何やら情報収集を始めた。 「ありがと。これで下の階の衛星情報を見に行かなくてもよくなったわ。 へぇ〜。今、世界はそんな事になっているのね。とっても素敵ね。まるで夢見たい。ううん。もしかしたら私はまだ夢を見ているのかも」 「夢なんかじゃないわ。私は正真正銘、ここにいるもの」 「ふふ。そうね。私の時代はね。信じられないかもしれないけど、今よりももっと科学技術、魔法技術、共に格段に進歩していたわ。それこそ、進歩の限界というところまで」 「え!?」 「人間は手に入れたあらゆる技術を使って世界を自分たちの都合のいいように作り変えていった」 「へぇ。まるでルガンゼロみたいな話ね」 「そうね。人類は自らの細胞の老化を止め、終には不老不死を手に入れた。そして、この星を削り、穴をあけ、終には他の星にまで行って文明を広げたわ。そして、その代償としてこの星の自然。さらにはこの時空間に多大な影響を及ぼしていった」 信じられない話だった。 この世界がかつてそんな事になっていたなんて。 「そして、私がここに眠る頃にはとうとう限界が来た。人々は世界の崩壊を恐れ、全ての技術を廃棄し、自分たちの過ちを悔いた。皮肉な話ね。人間はとうとう自分たちが、この世界が滅びる直前になるまで過ちに気付かなかったの。でも安心したわ。今の世界なら大丈夫そうね」 「なんでよ?」 「私達が何世代にも渡って行ってきた遺伝子操作は新しい種を様々に生み出していったみたい。その結果、人間は自分だけがこの世界で優れた種であるという概念を乗り切れた。おかげで、どう?この世界には昔ほど「進歩」への欲求がないわ。奇しくもその事が、この世界を救っている」 「え?どういうこと?」 「そのままでいいってこと。この国の、この世界の幾末を見ていくのが私の女王としての生き方だもの。あなた達は好きなように生きていけばいいのよ。 ふぅ〜。安心したらまた眠くなってきたわ」 そう言って、女王は再び棺の中に入る。 「あ、そうそう。出口なら、そこのエレベータを使うと良いわ。この施設の電源はあと30分は起動している筈だから。あ、そうそう。この施設の中は外と比べて時間が経つのが遅いから気を付けてね。あまり長居してると外ではずいぶん時間が経っちゃうわよ。それじゃ、おやすみぃ〜」 「ねぇ、ちょっと待って」 私は棺を閉めてしまおうとする女王を呼びとめた。 「ん?」 「何故あなたはこんな所で眠っているの?そんなに世界が心配なら、あなたがもう一度女王として世界を導けばいいじゃない」 「ふふっ。私が女王だったのは遠〜い昔の話よ。今はただの棺に入った死体」 「一度…失敗を知っているあなたなら、きっとこの世界を正しく進める事が出来る」 「あらあら。それはきっと間違いね。この世界は進む必要がないの。人が少しずつ変わっていけば、それでいいのよ」 「私達はすぐに死んでしまうわ。あなた達の過ちをまた繰り返してしまうかもしれない」 「ふふ。そうなれば、またきっと、はじめに戻ってやり直す。人は、世界はそう言う風に出来ているのよ。きっと」 「そんな!」 「…あなたは余程お父様の事が好きだったのね。進歩の為の実験で死んだお父様の事を未だに嘆いている。でも大丈夫よ。そんなお父様をあなたは見ている。あなたは、そんな失敗しないでしょ?」 「え?」 「親の失敗を子が見て治す。その子の失敗を孫が見て治す。そうやって、少しずつ少しずつ、人は良くなっていけばいいの。私達は永久の命にすがりついた所為で、自らの失敗を最後の最後まで気付くことが出来なかった。でも、あなた達は違うでしょ?あなたが、あなたの孫が、何かを変えようとすれば、そこからいくらでも変わる事が出来る」 「……」 「だから、あなたはしっかりと生きて、その生き様を次に見せてやればそれでいいのよ。そこに私は必要ない。私は唯、この世界の片隅から世界の変わっていく姿を見て、昔を懐かしむだけの存在」 「でも…もうお父様はもういない。私は誰を見て自分を直せばいいのよ?」 「今のあなたに、治すべきことがあるの?まだ出来上がってもいないあなたに」 「っ!」 「大丈夫よ。あなたのお父様も、私の大切な人たちも。ここを去っていった人たちはみんな、消えてしまったわけじゃない。この世界では。ただ、形が変わるだけ。人の身体は土に戻り、新しい命となる。人の心は、その次の人たちの心に、あるいは本や文字となって。そして、この世界は廻り続けるの。ぐるぐるぐるぐる」 「廻る…命」 「そういうこと。それが私の学んだこと。思えば、幼いころに私の母が言っていたことと一緒。不思議ね。これだけ長く生きた私が最後に学んだことは、私の何千分の1も生きていない私の母が言っていたと同じことなの」 「……」 「ふぁ〜。もう駄目。ほんとに眠いわ。ごめんなさい。そろそろ寝るわ。 あなたがもし、本当に迷った時、またここに来なさい。その時もまた、呼んであげるわ」 そう言って女王は棺を閉めてしまった。 「……………」 「………なにあれ?…」 私達はその後、言われたとおりエレベータという昇降機を使って1階まで下り、谷底に在る出口に出る事が出来た。 その後、町に戻ってみて驚いた。 外では2日が経っていた。 「もう死んでしまったかと思ってたよ。捜索隊の人もずいぶん探したんだよ?」 「そんな事を笑顔で言うなっ!」 私は数時間ぶりに、ルイの腹立たしさを思い出した。 「ルイ様、調査資料を作成してきました。 …しかし、ここに書かれていること、私は世間に広める事をお勧めしません。御自分の目で確認して、ご自分で考え、発表してください」 アルマが体験してきたことを資料にまとめ、ルイに手渡す。 アルマの話を聞いて、珍しくルイの表情が真剣なものになる。 「わかりました。 実はね、僕らもガルナバンの王女に呼ばれて、似た様な事を言われていたんだ。 『あの遺跡で何を発見しても、その中であなたが心に留めておくこと、公表する事をよく考えた上で論文を制作してください。私の父が貴方は信用できる人間だ。と仰らなければ、私は決して許可しませんでした。そのことを肝に銘じていてください』 って。ここの王族は昔からムクシャ文明の技術を守る一方で、それが世間に広がる事を防いできたんだよ」 「そうでしたか」 「うん。でも、考古学の発展や、シャルアの様に遺跡の事故の犠牲者を減らすためにも、ある程度の事は世間にも伝えなくてはいけない。 それが、考古学者としての僕の生き方だからね」 ルイが真面目な顔のまま、真面目な事を言った。 ついつい私の口から関心の息が漏れた。 「へぇ。ルイのくせにまともな事も言うのね」 「あれ?僕がまともじゃないことってあったっけ?」 「あると思います!(吟じません)」 「ルイ…自覚がなかったのね…」 ルイに私とシャルアさんからツッコミが飛んだ。 私達は宿に戻り、アルマは着替えを、私は傷を癒していた。 「アルマ。私は何故研究しているんだっけ?」 「以前は、「私は私の知的好奇心を満たすためにあらゆることを知りつくしたいの」と仰っておられましたが?」 「そうね。でも、今になって思うの。あれは、それを成し遂げられなかったお父様の意思を尊重したいから、そう言っていただけなのかもしれない。って」 「………フユ様」 「なに?」 アルマは、少しうつむくと、私の腕に巻かれていた包帯を綺麗にたたみながら、ゆっくりと話し始めた。 「…あの日、フユ様を連れてルガンゼロを出た日、私も同じことを考えていました」 「え?」 「私はナツヒコ様に言われ、フユ様をお守りするために、国を出ました。しかし、同時に私はナツヒコ様を失ったことで、生きる目的を失っておりました」 「…それって」 「はい。私は、ナツヒコ様の事をお慕い申し上げておりました」 その一言は酷く私を混乱させた。 「そんな…。だって、アルマはゴーレムなのよ?それが何でお父様に!?」 「………私は。ゴーレムですが、感情もあります。主人として、インプラントされた以上の感情を、ナツヒコ様に抱いてしまったのです」 私の頭は今にも沸騰しそうだった。 何故かはわからない。 アルマが、私じゃない人間の事を好きだという事が、堪らなく許せなかった。 「どうしてここでお父様の話が出てくるのよ!」 「フユ様。血圧が異常に上昇しています。気をお静めになってください」 「うるさい!アルマは私のゴーレムよ!私はアルマの主人よ!」 「フユ様!?」 「アルマは……私の、モノなのよ?」 私の目から涙が零れ落ちて、 私の口から言葉があふれ出して、 「ねぇ、お願い。私の事を好きだと言って。私の事を好きだと云わなくてもいいから、せめて他の人を好きだなんていわないで………おねがい」 私の心から想いが溢れ出して、 …どうにもならなかった。 「…………」 アルマは困ったような顔をする。 その口が開き、言葉を発する事が恐ろしいと感じた。 私の想いを、アルマが否定する事が怖くて怖くて仕方無かった。 「フユ様…」 私はその瞬間硬く耳を閉ざした。 耳が痛くなるほどに両手で耳をふさぐ。 けがをした左手の痛みなんて感じない。 それよりもずっと心が痛いから。 その痛みを噛みしめながら思った。 私、こんなにアルマの事が好きだったんだ。 ――ギュッ 「え?」 私の痛みを取り除いたのはアルマがくれた温もりだった。 耳と一緒に硬くつむった目を開ける。 そこにはアルマの大きな深く紅い瞳がゆれていた。 その瞳に見透かされるうちに、私の心が落ち着いてくるのがわかった。 私は耳から手を離し、アルマの身体を力いっぱい抱きしめる。 「…だよ…。私、アルマの事が好きで好きでたまらないんだよ?お願い。嘘でもいいから私の事、好きだって言って」 「……私は…、嘘はつけません」 アルマはいつもと同じ、静かで冷たく言った。 「…いじわる」 再び涙が溢れてくる。 「………でも、フユ様の事を好きだ、と言う事は出来ます」 「ふえ?」 アルマは変わらない調子で言った。 それでも私には優しく温かく聞こえた。 「私も、フユ様を愛しています」 私の心の零れ落ちてしまった何かが再び注ぎ込まれる。 「…ねぇ。お父様と、どっちが好き?」 「ふふ…。比べる事なんて出来ませんよ」 「そう…」 私はそれだけ答えると、アルマの柔らかな胸に顔をうずめた。 「さっきの続き、話しますね」 ――コクン 「私は、ルガンゼロを出て、生きる目的を探す旅を、この旅をフユ様と始めて、とうとう答えを見出すことができました」 私は顔をあげてアルマの顔を見つめた。 アルマは優しい瞳で私を見ていた。 「私の生きる目的は、フユ様と一緒にいるという事です」 私はアルマにより一層強く抱きしめられる。 柔らかい。温かい。 「……ねぇ、でもそれって、お父様の代わりってこと?」 私が尋ねると、アルマは静かに首を横に振った。 「ナツヒコ様にも、フユ様にも、変わりなんておられません。ナツヒコ様は私の思い人であり、主人であり、父であり、神様のような人。フユ様は私の恋人であり、主人であり、妹の様で、娘の様で」 「ふふ…。アルマ、私のお母さんになってくれるの?」 「……その笑顔、ナツヒコ様が私に意地悪するときとそっくりです」 「ふふ…。いいもん。私の事も、アルマは好きでいてくれるんでしょ?なら、いいの」 「……フユ様」 ――チュ 私のおでこに、アルマのキスが降ってきた。 なんだか、子供扱いされてるみたいで、でも、なんだかたまらなくうれしくて。 私はそのままアルマの胸に顔を押し付ける。 アルマの鼓動が聞こえる。 優しくて、私を包み込んでくれるような音。 「アルマ。好き」 「私もです。フユ様」 アルマがそう静かに答えた、その時。 「っヒャン!」 私の秘華に何かが触れてきた。 「……フユ様。私、もう我慢できません」 アルマは、そのまま私を抱っこすると、ストンとベッドの上に降ろした。 「え!?」 何が起こったのか分からなかった。 そして、ゆっくりと理解する。 アルマが私の服を脱がせ、私を押し倒したのだと。 アルマは私を押し倒した勢いのまま、私に深い深いキスをした。 吸いつくように、ついばむ様に、私もそれに応える。 アルマも服を脱いでいく。 その白い肢体が露わになっていく。 私のおへその下の辺りがジュンと熱くなるのを感じる。 いつものアレが始まってしまった。 徐々に熱は全身に広がっていく。 ――ぷはぁっ アルマの唇が離れていく。 ふたりの唇を繋ぐ銀色の糸が、ぷつりと切れて、私の口の中に入る。 ――ぴくんっ 私の身体が私の意思と関係なく痙攣した。 気が付けば、私は指一本動かせないくらいに痺れ、熱を帯びていた。 意識を集中すると、血管をとおる血の流れさえ感じられる。 私の胸の頂点で目一杯尖っているピンクの蕾も。 ジュンジュンと泉のように湧き出るソコも。 身体の全部が今まで感じた事がないくらい敏感で、精密に、私に感覚を伝える。 「なにぃ?これぇ?」 私は自分の事が分からなくなって疑問を漏らす。 「うふふ。フユ様のお身体、寝てる間にいろいろと調べさせて頂いておりました」 アルマが悪戯っぽく笑ってみせる。 こんなアルマ、一度も見たことがない。 「フユ様、あのホルモン。何であったか、ご存じないですよね?」 「うん…」 私は霧の中でアルマの声を聞きながら答える。 その霧は冷たいものではなく、海の様に温かいものだ。 「あのホルモンは、サキュバスが人間の女性をサキュバスにする際に用いる、魔物としての遺伝子発現を促す作用があったのです」 「ふぇ?」 私はアルマの話を聞くが、頭が回らず言っている事が理解できない。 「とは言っても、ご安心ください。普通は、サキュバスが一緒に注ぎ込む魔力がなければまともに機能は果たせません。でも、フユ様は同時にサキュバスの細胞の一部も体内に取り込んでしまいました。そのため、フユ様の体内で突然変異した細胞が、魔力を作りだし、フユ様をサキュバスにしようとしているのです。でも、フユ様の人間としての細胞もそれをさせまいとして、フユ様は今、人間としてもサキュバスとしても、不安定な状態。その為、サキュバスとしての面が強くなっている時、つまり、エッチな気持ちになっている時や、フユ様の意識が低いとき、毎朝のような症状に犯されてしまうのです」 そ、そんな。 それじゃまるで…。 「申し訳ありません。フユ様の痴態、毎朝眠ったふりをしながら見ておりました」 ――パキン その時、私の中で何かが砕けた音がした。 「ふぇぇええん。えぇぇん」 私は子供のように泣き出してしまった。 どうしてかは分からない。 ただ、恥ずかしくて恥ずかしくてたまらなかった。 「大丈夫ですよ。私はフユ様のそういうエッチなところも全部大好きですから」 ゆっくりと、いじめる様に、優しくアルマは言った。 私は、アルマに本当の意味で裸にされてしまった、そんな感情を抱いていた。 そのままアルマは優しく私を抱きしめ、私をアルマの豊かな胸へ誘った。 「フユ様。愛しています。こんなかわいいフユ様も、エッチなフユ様も、いつもの意地っ張りなフユ様も。全部全部。愛しています」 私は裸の心を、アルマに抱きしめられた。 すごい。 まるで、アルマのお腹の中にいるみたい。 暖かくて、安心できて。 私はしがみつくようにアルマを抱きしめた。 少しでも離れたら、私はバラバラになってしまいそうで。 「ねぇ…、フユ様。私の、本当の私の姿、見ていただけますか?」 耳から入るアルマの声、テレパシーを使っている時みたいに、心に直接響いてくる。 ――コクン 私は言葉を忘れてしまったみたいになって。 身体を動かして伝えることしかできなかった。 「フユ様。お口を開けてください」 「ぁ……」 私は素直に口を開ける。 そしてアルマの顔が近づいて。 ――あむ 唇が重なる。 そのまま深い深いキス。 アルマの唾液。さっきよりも甘い。 おいしい。もっと欲しい。 私は親鳥に餌をもらう雛の様にアルマの口をついばむ。 ――ぷはぁ 唇が離れる。 アルマの顔、歪んでる。 目がうまく見えない。 頭がぼぉ〜っとして。 でも、アルマが微笑んでいるのは分かる。 アルマのキモチ、私に伝わってくるもの。 「フユ様。フユ様を、私に下さい」 アルマがにこりと笑って言う。 「いぃよ」 私も微笑み返す。 その途端。おへその下が跳ねた。 ――ぴくん、ぴくんっ! わからない。 どうして私にこんなものがあるんだろう? でも、アルマが嬉しそう。 それだけで私もうれしくなる。 私の花の蕾がある場所。 在る筈のないそれに、アルマは口付けた。 ――ちゅ ――ビクンビクっ! アルマの唇が、息が触れる度、私の身体が跳ねる。 「フユ様。花の様に甘い香りがします」 「ふぇぇ?」 呆けたように。 言葉が作れない。 気持ち良すぎて。 「フユ様。コレを、私に下さい」 「あるまぁ〜」 私は心でアルマに伝える。 アルマはコクンと頷いて。 私のそこに、アルマが覆いかぶさってきた。 アルマのそこ、きらきら光って、きれい。 ――ちゅぷ 「ふぁぁぁぁ」 私がアルマに飲み込まれた。 気持ち良くって。私がアルマに融けていくの。 私の心。どんどんアルマのモノになっていくの。 それが、ただただ、嬉しくて。 アルマが私の上で踊る。 私もアルマにしがみついて一緒に踊る。 楽しい。嬉しい。気持ちいい。 「ひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!―――――――」 あるまぁ。 大好き…。 目が覚めると、ソレはもうなくなっていた。 隣を見ると、アルマが優しい瞳で私を見ていた。 「ねぇ、アルマ。もしかして、アルマも私に秘密でエッチな事してたの?」 「っ!」 アルマの心。あの時全部見ちゃった。 「変だねぇ?アルマは精液、いらないはずなのに」 「そ、それはですね…」 アルマがあわてる。 アルマ、かわいい。 「ほしくなったら。いつでもあげるね」 「……はい」 「ふふ。私、少しサキュバスになっちゃったかな?」 「お身体に変化はないようですが?」 「だって、アルマとこうして横になっているだけで、アルマとまたエッチな事、したくなってきちゃった」 「……私もです。フユ様」 私達はお互いを抱きしめあった。 その時思ったの。 私の生きる意味。 私の真理。 アルマと、ずっと一緒にいられること。 fin エーテル灯が霧の中に道を浮かび上がらせる。 ここは世界中から科学者が集まる機械都市ルガンゼロ。 世界中の異質を集結したような街。 エーテル灯の列の先には規則正しく並んだ黄色い光が見える。 科学技術振興財団の研究施設ビルだ。 あの事故から…。あそこを追われてから、数年が経過していた。 あの人が死ぬ直前に私に伝えた。 私の生まれた理由を。 私の生まれた理由。真実は、 私は人を殺すために作られた。 私は、戦争の為の兵器なのだと。 何故あの人が最後にそれを伝えたのかは分からない。 でも、間違いなくその一言は私のこれまでの多くを奪い去った。 そして最後に、彼はこう続けた。 娘を、フユを頼む。 私は腕の中で眠る少女を見た。 こんな少女を。 人間を。 私にどうしろというのだろう? 殺人兵器である私に。 あの人は、どうして…。 私は地上階層の片隅に在る地下への階段から、第一階層へ降りる。 水酸化魔晶石機構を搭載した列車が青白い魔硝酸三水和物の煙を吐いて第三階層へ向かう。 トンネルの内壁には魔硝酸の結晶がずいぶん成長している。 列車が進むにつれ、その結晶の色が青から紫に変わっていく。 この辺りの岩盤は鉄分を含んでいるのだろう。 その結晶が赤くなるころ、第三階層についた。 そこから半日も地下水路船でいけばこの国の外に出る。 この国の外になら、見つけられるのだろうか? そこに行けば、見えるのだろうか? 隣で眠る少女を見る。 あの人とよく似た目元。 この瞳が開いて、私にもう一度あの笑顔を向けてくれるのだろうか? 私はそこに探しに行く。私の真理を。 私の生きる意味を。 それがどんなものになるのか、わからない。 でも、あの人の事だ。 きっとこの少女が教えてくれるのだろう。 この子と一緒にいれば分かるのだろう。 私の、真理。 |
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おまけ
ひつじのひつじによるひつじの為の用語集(人間向きではありません;) ※勝手にひつじが超科学的な事をむりくり科学的に解釈したら、という妄想を元に書いてます。気にしないでください。あと、なるべくひつじをいじめないでください。彼は簡単にへこみます。 魔法:多次元において可視の3次元に干渉する物が物理であるとしたとき、不可視の7次元のどれかに干渉する物を総称して魔法と呼んでみる。原理としては生物の脳周波がその不可視の次元に干渉することで不可視の次元に囚われていたエネルギーを持つ粒子に働きかけ、可視の次元へエネルギーや、物質として干渉する事。それによりエネルギーを可視の空間次元に持ってくることで、熱を制御して炎の魔法や氷の魔法などを使い、逆に不可視の次元を間接的に経由して、対象となる生物の脳周波に働きかけ、生物自身の身体に影響を及ぼす。また、空間次元と異なるもう一つの不可視の次元、時間次元に働きかけることで時間を操る事も出来る。これらを複合することで時空魔法などを生み出す。また、その脳周波を用いて不可視の次元を操作するという方法の総称。 水酸化魔晶石機構:不特定元素である魔晶石(魔石の結晶)を水酸化して液化した燃料を用いて硝酸と化学反応させることで電気としてエネルギーを得る事が出来る機構。反応物として水と魔硝酸を排出し、これらは空気中で脱水されることで魔硝酸の固体として固定される。魔硝酸自体には工業的使い道はないが、それを分解し精錬すれば、再び魔晶石に戻すことも出来る、が。窒素酸化物を排出するため、世界的に規制がかかる(かもしれない)。 ジンジャエール:生姜をどうにかすると出来るらしい飲み物。ひつじの好物。カナダドライのエクストラジンジャーは最高だったと思う。 水素イオン干渉電池:ゴーレムが飲み水や食物から得た水素を特殊な人造酵素(早い話ナノマシン)を用い、重合することで容易に核融合を起こせる状態にして蓄積し、核融合により得られるエネルギーを元に発電する電池。たぶん某州知事の中に入ってるのと似た感じ(ターミネーター3、4参照)。重合窒素は減圧するとふつうの水素に戻るため、核爆発はしないが、それでもむやみにPX-001シリーズを攻撃するのはイクナイ(大爆発するよ)。 脳周波:知的生物の生み出す良く分からない波長。デンパ。30まで童貞や処女を貫くとこれが出るようになり、魔法が使えるらしい。この脳周波を先天的に獲得している人は魔法の素養があり、魔術師とかになれる。ひつじはあと9年で使える。 水晶式通信機:魔石の成分を含んだケイ素化合物の結晶(水晶)を用いて、遠くの人々と交信する事が出来る機械。速い話、鉱石ラジオ。ロナウドはごみの中から掘り出して、修理して使っている。 PX-001:真葛博士がとある軍と共同開発した戦闘用ゴーレム。人間同様知能を持ち、ルーンは内蔵されている脳領域という機構に記録され、容易には書き換える事が出来ない。そのため、柔軟に命令に対応でき、戦況に応じて戦うため、他のゴーレムとは隔絶された高性能を誇る。顔やボディは216種類から選べ、今ならユニ○ロのフリース張りにバリエーションがある。お値段は、1体で家が買えるぐらい。精液が要らないので魔物娘としてはいらない子。 PXW-001(アルマ):真葛博士がPXシリーズの実験段階で最高の技術を用いて作った超高性能ゴーレム。PX-001はガチで戦向けだから、頑丈だが、アルマの身体は生体素材が使われ、人と同じく怪我もするし、自然治癒力もある。しかし、人間とは違い、血液では無く、浸透性のゲルで細胞に栄養を送り、細胞自体ほぼ独立栄養を獲得しているため、老廃物は出ず、血管も無く、代わりに発生した熱エネルギーを循環式の冷却機構が吸熱し、心部の水素イオン干渉電池の発電力に回すことが出来る。つまり機械と生物のハイブリット。そのため、PXに比べ、多彩なオプションや、強力な武器を装備可能。しかし、PXと違い、装備の入れ替えは生きている細胞をオペで切除し、内部機構をいじらなければならないので、あまりフレキシブルではない。外見は真葛博士の初恋の人がモデル。超美人。彼女1人で小さな国が買える。でも買ったら買ったで、フユも付いてくる(しかも咬みつく)。あまりエネルギーを使いすぎると、精液を吸収しないといけなくなってしまうというおいしい設定。 真葛夏彦:ルガンゼロきっての天才科学者。その昔ほかの国で下層階級の家に生まれ、差別と貧困に喘いでいたが、後の妻であるアキに拾われ従者を経て結婚。学問に秀でた才を見せ、ルガンゼロの科学技術振興財団の主任科学者にまで上り詰める。しかし戦争に使う兵器ばかりを研究させられ、いろいろと思い悩んでいたところで事故死してしまう。その時、アルマは彼の秘書的な立場にあった。 真葛斑結(ふゆ):主人公。父と同じく幼いころから天才と呼ばれていた。しかし、父の事故によって大きな負債を抱えた科学技術振興財団がその責任を彼女に求めたため、アルマが黙って彼女をルガンゼロから連れ出して、逃亡した。実験の失敗によって発情してしまう体質に。あと、アルマの作ったお薬でアレを生やすこともできる。 魔石圧縮式蒸気機構:魔石の加圧すると多量の熱を発しながら燃えるという性質を利用し、蒸気を沸かしてその力を動力とする動力機構。エネルギー効率が悪く、魔石の採掘量も減ってきているので廃止に向かっている。白い煙を吐きながら走るその姿は男のロマン。 ルイ:戦場のヴァルキュリアをプレイし終えて、なんとなく書いたキャラ。ぶっちゃけ、ウェル○ン。 シャルア:マミー。生前から酒を飲むとルイに甘える癖があったが、今では渇くと甘える。甘えだしたら手に負えない。最初はルイに合わせてヴァルキュリアのツインテさんにしようと思ったが、ツンデレはすでにいたので、やめておいた。 情報電位伝達ケーブル:神経生物学の講義中にふと思いついて書いてみた機能。アメリカのソーンさん(だっけ?)が真剣にこれを使って電脳化を実験してる。自分や妻の身体で実験するあたりがさすがアメリカ人。下手したらこれを使って他者の身体を操ったり、意識をネットを通じて飛ばすことが出来る時代が来るかも。ひつじは絶対に来てほしくないと考えてる。 防御機構構成体(ゴーレム):古代のゴーレム。ムクシャ文明以前に作られた彼女らを呼び出す機能をムクシャ人が作った。彼女らは呼び出される時のルーン文字の命令に従うようにプログラムされているため、ムクシャ人の防御機構として働いている。作ったのはクレメンツィア達の文明。モデルは仁瓶先生のブラムのセーフガード。このお話で呼び出されたのは体内の核を中心として体構造を自由に変換できるタイプ。他にもいろいろなゴーレムが作られていたらしい。感情は無い。 正電式分子間力切断刀(冬峰):真葛夏彦原案、真葛斑結改良制作の世界に一振りしかない刀。強力な正電荷を刀身に帯電させることで触れた分子の電子を拘束、あるいは吸収する事で、分子間力を奪い、強制的に分子を崩壊させる。どんな物でもすっぱり切れる。こんにゃくも切れる。3分でオーバーヒートして使えなくなる。しかも時間が経てばたつほど衝撃には弱く脆くなる。しかも断面は綺麗に分子が切断されているため、すぐにくっつければ再び繋がってしまうぐらいに綺麗に切れる。ってか、ある程度加熱されてると、正電荷云々というより、焼きゴテとして使った方がましかもしれないぐらい高熱になる。たぶん実際に作ったら、振るだけで水蒸気爆発やらなんやら起こって大変な事になる。空想科学っていいね。 複重合窒素砲:窒素爆弾(エヴァのN2爆雷参照w)を空気中の窒素を圧縮して撃ち出せるようにした大砲。弾は無限だが、消費電力も恐ろしく、チャージにも時間がかかる。マックスチャージするとたぶんファンタジーな事にはならないことになる。重合窒素(ポリ窒素)はめちゃくちゃ不安定なのですぐ爆発してしまうため、プラズマ磁界を球状に作りだし、外界と遮断された空間を内部に作り出すことでプラズマ磁界が発生している間は安定している。でも、衝撃を受けたり、何かにぶつかるとすぐ爆発する。ぶっちゃけ、砂漠以外で使い道ない。しかもプラズマとかちゃんと調べないでひつじが書いてるから、本当にやったら安定しないと思う。はいはい、空想科学空想科学w 古代文明(クレメンツィアの文明):科学や魔法の力に頼りすぎ、滅びてしまった文明。実際には滅びる直前で皆考え方を改め、どうにか世界の崩壊だけは避ける事が出来た。魔法も科学も有限の力であるという事に最後になるまで気付けなかったかわいそうな文明。クレメンツィアはそれらをすべて自分の責任であると感じ、眠りにつくことにした。数千年に一度だけ目覚めて、世界がどうなったのかを観察している。その時世界に自分は干渉しないと心に誓っている。はてさて、気づいた人もいるかもしれませんが、女王様のいたあの場所、外よりも時間が経つのがとても遅いです。そしてその中でアルマは6千年前だと言っておりました。あの中での6千年は、外では何億年ぐらい前なのでしょうねw ムクシャ文明:古代文明の後に発足した文明。古代人たちが破棄した技術を掘り出し、自分たちの文明の発展に使おうとした文明。しかし、原理を知らないまま多大な力を手に入れてしまった為に、終にはそのまま力に押しつぶされ、滅びてしまう。当時の王族は、国が滅びた大災厄(古代技術の暴走)から生き伸び、その恐ろしさを身をもって知ったため、ガルナバンの王族として、二度と世界に古代文明の技術が広まってしまわないように見張っている。 ち、違うんだ。中二病じゃないんだ。た、ただ大人になりたくないだけ。 09/11/05 09:07 ひつじ |