変異結合とその実例
私の心はボース・アインシュタイン凝縮。
耳から入った不要な言葉は超電導で抜けていく。
胸に秘めるは一次元箱型ポテンシャル。
箱に詰まった言葉は行き場を失い凍ったままだ。
不確定性原理に詰まった心の粒子は無任意のスピン磁気量子に引き寄せられ、任意の軌道関数を示した。
そして、絶対零度は解かれる。
私の視線がランベルト・ベールの法則に導かれた先に吸光されたのはたった一人の少女だった。
「ファン・デル・ワールス力」
変異結合とその実例
「ファン・デル・ワールス力」
私の前に突然突き出された右手。
「ふぁ、ふぁんでる?」
「無属性分子の分子間力の一つ」
…えっと。
私はどうすればいいんだろう。
長い黒髪に同じく長い前髪。
顔の半分までかかった前髪の下からのぞく楕円の眼鏡と、どこまでも底の見えない真っ黒な瞳に灯火のような光を湛えて、彼女は無表情にこちらを見つめている。
髪が長すぎるのか、この子が小さすぎるのか髪が地面までつきそうになってる。
その小さな頭にはロシアの人が被るみたいなフサフサの帽子がちょこんと乗っている。
帽子も来ているロングコートもこの子にはすべて大きすぎるみたいにぶかぶかだ。
私がそうやって女の子を観察している間もじっと彼女は私を見ている。
新手の宗教勧誘だろうか?
「えっと…うちの実家は神社ですが…」
私が言うと、彼女は首を数ミリほど傾げてから、
「…カテナンの様な関係からで構わない」
「か、かて?…お茶に入ってるやつ?」
「お茶が飲みたいの?買ってくる」
そう言うと、女の子はとことこと走り出してどこかに行ってしまう。
「ほ…」
変な汗をかいていた。
「買ってきた」
「ひっ…」
突然下の方向から差し出されるペットボトルに入ったお茶。
毛糸のミトンに包まれた小さな手は揺れることなくしっかりと伸びて私の目の前にお茶を突き出す。
「冷たいほうが良かった?」
彼女はまた無表情のまま首を微かに傾ける。
「い、いえ。暖かいので…」
私は突き出されたままのペットボトルを受け取る。
するとすぅっと彼女の手が下りていく。
私がしばらくそのままでいると、
――じぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
彼女はじっと私の顔を見詰めたままでいた。
……えと…。
これ、飲んだ方がいいのかな?
「…………」
「………………(じぃ〜〜〜〜)」
私は意を決してペットボトルの中身を傾けた。
飲みなれたしぶ甘い味が口の中に広がる。
すると、女の子は一度瞬きして、
「君の名前」
「え?」
「君はなんという名前だ?」
「こ、此花圭(このはな けい)です!」
「そうか…。また…」
女の子は再びとことこと走って行ってしまった。
そのあと気がついた。
思わず言ってしまった名前。
もしかしたらまずかっただろうか…。
詐欺とか宗教とかだとまずい気がする。
私はそれを気にしながらも授業のチャイムを聞いて、教室に走った。
授業を終えて図書室でレポートを書きあげる。
私は保存のボタンをクリックして作業を終える。
そしてふと思い出した。
あの女の子のこと。
どうしてこの大学にいたんだろう…。
背丈とかはどう見ても中学生か小学生。
でも、彼女は出口ではなく理系の施設のある西エリアに走って行った。
っていうか、聞きなれない言葉をしゃべってた。
…ふぁん…なんだっけ……。
彼女はいったい何者なんだろう。
そう言えば…、
「『また…』って…」
また来る気なのだろうか。
「…帰ろう」
私はパソコンをカバンにしまうと図書室を後にした。
――ガチャガチャ
「………えと…」
「…絶縁素子を取り除いて化学親和力を結ぼうとしていた」
彼女がなぜか私のアパートの私の部屋の扉の前で2本の工具のようなものを鍵穴に突っ込んでガチャガチャと何かやっていた。
……どうしよう。
お巡りさんを呼ぶべきなのだろうか。
で、でも理由も聞かずにいきなりお巡りさんを呼ぶのもかわいそうかもしれない。
もしかしたら法を犯してまでやらなければならないことがあるのかもしれない。
実際、絶縁がどうのとか親和力がとか言ってたし…。
「えと…な、何をしてるんですか?」
「内部と私を遮断するアルミ合金製の扉を開いて中へ入ろうとしていた」
「……えと、なんで?」
「此花圭に用があった。大学の生徒名簿に侵入して登録住所を調べた。苗字が少数派であった為、すぐに見つけられた」
へぇ〜生徒名簿で。
そう言えば入学するときに登録したっけ…。
あれ?
あれってだれでも見れるんだっけ!?
確かセキュリティーがかかってて学校関係者以外は見れないはず…。
しかも侵入してって…ハッキング!?
…犯罪だ!
どうしよう。どう考えても犯罪だ。
で、でもこんな小さな子が大学のコンピュータにハッキングするなんて…。
な、何かの間違いよね…。
「…よ、用って何かしら?」
「……話すと長くなる」
「そ、そう。ならお茶でも飲んでく?」
「――――――で、此花圭に吸光度係数を感じた。だから声をかけた」
「そ、そうなんですか…」
彼女の言葉の9割弱が理解できなかった。
日本語のはずなのに。
あれ?っていうか、なんで私、この子を部屋に入れてるの!?
――ズズズ…
彼女は私の湯のみで無表情のままお茶をすする。
私もつられてマグカップに入ったお茶をすする。
「…ほ」
なんだか部屋に私以外が居るなんて久しぶり。
一人暮らしのさみしさから少し解放されてほっとする。
…………。
って、そうじゃないでしょ!
なんで見知らぬ女の子が私の部屋にあがりこんで和やかにお茶を一緒に飲んでるの!?
「え、えっと。あ、あなたのお名前は?」
「クロム。原子番号24、Crと同じ名前。そうすれば覚えやすい」
原子番号?Cr?余計に覚えにくい。
「く、クロムちゃんね。が、外国の人?」
「外国ではない。言うなれば多次元における空間ベクトルの座標中に――――」
「え、えっと…その…言いにくいんだけど…」
「どうした?」
「さっきからあなたが言ってるその次元がなんだとか何々の法則が〜とか、全然わからないの…。できれば私にもわかるように話してもらえると…」
「…すまない。これは癖。あと、私のことはクロムと呼んで」
どんな癖!?
「……私はこの世界ではない処から来た」
「…………」
や、やっぱり新しい宗教か何かの勧誘かしら?
「え、えっと…。わ、私宗教とかに興味は…」
「宗教?よくわからない。だが、大丈夫だ。私は此花圭に危害を加えるつもりはない」
危害を加えるつもりはない。
ということは、この子、安全なのかな?
で、でも、とっても怪しく見える。
「えっと…。あなたもあの大学の生徒なの?」
「クロムと呼んでほしい。 私は、留学生と偽ってあの大学に編入した」
「そう。偽って…」
留学生なんだ。
じゃあ、やっぱり外国人なのかな?
………ん?
偽って?
やっぱりこの子、犯罪者!?
「あ、あの。私はあなたのこt」
「クロムと呼んでほしい」
「えっと。クロムちゃんのことを警察さんに連絡した方がいいのかな?」
「…その必要はない。私は捕まるようなことはしていない」
そっか。
なら別に大丈夫よね。
…って!
色々と法に触れることをしているわ!
私は机の上の携帯に手を伸ばそうとした。
「私はここにきて科学を学んだ。この世界の科学レベルはひとしきり理解した。とても興味深かった。しかし、これ以上覚えるものがなくなっていたのでとても退屈していた」
「へぇ〜。クロムちゃん、頭いいのね」
「時を止めて図書館中の本を全て読んだ。そうしなければとても覚えられない。私の体感時間では総計482年ほどかかった。しかし現実世界では1年と164日」
「すご〜い!」
そ〜か〜。
時を止めて…。
時を止めて!?
「そ、その…」
「どうした?」
「わ、私の聞き間違いかもしれないんだけど、時を止めたって?」
私は落ち着きなく携帯のストラップをいじる。
あれ?なんで携帯持ってるんだっけ。
私は携帯を机の上に戻した。
携帯のボディにデジタルの文字で20:42と表示される。
「魔法を使った。この世界とは別の方法で発展した技術。原理は不明な点が多く、科学ほど建設的ではない。しかし、便利」
「魔法?あの、ハリーポターみないな?」
「少し違う。しかし、類似点も多い」
「すっご〜い!クロムちゃん、魔法使いなの!?」
「それは違う。私は魔物と呼ばれる存在」
「魔物?あの、ゲームとかの怪物みたいなの?」
「それも違う。恐らくは人間とは異なった進化をたどった生物が起源と思われる。しかし、現在の魔物は魔王の魔力波干渉によって形態や性質を改変され、人間の雌と類似した姿を持つものが多い。ちなみに、私はサキュバスと呼ばれる種に属する。種族的特徴は魔力エネルギーを多く有し、人間と酷似した形態と身体的性質を持つ。しかし、消化器官は特殊で、人間の雄個体から精液を主食とする。私の推測では、正確にはそれに含まれる生命エネルギー結晶超臨界流体を摂取することで人間に比べ膨大な量の魔力や強靭な骨格筋を活動させるためのエネルギーを得ていると推測される。その消化器系には魔力干渉する特殊なアロステリック酵素が…」
「…zzz」
「…寝たのか」
「…ふぇ?ね、ねてまふぇん!ねてましぇんよ!」
私は飛び起きて垂れそうになってたよだれをずずっと吸い込んだ。
「つまらなかったか?」
「わからなかった」
「そうか」
「と、とにかく、クロムちゃんは人間じゃないの?」
「そうだ」
「でも、人間と何も変わらないように見えるよ?」
「…わかった。証拠を見せる」
印籠だ!印籠が出るんだ!
そして、はは〜!って…、あれ?
クロムちゃんは突然服を脱ぎ始めた。
手足細いな〜。脚も長くてきれい。
さすが外人さんだな〜。
って、
「なんで脱ぐの!?しかも下着まで!」
クロムちゃんは躊躇することなく下着まで脱ぎ終えて、恥ずかしがるそぶりも見せず堂々と私に向きなおった。
背が低いクロムちゃんは立つとちょど座った私の目線の高さにピンク色の可愛い乳首が来る。
自分以外の女の人の裸、お風呂以外で初めて見た…。
って!
ちがうちがう!
なんで脱いでるの!?
「脱がないと証拠が見せられない。よく見て」
すると、突然クロムちゃんの背中から黒い翼が、お尻の少し上からアンパンマソのバイキンマソみたいなハート形の尻尾が、頭にはクルンとした羊みたいな角が生えた。
「あくま?」
「サキュバス」
「…ふぉお〜。触っていい?」
「…いい」
――ピクピク
――さわさわ
――ビクン
「ふぉお〜…」
――さわさわ
――ビクンビクン!
――すりすり
「…あひゃう!」
「ふえ?」
「し、尻尾はとても敏感…。なにをしている?」
「え?ああ。クロムちゃんの尻尾すべすべで気持ち良くて…」
私は頬ずりしていたクロムちゃんのほんのり暖かいしっぽを惜しみながら手放した。
「サキュバスは人間の雌固体に比べ触覚電位ニューロンでのドーパミン分泌量が数倍から数十倍と高い。その上前頭葉並びに大脳辺縁系、黒質下部の構造が部分的に発達しており、性的欲求が強い。あまり敏感なところを触られると、我慢が出来なくなる」
「がまん?」
「こういうこと……(きゅ)」
クロムちゃんの白いほっぺが林檎色に染まって私の腰にきゅっとしがみついた。
あ、なんかお母さんに甘える子供みたいでかわいい。
「…………(ぴょんぴょん)」
「…?」
クロムちゃんが私の足元でピョンピョンと飛び跳ねる。
…ああ。抱っこしてほしいのかな?
「これでいい?」
私はクロムちゃんの両脇の下に腕を回すとクロムちゃんの身体を抱き上げた。
クロムちゃんの身体は暖かくてすべすべしてて細くて軽い。
「………少し、想定していたものと違う…。でも問題はない」
――ちゅ
「っ!?」
唇が暖かくてふわふわの触感で満たされる。
同時にぬるりと口の中に侵入してくる感触。
そして、暖かい液体がのどを伝って流れていく。
私は思わずごくりと飲み込んでしまった。
――ぷは
唇が離れて、ぼやけた視界が戻る。
クロムちゃんが少し恥ずかしそうに無表情の頬を赤く染めて、少し潤んだ瞳で私を見ていた。
かわいい。
はれ?
なんだか頭がくらくらする。
「……ベッドに行った方がいい」
「…うん」
私は言われるままベッドに横になった。
心臓がドキドキする。
頭がぼぉ〜っとする。
身体中が熱くなってくる。
「なにぃ?これぇ?」
「私の唾液を注ぎ込んだ。血液脳関門を透過する強力なアゴニスト。化学シナプスの一部に強い生理作用を及ぼす」
「のう?あご?」
「…強力な媚薬」
「びやく?」
「……すぐにわかる」
「ふあぁ〜」
クロムちゃんが私にまたがったまま私の服を脱がしていく。
ねぼすけのお父さんが娘に起こされて着替えしてる時ってこんな感じなのかな?
気が付いたら下着も全部脱がされてた。
「…着やせするタイプ?」
「…うん。そうかもぉ」
「……I65」
「私のブラジャー返して〜。それないとすごく邪魔になる…」
「………挑発と受け取った」
「え? ……ひゃぁん!」
クロムちゃんがおっぱいを揉みしだく。
すごく乱暴に見えるのに…変。
「気持ちいい…」
「サキュバスの身体から分泌される媚薬は特殊。あらゆる刺激を快感と誤認させる作用がある。さらに極度の興奮状態。発情状態をある程度継続させる。不感症でもイチコロ」
「だめだよぉ〜。エッチなことするの、大人になってからは我慢してたのに〜」
「思春期を過ぎてもエッチは大切。我慢してはダメ」
クロムちゃんの小さな手が私の汗で滑りながら私の身体をくまなく撫でる。
優しく、強く。
「へんだよぉ〜。ダメなはずなのに…。もっとしてほしくなっちゃう」
「脳は快楽的刺激を受けることで正常な働きを保っている。脳は快楽を欲するようにできていると言い換えられる」
「ふぇ?」
「気持ちいいのは悪いことじゃない。むしろいいこと。もっと欲しがるべき」
「…副作用とかないよね?」
「……………気にしてはいけない」
「ぅやだぁ〜〜!でも、きもちいいよぉ〜」
「…セックスも酒やたばこのようなもの」
「依存性があるって事!?それ、だいじょうぶなの!?」
「………… 問題ない」
「その“間”はなに〜〜〜!?」
頭が真っ白になる。
クロムちゃんが微妙に怖いこと言ってるけど、そんなことどうでもいいように感じてくる。
「サキュバスの中では私はこういうのは苦手な方。でも、人間よりうまい自信はある」
「うん〜。とっても、気持ち良かったぁ〜 って、あれ?なんで私クロムちゃんとエッチしてるの?」
「……………発端となるような言葉はなかったように思う。いうなれば、その場の流れ」
「そっか〜」
何だかそんなことはどうでもよくなってきた。
気持ちいい。
見ると寄り添うように私の隣にいる裸のクロムちゃん。
私の汗に濡れて身体がツヤツヤしてる。
なんか、とってもやらしい。
でも、すごくかわいい。
「………///」
私が見つめていると、頬がみるみる赤くなっていくクロムちゃん。
あ、眼鏡が曇った。
「眼鏡をはずすしかない。私はこれをはずすと…」
「ど、どうなるの!?(ごくり)」
シャキーン!ってパワーアップするとか!?
「視界が利かなくなる。でも、今はエッチの方が大切」
「………はぁ」
「……… どうやら、期待に添わなければいけない。私も本気出す」
「え?」
そう言うとクロムちゃんは尻尾を取り出した。
「強すぎたら、ごめんと言わざるを得ない」
「――ひゃあ!」
何今の!?
突然目の前が真っ白になってチカチカした。
「此花圭の初めてをもらった。媚薬の影響で痛みは感じないはず」
「え?」
私が快楽のベッドに横たわってるような気分の中、クロムちゃんが尻尾を見せてくれた。
鮮やかな色の血が先端についていた。
「尻尾を一生洗えないレベルの感動」
「…そんな、あこがれの歌手と握手したみたいな…」
「とてもうれしい。もっともっと気持ち良くしなければ」
クロムちゃんが再び私のそこに尻尾を侵入させた。
続々と背中が浮くほどの快感が走る。
「ひゃう〜。きもちいいよぉ〜」
「これからが本番」
そう言ってクロムちゃんが私のおっぱいを咥えこむ。
あ、なんか乳離れができない子みたい。
「これから此花圭をもっともっと気持ち良くする。準備はいい?」
「…圭って呼んで」
「圭…。いく」
「うん」
クロムちゃんが私のおっぱいを舌で転がすように刺激する。
敏感な乳首をにゅるにゅると刺激され、反対側のおっぱいも手でくねくねともみしだかれる。
すごく気持ちいい。
「ひゅごい〜。ひゅごいよぉ〜」
「…ちゅ。あむあむ」
――ビクンビクン
私の身体が跳ねる。
びりびりと刺激が快感と成って全身に広がっていく。
そして、
「あひゃぁぁぁ!」
そこに挿入されていた尻尾が動き始める。
おっぱいばかりに気を取られてて不意を突かれてまた真っ白になってしまった。
それでも、クロムちゃんはまだ攻めの手を緩めない。
――くっちゅくっちゅ
――ちゅぱちゅぱ
――あぁん。ひぃぅ
いやらしい音がぼんやりと頭から離れるように遠ざかり、
――ドクん
心臓の鼓動と共に戻ってくる。
「けい〜。けい〜」
あ、クロムちゃんが私の名前を呼んでる。
いつの間にか両手でおっぱいを揉みながら、無表情だった顔を気持ちよさそうにゆがめて私の上で腰を振りながら喘いでる。
かわいい。
クロムちゃんかわいいな。
そっか。
クロムちゃん、尻尾敏感だって言ってたもんね。
クロムちゃんが私のオマンコで気持ち良くなってるんだ。
…もっと気持ち良くなってほしい。
「けい〜。…っ!?」
「ちゅ」
私はクロムちゃんを抱きよせてキスをした。
可愛い唇が一瞬おびえたように震えて、ふわりと柔らかくなる。
私はクロムちゃんがやってくれたみたいに下を入れてクロムちゃんの小さな舌を舐めまわす。
ついでにほとんど膨らんでいないクロムちゃんのおっぱいをスリスリと刺激する。
「んんっ!ん〜」
「ん〜。ん…」
ずっとキスしてるから、クロムちゃんの声が頭の骨を伝って響いてくる。
クロムちゃんとすっごくくっついてるみたいで嬉しくなる。
――ちゅ
唇が離れる。
銀色の糸が伸びて、クロムちゃんが仰け反る。
「ひゃぁぁぁぁぁぁっ!」
クロムちゃんの尻尾が何度か膨らんで。
――びゅっ!びゅ!びゅぅぅ!
おなかの中に熱いものが注ぎ込まれた。
その瞬間、私は今まで感じたことがないほど気持ち良くなって上も下も前も後ろもわからなくなって落ちて行った。
夢の中でクロムちゃんを膝に乗せてる。
クロムちゃんは無表情なまま分厚い本を膝の上に乗せてペラっとページをめくる。
細かい字がびっしりと並んだ本。
内容は科学のことばかりで私には理解できない。
でも、膝から伝わる暖かさと心地よいしびれが私を嬉しくさせる。
クロムちゃんのおなかのところに手をまわしてキュって抱きしめる。
クロムちゃんの頭に首筋をくっつけて、体温を感じる。
甘いにおいがする。
――はぁ、はぁ…
意識が戻ってきた。
クロムちゃんはぐったりとして私にきゅっとしがみついて、仰向けの私のおなかの上に乗っていた。
二人とも汗でべたべただけど、全然気にならなかった。
ううん。むしろ、暖かくて気持ちいい。
私はクロムちゃんの小さな体を抱きしめる。
密着した身体からクロムちゃんの鼓動が聞こえる。
――トクン…トクン…
ふと、思い返してみる。
クロムちゃん、変な子だけど、そんなの気にならなくなるくらい、今は好きになってる。
今日はじめてあったはずなのに、ずっと前から大切な存在だったみたいに感じられて。
本当に不思議。
――むくり
私がクロムちゃんの頭を撫でてたら突然起き上がった。
「…サキュバスとして、恥ずかしいところを見られた」
「とっても可愛かったよ」
「……しかも、あまりの気持ち良さに、射精時に送り込んだ精液の魔力含有量が少なかった」
「え?」
「圭がサキュバスになっていない。失敗した」
「!? 私を魔物にしようとしてたの!?」
「そのつもりだった。失敗した」
「…もう」
「心配しなくてもいい。魔物になれば、ずっと一緒にいられる」
「…むぅ〜。でも、なんか抵抗あるなぁ」
「そうか。じゃあ、圭を魔物にするのは今のところは諦めておく」
「『今のところは』?」
「もっともっと圭を気持ちよくさせて、そのうち、自分からなりたいと言わせる」
「……じと〜」
「しら〜 …心配しなくても、圭が自分で言うまでは我慢する」
「……まぁ、そうして」
「…ってことで(シャキン)」
「なっ!」
突然クロムちゃんが注射器を持って私に襲いかかってきた。
私はそれをとっさに避けた。
「そ、それはなに!?」
「大丈夫。私が調合した母乳促進剤。副作用として乳房全体が敏感になったりするが、特に問題ない」
「そんな怪しげなものは没収です!」
そう言ってクロムちゃんの手から注射器を取り上げる。
「ああ…」
あ、少し残念そうな顔をした。
「…まぁいい。また作れる…」
こうして、クロムちゃんと仲良くなった。
「…えと…、これはなに?」
「私のラボへの扉。空間を魔法で少しいじって取り付けた。絶対に入っちゃだめ。ついでにこの部屋に特殊な防音加工を施した」
「……ここ、私のアパート」
「知っている」
「……ここ、私の部屋」
「知っている」
「……なんでクロムちゃんが!?」
「家賃を滞納していたらアパートを追い出された。これからはここに住む」
こうして、クロムちゃんが居候することになった。
やっぱり、クロムちゃんは変な子だ。
「………ところで、クロムちゃん何歳?」
「…百………。思い出せない。あとで数えておく」
「…クロムおばあちゃん?」
「……む。それは圭でも許せない発言。私を貧乳と馬鹿にしたことも含めて、お仕置きが必要」
「ちょ、その注射器は何!? ってか、貧乳言ってない!」
「今言った。 成長因子変転剤。これを打てばたちまち誰でもロリショタに。1週間はこのロリ体系の苦痛を味わってもらう。今ならこの万能翻訳機を装着して語尾に『にゃん』を付けないとしゃべれない様になるサービスも付く」
「……ごめんなさい」
こうして私の日常は非日常な毎日になってしまった。
私の心は共有結合。
彼女の心と結びつく。
胸に秘めるは多次元存在比。
私の心は自由に踊りまわる。
孤独に固定されていた電子対は、彼女の心と結びついてその軌道を変えていく。
どんどん上昇していく心の温度は臨界を超えて膨張していく。
私のそばにはいつも彼女が居てくれる。
不安定な心の電子対は平衡を取り戻し安定した。
魔物と人間、不安定に安定した変異結合。
耳から入った不要な言葉は超電導で抜けていく。
胸に秘めるは一次元箱型ポテンシャル。
箱に詰まった言葉は行き場を失い凍ったままだ。
不確定性原理に詰まった心の粒子は無任意のスピン磁気量子に引き寄せられ、任意の軌道関数を示した。
そして、絶対零度は解かれる。
私の視線がランベルト・ベールの法則に導かれた先に吸光されたのはたった一人の少女だった。
「ファン・デル・ワールス力」
変異結合とその実例
「ファン・デル・ワールス力」
私の前に突然突き出された右手。
「ふぁ、ふぁんでる?」
「無属性分子の分子間力の一つ」
…えっと。
私はどうすればいいんだろう。
長い黒髪に同じく長い前髪。
顔の半分までかかった前髪の下からのぞく楕円の眼鏡と、どこまでも底の見えない真っ黒な瞳に灯火のような光を湛えて、彼女は無表情にこちらを見つめている。
髪が長すぎるのか、この子が小さすぎるのか髪が地面までつきそうになってる。
その小さな頭にはロシアの人が被るみたいなフサフサの帽子がちょこんと乗っている。
帽子も来ているロングコートもこの子にはすべて大きすぎるみたいにぶかぶかだ。
私がそうやって女の子を観察している間もじっと彼女は私を見ている。
新手の宗教勧誘だろうか?
「えっと…うちの実家は神社ですが…」
私が言うと、彼女は首を数ミリほど傾げてから、
「…カテナンの様な関係からで構わない」
「か、かて?…お茶に入ってるやつ?」
「お茶が飲みたいの?買ってくる」
そう言うと、女の子はとことこと走り出してどこかに行ってしまう。
「ほ…」
変な汗をかいていた。
「買ってきた」
「ひっ…」
突然下の方向から差し出されるペットボトルに入ったお茶。
毛糸のミトンに包まれた小さな手は揺れることなくしっかりと伸びて私の目の前にお茶を突き出す。
「冷たいほうが良かった?」
彼女はまた無表情のまま首を微かに傾ける。
「い、いえ。暖かいので…」
私は突き出されたままのペットボトルを受け取る。
するとすぅっと彼女の手が下りていく。
私がしばらくそのままでいると、
――じぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
彼女はじっと私の顔を見詰めたままでいた。
……えと…。
これ、飲んだ方がいいのかな?
「…………」
「………………(じぃ〜〜〜〜)」
私は意を決してペットボトルの中身を傾けた。
飲みなれたしぶ甘い味が口の中に広がる。
すると、女の子は一度瞬きして、
「君の名前」
「え?」
「君はなんという名前だ?」
「こ、此花圭(このはな けい)です!」
「そうか…。また…」
女の子は再びとことこと走って行ってしまった。
そのあと気がついた。
思わず言ってしまった名前。
もしかしたらまずかっただろうか…。
詐欺とか宗教とかだとまずい気がする。
私はそれを気にしながらも授業のチャイムを聞いて、教室に走った。
授業を終えて図書室でレポートを書きあげる。
私は保存のボタンをクリックして作業を終える。
そしてふと思い出した。
あの女の子のこと。
どうしてこの大学にいたんだろう…。
背丈とかはどう見ても中学生か小学生。
でも、彼女は出口ではなく理系の施設のある西エリアに走って行った。
っていうか、聞きなれない言葉をしゃべってた。
…ふぁん…なんだっけ……。
彼女はいったい何者なんだろう。
そう言えば…、
「『また…』って…」
また来る気なのだろうか。
「…帰ろう」
私はパソコンをカバンにしまうと図書室を後にした。
――ガチャガチャ
「………えと…」
「…絶縁素子を取り除いて化学親和力を結ぼうとしていた」
彼女がなぜか私のアパートの私の部屋の扉の前で2本の工具のようなものを鍵穴に突っ込んでガチャガチャと何かやっていた。
……どうしよう。
お巡りさんを呼ぶべきなのだろうか。
で、でも理由も聞かずにいきなりお巡りさんを呼ぶのもかわいそうかもしれない。
もしかしたら法を犯してまでやらなければならないことがあるのかもしれない。
実際、絶縁がどうのとか親和力がとか言ってたし…。
「えと…な、何をしてるんですか?」
「内部と私を遮断するアルミ合金製の扉を開いて中へ入ろうとしていた」
「……えと、なんで?」
「此花圭に用があった。大学の生徒名簿に侵入して登録住所を調べた。苗字が少数派であった為、すぐに見つけられた」
へぇ〜生徒名簿で。
そう言えば入学するときに登録したっけ…。
あれ?
あれってだれでも見れるんだっけ!?
確かセキュリティーがかかってて学校関係者以外は見れないはず…。
しかも侵入してって…ハッキング!?
…犯罪だ!
どうしよう。どう考えても犯罪だ。
で、でもこんな小さな子が大学のコンピュータにハッキングするなんて…。
な、何かの間違いよね…。
「…よ、用って何かしら?」
「……話すと長くなる」
「そ、そう。ならお茶でも飲んでく?」
「――――――で、此花圭に吸光度係数を感じた。だから声をかけた」
「そ、そうなんですか…」
彼女の言葉の9割弱が理解できなかった。
日本語のはずなのに。
あれ?っていうか、なんで私、この子を部屋に入れてるの!?
――ズズズ…
彼女は私の湯のみで無表情のままお茶をすする。
私もつられてマグカップに入ったお茶をすする。
「…ほ」
なんだか部屋に私以外が居るなんて久しぶり。
一人暮らしのさみしさから少し解放されてほっとする。
…………。
って、そうじゃないでしょ!
なんで見知らぬ女の子が私の部屋にあがりこんで和やかにお茶を一緒に飲んでるの!?
「え、えっと。あ、あなたのお名前は?」
「クロム。原子番号24、Crと同じ名前。そうすれば覚えやすい」
原子番号?Cr?余計に覚えにくい。
「く、クロムちゃんね。が、外国の人?」
「外国ではない。言うなれば多次元における空間ベクトルの座標中に――――」
「え、えっと…その…言いにくいんだけど…」
「どうした?」
「さっきからあなたが言ってるその次元がなんだとか何々の法則が〜とか、全然わからないの…。できれば私にもわかるように話してもらえると…」
「…すまない。これは癖。あと、私のことはクロムと呼んで」
どんな癖!?
「……私はこの世界ではない処から来た」
「…………」
や、やっぱり新しい宗教か何かの勧誘かしら?
「え、えっと…。わ、私宗教とかに興味は…」
「宗教?よくわからない。だが、大丈夫だ。私は此花圭に危害を加えるつもりはない」
危害を加えるつもりはない。
ということは、この子、安全なのかな?
で、でも、とっても怪しく見える。
「えっと…。あなたもあの大学の生徒なの?」
「クロムと呼んでほしい。 私は、留学生と偽ってあの大学に編入した」
「そう。偽って…」
留学生なんだ。
じゃあ、やっぱり外国人なのかな?
………ん?
偽って?
やっぱりこの子、犯罪者!?
「あ、あの。私はあなたのこt」
「クロムと呼んでほしい」
「えっと。クロムちゃんのことを警察さんに連絡した方がいいのかな?」
「…その必要はない。私は捕まるようなことはしていない」
そっか。
なら別に大丈夫よね。
…って!
色々と法に触れることをしているわ!
私は机の上の携帯に手を伸ばそうとした。
「私はここにきて科学を学んだ。この世界の科学レベルはひとしきり理解した。とても興味深かった。しかし、これ以上覚えるものがなくなっていたのでとても退屈していた」
「へぇ〜。クロムちゃん、頭いいのね」
「時を止めて図書館中の本を全て読んだ。そうしなければとても覚えられない。私の体感時間では総計482年ほどかかった。しかし現実世界では1年と164日」
「すご〜い!」
そ〜か〜。
時を止めて…。
時を止めて!?
「そ、その…」
「どうした?」
「わ、私の聞き間違いかもしれないんだけど、時を止めたって?」
私は落ち着きなく携帯のストラップをいじる。
あれ?なんで携帯持ってるんだっけ。
私は携帯を机の上に戻した。
携帯のボディにデジタルの文字で20:42と表示される。
「魔法を使った。この世界とは別の方法で発展した技術。原理は不明な点が多く、科学ほど建設的ではない。しかし、便利」
「魔法?あの、ハリーポターみないな?」
「少し違う。しかし、類似点も多い」
「すっご〜い!クロムちゃん、魔法使いなの!?」
「それは違う。私は魔物と呼ばれる存在」
「魔物?あの、ゲームとかの怪物みたいなの?」
「それも違う。恐らくは人間とは異なった進化をたどった生物が起源と思われる。しかし、現在の魔物は魔王の魔力波干渉によって形態や性質を改変され、人間の雌と類似した姿を持つものが多い。ちなみに、私はサキュバスと呼ばれる種に属する。種族的特徴は魔力エネルギーを多く有し、人間と酷似した形態と身体的性質を持つ。しかし、消化器官は特殊で、人間の雄個体から精液を主食とする。私の推測では、正確にはそれに含まれる生命エネルギー結晶超臨界流体を摂取することで人間に比べ膨大な量の魔力や強靭な骨格筋を活動させるためのエネルギーを得ていると推測される。その消化器系には魔力干渉する特殊なアロステリック酵素が…」
「…zzz」
「…寝たのか」
「…ふぇ?ね、ねてまふぇん!ねてましぇんよ!」
私は飛び起きて垂れそうになってたよだれをずずっと吸い込んだ。
「つまらなかったか?」
「わからなかった」
「そうか」
「と、とにかく、クロムちゃんは人間じゃないの?」
「そうだ」
「でも、人間と何も変わらないように見えるよ?」
「…わかった。証拠を見せる」
印籠だ!印籠が出るんだ!
そして、はは〜!って…、あれ?
クロムちゃんは突然服を脱ぎ始めた。
手足細いな〜。脚も長くてきれい。
さすが外人さんだな〜。
って、
「なんで脱ぐの!?しかも下着まで!」
クロムちゃんは躊躇することなく下着まで脱ぎ終えて、恥ずかしがるそぶりも見せず堂々と私に向きなおった。
背が低いクロムちゃんは立つとちょど座った私の目線の高さにピンク色の可愛い乳首が来る。
自分以外の女の人の裸、お風呂以外で初めて見た…。
って!
ちがうちがう!
なんで脱いでるの!?
「脱がないと証拠が見せられない。よく見て」
すると、突然クロムちゃんの背中から黒い翼が、お尻の少し上からアンパンマソのバイキンマソみたいなハート形の尻尾が、頭にはクルンとした羊みたいな角が生えた。
「あくま?」
「サキュバス」
「…ふぉお〜。触っていい?」
「…いい」
――ピクピク
――さわさわ
――ビクン
「ふぉお〜…」
――さわさわ
――ビクンビクン!
――すりすり
「…あひゃう!」
「ふえ?」
「し、尻尾はとても敏感…。なにをしている?」
「え?ああ。クロムちゃんの尻尾すべすべで気持ち良くて…」
私は頬ずりしていたクロムちゃんのほんのり暖かいしっぽを惜しみながら手放した。
「サキュバスは人間の雌固体に比べ触覚電位ニューロンでのドーパミン分泌量が数倍から数十倍と高い。その上前頭葉並びに大脳辺縁系、黒質下部の構造が部分的に発達しており、性的欲求が強い。あまり敏感なところを触られると、我慢が出来なくなる」
「がまん?」
「こういうこと……(きゅ)」
クロムちゃんの白いほっぺが林檎色に染まって私の腰にきゅっとしがみついた。
あ、なんかお母さんに甘える子供みたいでかわいい。
「…………(ぴょんぴょん)」
「…?」
クロムちゃんが私の足元でピョンピョンと飛び跳ねる。
…ああ。抱っこしてほしいのかな?
「これでいい?」
私はクロムちゃんの両脇の下に腕を回すとクロムちゃんの身体を抱き上げた。
クロムちゃんの身体は暖かくてすべすべしてて細くて軽い。
「………少し、想定していたものと違う…。でも問題はない」
――ちゅ
「っ!?」
唇が暖かくてふわふわの触感で満たされる。
同時にぬるりと口の中に侵入してくる感触。
そして、暖かい液体がのどを伝って流れていく。
私は思わずごくりと飲み込んでしまった。
――ぷは
唇が離れて、ぼやけた視界が戻る。
クロムちゃんが少し恥ずかしそうに無表情の頬を赤く染めて、少し潤んだ瞳で私を見ていた。
かわいい。
はれ?
なんだか頭がくらくらする。
「……ベッドに行った方がいい」
「…うん」
私は言われるままベッドに横になった。
心臓がドキドキする。
頭がぼぉ〜っとする。
身体中が熱くなってくる。
「なにぃ?これぇ?」
「私の唾液を注ぎ込んだ。血液脳関門を透過する強力なアゴニスト。化学シナプスの一部に強い生理作用を及ぼす」
「のう?あご?」
「…強力な媚薬」
「びやく?」
「……すぐにわかる」
「ふあぁ〜」
クロムちゃんが私にまたがったまま私の服を脱がしていく。
ねぼすけのお父さんが娘に起こされて着替えしてる時ってこんな感じなのかな?
気が付いたら下着も全部脱がされてた。
「…着やせするタイプ?」
「…うん。そうかもぉ」
「……I65」
「私のブラジャー返して〜。それないとすごく邪魔になる…」
「………挑発と受け取った」
「え? ……ひゃぁん!」
クロムちゃんがおっぱいを揉みしだく。
すごく乱暴に見えるのに…変。
「気持ちいい…」
「サキュバスの身体から分泌される媚薬は特殊。あらゆる刺激を快感と誤認させる作用がある。さらに極度の興奮状態。発情状態をある程度継続させる。不感症でもイチコロ」
「だめだよぉ〜。エッチなことするの、大人になってからは我慢してたのに〜」
「思春期を過ぎてもエッチは大切。我慢してはダメ」
クロムちゃんの小さな手が私の汗で滑りながら私の身体をくまなく撫でる。
優しく、強く。
「へんだよぉ〜。ダメなはずなのに…。もっとしてほしくなっちゃう」
「脳は快楽的刺激を受けることで正常な働きを保っている。脳は快楽を欲するようにできていると言い換えられる」
「ふぇ?」
「気持ちいいのは悪いことじゃない。むしろいいこと。もっと欲しがるべき」
「…副作用とかないよね?」
「……………気にしてはいけない」
「ぅやだぁ〜〜!でも、きもちいいよぉ〜」
「…セックスも酒やたばこのようなもの」
「依存性があるって事!?それ、だいじょうぶなの!?」
「………… 問題ない」
「その“間”はなに〜〜〜!?」
頭が真っ白になる。
クロムちゃんが微妙に怖いこと言ってるけど、そんなことどうでもいいように感じてくる。
「サキュバスの中では私はこういうのは苦手な方。でも、人間よりうまい自信はある」
「うん〜。とっても、気持ち良かったぁ〜 って、あれ?なんで私クロムちゃんとエッチしてるの?」
「……………発端となるような言葉はなかったように思う。いうなれば、その場の流れ」
「そっか〜」
何だかそんなことはどうでもよくなってきた。
気持ちいい。
見ると寄り添うように私の隣にいる裸のクロムちゃん。
私の汗に濡れて身体がツヤツヤしてる。
なんか、とってもやらしい。
でも、すごくかわいい。
「………///」
私が見つめていると、頬がみるみる赤くなっていくクロムちゃん。
あ、眼鏡が曇った。
「眼鏡をはずすしかない。私はこれをはずすと…」
「ど、どうなるの!?(ごくり)」
シャキーン!ってパワーアップするとか!?
「視界が利かなくなる。でも、今はエッチの方が大切」
「………はぁ」
「……… どうやら、期待に添わなければいけない。私も本気出す」
「え?」
そう言うとクロムちゃんは尻尾を取り出した。
「強すぎたら、ごめんと言わざるを得ない」
「――ひゃあ!」
何今の!?
突然目の前が真っ白になってチカチカした。
「此花圭の初めてをもらった。媚薬の影響で痛みは感じないはず」
「え?」
私が快楽のベッドに横たわってるような気分の中、クロムちゃんが尻尾を見せてくれた。
鮮やかな色の血が先端についていた。
「尻尾を一生洗えないレベルの感動」
「…そんな、あこがれの歌手と握手したみたいな…」
「とてもうれしい。もっともっと気持ち良くしなければ」
クロムちゃんが再び私のそこに尻尾を侵入させた。
続々と背中が浮くほどの快感が走る。
「ひゃう〜。きもちいいよぉ〜」
「これからが本番」
そう言ってクロムちゃんが私のおっぱいを咥えこむ。
あ、なんか乳離れができない子みたい。
「これから此花圭をもっともっと気持ち良くする。準備はいい?」
「…圭って呼んで」
「圭…。いく」
「うん」
クロムちゃんが私のおっぱいを舌で転がすように刺激する。
敏感な乳首をにゅるにゅると刺激され、反対側のおっぱいも手でくねくねともみしだかれる。
すごく気持ちいい。
「ひゅごい〜。ひゅごいよぉ〜」
「…ちゅ。あむあむ」
――ビクンビクン
私の身体が跳ねる。
びりびりと刺激が快感と成って全身に広がっていく。
そして、
「あひゃぁぁぁ!」
そこに挿入されていた尻尾が動き始める。
おっぱいばかりに気を取られてて不意を突かれてまた真っ白になってしまった。
それでも、クロムちゃんはまだ攻めの手を緩めない。
――くっちゅくっちゅ
――ちゅぱちゅぱ
――あぁん。ひぃぅ
いやらしい音がぼんやりと頭から離れるように遠ざかり、
――ドクん
心臓の鼓動と共に戻ってくる。
「けい〜。けい〜」
あ、クロムちゃんが私の名前を呼んでる。
いつの間にか両手でおっぱいを揉みながら、無表情だった顔を気持ちよさそうにゆがめて私の上で腰を振りながら喘いでる。
かわいい。
クロムちゃんかわいいな。
そっか。
クロムちゃん、尻尾敏感だって言ってたもんね。
クロムちゃんが私のオマンコで気持ち良くなってるんだ。
…もっと気持ち良くなってほしい。
「けい〜。…っ!?」
「ちゅ」
私はクロムちゃんを抱きよせてキスをした。
可愛い唇が一瞬おびえたように震えて、ふわりと柔らかくなる。
私はクロムちゃんがやってくれたみたいに下を入れてクロムちゃんの小さな舌を舐めまわす。
ついでにほとんど膨らんでいないクロムちゃんのおっぱいをスリスリと刺激する。
「んんっ!ん〜」
「ん〜。ん…」
ずっとキスしてるから、クロムちゃんの声が頭の骨を伝って響いてくる。
クロムちゃんとすっごくくっついてるみたいで嬉しくなる。
――ちゅ
唇が離れる。
銀色の糸が伸びて、クロムちゃんが仰け反る。
「ひゃぁぁぁぁぁぁっ!」
クロムちゃんの尻尾が何度か膨らんで。
――びゅっ!びゅ!びゅぅぅ!
おなかの中に熱いものが注ぎ込まれた。
その瞬間、私は今まで感じたことがないほど気持ち良くなって上も下も前も後ろもわからなくなって落ちて行った。
夢の中でクロムちゃんを膝に乗せてる。
クロムちゃんは無表情なまま分厚い本を膝の上に乗せてペラっとページをめくる。
細かい字がびっしりと並んだ本。
内容は科学のことばかりで私には理解できない。
でも、膝から伝わる暖かさと心地よいしびれが私を嬉しくさせる。
クロムちゃんのおなかのところに手をまわしてキュって抱きしめる。
クロムちゃんの頭に首筋をくっつけて、体温を感じる。
甘いにおいがする。
――はぁ、はぁ…
意識が戻ってきた。
クロムちゃんはぐったりとして私にきゅっとしがみついて、仰向けの私のおなかの上に乗っていた。
二人とも汗でべたべただけど、全然気にならなかった。
ううん。むしろ、暖かくて気持ちいい。
私はクロムちゃんの小さな体を抱きしめる。
密着した身体からクロムちゃんの鼓動が聞こえる。
――トクン…トクン…
ふと、思い返してみる。
クロムちゃん、変な子だけど、そんなの気にならなくなるくらい、今は好きになってる。
今日はじめてあったはずなのに、ずっと前から大切な存在だったみたいに感じられて。
本当に不思議。
――むくり
私がクロムちゃんの頭を撫でてたら突然起き上がった。
「…サキュバスとして、恥ずかしいところを見られた」
「とっても可愛かったよ」
「……しかも、あまりの気持ち良さに、射精時に送り込んだ精液の魔力含有量が少なかった」
「え?」
「圭がサキュバスになっていない。失敗した」
「!? 私を魔物にしようとしてたの!?」
「そのつもりだった。失敗した」
「…もう」
「心配しなくてもいい。魔物になれば、ずっと一緒にいられる」
「…むぅ〜。でも、なんか抵抗あるなぁ」
「そうか。じゃあ、圭を魔物にするのは今のところは諦めておく」
「『今のところは』?」
「もっともっと圭を気持ちよくさせて、そのうち、自分からなりたいと言わせる」
「……じと〜」
「しら〜 …心配しなくても、圭が自分で言うまでは我慢する」
「……まぁ、そうして」
「…ってことで(シャキン)」
「なっ!」
突然クロムちゃんが注射器を持って私に襲いかかってきた。
私はそれをとっさに避けた。
「そ、それはなに!?」
「大丈夫。私が調合した母乳促進剤。副作用として乳房全体が敏感になったりするが、特に問題ない」
「そんな怪しげなものは没収です!」
そう言ってクロムちゃんの手から注射器を取り上げる。
「ああ…」
あ、少し残念そうな顔をした。
「…まぁいい。また作れる…」
こうして、クロムちゃんと仲良くなった。
「…えと…、これはなに?」
「私のラボへの扉。空間を魔法で少しいじって取り付けた。絶対に入っちゃだめ。ついでにこの部屋に特殊な防音加工を施した」
「……ここ、私のアパート」
「知っている」
「……ここ、私の部屋」
「知っている」
「……なんでクロムちゃんが!?」
「家賃を滞納していたらアパートを追い出された。これからはここに住む」
こうして、クロムちゃんが居候することになった。
やっぱり、クロムちゃんは変な子だ。
「………ところで、クロムちゃん何歳?」
「…百………。思い出せない。あとで数えておく」
「…クロムおばあちゃん?」
「……む。それは圭でも許せない発言。私を貧乳と馬鹿にしたことも含めて、お仕置きが必要」
「ちょ、その注射器は何!? ってか、貧乳言ってない!」
「今言った。 成長因子変転剤。これを打てばたちまち誰でもロリショタに。1週間はこのロリ体系の苦痛を味わってもらう。今ならこの万能翻訳機を装着して語尾に『にゃん』を付けないとしゃべれない様になるサービスも付く」
「……ごめんなさい」
こうして私の日常は非日常な毎日になってしまった。
私の心は共有結合。
彼女の心と結びつく。
胸に秘めるは多次元存在比。
私の心は自由に踊りまわる。
孤独に固定されていた電子対は、彼女の心と結びついてその軌道を変えていく。
どんどん上昇していく心の温度は臨界を超えて膨張していく。
私のそばにはいつも彼女が居てくれる。
不安定な心の電子対は平衡を取り戻し安定した。
魔物と人間、不安定に安定した変異結合。
09/11/19 08:09更新 / ひつじ