レイニーモーニング
レイニーモーニング
――カランカラン
「おはよう、アーサー。ずいぶんと久しぶりね」
「おう。 …いつものな」
「また二日酔い?」
「そうだよ。あんまりでかい声出すな…」
彼はいつものように頭を右手で押さえながらふらふらとカウンターに座った。
私はバスケットからレモンを取り出し、木製の棚からはちみつとジンジャーを取り出した。
「今度はどうしたの?また女?それともまた仕事をクビになった?」
「…両方だ」
「今回は過去最長記録だったのにね」
「そうなのか?でもな、まだわかんねえじゃねぇかよ」
「今度は何をしたの?」
「いつも通りさ。仕事終わりに友達と酒場に行った帰り、いい女が居たんでナンパしてな。2,3日付き合ったところでリーナにバレて、その上浮気相手が仕事先の上司の娘だった」
「…運が悪かったわね」
「まったくだ」
「はぁ…。仏の顔も三度までよ。リーナは3回も浮気を許してくれたんでしょ?なのに何でまた…」
「…さぁね。癖なのかも…」
掌をヒラヒラとさせて、言うと、アーサーは机に突っ伏してしまった。
私は出来上がったレモン&ジンジャーに蜂蜜を溶いて、マドラーでかき回す。
湯気と共に甘酸っぱい良い匂いがする。
「はい。いつもの」
「さんきゅ…」
彼はむっくりと顔をあげてひどいクマの残る目で目の前に置かれたマグカップを見た。
よく見ると左の頬が赤くはれている。
「で、どうなの?リーナはあなたをぶった後に許してくれた?」
「俺をぶった後は泣きながら部屋を出て行った」
「残念だったわね」
「………」
アーサーは左肘をついて無精髭をいじりながら右手でカラカラとマドラーを回している。
「さすがに今回は懲りた様子ね…」
「…さぁな。ただ、少し心が痛むね」
「あら、あなたのハートも随分と繊細になったのね」
「もともと俺は繊細さ。だから毎度毎度新しい恋に落ちてる」
「そんなものに落ちるより、あなたは自分の落ち度に気付くべきね」
「…うまいな」
「ありがと」
「ジンジャーレモンが、な…」
彼は1口2口カップをすすると、大きなため息をついた。
――カランカラーン
「ママー!おつかい行ってきたよ〜」
「ありがと、ハンナ。そこに置いといて」
娘のハンナが元気よく店に飛び込んでくる。
カッパを脱ぐとフードから長い耳がぴょこんと飛び出す。
そして、頭をぶんぶんと振って水滴を飛ばすと、
小さな体でピョンピョン飛び跳ねるように私のところまでやってくる。
「はい、これ。 あ〜!またアーサーのおじちゃんが腐ってる…」
「うっせぇぞ、人間は腐んねぇよ」
「…伝説の傭兵って称号の方はとっくに腐ってるけどね」
「あぁ〜。また戦でもおこんねぇかな?」
「あ〜。ダメにんげんだ〜」
「そうよ、ハンナ。あんまりこの人に近寄っちゃだめよ。「ダメ」が伝染るわよ」
「だ〜れがダメ人間じゃ!畜生このガキ!」
「きゃ〜ダメなのがうつる〜!」
アーサーは立ち上がってハンナを追いかけ始めた。
ハンナは嬉しそうに笑いながら店の中をピョンピョン逃げ回る。
まだ子供だけどさすがはワーラビット。
アーサーからスルスルと逃げ回り、狭い店の中を縦横無尽に逃げ回る。
アーサーも上位の魔物相手でも問題ないほど強いけど、二日酔いでフラフラなうえ、長身の彼には狭い店の中は分が悪い。
「畜生ちょこまかと…」
「へ〜ん!のろま〜!のろまのダメおやじ〜!」
「なんだとこのガキゃあ!! …うっぷ!」
「キャー! ハンナ!桶とって!桶!アーサー!床に吐いたら一生出入り禁止よ!」
騒がしい店の中とは違う空間であるかのように、外では雨がしとしとと降っていた。
――カランカラン
「おはよう、アーサー。ずいぶんと久しぶりね」
「おう。 …いつものな」
「また二日酔い?」
「そうだよ。あんまりでかい声出すな…」
彼はいつものように頭を右手で押さえながらふらふらとカウンターに座った。
私はバスケットからレモンを取り出し、木製の棚からはちみつとジンジャーを取り出した。
「今度はどうしたの?また女?それともまた仕事をクビになった?」
「…両方だ」
「今回は過去最長記録だったのにね」
「そうなのか?でもな、まだわかんねえじゃねぇかよ」
「今度は何をしたの?」
「いつも通りさ。仕事終わりに友達と酒場に行った帰り、いい女が居たんでナンパしてな。2,3日付き合ったところでリーナにバレて、その上浮気相手が仕事先の上司の娘だった」
「…運が悪かったわね」
「まったくだ」
「はぁ…。仏の顔も三度までよ。リーナは3回も浮気を許してくれたんでしょ?なのに何でまた…」
「…さぁね。癖なのかも…」
掌をヒラヒラとさせて、言うと、アーサーは机に突っ伏してしまった。
私は出来上がったレモン&ジンジャーに蜂蜜を溶いて、マドラーでかき回す。
湯気と共に甘酸っぱい良い匂いがする。
「はい。いつもの」
「さんきゅ…」
彼はむっくりと顔をあげてひどいクマの残る目で目の前に置かれたマグカップを見た。
よく見ると左の頬が赤くはれている。
「で、どうなの?リーナはあなたをぶった後に許してくれた?」
「俺をぶった後は泣きながら部屋を出て行った」
「残念だったわね」
「………」
アーサーは左肘をついて無精髭をいじりながら右手でカラカラとマドラーを回している。
「さすがに今回は懲りた様子ね…」
「…さぁな。ただ、少し心が痛むね」
「あら、あなたのハートも随分と繊細になったのね」
「もともと俺は繊細さ。だから毎度毎度新しい恋に落ちてる」
「そんなものに落ちるより、あなたは自分の落ち度に気付くべきね」
「…うまいな」
「ありがと」
「ジンジャーレモンが、な…」
彼は1口2口カップをすすると、大きなため息をついた。
――カランカラーン
「ママー!おつかい行ってきたよ〜」
「ありがと、ハンナ。そこに置いといて」
娘のハンナが元気よく店に飛び込んでくる。
カッパを脱ぐとフードから長い耳がぴょこんと飛び出す。
そして、頭をぶんぶんと振って水滴を飛ばすと、
小さな体でピョンピョン飛び跳ねるように私のところまでやってくる。
「はい、これ。 あ〜!またアーサーのおじちゃんが腐ってる…」
「うっせぇぞ、人間は腐んねぇよ」
「…伝説の傭兵って称号の方はとっくに腐ってるけどね」
「あぁ〜。また戦でもおこんねぇかな?」
「あ〜。ダメにんげんだ〜」
「そうよ、ハンナ。あんまりこの人に近寄っちゃだめよ。「ダメ」が伝染るわよ」
「だ〜れがダメ人間じゃ!畜生このガキ!」
「きゃ〜ダメなのがうつる〜!」
アーサーは立ち上がってハンナを追いかけ始めた。
ハンナは嬉しそうに笑いながら店の中をピョンピョン逃げ回る。
まだ子供だけどさすがはワーラビット。
アーサーからスルスルと逃げ回り、狭い店の中を縦横無尽に逃げ回る。
アーサーも上位の魔物相手でも問題ないほど強いけど、二日酔いでフラフラなうえ、長身の彼には狭い店の中は分が悪い。
「畜生ちょこまかと…」
「へ〜ん!のろま〜!のろまのダメおやじ〜!」
「なんだとこのガキゃあ!! …うっぷ!」
「キャー! ハンナ!桶とって!桶!アーサー!床に吐いたら一生出入り禁止よ!」
騒がしい店の中とは違う空間であるかのように、外では雨がしとしとと降っていた。
09/11/30 09:48更新 / ひつじ
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