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夢見る王墓 |
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夢すらも枯れゆく砂漠の中、私はピラミッドの頂点に立つ。
昼夜の寒暖差で揺れ動く空気が全天の星空を揺るがせ、月すらも幻想であるかのように揺らぐ。 此処は夢の都市。 かつては昏々と湧き出るオアシスがあり、何千という商人が。何万という人が行き交った街。 商人はこの街に店を構えることを夢見て。 少女は丘の上に聳える王宮に住むことを夢に見た。 此処は夢の都。 今はただ乾いた風と見渡す限りの白い砂が全てを埋め尽くし、何人たりとて足を踏み入れることのない死の街。 夢を手にした商人は、いつしか枯れたオアシスを捨て、河沿いの王の都に移り住む。 夢から覚めた少女は愛する者に手を引かれ、この街を去る。 此処は夢の都。 夢から覚めた、夢の都。 夢見る王墓 目覚めの時。 鮮明さを取り戻す現実の中、私は虚空に手をかざす。 虚ろな顔のマミーたちが私に衣装を着せていく。 肌を滑るような感触と共にふわりと素肌に触れる着なれた感触。 2体のマミーが金粉を指につけ、私の身体に化粧を施していく。 最後に、マミー達が跪き、最後の一人が私に宝剣を掲げ、膝をついた。 私はそれを受け取り腰に差すと、マミー達を下がらせた。 私は手を開き、それを見る。 何千年も変わらぬ狗の手。 私は軽く頭を振り、現実に頭を戻す。 静まり返った石の廊下を歩く。 何千年も変わらぬ光景。 変わらぬ静寂。 いっそ、墓荒しでも来てくれればこの鬱屈した気持ちは晴れるのだろうか。 陛下の眠る扉の前に礼をして、石造りの扉を開く。 この扉も随分と時が経ち、金の装飾は所々に剥げ、角は丸みを帯びている。 いや、この扉だけではない。 この墓全体があのころとはずいぶんと変わっていた。 今では墓全体の半分以上が砂に埋まり、天辺近くの非常通路以外の入り口は閉ざされてしまった。 この墓の中で変わらぬ者は私だけ。 私だけが、この時間から置き去りにされているような錯覚を覚える。 陛下の前に立ち、傅く。 「陛下。今日も謹んで御身を守護させていただきます」 「………」 棺に取り付けられた黄金の仮面は表情を変えぬまま。 私もまた、表情を崩さぬように陛下の寝室を後にした。 来た道とは反対の廊下、私はその先の行き止まりの壁に、手を触れ、詠唱する。 壁が切り抜かれ、奥の部屋の入り口が開く。 真っ暗で何もない小部屋。 私は短い詠唱をして、明かりを灯す。 部屋全体に明かりが満ち、中央に置かれた台座が現れる。 私はそこに手を触れる。 建物全体、地下の空洞のすべてに至るまでの情報が流れ込んでくる。 異常は見受けられない。 「ん?…」 私は台座から手を放す。 「…あの馬鹿猫め」 私はため息をつくと、脳裏に示される赤い点に向かって歩き始めた。 寒く真っ暗な部屋の中でいつも通り目を覚ます。 あたしは一度大きく伸びをする。 プルプルと尻尾の先まで力を込めて、抜いていく。 「ふはぁ〜〜」 右手の肉球を唇に当てて、大きな欠伸をする。 「ありゃま。服が皺になっちゃった。ま、いっか。どうせだれも来ないだろうしにゃ〜」 あたしはお尻の下で皺くちゃになった服を見下ろして独り言をつぶやいた。 自慢の腕っ節を出して、肘のあたりから毛づくろいを始める。 手足が終わると、身体の方も。 人間と変わらない弱い肌にジャリジャリとしたあたしの舌が触れる。 むずがゆい感じ。 身体をさらに丸めて大事なところも。 「ふみゃ〜。あたしってば、綺麗好きね」 そのあとでお尻に敷いていた服を着ていく。 そして、胸当てを着る前に、クンクンとにおいをかいでみる。 …あと2日は大丈夫そうだにゃ〜。 「また後でマリクんとこのマミーに洗濯でも頼もうかにゃ〜?…まぁ、覚えてたらでいっか」 ベッドから飛び降りて、出口に向かう。 扉を開けると早朝の砂漠の冷たい空気が薄着の身体に突き刺さる。 背中を伝ってぶるぶると尻尾の先まで震えが伝わる。 「さっみぃぃ!!この毛、もっとお腹の方まで生えてくれないかにゃ〜?」 あたしはひんやりとした砂の感触を足の裏の肉球で感じながら、あいつの眠る墓の方に歩いて行き、一本のオベリスクの前までくる。 「あ、ちょちょ〜っい!っと」 魔法で入り口を開いて、地下に続くかくし通路に入っていく。 「あ!忘れてた〜。戸締り戸締りぃ〜っと」 最後に魔法を唱えて私のねぐらの入口を砂で覆い隠す。 「って、言っても盗られる物なんてないんだけどねぇ〜♪ っと。さぁって、今日は何して遊ぼうかにゃ〜」 まぁ、って言ってもやることは決まってるんだけどにゃ〜。 「くひひ。今日はマリクの寝室大探索〜! エッチな本とかエッチなおもちゃをあさってやるのぜ!」 「にゃにゃ…。この箱、開かないのにゃ。さてはこの中身、きっとエッチなおもちゃが入っているに違いないのにゃ」 赤い点が示した場所に駆け付けると、そこには本来この墓の外の守護者であるはずのスフィンクスのアミトが私の持ち物を漁っていた。 「……貴様。何をしている」 「おお〜ぅ!見つかっちゃったのにゃ〜♪ 相変わらずうちの近衛隊長さんは仕事が早いのね〜」 「何をしてると…聞いているのだ!」 「にゃぁ〜!」 私が剣を振り下ろすとアミトの馬鹿がするりと避ける。 「ちっ…。相変わらずにゅるにゅると鯰のような奴め」 「たとえのセンスが悪いにゃ〜。それじゃああたしを捕まえる事なんて一生かかっても無理だにゃ〜♪」 「むむむ…例えは関係なかろうが!」 私は詠唱破棄で拘束の魔法を発動する。 「およよ!?手足が動かにゃ〜!!?」 突然手足を魔法で縛られ、アミトがよたよたとバランスを失くして私のベッドの上に倒れ伏した。 「今日という今日は…貴様、覚悟するのだな」 「にゃにゃっ!魔法かにゃ!?詠唱破棄とは粋な真似を…」 「ふふ。いくら貴様とて逃げられまい」 「にゃにゃ…」 「たぁ〜っぷりとお仕置きをせねばならぬなぁ…。先日盗んだ私の下着の件も含めて、な」 「ぐぬぬ。こっちの方が悪いのにまるでマリクの方が悪役に見えるような笑みなのにゃ」 「悪、即、斬。東方にはそのような言葉があると聞く。実にいい言葉だ。貴様もそう思うであろう?」 「ぬぬ。悪趣味な……おぉ!?」 たじたじとアミトが顔をしかめていたその時、突然アミトの視線が天井の一点に集まった。 「くふふ、ふははははははははっ!なのにゃ〜!」 「何が可笑しい!?」 「残念だったのにゃ。確かにこの拘束、あたし一人にはちょっと強いのにゃ。しかし、術を解く者があたし一人でないとすれば、どうかにゃ?」 「な…んだと?」 「いまにゃ!ユピ!マァト!」 そうアミトが叫んだ瞬間、私の背後から2体のマミーが現れ、アミトと3人で解除呪文を詠唱し始める。 「なっ!貴様、私の部下を!」 「この間捕らえた盗賊4人の身柄でここのマミーは全員あたしの指揮下に入ったのにゃ。残念だったのにゃ〜♪」 そうして、あっという間にアミトは逃げ出し、マミー達もいつの間にか姿を消していた。 私はギリギリと奥歯を咬んだ。 「…何たる屈辱。もはやあのドラ猫、生かしておけぬ!!」 私はもう一度頭にピラミッド全体の図式を呼び出す。 その図面に赤い点が表示され、ものすごい速度で地下通路へと移動しているのを見つけた。 「みつけた…」 私は万全を期すため、部屋に建てられた天秤を象った錫杖を持ち、アミトの後を追った。 しばらく走ったところで、アミトは迷ったのか、うろうろと同じ場所を行き来しているのが図面に映し出される。 「馬鹿め。地下迷宮に迷い込みおったな。この勝負。私の勝ちだ!」 私は速度を上げ、アミトを追いかけた。 「にゃにゃんと!しまったのにゃ。さてはここは迷路にゃ!確か毎日魔法で道が変わるのにゃ。これは参ったのにゃ…」 あたしは仕方なく闇雲に道を進む。 「まずいにゃ〜。“中”の方は専門外なのにゃ〜。このままじゃ顔gei…じゃなかった。マリクに追いつかれてしまうのにゃ」 あたしが迷っていたその時、迷宮に声が響いた。 「追い詰めたぞ!ドラ猫め。もはや逃げ場はない!降参して出てくるのだ!さもなくば貴様は永久にこの迷路をさまようことになるぞ」 「にゃに〜!勝った気でいやがるのにゃ。 …んをっ!?あれはっ!」 あたしは迷宮の壁に描かれた魔法陣に向かって走り出した。 いい気味だ。 あの猫め、迷路を右往左往している。 あとはこのまま追い詰めれば…。 「なっ!?」 馬鹿な。奴の姿が消えた!? 私は頭の地図から赤い点が突然消えたことに焦る。 「……さては、乱数移動の魔法陣に飛び込みおったのかっ!?命知らずめ!」 私は急いで図式を縮小し、奴の姿を追う。 乱数移動の魔法陣とはその名の通り、ランダムで移動先が決定される魔法陣だ。 時には罠の真上や壁に囲まれた出口のない空室などに飛ばされ、そのまま命を落とすこともあり得る。 私は慌ててピラミッド中を探す。 「っち!奴め、あろうことか陛下の御前に!!」 ようやく見つけた赤い印はなんと陛下の眠る部屋に記されていた。 私は急いで、来た道を引き返した。 「っとと!おお。どうにか安全そうな場所に出たのにゃ。一安心にゃ〜」 あたしは辺りの様子を伺い、だだっ広くて何もない様子を見て安堵した。 「ん〜っと。ここはどこかにゃ? おお!これはこれは久しぶりなのにゃ。その金ぴかのお顔は忘れもしない王様の死体なのにゃ」 あたしは棺の前に近づき、一応拝んでおく。 「あんたのせいでこちとらいい迷惑なのにゃ。おバカなマリクは馬鹿正直に何千年もあんたのことを守り続けてるのにゃ。 って、言ったところでもう魂はオシリスの鳥頭が運び終わって死体はもぬけの殻だったのにゃ。 まぁ、あんたに言ってもせんないことではあるのにゃ」 あたしは一通り愚痴を言い終えると、マリクの部屋からパクった箱に向きなおった。 「ぬぬ。これは鍵がかかってるのにゃ…。 お、そう言えば、先日盗賊から拝借したものの中にいいものがあったのにゃ」 あたしは2本の工具を取り出し、箱の鍵穴にそれを突っ込んだ。 「えっと、こっちをこうして、ここをこう、捻るっと!」 ――カチャリ 「おお!開いた開いたぁ〜♪」 あたしは工具を取り外し、箱を開いた。 「え?……これは」 私はやっとのことで地上に戻り、陛下の部屋の前に来る。 赤い点は動かないまま、じっとしている。 やっと観念したのだろうか。 私は扉の前で礼をして、その扉を開けた。 中に入るとやはりアミトが私の宝箱の前でうずくまっていた。 「ふふん。その箱には鍵が掛けてある。そしてこの部屋に入り口は一つだ。観念しろ、アホ猫」 私が言うが、アミトはピクリとも動かない。 いや、正確には耳だけがこちらにピクリと動いて私の声を聞いた。 「……マリク。あんた」 小さく、アミトが言った。 その声は、いつもの馬鹿げた明るいものとはほど遠い、低いトーンだった。 「…どうしたのだ?」 「………あたしは、あんたのこと、馬鹿だと思ってた。 でも、違ったんだな」 「…ふん。今頃気づいたのか。私はお前なんかよりもずっとずっと優秀な」 「…そうじゃないよ。あんたはあたしが思ってたよりもずっとずっと大馬鹿だった。 あたしはさ。あんたが墓守の為に生み出された魔物だから、ずっと馬鹿正直にこんな墓を守り続けてるんだって、ずっとそう思ってた」 「…ああ。そうだ」 「違うじゃないか!何なんだよ、これはっ!?」 突然口調を荒げたアミトが見せてきた銀製の鏡。 私はそれを見て言葉を失くした。 「これは何なんだよ!マリク」 「そ。それは…」 その銀の鏡に映っているのは私の顔だ。 しかし、魔物アヌビスの私ではない、もう一人の私。 そこの私は獣の手足も、耳も、尻尾も持たず。 ただ、幸せそうな笑顔を浮かべて陛下に寄り添う。 ずっとずっと、何千年も昔の私の姿。 金のティアラをつけ、薄絹の装飾を身にまとい、金粉で美しく化粧をした私。 そして、そんな私を片腕で抱きしめる、愛しい陛下の姿。 「そうか。ようやく思い出したよ。初めてお前に会ったとき、どこかで見たことがある気がしてたんだ。あたしは儀式によって魔物に生まれ変わったものだからね。あたしは人間だったころ盗賊だった。それもこの辺り一帯を荒らしまわる大盗賊さ。そして、捕らえられて、罰として永遠にこの墓を守り続けることを誓わされ、魔物にされた」 アミトがうつむいたまましゃべり始めた。 「そして、王が死んで埋葬されたあの日、初めてあんたに会った。神官はあんたのことを墓守の為に生み出された魔物だと言っていた。でも、それは嘘だったんだね。 だって、あんたは」 アミトはゆっくりと顔をあげ、その青い瞳で、凛々しく釣り上った眼で、私を見つめる。 「あんたは、お姫様だったんだ。いや、違うか、そこで死んでる男の妃。そうだよね?」 「……な、何、馬鹿を言っている。そんなに位の高い人間が魔物などに堕ち、墓守等するわけがなかろう。ただ、あまりにも顔が似てたのでな、埋葬品の中から拝借したのだ」 「糞真面目なあんたがそんなことするはずがないだろ!嘘をつくな!“あたしの問いかけに答えろ”」 「なっ!」 アミトの瞳が輝き、私を言葉で拘束する。 これはスフィンクスの呪術の問いかけ。 正しく答えねば、強い呪いが襲いかかる。 「あんたはずっと過去に縛られて、それで魔物になったのか?」 強制力の強い呪いの問いかけ。 私は耐え切れず飛びのき、彼女から距離をとる。 「…逃げることは許されない」 「っん!」 ――じわ… 私の子宮が甘く痺れて其処から微かに愛液がにじみ出る。 「答えろ。マリク」 「…っく!」 私は歯を食いしばり、問いかけをやめさせるべく剣を抜いてアミトに襲いかかった。 しかし、アミトはそれを難なくかわす。 私は寝室の時と同じように拘束の魔法を発動する。 「そんなもの、本当にあたしに効くと思っていたのか?」 しかし、その魔法は発動直後にアミトの魔力にはじかれ、霧散する。 「なっ! …あなた、実力を隠して」 「常に全力でいる馬鹿なんていないよ。ば〜か」 そう言って、アミトは目にもとまらぬ動きで私の後ろに回り込み、私の腕を押えた。 「なら、これでどうだ!」 私は錫杖を握りしめ、今度は魔力を詠唱に乗せ、さっきよりも何倍も強く拘束の魔法を発動する。 しかし、それと同時に背後からつぶやきが聞こえた。 「メル・マァヌス・デーヴァ…」 「え?」 私は一瞬何が起こったのかわからなかった。 私の身体は地面にはりつけにされ、指一般動かなくなっていた。 「あんたの魔法を反射して、それにあたしの魔力を上乗せした。魔力を持たない人間ならつぶれてぺしゃんこだね」 そう言って見下ろしてくるアミト。 その目は冷たく、影の中でも光って見える。 「っく!なら、これでどうだ!」 私は魔力を一心に込め、呪を放った。 「っ!? っ…」 途端、アミトの身体がビクンと跳ねて、ぐらつき、その身体にひび割れのような文様が走ると、股布が少し染みを浮かべた。 「…はぁ…はぁ。マミーの呪い…か…」 「そうよ。魔物のあなたにはマミー化させるほどの効果はないでしょうけど、全身が急所になるわ」 人間の女にかければたちまち快楽に堕ち、そのままマミーになってしまう強力な呪い。 それも普段の何倍も強く掛けてしまった。 並の人間なら発狂してしまうほどの快楽。 全身がクリトリスのように敏感になり、空気に触れるだけでも秘部を愛撫されるかのような快感と疼きが全身に走る。 さすがにアミトも効いたのか、魔法の拘束がゆるみ、私はその間に魔法を解いた。 瞬く間にアミトの息が上がり、小麦色の肌が赤く高揚していく。 しかし、その時だった。 「“問いかけに答えろ”」 「え!?」 「お前はあの男の妃なのか?」 「そ、それは… っ!」 私が答えないでいると、突然身体が跳ね、快楽が走る。 「お前は自ら進んで魔物になったのか?」 「お前は私に嘘をついていたのか?」 「お前はあの男を未だに好いているのか?」 「お前はあの男の傍にいたいがために魔物に堕ちたのか?」 いくつもの問いかけが降りかかる。 私が答えを拒むたびに私の身体は絶頂を迎えたようになり、どんどんと肌が敏感になっていく。 最早下半身の疼きも抑えられなくなってしまう。 「ひあぁぁぁ!」 私は最後の絶頂と共にその場にへたり込んでしまった。 「はぁ…はぁ…。もう。あいつの時代は終わったんだよ。マリク」 荒い息を吐くアミトが私の両肩を押えて私を押し倒した。 背中に感じた衝撃だけで私は軽く達してしまう。 お互い、あまりに強い呪いのせいで、もはや身体の感覚は狂いきっていた。 ――ちゅ 「!!」 アミトの唇が私の唇と重なる。 互いの身体がピクんと跳ねる。 ――くちゅ アミトの舌が私の中に入ってくる。 唇を押しのけ、口の中に割り入ってくる少しざらっとしたアミトの舌の感覚。 それがまるで、私の口にできた性器に舌が挿入してきたように感じてしまう。 唇は陰唇に、口内は膣内に、舌は、 「んんっ!」 クリトリスのように感じてしまう。 そのクリトリスが、ざらついた猫の舌で転がされる。 ――しゃり、しゃり 「んんっ!!んんんんんん!!」 私の腰が何度も跳ね上がり、尻尾が石畳の床を打ち付ける。 その衝撃さえ快感になってしまう。 アミトも私と同じような状態なのか、私の舌を舐めるたびに小柄な身体がびくびくと跳ね、絡み合った太ももはどちらのものかわからないねばついた暖かい液体でクチュクチュと卑猥な音を立て始める。 ――ちゅ 「…ぁ」 離れていく唇が名残惜しくて、思わず声を出してしまう。 しかし、アミトの唇は、顎を伝い、私の身体を下りていく。 首筋、 ――ビクビク 胸 ――ッビク 乳首 「んあぁぁあ!」 おへそ。 「ひぅぅ」 各部位に達するたびに私はもはや愛液を吸いとれなくなった下着から粘液を溢し、口を開けたままよがった。 ――しょりしょり アミトの舌が私の臍をほじくるように舐め続ける。 私はその度に発情したメス犬のような声をあげて、喘ぐ。 気持ちいい。 露出の高い服から常に出ている私のそこはクリトリスのように感じ、アミトは、舌でクリトリスの皮をむき、その中身をほじるかのように私のお臍を舐めまわす。 「いひいぃい!」 同時に私の右の乳首もつままれる。 服の上からだというのに信じられないほどの快感。 ――びくん! 突然、私にのしかかっていたアミトの身体が跳ねあがった。 見れば、左手を自分の股間にやり、肉球を使って器用にこね回していた。 そうして、互いに何度か絶頂を迎えると、そのままアミトが体位を変える。 「え?何これ、マリクの此処…」 「ふぇ?…うむぅ!」 私の顔にアミトの其処がのしかかってきた。 私が目を白黒させていると、 「こんなの。もう、我慢できない…」 マリクが何かつぶやいたけど、聞こえない。 「あたしはマリクが好きか? 大っきらいだ!」 「あたしはマリクと一緒に自由になりたいか? 絶対になりたくない!」 「あたしはマリクとずっと一緒にいたいか? 顔も見たくない!」 ……………。 突然頭上から謎の“自問自答”が聞こえてくる。 そして、それにこたえるたびにアミトの身体は痙攣し、愛液があふれ出し、私の口の中に流れ込んできた。 「むん!?んん……」 「らめにゃ〜〜〜!!!はにゃしかけにゃいでぇ〜〜〜!!!!」 ――びくんびくんびくん!! 私の息がアミトの秘部にあたっただけでアミトは大きく仰け反り、プシャァっと潮を吹いてぐったりと私の身体の上に倒れこんだ。 マミーの呪いが掛かったその身体に自らの魅了の問いかけで感度が倍増し、とても耐えきれなくなったのだろう。 「………」 私はその様子を見て、決心した。 私は魔力を込め、呪いを放つ。 それも自らに。 すると、私の身体にマミーのような模様が浮かび上がり、とたん、アミトに触れているというだけの刺激で激しくイってしまった。 ――はぁ…はぁ 二人の息遣いだけが無音の部屋に響き渡る。 息をしているだけで何度もイキそうになる。 肌が汗で滑り、こすれ合うだけで感じてしまう。 そして、アミトが一度、こちらに顔を向ける。 ――……… 無言の合図。 私もその意味を察し、目の前でだらしなく開いた可愛らしいピンクの割れ目に口づける。 「「っっっっ!!」」 同時に私の今まで一度も触れられなかった秘部にアミトの猫舌が触れる。 頭がはじけ飛びそうな感覚が爆発し、目を見開いているのに何も見えない。 上も下もわからなくなって、耳もキ―――――ンという耳鳴りだけで何も聞こえなくなる。 それでも、アミトの温かさだけを感じて。 私は、今にも意識を失いそうになりながら、目の前にあるはずのアミトの秘部を舐める。 アミトの其処を吸う。 アミトのおまんこに舌を挿入する。 アミトも同時に私のおまんこを責める。 もう何もわからない。 ただ、ただ、死ぬほど気持ち良くて。 …死ぬ。 「目が覚めたかにゃ?」 目を覚ますと、アミトが私を覗き込んでいた。 「ん…」 「あっ!動かない方がいいにゃ!」 「んんんんんっ!!」 ――ビクンビクン 私は一瞬何が起こったのかわからなかった。 でも、後になってそれが膨大な量の快感だとわかった。 「お互いに呪いが暴走しあってるにゃ〜。あたしも下手に動くとイキまくりにゃ。しばらくは動かない方がよさそうだにゃ〜」 そう言ってアミトもゆっくりと身体を横たえた。 私もアミトの言うとおり、身体の力を抜いた。 それでも、裸のまま寝ているだけで、空気と触れあった素肌が敏感に快楽を伝え、下腹部が疼いてしまう。 「たぶん丸2日はこのままだねぇ〜。あとはマミーたちに任せよっか〜」 あの時とは違い、いつも通りのアミトの暢気な声が聞こえる。 「……ねぇ」 「ふみゃ?」 「どうして、私の事をあんなに怒ったのだ?」 「…あたしはマリクの事が大好きだにゃ。ほんとは、あんなやつ放っといてマリクと世界中を遊び回りたいと思ってるにゃ」 「……しかし陛下は」 「話は最後まで聞くものにゃ〜」 「む…」 「あたしはマリクが大好きだけど、マリクはこのピラミッドを守るために生み出された魔物だと聞いていたにゃ。だから、マリクはここから離れられないって、思ってたにゃ。でも、ほんとは、あたしと同じで儀式で魔物に生まれ変わった者。そうだよね?」 「…少し違う。私は自ら禁忌を使ってこの姿になった。ずっと、ずっと陛下と一緒にいたくて…」 「……そうやって、ずっとあんたは過去に囚われていたんだね」 「…ちがう」 「…ちがわない」 「ちがう」 「ちがわない!」 「ちがう!!」 「ちがわないぃぃ!!」 お互い息が切れるほどに叫ぶ。 そして、しばらくするとぽつりとアミトが口を開いた。 「あたしはあの男が嫌いだにゃ。あたしは言ったように、罰としてここに幽閉されたのにゃ。だから、本当はこの身体も、魂もここから離れられないようになってるにゃ。なのに、あいつは…あの男の魂は、あたしにかかった拘束の呪いを解き放ったのにゃ」 「え?」 「あたしは罪を悔いなければならない。そう思ってたのに、あの男の魂は100年と経たずにあたしの身にかかっていた呪いを解き放って、あたしを自由にしたのにゃ。そのせいで、あたしはこいつから離れるわけにはいかなくなったのにゃ!!」 「………?」 「あたしは盗賊だけど、受けた恩は必ず返すことに決めてるのにゃ。だから。こいつに売られた恩を返すまでこいつを守らなきゃならなくなっちゃったのにゃ!あんな呪い、千年もあれば自力で解いてさっさと逃げ出してやったのに…」 「……優しいのだな」 「それは勘違いなのにゃ!それに、この男はそれだけにとどまらず、毎日毎日何百年も甲斐甲斐しくこの墓を守り続けていたあんたを置いて、神様の処に行っちゃったのにゃ!」 「……それは…」 「それは? それはなんなのにゃ? 本当のことだにゃ。もうこいつの魂はその死体には宿っていない。とっくにオシリスの鳥頭が神様の処に運んじゃったのにゃ!」 「……それでも、陛下のお身体はここに…」 「…にゃぁぁぁぁ!!もう。お前は本っ当に馬鹿なのにゃ!」 「…私は、隣国の貧しい王家に生まれた。成人するまで結局国の為に何一つできることも無く、政略結婚で陛下のもとに嫁ぐことになった。私は悔しかった。王家に生まれながら、兄上達と違い、女である私は国の為、民の為に何一つできることも無く飾り物のように扱われ、挙句裕福なこの国に嫁いだのだ。貧しい祖国を捨て、逃げ出したも同然だ。 しかし、陛下は私を深く愛し、私の祖国にもあらゆる手で経済的な援助をしてくださった。おかげで、私は国の者から救世主と崇められた。陛下にはいくら感謝しても足りぬほどの恩を受けた……」 「ちぇぇぇぇい!!」 「んひゃぁぁぁぁ!!」 突然アミトが乳首に吸いつき、たまらず私は悲鳴をあげた。 「この馬鹿野郎!!その陛下はもうここにはいねぇんだよ!だにゃ」 「っ!!きさま!」 「ほんとのことだにゃ!あいつはもうとっくに神様の処に行ったのにゃ。だからマリクをここにつなぎとめるものはもう何一つないはずにゃ!なのにそんなに未練たらしく陛下陛下陛下陛下!女々しいにもほどがあるのにゃ!もう時代は何千年も昔に変わったのにゃ。ここにはもう何もないのにゃ!あいつを言い訳にここに居座るのはもうやめにすべきにゃ!」 「なんだと!貴様!言わせておけば。まだ陛下のお身体はここに眠っておられるのだ!そのお身体が朽ちるまで、私は添い遂げる!」 「なら、一生その干物と一緒に居るがいいのにゃ! …にゃはぁん」 アミトはそう言って怒り出すと、喘ぎ声を上げながら敏感な身体を引きずって部屋から出て行ってしまった。 静かになった部屋に寂しい風が吹いた。 「…くひっ!ひゃぁぁ…」 私も、何とか身体を起こす。 しかし、少し身動きするたびに尋常ではない快感が襲う。 マミーの呪いとスフィンクスの問いかけを同時に浴びているのだ。 人間ならどうなっていることだろう…。 そんな身体を無理やり引きずり、すぐ傍の棺までやっとの思いで辿り着く。 私は、陛下の棺に寄りかかり、訪ねた。 「…私は、彼女の言うとおり、貴方を言い訳にして現実から逃げていたのでしょうか…」 『………』 「…私は、どうすべきなのでしょう……」 『…………』 「…答えて…ください」 『……………』 答えなど、いくら待っても返ってはこない。 「ふみぃ〜。ずいぶんとマシになったのにゃ〜。お前たちの包帯は結構すごいのにゃ〜」 マミー達にマミーの包帯を巻いてもらうと、身体はだいぶマシになった。 「あとはこれをマリクにもっふぇ…ひ…ふ……むぐぐむぐ!…ぷっはぁ!! にゃ、にゃにするにゃっぁ!!」 「あ〜。あみとさま、かおもまく。まく〜」 「顔はいいのにゃ!息苦しいのは嫌いにゃ!」 「まったく、インフルエンザ対策だからっていちいちマスクの義務付けをしないでほしいのめぇ〜。大体自分で義務付けたくせにマスクは実費ってどういうことだよめぇ〜。これだから糞本部は…」 「にゃにゃ!?にゃんだ今の?」 「あ〜。へんなカー(霊魂)がとんでいった〜」 「こ、ここは霊魂を死者の世界に送る施設にゃ。霊魂の一つ二つ紛れ込んでも別に不思議はないのにゃ」 「あ〜。どくしゃのひともなっとく〜」 あたしが包帯を持って棺の部屋に戻ると、マリクはずっと棺に寄り添い、ぶつぶつと棺に話しかけていた。 「はぁ…」 あたしはため息をついてマリクの所に歩いていく。 「そんな身体でめそめそしてたんじゃ、墓荒しが来たときにどうするにゃ。今これを巻いてやるのにゃ」 そう言ってあたしはマリクの手足に包帯を巻いていく。 その間も、マリクは棺に突っ伏したままで何も言わなかった。 「あたしはさ。マリクのこと、好きだにゃ。人間だったころは生まれた時から信用できる人間なんて一人もいなかったにゃ。だから人を好きになるってどういうことかわからなかった。でも、マリクは、あたしのこと信頼してくれて、真面目に仕事して、あたしのことを信じてくれた。だからにゃ、あたし、マリクのことを信じた。好きになった」 「………」 「だから、信じてたマリクがあたしに何千年も嘘をついてたことが許せなかったにゃ」 「………すまぬ」 「でも、あたしも大人げなかったにゃ。ほんとは、こいつに嫉妬してたにゃ。大好きなマリクに何千年も慕い続けられるこいつがうらやましかったにゃ」 「…アミトのことも、好きだ」 「どっちが一番にゃ?」 「…………」 「にゃはは。意地悪してみたにゃ」 包帯が巻き終わると、あたしはマリクの細い体を抱きしめた。 暖かくて、柔らかい。 包帯越しでも、普通なら考えられないほどの強力な呪を受けた身体は、びくびくと快感を伝える。 でも、それ以上に心が温かくなった。 「陛下の魂が残っていた頃」 突然、静かにマリクが話し始めた。 「このお方は私のことを怒った。なぜこんなことをしたのかって。それから、しばらくずっと話をしてくださらなくなった」 「…」 「でも、最後の最後、陛下の魂が天に昇って行かれる時、一言だけこう言ってくださったんだ。 『ありがとう』って」 「……」 「私は、それだけでそれまでの何百年が報われた気がした。人の身を捨て、陛下の傍に使えると決めたこと。何もないこの墓で、陛下の魂が眠ってる間を孤独に過ごしたこと。全部が報われた気がしたんだ」 「…よかったのにゃ」 「…でも、魂が抜けた後も私はこの方のことを忘れられなかった。百年も、千年も。ずっとずっと。忘れたくなかった」 そう言い終えると、マリクは再び棺に突っ伏してしまった。 肩が震えている。 あたしは腕から感じる震えを押さえつけるように強く抱きしめて、言った。 「なら、忘れなければいいのにゃ」 「え?」 「…あたしは二番でもいいのにゃ」 「…」 「マリクは神様の処に行ったこいつをずっと一番愛せばいいにゃ。あたしは、マリクのことを一番愛するにゃ。で、マリクはあたしのことを二番目に愛してくれたらいいにゃ。今生きてる中では一番なのにゃ」 「……アミト」 「好きなのにゃ。マリク」 「アミト」 マリクと唇が重なる。 心地よい感覚が全身を震わせる。 ただ、触れるだけのキスで。 あたしは立ち上がった。 「でも、いつまでもそんなものに縋ってめそめそしてちゃだめなのにゃ!別にここから離れてもそいつのことを忘れなければいいだけの話にゃ!簡単にゃ!」 「………私には、難しいな」 「むぅ〜。乗りが悪いのにゃ。これだからいちいち型にはめないと納得できないアヌビスは…」 「む。私はアヌビスだが、柔軟な方だぞ。現に毎日毎日いらん事をするお前を許してきている」 「一緒にはしゃいで遊べるぐらい柔軟にならなきゃだめなのにゃ!」 「…………いや、それは…なんかアヌビスがどうというより、人としてだめな気がするから、いい」 「にゃぁぁぁ!今悪口言ったのにゃ!」 「お前の方が先だったぞ」 「ふん!別にいいのにゃ。あたしはあたしの道を曲げたくねぇ!にゃ(どや!?)」 「…いや、そんな、どや顔されても…」 「はぁ〜。乗りが悪いにゃ〜。もうこうなったら仕方無いのにゃ!」 あたしは部屋の中央に爪でガリガリと魔法陣を書き始めた。 「あ!こら!神聖な王の部屋の床に落書きをするな!」 「いいから黙って見てろ!なのにゃ」 あたしは魔法陣を書き終えると記憶の隅っこにある呪文を思い出す。 「何をしているのだ?」 「いいからこっちに来るのにゃ」 わけがわからないといった顔でこちらに歩いてくるマリク。 あたしは横に並んだマリクの手を握り締めた。 「ちょっとマリクの魔力をもらうのにゃ」 あたしは掌からマリクの魔力を少し吸い取り、あたし自身の全力の魔力と足して、詠唱に入った。 「っ!?何の詠唱だ?聞いたこともない呪文だ」 「………………… あたしは東方の魔術師に魔術を習ったことがあるのにゃ。だからちょっと特殊な魔術が使えるのにゃ。 ……………………」 区切りでマリクの質問に答えつつ、詠唱を続ける。 そして、長い詠唱を終え、魔法が発動する。 「おkにゃ! あとは2人でこの魔法陣の中に入るのにゃ!」 「………あ、ああ」 「アミト、いっきま〜っす!」 「っとと!」 「うわっ!?」 アミトに手をひかれ、魔法陣に入った途端に視界が閃光に包まれた。 一瞬重力を失ったかと思ったら、突如地面の上に降り立ったので、思わずバランスを崩してしまう。 「ふぅ〜。どうやら成功したみたいなのにゃ。実際に使ったのは初めてだったから心配したにゃ」 そう言う、女性の声が、やや上の方から聞こえる。 話し方はアミトにそっくりだが…。 私は声の方を見上げた。 「…お、お前は誰だ!?」 「私だ(モンスターエンジン)」 「…お前だったのか」 「すっかり騙されてしまったな」 「まったく気付かなかったぞ」 「暇を持て余した」 「神々の」 「「遊び」」 「って、やってる場合か!」 「にゃはぁ!な、ナイスツッコミなのにゃ」 「ほ、ほんとにお前は誰だ」 「私だ…」 「もうそれはいい!」 私の横、さっきまでアミトが居た場所にいたのは長身の、粗暴な男のような服の上からでも分かるほど成長した体つきをした女性だった。 「見てわからないかにゃ?」 「わからないから聞いている!」 「アミトだにゃ」 「嘘だ!! アミトはもっとぺったんこだぞぅ!」 「ぺったんこ言うな! あれは魔物化したら若返ったのにゃ!」 「というより、その外見でそのしゃべり方はやめろ」 「はにゃ?」 その女性のしぐさ、表情、それらがアミトであるということを示す。 「…しかしなんだか認めたくない…」 「何がにゃ?」 な、なんで、なんでぺったんこのはずのアミトが私より…。 「むぅ〜。やっぱりおっぱいは大きいと邪魔なのにゃ」 「…それは私への嫌みか?」 「はにゃ?」 はぁ…。なんだか疲れる。 見れば、アミトは大きくなっただけではなく、手足も獣ではなく人間の、人間の姿になっていた。 「人間だったころはこんなだったのだな」 「そうにゃ。おかげで商人をだます時とかは一発かければすぐに飛びついて来たからとっても楽だったのにゃ」 人間のアミトはとても美人だった。 スフィンクスのアミトも、もし成長したらこうなるのだろうか…。 「そういえば、マリクもなんだか今よりもエロいかっこしてるのにゃ」 「ん?」 そう言われて自分の身体を見下ろすと、どこか懐かしい格好をした私が居た。 透けて見えるほどの薄絹一枚に黄金のアクセサリーの数々。 もちろん薄絹の下は下着など付けておらず、大事な部分を隠すのは何もない。 秘所の毛は幼い頃より脱毛の薬を塗り、生えないようになっている。 そして身体には日焼け止めの油が塗られ、その上に金粉の化粧が施されている。 たしかに、今の時代からするとエロい格好かもしれない。 「まぁ…あの当時は結構普通だったからな」 「それが普通なのはずっと宮殿で暮らすえら〜〜〜〜〜〜い人だけなのにゃ。ずっと炎天下の日差しの下で暮らす庶民がそんなかっこしてたら半日で死者の国行きなのにゃ」 「私達でも外に出るときはちゃんと重い服を着こんだぞ」 「服が重いなんて言ってる時点でありえないのにゃ〜」 「ああ…人の手足だ…。懐かしいな…」 「あたしは逆に違和感なのにゃ。何千年も魔物だったからにゃ〜」 私は細く長い指をした自分の手を見て感動を覚えた。 「ところで、これはどういうことだ?なぜ私たちが昔の姿に戻っている?」 「ふふ〜ん。夢を操る魔法を使ったのにゃ」 「夢?」 「そうにゃ。ここは夢の中にゃ。この姿もこの部屋も、あたしかマリクの記憶から作られてるのにゃ。 っていっても、痛みも快感も感じるけどにゃ。にゃはは。すごいのにゃ?」 そう言われれば、この部屋は、大昔、私が人間だったころに住んでいた陛下の宮殿の私の部屋…。 「…懐かしい」 私はベッドの横に置かれた装飾品に触れる。 夢だなんて言うのが嘘のようだ。 ちゃんと触れられるし、感覚も伝わる。 「だめだよぉ。あんまり懐かしんでると現実の世界に戻りにくくなっちゃうよ?」 「え?」 「夢って言っても、ここはあの魔法陣の中に作った異世界。ちゃんと現実の世界に戻らないと一生閉じ込められちまうよ」 「へぇ〜」 「暢気な顔すんなよ。あたしはさっさと帰りたいんだよ」 「え?」 「マリク。せっかく魔力全部使ってこの世界に連れて来てやったんだ…。ちゃんと、王様にお別れしてきな」 「え!?」 アミトの言葉に私は驚きを隠せなかった。 「陛下が、陛下がここにいるの!?」 「ああ、いるよ。それも現実に生きていたころと寸分たがわぬやつがね」 「……陛下」 「あ〜あぁ〜。夢見る乙女の顔になっちまった」 「……っていうか、アミト。しゃべり方が」 「あんたもいつもの堅っ苦しさが抜けてるね」 「え?あれ?そう言えば。でも、なんかこっちの方が自然ね」 「夢の世界にシンクロしてるからさ。だんだん記憶も鮮明にあのころに戻ってくるよ」 「あ、ほんとだぁ。今ならこの宮殿の部屋も全部思い出せそう」 「…でも気を付けなよ。あまり長居し過ぎると、この世界に囚われて、現実に帰れなくなっちまうよ」 「………うん」 「そして丸1日もすればこの世界は消えちまう。それまでに現実に帰らないと世界と一緒に魂まで消えちまうよ」 「……わかった」 少しだけ。 それでもいいかもって、思った。 「ころ合いになったら迎えに来るよ」 「え!?どこに行くの!?」 「ちょっと懐かしがてら下町を散歩してくる。数時間は戻らないから、その間に、ちゃんと王様に別れ言ってきな。あくまで、この世界を作ったのはせれが目的なんだよ。忘れるんじゃないよぉ〜。じゃ」 「あ!ちょっと、アミト!」 ああ。行っちゃった。 「誰か、いらしたのですか?」 「え!?ムンカ?」 「はい?」 「誰だろう?」って思う前に名前が出てきた。 思い出した。 私の世話係のムンカだ。 「お食事の時間です。陛下も少し遅れてご一緒なさるそうですよ」 「陛下も!?」 陛下に会える! 私の心が高鳴った。 「さ、いきましょう。支度はできております」 「はい!」 「あら、今日はずいぶんと聞きわけがよろしいのですね」 そう言ってムンカの後に付いていく。 「朝はあんなに機嫌が悪そうな顔をしておられたのに。何かあったのですか?」 「え?ううん。そんなことないよ?」 「先日挙げた婚礼の儀から今日で12日目。今夜は、気合いをお入れくださいね」 え?12日?…あ! そうか。今日はあの日なんだ。 何千年も昔、当に通過したあの日。 あの時は不安でいっぱいだったあの日。 初夜の儀。 それを思い出したとたん、恥ずかしさと動悸のような不安がしてくる。 変な感じ。 男の人を迎えるのなんて魔物になってからは数え切れないほどあったというのに。 気持もあのころに戻ってきてるんだ…。 「ねぇ、初めては痛いのかしら?」 「…………さぁ…。個人差があると聞きますわ」 「ムンカはどうだったの?」 「私は…。痛みというより驚きの方が強かったように記憶しております」 「ふぅん」 どうしよう。 思い出したとたん、初めてではないはずの初めてが怖くなる。 逆に、何千年も前に経験したはずの初めてが全く思い出せなくなる。 「さ、つきましたよ」 「……うん」 さっきまではあんなに嬉しかった食事。 でも、今は今夜のことへの不安で頭がいっぱいになっていた。 きっと「朝」の私もこんな気持ちだったんだろう。 私は席に着くと、大きなテーブルに並んだ豪華な食事を見る。 何千年も食してきた粗末な食事と見知らぬ男の精。 それとは比べ物にならないほどの心躍るはずの食事。 でも、今の私には毎日見ている光景に思える。 私は不安の中、「いつもの」食事を口に運んだ。 「おいしい」 ううん。懐かしい。 でも何か不思議な感じ。 私がそんなことを思いながら食事を食べていると。 「陛下がおいでになりましたよ」 「え!?」 私は慌てて入口の方に目をやった。 そこには、陛下のお付きの者が何人か扉の前で頭を下げていた。 そして…、 「ああ。疲れたよ、アトク。もうマリクは来ているのかい?」 忘れもしない、お優しい声。 泣いちゃだめ。変に思われちゃう。 でも、でも…。 「陛下ぁ!」 私は思わず席を立って陛下の大きな身体に抱きついた。 「わわぁっと!ど、どうしたんだい?マリク」 「陛下ぁ…。陛下ぁ」 私は化粧が崩れるのも気にせず泣きじゃくった。 「…ぐす。すみません。…ちょっとお昼寝をしていたら、陛下がどこかへ行ってしまう夢を見て…」 私は状況を取り繕うために嘘をついた。 でも、それを聞いて陛下はにっこりと笑われ。 「ふふ。私はどこにも行ったりはしないよ。それに、今日は初夜の儀だ。今日から私たちは本当の夫婦になるというのに、どこかに行ったりする訳ないよ」 そう言って、陛下は私の頭を撫でてくださった。 心が震える。 幸福で満たされる。 「ふふ。婚礼の儀からずっと君は不機嫌だったから、てっきり私のことを嫌っているのかと思っていたよ」 「そんな!そんな…わけありません」 そうか。 この頃の私は貧しい自国から嫁いできて、自分だけが裕福な陛下の国に来たことが後ろめたくて…。 「嬉しいよ。マリク。さ、これで涙をふきなさい。食事がすんだら化粧も直さないとね。せっかくの美人が台無しだ」 「はい」 私は名残惜しくも陛下から身体を離して席に戻った。 ただそれだけなのに、先ほど陛下に触れていたところが寒く感じる。 私は、涙と食事をそんな気持ちと一緒に飲みこんだ。 食事が終ると陛下は午後の仕事に戻られた。 私は自室に戻り、ムンカに化粧を直してもらう。 風呂場の冷たい水に浸かり、身体に塗った油を落とす特殊な植物の粉で身体を擦る。 そして、風呂場から出ると、ムンカが柔らかい布で身体を拭いてくれた。 身体が乾いたころ、ムンカが手に油をつけ、私の方にやってくる。 最初は長く黒い髪から。 そして、身体。 ぬるぬるとした感覚が私の肌を滑る。 私は現実の経験を思い出して少しエッチな気分になってしまった。 大事なところは種類の違う油。 これには少しお薬が入っている。 私は陛下に嫁ぐと決まってから、ここには毎日これを塗られる。 これには私のここを男性が喜ぶように肉を実らせ、柔軟にする秘薬が入っている。 初めてそれを聞いた時は恥ずかしくて嫌がったけど、毎日の習慣になってしまえばそれも無くなる。 その効果か、私のそこはこの1年で他の姫に比べ幼女のようにむっちりと膨らみ、艶やかで張りのある肌になった。 「この薬には初めての痛みがなくなり、より殿方を感じられるようになる効果があるそうですよ」 「…ムンカ。それ、食事の前の質問の時は教えてくれなかったよね」 「くすくす。私は姫様の質問に一般的な答えを答えて差し上げただけですよ」 「むぅ〜」 「それにしても、姫様のここは同性の私が見ても本当にきれいですわ」 「でも、私はここがこんな風になってから、しばらくは恥ずかしくて部屋を出るのも嫌だったのよ」 「ふふ。恥ずかしいと思うからいけないのです。姫様は特別なのですから」 「他の国の王妃様たちもここはこんななのかしら?」 「さぁ。国によって風習がありますからねぇ」 「なんだか恥ずかしくなってきたわ」 そんな話をしながらも、豊満な私のそこのお肉を揉みほぐすようにムンカは薬を塗った。 薬とは違う液体が太ももを垂れるほどに溢れていたが、ムンカはそれを見ても布で拭いてくれるだけで、何も言わない。 始めの頃は私は不思議に思い、理由をムンカに聞いて顔が真っ赤になるくらい恥ずかしい思いをしたが、私がそれを言うと、ムンカも自分のそこをいじり、私と同じように液があふれるのを見せて、 「別に恥ずかしいことじゃありません。女ならばこれが健康な証拠なのですよ」 と言ってくれたので、それからはムンカの前では恥ずかしいと思わなくなった。 油を塗り終わると顔や身体に化粧を施していく。 私の身体が彫刻のように装飾される。 ムンカの指が正確な動きで木板に焼き付けられた模様を私の身体に写していく。 「あれ?なんかいつもと違うわね」 「ええ。本当はもう少し時間が経ってからと思っておりましたが、もうついでなので。これは初夜の儀の為の化粧ですわ」 「へぇ〜」 化粧が終わり、私は今夜の為だという衣装を着た。 「あ、姫様。その化粧は陛下以外の殿方には見せてはいけない掟がございます。なので、今日は夜になるまで部屋でお過ごしください。部屋には男を入れぬように致します」 「わかったわ」 ムンカが部屋を出ていく。 プールのような浴槽があり、やたらと広い私の部屋。 王様の妃が代々住むことを許される特別な部屋。 以前、お義母様の部屋にお邪魔した時、ここよりも狭くて、なんだか悪い気持ちになったが、お義母様は、 「いいのよ。私もしばらくあの部屋にいたんだもの。そしてその前は私の母が、その前はお祖母様が。そうやってあの部屋は代々引き継がれる物なのよ」 と教えてくださった。 お義母様はとてもいい人だ。 お義母様がお優しいから陛下もあんなにお優しいのだと私は思ったのを覚えている。 「よっと!」 「ひゃ!?」 私が感傷に浸っていると、突然知らない女の人が窓から飛び込んできた。 「あ、あなた、誰ですか!?」 「ん?マリク。あたしの顔忘れたのかい?」 「あ、あなたのような人は知りません!こ、ここは王宮ですよ。間違ってはいってしまったのなら人は呼びません!今すぐにお逃げなさい」 私は女性に向かって言った。 「(ガーーーーーンッ!!)」 すると、女性は驚きの表情を浮かべたまま、部屋の隅でうずくまり、落ち込み始めた。 「…アミトだよ。ほんとに覚えてないのか?」 「…………………………………………アミト…? あっ!!」 私はその瞬間に全てを思い出した。 この世界のこと、現実のこと、私達のこと。 「ごめんなさい!アミト!!!」 「うわぁ〜。思い出されるのにえらく時間かかったなぁ〜」 そう言ってアミトは人差し指を胸の前でツンツンと合わせて落ち込む。 「ごめんなさい。でも、なんか変なの。ここに来てからここがあまりにも当たり前な気がして、現実のことをすっかり忘れていたの」 「それは危ない危ない…。ほんっと冗談にならないぜ?マリク、いくらなんでもここに馴染み過ぎだぜぇ?」 「そう言うアミトも言葉使いが男の人みたいになってるわよ?」 「ああ、そう言えばそうだな。まぁ、あたしはもともとこんなんだからなぁ」 「え!? じゃ、じゃあ、まさか魔物の時のしゃべり方は…」 「キャラづくりだ」 「おおぅ……」 「あわわ。引くな引くな。冗談だよ、冗談。魔物になったあんたならわかるだろ?魔物になってから、なんとなく性格とか、姿に合わせて変わっていったの」 「そうかしら?」 「…マリクって、意外と天然なのか…素は」 「そんなことはないわ」 「まぁ、少なくともあたしよりもずっと周りの環境に流されやすい性格だってのはたしかみたいだね。その証拠にさっきあたしのこと忘れてたし」 「……そうかも」 「気を付けなよ。さて。そろそろ帰るかい」 「待って!」 「んあ?」 「…………今夜は、初夜の儀があるの」 「初夜の儀?」 「うん。その…陛下と、初めての夜」 「まさかあんた」 「その時、お別れを言いたいの」 「…………はぁ」 「いい?」 「ああぁ〜〜!なんでそんなかわいい顔で聞くんだよ!アヌビスのマリクなら絶対そんな顔しないってのにぃぃ!!」 「だめ?」 「上目づかいは反則!! はぁ…まぁ、丸一日は大丈夫なはずだから、明日の昼前までは大丈夫だろうけど…」 「アミトぉ…」 私はアミトに縋りついて懇願した。 「…………それ、現実に帰ってももう一回やってくれたらいい」 「え? いいよ」 「許す!!(たら…)」 「わわ。アミト、鼻血!」 「一応、あたしがあんた以外に姿が見えない様にして、この部屋にいるから。今夜は好きなだけ王様とヤっちまいな」 「………そんな。恥ずかしい…」 「ぶっ!(鼻血) そ、そんなこと言ったって、またさっきみたいに現実のことまで忘れて帰れなくなっちまったらシャレにならないからね。ダメなもんはだめだ」 「……わかったゎ…(しゅん)」 「ぬあ!…」 「アミト?どこ行くの?」 「ちょ、ちょっとトイレ!」 アミトはそれだけ言うと鼻を押さえたまま窓から出て行ってしまった。 アミトは帰ってこないまま、日が暮れる。 ムンカが部屋に明かりをともしにやってくる。 壁に彫られたくぼみに立てられた溶けない魔法のろうそくに火が灯されていく。 私の心は緊張で激しく動悸していた。 時間が経つのがとても遅くて、私の我慢をどんどん揺るがしてくる。 そうして、しばらくするとムンカが再び部屋に入ってきた。 「姫様。陛下がお出でです」 「…は、はいっ!」 私はベッドから立ち上がり、入口の方に向き直る。 手足が強張る。 心臓がのどから飛び出そうなぐらい激しく鼓動する。 ――カツン、カツン 陛下の靴が石の床を叩く音が近づいてくる。 ――カツン、カツン、………… そして、足音が止む。 私の部屋の前には長い絨毯が敷かれている。 そのため、足音が消えたのだ。 もう、そんなにも近くに陛下がお出でになっている。 心臓の鼓動で胸が張り裂けそうだった。 そして、 「マリク」 部屋の前に、狗の仮面。アヌビスの格好をした陛下が現れる。 私は陛下の見える部屋の入り口まで歩いていく。 緊張で膝が震え、転びそうになる。 ようやく、陛下の前にたどりつく。 鍛え上げられた上半身が目の前に見える。 長身の陛下を私は見上げるように、陛下は私を見下ろすように向き合う。 「よ、ようこそお出でくださいました」 「マリク。今夜から、私達は真の意味で夫婦と成る。準備はいいかい?」 「はい!この時をずっと、ずっと昔から、待ち望んでおりました」 私は手を差し出す。 陛下は、その手に自らの手を乗せ、そして、一歩歩み出る。 陛下が部屋の中に入る。 私が招き入れたのだ。 そして、陛下が仮面を外す。 陛下の優しく凛々しいお顔が現れる。 ああ。この顔を見るのをどれだけ望んだだろう。 何千年も、何千年も願った。 昼間は嬉しさや不安やさまざまな気持ちが混じり合い、とてもまともにお顔を見ていない。 プラチナの長い髪。 細く鋭いが、優しく微笑むその眉。 少年のように輝き底の見えないほどに深い碧い瞳。 凛々しい口元が、ゆっくりとほほえみを浮かべ、 私に陛下の唇がゆっくりと近づく。 私は少し背伸びをしてその唇を受け止めた。 ――ちゅ 優しく、触れるだけのキス。 そして、すぐに離れていく唇の温もり。 「…ぁ」 名残惜しさの余り声が出る。 聞こえるか聞こえないかの小さな声。 でも、陛下はそれを聞いて、にっこりと笑うと、私を抱きしめて、ベッドへ歩き出す。 私も陛下に抱きしめられたまま、歩き出す。 陛下は私に歩幅を合わせてゆっくりと歩いてくださる。 私を包む温もり。 抱きしめられた陛下からかおる匂い。 それら全てが私を幸せにしてくれる。 先ほどまでの痛いほどの動悸が気づけば治まっている。 そのまま、ベッドの淵に、二人で腰掛ける。 そのまましばらく見つめ合う。 陛下は包み込むような眼で私を見つめてくださる。 そして、にこりとほほ笑む。 しかしその顔には、少し困ったような表情が見て取れた。 あ! 私はムンカから教わった初夜の儀の作法を思い出して声をあげそうになった。 陛下は私の様子を見てくすりと笑った。 私は慌ててサンダルを脱いでベッドに上がり、座る。 作法で習ったとおり、両足を横に流し、片腕をついて。 殿方を誘うように笑うって、ムンカは言っていたけど、私、どうやったらいいかわからない。 だから、私は今の気持ちをそのまま表情に出した。 ――陛下。早く来てください。 陛下は優しく笑い、軽く頷くと、靴を脱いで私に手を差し伸べる。 私はその手を握り、陛下が私を優しく引っ張って、私は陛下の胸に包みこまれるように抱きしめられた。 「…陛下、愛しています」 「私も愛しているよ。マリク」 ――ちゅ 今度は、深い深いキス。 口を開いて陛下の舌を招き入れる。 陛下の唾液の味を感じる。 甘い。 私はその味を求めるように舌を動かして、陛下の舌に絡めた。 ちゅぱちゅぱと音を立てながら二人の唇が結ばれる。 好き。 好き。 好き。 私は心の中で願い続ける。 ――ちゅ 静かに唇が離れる。 ろうそくの明かりに照らされた唾液の糸が音もなく切れて。 ゆっくりと、抱きかかえたまま、陛下が私を横たえる。 私は、早く欲しい気持ちを抑え、ゆっくりと股を開いた。 陛下が腰に巻いたお召ものを外すと、陛下のそれが現れる。 私は思わず目を見開いて驚いた。 大きい。 私の腕くらいありそうな太さ。 「きれいだ。マリク」 「陛下も。逞しいです」 毎日薬を使って私の秘所を変えていったわけがわかった。 たぶん陛下も同じように薬で其処を大きくなさったのだろう。 それとも、ここの王家の男性はみんなこうなの? たぶん。ふつうの女性じゃ入らない。 薬で変わった私の秘所はさっきのキスだけでもう垂れるほどに濡れていた。 ムンカのを見せてもらった時も、私と違って結構時間がかかっていたもの。 私のここはたぶん特別濡れやすいのだと思う。 そして、 ――クチュ 「あぁん」 その刺激に思わずいやらしい声が出てしまう。 嘘!?触れただけなのに。 毎日ムンカに触れられているけど、こんなに気持ちよくなったことなんて一度もない。 それに、ムンカに触れられた時の気持ちいいは、マッサージみたいな感覚。 なのに、今のは全然違う。 「毎日、薬を使ってくれていたんだね」 「ふぇ?」 「あの薬は魔法の秘薬なんだ。私が飲んでいる薬と対になっていて、薬を使っている男女が営みを行うと、こんな風に女性はとても気持ち良くなれるんだ」 「…じゃあ私、陛下とだけ、こんなにも気持ち良くなれるのですね。私、陛下だけの女になれたのですね」 「ああ。マリクは私だけの妃だ」 「ああ、嬉しい」 私の目から涙が零れ落ちた。 私の身体は、知らぬうちに陛下だけのものになっていたみたい。 それが嬉しくてうれしくて。 「入れるよ」 「はい」 陛下が入ってくる。 身体の全てが押し広げられるような感覚。 そして、身が燃え上がるような快楽。 私は初めての痛みなど感じる間もなく、挿入の快感だけで絶頂に達した。 その時、思いだしたの。 何千年も昔の、今の記憶。 私はこの快楽で意識を飛ばし、記憶も朧気なまま初夜を迎えた。 陛下をまともに受け入れられるようになったのは半年もしてからだった。 それまで、この快楽には耐えられなかった。 でも…。 今の私は違う。 魔物と成って、さまざまな経験をしたから。 そして、今日もアミトと人間だと死んでしまうような快楽、魔物の身体でも気絶してしまうほどの快楽を経験したから。 私は快楽の中でも、しっかりと陛下を気持ちよくさせるように腰を動かす。 「うっ…。すごい。マリクのここは、私を誘いこむように動いてる」 「わ、わたしもぉ…へいかを…かんじまふ〜」 快楽の余り口がうまく動かなくなってる。 陛下はその大きなものをゆっくりと出し入れし始める。 「あぁ!」 カリ首が私の中の肉襞を弾くたびに異常なほどの快感が沸き起こって。 「ひあぁぁぁああ!!」 ――プシュ そして、再び突きこまれた瞬間に、私は潮を吹いてイってしまった。 「ごめん。少し激し過ぎたかい?」 「い、いいんれふ。へいかのぉ、あいをかんじられへ、わらひうれひいでふ。もっと、もっとしてくらはい」 朦朧とする意識の中応える。 数千年ぶりの人間の身体で味わう異常な快楽。 やっぱり人間の身体は魔物と違い快楽に弱いのか、もう呂律が回らなくなってる。 気持ちいいの。 幸せなの。 ずっとずっと願い続けていた。 想い続けていた。 「へいかぁ〜」 「マリクっ」 陛下も限界が近いのか腰の動きが速くなる。 もう私はイキ続けていた。 陛下の腰が動くたびに腰が跳ねまわる。 私の身体じゃないみたい。 でも、全然嫌じゃない。 死にそうなくらい気持ちいい。 死んでもいいくらい幸せ。 ――ドピュビュビュビュゥ お腹が膨らんでしまいそうなほどの精液をおなかに感じて。 「へいかぁ」 「マリク…」 私達は抱き合って眠りに落ちた。 「ほほ〜む。マリクのあの可愛いエロいまんこにはそんな秘密があったのか…。むふふ。ってことは、その対になる薬の作り方を盗み出してそれを作って毎日私のまんこに塗れば…。うひひ。マリクはあたしんもの〜♪」 あたしは2人を起こさないように部屋を出た。 どれだけ眠っていたんだろう。 私は幸せなぬくもりを感じて目を覚ました。 陛下が私を抱きしめたまま優しく私を見つめてくださっていた。 寝顔を見られていたと思うと、少し顔が赤くなるのを感じた。 変な顔してなかったかな? 「可愛い寝顔だったよ」 陛下が優しい声で言ってくださる。 私はほっとして、きゅって陛下の身体を抱きしめた。 陛下のにおいだ。 好き。 そして、陛下がそのまま体を起こす。 私の身体も持ち上げられる。 「これからも。ずっと私の妻でいてくれ」 陛下が笑う。 その時、ハッとした。 この台詞。この表情。この光景。 何千年も私が陛下に使えることになったきっかけ。 そうだ。 この国にきて後ろめたさと不安でいっぱいだった私を一瞬でこの国が大好きになって、陛下のことを何千年も慕い続けるきっかけになった言葉。 ずっとずっと。 心の底に大事に大事にしまい続けていた言葉。 そして、私はこう答える。 「はい。いつまでも。一緒です」 そして、さらに付け加える。 あの時は言わなかった一言。 「その魂が、神様のもとへ行くまで」 その一言は、とても重く感じた。 今にも身体がつぶれてしまいそうなくらい。 でも、でも。 私は、もう一人の大好きな人と、アミトと約束したから。 「ありがとう」 陛下が笑う。 優しい、優しい笑顔。 そしてその言葉は、陛下の魂が召される時と同じ。 暖かく、優しい、包み込むような響き。 この笑顔を焼きつけよう。 永久に私の心に焼きつく様に。 永遠に、忘れないように。 涙があふれてくる。 でもだめ。 まだ我慢しなくちゃ。 この笑顔をもっと焼き付けるの。 身体が離れてしまっても、この方を忘れないように。 そして、 ――ちゅ 陛下がキスしてくださったと同時に、私は目を閉じた。 涙が、零れ落ちた。 これまで私をあの場所に縛り付けていたものが。 失う怖さが。 流れ落ちた。 「はい〜!とうちゃ〜っく!」 アミトと手をつないで着地する。 戻ってきた。現実に。 私の住む世界に。 あの世界を、名残惜しくないと言えば嘘になる。 でも、もう決めたのだ。 私は。陛下を重りになんてしない。 陛下のあの「ありがとう」はきっとそう言う意味だったんだ。 もう、いいんだよって。 私は、獣の手を地面に付き、涙した。 「にゃにゃっ!?だ、大丈夫かにゃ!? お別れ、言えたんじゃなかったのかにゃ!?」 「……ああ。…ちゃんと、言えたよ」 「…まだ寂しいかにゃ?」 「…ああ。寂しくないと言えば、嘘になる」 「ほら。これで涙を拭くにゃ」 そう言って、アミトが手渡した布で、私は涙をぬぐった。 その時、気づいた。 「ん?この布は…」 私は見覚えのある色と、そのフリルのついた柄を見て、その布を広げて見た。 「なっ!!」 「〜♪」 「これは私の下着ではないか!」 「ま、前に借りた奴だにゃ」 「私は貸した覚えはないぞ!どうりで見つからぬと思っていたら!」 「にゃはは〜。マリクが怒った〜♪」 私は駆けだしたアミトを追いかけた。 涙は風になって消えた。 私はなぜか笑顔になってしまった。 ああ、そうか。 私は走り出して思った。 ずっとずっと。身体が軽くなっていた。 09/11/24 18:11 ひつじ
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はぁ〜。おk、積んだ(レポート提出的な意味で)
おかしいな。ワードを起動したところまではレポートをやるつもりだったんだけど…。 気づいたら一日これ書いてましたw 今夜は眠れない夜になりそうだぜ(笑) |
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[エロ魔物娘図鑑・SS投稿所] |