妹憑き
暮羽(くれは)は昔から良く出来る子だった。
気立てはよく、母の手伝いも進んで行い、女だてらに字も覚えた。
そんな暮羽が守巫女(もりみこ)に選ばれた事に疑問を抱く村人はいなかった。
義兄としては誇りでもある義妹が守巫女になることは喜ばしい事ではあったのだが、いかんせん自慢の義妹が家を離れるのは寂しくもあった。
…とは言っても、山の社は目と鼻の先ではあるのだが。
それでもどうだ、
成人間もない少女が一人いなくなっただけでずいぶんとこの家は寂しくなってしまった。
「母さん、畑行ってくる」
「あいよ、気を付けなよ」
『私もいっしょに行く!』
その細腕にはあまりに重荷な鍬を手に、嬉しそうに自分の背中には余る竹かごを担ぐ義妹の姿。
そんな光景が未だに母の言葉に続いて浮かんでしまう。
「……」
「…。はぁっ。そんなに寂しいんなら、会いに行ってやったら?」
そんな俺の姿に母の声。
「いや、そんなんじゃねぇよ。ただ、暮羽に守巫女なんて大役が務まるのか心配なだけだ」
「そうかい。…ぼやぼやしてると日が暮れっちまうよ?」
「あ、ああ。そうだな。じゃ、行ってくる」
その泥だらけの赤子が捨てられていたのは山と言うにはあまりに小さな山の上の社。
最初に見つけたのは守巫女としては経験の浅い、夕(ひぐれ)様だった。
社ではちょっとした騒ぎになり、そして、その赤子を引き取ると言い出したのは俺の父だった。
当時三つだった俺には朧気な記憶もなく。
ただ、それでも物心ついた時から俺には妹がいた。
父も母も分け隔てなく俺と暮羽を育てた。
太平の世の続くこの国ではもはやただの言葉になってしまった家の名。
それでも先祖代々続く家名と土地。
父にはきっと僅かばかりの誇りなどもあっただろう。
それでも、俺達のために家宝の刀を竹光に仕替え、毎日振り続けた木刀を鍬に持ち替える父の姿は子供ながらにかっこいいと思った。
父が悪い病を患い、七日と経たずこの世を去った時、真ん丸な瞳から大粒の涙を流す暮羽を見て、俺はその日から鍬を手に泥にまみれながら畑に立った。
そんな俺を見て暮羽が木の板が擦り切れるほどに筆を走らせ字を学び、時には母を手伝い、暇があれば俺と共に畑に立つようになった。
自慢の妹だった。
娘のようにも思っていた。
片時も離れた事なんてなかった。
いや。
やめろ。
いい加減俺もあいつから離れなくては、な。
俺は邪念を振り払うように先祖の土地に鍬を穿つ。
暮羽に再会したのは暮羽が家を出て三月も経たない春の頃だった。
「えへへ。見てみて、お兄ちゃん。お母さん。守巫女様の御正衣だよ!」
そう言って美しい赤と白の男装姿を見せる妹。
未だにあどけなさを残す暮羽の顔と幼い身体つきにはお世辞にも似合ってはいなかった。
「こらこら。あまりはしゃいで大事な巫女服を汚すなよ」
まったく、しっかりしているとわかっていてもどこか危なっかしい。
「むぅ〜。いいじゃない。久しぶりに会ったんだから!ねぇ〜。お母さん」
「はっはっは。そうだね。…暮羽。おいで」
母さんが優しく微笑み、暮羽に向かって両手を広げる。
暮羽は真ん丸の瞳を輝かせてそちらに駆けた。
「立派になったね、暮羽。ほら、お父さんにも見せてお上げ」
「お揚げ!?(キラキラ)…と。そうじゃなかった。は〜い」
「ん?」
初めて違和感を感じたのはここだった。
「お揚げ」と目を輝かせた暮羽の頭上に一瞬狐の耳のようなものが見えたのだ。
結論から言うならばそれは見間違いでも錯覚でもなかった。
しかしながら、当時の俺には父の位牌を前に姿勢正しく正座して手を合わせる妹にそんな異変が迫っているなど気づけるはずもなかった。
次に暮羽に会ったのは秋も深まる実りの季節だった。
村は大忙しで冬に向けて蓄えをし、俺も畑の芋ほりや、未だに家に米を納めてくれる村人への挨拶回りなどで駆け回っていた。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。私ね、夕様から褒められたんだよ!」
そう言って無邪気に抱き着いてくる妹の身体の感触に確かな違和感を感じたのだ。
(むにゅん)
や、やわらかい…。
いや、まて、落ち着け。暮羽も成長期だ。
成人したとはいえ、まだまだこれから大人になっていく。
そうだ。母さんを見てみろ。
『こうして身体に栄養を蓄えてるのさ。だから私は丈夫なんだよ』
そう言って病で亡くなった父の墓前で不謹慎に笑う明るい母。
その肉付きからすれば暮羽も当然…。ん?
暮羽は妹とは言え義妹のはずだ。母と血のつながりは…。
いや、しかし。だが。
「どうしたの?お兄ちゃん?」
(ふにょん)
(むにん)
成長期の暮羽のために大きめにあつらえられた巫女服の上からではほとんどわからないが、明らかに春の時と感触が違う。
「い、いや。何もない。…暮羽、お前もそろそろ大人なんだから、あまり子供みたいなことをして夕様や豊(ゆたか)様を困らせるなよ」
「むぅ〜。大丈夫だよ!私これでも他の守巫女様達からは『大人しくて賢い子ね』って褒められるんだから!」
「くすくす。あんたたちは本当にいつまでたっても仲がいいね。私は嬉しいよ」
母さんに笑われてしまった。
その次に会った時の暮羽の変化は明らかな物だった。
「おにいちゃ〜ん!わっ!?とっと…」
(たゆん)
揺れた!?
お、おい。なんだ今のは?揺れたぞ?胸が揺れた!?
「むぅ…。また大きくなって…。動きづらいよ…」
「あっはっは。やっぱりあんたは母さん似ね」
いや、待て、母さん。暮羽は血は繋がってないはずだ…。
「えへへ。私もお母さんみたいに優しいお母さんになれるかな?」
「そうね。きっとなるわよ」
和やかな母娘。
いや、だが、しかし、その娘の発育がおかしい。
身長はほとんど伸びていない。
なのになんだ?あの胸は!?
それに…。
「えへへ。おにいちゃ〜ん」
とすっ。
可愛い妹が胡坐をかいていた俺の上に座り込んできた。
瞬間。
(むにゅ)
なっ!?
や、柔らかい!?
俺の硬い膝の上にかかる重圧。
それは明らかに去年までの妹のものとは違う。
柔らかい、女の身体のものだった。
「……暮羽、お前、少し食い過ぎなんじゃねぇか?」
「ぅ……。てへへ。だって、社のご飯、おいしくて…」
照れる妹の表情が何故か少し色っぽい。
そして、自分で言ってはみたが、妹の身体の変化は明らかに太っているのとは違う。
腰は細くくびれていながら、その腰回りや胸周りだけが確かに成長している。
「巫女ってどんなもの食べるんだ?」
俺は煩悩を振り払うためにも尋ねた。
「え?ん〜っとね。厚揚げの素焼きでしょ、お揚げさんのお味噌汁でしょ?それからお揚げのたくさんは言った炊き込みご飯でしょ…それから…」
「なんだその揚げへの飽くなき執念は!?」
「むぅ〜。お揚げさんはね、すっごくす〜っごくおいしいんだよ!」
(にゅっ)
その瞬間、俺は見てしまった。
荒ぶる妹の頭、そして俺の膝に腰かけたその尻に。
それは、どう見ても狐の耳と尻尾だった。
「な…。お、お前、それ…」
「え?どれ?」
(しゅぽん)
妹が折れに指差されるままに見えるはずもない自分の頭上を見ようと真上を向いた拍子にその耳と尻尾は妹の身体に吸い込まれるように消えた。
「なにもないよ?」
「……。俺、疲れてるのか?」
「そうだね。憑かれてるかも」
「え?」
「ん?どうしたの?」
「あ、いや…」
なんか、暮羽の言葉に違和感があったような…。
その半年後、暮羽の身体つきは完全に様変わりしていた。
「えへへ〜。おにいちゃん。みてみて、私ね、大きくなったんだよ!」
そう言って自慢げに自分の頭の上に手を乗せ、俺の隣に並び、俺の胸へと自分の頭の上から水平に手の平を動かす妹。
しかしね、暮羽。
気のせいか、お前のまだ子供らしい小さな掌よりも先に、その大きなお胸が当たっている気がするんだ。
それも、真ん丸なお胸がひしゃげるほどに。
「どう?大きくなったでしょ!?」
「ん〜…」
確かに背は伸びていた。
握りこぶし一つ分ぐらいだろうか。
しかし、相変わらず小さな妹。
その背丈は村の子供とさほど変わらない。
ざっと見ても四尺六寸ぐらいだろうか…。
しかし、その身体を子供とさほど変わらないというにはあまりに無理があった。
初めてそれを着て見せてくれた時には『ぶかぶかな』と言う言葉がついて回った巫女服は胸の部分が押し上げられ、あろうことか合わせ目からは谷間が見えそうになっている。
それにその腰回りは袴の上からでもはっきりとわかる程に色っぽくむっちりとしている。
小柄なその背格好とあまりに矛盾したその艶を帯びた身体つきは、ひた隠しにしようとする俺の男の煩悩を刺激するものがあった。
「お、大きくなったな…///」
何故照れた!?俺!?
「えへへ〜。わ〜い、わ〜い」
(たゆんたゆん)
おいおい。そんな身体で飛び跳ねたら危ないでしょ…。
「わ〜い。あっ…」
(ぷるんっ)
あ…
こぼれた。
こぼれたよ、こぼれた。
見てみろよ、あれ。
巫女服の合わせ目が緩んで真っ白い球(玉)の様な妹の胸と、その先端の突起が見えたよ?
綺麗な薄朱色だったよ?
「……」
「ぁ……。ぁゎゎ…(カ――――)」
真っ白な胸をさらした義妹の顔がみるみる真っ赤になっていく。
それを見て、俺の欲望は少しどこかへ行ってしまったようで、
「ぷっ。あはははっ。まったく。お前は本当、子供の頃から変わらないな」
「む、むぅぅ〜〜〜」
妹は何故か悔しそうにむくれていた。
その夜は暮羽が社で教わったという揚げ料理の数々を披露した。
炊き込みご飯、和え物、焼き物、味噌汁。
そのどれもに揚げが入っている…。
なんだこの揚げ。
おい、見てみろよ、この厚揚げの焼き物なんか、ホロホロでカリカリで…。
「美味い…。侮れんな…揚げ…」
「でしょ〜?豊様の作る揚げ出し豆腐は、露(しずく)様があまりのおいしさに食べた瞬間に涙が止まらなくなったくらいなんだよ?」
それは豊様の料理がすごいのか、そんな状態に陥ったその露様が危ないのか、判断の難しいところだな。
っていうか、揚げ出し豆腐は揚げ料理なのか?
っていうか、なんでこんな揚げばっか!?
豆腐に恨みでもあるの?あの神社…。
「ん〜とね。うちの神様がね、すっご〜〜〜くお揚げさんが好きなんだよ。だからいつもお揚げさんなの」
「どんな神様だ…」
俺は揚げ料理に舌鼓を打ち、久しぶりに暮羽の沸かしてくれた風呂に入ることになった。
「ぷは〜〜。疲れが融けそうだ…」
『お湯加減どぉ〜お?』
「ばっちりだ。腕、上げたな」
『えへへ〜。お社でもね、いつもお兄ちゃんが入ってくれることを想いながらお風呂沸かしてたんだよ〜』
「ありがとな」
小窓の向こうから聞こえてくる明るい妹の声がさらに疲れを和らげてくれた。
と、そこまでは良かったのだが。
『じゃ〜私も入るね〜』
「お〜う……ん?」
え?
今、入るって言った?
いやいやいや。
いくら子供っぽいって言っても暮羽はもう大人だよ?
身体つきだってあんなに…。
ぼっ
暮羽の大人びた身体つきを想像して一気に体温が増したような気がした。
「はいるね〜」
湯気で白けた木戸の向こうから子供の様な大人になった義妹の声が聞こえた。
(がらら)
「あ、ちょ、待てよ!」
「え〜。もう入っちゃったよ?」
そういって入ってきた小柄でところどころ大きな妹。
あ、すげぇ、胸とか、ホント子供の頃と全然違うのね。
腰つきもむっちりとしちゃってまぁ…。
あ…。
毛はまだ生えてないのか……。
その間どれくらいの時間が経過していたのだろうか。
妹は俺の視線に少し頬を赤らめながらも、
「あ、あんまり見ないでょ…。恥ずかしい…」
そう言いながらかけ湯をして、湯船に入ってきた。
ザバァァァ。
湯が溢れて風呂場が湯気で真っ白に染まる。
(ぷかぁ〜)
う、浮いてる…。
透明なお湯に大きな白玉が二つも浮いてるよ?
あれ?
ここって、おしるこの中だっけ?
あれ?おしるこってこんな透明なお湯だったっけ?
いや、でも、飲んだらきっと甘いに違いない…。
っておいおい、そんなわけないだろ、いくらなんでも。
思案、妄想、議論、ツッコミ。
さまざまな思いが俺の頭を飛び交った。
「え、えへへ。久しぶりだね。お兄ちゃんとお風呂」
そう言って向かい合わせの妹は歯に噛むように笑った。
その頬が赤いのはお湯の所為だろうか?
「……あ、ああ。そうだな」
まともな言葉は出ない。
「お兄ちゃんのお膝の上、行ってもいい?」
なっ!?
目の前の妹 上目使い
上気する頬 悪戯をする子供のような目つき
細い肩 揺れる黒い瞳
桃色に染まっていく肌 柔らかそうな胸
「ああ…」
その返答を訂正する気は起きなかった。
ちゃぷん
目の前を艶やかに成長した暮羽のお尻が通過して、
「えへへ」
嬉しそうに暮羽がその小さな背中を俺にもたれてきた。
お湯の中ではあるけれど、
その身体には確かな温かさがあって、
ずっと離れていたことが不思議なくらい、
暮羽がそこにいることが落ち着いた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「私ね、お兄ちゃんの妹になれてよかった」
その言葉は、じわりと湯気のように、
俺の胸へと吸い込まれて、
心地よい暖かさを残す。
「私ね、ホントは守巫女なんてなりたくなかったんだよ」
「……知ってた」
俺は答えた。
暮羽が家を出る日。
明るく何度も頑張るって言っていた暮羽が、
何度も何度も自分に『頑張れ』って、
俺に『行くなって言って』って、
そう叫んでいたのが聞こえていた。
そんな事を…。
「お兄ちゃんには嘘、吐けないね。やっぱり」
「いいんだ…。お前は嘘なんて吐かなくていいんだ…」
「…ありがと」
暮羽が黒い、湯に溶けてしまいそうに細い髪を俺の頬につける。
俺は暮羽の頭に頬を預けるようにして、その小さな体を抱きしめた。
「ねぇ…」
「なんだ?」
「私…さ。お兄ちゃんの事…好きになっても、いいかな?」
「それは……」
俺は言葉に詰まった。
答えてはいけない質問だった。
「ねぇ。私たち、本当の兄妹じゃないんだよ?」
「お前は、俺の妹だ」
「私たち、血は繋がってないんだよ?」
「心はいつだって繋がってる。お前も、俺も、母さんも、父さんだって…」
「……私は…もっとお兄ちゃんと繋がりたいよ…」
「それは…だめだ」
きりりと、
胸に針が刺し込まれたように。
「私、お兄ちゃんのために、いっぱい食べて大きくなったんだよ?」
「お前はまだまだ小さい」
「胸だって、お尻だってこんなに…」
「それでも…だめだ…」
繰り返す否定。
逃れ続ける心根の無い言葉。
「じゃあさ、もっと背だって大きくなるよ?もっともっと美人になってみせるよ?」
「お前は十分可愛い」
「お勉強だってもっともっとするよ。いっぱい働いて、誰も文句なんて言わないぐらい立派になってみせるよ?」
「お前は十分、俺の自慢だ」
「じゃあ…じゃあ…」
暮羽の細い肩が震えて、
頬から暮羽の悲しみが伝道する。
「どうやったら…。どうやったらお兄ちゃん、私の事、好きになってくれるの?」
そう言って胸から暮羽の温かさが離れる。
そして、
涙で溢れた暮羽の瞳が俺を見つめた。
だから、
仕方ないんだ。
「……もう、十分に、好きだ」
そう答えるしかない。
「え…」
俺は暮羽を抱きしめた。
いけないことだって言うのは十分に分かっていた。
だからって、これ以上逃げるのも、十分だ。
「悪い、暮羽。俺はお前の兄失格だ」
「え?え?なんで?」
背中で、暮羽の慌てる顔が見えた。
「お前がいなくなってから、ずっと。ずっと。お前に帰ってきてほしいって、思ってた」
「…わた…しも……」
「いけないことだって、分かってた。ずっと。ずっと。でもさ、仕方ないだろ。お前が隣にいないと。お前がこうしてくっついてないと。俺は…嫌なんだ…」
「うん。私もだよ…おにいちゃ〜ん!」
首が締まる程に、
暮羽が俺を求めていた。
いや、俺が求めていた。
小さな妹を、
大好きな義妹を、
大切な暮羽を。
「おにいちゃん…」
「なんだ?」
「おにいちゃん……」
「どうした?」
「おにいちゃん…おにいちゃん」
「…お、おい?暮羽?」
「お兄ちゃん。お兄ちゃんおにいちゃんオニイチャン!」
「暮羽!?」
あ、あれ?
なんだか雲行きが怪しく…。
何故だか先ほどまでしおらしく大人しかった妹が、豊満になった身体を全身を使って押し付けてきてるよ?
おっぱいがフカフカで蕩けそうだよ?
太ももに柔らかな感触が擦りつけられて気持ちいいよ?
「もうだめぇ。我慢…できないよぉぉ!」
ゴゥッ…
燃え上がった。
少なくとも俺にはそう見えた。
お湯の中のはずなのに青い焔がメラメラと上がって、暮羽の身体を包む。
暮羽の長く細い黒髪が炎に包まれて白く染まっていく。
そしてその頂点には特徴的な形の獣の耳がぼんやりと浮かび上がり、まるで暮羽の意志が通っているかのようにピクピクと動く。
それとほぼ同時に暮羽のお尻が乗っかる膝の上にも先ほどまで感じなかった感触が。
まるで、柔らかな毛先で撫でられるような感覚が何度も…。
しかもその感覚は不思議なことに、お湯の中だというのに鮮明で、フカフカで、ふさふさで…。
「あ、あの。ちょっと?暮羽さん?なんだかあなたのお身体が大変なことになってますよ?」
「もうだめなの。私、我慢できないの。お兄ちゃん。お兄ちゃん。私と、繋がって!!」
「わぎゃぁぁ!?」
小柄な妹に成すすべなくのしかかられた。
湯船のお湯はザバザバと豪快に溢れ、風呂場の壁も見えなくなるほど湯気が上がる。
もはや上半身は完全にお湯に浸かっていないのに、それとは別の熱さが暮羽から、いや、俺の内側から伝わってくる。
おかしい。
なんだかのぼせてしまったのだろうか?
頭に霧がかかったように、しかし身体はしっかりとした感覚を持ったまま。
暮羽の触れる肌が熱くて、
俺に触れる暮羽が柔らかくて。
「おにいちゃん。好き。大大大好き!」
暮羽が足を俺の背中に回し、文字通り全身で俺に抱き着く。
そのまま、暮羽のかわいらしい唇が近づいて。
「んむ!?」
(おにいちゃん。おにいちゃん。おにいちゃん!好きなの。大好きなの。ずっとずっと昔から、優しくて、カッコよくて、私をいつも守ってくれて、どんな事でも頑張るおにいちゃんが好きなの!)
それは言葉ではなく、
唇の震えとかでもなく、
それでも、確かに俺の心に届いた、
暮羽の気持ち。
こんなにまっすぐに自分の事を慕ってくれる相手を傷つけられる奴なんているだろうか?
こんなにも待ち続けて、
でも受け取ってはいけないと我慢し続けた言葉を、
これほどまでに痛烈に押し付けられて、
それを突き返せる奴なんているだろうか?
少なくとも、俺はそんな奴にはなれなかったんだ。
だから、俺は暮羽の頭に手を回して、
(絶対に離さない)
そう思いを込めた。
唇が離れたとき、驚くほどの速さで心が脈打っていたのを覚えている。
そして、触れ合った暮羽の身体からも、同じような脈動を感じる。
お互いに何里も走り続けたみたいに息を切らして。
見つめる暮羽の瞳はこれまで見た事の無い艶っぽいもので、
その唇も俺を求めて熱い息を吐いていて。
「私、お兄ちゃんが欲しかった。だからね、神様に願ったの。お兄ちゃんに好かれるように、大人の女の人になりたいって…」
「背は伸びなかったのね…」
「…あうぅ…それは言わないで…」
頭の上の耳をぺたんと折り、全身でがっかりする暮羽は小動物みたいでかわいかった。
「で、でもでも!おっぱいはこんなに大きくなったもん!」
「な、わっ!?」
そう言って暮羽はその大きくなった胸で俺の御子息を挟み込んだ。
ああ、もう。
少し見ない間に大きくなりやがって…。
「神様にね、教わったんだよ?男の人にね、こうすると、すっごく喜んでくれるんだって」
そう言って大きな胸を小さな掌で掬い上げるようにしながら俺をむにむにと扱き始める暮羽。
あ、あわわわ。
変だよ?
なんか柔らかいのにプルンとはじかれて、
むにむにしめつけられて、
なんか今にもはじけ飛びそうだよ?
おいおい、どこの神様だ?うちの子にこんな…。
「んっしょ…んっしょ…」
一生懸命に俺の息子を扱きながら、時折上目づかいで俺の顔を見上げてくる健気な暮羽。
うん。
神様、流石です。
貴女が神だ!
(ビクンビクン)
正直に反応する息子。
俺の限界は近かった。
と、
次の瞬間
「あむぅ…むぐむ…」
なっ!?
「う、くぁっ!!」
俺は目の前がちかちかとする感覚に囚われ、次の瞬間には股間から感じるビュクビュクとした快感に放心していた。
「あ…あぁ…おひぃひゃんろ…(あ、あ、おにいちゃんの…)」
暮羽が陶酔した様な顔で、口の中にはなった俺の精を舌でかき混ぜるようにしながら。
「ん…んく……」
まるで寒露を味わうように飲み込んだ。
そして
「あ、あひぃっ!?」
(ビクンビクン)
暮羽の身体がビクビクと震え、そして、力なく俺にもたれかかってきた。
「あひぇぇ…。しゅごい…おにいちゃんの…おにゃかに溶けて…しあわしぇぇ…」
恍惚と、
まるで酒に酔ったみたいに、
「おにいちゃん…。わたしの…こと…すきぃ?」
ぐったりとしたまま、
俺の胸に身体を預けて、
「ああ。愛してるよ。暮羽」
ピクピクって、
幻のはずの狐耳が俺の胸をくすぐって、
大きな燃える尻尾がぱたぱたと振られて、
「もらって、おにいちゃん。私を…もらって」
力なく暮羽が体を起こして、
俺とは反対側の湯船にもたれかかって、
力の入っていなさそうな足を開く。
湯船のお湯はほとんどこぼれて、
丸見えの、暮羽の大切な部分。
肉付きのいいそこは、足を開いていてもぴったりと閉じて、
それを暮羽が細い指でゆっくりと開く。
肉厚なそこは細い指が食い込む様に開いて、
中からはかわいい乳首と同じような薄朱色の、
「暮羽…。すごい…」
「えへへ…お兄ちゃんのために……こんなになってるんだよ?」
そう言って力なく微笑む暮羽のそこはねっとりと糸を引いて、
奥の方が、暮羽の呼吸に合わせて、閉じたり開いたり。
もう、我慢の限界だった。
欲望の臨界だった。
それでも、壊れそうな暮羽のそこを、
俺は優しく指で触れることにした。
くちゅ
お湯とは異質の水音、
「んひぃっ!?」
暮羽がビクンとのけぞる
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫…はぁ…自分でする時と…全然違ったから…」
その言い方では以前から自分でしていたという印象を受けるのだが…。
きっとそうなのだろう…。
「いくぞ?」
「うん…ひきゅ…ん…あぁ……」
俺がそこを撫でるたび、
そこに指を入れるたび、
掻き回すたび、
ぴくぴくとそこが反応して、
奥から奥から熱い汁が漏れて、
歯を食いしばる様に暮羽が声を上げる。
すごい。
こんなに感じてくれてる。
兄冥利、いや、男冥利に尽きる。
もう十分にとろとろだったそこを、
ひくひくと止まらなくなるまで掻き回して、
先ほどまでぴっちりと閉じていたそこは、手を放した後も口を開いていた。
「暮羽。いいか?」
「おにいちゃん…すき…いいよ…おにいちゃん…きてぇ」
暮羽が蕩けきった顔で、
焦点の定まらない目で、
涎の止まらない口で、
俺を求める様に両腕を伸ばした。
俺はゆっくりと、暮羽を、貫いた。
「ん、あぁぁぁぁぁ…」
入れただけ。
ただそれだけだったのに、
暮羽はビクビクと痙攣して、
ギュっと、
吹き飛びそうになる身体を支える様に、
俺を放しはしないとでも言うように、
俺にしがみついた。
絡みつく
暮羽の腕が、
胸が、
膣の中が、
その反応が、
その表情が、
その心が、
嬉しくて、
俺は暮羽の中を、何度も何度も、突いた。
「おにいひゃん…しゅき…らいっ、…しゅきぃぃ……」
気をやりながらも、
必死に俺を求めてくれる暮羽。
俺を締め付けて、
ぬるりと、
奥へ奥へと、
導いて。
「もう…ダメだ…暮羽っ…」
「おにいひゃん、しゅき…あ、ああぁぁぁぁあああぁぁああ」
「…お湯、なくなっちゃったね…」
「はぁ…はぁ…そうだな」
「でも…うれしい……」
暮羽は幸せそうに臍の下を撫でて、満足そうに笑った。
その表情はまるで母さんが時折暮羽にするような、そんな、優しげな表情で。
「なぁ…暮羽」
「なぁに?」
「お前のその、頭の、あと、尻の…」
俺はここまで放置していた疑問に触れてみた。
「ああ。これは…。えっと…。神様のね、分身が…私に憑いたの」
「……お前の神はいつから人を祟るようになったんだ?」
「違うよ!これはね、私が望んだこと。神様は力を貸してくださったの。私にね、お兄ちゃんに…お兄ちゃんに好きって、そう言える勇気をね…分けてくれたの」
「……まぁ、そういう事にしといてやる…」
こうして、
妹の身体に起こった異変は、
解決しないままに、この話は幕を閉じる。
次の日には、暮羽はしぶしぶと家を出て、社に戻って行った。
「行ってきます…」
そう寂しそうに言う暮羽に、
「すぐにまた、帰ってこいよ」
俺は素直な言葉を吐けるようになっていた。
そうして、いくつかの春が来て、
いくつも年が過ぎた。
「ただいま!おにいちゃん!」
暮羽の元気な声が聞こえる。
俺は静かに眠る明羽(あげは)のサラサラの毛に包まれた耳を撫で、
「おい…お兄ちゃんっていうな」
「……えっと…ただいま。…あなた」
狐の耳と、三本のふさふさとした尻尾を元気に振る女房を抱きしめた。
気立てはよく、母の手伝いも進んで行い、女だてらに字も覚えた。
そんな暮羽が守巫女(もりみこ)に選ばれた事に疑問を抱く村人はいなかった。
義兄としては誇りでもある義妹が守巫女になることは喜ばしい事ではあったのだが、いかんせん自慢の義妹が家を離れるのは寂しくもあった。
…とは言っても、山の社は目と鼻の先ではあるのだが。
それでもどうだ、
成人間もない少女が一人いなくなっただけでずいぶんとこの家は寂しくなってしまった。
「母さん、畑行ってくる」
「あいよ、気を付けなよ」
『私もいっしょに行く!』
その細腕にはあまりに重荷な鍬を手に、嬉しそうに自分の背中には余る竹かごを担ぐ義妹の姿。
そんな光景が未だに母の言葉に続いて浮かんでしまう。
「……」
「…。はぁっ。そんなに寂しいんなら、会いに行ってやったら?」
そんな俺の姿に母の声。
「いや、そんなんじゃねぇよ。ただ、暮羽に守巫女なんて大役が務まるのか心配なだけだ」
「そうかい。…ぼやぼやしてると日が暮れっちまうよ?」
「あ、ああ。そうだな。じゃ、行ってくる」
その泥だらけの赤子が捨てられていたのは山と言うにはあまりに小さな山の上の社。
最初に見つけたのは守巫女としては経験の浅い、夕(ひぐれ)様だった。
社ではちょっとした騒ぎになり、そして、その赤子を引き取ると言い出したのは俺の父だった。
当時三つだった俺には朧気な記憶もなく。
ただ、それでも物心ついた時から俺には妹がいた。
父も母も分け隔てなく俺と暮羽を育てた。
太平の世の続くこの国ではもはやただの言葉になってしまった家の名。
それでも先祖代々続く家名と土地。
父にはきっと僅かばかりの誇りなどもあっただろう。
それでも、俺達のために家宝の刀を竹光に仕替え、毎日振り続けた木刀を鍬に持ち替える父の姿は子供ながらにかっこいいと思った。
父が悪い病を患い、七日と経たずこの世を去った時、真ん丸な瞳から大粒の涙を流す暮羽を見て、俺はその日から鍬を手に泥にまみれながら畑に立った。
そんな俺を見て暮羽が木の板が擦り切れるほどに筆を走らせ字を学び、時には母を手伝い、暇があれば俺と共に畑に立つようになった。
自慢の妹だった。
娘のようにも思っていた。
片時も離れた事なんてなかった。
いや。
やめろ。
いい加減俺もあいつから離れなくては、な。
俺は邪念を振り払うように先祖の土地に鍬を穿つ。
暮羽に再会したのは暮羽が家を出て三月も経たない春の頃だった。
「えへへ。見てみて、お兄ちゃん。お母さん。守巫女様の御正衣だよ!」
そう言って美しい赤と白の男装姿を見せる妹。
未だにあどけなさを残す暮羽の顔と幼い身体つきにはお世辞にも似合ってはいなかった。
「こらこら。あまりはしゃいで大事な巫女服を汚すなよ」
まったく、しっかりしているとわかっていてもどこか危なっかしい。
「むぅ〜。いいじゃない。久しぶりに会ったんだから!ねぇ〜。お母さん」
「はっはっは。そうだね。…暮羽。おいで」
母さんが優しく微笑み、暮羽に向かって両手を広げる。
暮羽は真ん丸の瞳を輝かせてそちらに駆けた。
「立派になったね、暮羽。ほら、お父さんにも見せてお上げ」
「お揚げ!?(キラキラ)…と。そうじゃなかった。は〜い」
「ん?」
初めて違和感を感じたのはここだった。
「お揚げ」と目を輝かせた暮羽の頭上に一瞬狐の耳のようなものが見えたのだ。
結論から言うならばそれは見間違いでも錯覚でもなかった。
しかしながら、当時の俺には父の位牌を前に姿勢正しく正座して手を合わせる妹にそんな異変が迫っているなど気づけるはずもなかった。
次に暮羽に会ったのは秋も深まる実りの季節だった。
村は大忙しで冬に向けて蓄えをし、俺も畑の芋ほりや、未だに家に米を納めてくれる村人への挨拶回りなどで駆け回っていた。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。私ね、夕様から褒められたんだよ!」
そう言って無邪気に抱き着いてくる妹の身体の感触に確かな違和感を感じたのだ。
(むにゅん)
や、やわらかい…。
いや、まて、落ち着け。暮羽も成長期だ。
成人したとはいえ、まだまだこれから大人になっていく。
そうだ。母さんを見てみろ。
『こうして身体に栄養を蓄えてるのさ。だから私は丈夫なんだよ』
そう言って病で亡くなった父の墓前で不謹慎に笑う明るい母。
その肉付きからすれば暮羽も当然…。ん?
暮羽は妹とは言え義妹のはずだ。母と血のつながりは…。
いや、しかし。だが。
「どうしたの?お兄ちゃん?」
(ふにょん)
(むにん)
成長期の暮羽のために大きめにあつらえられた巫女服の上からではほとんどわからないが、明らかに春の時と感触が違う。
「い、いや。何もない。…暮羽、お前もそろそろ大人なんだから、あまり子供みたいなことをして夕様や豊(ゆたか)様を困らせるなよ」
「むぅ〜。大丈夫だよ!私これでも他の守巫女様達からは『大人しくて賢い子ね』って褒められるんだから!」
「くすくす。あんたたちは本当にいつまでたっても仲がいいね。私は嬉しいよ」
母さんに笑われてしまった。
その次に会った時の暮羽の変化は明らかな物だった。
「おにいちゃ〜ん!わっ!?とっと…」
(たゆん)
揺れた!?
お、おい。なんだ今のは?揺れたぞ?胸が揺れた!?
「むぅ…。また大きくなって…。動きづらいよ…」
「あっはっは。やっぱりあんたは母さん似ね」
いや、待て、母さん。暮羽は血は繋がってないはずだ…。
「えへへ。私もお母さんみたいに優しいお母さんになれるかな?」
「そうね。きっとなるわよ」
和やかな母娘。
いや、だが、しかし、その娘の発育がおかしい。
身長はほとんど伸びていない。
なのになんだ?あの胸は!?
それに…。
「えへへ。おにいちゃ〜ん」
とすっ。
可愛い妹が胡坐をかいていた俺の上に座り込んできた。
瞬間。
(むにゅ)
なっ!?
や、柔らかい!?
俺の硬い膝の上にかかる重圧。
それは明らかに去年までの妹のものとは違う。
柔らかい、女の身体のものだった。
「……暮羽、お前、少し食い過ぎなんじゃねぇか?」
「ぅ……。てへへ。だって、社のご飯、おいしくて…」
照れる妹の表情が何故か少し色っぽい。
そして、自分で言ってはみたが、妹の身体の変化は明らかに太っているのとは違う。
腰は細くくびれていながら、その腰回りや胸周りだけが確かに成長している。
「巫女ってどんなもの食べるんだ?」
俺は煩悩を振り払うためにも尋ねた。
「え?ん〜っとね。厚揚げの素焼きでしょ、お揚げさんのお味噌汁でしょ?それからお揚げのたくさんは言った炊き込みご飯でしょ…それから…」
「なんだその揚げへの飽くなき執念は!?」
「むぅ〜。お揚げさんはね、すっごくす〜っごくおいしいんだよ!」
(にゅっ)
その瞬間、俺は見てしまった。
荒ぶる妹の頭、そして俺の膝に腰かけたその尻に。
それは、どう見ても狐の耳と尻尾だった。
「な…。お、お前、それ…」
「え?どれ?」
(しゅぽん)
妹が折れに指差されるままに見えるはずもない自分の頭上を見ようと真上を向いた拍子にその耳と尻尾は妹の身体に吸い込まれるように消えた。
「なにもないよ?」
「……。俺、疲れてるのか?」
「そうだね。憑かれてるかも」
「え?」
「ん?どうしたの?」
「あ、いや…」
なんか、暮羽の言葉に違和感があったような…。
その半年後、暮羽の身体つきは完全に様変わりしていた。
「えへへ〜。おにいちゃん。みてみて、私ね、大きくなったんだよ!」
そう言って自慢げに自分の頭の上に手を乗せ、俺の隣に並び、俺の胸へと自分の頭の上から水平に手の平を動かす妹。
しかしね、暮羽。
気のせいか、お前のまだ子供らしい小さな掌よりも先に、その大きなお胸が当たっている気がするんだ。
それも、真ん丸なお胸がひしゃげるほどに。
「どう?大きくなったでしょ!?」
「ん〜…」
確かに背は伸びていた。
握りこぶし一つ分ぐらいだろうか。
しかし、相変わらず小さな妹。
その背丈は村の子供とさほど変わらない。
ざっと見ても四尺六寸ぐらいだろうか…。
しかし、その身体を子供とさほど変わらないというにはあまりに無理があった。
初めてそれを着て見せてくれた時には『ぶかぶかな』と言う言葉がついて回った巫女服は胸の部分が押し上げられ、あろうことか合わせ目からは谷間が見えそうになっている。
それにその腰回りは袴の上からでもはっきりとわかる程に色っぽくむっちりとしている。
小柄なその背格好とあまりに矛盾したその艶を帯びた身体つきは、ひた隠しにしようとする俺の男の煩悩を刺激するものがあった。
「お、大きくなったな…///」
何故照れた!?俺!?
「えへへ〜。わ〜い、わ〜い」
(たゆんたゆん)
おいおい。そんな身体で飛び跳ねたら危ないでしょ…。
「わ〜い。あっ…」
(ぷるんっ)
あ…
こぼれた。
こぼれたよ、こぼれた。
見てみろよ、あれ。
巫女服の合わせ目が緩んで真っ白い球(玉)の様な妹の胸と、その先端の突起が見えたよ?
綺麗な薄朱色だったよ?
「……」
「ぁ……。ぁゎゎ…(カ――――)」
真っ白な胸をさらした義妹の顔がみるみる真っ赤になっていく。
それを見て、俺の欲望は少しどこかへ行ってしまったようで、
「ぷっ。あはははっ。まったく。お前は本当、子供の頃から変わらないな」
「む、むぅぅ〜〜〜」
妹は何故か悔しそうにむくれていた。
その夜は暮羽が社で教わったという揚げ料理の数々を披露した。
炊き込みご飯、和え物、焼き物、味噌汁。
そのどれもに揚げが入っている…。
なんだこの揚げ。
おい、見てみろよ、この厚揚げの焼き物なんか、ホロホロでカリカリで…。
「美味い…。侮れんな…揚げ…」
「でしょ〜?豊様の作る揚げ出し豆腐は、露(しずく)様があまりのおいしさに食べた瞬間に涙が止まらなくなったくらいなんだよ?」
それは豊様の料理がすごいのか、そんな状態に陥ったその露様が危ないのか、判断の難しいところだな。
っていうか、揚げ出し豆腐は揚げ料理なのか?
っていうか、なんでこんな揚げばっか!?
豆腐に恨みでもあるの?あの神社…。
「ん〜とね。うちの神様がね、すっご〜〜〜くお揚げさんが好きなんだよ。だからいつもお揚げさんなの」
「どんな神様だ…」
俺は揚げ料理に舌鼓を打ち、久しぶりに暮羽の沸かしてくれた風呂に入ることになった。
「ぷは〜〜。疲れが融けそうだ…」
『お湯加減どぉ〜お?』
「ばっちりだ。腕、上げたな」
『えへへ〜。お社でもね、いつもお兄ちゃんが入ってくれることを想いながらお風呂沸かしてたんだよ〜』
「ありがとな」
小窓の向こうから聞こえてくる明るい妹の声がさらに疲れを和らげてくれた。
と、そこまでは良かったのだが。
『じゃ〜私も入るね〜』
「お〜う……ん?」
え?
今、入るって言った?
いやいやいや。
いくら子供っぽいって言っても暮羽はもう大人だよ?
身体つきだってあんなに…。
ぼっ
暮羽の大人びた身体つきを想像して一気に体温が増したような気がした。
「はいるね〜」
湯気で白けた木戸の向こうから子供の様な大人になった義妹の声が聞こえた。
(がらら)
「あ、ちょ、待てよ!」
「え〜。もう入っちゃったよ?」
そういって入ってきた小柄でところどころ大きな妹。
あ、すげぇ、胸とか、ホント子供の頃と全然違うのね。
腰つきもむっちりとしちゃってまぁ…。
あ…。
毛はまだ生えてないのか……。
その間どれくらいの時間が経過していたのだろうか。
妹は俺の視線に少し頬を赤らめながらも、
「あ、あんまり見ないでょ…。恥ずかしい…」
そう言いながらかけ湯をして、湯船に入ってきた。
ザバァァァ。
湯が溢れて風呂場が湯気で真っ白に染まる。
(ぷかぁ〜)
う、浮いてる…。
透明なお湯に大きな白玉が二つも浮いてるよ?
あれ?
ここって、おしるこの中だっけ?
あれ?おしるこってこんな透明なお湯だったっけ?
いや、でも、飲んだらきっと甘いに違いない…。
っておいおい、そんなわけないだろ、いくらなんでも。
思案、妄想、議論、ツッコミ。
さまざまな思いが俺の頭を飛び交った。
「え、えへへ。久しぶりだね。お兄ちゃんとお風呂」
そう言って向かい合わせの妹は歯に噛むように笑った。
その頬が赤いのはお湯の所為だろうか?
「……あ、ああ。そうだな」
まともな言葉は出ない。
「お兄ちゃんのお膝の上、行ってもいい?」
なっ!?
目の前の妹 上目使い
上気する頬 悪戯をする子供のような目つき
細い肩 揺れる黒い瞳
桃色に染まっていく肌 柔らかそうな胸
「ああ…」
その返答を訂正する気は起きなかった。
ちゃぷん
目の前を艶やかに成長した暮羽のお尻が通過して、
「えへへ」
嬉しそうに暮羽がその小さな背中を俺にもたれてきた。
お湯の中ではあるけれど、
その身体には確かな温かさがあって、
ずっと離れていたことが不思議なくらい、
暮羽がそこにいることが落ち着いた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「私ね、お兄ちゃんの妹になれてよかった」
その言葉は、じわりと湯気のように、
俺の胸へと吸い込まれて、
心地よい暖かさを残す。
「私ね、ホントは守巫女なんてなりたくなかったんだよ」
「……知ってた」
俺は答えた。
暮羽が家を出る日。
明るく何度も頑張るって言っていた暮羽が、
何度も何度も自分に『頑張れ』って、
俺に『行くなって言って』って、
そう叫んでいたのが聞こえていた。
そんな事を…。
「お兄ちゃんには嘘、吐けないね。やっぱり」
「いいんだ…。お前は嘘なんて吐かなくていいんだ…」
「…ありがと」
暮羽が黒い、湯に溶けてしまいそうに細い髪を俺の頬につける。
俺は暮羽の頭に頬を預けるようにして、その小さな体を抱きしめた。
「ねぇ…」
「なんだ?」
「私…さ。お兄ちゃんの事…好きになっても、いいかな?」
「それは……」
俺は言葉に詰まった。
答えてはいけない質問だった。
「ねぇ。私たち、本当の兄妹じゃないんだよ?」
「お前は、俺の妹だ」
「私たち、血は繋がってないんだよ?」
「心はいつだって繋がってる。お前も、俺も、母さんも、父さんだって…」
「……私は…もっとお兄ちゃんと繋がりたいよ…」
「それは…だめだ」
きりりと、
胸に針が刺し込まれたように。
「私、お兄ちゃんのために、いっぱい食べて大きくなったんだよ?」
「お前はまだまだ小さい」
「胸だって、お尻だってこんなに…」
「それでも…だめだ…」
繰り返す否定。
逃れ続ける心根の無い言葉。
「じゃあさ、もっと背だって大きくなるよ?もっともっと美人になってみせるよ?」
「お前は十分可愛い」
「お勉強だってもっともっとするよ。いっぱい働いて、誰も文句なんて言わないぐらい立派になってみせるよ?」
「お前は十分、俺の自慢だ」
「じゃあ…じゃあ…」
暮羽の細い肩が震えて、
頬から暮羽の悲しみが伝道する。
「どうやったら…。どうやったらお兄ちゃん、私の事、好きになってくれるの?」
そう言って胸から暮羽の温かさが離れる。
そして、
涙で溢れた暮羽の瞳が俺を見つめた。
だから、
仕方ないんだ。
「……もう、十分に、好きだ」
そう答えるしかない。
「え…」
俺は暮羽を抱きしめた。
いけないことだって言うのは十分に分かっていた。
だからって、これ以上逃げるのも、十分だ。
「悪い、暮羽。俺はお前の兄失格だ」
「え?え?なんで?」
背中で、暮羽の慌てる顔が見えた。
「お前がいなくなってから、ずっと。ずっと。お前に帰ってきてほしいって、思ってた」
「…わた…しも……」
「いけないことだって、分かってた。ずっと。ずっと。でもさ、仕方ないだろ。お前が隣にいないと。お前がこうしてくっついてないと。俺は…嫌なんだ…」
「うん。私もだよ…おにいちゃ〜ん!」
首が締まる程に、
暮羽が俺を求めていた。
いや、俺が求めていた。
小さな妹を、
大好きな義妹を、
大切な暮羽を。
「おにいちゃん…」
「なんだ?」
「おにいちゃん……」
「どうした?」
「おにいちゃん…おにいちゃん」
「…お、おい?暮羽?」
「お兄ちゃん。お兄ちゃんおにいちゃんオニイチャン!」
「暮羽!?」
あ、あれ?
なんだか雲行きが怪しく…。
何故だか先ほどまでしおらしく大人しかった妹が、豊満になった身体を全身を使って押し付けてきてるよ?
おっぱいがフカフカで蕩けそうだよ?
太ももに柔らかな感触が擦りつけられて気持ちいいよ?
「もうだめぇ。我慢…できないよぉぉ!」
ゴゥッ…
燃え上がった。
少なくとも俺にはそう見えた。
お湯の中のはずなのに青い焔がメラメラと上がって、暮羽の身体を包む。
暮羽の長く細い黒髪が炎に包まれて白く染まっていく。
そしてその頂点には特徴的な形の獣の耳がぼんやりと浮かび上がり、まるで暮羽の意志が通っているかのようにピクピクと動く。
それとほぼ同時に暮羽のお尻が乗っかる膝の上にも先ほどまで感じなかった感触が。
まるで、柔らかな毛先で撫でられるような感覚が何度も…。
しかもその感覚は不思議なことに、お湯の中だというのに鮮明で、フカフカで、ふさふさで…。
「あ、あの。ちょっと?暮羽さん?なんだかあなたのお身体が大変なことになってますよ?」
「もうだめなの。私、我慢できないの。お兄ちゃん。お兄ちゃん。私と、繋がって!!」
「わぎゃぁぁ!?」
小柄な妹に成すすべなくのしかかられた。
湯船のお湯はザバザバと豪快に溢れ、風呂場の壁も見えなくなるほど湯気が上がる。
もはや上半身は完全にお湯に浸かっていないのに、それとは別の熱さが暮羽から、いや、俺の内側から伝わってくる。
おかしい。
なんだかのぼせてしまったのだろうか?
頭に霧がかかったように、しかし身体はしっかりとした感覚を持ったまま。
暮羽の触れる肌が熱くて、
俺に触れる暮羽が柔らかくて。
「おにいちゃん。好き。大大大好き!」
暮羽が足を俺の背中に回し、文字通り全身で俺に抱き着く。
そのまま、暮羽のかわいらしい唇が近づいて。
「んむ!?」
(おにいちゃん。おにいちゃん。おにいちゃん!好きなの。大好きなの。ずっとずっと昔から、優しくて、カッコよくて、私をいつも守ってくれて、どんな事でも頑張るおにいちゃんが好きなの!)
それは言葉ではなく、
唇の震えとかでもなく、
それでも、確かに俺の心に届いた、
暮羽の気持ち。
こんなにまっすぐに自分の事を慕ってくれる相手を傷つけられる奴なんているだろうか?
こんなにも待ち続けて、
でも受け取ってはいけないと我慢し続けた言葉を、
これほどまでに痛烈に押し付けられて、
それを突き返せる奴なんているだろうか?
少なくとも、俺はそんな奴にはなれなかったんだ。
だから、俺は暮羽の頭に手を回して、
(絶対に離さない)
そう思いを込めた。
唇が離れたとき、驚くほどの速さで心が脈打っていたのを覚えている。
そして、触れ合った暮羽の身体からも、同じような脈動を感じる。
お互いに何里も走り続けたみたいに息を切らして。
見つめる暮羽の瞳はこれまで見た事の無い艶っぽいもので、
その唇も俺を求めて熱い息を吐いていて。
「私、お兄ちゃんが欲しかった。だからね、神様に願ったの。お兄ちゃんに好かれるように、大人の女の人になりたいって…」
「背は伸びなかったのね…」
「…あうぅ…それは言わないで…」
頭の上の耳をぺたんと折り、全身でがっかりする暮羽は小動物みたいでかわいかった。
「で、でもでも!おっぱいはこんなに大きくなったもん!」
「な、わっ!?」
そう言って暮羽はその大きくなった胸で俺の御子息を挟み込んだ。
ああ、もう。
少し見ない間に大きくなりやがって…。
「神様にね、教わったんだよ?男の人にね、こうすると、すっごく喜んでくれるんだって」
そう言って大きな胸を小さな掌で掬い上げるようにしながら俺をむにむにと扱き始める暮羽。
あ、あわわわ。
変だよ?
なんか柔らかいのにプルンとはじかれて、
むにむにしめつけられて、
なんか今にもはじけ飛びそうだよ?
おいおい、どこの神様だ?うちの子にこんな…。
「んっしょ…んっしょ…」
一生懸命に俺の息子を扱きながら、時折上目づかいで俺の顔を見上げてくる健気な暮羽。
うん。
神様、流石です。
貴女が神だ!
(ビクンビクン)
正直に反応する息子。
俺の限界は近かった。
と、
次の瞬間
「あむぅ…むぐむ…」
なっ!?
「う、くぁっ!!」
俺は目の前がちかちかとする感覚に囚われ、次の瞬間には股間から感じるビュクビュクとした快感に放心していた。
「あ…あぁ…おひぃひゃんろ…(あ、あ、おにいちゃんの…)」
暮羽が陶酔した様な顔で、口の中にはなった俺の精を舌でかき混ぜるようにしながら。
「ん…んく……」
まるで寒露を味わうように飲み込んだ。
そして
「あ、あひぃっ!?」
(ビクンビクン)
暮羽の身体がビクビクと震え、そして、力なく俺にもたれかかってきた。
「あひぇぇ…。しゅごい…おにいちゃんの…おにゃかに溶けて…しあわしぇぇ…」
恍惚と、
まるで酒に酔ったみたいに、
「おにいちゃん…。わたしの…こと…すきぃ?」
ぐったりとしたまま、
俺の胸に身体を預けて、
「ああ。愛してるよ。暮羽」
ピクピクって、
幻のはずの狐耳が俺の胸をくすぐって、
大きな燃える尻尾がぱたぱたと振られて、
「もらって、おにいちゃん。私を…もらって」
力なく暮羽が体を起こして、
俺とは反対側の湯船にもたれかかって、
力の入っていなさそうな足を開く。
湯船のお湯はほとんどこぼれて、
丸見えの、暮羽の大切な部分。
肉付きのいいそこは、足を開いていてもぴったりと閉じて、
それを暮羽が細い指でゆっくりと開く。
肉厚なそこは細い指が食い込む様に開いて、
中からはかわいい乳首と同じような薄朱色の、
「暮羽…。すごい…」
「えへへ…お兄ちゃんのために……こんなになってるんだよ?」
そう言って力なく微笑む暮羽のそこはねっとりと糸を引いて、
奥の方が、暮羽の呼吸に合わせて、閉じたり開いたり。
もう、我慢の限界だった。
欲望の臨界だった。
それでも、壊れそうな暮羽のそこを、
俺は優しく指で触れることにした。
くちゅ
お湯とは異質の水音、
「んひぃっ!?」
暮羽がビクンとのけぞる
「だ、大丈夫か?」
「大丈夫…はぁ…自分でする時と…全然違ったから…」
その言い方では以前から自分でしていたという印象を受けるのだが…。
きっとそうなのだろう…。
「いくぞ?」
「うん…ひきゅ…ん…あぁ……」
俺がそこを撫でるたび、
そこに指を入れるたび、
掻き回すたび、
ぴくぴくとそこが反応して、
奥から奥から熱い汁が漏れて、
歯を食いしばる様に暮羽が声を上げる。
すごい。
こんなに感じてくれてる。
兄冥利、いや、男冥利に尽きる。
もう十分にとろとろだったそこを、
ひくひくと止まらなくなるまで掻き回して、
先ほどまでぴっちりと閉じていたそこは、手を放した後も口を開いていた。
「暮羽。いいか?」
「おにいちゃん…すき…いいよ…おにいちゃん…きてぇ」
暮羽が蕩けきった顔で、
焦点の定まらない目で、
涎の止まらない口で、
俺を求める様に両腕を伸ばした。
俺はゆっくりと、暮羽を、貫いた。
「ん、あぁぁぁぁぁ…」
入れただけ。
ただそれだけだったのに、
暮羽はビクビクと痙攣して、
ギュっと、
吹き飛びそうになる身体を支える様に、
俺を放しはしないとでも言うように、
俺にしがみついた。
絡みつく
暮羽の腕が、
胸が、
膣の中が、
その反応が、
その表情が、
その心が、
嬉しくて、
俺は暮羽の中を、何度も何度も、突いた。
「おにいひゃん…しゅき…らいっ、…しゅきぃぃ……」
気をやりながらも、
必死に俺を求めてくれる暮羽。
俺を締め付けて、
ぬるりと、
奥へ奥へと、
導いて。
「もう…ダメだ…暮羽っ…」
「おにいひゃん、しゅき…あ、ああぁぁぁぁあああぁぁああ」
「…お湯、なくなっちゃったね…」
「はぁ…はぁ…そうだな」
「でも…うれしい……」
暮羽は幸せそうに臍の下を撫でて、満足そうに笑った。
その表情はまるで母さんが時折暮羽にするような、そんな、優しげな表情で。
「なぁ…暮羽」
「なぁに?」
「お前のその、頭の、あと、尻の…」
俺はここまで放置していた疑問に触れてみた。
「ああ。これは…。えっと…。神様のね、分身が…私に憑いたの」
「……お前の神はいつから人を祟るようになったんだ?」
「違うよ!これはね、私が望んだこと。神様は力を貸してくださったの。私にね、お兄ちゃんに…お兄ちゃんに好きって、そう言える勇気をね…分けてくれたの」
「……まぁ、そういう事にしといてやる…」
こうして、
妹の身体に起こった異変は、
解決しないままに、この話は幕を閉じる。
次の日には、暮羽はしぶしぶと家を出て、社に戻って行った。
「行ってきます…」
そう寂しそうに言う暮羽に、
「すぐにまた、帰ってこいよ」
俺は素直な言葉を吐けるようになっていた。
そうして、いくつかの春が来て、
いくつも年が過ぎた。
「ただいま!おにいちゃん!」
暮羽の元気な声が聞こえる。
俺は静かに眠る明羽(あげは)のサラサラの毛に包まれた耳を撫で、
「おい…お兄ちゃんっていうな」
「……えっと…ただいま。…あなた」
狐の耳と、三本のふさふさとした尻尾を元気に振る女房を抱きしめた。
12/12/17 07:31更新 / ひつじ