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〇月〇日

　今日、とある山の遺跡にある地下迷宮の奥に旧世紀のお宝があるという情報を仕入れたので、そのダンジョンに向かうことにする。
　幸い準備に必要な資金は十分にある。魔物の巣窟とのことなので入念に準備をして向かおう。

〇月×日

　数時間近く山を登ってダンジョンへようやくたどり着いた。道中、魔物や山賊に襲われるかと思っていたがそんなことはなく、まるでピクニックに出かけているかのように安全な登山だった。
　ダンジョンの入口は物々しい遺跡の様相を呈していた。話によれば遥か昔神族が建てた遺跡らしい。神族と魔族の戦いがここで起こり、放棄されたとのこと。いまでは魔物たちの住処となっているそうだ。
　記録は一度区切り、あとは中に入ってから適宜記すことにする。

　驚いた。
　地上の遺跡と地下迷宮の造りがまるで違う。しかも、明らかに上を造った存在とこの地下を造った存在は別種のものだ。
　坑道のように粗削りな地下道に、壁や天井に走る無数の爪の痕。かと思えば理路整然とされた石造りの通路も現れ、悪魔的な意匠が施された壁や柱もある。地下であるにも関わらず草花の生えた道もあった。見た目からして毒を持っていそうな花だったので、その道は避けたが。
　また通路には絶え間なくそれ自体が発光する岩があった。ランタンなども必要ないほどに地下は明るい。
　なんにせよ、ここは少なくとも神族が造った道ではない。恐らくは神族が放棄したあとに魔物たちが造ったのだろう。驚くべき技術だ。しかも意匠まである。魔物は文化を持っているのだろうか。
　正直なところお宝は眉唾、ないしすでに失われていると思い始めていたが、魔物に文化を持つ知能があるのであれば、宝は地下の最奥地に隠されている可能性が十二分にある。
　楽しみだ。

　妙だ。
　魔物と遭遇しない。あると思っていたトラップも見当たらない。いや、落とし穴やブービートラップはあった。しかし、外れていた。違う。外されていた。
　嫌な予感がする。気を引き締めて行こう。お宝を目前にして食われるなんて御免だ。

　迷宮に地図なんてない。が確実に宝の方へと近づいている予感がする。同じ場所を二度通ったこともない。
　下層への階段を降りる度、真綿で首を絞めつつあるような、そんな気さえする。
　だがここまで来て引き返すなどできない。せめて宝をこの目で見るまでは。

　辿り着いた。もしルートを一つでも違えていたならば辿り着くまでに一夜をこのダンジョンで過ごさねばならなかっただろう。帰り道も順調にいけば、陽が暮れる前に脱出できるかもしれない。
　しかし広い空間だ。何度も見た悪魔的な意匠に加え、壁画のようなものも幾つかある。重要な何かかもしれない。模写しておこう。
　頭は人。手足は獣。背に蝙蝠の翼、臀部に肉の瘤がある尻尾を持っている。これはこの地下迷宮を造った魔物なのかもしれない。もしもこんな魔物がいるのだとしたらとても恐ろしいことだ。
　そして最後。部屋の中心には台座に置かれた宝箱がある。笑えるほどありきたりな宝箱だ。罠の匂いがこれでもかと臭ってくるが他に調べるものはない。一通り調べたがブービートラップの類も見られない。意を決し、調べてみることにする。

〇月△日(おそらく)

　なんてことだ！　失敗した！　とんでもない過ちを犯した！
　ああ！　罠だった！　宝箱？　違う！　私がここに来たことそれ自体が罠だったのだ！
　魔物にも山賊にも襲われなかったのも！　道中一度たりとも迷わなかったのも！
　全部が全部、この私をここに！　魔物の胃袋の中に自身の脚で飛び込ませるための罠だったのだ！
　ああああああああああああああああああああ……。いやだ。死にたくない。死にたく

〇月▲日(おそらく)

　私はまだ生きている。
昨日……いや、時間間隔がよくわかっていないから昨日かは定かではないが、おそらく昨日。取り乱した内容を乱雑に書いてしまった。それほど私は追い詰められていた。
　否、いまも現在進行形で追い詰められている。
　私は魔物に捕らわれた。魔物の罠に自らの脚で飛び込んでしまった。
　私はある部屋に軟禁状態にされている。監禁ではないだけマシかもしれないが同じことだ。私には自由がない。
　私を捕らえた魔物は壁画に描かれたような悪魔だった。獣の手足に全身に映える棘ばった体毛、人を覆い包むほど巨大な蝙蝠の背。
　そして……そして、肉の瘤のようなものが先端についた触手のような尻尾。鋭利な針のような棘がびっしりと生えており、とてつもなく恐ろしい。そう、あれは恐ろしいものだ。
　私を私じゃなくさせる、狂わせる悪魔の尻尾だ。

　悪魔は女だった。赤みが強めの桃色の髪に獣の耳を生やした女。それでいて人間にはこれほどの美貌を持つものは存在しないと言い切れるほど、美しく、故に恐ろしいと思ってしまうほどの女だった。
　私を捕らえた魔物の女は、はっきりと私に告げた。『お前を喰らう』と。ギラつかせた目と牙を剥き出しにして。
　そのときの私の気持ちがわかる者はこの世にはいないだろう。
　だが、それは今じゃないらしい。
　私を喰らうために均す必要があるのだという。
　そのためにあの悪魔の尻尾が使われた。
　言葉にするのも恐ろしいが、書かなくてはならない。羞恥もあるが、それでも、唯一軟禁状態であの魔物の視線がないいましかチャンスがない。
　端的に言えば、私のイチモツはあの醜悪な肉の瘤に食べられた。
　物理的だが、文字通り喰われたのではない。肉のヒダがびっしりと詰まり、甘ったるい匂いを撒き散らすの肉壺にイチモツが根本まで呑み込まれたのだ。
　想像を絶する快楽だった。自身の手でするどころか、一夜限りの女を買って得た快楽よりも圧倒的、比べることすらおこがましいと言えるほどの快楽だった。
　脈動し波打ちイチモツを扱きあげる肉のヒダ。ポンプのように音を鳴らして吸ってくる肉穴。
　私は十秒と経たずにその肉の中に吐精していた。だがそれは始まりに過ぎなかった。
　五度か十度か、私は徹底的に精を吐き出させられた。魔物の尻尾、肉の塊、醜悪でしかし男を狂わせる魔性の肉壺に、何度も何度も。
　性行為ですらない。ただただ飯の代わりとして精を捕食された。
　魔物は終始、いやらしい笑みを浮かべ、私を嘲笑っていた。
『精を出せなくなれば喰らうというのに、快楽を求めるなんて浅ましい奴だな』とそう言いながら私の精を幾度となくその尻尾で咀嚼した。
　抵抗は無意味だった。できなかった。尻尾にイチモツを咥え込まれた瞬間、私は私が単なる被捕食者でしかないと悟った。もう残された道はいかに苦しまずに死ねるかというだけだ。
　そして精を全て出し切った。もう出なくなった。あとは喰われておしまいだと、そう思った。
　だが、魔物は『これからだ』と嗤った。
　尻尾の棘が私の膝を貫いた。痛みは全くなかった。代わりに、絶頂と同程度の快楽が膝から全身へ駆け巡った。
　イチモツは再び硬度と精力を取り戻した。
　魔物の食事はまだ終わりじゃなかったのだ。

　それが悪魔に捕らわれて初日の出来事。それから何度も何度も、何度も何度も何度も、精を搾り取られては気絶し、目が覚めては精を搾られ、枯れれば棘で全身を突き刺され、精をまた搾り取られる。
　そして、精を注がされた尻尾の穴を奥の奥まで見せつけさせられる。固形のような私の白濁で埋め尽くされた媚肉の壺を。
　今日もおそらく今日までと同じことをされるだろう。私が喰われるのはいつなのだろうか。とても怖い。

〇月▼日

　私はまだ生きている。
　あれからおそらく数日経ったが、まだ精を搾り取られてるだけで喰われる様子はない。が、尻尾にイチモツを咀嚼されている間、常に『出せなくなったら喰らってやるぞ。長生きしたくば精々枯らさないことだな』と脅されている。
　今日は肉体のみならず心までも凌辱された。尻尾からイチモツを自分の手で抜けたら、今日精を搾るのはやめてやると言われたのだ。棘は引っ込めてくれた。だから尻尾を軽く持ち上げる、それだけで良いはずだった。
　なのにできなかった。それどころか、自分の手でイチモツを尻尾で扱いてしまった。
　駄目だとわかっているはずなのに、肉体が快楽を求めていたのだ。それに私は抗えなかった。何度も何度も、私は自身の手で尻尾を動かし、その肉壺の中に精を吐き出した。
　魔物が棘を再び生やしてからも、私は手に棘が食い込むのも構わず腰と手を振り続けた。むしろ棘が刺さっていた方が良いと思えるほどに気持ちが良かった。
　気持ちいいと漏らしてしまった私の言葉に、魔物は満足げに笑うと、最後に肉壺の中をとてつもなく素早く脈動させ精を啜り取ってくれた。
　気絶する直前、ふわふわな肉で私の顔が包まれたようなそんな気がした。とても寝心地が良かったがあれはなんだったのだろうか。

×月〇日

　私はまだ生きている。
　軟禁状態はまだ変わっていない。一度隙を見て逃げ出したが、迷路を抜けることは叶わず、あっさりと彼女に捕まってしまった。そして、いつもより激しく精を搾り取られる羽目になった。
　組み敷かれ、両手両足を抑えつけられ、イチモツを尻尾に貪られる。唇が触れそうなほど顔を寄せてきた魔物の、狩人のごとき絶対的上位者の笑み。
　おそらく私は意図的に逃げさせられたのだろう。私は完全に彼女の掌の上のようだ。
　私はもう地上へ戻ることは二度と叶わないのだろう。

×月◇日

　私はまだ生きている。
　ここでの軟禁生活に慣れつつある自分がいる。ご飯は出る。地上で食べたことがないほど美味しい料理が。彼女は料理もできるほど知能のある魔物だそうだ。この料理も、私の身体を貪り喰らうときよりよい状態にするためらしい。健康状態の方が美味しいそうだ。
　事実、私はとても健康になっている。精の量も数倍は出ているし、体力も向上した。
　今日も食事を終えたら、彼女の食事だ。
　私はなるだけ早く食事を済ませた。

×月×日

　私はまだ生きている。
　もう軟禁生活に慣れ切ってしまった。食事をして食事をされて眠りに落ちて目が覚めてこの記録を書いて食事して、そしてまた、食事をされる。
　繰り返しの軟禁生活に慣れ切っていた。
　ああ、食事が楽しみだ。今日はどんな風なのだろう。

×月△日

　私はまだ生きている。
　いつ食事をされてもいいように、もう服を着るのはやめた。

×月▲日

　私はまだ生きている。
　もはや彼女がなにも言わなくても私は私の身を捧げる体勢を取っている。
　餌付けだ。私は餌付けされている。もはや彼女のもたらす快楽をただ享受し、精を放つだけの存在に過ぎない。
　彼女がもたらすもの、そのどれもが私を気持ちよくさせてくれる。
　精を搾り取りながら耳元で辱めてくる言葉の数々、棘で幾度も刺されながら搾り取る行為、鏡の前で自身の姿を見させながらの搾精。どれも私がより多くの精を放つためのスパイスにしかならない。
　懇願していた。もっともっとと。
　それに彼女は応えてくれた。私の望むがままの快楽を与えてくれた。
　その過程で彼女の糧となる精を捧げられるのだから、なんという素晴らしい関係だろう。
　ああ、この身は全て貴女に捧げます。
　だから今日もお願いします。

　しょうがないな。今日も気絶するくらい、いいや、気絶しても目が覚めるまで搾り取ってやるぞ。

×月▽日

　ついにこの日が来た。
　今日、私は彼女に貪り喰われることとなる。
　やっとだ。やっと彼女と一つになれる。
　もうこれ以上、記録を残すことはないだろう。それでいい。彼女と一つになること、それ以外に私に大切なことなどありはしないのだから。

×月●日

×月◇日

△月〇日

　私はまだ生きている。いや、もう死ぬことはない。
　彼女と一つになった。それはとても気持ちよかった。尻尾の搾精とは比較にならないほどに。
　単なる気持ちよさだけではない。身も心も全てが満たされたかのような圧倒的充足。交わり融け合い絡み合っていく、彼女と私が一つになる筆舌にしがたい快楽。
　このときのために彼女は入念に私を均してくれていたのだ。
　我慢して我慢して、何度も私を食べたくなるのを我慢して、その股から甘ったるいメスの性臭を撒き散らし、雌汁を滴らせながらも私の身体を彼女と一つになるのに相応しい肉体へと仕立て上げてくれていたのだ。
　彼女のたゆまぬ努力に応えるため、私は時間も忘れるほど彼女の膣内へ己が全てを放ち一つに交わった。
　私を均していたときには決して見せてくれなかった可愛らしい女性の顔で彼女は喘いでくれる。そんな彼女が愛おしく、私は彼女をよりもっと悦ばせるために精を解き放っていた。

△月×日

　今日も彼女と一つになっている。実はこれを書いているのも交わりの最中だ。
　このあと、私は彼女の後ろの穴と交わる。後ろは初めてなのでとても楽しみだ。
　ああ、興奮してイチモツが大きくなっ

　後ろの穴に入れるのが楽しみな変態野郎に、後ろの穴を犯されるのが楽しみでたまらない変態なアタシはもう我慢できないから日記はここでおしまいな。

△月△日

　今日、私はダンジョンから逃げ出した。
　もちろんわざとだ。それは妻もわかっている。
　あの日の頃を思い出した妻はとても嗜虐的な笑みを浮かべて、私を捕まえて拘束して犯してくれた。徹底的に。凌辱するが如く。
　全身に棘を刺し、精を増産させ、口で犯し、尻尾で犯し、後ろの穴で犯し、前の穴で犯し、そして子宮内で犯す。彼女の全身が精で真っ白になって見えなくなるほど犯した。
　あの日と違ったのは私が気絶しなかったことだろう。おかげで彼女が満足してもなお、お腹が妊婦のように膨らむまで精を注ぐことができた。
　たまにはこういう趣向もいいかもしれない。可愛らしい妻の表情も好きだが、私を凌辱するときの意地悪な笑みもまた好きなのだ。
　まぁ、彼女の嫌いな箇所など一点たりとも存在しないのだが。

△月▼日

　魔物は人間と近しい外見を有しているが、内部構造はかなり違うらしい。その一例として一つ挙げておくと。

　子を孕んだ場合、いつもより多く交わって尚且つ中出しをすると元気な子供が生まれる、というものだ。

　そう。子供ができた。彼女と私の子供。愛の結晶だ。
　トレジャーハントでしか生きて来なかった私に、愛しい妻に加え、子供まで。なんて幸せなのだろうか。
　今日から当分記録できなくなる。彼女に幸せのお礼をたっぷりと注いであげねばならないからな。

◇月●日

　子供は母親に似た可愛らしい子にすくすく育った。目元は私に似ているというのが、愛しい妻の弁だ。
　もう獲物を獲りに行ってもいい年だ。だが、私の血も受け継いでいるせいか、母親ほど思い切りが良くないらしい。
　仕方がない。父として愛しい娘に手助けをしてやるとしよう。
　そうだな。この手記がいいだろう。

　だから今日、私は久しぶりに記録を書いた。
　そうして、私が彼女に捕まった場所にある宝箱にこの手記を置いた。
　手に取った者が必ず最後まで読んでしまう魔法を妻にかけてもらって。
　娘が真後ろに近づいても気づけないように。

　――えっ？」

■作者メッセージ
「捕まえたぁ……」