コバエホイホイ
―♂♀♀♀♀♀♂―
とある出版社で働く独身男、清原総司(きよはらそうじ)。とある記事を作るため、三日間出版社に泊まり込みで、ろくに風呂にも入れなかった。ようやくアパートに帰れるときは体はでろでろ。夏真っ盛りの暑い時期のさらに昼時なので、家路につくだけで汗だらけである。そして先にも言ったが、いまは夏真っ盛りである。三日ぶりの帰宅である。彼は思い出す。そういえばゴミを片付けずに出掛けてはいなかったか、と。
総司がアパートに帰ってドアを開ければ、案の定、生ゴミがすっぱいような香ばしいような、野菜とお肉と麺類その他色々のなんとも言えない多種多様の臭いが混ざり合った、前衛的なハーモニーの臭いを奏でていた。
しかし、それだけで済めばよかったのだが、もっと酷い事態に陥っていた。
「お、家主の登場だぜ」
「うはっ、汗だくじゃねえか」
「汗だけじゃねえぜ。こりゃ三日は風呂に入ってねぇ」
「汗と垢の臭いがプンプンしてやがる」
「やべぇ、濡れてきた」
個々にそれぞれ特徴は異なるが、銀髪にドクロマークの入った四枚羽。虫の武骨な手足は共通している。魔物娘の存在が認知された現在、総司が見紛うはずがなかった。暴君ベルゼブブ。邪智暴虐厚顔無恥と我が儘がそのまま形を成したような魔物娘。その暴君が、いま総司の目の前に五匹もいたのだ。
そのベルゼブブたちは、その暴君の名にふさわしく総司の部屋を自由気ままに使っていた。あるものは冷蔵庫からビールやらつまみやらを取り出して食べ、またあるものは棚にしまっていたカップラーメンを根こそぎ食い荒らし、またあるものはテレビゲームに興じていて、またあるものは隠してあったエロ本を見て、あるものは通販で食い物を大量にカートに入れていた。
「お、おまえら……」
総司が愕然するのも無理なかった。ちょっとゴミ捨てをするのを怠ったくらいで、こんなに発生するのは思ってもみなかったからだ。そして、こんな我が物顔で居直られるとは思わなかったからだ。
「おいおい、なに突っ立ってんだよ。早く上がれよ、遠慮すんなって」
「遠慮もなにもこいつの家じゃねえか。おい、お前、一緒に酒盛りしようじゃねえか。あ、この家の酒は全部あたしのだから」
「あげる気ねぇだろ、お前。おい、こっちきてゲーム教えろよ。このゾンビ堅すぎだろ、弱点教えろって」
「うはっ、お前アブノーマルすぎるだろ！男の娘好きなの？あ、触手もあるな。完堕ちモノから捕食モノもあるし、うっわ、男の娘×触手×捕食×完堕ち×悪堕ちって、盛りすぎだろ！なんだよ、この作者の趣味丸出しなジャンル！」
「おい、これ全部購入するからクレジット貸せよ。ほらほら、早く早く。早くしねぇと、食い物なくなるじゃねえか」
「……………………」
総司はなんとも言えなかった。もうなにも言う気力が沸き起こらなかった。徹夜＆風呂なしの泊まり込みハードスケジュールからようやく解放されたというのに、今度はそれ以上に難解な問題が訪れたのだ。総司が思考放棄するのは当然の道理と言えた。
とにかく無視だ。いない風を装う。ベルゼブブたちなんて目の前にはいない。いても気にしない。無視を貫く。
そうすることを結論付け、まずは溜まりに溜まった汗と垢を取るため、風呂場へ向かう。湯を出そうとして、総司は絶望した。
水しかでないのだ。
「なんで、どうして……」
と半泣きになりながら呟いていると、後ろから一匹のベルゼブブが言った。
「あー、なんかボイラーが壊れてるらしいぜー、理由は知らねー、俺様知らねー」
棒読みだった。総司は確信する。こいつらがなにかしたに違いないと。しかし、それを知ったからといってどうにもできない。こいつらに出ていけと言っても言うことを聞くわけがないし、無理矢理追い出す力は自分にはない。ゆえにできることと言えば、この家の掃除をして、清潔を取り戻すことくらいだ。そうすれば、このハエ娘たちも出ていくだろう。総司はそう結論づけた。
づけたのだが……。
「……っ……っっ…………」
まずは適当なビニール袋にゴミを適当に放り込んでいくという、とても簡単な作業なのだが。
「うめー、お菓子うめー」
ポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッ。
拾う度に、ベルゼブブたちは食べたお菓子の袋をそこら辺に投げ捨てるのだ。隣にゴミ箱があるにも関わらず、だ。
それにもめげずに総司がゴミを拾い上げ、ようやくいくつかのビニール袋が満タンになったかと思うも、
「おっとー足が滑ったーうわー」
一匹のベルゼブブがビニール袋をシューーート！
散乱した。
そこで示し会わせたように二匹のベルゼブブが、その散乱したゴミを蹴って、さらに広く撒き散らしていく。
「おまっ……ぅぐぐぐ」
沸点を越えて、思わず声をあげてしまうのをなんとか堪える総司。
構ってはいけない。いない振りをするんだ。そうしなければさらに付け上がる。
そう思い、またゴミ拾いに取りかかる。今度はビニールの口を閉め、蹴飛ばしても散らばらないようにした。
「そんなつまんねーことしてねぇで、俺様と遊ぼうぜ」
「いやいや、あたしと酒盛りして女体の神秘について語ろうじゃねぇか」
「このゾンビの倒し方教えろよー」
「やっべー、このジャンルマジいいわ……。おい、もっとこのジャンルのやつ教えろよ」
「財布よこせよー、クレジットカードくらいあんだろー？」
ブーンブーンと鬱陶しく、総司に構おうとするベルゼブブたち。総司は青筋を立てながらも、なんとかゴミ拾いを終わらせる。そして、今度は掃除機を使って、床に落ちた食べ物の食いカスを取ろうとしたのだが、
「おっととー、また足が滑ったぜー危ないぜー」
さっき足を滑らせたベルゼブブがまた、似たようなことを言って、掃除機のコンセントに足を引っかけたのである。掃除機は力なくしたように動かなくなって、食いカスを吸いとれなくなった。
「……………………」
もはや修羅、羅刹が総司の身体に憑依するかと思われるくらい、心は怒りに満ちていたが、それでも総司はなにも言わなかった。もはやここまで来たら意地だった。なにがなんでも、こいつらを追い出してやる。どうしようもないくらいに部屋を綺麗にして、ここにいられなくしてやる。その決意だけが、いまの総司を支えていた。
そうして総司は部屋の掃除を終えた。もう日は傾き、夕焼けを作り出し、部屋を赤く染め上げている。
総司は「どうだ見たかこんなに綺麗になったぞお前らはもうここにいたくないだろ」と言いたげに、ベルゼブブたちを見る。しかし、
「……えー」
ベルゼブブたちはくつろいでいた。しごく当然のように、綺麗な部屋を全く気にするようすもなく、くつろいでいた。
戸惑いの視線に気づいたのか、ベルゼブブの一匹が言う。
「別に俺様たち、汚いところしか住めないわけじゃねえから。人間の唾液とか汗とか垢とかは好きだけど、ないと生きてけないわけじゃねぇし。特に汚いのが好きなのってデビルバグだし。ってわけで、俺様たち出てかないのでよろしくー」
「ぅぅあ……」
総司は膝をつく。ならば、ならば、今までの行為はなんだったのだ。今まで掃除をしてきたのはなんだったというのだ。全て無駄だったのか。全て無駄だったのだ。
とか総司が絶望感に苛まれているときも、
「なぁなぁ、あたし腹減ってきたんだけど」
「お菓子食いまくってたじゃねぇか」
「じゃなくて、ザーメン欲しいんだよ、マンコに」
「あー、やば。俺様も欲しくなってきた」
「確かに。こんな狭い部屋でこんなに汗の臭い嗅がされたら、オマンコグチュグチュになっちまうぜ」
「あたしなんか、クリトリスビンビンだし」
「俺様なんかアナルまで濡れてるし。腸液ドロドロ」
「やば、マジ我慢できね。あたし一番搾りもらうわ」
「あ？なに言ってんの？一番搾りは俺様のに決まってんだろ」
「あんたこそなに言ってんの。三日四日オナ禁したチンポの一番搾りザーメンもらうのはあたしに決まってんだろ」
「うるせぇ、お前は机の角でオナっとけ」
「この！」
「んだよ！」
「邪魔すんな！」
「こっから出ていけ！」
「お前が出ていけよ！」
などなど。口を鳴らし羽根を鳴らし。ブーンブーンという擬音すら生易しいと言えるほど、耳障りで煩い言い争いが起きる。それも総司を中心にして。彼の意思を無視して。ベルゼブブたちは我が儘っぷりをフル稼働させ、総司の神経を逆撫でしまくった。
「………………ブチッ」
そして、ついに、総司の我慢の臨界点は突破された。
総司はおもむろに立ち上がる。その顔は無表情だった。総司はベルゼブブたちの間を抜け、玄関の方へ向かう。
それに気づいたベルゼブブの一匹が声をかけた。
「おい、どこ行くんだよ。俺様たちとしっぽり愉しいことしようぜ？」
総司は答えるか無視するか迷ったが、無視してついてこられたり引き留められたりしたら困る。答えることにした。
「すぐ戻るから待ってろ」
「おお、ようやく俺様たちと話してくれたぜ」
「んーんー一歩全身かにゃー？」
「んでどこ行くんだよ」
「あー、もしかして殺虫剤とかじゃねぇだろうな」
「あぁ、俺様たちを追い出そって魂胆か？」
「やめとけやめとけ。あたしたちに殺虫剤なんて効かねぇから。ていうか、魔物娘を殺せるものが売ってるわけないだろ」
「無駄足だぜぇ？んなもん買いに行くより、俺様と二十四時間耐久セックス祭しようぜ？」
「一人二十四時間な！」
「足腰立たなくしてやんよ」
「いやいや、俺様たちとヤッたら逆に元気になんじゃね？」
「もしかしたら二十四時間じゃ済まないかもな」
「だな。足腰の筋肉逆に鍛えられるし」
「フルマラソン完走できるくらい鍛えられるな」
「いやもう世界一周できるくらいだぜ」
「もう赤ちゃん出来るまでヤリ続けっか」
「ていうか飽きるまでヤリ続けようぜ」
「俺様たち魔物娘だから飽きるなんて一生ないけどな！」
「あっはっは！俺様たちの性欲は底無しだぜ！よぉし、まずは二十四時間耐久セックス祭、開始するか！？」
「賛成！」
「異議無し！」
「右に同じ！」
「左に同じ！」
「よぉし、ヤるぞ…………って、あれ？」
ベルゼブブたちが玄関の方を見る。しかし、そこには誰もいなかった。どうするか相談している間に、総司は部屋から出ていったのである。わざわざ聞いてやる義理など、総司にはなかったのだ。
そして二十分後。総司がアパートに帰宅する。その両手にはパンパンに膨らんだビニール袋が二つ持たれていた。
「なんだよ、それ」
「もしかして食べ物か？さすがだな！俺様たちに貢ぐとは偉いぞ」
「よしよし、なら食べようまず食べよう早く食べよう」
「食い終わったらセックス大会だぜ」
「燃えてきたぁ！」
「なに言ってんだ？お前ら」
ベルゼブブたちが熱い声を言う中、ポツリと、総司の冷たく低い声が響いた。
ベルゼブブたちは不審に思い、玄関に立つ総司を見やる。総司の顔には影があった。暗く深く怨嗟さえ感じられる、闇を凝縮した表情。ベルゼブブたちは思わず身体を震わした。なにか不味いことでもしたか、と今更になって、しかも自覚さえしていなかったことを、総司に感じさせてしまう。
総司は怒り狂っていた。目の前を耳元を飛び回るハエ。ブーンブーンと煩く、視界に入っては消え入っては消える鬱陶しさ。もはや我慢の限界を突破していた。振りきっていた。メーターが振りきれていた。スカウターでも測定不能だった。だが、総司はそれでも冷静だった。怒りに任せ、暴れてもどうにもならないことを知っていた。虫のコバエのように手で叩き潰せないとわかりきっていた。
だから、
「俺が食うんだよ、全部。お前らを犯すためにな」
そう。総司は、どうせ追い出せないならこいつらの手綱を握ることに決めたのだ。首輪をつけることに決めたのだ。支配することに決めたのだ。
「あん？お前こそなに言って」
と、反抗しようと思ったベルゼブブの口が止まる。その視線は総司の手に向かっていた。
「お前、それは」
「ああ。タケリダケだ」
タケリダケ。魔界産のキノコ。男性がそれを食べると魔物娘に対して絶対的な(性的に)力を得ることができる。例え、ダークエルフやアマゾネス、オーガなどが相手でも、男性主導で犯し抜くことのできる代物なのである。
それを総司が食べる。すなわち、総司がベルゼブブたちを性的に支配することができるようになるに他ならない。
しかし、それでもベルゼブブは余裕の笑みを浮かべていた。
「は、はは。見たところ、それは原生のタケリダケじゃねぇだろ。こっちで栽培した、言わば量産品だ。オリジナルに比べたら全然効力は……」
「ああ。だからこれだけ買ってきたんだ」
ベルゼブブたちは硬直する。気づいたからだ。あのビニール袋に入ってるものが全て、量産型タケリダケだと。数にしておよそ百。量産型タケリダケはオリジナルのタケリダケのおよそ十分の一程度。しかし、量産品と言えど、百もあれば。
答えは明確だった。
「食わせるな！」
一匹のベルゼブブが叫び、飛びかかる。食わせたら負けだと悟ったのだ。そして、あまりの早さに総司は避けきれなかった。あっさりとベルゼブブに組み付かれる。他のベルゼブブは安堵したように息をつく。しかし、
「ふにぃやぁぁ〜」
総司に組み付いたはずのベルゼブブは力なくその場に崩れ落ちたのだ。その顔は快楽が浮かんでいた。
総司はまるで極悪人のように笑う。
「俺が、まだタケリダケを食ってないと思ったか？もう十本は食ったぞ」
そう、玄関前ですでにタケリダケは食していた。ベルゼブブたちは焦りからそれに気づけなかったのだ。
総司はズボンのチャックを下ろす。すると、今までどこに収まっていたとでもいうのか。女性の二の腕はありそうなほど巨大なペニスが、天を突くように屹立していた。
その男の性の臭いを、余すことなく撒き散らすソレを見たベルゼブブたちはゴクリと生唾を飲む。もっともそれが顕著だったのは、先程崩れ落ちたベルゼブブだった。屹立したペニスを目を見開いて見上げ、口はだらしなくあんぐりと開け、端からは涎がダラダラと溢れ落ち床に跳ねる。
総司はそんなベルゼブブを見てニヤリと笑うと、いきなり彼女の頭を掴んだ。掴んで、そのだらしなく開いた口に、ガチガチにいきり立ったペニスを突っ込んだのだ。
ゴリュッ！
骨が擦れるような、肉が潰れるような音が響く。
「ぐぅ……ぉぐぉ……ぉぉ」
一気に根本までペニスを突っ込まれたベルゼブブは、半ば白目を向き、苦しみに喘いだ。しかし、総司は手を緩めなかった。それどころかますます笑みを深め、ストロークを開始した。
喉を貫いてしまわないかと思うくらいの激しいストローク。前後に腰を震い、前後にベルゼブブの頭を動かし、喉の奥、食道から果ては胃まで、総司はペニスを抜き刺しまくった。
「はは、嬉しいそうな顔しやがって！無理矢理されてんのによ！」
ベルゼブブは悦んでいた。苦しみはあった。オナホみたいに使われ、屈辱もあった。しかしそれ以上に、タケリダケを食し、限界まで精臭を高められたペニスを口に出し入れされることが、途方もないほどの幸福感をもたらしてくれるのだ。まるで膣に突っ込まれ、子宮を犯されているかに錯覚するのだ。苦しみ以上に快楽のほうが強かった。
「ははは！舌を絡めてくるなんて、とんだ淫乱女だな。よし、くれてやる！お前が一番欲しがってたもんを、胃に直接くれてやる！」
そう言って総司は片手を頭から離し、タケリダケを口に運ぶ。片手でストロークしながら、タケリダケを何本も喰らう。
「うぐぅっ！？」
ベルゼブブが喘ぐ。しかし、苦しみからというよりは、ペニスがさらに大きくなり、臭いが増し、香ばしい先走り汁が出たことから来る期待感からだった。
「さぁ！ほらっ！受けとれ！」
ズンズンッとストロークを早め、そして最後に、ペニスを根本までベルゼブブの口に突っ込む。ペニスが震えた。登り詰め登り詰め、白い欲望の塊が解き放たれた。
ドピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュ！！！
「んんんんんーーーっ！？」
離れたベルゼブブたちにも聞こえるほど大きな射精音。射精されたベルゼブブは身体中を痙攣させ、その顔は快楽の色しかなかった。
まるで小便のような勢いの射精をたっぷりと二分間して、ようやく止まる。総司は全く萎えないペニスを引き抜く。その途中、痙攣する喉にカリが引っ掛かるも、総司は強引に引き抜いた。まるで膣をカリで掻き出すように。
ベルゼブブはペニスという支えがなくなると、横にばたんと倒れた。その顔はあの勝ち気なものではなかった。白目を剥き、舌をでろりと垂らして、出された精液を涎のように出す。もはや発情しきった一匹の雌でしかなかった。
「うっ……」
離れたところにいた一人のベルゼブブが息を飲む。気づいたからだ。射精されたベルゼブブの腹が、まるで妊婦になったかのように膨らんでいたということを。その膨らみの中身は、全て総司の精液であるともそのベルゼブブは気づいた。
総司は寄り添うように固まった四人のベルゼブブたちに視線を向ける。そして、一歩彼女たちに向け踏み出した。
「さぁ、ヤろうか？」
「ひぃ、あぁあぁぁ」
「た、たすけ……」
「あぅぁぁうあぁ」
「………………」
四人のベルゼブブたちは怯えたように声を漏らす。しかし、逃げなかった。その場から動こうとしなかった。彼女たちなら、後ろの窓から容易に逃げ切れるにも関わらずだ。
その理由は表情を見ればわかる。
彼女たちは怯えた声を漏らしながらも、その実、表情は朱が差し、口の端は気が狂ったように笑みに歪んでいた。
そう、彼女たちは期待しているのだ。
いまからされることを。
いまからまるで道具のように扱われることを。
あそこで倒れているベルゼブブのように、思考全てが快楽に塗り潰されることを。
目の前に立つ、いきり立った肉棒で犯し抜かれ、精液の臭いしかしない身体にされることを。
彼女たちは期待しているのだ
「まずはお前からだ」
そして、精臭漂う快楽の宴が始まった。
二週間後。アパートの管理人のアヌビスが、出ていった総司の部屋を訪れた。開けるとそこには、床上浸水したのかと思われるほどの精液が撒き散らされていた。まるで大きなバケツを何杯もひっくり返したような量である。性交の後だというのははっきりしていた。
アヌビスは悩ましいため息をついた。今日こそはこの部屋を掃除しようと思ったのだが、無理だ。こんな部屋を見れば、セックスを我慢できない。
アヌビスは今日も掃除を諦め、旦那のいる自室へと戻っていった。
―♂♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♂―
神城町の高級住宅街。そこの一角に立つ大きな屋敷。そこは周りの住人から『精液屋敷』と呼ばれていた。
その理由は単純明快。屋敷からまるでごみ屋敷から漂う腐臭のように、精臭を放っていたからだ。その原因も単純明快。周りの住人は誰もが知っている。
「おらっ！出すぞ、締め付けろ！」
「あひぃぃっ！ひめましゅうぅぅぅぅ！！」
ドピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュ！！
そこは屋敷の玄関ホール。二階と吹き抜けになった広々とした空間。その一階の真ん中に声の主たちはいた。
一人は総司。仕事に忙殺されていた頃とは違う、逞しい身体つきをしていた。彼は立ちバックで犯していた。ベルゼブブの小さな少女をだ。その少女の腹は総司の射精によりたちまち腹を妊婦のように膨らんだ。少女の顔は快楽に表情を歪んでいた。
総司がペニスを引き抜くと、辺りを見渡す。周りには数十人ものベルゼブブたちが折り重なるようにはして倒れていた。力なく、床を埋め尽くすようにだ。その全員が精液にまみれ、腹を妊婦のように膨らませ、だらしなく顔を弛緩させている。ここはもはや精液がかかっていない場所の方が狭かった。
アパートでの一件後、総司は宝くじを買わされた。宝くじは六億当選。すぐにアパートを引き払い、高級住宅街の屋敷を購入。移り住んだ。そして、セックス。寝ても覚めても２４時間３６５日。飯のときも風呂のときもトイレのときも。休むことなくセックスし続けた。外に出ることはなかった。仕事もやめた。ベルゼブブの能力。しかも、五人分の力で、金は腐るほど入った。金は食費になり、タケリダケを購入する費用にもなった。
そうして、二年と半年。総司の屋敷は『精液屋敷』と呼ばれるようになった。セックス三昧の彼らが掃除をするわけもなく、屋敷はゴミだらけ。さらに精臭もあり、たちまち新たなベルゼブブがやってきた。やってきて、総司に犯され、虜となった。最初の五人は全員妊娠した。産まれたベルゼブブも漏れなく、総司に犯され、虜となった。その繰り返し。やってきたベルゼブブ。産まれたベルゼブブ。この屋敷はベルゼブブだらけとなった。その数３０。その全部を総司は一人で相手している。平等に、分け隔てなく、片っ端から全員、気絶するまで犯しているのだ。
総司は、精液があらかた排出され、腹の膨らみが弱まったベルゼブブを一人、脚を持って背中から抱える。彼女は抵抗もせず、少し呻くだけだったが、屹立したペニスの上に跨がらさせられると、豹変した。
「あはぁ、チンポぉチンポぉぉ、挿入れて挿入れてぇ！チンポハメハメしまくってぇ、腹ボテベルゼブブにしてくださぁい、ご主人様ぁ！！」
精液まみれで、腹も通常時から見れば苦しいほどに膨らんでいる彼女だったが、それでも懇願した。もっともっと快楽を与えてほしいと。
総司はクックッも笑うと、一気にペニスでベルゼブブを貫いた。
「あひぁぁぁぁぁ！！キィィィタァァァァァ！！」
ボコォッとベルゼブブの腹からペニスの形が浮き出て、内蔵を圧迫する。その苦しみが、彼女にとっては至高の悦びであった。
「もっろぉぉもっろ突いれぇぇ！チンポズンズンッしれぇぇ！！あひゃひゃひゃひゃひゃ！！キモチいいいぃぃぃ！！」
哄笑。ベルゼブブは狂ったような笑いを、玄関ホールに響かした。
そして精液が放たれる。ベルゼブブは腹を破らんばかりに膨らませる。妊婦を通り越して水風船のようだ。それでも彼女は快楽まみれの表情を浮かべ、天国に昇るような気持ちのまま気絶した。
総司はペニスを引き抜き、また他のベルゼブブにペニスを挿入する。射精する。腹ボテにする。そしてまた、快楽の雄叫びがホールに響く。
その繰り返しであった。
このループは永遠に続く。新たなベルゼブブを何人も引き入れて。
快楽の宴は終わらない。
とある出版社で働く独身男、清原総司(きよはらそうじ)。とある記事を作るため、三日間出版社に泊まり込みで、ろくに風呂にも入れなかった。ようやくアパートに帰れるときは体はでろでろ。夏真っ盛りの暑い時期のさらに昼時なので、家路につくだけで汗だらけである。そして先にも言ったが、いまは夏真っ盛りである。三日ぶりの帰宅である。彼は思い出す。そういえばゴミを片付けずに出掛けてはいなかったか、と。
総司がアパートに帰ってドアを開ければ、案の定、生ゴミがすっぱいような香ばしいような、野菜とお肉と麺類その他色々のなんとも言えない多種多様の臭いが混ざり合った、前衛的なハーモニーの臭いを奏でていた。
しかし、それだけで済めばよかったのだが、もっと酷い事態に陥っていた。
「お、家主の登場だぜ」
「うはっ、汗だくじゃねえか」
「汗だけじゃねえぜ。こりゃ三日は風呂に入ってねぇ」
「汗と垢の臭いがプンプンしてやがる」
「やべぇ、濡れてきた」
個々にそれぞれ特徴は異なるが、銀髪にドクロマークの入った四枚羽。虫の武骨な手足は共通している。魔物娘の存在が認知された現在、総司が見紛うはずがなかった。暴君ベルゼブブ。邪智暴虐厚顔無恥と我が儘がそのまま形を成したような魔物娘。その暴君が、いま総司の目の前に五匹もいたのだ。
そのベルゼブブたちは、その暴君の名にふさわしく総司の部屋を自由気ままに使っていた。あるものは冷蔵庫からビールやらつまみやらを取り出して食べ、またあるものは棚にしまっていたカップラーメンを根こそぎ食い荒らし、またあるものはテレビゲームに興じていて、またあるものは隠してあったエロ本を見て、あるものは通販で食い物を大量にカートに入れていた。
「お、おまえら……」
総司が愕然するのも無理なかった。ちょっとゴミ捨てをするのを怠ったくらいで、こんなに発生するのは思ってもみなかったからだ。そして、こんな我が物顔で居直られるとは思わなかったからだ。
「おいおい、なに突っ立ってんだよ。早く上がれよ、遠慮すんなって」
「遠慮もなにもこいつの家じゃねえか。おい、お前、一緒に酒盛りしようじゃねえか。あ、この家の酒は全部あたしのだから」
「あげる気ねぇだろ、お前。おい、こっちきてゲーム教えろよ。このゾンビ堅すぎだろ、弱点教えろって」
「うはっ、お前アブノーマルすぎるだろ！男の娘好きなの？あ、触手もあるな。完堕ちモノから捕食モノもあるし、うっわ、男の娘×触手×捕食×完堕ち×悪堕ちって、盛りすぎだろ！なんだよ、この作者の趣味丸出しなジャンル！」
「おい、これ全部購入するからクレジット貸せよ。ほらほら、早く早く。早くしねぇと、食い物なくなるじゃねえか」
「……………………」
総司はなんとも言えなかった。もうなにも言う気力が沸き起こらなかった。徹夜＆風呂なしの泊まり込みハードスケジュールからようやく解放されたというのに、今度はそれ以上に難解な問題が訪れたのだ。総司が思考放棄するのは当然の道理と言えた。
とにかく無視だ。いない風を装う。ベルゼブブたちなんて目の前にはいない。いても気にしない。無視を貫く。
そうすることを結論付け、まずは溜まりに溜まった汗と垢を取るため、風呂場へ向かう。湯を出そうとして、総司は絶望した。
水しかでないのだ。
「なんで、どうして……」
と半泣きになりながら呟いていると、後ろから一匹のベルゼブブが言った。
「あー、なんかボイラーが壊れてるらしいぜー、理由は知らねー、俺様知らねー」
棒読みだった。総司は確信する。こいつらがなにかしたに違いないと。しかし、それを知ったからといってどうにもできない。こいつらに出ていけと言っても言うことを聞くわけがないし、無理矢理追い出す力は自分にはない。ゆえにできることと言えば、この家の掃除をして、清潔を取り戻すことくらいだ。そうすれば、このハエ娘たちも出ていくだろう。総司はそう結論づけた。
づけたのだが……。
「……っ……っっ…………」
まずは適当なビニール袋にゴミを適当に放り込んでいくという、とても簡単な作業なのだが。
「うめー、お菓子うめー」
ポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッポイッ。
拾う度に、ベルゼブブたちは食べたお菓子の袋をそこら辺に投げ捨てるのだ。隣にゴミ箱があるにも関わらず、だ。
それにもめげずに総司がゴミを拾い上げ、ようやくいくつかのビニール袋が満タンになったかと思うも、
「おっとー足が滑ったーうわー」
一匹のベルゼブブがビニール袋をシューーート！
散乱した。
そこで示し会わせたように二匹のベルゼブブが、その散乱したゴミを蹴って、さらに広く撒き散らしていく。
「おまっ……ぅぐぐぐ」
沸点を越えて、思わず声をあげてしまうのをなんとか堪える総司。
構ってはいけない。いない振りをするんだ。そうしなければさらに付け上がる。
そう思い、またゴミ拾いに取りかかる。今度はビニールの口を閉め、蹴飛ばしても散らばらないようにした。
「そんなつまんねーことしてねぇで、俺様と遊ぼうぜ」
「いやいや、あたしと酒盛りして女体の神秘について語ろうじゃねぇか」
「このゾンビの倒し方教えろよー」
「やっべー、このジャンルマジいいわ……。おい、もっとこのジャンルのやつ教えろよ」
「財布よこせよー、クレジットカードくらいあんだろー？」
ブーンブーンと鬱陶しく、総司に構おうとするベルゼブブたち。総司は青筋を立てながらも、なんとかゴミ拾いを終わらせる。そして、今度は掃除機を使って、床に落ちた食べ物の食いカスを取ろうとしたのだが、
「おっととー、また足が滑ったぜー危ないぜー」
さっき足を滑らせたベルゼブブがまた、似たようなことを言って、掃除機のコンセントに足を引っかけたのである。掃除機は力なくしたように動かなくなって、食いカスを吸いとれなくなった。
「……………………」
もはや修羅、羅刹が総司の身体に憑依するかと思われるくらい、心は怒りに満ちていたが、それでも総司はなにも言わなかった。もはやここまで来たら意地だった。なにがなんでも、こいつらを追い出してやる。どうしようもないくらいに部屋を綺麗にして、ここにいられなくしてやる。その決意だけが、いまの総司を支えていた。
そうして総司は部屋の掃除を終えた。もう日は傾き、夕焼けを作り出し、部屋を赤く染め上げている。
総司は「どうだ見たかこんなに綺麗になったぞお前らはもうここにいたくないだろ」と言いたげに、ベルゼブブたちを見る。しかし、
「……えー」
ベルゼブブたちはくつろいでいた。しごく当然のように、綺麗な部屋を全く気にするようすもなく、くつろいでいた。
戸惑いの視線に気づいたのか、ベルゼブブの一匹が言う。
「別に俺様たち、汚いところしか住めないわけじゃねえから。人間の唾液とか汗とか垢とかは好きだけど、ないと生きてけないわけじゃねぇし。特に汚いのが好きなのってデビルバグだし。ってわけで、俺様たち出てかないのでよろしくー」
「ぅぅあ……」
総司は膝をつく。ならば、ならば、今までの行為はなんだったのだ。今まで掃除をしてきたのはなんだったというのだ。全て無駄だったのか。全て無駄だったのだ。
とか総司が絶望感に苛まれているときも、
「なぁなぁ、あたし腹減ってきたんだけど」
「お菓子食いまくってたじゃねぇか」
「じゃなくて、ザーメン欲しいんだよ、マンコに」
「あー、やば。俺様も欲しくなってきた」
「確かに。こんな狭い部屋でこんなに汗の臭い嗅がされたら、オマンコグチュグチュになっちまうぜ」
「あたしなんか、クリトリスビンビンだし」
「俺様なんかアナルまで濡れてるし。腸液ドロドロ」
「やば、マジ我慢できね。あたし一番搾りもらうわ」
「あ？なに言ってんの？一番搾りは俺様のに決まってんだろ」
「あんたこそなに言ってんの。三日四日オナ禁したチンポの一番搾りザーメンもらうのはあたしに決まってんだろ」
「うるせぇ、お前は机の角でオナっとけ」
「この！」
「んだよ！」
「邪魔すんな！」
「こっから出ていけ！」
「お前が出ていけよ！」
などなど。口を鳴らし羽根を鳴らし。ブーンブーンという擬音すら生易しいと言えるほど、耳障りで煩い言い争いが起きる。それも総司を中心にして。彼の意思を無視して。ベルゼブブたちは我が儘っぷりをフル稼働させ、総司の神経を逆撫でしまくった。
「………………ブチッ」
そして、ついに、総司の我慢の臨界点は突破された。
総司はおもむろに立ち上がる。その顔は無表情だった。総司はベルゼブブたちの間を抜け、玄関の方へ向かう。
それに気づいたベルゼブブの一匹が声をかけた。
「おい、どこ行くんだよ。俺様たちとしっぽり愉しいことしようぜ？」
総司は答えるか無視するか迷ったが、無視してついてこられたり引き留められたりしたら困る。答えることにした。
「すぐ戻るから待ってろ」
「おお、ようやく俺様たちと話してくれたぜ」
「んーんー一歩全身かにゃー？」
「んでどこ行くんだよ」
「あー、もしかして殺虫剤とかじゃねぇだろうな」
「あぁ、俺様たちを追い出そって魂胆か？」
「やめとけやめとけ。あたしたちに殺虫剤なんて効かねぇから。ていうか、魔物娘を殺せるものが売ってるわけないだろ」
「無駄足だぜぇ？んなもん買いに行くより、俺様と二十四時間耐久セックス祭しようぜ？」
「一人二十四時間な！」
「足腰立たなくしてやんよ」
「いやいや、俺様たちとヤッたら逆に元気になんじゃね？」
「もしかしたら二十四時間じゃ済まないかもな」
「だな。足腰の筋肉逆に鍛えられるし」
「フルマラソン完走できるくらい鍛えられるな」
「いやもう世界一周できるくらいだぜ」
「もう赤ちゃん出来るまでヤリ続けっか」
「ていうか飽きるまでヤリ続けようぜ」
「俺様たち魔物娘だから飽きるなんて一生ないけどな！」
「あっはっは！俺様たちの性欲は底無しだぜ！よぉし、まずは二十四時間耐久セックス祭、開始するか！？」
「賛成！」
「異議無し！」
「右に同じ！」
「左に同じ！」
「よぉし、ヤるぞ…………って、あれ？」
ベルゼブブたちが玄関の方を見る。しかし、そこには誰もいなかった。どうするか相談している間に、総司は部屋から出ていったのである。わざわざ聞いてやる義理など、総司にはなかったのだ。
そして二十分後。総司がアパートに帰宅する。その両手にはパンパンに膨らんだビニール袋が二つ持たれていた。
「なんだよ、それ」
「もしかして食べ物か？さすがだな！俺様たちに貢ぐとは偉いぞ」
「よしよし、なら食べようまず食べよう早く食べよう」
「食い終わったらセックス大会だぜ」
「燃えてきたぁ！」
「なに言ってんだ？お前ら」
ベルゼブブたちが熱い声を言う中、ポツリと、総司の冷たく低い声が響いた。
ベルゼブブたちは不審に思い、玄関に立つ総司を見やる。総司の顔には影があった。暗く深く怨嗟さえ感じられる、闇を凝縮した表情。ベルゼブブたちは思わず身体を震わした。なにか不味いことでもしたか、と今更になって、しかも自覚さえしていなかったことを、総司に感じさせてしまう。
総司は怒り狂っていた。目の前を耳元を飛び回るハエ。ブーンブーンと煩く、視界に入っては消え入っては消える鬱陶しさ。もはや我慢の限界を突破していた。振りきっていた。メーターが振りきれていた。スカウターでも測定不能だった。だが、総司はそれでも冷静だった。怒りに任せ、暴れてもどうにもならないことを知っていた。虫のコバエのように手で叩き潰せないとわかりきっていた。
だから、
「俺が食うんだよ、全部。お前らを犯すためにな」
そう。総司は、どうせ追い出せないならこいつらの手綱を握ることに決めたのだ。首輪をつけることに決めたのだ。支配することに決めたのだ。
「あん？お前こそなに言って」
と、反抗しようと思ったベルゼブブの口が止まる。その視線は総司の手に向かっていた。
「お前、それは」
「ああ。タケリダケだ」
タケリダケ。魔界産のキノコ。男性がそれを食べると魔物娘に対して絶対的な(性的に)力を得ることができる。例え、ダークエルフやアマゾネス、オーガなどが相手でも、男性主導で犯し抜くことのできる代物なのである。
それを総司が食べる。すなわち、総司がベルゼブブたちを性的に支配することができるようになるに他ならない。
しかし、それでもベルゼブブは余裕の笑みを浮かべていた。
「は、はは。見たところ、それは原生のタケリダケじゃねぇだろ。こっちで栽培した、言わば量産品だ。オリジナルに比べたら全然効力は……」
「ああ。だからこれだけ買ってきたんだ」
ベルゼブブたちは硬直する。気づいたからだ。あのビニール袋に入ってるものが全て、量産型タケリダケだと。数にしておよそ百。量産型タケリダケはオリジナルのタケリダケのおよそ十分の一程度。しかし、量産品と言えど、百もあれば。
答えは明確だった。
「食わせるな！」
一匹のベルゼブブが叫び、飛びかかる。食わせたら負けだと悟ったのだ。そして、あまりの早さに総司は避けきれなかった。あっさりとベルゼブブに組み付かれる。他のベルゼブブは安堵したように息をつく。しかし、
「ふにぃやぁぁ〜」
総司に組み付いたはずのベルゼブブは力なくその場に崩れ落ちたのだ。その顔は快楽が浮かんでいた。
総司はまるで極悪人のように笑う。
「俺が、まだタケリダケを食ってないと思ったか？もう十本は食ったぞ」
そう、玄関前ですでにタケリダケは食していた。ベルゼブブたちは焦りからそれに気づけなかったのだ。
総司はズボンのチャックを下ろす。すると、今までどこに収まっていたとでもいうのか。女性の二の腕はありそうなほど巨大なペニスが、天を突くように屹立していた。
その男の性の臭いを、余すことなく撒き散らすソレを見たベルゼブブたちはゴクリと生唾を飲む。もっともそれが顕著だったのは、先程崩れ落ちたベルゼブブだった。屹立したペニスを目を見開いて見上げ、口はだらしなくあんぐりと開け、端からは涎がダラダラと溢れ落ち床に跳ねる。
総司はそんなベルゼブブを見てニヤリと笑うと、いきなり彼女の頭を掴んだ。掴んで、そのだらしなく開いた口に、ガチガチにいきり立ったペニスを突っ込んだのだ。
ゴリュッ！
骨が擦れるような、肉が潰れるような音が響く。
「ぐぅ……ぉぐぉ……ぉぉ」
一気に根本までペニスを突っ込まれたベルゼブブは、半ば白目を向き、苦しみに喘いだ。しかし、総司は手を緩めなかった。それどころかますます笑みを深め、ストロークを開始した。
喉を貫いてしまわないかと思うくらいの激しいストローク。前後に腰を震い、前後にベルゼブブの頭を動かし、喉の奥、食道から果ては胃まで、総司はペニスを抜き刺しまくった。
「はは、嬉しいそうな顔しやがって！無理矢理されてんのによ！」
ベルゼブブは悦んでいた。苦しみはあった。オナホみたいに使われ、屈辱もあった。しかしそれ以上に、タケリダケを食し、限界まで精臭を高められたペニスを口に出し入れされることが、途方もないほどの幸福感をもたらしてくれるのだ。まるで膣に突っ込まれ、子宮を犯されているかに錯覚するのだ。苦しみ以上に快楽のほうが強かった。
「ははは！舌を絡めてくるなんて、とんだ淫乱女だな。よし、くれてやる！お前が一番欲しがってたもんを、胃に直接くれてやる！」
そう言って総司は片手を頭から離し、タケリダケを口に運ぶ。片手でストロークしながら、タケリダケを何本も喰らう。
「うぐぅっ！？」
ベルゼブブが喘ぐ。しかし、苦しみからというよりは、ペニスがさらに大きくなり、臭いが増し、香ばしい先走り汁が出たことから来る期待感からだった。
「さぁ！ほらっ！受けとれ！」
ズンズンッとストロークを早め、そして最後に、ペニスを根本までベルゼブブの口に突っ込む。ペニスが震えた。登り詰め登り詰め、白い欲望の塊が解き放たれた。
ドピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュ！！！
「んんんんんーーーっ！？」
離れたベルゼブブたちにも聞こえるほど大きな射精音。射精されたベルゼブブは身体中を痙攣させ、その顔は快楽の色しかなかった。
まるで小便のような勢いの射精をたっぷりと二分間して、ようやく止まる。総司は全く萎えないペニスを引き抜く。その途中、痙攣する喉にカリが引っ掛かるも、総司は強引に引き抜いた。まるで膣をカリで掻き出すように。
ベルゼブブはペニスという支えがなくなると、横にばたんと倒れた。その顔はあの勝ち気なものではなかった。白目を剥き、舌をでろりと垂らして、出された精液を涎のように出す。もはや発情しきった一匹の雌でしかなかった。
「うっ……」
離れたところにいた一人のベルゼブブが息を飲む。気づいたからだ。射精されたベルゼブブの腹が、まるで妊婦になったかのように膨らんでいたということを。その膨らみの中身は、全て総司の精液であるともそのベルゼブブは気づいた。
総司は寄り添うように固まった四人のベルゼブブたちに視線を向ける。そして、一歩彼女たちに向け踏み出した。
「さぁ、ヤろうか？」
「ひぃ、あぁあぁぁ」
「た、たすけ……」
「あぅぁぁうあぁ」
「………………」
四人のベルゼブブたちは怯えたように声を漏らす。しかし、逃げなかった。その場から動こうとしなかった。彼女たちなら、後ろの窓から容易に逃げ切れるにも関わらずだ。
その理由は表情を見ればわかる。
彼女たちは怯えた声を漏らしながらも、その実、表情は朱が差し、口の端は気が狂ったように笑みに歪んでいた。
そう、彼女たちは期待しているのだ。
いまからされることを。
いまからまるで道具のように扱われることを。
あそこで倒れているベルゼブブのように、思考全てが快楽に塗り潰されることを。
目の前に立つ、いきり立った肉棒で犯し抜かれ、精液の臭いしかしない身体にされることを。
彼女たちは期待しているのだ
「まずはお前からだ」
そして、精臭漂う快楽の宴が始まった。
二週間後。アパートの管理人のアヌビスが、出ていった総司の部屋を訪れた。開けるとそこには、床上浸水したのかと思われるほどの精液が撒き散らされていた。まるで大きなバケツを何杯もひっくり返したような量である。性交の後だというのははっきりしていた。
アヌビスは悩ましいため息をついた。今日こそはこの部屋を掃除しようと思ったのだが、無理だ。こんな部屋を見れば、セックスを我慢できない。
アヌビスは今日も掃除を諦め、旦那のいる自室へと戻っていった。
―♂♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♂―
神城町の高級住宅街。そこの一角に立つ大きな屋敷。そこは周りの住人から『精液屋敷』と呼ばれていた。
その理由は単純明快。屋敷からまるでごみ屋敷から漂う腐臭のように、精臭を放っていたからだ。その原因も単純明快。周りの住人は誰もが知っている。
「おらっ！出すぞ、締め付けろ！」
「あひぃぃっ！ひめましゅうぅぅぅぅ！！」
ドピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュ！！
そこは屋敷の玄関ホール。二階と吹き抜けになった広々とした空間。その一階の真ん中に声の主たちはいた。
一人は総司。仕事に忙殺されていた頃とは違う、逞しい身体つきをしていた。彼は立ちバックで犯していた。ベルゼブブの小さな少女をだ。その少女の腹は総司の射精によりたちまち腹を妊婦のように膨らんだ。少女の顔は快楽に表情を歪んでいた。
総司がペニスを引き抜くと、辺りを見渡す。周りには数十人ものベルゼブブたちが折り重なるようにはして倒れていた。力なく、床を埋め尽くすようにだ。その全員が精液にまみれ、腹を妊婦のように膨らませ、だらしなく顔を弛緩させている。ここはもはや精液がかかっていない場所の方が狭かった。
アパートでの一件後、総司は宝くじを買わされた。宝くじは六億当選。すぐにアパートを引き払い、高級住宅街の屋敷を購入。移り住んだ。そして、セックス。寝ても覚めても２４時間３６５日。飯のときも風呂のときもトイレのときも。休むことなくセックスし続けた。外に出ることはなかった。仕事もやめた。ベルゼブブの能力。しかも、五人分の力で、金は腐るほど入った。金は食費になり、タケリダケを購入する費用にもなった。
そうして、二年と半年。総司の屋敷は『精液屋敷』と呼ばれるようになった。セックス三昧の彼らが掃除をするわけもなく、屋敷はゴミだらけ。さらに精臭もあり、たちまち新たなベルゼブブがやってきた。やってきて、総司に犯され、虜となった。最初の五人は全員妊娠した。産まれたベルゼブブも漏れなく、総司に犯され、虜となった。その繰り返し。やってきたベルゼブブ。産まれたベルゼブブ。この屋敷はベルゼブブだらけとなった。その数３０。その全部を総司は一人で相手している。平等に、分け隔てなく、片っ端から全員、気絶するまで犯しているのだ。
総司は、精液があらかた排出され、腹の膨らみが弱まったベルゼブブを一人、脚を持って背中から抱える。彼女は抵抗もせず、少し呻くだけだったが、屹立したペニスの上に跨がらさせられると、豹変した。
「あはぁ、チンポぉチンポぉぉ、挿入れて挿入れてぇ！チンポハメハメしまくってぇ、腹ボテベルゼブブにしてくださぁい、ご主人様ぁ！！」
精液まみれで、腹も通常時から見れば苦しいほどに膨らんでいる彼女だったが、それでも懇願した。もっともっと快楽を与えてほしいと。
総司はクックッも笑うと、一気にペニスでベルゼブブを貫いた。
「あひぁぁぁぁぁ！！キィィィタァァァァァ！！」
ボコォッとベルゼブブの腹からペニスの形が浮き出て、内蔵を圧迫する。その苦しみが、彼女にとっては至高の悦びであった。
「もっろぉぉもっろ突いれぇぇ！チンポズンズンッしれぇぇ！！あひゃひゃひゃひゃひゃ！！キモチいいいぃぃぃ！！」
哄笑。ベルゼブブは狂ったような笑いを、玄関ホールに響かした。
そして精液が放たれる。ベルゼブブは腹を破らんばかりに膨らませる。妊婦を通り越して水風船のようだ。それでも彼女は快楽まみれの表情を浮かべ、天国に昇るような気持ちのまま気絶した。
総司はペニスを引き抜き、また他のベルゼブブにペニスを挿入する。射精する。腹ボテにする。そしてまた、快楽の雄叫びがホールに響く。
その繰り返しであった。
このループは永遠に続く。新たなベルゼブブを何人も引き入れて。
快楽の宴は終わらない。
13/08/26 11:55更新 / ヤンデレラ