魔をもって魔を制する。

天におわす神々にも、あまたの聖なる存在にも、正義の味方にも頼れないどころか
蛇蝎のごとく嫌悪されてるのでそれしか他に選べる道がない。
どのような道かというと内輪揉めの危険性を孕んでいる足引っ張りだ。
かなりの金銭と資源と人員を浪費してあんなモノをこしらえた
今となっては中止などできるわけもなく、後に退けないのである。
「してもいいけどね、中止」
「そうなの？」
ヘリィの返事はあっけらかんとしたものだった。
「お姉様にぶつける前なら魔王軍の巨大魔法兵器というコンセプトで使用できるし。
ぶつけた後なら絶対に言い訳できないからムリよ」
「ぶつけてからしらばっくれるほど図々しくはないか」
「適当に理屈こねてうやむやにできないこともないけど……百年単位で恨まれそうね」
「そんな長期的に敵意を向けられるのも困るな。何かと支障をきたしかねない」
地味に悪影響がありそうで嫌なんだよなデルエラにガンつけされるのは。
射精時にほとばしるあのたまらない快感が減衰するとか
後背位で腰を打ちつける時のスピードが遅くなるとかありそうで困る。
そうなると愛の女神にでも解呪してもらうしかないので今のうちに崇めておくか。助けてエロス様。
「お姉様の敵意くらい何てことないでしょ。教団も恐れる『勇者喰い』なんだから」
苦い顔をした俺に魔王の娘がきつい軽口を叩いてくる。
「いにしえの大いなる魔物ともあろう者がリリム一人の憎悪を
受けとめられなくてどうするの。涼しい顔で平然と受け流すくらいしなさいな」
「やめてくれヘリィ。その冗談は俺に効く」
気安くいじっただけのつもりだろうがなかなかげんなりしてしまう。人間扱いされるのは
もう諦めかけているが、せめてインキュバス扱いくらいはしてほしい。
世界のみんな、俺に人権をわけてくれ。
「そういえばハートの女王はどうなったんだ」
気が重くなってきたので話題を変えることにする。
「私もその件にはあまり触れたくないんだけど、姉妹たちに聞いた話だと
何日か椅子に座るのが困難だったほどお尻が腫れてたそうよ」
どんだけ叩いたんだあの長女。
「リリムってのはみんなその場の勢いと直感で生きてる種族なのか？」
前々から思っていた疑問をぶつける。
「そう言われるとムッとするけど……まあ、魔物娘だからね……反論しづらいわ。
とはいえ、念のために言っておくけど、私ほどではないにせよ
沈着冷静なリリムも姉妹にはいることはいるわよ」
あんなずさんな計画に嬉々として乗っておいてよく言えるものである。
「穏健な部類なのは認めるが…」
「私は姉妹達の中でも、もっとも思慮深いからねー」
傍らに控えていたミネが、ほんの一瞬、表情を歪ませて主の発言を否定した。
おそろしく速い失笑。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「どういう路線でいくにせよ、満足いく結果がでてほしいわね。
無駄な血をできるだけ流させないためにも」
絶対に流させない、ではなく、できるだけ流させないというところが現実的で好ましい。
完璧な理想を追い求めても派手にすっ転ぶだけだ。かつてのこの国のように。
「犠牲は避けられないか」
デルエラのように圧倒的パワーで強引な手を使えば無血も可能だが
それをやれば反魔物派や教団はますます意固地になってなりふり構わなくなる。
どうしたものやら…………。


〜〜〜〜〜〜


外とは比べ物にならない濃度の魔力が内部でわだかまる王城。
かつては王族の住居だったが、今は誰もが知っての通り我が家である。住む家もなく
教会兼孤児院で暮らしていた俺の自宅がレスカティエで一番有名な建物になるとか
運命は悪ふざけしすぎだ。
「んぅうっ、あっ、あんっ、んあああぁ……」
廊下の石床に豊かな胸を押しつけ、緩慢に頭を振りながら呻く、一人のサキュバス。
俺は、寝バックの体勢でそのサキュバス――マリナの尻に腰を打ちつけ、
入れれば入れるほど癖になる魔性の穴の感触を楽しむことにのみ集中していた。
……やるにしても少しは場所を考えろ馬鹿、と言われそうだが
『魔物たちがベッドにしないのは天井くらい』という笑い話があるように
魔界と化したこの地では特に珍しい事ではない。なおアラクネ系は天井も使う。
珍しいのは、マリナではなく、俺がこれを望んだということだ。
混乱と淫猥で塗りたくられたあの不思議の国から戻って以来、俺はどうも性的におかしい。
セックスへの抑えがきかないというより
ハードルが下がってきている。ささいなきっかけで嫁達を抱きたくなるのだ。
会話しながら胸や尻をこねくるのも日常茶飯事。
最近では、孤児院の様子を見に行ったとき、子供達に何か教えてたのか
前かがみになって話していたサーシャ姉のお尻を、ついつい甘噛みしてしまった。
その後、興奮したサーシャ姉に懺悔室に引っ張り込まれると、
『あの子たちの前で、んろっ、わ、わたしのもごっ、お、お尻を…れろっ、
か、噛むなんて、んべろっ、れろれろっんれろっ……強引なんですから…んぼっんぼっ。
ちゅぼっ、ちゅぼっ……んっぷ、ちゅううううう！
……せ、性欲に迷えるおちんちんを、れろっれろれろれろっ、救って…。
しゃぶって……んぽっんぽっんじゅるるるるる……！助けないとぉ、れろれろぉ。
懺悔室でこんなに、ああっ、チンポを太くするなんて、んじゅっんぷっんぷっ。
んぁあ、しょっぱいお汁が出て、んぢゅぢゅっ、あああ…………チンポ、チンポぉ……。
欲しいんです。ここの割れ目から……ちろっ、れろっ、ドピュドピュ出てくる
ザーメンを、ほ、欲しいっ、んっぐぼっぐぼっんぶっ…！』
と、好き放題にペニスをしゃぶられるだけしゃぶられ、子供達などは
懺悔室がフェラチオ専用の場所だと勘違いする有様だった。
（それに対し、俺の精を飲みまくってお腹をぽっこりさせてたサーシャ姉の返答は
『専用の部屋ではありませんが、背徳的で興奮する部屋です』だった）
今回にしても、この固い床の上で交わるのも一興かな〜なんて思考が
頭をよぎったときにたまたまマリナと鉢合わせ、そのままゆっくり組み伏せたのである。
「ああっ、んあっあっあああああぁぁ…………！
はぅん、あっあんっううっ、んっ、んん………………っ！」
尻尾がブルブルッとうごめいた。どうやらまたイッたらしい。俺はまだなのにな。
「あぅんっ、ど、どうしてぇ？
どうして、こんなに、せっ、積極的にっ、なった、のぉおっ？」
「積極的な俺は嫌か？」
深く押し込んでいたペニスをじわじわと引き抜くと、
ぬめった濃い愛液が、まるでローションでも塗りたくったようにまとわりついてきた。
「あっ、そうじゃなくて、むしろ望むところ……っ？
…だっダメっ、いやっ、抜いちゃいやぁ…」

どつんっ

「ひにゃぁあああああ！！」

ぶち込む、という表現がふさわしいほどの肉突きをくれてやる。
「ほら、望むところなんだろ、ほら、ほら」

どつんっ、どつんっ、どつんっ

「んあっああ！そ、そう、そこぉ！そこ突くのいいいぃぃ！」
マリナは最初の一撃をくらった時こそ身も蓋もなく鳴いたものの、すぐに順応して
俺との荒々しい交わりを受け入れていく。
「あんっ、しっ、幸せっ、私、すっごい幸せなのっ！
人目もはばからず、こ、こんなに求めてくれるなんてぇぇ！！」
頑なに勇者としての己を振る舞っていた反動。それゆえ、状況を無視して
最優先で俺と互いを貪りあうことがマリナにとってなによりの幸福なのだろう。
喘ぎ声も低く抑えるどころか、快楽に流されるまま高らかに奏でている。
ここで自分達が交わっているのを知らしめたいと言わんばかりに。
「…………ん、んうっ」
睾丸から伝わってペニスへと来訪する、あの感覚。男が味わえる最高の快楽が
白濁液と共にじわじわと上り詰めてきた。
人間の男性と違い、弾切れがおきないインキュバスにとって、射精とは
早いほうが良しとされる。魔物にしてみれば、自分を満足させるまで存分にできるのなら
精を放ってくれる回数は多いほうがいいということだ。
しかも彼女らは『それだけ自分がオスにとって気持ちいい身体なのだ』という
自賛めいた解釈をしてくれるから、すぐ出る男にはありがたい話だろう。
まあ俺は早漏ではないから関係ないがね。ほどほどだがね。
とか考えていたら……

ずびゅっ、どぷどぷどぷっ、ぶびゅるるるぅ！！

「んんぅーーーーーーぁああ！あっあっ、中出しきたあああぁ！
イクッ、イクゥ！しゃ、射精で達しちゃう、んんぅうううううっ！」
「まだ我慢できると思ったが、た、たまらないぞ！んぐぉっ！」
力強く、柔らかく、何もかも吸い出すように締めつけられ、我慢など
できるはずもなかった。初めて自慰をした時のようにどくどくと精液を吐き出していく。
俺もマリナも背を反らせ、性器以外の感覚がなくなったかのように
絶頂に浸った。この時ばかりは、しばし全てがどうでもよくなってしまう。
「はふっ、んっ……おいし、セーエキ美味しい…………
子宮でごきゅごきゅしちゃうんだからぁ……」
比喩ではなく、本当に子宮口でペニスの先端をくわえ、尿道の精まですすってくる。
この体勢だと顔が見えないが、どんな表情をしているかはお察しだ。
「なら、ごきゅごきゅの後はまたズポズポだな」
「…………あ、あっ、あひゃあ！」
射精の余韻を残しながらも俺の一物は硬さを取り戻し、再びマリナの雌穴を掘削しだした。
「うっ、出した後はさすがに刺激が強いな…！」
火傷跡をいじくるような容赦のない快感。これもまた魔物とのセックスの醍醐味だ。
インターバルを置かずに復帰できるからこそ楽しめる、人外の愉悦である。
そしてそれは女性側も同様だ。
「イッ、イッたばかりで抜き差しいいいぃ……ひっ、んっひっ、ひいぃ……。
あっ、あっ、あっ……！ああぁ、気持ちいい、これも気持ちいいよぉ！」
短く何度も絶頂の波が来ているのか、ぷしっ、ぷしっ、と断続的に潮を吹いている。
「ど、どうしよぉ。私、オマンコで返事してる、チンポいいって鳴いてるぅ」
マリナはそれが恥ずかしいのか、弱々しく手で顔を覆う。
「いやらしい勇者め」
なんかいじめたくなってきたので言葉責めしてみる。

にゅぎゅうっ

「おうっ！？」
返事の代わりとでもいうのか、ひねるように肉棒を締められた。その衝撃でたまらず…！
「んいいいいぃぃぃぃいいいいいいいいい！！」
マリナは臀部の肉をビクビクと震えさせ、食いしばった歯の隙間から歓喜の悲鳴をあげた。
どうやらうっかり射精しながら高濃度の魔力までぶちまけてしまったらしい。
甘露にも等しい精と劇薬にも等しい魔力のミックスを体内に噴出されて、マリナは、
「んむーーーーー！んーーーーーっ！！んぬんぐぐぐううううううーーーーー！！」
頭を左右に振りながら言葉にならない呻きを放っている。
……嬉しそうだし、まあいいだろう。
暴れ回る尻尾が割と強めの威力で俺の顔にバチンバチンと当たるのもご愛嬌だ。


「はぁーーーーーー…………はっ、はっ、はっ……………………。
はあっ、はあっ、はうぅっ…………ひ、久しぶりに、エグイのやられたぁ……」
「エグイっていうな」
感想がエグイって、ひどいピロートークだなおい。


〜〜〜〜〜〜


後日、旧ガーデニングに住まう植物系マスコットどもに聞いたのだが、
嫁達は最近、俺の『性交で食ったりするアレ』のことを陰で
『いともたやすく行われるえげつない行為』とか呼んでるらしい。おのれ。

■作者メッセージ
ハートの女王にエロ呪いでもかけられたんじゃないのかという
疑問がよぎるが実際は性的に大らかになっただけである。