お嬢様のしもべ「静かな夜オワタ」
「生きとし生けるものが死に絶えたかのような夜ね」
お嬢様がそんな不吉な例えをするくらい、今夜はとても静かでした。
「どうしたの？」
「いえ、こういう時はたいていあの方が来訪すると相場が決まっていますので」
あの方というのは、お嬢様の姉にあたる女性で、蝙蝠の仮面で
お嬢様に勝るとも劣らない美貌を隠して『闇姫』と名乗る、一部の者を除いて
誰も正体を知らない謎のヴァンパイアなのです。
「リューゼ姉さんなら、どこかの洞窟で逆さまになって
天井からぶらさがってるのではないかしら？」
「またそのようなことを…」
無駄だとわかってはいても一応たしなめておきます。無駄ですけど。
「けれど、あなたの推測もあながち的外れではないわ。
風も獣も沈黙を守るこんな夜に訪れるのは、死者か、死に魅入られた者くらいよ」
……あの方は雰囲気を壊したり場の空気を乱すのが得意なので
騒がしさとは無縁なこの夜にはいつにも増してテンション大盛りで
駆けつけてくる気がしただけなのですが……まあいいです。
「おや？」
噂をすれば影……ですかね。
あの方とは真逆の雰囲気を漂わせた、剣呑な影ですが。
「窓の外を眺めるのに夢中みたいだけれど、タイプの娘でもいたの？」
「よくわかりましたね」
僕が間髪いれずにカウンターを入れると、お嬢様は眉根を寄せて
「ちょ、ちょっとウィット、あなた」
面白いくらいに動揺しました。この程度で焦るところが
彼女の可愛いところです。こんな夜更けにヴァンパイアの屋敷の周りを
ウロチョロする人間がいるわけないのに。
つまりは、聡明なお嬢様がそんな簡単な答えを導き出せないくらい
僕にまいっているということなんでしょう。ちょっと照れます。
「ただの野良犬ですよ。
とはいえ、居つかれたりナワバリにされても困るので、追い払ってきます」
「しょ、そ、そうならいいわ。ふふん」
自分は動揺してないとアピールしたくて鼻で笑ったようですが、
真っ先に言葉を噛んでおいてそれは無理があります。
「それでは失礼します」
一礼し、お嬢様の部屋から出て行こうとすると、
「わかってるわね？さっさと戻ってきてチェスの続きをやるわよ。
…………………………それと、け、怪我、しないでね」
後半部分は、ドアが閉まる直前に小声で聞こえてきました。
「招かれざる客のために開け放たれる扉は、この屋敷にはないのですが」
「……そりゃそうでしょうね。
だから窓からこっそり忍び込もうかと思ったんだけど、バレバレ？」
僕の目の前には変人がいました。
タンクトップにホットパンツという健康的で開放的な服装に
狩人がよく愛用しているタイプの帽子やブーツを合わせた美女が、
レイピアと呼ばれる細身の剣を抜いてこちらに切っ先を突きつけているのです。
よく見ると、衣服として役に立つのかどうかわからない
丈の短いマントのような上着も羽織っていました。
いったいどういう職業の人間なのかさっぱりわかりません。
「失礼ですが、普段は何をなさっている方で？」
「この状況で最初に聞くのがそれ？」
「なぜそんな統一感の無いファッションなのかと思いまして」
「ちょっと、ホントに失礼ね。ダンピールという種全体に対する侮辱よ」
ああ、魔物さんでしたか。
それはそうと……ダンピールというと、お嬢様の天敵みたいな種族でしたね。
ヴァンパイアから太陽のように力を奪い
真水のように理性を剥がすという話を聞いたことがあります。
「ここいら一帯を守護する代わりに男を要求する
高圧的なヴァンパイアの一族がいると耳にしたんでね。ちょっと様子見に来たのよ。
もし、手に入れた男に対してもそんな態度なら『教育』してあげようと思ってね」
薔薇のトゲ抜きでしたら僕一人で間に合っているのですが。
「しもべに傲慢な振る舞いをするのは主人として当たり前でしょう？」
うわっ。面倒なことになっちゃった。
「お、お嬢様、どうして来てしまったのですか？」
「どうしてって……小汚い野良犬を退散させに外に出たはずのしもべが
木陰から現れた見知らぬ魔物と会話してたら、来ないほうがおかしいわねぇ……」
お嬢様の部屋の窓からは見えない場所を選んで
侵入者と対峙していたのですが、僕が心配になってつい来たのでしょう。
「野良犬とは言ってくれるじゃない。これだから高慢な魔物は嫌いなのよ」
「それは願ってもないことね。私としても
あなたのような低俗なつまらない種に好かれては非常に困るし」
二人の魔物娘の視線と視線がぶつかって火花が散りました。
これは比喩ではありません。もしかすると、挑発によるいらつきのせいで
お互いが魔力を漏らしてそれが視線に帯びてしまっているのかもしれません。
本当に二人の中間でバチバチ光っているのです。
「うふふ、獣の躾をするには、私の得物は実にうってつけね」
ピシイイイィッ！
こうなることを予想して自室から持ち出してきたのでしょう。
お嬢様が愛用の鞭で風を切る鋭い音が、暗い静寂を打ち破りました。
「蛇鞭ね。打たれた者の皮を裂き、仕込まれた無数の刃で
肉を鋸のように引きちぎる。いかにもヴァンパイアらしい悪趣味な武器ね」
「毒塗りのレイピア使いがどの口でそんなことを言うのかしら」
道理で刃が不気味に濡れたような輝き方をしていたわけです。
「まさか。毒なんて下劣なものは使わないわ。ただの強烈な媚薬よ」
そっちのほうが下劣なのではないでしょうか。
いや、そんなことを考えている場合じゃないです。止めないと。
いくらお嬢様が年不相応な強さを秘めたヴァンパイアでも
相手がダンピールでは分が悪すぎます。
お嬢様は実の姉であるリューゼ様の巧みなレイピアさばきを
何度も目にしただけでなく、実際に姉妹同士で一戦やらかしたこともあるので、
対応にはそれほど苦慮しないでしょうが、やはり天敵が相手では……。
けど、今更向こうが引いてくれるとも思えませんし、お嬢様が
僕に助力を求めるというのもありえないでしょう。
そもそも僕を危険な目に合わせたくないから出張ってこられたのですから。
「……いくら有利なオッズとはいっても、二対一というのは厳しいわね」
おや？
「僕も頭数ですか？」
これは好都合です。彼女は意図せず僕に塩を送ってくれるみたいですね。
「彼は関係ないわ」
余計なことを言わないでくださいよお嬢様。
「関係ないことはないでしょう？
それに、どっちにしても、主であるあなたの窮地を従者の彼が
黙って見てるはずがないし。ほら、早く剣なり槍なり取りに戻ったら？」
「必要ないです。もう捕らえましたから」
ガシュッ！！
「うぐっ！？」
お嬢様を抱いた時に、ある人物から与えられた『喰らう力』を開花させた僕は、
後日、その力を使って屋敷の内外にいくつものトラップをしかけました。
侵入者が現れたことを即座に僕に伝える『シグナル』や、魔力の矢を飛ばす
『アーチャー』などがあります。よほどの術者か魔物でもなければ
それらの設置を見抜けないでしょう。
そして今回、彼女の左足が引っかかったのは『ジョーズ』です。
範囲はそれなりに広いものの、自動ではなく僕が発動させないといけない
デメリットはありますが、この魔力塊でできた大顎による噛みつきを外すのは
容易ではありません。
「僕はそれほど俊敏なほうじゃないんで、動きを止めさせてもらいますね」
後はただ的に向かって撃てばいいだけです。
僕はお嬢様の翼をモチーフにした巨大なマント型魔力塊を作り出すと、それから
螺旋状にねじくれた何本もの刃を生やし、ダンピールへ伸ばして攻撃しました。
「く、くそっ、こんなことで！」
ビシッ、バシュッ、バスッ！
それでも彼女の両手はフリーなので、レイピアで斬るなり
空いているほうの手に魔力をこめていなしたりしてはいますが……
どすっ
右の肩口に命中しました。間合いを広げることも
詰めることもできないのでは、ここまでが限度でしょうね。
どすっ、ぐさ、ぞぶっ
「ぐうっ、うぐうううっ…………！」
肉体的にではなく魔力的にダメージを与えているために、
彼女は段々と熱にうかされたような、緩んだ顔つきになっています。
あ、倒れた。
………………
――屋敷の地下にある、石造りの拷問部屋。
言うまでもないでしょうが、この場合の拷問とは性的なものです。
「あひっ、あひいいいいいいいっ！
ウィット様のおちんぽがドチュドチュ突いてくるのおおおぉ！！」
獣のようにバックから僕に犯されている
お嬢様――メルが、声を全く抑えることなく快感にむせび泣いています。
なぜ、こんな薄暗いところでセックスしているかというと
天井から鎖で吊り下げられた負け犬ダンピール――ルネさんに
敗者の罰を与えるためです。
「ふごおぉ、おごおおぉ……！」
彼女の口には、僕の作った魔力塊から伸びる
チューブ状の触手が突っ込まれていて、その魔力塊の中に仕込んでおいた
僕の血液が、水滴のようにゆっくりと口内に流し込まれているのです。
「ふむぐうううぅ、うぐうううぅうぅぅぅうぅーーーーー！」
交わりの見せつけと濃厚な精を含んだ血液摂取のダブルパンチで
ルネさんはもう息も絶え絶えという感じでしょうか。下着まで脱がされた
むき出しの股間は、白い本気汁でべちゃべちゃになっています。
「お、おかひて、わたひをおかひひぇええええぇぇ！！」
何回聞いたかわからない、必死の懇願の叫びが地下室にこだましました。
「反省しましたか？」
そろそろ頃合いでしょうか。
チューブ触手を抜いて、問いかけてみます。
「も、申し訳、ありません……メルフラーゼ様を、お、襲おうとしたことを
お許しくださいいぃ………ど、どうかご勘弁をっ…………！」
もう性根がバキバキにへし折れてしまったようです。
僕は、床にへたりこんでセックスの余韻に浸るメルに視線を向けました。
「はあ、はぁ………そ、そうね。も、もう、許してあげても…」
「ですね」
この辺でもういいでしょう。
拘束魔法のかけられた鎖を外して自由にしてあげると
ルネさんはもうたまらないのか、僕にすがりついてきました。
「これからは、三人で堕ちましょうね」
「えっ？」
色々ないやらしい液でぬめる床から立ち上がったメルが、なんと、彼女のことを
共に僕を愛する同胞として認めてしまいました。
「は、はひっ、堕ちますぅ、みんなで気持ちよくなりまふうぅ……」
「そう、それでいいのよ。二人で彼をたっぷり愛してあげるの」
余韻も消えて少しは落ち着いたのか、いつもの笑みを浮かべながら
メルは僕に抱きついてきました。
「いいんですか？」
驚きです。てっきり触手や淫具で嬲るだけ嬲ってポイなのかと思っていました。
「ええ。これも何かの縁でしょうし…彼女、可愛いもの。
あなたも、まんざらじゃないでしょう？」
「……それは、まぁ、その」
にちゅ……ずっ、ずずずっ、ぐぶっ
「んぐっううううぅぅぅ…………！！」
ルネのデリケートで貪欲な割れ目から、一筋の赤い液体が流れて
ふとももを伝っていきました。僕の『メス』になったという証、破瓜の鮮血です。
「んあっ凄いっ、ああんっ、これっこれ凄いいいいいいいっ！」
痛みはほんの一瞬だったらしく、もう彼女は理性を失いつつあります。
僕もインキュバスじゃなかったらこの快楽に狂って
ただただ腰を振るだけの肉人形になっていたところですが、メルとの経験があるので
怒涛の気持ちよさに翻弄されつつも冷静に楽しむことができていました。
「んっ、処女おまんこでもう感じるなんて、へ、変態ですねっ」
「ひえっ、変態じゃなひぃ、わたひは違うのおおぉ！
んおっ、あおおおぉおっ！んあっあっあおおおおおおおっ！」
「こっちのお口は、す、素直ですよ。こんなに締め付けてぇ、くうう…！」
「だって、わ、私は、魔物娘だからぁあああんっ！
こんなに激しく愛されたら、んひいぃ！も、もうどうにかなってしまうのおおぉ！！」
弁解しても膣内をゴリゴリされたら一巻の終わりです。メルもそうでした。
静かな夜に似つかわしくない下品な喘ぎ声をあげて
自分が堕ちていくのを実感していくのです。
どちゅ
「…きゃひぃ！？」
「ほら、僕のオチンチンの先っぽが、子宮口に辿り着きましたよ」
どちゅっ！どちゅっ！どちゅっ！
赤ちゃんのお部屋の入口が歪むくらい強くえげつないノックをしながら、
僕は、あの『喰らいつくす』力で、ルネを吸っていきます。
「んうううううぅぅぅ！？
あっあっあっあっんぐぅうううぅううううううぅぅぅうぅ！？
な、なんなのこれっ！？わ、私がぁ出て行くっ、しゅ、吸われちゃううううぅ！！」
「これ駄目っ、つっ突かれるたびにぃ、い、いくううぅ！
んぅっぐっ！んぐふううう！んぅううううううーーーーーーーーーーっ！！」
「あっああああ、あっああああぁ！
食べてっ私を全部食べつくしてええええええっ！！」
仰向けで石の床に身体を投げ出した体勢。
白目を剥きかけ、涙と涎でぐしゃぐしゃになった表情。
それでもなお、ルネは魔物娘の本能で、両足で僕をホールドしていました。
『狂い死にしてもいいから犯して』と言わんばかりに。
僕は、ここまでされても快楽と精を求める彼女に驚き、そして微笑ましく感じ、
ほどよいところで楽にしてあげようと思っていたら！？
「はうっ！？？」
思いがけない刺激が肛門にきました。
「ちゅる、れろれろんっ……」
背後に回り込んでいたメルが僕のお尻の穴に顔を寄せ、舌を差し込んできたのです。
その味わったことの無い感触に僕は昂ってしまい……！
「あふぅううっ！」
ぶしゅるっ、どびゅるるるっ、ぶしゅぶしゅぶしゅっ！！
ルネを全力で喰らいながら射精してしまいました。
インキュバスになって、快楽の許容範囲が桁外れに増えたはずでしたが
これだけは僕もどうにもなりませんっ！
「くああっ、な、中に、出てるっ、たっぷり精液を出してるよおっ！
ルネのエッチなおまんこを、や、焼いてるんだ！僕の味を教えてるんだっ！！」
――彼女の全てを貪り、僕の全てを与える無茶苦茶なセックス。
メルと交わった時に心の底から実感しましたが、魔物との交わりは
ただでさえ死んでしまいそうなほどの快楽をもたらすというのに、さらに
この能力を使いながらの射精はもはや即死級というレベルで、とにかく凄いのです！
ああ、やっぱりこれは危険です、脳がペニスから溶け出ているみたいです！！
「きゃはああああああぁぁぁぁ！あっ、あああぁ！あああああああぁ！
おほっ、おっ、お腹がぁ、お腹がドロドロおおぉおぉおおぉ〜〜〜〜〜〜〜！！
せっ精液がこんなしゅごいの知らなかったあぁあああぁあっ！！」
一度こうなると、もう僕の射精は止まりません。
子宮を満タンにするくらい出さないと静まらないのです……ああっ！！
ごぷっ……
なんとか冷静さを取り戻してペニスを抜くと、液体と固体の中間みたいな
ドロドロとした濃厚白濁がルネの花びらから溢れてきました。
「………は、初めてなのに、こんな味を教えるなんて、あなたって、き、鬼畜すぎ…」
「す、すいません。次からは優しくしますから…」
「いや、ち、違うの……………………も、もっと嬲ってほしいのぉ」
……あららら。
………………
――こうして、僕の愛する女性は、一人増えたのでした。
「ほら、早く歩かないと誰かに見られちゃいますよ？」
月が煌々と輝いて闇の世界を照らす、深く、とても静かな静かな夜。
街の汚い路地裏で、二人の見目麗しき魔の女性たちが
上半身は普段の衣服なのに下半身はブーツだけという猥褻な姿を晒していました。
言うまでもなく僕の指示です。
「そ、そんなことになったら恥ずかしくて、ししし、死んでしまうかも」
「うう、下賎な人間などに見られたりしたら、一生ものの恥ですわ…」
けれど二人のあそこは、歩くたびにニチャニチャと音を立て、
抑えきれない興奮を余すことなく僕の耳に伝えてきます。
「じゃあ、そろそろフェラチオでもしてもらいましょうか。
ああ、僕が射精するまでは、誰かが通りがかっても終わらせませんからね」
「わ、わかったよ。本気でペロペロして、すぐに吸い出してあげる」
「ええ、私たちを焚きつけたことを、後悔するぐらいしゃぶり尽くしてあげますわ」
『それじゃ…………いただきまぁ〜〜〜〜〜すっ』
お嬢様がそんな不吉な例えをするくらい、今夜はとても静かでした。
「どうしたの？」
「いえ、こういう時はたいていあの方が来訪すると相場が決まっていますので」
あの方というのは、お嬢様の姉にあたる女性で、蝙蝠の仮面で
お嬢様に勝るとも劣らない美貌を隠して『闇姫』と名乗る、一部の者を除いて
誰も正体を知らない謎のヴァンパイアなのです。
「リューゼ姉さんなら、どこかの洞窟で逆さまになって
天井からぶらさがってるのではないかしら？」
「またそのようなことを…」
無駄だとわかってはいても一応たしなめておきます。無駄ですけど。
「けれど、あなたの推測もあながち的外れではないわ。
風も獣も沈黙を守るこんな夜に訪れるのは、死者か、死に魅入られた者くらいよ」
……あの方は雰囲気を壊したり場の空気を乱すのが得意なので
騒がしさとは無縁なこの夜にはいつにも増してテンション大盛りで
駆けつけてくる気がしただけなのですが……まあいいです。
「おや？」
噂をすれば影……ですかね。
あの方とは真逆の雰囲気を漂わせた、剣呑な影ですが。
「窓の外を眺めるのに夢中みたいだけれど、タイプの娘でもいたの？」
「よくわかりましたね」
僕が間髪いれずにカウンターを入れると、お嬢様は眉根を寄せて
「ちょ、ちょっとウィット、あなた」
面白いくらいに動揺しました。この程度で焦るところが
彼女の可愛いところです。こんな夜更けにヴァンパイアの屋敷の周りを
ウロチョロする人間がいるわけないのに。
つまりは、聡明なお嬢様がそんな簡単な答えを導き出せないくらい
僕にまいっているということなんでしょう。ちょっと照れます。
「ただの野良犬ですよ。
とはいえ、居つかれたりナワバリにされても困るので、追い払ってきます」
「しょ、そ、そうならいいわ。ふふん」
自分は動揺してないとアピールしたくて鼻で笑ったようですが、
真っ先に言葉を噛んでおいてそれは無理があります。
「それでは失礼します」
一礼し、お嬢様の部屋から出て行こうとすると、
「わかってるわね？さっさと戻ってきてチェスの続きをやるわよ。
…………………………それと、け、怪我、しないでね」
後半部分は、ドアが閉まる直前に小声で聞こえてきました。
「招かれざる客のために開け放たれる扉は、この屋敷にはないのですが」
「……そりゃそうでしょうね。
だから窓からこっそり忍び込もうかと思ったんだけど、バレバレ？」
僕の目の前には変人がいました。
タンクトップにホットパンツという健康的で開放的な服装に
狩人がよく愛用しているタイプの帽子やブーツを合わせた美女が、
レイピアと呼ばれる細身の剣を抜いてこちらに切っ先を突きつけているのです。
よく見ると、衣服として役に立つのかどうかわからない
丈の短いマントのような上着も羽織っていました。
いったいどういう職業の人間なのかさっぱりわかりません。
「失礼ですが、普段は何をなさっている方で？」
「この状況で最初に聞くのがそれ？」
「なぜそんな統一感の無いファッションなのかと思いまして」
「ちょっと、ホントに失礼ね。ダンピールという種全体に対する侮辱よ」
ああ、魔物さんでしたか。
それはそうと……ダンピールというと、お嬢様の天敵みたいな種族でしたね。
ヴァンパイアから太陽のように力を奪い
真水のように理性を剥がすという話を聞いたことがあります。
「ここいら一帯を守護する代わりに男を要求する
高圧的なヴァンパイアの一族がいると耳にしたんでね。ちょっと様子見に来たのよ。
もし、手に入れた男に対してもそんな態度なら『教育』してあげようと思ってね」
薔薇のトゲ抜きでしたら僕一人で間に合っているのですが。
「しもべに傲慢な振る舞いをするのは主人として当たり前でしょう？」
うわっ。面倒なことになっちゃった。
「お、お嬢様、どうして来てしまったのですか？」
「どうしてって……小汚い野良犬を退散させに外に出たはずのしもべが
木陰から現れた見知らぬ魔物と会話してたら、来ないほうがおかしいわねぇ……」
お嬢様の部屋の窓からは見えない場所を選んで
侵入者と対峙していたのですが、僕が心配になってつい来たのでしょう。
「野良犬とは言ってくれるじゃない。これだから高慢な魔物は嫌いなのよ」
「それは願ってもないことね。私としても
あなたのような低俗なつまらない種に好かれては非常に困るし」
二人の魔物娘の視線と視線がぶつかって火花が散りました。
これは比喩ではありません。もしかすると、挑発によるいらつきのせいで
お互いが魔力を漏らしてそれが視線に帯びてしまっているのかもしれません。
本当に二人の中間でバチバチ光っているのです。
「うふふ、獣の躾をするには、私の得物は実にうってつけね」
ピシイイイィッ！
こうなることを予想して自室から持ち出してきたのでしょう。
お嬢様が愛用の鞭で風を切る鋭い音が、暗い静寂を打ち破りました。
「蛇鞭ね。打たれた者の皮を裂き、仕込まれた無数の刃で
肉を鋸のように引きちぎる。いかにもヴァンパイアらしい悪趣味な武器ね」
「毒塗りのレイピア使いがどの口でそんなことを言うのかしら」
道理で刃が不気味に濡れたような輝き方をしていたわけです。
「まさか。毒なんて下劣なものは使わないわ。ただの強烈な媚薬よ」
そっちのほうが下劣なのではないでしょうか。
いや、そんなことを考えている場合じゃないです。止めないと。
いくらお嬢様が年不相応な強さを秘めたヴァンパイアでも
相手がダンピールでは分が悪すぎます。
お嬢様は実の姉であるリューゼ様の巧みなレイピアさばきを
何度も目にしただけでなく、実際に姉妹同士で一戦やらかしたこともあるので、
対応にはそれほど苦慮しないでしょうが、やはり天敵が相手では……。
けど、今更向こうが引いてくれるとも思えませんし、お嬢様が
僕に助力を求めるというのもありえないでしょう。
そもそも僕を危険な目に合わせたくないから出張ってこられたのですから。
「……いくら有利なオッズとはいっても、二対一というのは厳しいわね」
おや？
「僕も頭数ですか？」
これは好都合です。彼女は意図せず僕に塩を送ってくれるみたいですね。
「彼は関係ないわ」
余計なことを言わないでくださいよお嬢様。
「関係ないことはないでしょう？
それに、どっちにしても、主であるあなたの窮地を従者の彼が
黙って見てるはずがないし。ほら、早く剣なり槍なり取りに戻ったら？」
「必要ないです。もう捕らえましたから」
ガシュッ！！
「うぐっ！？」
お嬢様を抱いた時に、ある人物から与えられた『喰らう力』を開花させた僕は、
後日、その力を使って屋敷の内外にいくつものトラップをしかけました。
侵入者が現れたことを即座に僕に伝える『シグナル』や、魔力の矢を飛ばす
『アーチャー』などがあります。よほどの術者か魔物でもなければ
それらの設置を見抜けないでしょう。
そして今回、彼女の左足が引っかかったのは『ジョーズ』です。
範囲はそれなりに広いものの、自動ではなく僕が発動させないといけない
デメリットはありますが、この魔力塊でできた大顎による噛みつきを外すのは
容易ではありません。
「僕はそれほど俊敏なほうじゃないんで、動きを止めさせてもらいますね」
後はただ的に向かって撃てばいいだけです。
僕はお嬢様の翼をモチーフにした巨大なマント型魔力塊を作り出すと、それから
螺旋状にねじくれた何本もの刃を生やし、ダンピールへ伸ばして攻撃しました。
「く、くそっ、こんなことで！」
ビシッ、バシュッ、バスッ！
それでも彼女の両手はフリーなので、レイピアで斬るなり
空いているほうの手に魔力をこめていなしたりしてはいますが……
どすっ
右の肩口に命中しました。間合いを広げることも
詰めることもできないのでは、ここまでが限度でしょうね。
どすっ、ぐさ、ぞぶっ
「ぐうっ、うぐうううっ…………！」
肉体的にではなく魔力的にダメージを与えているために、
彼女は段々と熱にうかされたような、緩んだ顔つきになっています。
あ、倒れた。
………………
――屋敷の地下にある、石造りの拷問部屋。
言うまでもないでしょうが、この場合の拷問とは性的なものです。
「あひっ、あひいいいいいいいっ！
ウィット様のおちんぽがドチュドチュ突いてくるのおおおぉ！！」
獣のようにバックから僕に犯されている
お嬢様――メルが、声を全く抑えることなく快感にむせび泣いています。
なぜ、こんな薄暗いところでセックスしているかというと
天井から鎖で吊り下げられた負け犬ダンピール――ルネさんに
敗者の罰を与えるためです。
「ふごおぉ、おごおおぉ……！」
彼女の口には、僕の作った魔力塊から伸びる
チューブ状の触手が突っ込まれていて、その魔力塊の中に仕込んでおいた
僕の血液が、水滴のようにゆっくりと口内に流し込まれているのです。
「ふむぐうううぅ、うぐうううぅうぅぅぅうぅーーーーー！」
交わりの見せつけと濃厚な精を含んだ血液摂取のダブルパンチで
ルネさんはもう息も絶え絶えという感じでしょうか。下着まで脱がされた
むき出しの股間は、白い本気汁でべちゃべちゃになっています。
「お、おかひて、わたひをおかひひぇええええぇぇ！！」
何回聞いたかわからない、必死の懇願の叫びが地下室にこだましました。
「反省しましたか？」
そろそろ頃合いでしょうか。
チューブ触手を抜いて、問いかけてみます。
「も、申し訳、ありません……メルフラーゼ様を、お、襲おうとしたことを
お許しくださいいぃ………ど、どうかご勘弁をっ…………！」
もう性根がバキバキにへし折れてしまったようです。
僕は、床にへたりこんでセックスの余韻に浸るメルに視線を向けました。
「はあ、はぁ………そ、そうね。も、もう、許してあげても…」
「ですね」
この辺でもういいでしょう。
拘束魔法のかけられた鎖を外して自由にしてあげると
ルネさんはもうたまらないのか、僕にすがりついてきました。
「これからは、三人で堕ちましょうね」
「えっ？」
色々ないやらしい液でぬめる床から立ち上がったメルが、なんと、彼女のことを
共に僕を愛する同胞として認めてしまいました。
「は、はひっ、堕ちますぅ、みんなで気持ちよくなりまふうぅ……」
「そう、それでいいのよ。二人で彼をたっぷり愛してあげるの」
余韻も消えて少しは落ち着いたのか、いつもの笑みを浮かべながら
メルは僕に抱きついてきました。
「いいんですか？」
驚きです。てっきり触手や淫具で嬲るだけ嬲ってポイなのかと思っていました。
「ええ。これも何かの縁でしょうし…彼女、可愛いもの。
あなたも、まんざらじゃないでしょう？」
「……それは、まぁ、その」
にちゅ……ずっ、ずずずっ、ぐぶっ
「んぐっううううぅぅぅ…………！！」
ルネのデリケートで貪欲な割れ目から、一筋の赤い液体が流れて
ふとももを伝っていきました。僕の『メス』になったという証、破瓜の鮮血です。
「んあっ凄いっ、ああんっ、これっこれ凄いいいいいいいっ！」
痛みはほんの一瞬だったらしく、もう彼女は理性を失いつつあります。
僕もインキュバスじゃなかったらこの快楽に狂って
ただただ腰を振るだけの肉人形になっていたところですが、メルとの経験があるので
怒涛の気持ちよさに翻弄されつつも冷静に楽しむことができていました。
「んっ、処女おまんこでもう感じるなんて、へ、変態ですねっ」
「ひえっ、変態じゃなひぃ、わたひは違うのおおぉ！
んおっ、あおおおぉおっ！んあっあっあおおおおおおおっ！」
「こっちのお口は、す、素直ですよ。こんなに締め付けてぇ、くうう…！」
「だって、わ、私は、魔物娘だからぁあああんっ！
こんなに激しく愛されたら、んひいぃ！も、もうどうにかなってしまうのおおぉ！！」
弁解しても膣内をゴリゴリされたら一巻の終わりです。メルもそうでした。
静かな夜に似つかわしくない下品な喘ぎ声をあげて
自分が堕ちていくのを実感していくのです。
どちゅ
「…きゃひぃ！？」
「ほら、僕のオチンチンの先っぽが、子宮口に辿り着きましたよ」
どちゅっ！どちゅっ！どちゅっ！
赤ちゃんのお部屋の入口が歪むくらい強くえげつないノックをしながら、
僕は、あの『喰らいつくす』力で、ルネを吸っていきます。
「んうううううぅぅぅ！？
あっあっあっあっんぐぅうううぅううううううぅぅぅうぅ！？
な、なんなのこれっ！？わ、私がぁ出て行くっ、しゅ、吸われちゃううううぅ！！」
「これ駄目っ、つっ突かれるたびにぃ、い、いくううぅ！
んぅっぐっ！んぐふううう！んぅううううううーーーーーーーーーーっ！！」
「あっああああ、あっああああぁ！
食べてっ私を全部食べつくしてええええええっ！！」
仰向けで石の床に身体を投げ出した体勢。
白目を剥きかけ、涙と涎でぐしゃぐしゃになった表情。
それでもなお、ルネは魔物娘の本能で、両足で僕をホールドしていました。
『狂い死にしてもいいから犯して』と言わんばかりに。
僕は、ここまでされても快楽と精を求める彼女に驚き、そして微笑ましく感じ、
ほどよいところで楽にしてあげようと思っていたら！？
「はうっ！？？」
思いがけない刺激が肛門にきました。
「ちゅる、れろれろんっ……」
背後に回り込んでいたメルが僕のお尻の穴に顔を寄せ、舌を差し込んできたのです。
その味わったことの無い感触に僕は昂ってしまい……！
「あふぅううっ！」
ぶしゅるっ、どびゅるるるっ、ぶしゅぶしゅぶしゅっ！！
ルネを全力で喰らいながら射精してしまいました。
インキュバスになって、快楽の許容範囲が桁外れに増えたはずでしたが
これだけは僕もどうにもなりませんっ！
「くああっ、な、中に、出てるっ、たっぷり精液を出してるよおっ！
ルネのエッチなおまんこを、や、焼いてるんだ！僕の味を教えてるんだっ！！」
――彼女の全てを貪り、僕の全てを与える無茶苦茶なセックス。
メルと交わった時に心の底から実感しましたが、魔物との交わりは
ただでさえ死んでしまいそうなほどの快楽をもたらすというのに、さらに
この能力を使いながらの射精はもはや即死級というレベルで、とにかく凄いのです！
ああ、やっぱりこれは危険です、脳がペニスから溶け出ているみたいです！！
「きゃはああああああぁぁぁぁ！あっ、あああぁ！あああああああぁ！
おほっ、おっ、お腹がぁ、お腹がドロドロおおぉおぉおおぉ〜〜〜〜〜〜〜！！
せっ精液がこんなしゅごいの知らなかったあぁあああぁあっ！！」
一度こうなると、もう僕の射精は止まりません。
子宮を満タンにするくらい出さないと静まらないのです……ああっ！！
ごぷっ……
なんとか冷静さを取り戻してペニスを抜くと、液体と固体の中間みたいな
ドロドロとした濃厚白濁がルネの花びらから溢れてきました。
「………は、初めてなのに、こんな味を教えるなんて、あなたって、き、鬼畜すぎ…」
「す、すいません。次からは優しくしますから…」
「いや、ち、違うの……………………も、もっと嬲ってほしいのぉ」
……あららら。
………………
――こうして、僕の愛する女性は、一人増えたのでした。
「ほら、早く歩かないと誰かに見られちゃいますよ？」
月が煌々と輝いて闇の世界を照らす、深く、とても静かな静かな夜。
街の汚い路地裏で、二人の見目麗しき魔の女性たちが
上半身は普段の衣服なのに下半身はブーツだけという猥褻な姿を晒していました。
言うまでもなく僕の指示です。
「そ、そんなことになったら恥ずかしくて、ししし、死んでしまうかも」
「うう、下賎な人間などに見られたりしたら、一生ものの恥ですわ…」
けれど二人のあそこは、歩くたびにニチャニチャと音を立て、
抑えきれない興奮を余すことなく僕の耳に伝えてきます。
「じゃあ、そろそろフェラチオでもしてもらいましょうか。
ああ、僕が射精するまでは、誰かが通りがかっても終わらせませんからね」
「わ、わかったよ。本気でペロペロして、すぐに吸い出してあげる」
「ええ、私たちを焚きつけたことを、後悔するぐらいしゃぶり尽くしてあげますわ」
『それじゃ…………いただきまぁ〜〜〜〜〜すっ』
12/08/25 22:34更新 / だれか