前編
長かった夏休みも終わりに近づき、セミの声も変わる夏の夕暮れ。
いつもより人通りの多い田舎道を、俺は友人と歩いていた。
「おい、おせえぞ」
「ちょっと待ってよぅ、まだ浴衣になれなくって・・・」
友人の甘えるような声に、
「うるせえ。気持ち悪いから変な声出すな。男のくせに」
一言で切って捨てた。
「チェッ、そんな冷たいもの言いじゃ女にもてないぜ?」
「やかましい。だいたいなんだ、今の猫なで声。気持ち悪すぎて鳥肌たったぞ」
「ケケッ、涼しくなって良かったじゃん」
なぜこんな夏の最後の日曜日、男二人で不毛な会話をしているかというと・・・
「なあ、ほんとに阿部さん来るんだろうな?」
「来るよ。ポト美が呼ぶって言ってたし」
「壺田さんが呼ぶなら確実か。あの二人仲良いもんな・・・まるで実のしm」
「おっとそれ以上いけない。この前ポト美に『お前まるで阿部さんの妹みたいだな』って言ったら殴られたぞ。グーで」
俺の言葉に友人は呆れた表情を浮かべ、
「お前、面と向かって言ったの? そんなんだからデリカシーねえとか言われるんだぞ」
「うるさいな。だいたいお前付いてこなくてもいいんだぞ。お前が来ること、ポト美も阿部さんも知らないんだから」
「そんなァ、世知がれえよ旦那はよゥ! 我がクラスの清純エロ女神こと阿部さんと一緒に夏祭りだなんて、そんな大イベントを独り占めしようったってそうは行かないんだからね! どうせ幼馴染の壺田さんをダシにして阿部さんとお近づきになろうなんて浅はかでさもしい魂胆だろ!」
「グッ、そ、そんなことはナイゾ」
チッ、的確に痛いところをついて来る。エスパーかこいつは。
「いいから。何も言わなくていいから。俺そういうのわかっちゃうから。察しちゃうタイプだから俺」
「察したならついてくんなよ・・・」
「おいおい〜、いいのかな〜? だいたいお前、壺田さん以外の女子とまともに話したことないんじゃないの〜?」
「・・・」
ぬうう、的確に痛いところをついてくるな! エスパーかこいつは!?
「まあ安心しろよ。俺はなにもお前の邪魔をしようってわけじゃない。むしろお前の助けになるつもりなんだぜ?」
「ほう?」
面白いことを言うやつだ。〇すのは最後にしてやろう。
「つまりはだ、お前は親友の幼馴染というアドバンテージを、そして俺は女子と仲良く会話できるというコミュニケーションスキルを互いに提供しあうことで、リスクは半分、チャンスは二倍にしようってわけさ。最終的に阿部さんがどちらを選ぶか、それは彼女次第ということでさ」
「ふむう・・・」
こいつの言うことも筋は通っている・・・ような気がする。
「どうだい? それともひとりで阿部さんを落とす自信がおありかな?」
「むむむ・・・」
しばらく悩んだすえに、俺は手を差し出す。奴はニヤリと笑い、
「阿部さんイズマイワイフ」
「アプサラスイズベストマモノガール」
俺たち二人は熱い握手を交わした。
* * *
―私、花火の時間までにちょっと行きたいところあるの。ゴンザレス君は一緒に来てね―
―ああっ、そんな阿部さんなんと積極的な。あと俺の名前は権田です―
・・・あ、ありのまま今起こったことを説明するぜ。
鳥居のところで待っていた女子2人(内訳:女神1人、女児1人)と合流し境内に足を踏み入れた瞬間、女神が友人を連れて去っていった。
何を言っているかわからないかもしれないが俺だって何を言ってるかわからない。
というかわかりたくなかった。
俺がこの日をどんなに待ち望んでいたことか。
この日のために用意してきたセリフ
『浴衣似合ってるね』
を阿部さんに言う間もなく、俺たちの戦いはこれから登りはじめたばかりだこの長い長い第1部完になってしまった。
どうしてこうなった。
「え、えーっと・・・」
声に振り返ると同じく親友に置いていかれたポト美が困ったような顔でこっちを見ていた。
「どうしよう・・・?」
そんなこと言われたって俺だって困る。
俺の恋は始まる間もなく終わってしまったというのに、どうやら俺の人生はこれからも続いていくらしかった。
「まあ・・・とりあえず見てまわろうか」
せっかくの年に一度の夏祭り。このまま帰ってはあまりにみじめだ。
万が一にもここで新たな出会いがないとも限らない。
俺はまだおろおろとしている幼馴染の手を取り、薄暗がりの提灯行列に浮かぶ屋台の参道へとうながした。
「あっ///」
「ん? どうした」
声に振り返るとポト美がつないだ手を見つめ、黒い肌を赤く染めていた。器用な奴だな。
「早く行こうぜ、毎年花火の時間になるとものすごい混むし」
「う、うん」
昔みたいに迷子になられたらたまらん。
小学生の頃、ここでポト美とはぐれて小一時間さがしまわった苦い記憶がよみがえる。
「ちょっと待って、まだ浴衣になれなくって・・・」
「あ、スマン」
すこし歩くのが速かったようだ。
ガキの頃みたいに転んで泣かれてもやっかいだ。ポト美の速度に合わせよう。
・・・俺も大人になったもんだ。
「どうかした?」
ポト美が横に並ぶのを待ちながらひとりウンウンと頷いているとポト美が不思議そうに見上げてきた。
「いや、成長したもんだと思ってな」
「ふぇ!? そ、そう?」
妙な声を上げるポト美。
失礼な。昔だったらポト美の言うことなんか聞かずに引っ張りまわすか、「遅えよ」と言って置いてくかのどちらかだったし。「男子3年あわざればかつ目してみよ」だ。
あれ、30年だっけ?
しかし・・・
それにひきかえ、こいつは昔から全然成長しないな。
改めてポト美をまじまじと見つめる。
今日のポト美はいつもの壺を外し、髪の色に合わせたのであろう水色の浴衣を着ている。
和服は実際より体型が平坦に見えるというが・・・うん、これ以上ないってぐらいに平坦だ。
小学生まではこいつの方が大きい時期もあったけど、中学に入ってからは俺の方が頭一個は大きくなった。
ポト美には第二次性徴が来なかったのかも知れないな・・・。
対比して先ほどの阿部さんの、黄色の浴衣を押し上げる豊かな母性の塊を思い浮かべる。非常に短い時間ではあったが、あれは実に強烈なインパクトであった。
権田ことゴンザレスめ。〇ね。しかるのち爆発せよ!
・・・ただ同時にこうも思ったものだ。『着物って貧乳のほうが似合うんだな』と。
「浴衣似合ってるぞ、ポト美」
「!? あああ、ありがとう・・・」
急に声が小さくなったと思ったら、ポト美は下をうつむいてその表情はまったく見えなくなっていた。
またアリの行列でも見つけたのか? ガキの頃みたいにアリにたかられても、高校生になった今じゃ物陰で服脱がしてはたき落とすなんて出来ないんだから気をつけろよ。マジで。
さすがにアリの行列を見ているわけではないみたいだが、うつむきながらもとりあえず機嫌はよさそうなので、続けて言うつもりだった「七五三みたいで」という言葉はぐっと飲み込んだ。
たぶん今それを言ったらまたグーで殴られる気がしたからだ。
ホント、俺も大人になったもんだ。
* * *
「よし、手をつないだ! これで第一関門は突破ね!」
グワシッ
「イダダッ、痛いです阿部さん!」
「あらごめんなさいゴンザレス君」
「権田です・・・しかしあいつ、壺田さん相手だとあんなに積極的なのかよ。これもう後は若い二人に任せて僕らは大人の時間と洒落込みまs
「違うわ。あれは単に異性として全く意識していないだけよ。このまま第二、第三の関門を一気に突破しなきゃまた進展のない妹的ポジションにおさまっちゃう」
「はあ、左様ですか・・・」
「さあゴンザレス君、次のポイントに先回りするわよ」
グイッ
「イデデッ、だから権田ですってば〜」
* * *
提灯に照らされた境内の中、ずらりと並んだ屋台を横目にポト美と歩いていく。
「ねえ、何か食べない?」
「んー? ひと通り見てまわってからにしないか。荷物になるし」
「えー」
「なんだ、もう腹減ったのか?」
「ち、違うよ」
前から思ってたけどこいつ、体は小さいくせに結構な量食べるよな。いったいどこに入ってるんだろう?
胃袋と壺の異空間がつながっているんだろうか。
そう考えていると、
―あまーい!(>υ<)―
―ああ、顔中ワタアメでベタベタに・・・ほら動かないで、いま拭くから―
―カリカリチーズ! チーズ揚げモチ! トゥエエリリヤアアア!―
―あっこら待て! まだ金払ってない! すすスミマセンスミマセン!―
―なんだこの妙な色のものは。食べ物なのか?―
―ファラオ様お気をつけください、毒かもしれません―
―なら私が毒見するわよ。私の毒以上に危険なものなんてこの世にないでしょう?―
―そう言ってお前独り占めする気だニャ? いつもの手だニャ―
―・・・毒じゃないよ。ただのカキ氷だって。すみません、こいつら田舎モンなもので。5つください―
―いや一つで充分だ。まずはお前が食せ。しかるのち我らが食べる。アポピスは最後な―
―な、なんでよ!―
―お前の後だと毒が混ざるニャン。当たり前ニャン―
―イカ焼きに焼きそば、お好み焼き・・・そんなに食べて大丈夫?―
―ガウッ(ジャラジャラ)―
―お小遣いのことじゃなくて・・・そんなにたくさん食べて太らないのかなって・・・―
―グガッ!(コォォォ)―
―ウワッ、ここで火吹かないで!―
グゥ〜ッ
「・・・」
「・・・」
周りの様子を見ていると腹の音がなった。ステレオで。
「・・・とりあえずなにか食いながら見てまわるか」
「・・・うん///」
・
・
・
「おっ、リンゴ飴があるぜ」
「うっ、わたしはいい」
俺の提案に微妙な反応を返すポト美。
あれ、昔はリンゴ飴と見るや競うように屋台へ駆けていった記憶があるけど・・・こいつとじゃなかったっけ?
「お前リンゴ飴嫌いだったっけ? 昔、お前とリンゴ飴の早食い勝負とかしてた気がするんだけど」
「小さい頃は確かにそうだったけど・・・」
そう言って口ごもるポト美。
ははーん、大体わかったぞ。俺もこう見えて察しちゃうタイプだからな。こいつの考えてることはばっちゃんの名にかけてヌルッとお見通しだ。
「ポト美お前、あれだろ? リンゴ飴は食べるのに時間がかかるからだろ。リンゴ飴食べてる間は他のもの食べられないもんな」
この色気より食い気の食いしん坊バンザイ娘め。壺田ポト美、君は男を知るには、まだ未熟!
「違うよ! 忘れたの?小学5年の時、ユウ君がリンゴ飴を一気に食べようと思いっきり口に入れたら、食べることも抜くことも出来なくなって大変なことになったじゃない!」
と思ってたらぜんぜん違った。しかも目の色変えて怒られた。
「そ、そんなことあっ・・・たな。うん、思い出した」
あったわ確かに。5年だったかどうかは覚えてないけど。
うん、あの時は口いっぱいに広がる甘さと息苦しさとで大変だったような気がする。
「別に、俺に気にしないで食べればいいだろ。ポト美がリンゴ飴抜けなくなったわけじゃないんだし」
「・・・ユウ君は途中で意識失ったから覚えてないだろうけど、白目むいて口いっぱいに丸くて赤いリンゴ飴が詰まってるのは、なにかのパニックホラーの犠牲者みたいですごい怖かったんだよ」
―ユウ君死ぬかと思ったし―
というポト美のポツリともらした言葉に多少の罪悪感を覚えつつ、そんなにひどかった? と尋ねると、
当時再放送でやってたピッコ〇大魔王の産卵シーンみたいだった。とポト美は答えた。
想像すると・・・うーん、確かに不気味だ。
そうか、それでこいつ、リンゴ飴がすっかりトラウマになっちまったのか・・・
「あー、その、なんて言ったらいいか・・・ゴメンな?」
「ん。じゃあ、あれ奢ってくれたら許したげる」
そう言ってポト美が指さした先は・・・
『あんず飴』
ん?
「やっぱりこれくらいの大きさが食べきるにはちょうどいいよね。すみません、スモモください」
しかもよりにもよって赤くて丸いスモモをチョイス。
おい、俺のせいみたいに言ってたけど、結局他のが食べられなくなるっていうのが本当の理由じゃないのか?
「じゃあ俺はミカンで」
「兄ちゃん達、アンズも食べてよ。あんず飴なんだからさ・・・」
屋台のおじさんはなぜか台の上に大量に並ぶアンズを前に、少し悲しそうだった。
サーセン。
* * *
「先回りしたはいいものの、二人の姿が見えないわね」
「屋台でなにか食べてるみたいでしたよ」
「そうならそうと早く言ってよゴンザレス君、しょうがないわね」
「権田です。いやだって阿部さんすごい力で引っ張ってくから言うヒマが・・・(見失った方が俺には好都合だし)」
「どうしよう、戻ったほうがいいかしら。人の数がすごいけど・・・」
もと来た道に目をやると、大勢の人がぞろぞろと二人のいる方に向かって歩いてくる。これを戻るのは少々骨が折れそうだ。
「始まったばかりだから皆奥に向かって歩いてるみたいですね。流れを逆走するより僕らもここで何か食べて待ってた方がいいんじゃないスか」
「そう・・・そうね。下手に戻っても行き違ったら今度は本格的に見失う可能性がありそうだし」
「よっし、それじゃあそこのチョコバナナなんてどうです? あ、昔なつかし棒アイスキャンデーもありますねデュフフ」
「チョコバナナ? うーんあれ食べてると、なぜか周りの男の人たちが青い顔で股間押さえてうずくまるからちょっとねー・・・」
「? よくわかりませんけどうずくまりたい奴はそうさせとけばいいんじゃないですか。お近づきのしるしに奢りますし」
「そう? じゃあせっかくだから・・・アイスキャンディーの方をいただこうかな」
「ハイヨロコンデー!」
―おっちゃん! アイスキャンデー2本ね!―
―誰がおっさんだコラ!―
―ゲッホオ! 鬼ぃ!?、さん―
その後ゴンザレスこと権田君は知ることとなる。
チュパ、チュパ、ペロ・・・
(おほ〜、さすがはクラスの清純エロ女神、期待を外さぬクオリティ!)
チュパ、・・・ガリッ!
「ヒギぃッ!?」
男たちがなぜ股間を押さえてうずくまることになったかを。
* * *
「ユウ君たこ焼きもう一個ちょうだい」
「いいけどポト美、お前口の横に青ノリついてるぞ」
買い食いを始めてからというもの、ついつい目に入る屋台につられて俺とポト美は未だに神社の参道の途中にいた。このあと神楽が始まるとこの先の舞台周辺はかなり混むから、その前には通り抜けて花火の穴場に行くつもりなんだが・・・。
「ユウ君こそ口の周り中に青ノリついてるじゃん。まるでコントの泥棒みたいだよ」
「マジで?」
そんなに? 手で口の周りを払うがいまいち取れているのかわからん。
「全然落ちてないよ。ちょっと待って」
そう言ってポト美は手提げからウェットティッシュを取り出し俺の口を拭う。いや自分でできるんですけど。
なんだかこうしているとまるで・・・
「いつもすまないねえポト美さんや」
嫁か孫に介護されてる爺さんのような気分になってくる。
「誰が老老介護のばあさんよ」
いや、そんなことは言ってない。
「なあところでその電球みたいなやつ。どんな味なん?」
口の周りがさっぱりしたところで、ポト美の持つ電球状の容器に入った飲み物が気になった。
「これ? これはメロンソーダかな」
「ちょっとひと口くれ」
「あっ!?」
ポト美が抗議の声を上げるより早くストローから中身を吸い出す。・・・うん普通のメロンソーダだ。
「容器はすごいけど味は普通だな」
「・・・」
呆然と半分ほどに減った飲み物を見つめるポト美。そ、そんなに怒らなくてもいいだろ。
「なあ、ポト美・・・さん? わ、悪かったって。ほら、俺のラムネ飲んでいいし」
「・・・つ、ス」
ん? いまなんて?
「か、間接キス・・・///」
「ブッフォオ!!」
ポト美の言葉に盛大に吹き出す。ちょ、おま
「お、お前なあ・・・ガキの頃さんざん一緒に風呂入ったり雑魚寝したりしてただろ。今更それ気にするか?」
「こここ子供のころは関係ないでしょ。わたし達もう高校生なんだよ!」
「まあ、そうだけど・・・」
そうは言うがポト美の外見はそのガキの頃からあまり変わってないからな・・・どうもこいつを見ていると小〜中学生の妹かなんかのような気がして、高校生というのが冗談にしか思えない。
だがまあ、見た目はともかく中身(?)は一応年頃の女子なわけだから、ちょっと軽率だった気がしないでもない。
「そんなに気にするなよ。これぐらいノーカンだって。な?」
「べべ、別に気にしてないよ」
そう言ってポト美はプイッと顔をそらす。やっぱりちょっと怒ってるのだろうか。
「それにもし万が一なんかあったら俺が・・・」
「え?」
――もし万が一、将来ポト美が惚れた男が『他の男と(間接)キスするようなビ〇チは勘弁』とかのたまおうものならば、俺の拳で修正してやる!
人を膜がついてる・ついてない、皮が被ってる・被ってないで判断するような奴は人間のクズだ、蛆虫だ!(心の血涙)
「う、うん、もしなにかあったらその時は・・・責任とってね」
つい個人的な感情でひとり熱くなっていた俺はポト美のつぶやいた言葉に、その時はまったく気がついていなかった。
* * *
「あ、二人とも来ましたよ。焼きそば食ってる」
「ホント? 良かった。見失ったかと思った」
「・・・と思ったらじゃがバターの屋台に行った。どんだけ食べるんだあの二人・・・」
「ポトちゃんもけっこう量食べるからねー」
「壺と胃袋がつながってるんスかね。あれ? そういえば今日は腰の壺つけてないな。なんか新鮮」
「そう? 家に遊びに行くと大抵はずしてるけど。あと大前田君と一緒のときとか」
「でも学校じゃいつもつけてるじゃないですか。壺のない壺田さんってなんか・・・普通の美少女って感じですね」
「・・・もしゴンザレス君が横恋慕して二人の邪魔したら握りつぶすよ」
「ナニをですか!? そんな事しませんよ! だいたいボカァこの阿部さんとの二人の時間がずっと続けばいいと思ってるわけでして・・・」
「あっマズイこっち来る! ゴンザレス君、隠れて!(グキッ)」
「んぎぃっ!?」
* * *
「この辺は食べ物よりもクジだの射的だのの店が多いな」
「だねー(モグモグ)」
「いつまで食べてるんだこの食いしん坊バンザイ娘」
「んぐっ、ユウ君だってさっきまで食べてたじゃん」
「いや、じゃがバターからベビーカステラ、焼きモロコシとあまりに自然にはしごしてるからつい」
お前の胃袋は宇宙か。
「せっかく祭りに来たんだし、なんかやってこうぜ」
「ムグムグ、ゴクン。うん」
「・・・とりあえずその食べ終わった容器だの紙だの捨てて来いよ。ちょうどゴミ箱もあるし」
「わかってるよもう」
テテテ、と小走りにゴミ箱へ向かうポト美の背中を見送る。
あいつ胸はないけどいいケツしてんな。
・・・・・・
・・・?
俺なんか今へんな事考えなかったか?
気を取り直して周りの屋台を見る。
えーっと、金魚すくいにスーパーボールすくい、紐を引っ張るタイプのくじ引きに・・・奥の方にはカタ抜きもあるみたいだ。
で、こっちは射的か。
―あにうえー、しっかり押さえてて欲しいのじゃ―
―アイタタ、この姿勢は腰にくるわい―
見れば銃を持った少女を老人が抱えて狙いをつけている。あんなのあり?
「お待たせ、どれやる?」
「そこの射的やろうぜ」
ポト美が戻ってきたので例の射的屋台に行ってみることにした。
『6発200円、小さい子は台に乗るかお兄ちゃんに抱きかかえてもらってもいいからねー』
ハッピ姿にサラシを巻いた少女が声を張り上げている。角があるからゴブリンかな?
さっきの老人と少女はそれでああいう姿勢だったのか。
じゃあ俺たちも金を払って・・・
「ポト美、どっちがでかいの取れるか勝負しようぜ」
「え? いいけど・・・」
『はい、じゃあ6発ずつね。お嬢ちゃんは体思いっきり乗り出していいよ。兄ちゃんはデカイから銃のストックをしっかり肩につけて撃ってね!』
ぐっ俺の方が体大きいから楽勝だと思ったら、こんなところでハンデをくらうとは。まあいい、ポト美はこういう体を使うものは基本的に苦手だからな。それでも俺の有利は揺るがん!・・・ハズだ。
えーっと、コルクの弾を銃の先につめて・・・レバーを引けばいいんだな、よし。
Rock'n Roll!(ガシャコン!)
さあ狙い撃つぜ。
・・・ストックを肩に当てるとけっこう窮屈だな。
パン!
チッ、かすっただけか。
狙ったボッキーの箱は揺れて少し斜めになったが倒れずに立ったままだ。
「えいっ」
パン!
隣ではポト美が台に上半身を投げ出すように乗り出し、空気銃を握った片手を思いっきり伸ばして的を撃っていた。
的はキャラメルの箱か。小さいためすぐに倒れたが、この屋台のルールでは下に落とさないと獲得したことにはならない。弾はあと5発、まだまだ勝負はわからない。
―あにうえー、かたきをとってなのじゃー!―
―やれやれ、しかたないのう。店主、200円じゃ―
―あいよっ!―
隣ではさっきの少女と老人が選手交代するようだ。
―ところで爺さん、あんたにオススメの銃があるんだけどね―
―なんじゃ? ・・・むむっ、これは“メルトSAA・パンツラインスペシャル・モウテイマーカスタム!・・・のコルク銃か。こんなものがあるのか・・・―
―あにうえ、わしこんな銃はじめて見たのじゃ―
なんか店主のゴブリンが老人に珍妙な銃を渡してる。やたらと銃身が長いピストルにライフル銃のようなストックが付いている。ナンダアレ。
―へへっ、やっぱりあたしの見込んだ通りだ。んじゃあバシッと決めてくんな、モウテイマー大佐!―
―いったい誰なのじゃモウテイマー大佐って―
―“銃は一度握ったら捨てられない”、か・・・―
―あにうえ?―
老人は銃を握りストックを肩に当てると、銃を握る手を空いたもう片方の手で外側から包み込むように握って構える。
一陣の風が通り過ぎ、周りの喧騒が遠ざかっていく。
そして、どこからか静かにオルゴールの音が聞こえてくる。
・・・なんだこの空気。
パンッ
乾いた音をたてて老人の銃からコルクが発射され、棚に並んだ的の一つが倒れて落ちた。
―大当たりー! はいこれ景品ね―
店主が落ちた景品を拾って老人に手渡す。パッケージに大きく描かれたキャラクター“ベコちゃん”・・・景品は“不死屋のミルキィ”か。
―ほれ、これが欲しかったんじゃろ―
―すごいのじゃ!ありがとなのじゃ、あにうえ!―
銃を置き、少女の手を引いて歩いていく老人。
―あれ、あと5発あるけどいいのかい?―
呼び止める店主。
立ち止まり、背中越しに答える老人。
―May be,next time(また、いつかな)―
それに対してゴブリン店主は、
―Adios!(あばよ!)―
と笑って手を振るのだった。
・・・いったいなんだったんだこれ。
パン! コトッ
「やった!」
『おっ、お嬢ちゃんも大当たりー!』
となりの寸劇に気をとられていたら、横ではポト美が小さなキャラメルの箱を獲得していた。
「ほう、やるなポト美」
「えへへ、ユウ君もなにかとらないと、このまま私の勝ちだよ」
言ってくれるな・・・だが、弾はまだ5発も残っている。最後に笑うのはこの俺だ!
Rock'n Roll!(ガシャコン!)
・
・
・
一個も取れませんでした・・・
「ふふ、私の勝ちだね」
そう言って下から覗き込んでくるポト美の手には小さなキャラメルの箱、それと同じくらい小さなドロップの缶を持っていた。
「クソ、そんな安い点で勝ちをとりやがって・・・」
「えー、勝ちは勝ちだもん。それにユウ君いつも大物ねらいだから、先に商品獲得してプレッシャーかけてけば自滅するかなって」
こ、こいつ、俺の行動パターンを読んだ上でさらに心理戦を仕掛けてきたというのか。
「ぐうの音もでない・・・」
完敗だ・・・
認めてやろう、壺田ポト美。今日のところはお前の方が強かったと。
だが・・・次は俺が勝つ!
* * *
「大前田たちは射的やってるみたいですね」
「二人してやってるって事は何か勝負でもしてるのかしら」
「“負けたほうはなんでも言うこと聞く”とかですかねw」
「大前田君がそれぐらいバカだったら楽なんだけど・・・」
「お、壺田さん一個撃ち落した。ナイスシュー!」
「・・・ねえ、今ポトちゃんのお尻見てなかった?」
「え!? み、見てないッス!」
突如声色の変わった阿部さんにギクリとするゴンザレスこと権田君。
「でも今“ナイス尻!”って」
「い言ってないッス!」
「さっきも言ったけど、二人の邪魔したら上下握りつぶすからね」
「上下!?上ってどこ!? いや下も聞きたくないですけども!」
無表情のアプサラスから発する不気味な圧力におされながらも、クラスのマドンナの新たな一面に心揺さぶられる権田君であった。
「っと、いけない。そろそろ行かないと」
「え? 花火まではまだ時間ありますけど」
「その前に行くところがあるのよ。ほら急いで!」
「えぇ?二人は? ちょっと阿部さーん!?」
浴衣姿で器用に駆け出すアプサラスを追って、権田ことゴンザレス君はヒョコヒョコと付いていくのだった。
* * *
「あ、カタ抜きあるね。やってく?」
キャラメルをほおばりながらポト美が屋台を指さす。
「カタ抜きか。・・・いや、他行こうぜ」
「いいの? 昔は必ずやってたじゃない」
ガキの頃はな。
「ああ・・・もういいんだ」
中学の頃、渾身の力作(賞金3000円)をあれこれ難癖つけられて割られたときに、俺は気づいたんだ。
「俺も、いつまでも夢見る子供じゃいられないってことさ・・・」
「ふうん?」
大人になってしまった悲しみを抱える俺に、ポト美は澄んだ瞳を向けてくる。
お前はどうか、純真無垢な子供のままでいてくれ。
『〜〜!〜〜!!』
現に今もまた屋台の前でなにやら揉めている。
おおかた店の主が完成した作品にイチャモンをつけているのだろう。
『ほう・・・わらわの作品を認めぬと申すか』
『いや、この仕上がりはさすがに・・・端も欠けてるし・・・』
『フム。では来月の百足神社の祭りに貴様の場所は無くてもかまわぬ、と言うのだな?』
『そ、そんな』
『ちょっとやめなって。店の人も困ってるだろ』
『お前様は黙っておれ!ガプッ』
『しまっ、また毒を・・・』
いや、どうも客の方が店に文句をつけているようだ。
しかもあれは隣町の神社の大百足さんじゃないか? なんかヤバイことになりそう・・・
「あの大百足の人って、もしかして百足神社の御神体の人かな?」
ポト美も不安そうな顔をする。
「たぶんそうだろ。この辺りで他に大百足なんていなかったはずだし」
「大丈夫かな。ここの龍さんとは仲悪いらしいけど」
仲悪い、というかライバル関係らしい。おふくろに聞いた話じゃ祭りとか骨董市とかの開催権をかけて毎回争ってるらしいし。
「おおごとになる前によそ行こうぜ」
「う、うん」
神クラスのケンカに巻き込まれてはたまらないので、俺はポト美の手を引いてその場を離れ、参道の奥へと進んでいった。
(後編へ続く)
いつもより人通りの多い田舎道を、俺は友人と歩いていた。
「おい、おせえぞ」
「ちょっと待ってよぅ、まだ浴衣になれなくって・・・」
友人の甘えるような声に、
「うるせえ。気持ち悪いから変な声出すな。男のくせに」
一言で切って捨てた。
「チェッ、そんな冷たいもの言いじゃ女にもてないぜ?」
「やかましい。だいたいなんだ、今の猫なで声。気持ち悪すぎて鳥肌たったぞ」
「ケケッ、涼しくなって良かったじゃん」
なぜこんな夏の最後の日曜日、男二人で不毛な会話をしているかというと・・・
「なあ、ほんとに阿部さん来るんだろうな?」
「来るよ。ポト美が呼ぶって言ってたし」
「壺田さんが呼ぶなら確実か。あの二人仲良いもんな・・・まるで実のしm」
「おっとそれ以上いけない。この前ポト美に『お前まるで阿部さんの妹みたいだな』って言ったら殴られたぞ。グーで」
俺の言葉に友人は呆れた表情を浮かべ、
「お前、面と向かって言ったの? そんなんだからデリカシーねえとか言われるんだぞ」
「うるさいな。だいたいお前付いてこなくてもいいんだぞ。お前が来ること、ポト美も阿部さんも知らないんだから」
「そんなァ、世知がれえよ旦那はよゥ! 我がクラスの清純エロ女神こと阿部さんと一緒に夏祭りだなんて、そんな大イベントを独り占めしようったってそうは行かないんだからね! どうせ幼馴染の壺田さんをダシにして阿部さんとお近づきになろうなんて浅はかでさもしい魂胆だろ!」
「グッ、そ、そんなことはナイゾ」
チッ、的確に痛いところをついて来る。エスパーかこいつは。
「いいから。何も言わなくていいから。俺そういうのわかっちゃうから。察しちゃうタイプだから俺」
「察したならついてくんなよ・・・」
「おいおい〜、いいのかな〜? だいたいお前、壺田さん以外の女子とまともに話したことないんじゃないの〜?」
「・・・」
ぬうう、的確に痛いところをついてくるな! エスパーかこいつは!?
「まあ安心しろよ。俺はなにもお前の邪魔をしようってわけじゃない。むしろお前の助けになるつもりなんだぜ?」
「ほう?」
面白いことを言うやつだ。〇すのは最後にしてやろう。
「つまりはだ、お前は親友の幼馴染というアドバンテージを、そして俺は女子と仲良く会話できるというコミュニケーションスキルを互いに提供しあうことで、リスクは半分、チャンスは二倍にしようってわけさ。最終的に阿部さんがどちらを選ぶか、それは彼女次第ということでさ」
「ふむう・・・」
こいつの言うことも筋は通っている・・・ような気がする。
「どうだい? それともひとりで阿部さんを落とす自信がおありかな?」
「むむむ・・・」
しばらく悩んだすえに、俺は手を差し出す。奴はニヤリと笑い、
「阿部さんイズマイワイフ」
「アプサラスイズベストマモノガール」
俺たち二人は熱い握手を交わした。
* * *
―私、花火の時間までにちょっと行きたいところあるの。ゴンザレス君は一緒に来てね―
―ああっ、そんな阿部さんなんと積極的な。あと俺の名前は権田です―
・・・あ、ありのまま今起こったことを説明するぜ。
鳥居のところで待っていた女子2人(内訳:女神1人、女児1人)と合流し境内に足を踏み入れた瞬間、女神が友人を連れて去っていった。
何を言っているかわからないかもしれないが俺だって何を言ってるかわからない。
というかわかりたくなかった。
俺がこの日をどんなに待ち望んでいたことか。
この日のために用意してきたセリフ
『浴衣似合ってるね』
を阿部さんに言う間もなく、俺たちの戦いはこれから登りはじめたばかりだこの長い長い第1部完になってしまった。
どうしてこうなった。
「え、えーっと・・・」
声に振り返ると同じく親友に置いていかれたポト美が困ったような顔でこっちを見ていた。
「どうしよう・・・?」
そんなこと言われたって俺だって困る。
俺の恋は始まる間もなく終わってしまったというのに、どうやら俺の人生はこれからも続いていくらしかった。
「まあ・・・とりあえず見てまわろうか」
せっかくの年に一度の夏祭り。このまま帰ってはあまりにみじめだ。
万が一にもここで新たな出会いがないとも限らない。
俺はまだおろおろとしている幼馴染の手を取り、薄暗がりの提灯行列に浮かぶ屋台の参道へとうながした。
「あっ///」
「ん? どうした」
声に振り返るとポト美がつないだ手を見つめ、黒い肌を赤く染めていた。器用な奴だな。
「早く行こうぜ、毎年花火の時間になるとものすごい混むし」
「う、うん」
昔みたいに迷子になられたらたまらん。
小学生の頃、ここでポト美とはぐれて小一時間さがしまわった苦い記憶がよみがえる。
「ちょっと待って、まだ浴衣になれなくって・・・」
「あ、スマン」
すこし歩くのが速かったようだ。
ガキの頃みたいに転んで泣かれてもやっかいだ。ポト美の速度に合わせよう。
・・・俺も大人になったもんだ。
「どうかした?」
ポト美が横に並ぶのを待ちながらひとりウンウンと頷いているとポト美が不思議そうに見上げてきた。
「いや、成長したもんだと思ってな」
「ふぇ!? そ、そう?」
妙な声を上げるポト美。
失礼な。昔だったらポト美の言うことなんか聞かずに引っ張りまわすか、「遅えよ」と言って置いてくかのどちらかだったし。「男子3年あわざればかつ目してみよ」だ。
あれ、30年だっけ?
しかし・・・
それにひきかえ、こいつは昔から全然成長しないな。
改めてポト美をまじまじと見つめる。
今日のポト美はいつもの壺を外し、髪の色に合わせたのであろう水色の浴衣を着ている。
和服は実際より体型が平坦に見えるというが・・・うん、これ以上ないってぐらいに平坦だ。
小学生まではこいつの方が大きい時期もあったけど、中学に入ってからは俺の方が頭一個は大きくなった。
ポト美には第二次性徴が来なかったのかも知れないな・・・。
対比して先ほどの阿部さんの、黄色の浴衣を押し上げる豊かな母性の塊を思い浮かべる。非常に短い時間ではあったが、あれは実に強烈なインパクトであった。
権田ことゴンザレスめ。〇ね。しかるのち爆発せよ!
・・・ただ同時にこうも思ったものだ。『着物って貧乳のほうが似合うんだな』と。
「浴衣似合ってるぞ、ポト美」
「!? あああ、ありがとう・・・」
急に声が小さくなったと思ったら、ポト美は下をうつむいてその表情はまったく見えなくなっていた。
またアリの行列でも見つけたのか? ガキの頃みたいにアリにたかられても、高校生になった今じゃ物陰で服脱がしてはたき落とすなんて出来ないんだから気をつけろよ。マジで。
さすがにアリの行列を見ているわけではないみたいだが、うつむきながらもとりあえず機嫌はよさそうなので、続けて言うつもりだった「七五三みたいで」という言葉はぐっと飲み込んだ。
たぶん今それを言ったらまたグーで殴られる気がしたからだ。
ホント、俺も大人になったもんだ。
* * *
「よし、手をつないだ! これで第一関門は突破ね!」
グワシッ
「イダダッ、痛いです阿部さん!」
「あらごめんなさいゴンザレス君」
「権田です・・・しかしあいつ、壺田さん相手だとあんなに積極的なのかよ。これもう後は若い二人に任せて僕らは大人の時間と洒落込みまs
「違うわ。あれは単に異性として全く意識していないだけよ。このまま第二、第三の関門を一気に突破しなきゃまた進展のない妹的ポジションにおさまっちゃう」
「はあ、左様ですか・・・」
「さあゴンザレス君、次のポイントに先回りするわよ」
グイッ
「イデデッ、だから権田ですってば〜」
* * *
提灯に照らされた境内の中、ずらりと並んだ屋台を横目にポト美と歩いていく。
「ねえ、何か食べない?」
「んー? ひと通り見てまわってからにしないか。荷物になるし」
「えー」
「なんだ、もう腹減ったのか?」
「ち、違うよ」
前から思ってたけどこいつ、体は小さいくせに結構な量食べるよな。いったいどこに入ってるんだろう?
胃袋と壺の異空間がつながっているんだろうか。
そう考えていると、
―あまーい!(>υ<)―
―ああ、顔中ワタアメでベタベタに・・・ほら動かないで、いま拭くから―
―カリカリチーズ! チーズ揚げモチ! トゥエエリリヤアアア!―
―あっこら待て! まだ金払ってない! すすスミマセンスミマセン!―
―なんだこの妙な色のものは。食べ物なのか?―
―ファラオ様お気をつけください、毒かもしれません―
―なら私が毒見するわよ。私の毒以上に危険なものなんてこの世にないでしょう?―
―そう言ってお前独り占めする気だニャ? いつもの手だニャ―
―・・・毒じゃないよ。ただのカキ氷だって。すみません、こいつら田舎モンなもので。5つください―
―いや一つで充分だ。まずはお前が食せ。しかるのち我らが食べる。アポピスは最後な―
―な、なんでよ!―
―お前の後だと毒が混ざるニャン。当たり前ニャン―
―イカ焼きに焼きそば、お好み焼き・・・そんなに食べて大丈夫?―
―ガウッ(ジャラジャラ)―
―お小遣いのことじゃなくて・・・そんなにたくさん食べて太らないのかなって・・・―
―グガッ!(コォォォ)―
―ウワッ、ここで火吹かないで!―
グゥ〜ッ
「・・・」
「・・・」
周りの様子を見ていると腹の音がなった。ステレオで。
「・・・とりあえずなにか食いながら見てまわるか」
「・・・うん///」
・
・
・
「おっ、リンゴ飴があるぜ」
「うっ、わたしはいい」
俺の提案に微妙な反応を返すポト美。
あれ、昔はリンゴ飴と見るや競うように屋台へ駆けていった記憶があるけど・・・こいつとじゃなかったっけ?
「お前リンゴ飴嫌いだったっけ? 昔、お前とリンゴ飴の早食い勝負とかしてた気がするんだけど」
「小さい頃は確かにそうだったけど・・・」
そう言って口ごもるポト美。
ははーん、大体わかったぞ。俺もこう見えて察しちゃうタイプだからな。こいつの考えてることはばっちゃんの名にかけてヌルッとお見通しだ。
「ポト美お前、あれだろ? リンゴ飴は食べるのに時間がかかるからだろ。リンゴ飴食べてる間は他のもの食べられないもんな」
この色気より食い気の食いしん坊バンザイ娘め。壺田ポト美、君は男を知るには、まだ未熟!
「違うよ! 忘れたの?小学5年の時、ユウ君がリンゴ飴を一気に食べようと思いっきり口に入れたら、食べることも抜くことも出来なくなって大変なことになったじゃない!」
と思ってたらぜんぜん違った。しかも目の色変えて怒られた。
「そ、そんなことあっ・・・たな。うん、思い出した」
あったわ確かに。5年だったかどうかは覚えてないけど。
うん、あの時は口いっぱいに広がる甘さと息苦しさとで大変だったような気がする。
「別に、俺に気にしないで食べればいいだろ。ポト美がリンゴ飴抜けなくなったわけじゃないんだし」
「・・・ユウ君は途中で意識失ったから覚えてないだろうけど、白目むいて口いっぱいに丸くて赤いリンゴ飴が詰まってるのは、なにかのパニックホラーの犠牲者みたいですごい怖かったんだよ」
―ユウ君死ぬかと思ったし―
というポト美のポツリともらした言葉に多少の罪悪感を覚えつつ、そんなにひどかった? と尋ねると、
当時再放送でやってたピッコ〇大魔王の産卵シーンみたいだった。とポト美は答えた。
想像すると・・・うーん、確かに不気味だ。
そうか、それでこいつ、リンゴ飴がすっかりトラウマになっちまったのか・・・
「あー、その、なんて言ったらいいか・・・ゴメンな?」
「ん。じゃあ、あれ奢ってくれたら許したげる」
そう言ってポト美が指さした先は・・・
『あんず飴』
ん?
「やっぱりこれくらいの大きさが食べきるにはちょうどいいよね。すみません、スモモください」
しかもよりにもよって赤くて丸いスモモをチョイス。
おい、俺のせいみたいに言ってたけど、結局他のが食べられなくなるっていうのが本当の理由じゃないのか?
「じゃあ俺はミカンで」
「兄ちゃん達、アンズも食べてよ。あんず飴なんだからさ・・・」
屋台のおじさんはなぜか台の上に大量に並ぶアンズを前に、少し悲しそうだった。
サーセン。
* * *
「先回りしたはいいものの、二人の姿が見えないわね」
「屋台でなにか食べてるみたいでしたよ」
「そうならそうと早く言ってよゴンザレス君、しょうがないわね」
「権田です。いやだって阿部さんすごい力で引っ張ってくから言うヒマが・・・(見失った方が俺には好都合だし)」
「どうしよう、戻ったほうがいいかしら。人の数がすごいけど・・・」
もと来た道に目をやると、大勢の人がぞろぞろと二人のいる方に向かって歩いてくる。これを戻るのは少々骨が折れそうだ。
「始まったばかりだから皆奥に向かって歩いてるみたいですね。流れを逆走するより僕らもここで何か食べて待ってた方がいいんじゃないスか」
「そう・・・そうね。下手に戻っても行き違ったら今度は本格的に見失う可能性がありそうだし」
「よっし、それじゃあそこのチョコバナナなんてどうです? あ、昔なつかし棒アイスキャンデーもありますねデュフフ」
「チョコバナナ? うーんあれ食べてると、なぜか周りの男の人たちが青い顔で股間押さえてうずくまるからちょっとねー・・・」
「? よくわかりませんけどうずくまりたい奴はそうさせとけばいいんじゃないですか。お近づきのしるしに奢りますし」
「そう? じゃあせっかくだから・・・アイスキャンディーの方をいただこうかな」
「ハイヨロコンデー!」
―おっちゃん! アイスキャンデー2本ね!―
―誰がおっさんだコラ!―
―ゲッホオ! 鬼ぃ!?、さん―
その後ゴンザレスこと権田君は知ることとなる。
チュパ、チュパ、ペロ・・・
(おほ〜、さすがはクラスの清純エロ女神、期待を外さぬクオリティ!)
チュパ、・・・ガリッ!
「ヒギぃッ!?」
男たちがなぜ股間を押さえてうずくまることになったかを。
* * *
「ユウ君たこ焼きもう一個ちょうだい」
「いいけどポト美、お前口の横に青ノリついてるぞ」
買い食いを始めてからというもの、ついつい目に入る屋台につられて俺とポト美は未だに神社の参道の途中にいた。このあと神楽が始まるとこの先の舞台周辺はかなり混むから、その前には通り抜けて花火の穴場に行くつもりなんだが・・・。
「ユウ君こそ口の周り中に青ノリついてるじゃん。まるでコントの泥棒みたいだよ」
「マジで?」
そんなに? 手で口の周りを払うがいまいち取れているのかわからん。
「全然落ちてないよ。ちょっと待って」
そう言ってポト美は手提げからウェットティッシュを取り出し俺の口を拭う。いや自分でできるんですけど。
なんだかこうしているとまるで・・・
「いつもすまないねえポト美さんや」
嫁か孫に介護されてる爺さんのような気分になってくる。
「誰が老老介護のばあさんよ」
いや、そんなことは言ってない。
「なあところでその電球みたいなやつ。どんな味なん?」
口の周りがさっぱりしたところで、ポト美の持つ電球状の容器に入った飲み物が気になった。
「これ? これはメロンソーダかな」
「ちょっとひと口くれ」
「あっ!?」
ポト美が抗議の声を上げるより早くストローから中身を吸い出す。・・・うん普通のメロンソーダだ。
「容器はすごいけど味は普通だな」
「・・・」
呆然と半分ほどに減った飲み物を見つめるポト美。そ、そんなに怒らなくてもいいだろ。
「なあ、ポト美・・・さん? わ、悪かったって。ほら、俺のラムネ飲んでいいし」
「・・・つ、ス」
ん? いまなんて?
「か、間接キス・・・///」
「ブッフォオ!!」
ポト美の言葉に盛大に吹き出す。ちょ、おま
「お、お前なあ・・・ガキの頃さんざん一緒に風呂入ったり雑魚寝したりしてただろ。今更それ気にするか?」
「こここ子供のころは関係ないでしょ。わたし達もう高校生なんだよ!」
「まあ、そうだけど・・・」
そうは言うがポト美の外見はそのガキの頃からあまり変わってないからな・・・どうもこいつを見ていると小〜中学生の妹かなんかのような気がして、高校生というのが冗談にしか思えない。
だがまあ、見た目はともかく中身(?)は一応年頃の女子なわけだから、ちょっと軽率だった気がしないでもない。
「そんなに気にするなよ。これぐらいノーカンだって。な?」
「べべ、別に気にしてないよ」
そう言ってポト美はプイッと顔をそらす。やっぱりちょっと怒ってるのだろうか。
「それにもし万が一なんかあったら俺が・・・」
「え?」
――もし万が一、将来ポト美が惚れた男が『他の男と(間接)キスするようなビ〇チは勘弁』とかのたまおうものならば、俺の拳で修正してやる!
人を膜がついてる・ついてない、皮が被ってる・被ってないで判断するような奴は人間のクズだ、蛆虫だ!(心の血涙)
「う、うん、もしなにかあったらその時は・・・責任とってね」
つい個人的な感情でひとり熱くなっていた俺はポト美のつぶやいた言葉に、その時はまったく気がついていなかった。
* * *
「あ、二人とも来ましたよ。焼きそば食ってる」
「ホント? 良かった。見失ったかと思った」
「・・・と思ったらじゃがバターの屋台に行った。どんだけ食べるんだあの二人・・・」
「ポトちゃんもけっこう量食べるからねー」
「壺と胃袋がつながってるんスかね。あれ? そういえば今日は腰の壺つけてないな。なんか新鮮」
「そう? 家に遊びに行くと大抵はずしてるけど。あと大前田君と一緒のときとか」
「でも学校じゃいつもつけてるじゃないですか。壺のない壺田さんってなんか・・・普通の美少女って感じですね」
「・・・もしゴンザレス君が横恋慕して二人の邪魔したら握りつぶすよ」
「ナニをですか!? そんな事しませんよ! だいたいボカァこの阿部さんとの二人の時間がずっと続けばいいと思ってるわけでして・・・」
「あっマズイこっち来る! ゴンザレス君、隠れて!(グキッ)」
「んぎぃっ!?」
* * *
「この辺は食べ物よりもクジだの射的だのの店が多いな」
「だねー(モグモグ)」
「いつまで食べてるんだこの食いしん坊バンザイ娘」
「んぐっ、ユウ君だってさっきまで食べてたじゃん」
「いや、じゃがバターからベビーカステラ、焼きモロコシとあまりに自然にはしごしてるからつい」
お前の胃袋は宇宙か。
「せっかく祭りに来たんだし、なんかやってこうぜ」
「ムグムグ、ゴクン。うん」
「・・・とりあえずその食べ終わった容器だの紙だの捨てて来いよ。ちょうどゴミ箱もあるし」
「わかってるよもう」
テテテ、と小走りにゴミ箱へ向かうポト美の背中を見送る。
あいつ胸はないけどいいケツしてんな。
・・・・・・
・・・?
俺なんか今へんな事考えなかったか?
気を取り直して周りの屋台を見る。
えーっと、金魚すくいにスーパーボールすくい、紐を引っ張るタイプのくじ引きに・・・奥の方にはカタ抜きもあるみたいだ。
で、こっちは射的か。
―あにうえー、しっかり押さえてて欲しいのじゃ―
―アイタタ、この姿勢は腰にくるわい―
見れば銃を持った少女を老人が抱えて狙いをつけている。あんなのあり?
「お待たせ、どれやる?」
「そこの射的やろうぜ」
ポト美が戻ってきたので例の射的屋台に行ってみることにした。
『6発200円、小さい子は台に乗るかお兄ちゃんに抱きかかえてもらってもいいからねー』
ハッピ姿にサラシを巻いた少女が声を張り上げている。角があるからゴブリンかな?
さっきの老人と少女はそれでああいう姿勢だったのか。
じゃあ俺たちも金を払って・・・
「ポト美、どっちがでかいの取れるか勝負しようぜ」
「え? いいけど・・・」
『はい、じゃあ6発ずつね。お嬢ちゃんは体思いっきり乗り出していいよ。兄ちゃんはデカイから銃のストックをしっかり肩につけて撃ってね!』
ぐっ俺の方が体大きいから楽勝だと思ったら、こんなところでハンデをくらうとは。まあいい、ポト美はこういう体を使うものは基本的に苦手だからな。それでも俺の有利は揺るがん!・・・ハズだ。
えーっと、コルクの弾を銃の先につめて・・・レバーを引けばいいんだな、よし。
Rock'n Roll!(ガシャコン!)
さあ狙い撃つぜ。
・・・ストックを肩に当てるとけっこう窮屈だな。
パン!
チッ、かすっただけか。
狙ったボッキーの箱は揺れて少し斜めになったが倒れずに立ったままだ。
「えいっ」
パン!
隣ではポト美が台に上半身を投げ出すように乗り出し、空気銃を握った片手を思いっきり伸ばして的を撃っていた。
的はキャラメルの箱か。小さいためすぐに倒れたが、この屋台のルールでは下に落とさないと獲得したことにはならない。弾はあと5発、まだまだ勝負はわからない。
―あにうえー、かたきをとってなのじゃー!―
―やれやれ、しかたないのう。店主、200円じゃ―
―あいよっ!―
隣ではさっきの少女と老人が選手交代するようだ。
―ところで爺さん、あんたにオススメの銃があるんだけどね―
―なんじゃ? ・・・むむっ、これは“メルトSAA・パンツラインスペシャル・モウテイマーカスタム!・・・のコルク銃か。こんなものがあるのか・・・―
―あにうえ、わしこんな銃はじめて見たのじゃ―
なんか店主のゴブリンが老人に珍妙な銃を渡してる。やたらと銃身が長いピストルにライフル銃のようなストックが付いている。ナンダアレ。
―へへっ、やっぱりあたしの見込んだ通りだ。んじゃあバシッと決めてくんな、モウテイマー大佐!―
―いったい誰なのじゃモウテイマー大佐って―
―“銃は一度握ったら捨てられない”、か・・・―
―あにうえ?―
老人は銃を握りストックを肩に当てると、銃を握る手を空いたもう片方の手で外側から包み込むように握って構える。
一陣の風が通り過ぎ、周りの喧騒が遠ざかっていく。
そして、どこからか静かにオルゴールの音が聞こえてくる。
・・・なんだこの空気。
パンッ
乾いた音をたてて老人の銃からコルクが発射され、棚に並んだ的の一つが倒れて落ちた。
―大当たりー! はいこれ景品ね―
店主が落ちた景品を拾って老人に手渡す。パッケージに大きく描かれたキャラクター“ベコちゃん”・・・景品は“不死屋のミルキィ”か。
―ほれ、これが欲しかったんじゃろ―
―すごいのじゃ!ありがとなのじゃ、あにうえ!―
銃を置き、少女の手を引いて歩いていく老人。
―あれ、あと5発あるけどいいのかい?―
呼び止める店主。
立ち止まり、背中越しに答える老人。
―May be,next time(また、いつかな)―
それに対してゴブリン店主は、
―Adios!(あばよ!)―
と笑って手を振るのだった。
・・・いったいなんだったんだこれ。
パン! コトッ
「やった!」
『おっ、お嬢ちゃんも大当たりー!』
となりの寸劇に気をとられていたら、横ではポト美が小さなキャラメルの箱を獲得していた。
「ほう、やるなポト美」
「えへへ、ユウ君もなにかとらないと、このまま私の勝ちだよ」
言ってくれるな・・・だが、弾はまだ5発も残っている。最後に笑うのはこの俺だ!
Rock'n Roll!(ガシャコン!)
・
・
・
一個も取れませんでした・・・
「ふふ、私の勝ちだね」
そう言って下から覗き込んでくるポト美の手には小さなキャラメルの箱、それと同じくらい小さなドロップの缶を持っていた。
「クソ、そんな安い点で勝ちをとりやがって・・・」
「えー、勝ちは勝ちだもん。それにユウ君いつも大物ねらいだから、先に商品獲得してプレッシャーかけてけば自滅するかなって」
こ、こいつ、俺の行動パターンを読んだ上でさらに心理戦を仕掛けてきたというのか。
「ぐうの音もでない・・・」
完敗だ・・・
認めてやろう、壺田ポト美。今日のところはお前の方が強かったと。
だが・・・次は俺が勝つ!
* * *
「大前田たちは射的やってるみたいですね」
「二人してやってるって事は何か勝負でもしてるのかしら」
「“負けたほうはなんでも言うこと聞く”とかですかねw」
「大前田君がそれぐらいバカだったら楽なんだけど・・・」
「お、壺田さん一個撃ち落した。ナイスシュー!」
「・・・ねえ、今ポトちゃんのお尻見てなかった?」
「え!? み、見てないッス!」
突如声色の変わった阿部さんにギクリとするゴンザレスこと権田君。
「でも今“ナイス尻!”って」
「い言ってないッス!」
「さっきも言ったけど、二人の邪魔したら上下握りつぶすからね」
「上下!?上ってどこ!? いや下も聞きたくないですけども!」
無表情のアプサラスから発する不気味な圧力におされながらも、クラスのマドンナの新たな一面に心揺さぶられる権田君であった。
「っと、いけない。そろそろ行かないと」
「え? 花火まではまだ時間ありますけど」
「その前に行くところがあるのよ。ほら急いで!」
「えぇ?二人は? ちょっと阿部さーん!?」
浴衣姿で器用に駆け出すアプサラスを追って、権田ことゴンザレス君はヒョコヒョコと付いていくのだった。
* * *
「あ、カタ抜きあるね。やってく?」
キャラメルをほおばりながらポト美が屋台を指さす。
「カタ抜きか。・・・いや、他行こうぜ」
「いいの? 昔は必ずやってたじゃない」
ガキの頃はな。
「ああ・・・もういいんだ」
中学の頃、渾身の力作(賞金3000円)をあれこれ難癖つけられて割られたときに、俺は気づいたんだ。
「俺も、いつまでも夢見る子供じゃいられないってことさ・・・」
「ふうん?」
大人になってしまった悲しみを抱える俺に、ポト美は澄んだ瞳を向けてくる。
お前はどうか、純真無垢な子供のままでいてくれ。
『〜〜!〜〜!!』
現に今もまた屋台の前でなにやら揉めている。
おおかた店の主が完成した作品にイチャモンをつけているのだろう。
『ほう・・・わらわの作品を認めぬと申すか』
『いや、この仕上がりはさすがに・・・端も欠けてるし・・・』
『フム。では来月の百足神社の祭りに貴様の場所は無くてもかまわぬ、と言うのだな?』
『そ、そんな』
『ちょっとやめなって。店の人も困ってるだろ』
『お前様は黙っておれ!ガプッ』
『しまっ、また毒を・・・』
いや、どうも客の方が店に文句をつけているようだ。
しかもあれは隣町の神社の大百足さんじゃないか? なんかヤバイことになりそう・・・
「あの大百足の人って、もしかして百足神社の御神体の人かな?」
ポト美も不安そうな顔をする。
「たぶんそうだろ。この辺りで他に大百足なんていなかったはずだし」
「大丈夫かな。ここの龍さんとは仲悪いらしいけど」
仲悪い、というかライバル関係らしい。おふくろに聞いた話じゃ祭りとか骨董市とかの開催権をかけて毎回争ってるらしいし。
「おおごとになる前によそ行こうぜ」
「う、うん」
神クラスのケンカに巻き込まれてはたまらないので、俺はポト美の手を引いてその場を離れ、参道の奥へと進んでいった。
(後編へ続く)
23/06/15 22:08更新 / なげっぱなしヘルマン
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