☆水中を切り裂く銀色の閃光
刹久朱県。
日本にある世界で類を見ない魔物娘によって作られた人工島の県である。
綺麗な砂浜と海が有名なここは、ツアー会社やホテルが集まり、多くの有名人や富豪が住む高級住宅街もある。
そのため、日本国内だけではなく、海外や魔界でからの観光客も多い。
「ねぇねぇ、俺と一緒に遊ばな〜い?」
耳にピアスを開け、派手な色のメガネを掛けた太った男が脇にサーフボードを抱えながら人間の若い女性をナンパしていた。身なりからしてかなり裕福だ。
「す、すいません・・・私には彼氏いるんで・・・」
女性は日本人の国技である愛想笑いを浮かべて逃げるように去って行った。
それでも男はめげずに近くの巨乳のネコマタに声を掛けたが、
「うるさいニャ!あっち行けニャ!ボクには大切な旦那様がいるんだニャ!」
男のナンパをこっぴどく断って、不機嫌そうに去っていく。
「チッ!クソが!庶民様はどいつもこいつもイチャイチャしやがってよ!」
男は舌打ちをすると、地団駄を踏んで怒りだした。
「なんだよ!?なんで俺モテねぇんだよ!?俺の親父は超大物俳優なんだぜ?金もあんだせ?それなりにコネもあんだぜ?俺だって良い大学出てるんだぜ?それなのになんで女はなびかねーんだよ!?」
男は周囲のことなどお構いなしに喚き散らした。
「うわ、なにあれ・・・ヒソヒソ」
「あれって確か明石町めんまの・・・ヒソヒソ」
「ああいうのをドラ息子とかバカ二世って言うんだよなぁ・・・ボソボソ」
「全く親の躾がなってないからああなるんだ・・・ボソボソ」
集まってきた群衆が陰口を叩く。
「おい!一般庶民共!見せモンじゃねぇぞゴルァ!」
男は群衆に向かって大声で怒鳴り、脇に抱えていたサーフボードを砂浜に叩きつけると、驚いた群衆は一目散に逃げ出した。
「ケッ!クソが!大勢で遠くからネチネチ言いやがって!全くこれだから一般庶民はよぉ!」
男は地面に転がっているサーフボードを蹴り背を向け、一、二歩ほど歩くと振り向いて地面にタンを吐いた。
「あー、ムカつくぜ!こうなったら誕生日にパパに買って貰ったアレにでも乗って気分転換するか!」
男はそう言うと、海水浴場の端にある桟橋まで行き、その脇に浮かんでいる水上バイクに跨がった。
「久々にいっちょフかしてやるか!」
男は水上バイクのエンジンを全開にして、遊泳区域で泳いでいるカップルや親子連れの間を駆け抜けて行く。
「うわあぁぁぁぁ!」
「きゃあぁぁぁぁ!」
「うわ〜ん!ママ〜!」
「え〜ん!お兄ちゃ〜ん!」
老若男女人魔問わず強烈な水飛沫を被った人々が悲鳴を上げる。
「ぶはははははは!ざまぁ見やがれ一般庶民共!」
ほのぼのとした雰囲気から阿鼻仰喚の大騒ぎになった遊泳区域を見て男は高笑いする。
「そこの水上バイク!待ちなさい!」
「私が誘導しますので皆さんは速やかに避難してください!」
騒ぎを聞きつけ駆けつけたマーメイド、ネイレス、セルキーの監視員たちが飛んで来る。
マーメイドとネイレスは男を追い、セルキーの監視員が海水浴客を安全な場所に避難させる。
「待てと言われて待つほど俺はバカじぇねぇーよ!アホンダラァ!」
ブオオオオオオオオン!
「ぶわーはっはっはっはぁ〜!捕まえられるもんなら捕まえてみやがれ〜!」
水上バイクは監視員たちを挑発するかのように蛇行などの危険運転を繰り返す。水中での泳ぎなら一番といわれるマーメイドやネイレスでも水上バイクには誰一人追い付けていない。
「逃がさないわよ!」
一人のマーメイドが水上バイクを捕らえようとするが、
「オラオラァ!邪魔すんじゃねぇ!」
ドガンッ!
「きゃあ!」
立ち塞がって進路を止めようとしたところを砂浜まではね飛ばされてしまった。
「う、ううぅぅ・・・・」
「いよぉ〜し!人魚のタタキいっちょ上がり〜!なんちゃって!」
男は砂浜ではね飛ばされた衝撃で動けずに苦しそうにしているマーメイドを指差して笑う。
「だっ、誰か!早く救急車を!」
それを見たネイレスが慌てる。
さっきまで砂浜で日光浴をしていた中年のおじさんが電話を掛ける。
「余所見してんじゃねぇぞ〜!」
ブアアアアアアァンッ!
男は怒号を上げ、バイクでネイレスに体当たりした。
ドゴン!
「あうっ!」
ネイレスの体が宙を回り、さっきのマーメイドのように砂浜に叩きつけられる。すぐに、近くにいた男が彼女を担ぎ、近くでマーメイドを搬送しようとしている救急隊員の元まで向かい、彼女も搬送してもらうように頼む。
「せ、先輩っ!」
この三人の中で一番若いであろう童顔のセルキーが声を上げる。
「てめぇで最後だぁ〜!」
「・・・・・ッ!」
水上バイクに乗った男がセルキーの目の前まで迫る。
「に、逃げなきゃ・・・・!」
セルキーは恐怖で泳いで逃げ出そうとするが、追い付かれそうになる。
「ぶははははぁ〜!魚肉のミンチになりやがれ!」
ドガォンッ!
「ぐふぉっ!?」
「え・・・?」
体当たりによる強い衝撃にはね飛ばされて宙を舞ったのは、セルキーではなく、男と水上バイクだった。
男と水上バイクは空中で分離し、別々に落ちていった。
ドボォン!
ドボボボォンッ!
「おいおい、ド派手なショーなら他のとこでやってくれよな!」
「な、なんだテメェ!俺のジャマしやがって!」
ずぶ濡れになって怒り心頭の男と状況が掴めずオロオロしているセルキーの前に現れたのは、
大柄なマーメイドだった。
顔立ちはどちらかと言えば男性に近い中性的で、袖が無く腹の見えるパンクファッションの服を着て、腕と腹には逞しい筋肉が付いている。(胸は無いに等しい)
額から鋭く大きい黒い一本角が生え、魚の下半身の部分は、まるでミサイルのような胴体に、尖った背ビレ、尻尾の部分には三日月の形をした尾ビレがある、メカジキの胴体だ。
「んだぁ?おいこの野郎?俺の邪魔なんかしやがってよぉ?ああん?」
男が目の前のカジキマーメイドに食って掛かる。
「ここのビーチは水上バイクで人を追い回したりか弱い女の子をはね飛ばすようなイカれたショーを開いているのかい?」
「ああ、女にモテる要素揃えている俺様になびかないバカ女や、目の前でイチャイチャしやがる目障りなバカップル共をギャフンと言わせてやる為に特別に開いてやったのよ!」
「なーるほど、てめぇが魅力無くてモテねぇのを棚にあげ腹いせで暴れてるってワケか。」
「・・・・。」
事実を突かれて男は苦い顔をする。
「ッ!うるせぇなこの野郎ッ!てめぇも俺のバイクでヒキ殺して・・・・」
男が飛ばされた水中バイクに向かって泳ぎ出そうとするが、
「おっと、ヒレがスベっちまった!」
カジキマーメイドは目にも止まらぬ速さで泳ぎ、浮いている水上バイクにエルボータックルの姿勢で体当たりを食らわせ、
「どらららららららぁぁぁっ!!!」
ドガガガガガガガガガガ・・・・
バゴガァァァァンッ!!!
宙を舞ったところを水面から飛び上がり、猛烈な拳や尾ビレの連打で粉々に破壊した。
「う、嘘だろ・・・・」
「す、凄い・・・・!」
余りの光景に男は呆然とし、セルキーはただその光景を見上げているしかなかった。
「よし、後はてめぇだけだな!」
ズシャアーーーーーッ!
バイクを破壊し終えたカジキマーメイドは男に向かってさっきのように猛スピードで泳ぎ出す。その姿はまるで銀色の閃光だ。
「のおぉぉぉぉん!来ないでぇぇぇぇ〜!」
「悪いねぇ、俺は来るなと言われて来ない程バカじゃねぇんだよ!」
ドグァッ!
銀色の閃光が男を貫いた。
ガガン!ガドン!ズドン!バキャッ!
銀色の閃光は何度も何度も男を打ちのめす。弾かれて吹っ飛んだ所に追い付いてまた打弾いて吹っ飛ばし・・・・
銀色の閃光はしばらくその繰り返しを続けていたが、ついに、
「コイツでラストだ!」
カジキマーメイドは男に向けてアッパーカットを放つ!しかも泳ぎで助走を付けているので破壊力はケタ違いだ!
バキャオンッ!!!
「ぶびいいいいぃぃぃぃ〜っ!!!」
全身が痣だらけになった男は、膨れ上がった顔から涙と鼻水と鼻血と涎を吹き出しながら砂浜に叩きつけられた。
「・・・・。」
「・・・・。」
セルキーはしばらく放心状態になっていた。
そして、いつの間にかさっきまで逃げ出した筈の海水浴客によるギャラリーもできていた。
「あっ!いけねぇっ!忘れてた!」
カジキマーメイドがセルキーの元に駆け(泳ぎ)寄る。
「ケガはないかい?」
「は、はい・・・・」
カジキマーメイドの爽やかな笑顔にセルキーは惚れそうになる、というか惚れてしまった。
「お、おぉぉぇぇぇ・・・」
砂浜に叩きつけられた男が立ち上がる。しぶといってレベルじゃねぇ。
「おい」
「ヒッ」
カジキマーメイドが低い声で威圧する。まるでイケメンが女性を襲う暴漢を怯ませるように。
さらに、海水浴客の怒りの視線も男に容赦なく浴びせられる。
「次、ここに来たらさっきみてぇにブチのめしてやるからな!失せろ!」
「びぇぇぇぇぇぇぇ!しゅ、しゅびばぜんでじばぁぁあっ!」
男はカジキマーメイドとの威圧と海水浴客の怒りの視線に怯えてボロ雑巾のような姿で逃げ出した。
「あいつをぶちのめすのにアンタをほったらかしにしちまって悪かったな。」
「い、いえそんなこと・・・・」
「おー、カップル誕生かー?」
セルキーとカジキマーメイドのやり取りを見て、一人のチャラ男が茶化した。
「うるせぇな!俺はこう見えても結婚してんだバカヤロー!浮気なんてできっかっんでぇ!」
カジキマーメイドは茶化したチャラ男に対して顔を赤くして怒る。
こんなイケメンさんでも女の子なんです。
「ああっ!そういや今日はダーリンと結婚記念日だからデートするって言った日だったのにすっかり忘れてたっ!」
デートの約束を思い出して赤面するカジキマーメイドさん。かわいい。
「やばいっ!どうしようっ!怒られちゃうっ!てわけで、俺はこの辺で失礼させてもらうぜ!じゃあな!」
焦りつつもセルキーさんに笑顔を向けるカジキマーメイドさん。
相変わらず男前なお顔です。
「・・・・・。」
セルキーも顔を赤らめつつほんの少し手を振る。
こうして、海水浴場の大騒動は幕を下ろしたのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜とある海底にて〜
「こんな時間までどこ行ってたの!?」
カジキマーメイドの夫である女の子のような見た目をした青年、つまり男の娘が手を腰に当てて怒っている。
「ご、ごめん・・・俺の行きつけの場所がトラブッてたの見たからつい助けたくなっちゃって・・・」
「まったくもう・・・。ビルフィンのそういうとこ、好きだよ・・・///」
「ブーーーッ!!!」
カジキマーメイドこと、ビルフィンの鼻から血が噴き出した。
「あっ!?ビ、ビルフィン!?し、しっかりしてぇ〜っ!」
男前なビルフィン姐さんといえどもやはり魔物娘であることには変わりません。
おまけ マーソードフィッシュ・ビルフィン イメージ図
日本にある世界で類を見ない魔物娘によって作られた人工島の県である。
綺麗な砂浜と海が有名なここは、ツアー会社やホテルが集まり、多くの有名人や富豪が住む高級住宅街もある。
そのため、日本国内だけではなく、海外や魔界でからの観光客も多い。
「ねぇねぇ、俺と一緒に遊ばな〜い?」
耳にピアスを開け、派手な色のメガネを掛けた太った男が脇にサーフボードを抱えながら人間の若い女性をナンパしていた。身なりからしてかなり裕福だ。
「す、すいません・・・私には彼氏いるんで・・・」
女性は日本人の国技である愛想笑いを浮かべて逃げるように去って行った。
それでも男はめげずに近くの巨乳のネコマタに声を掛けたが、
「うるさいニャ!あっち行けニャ!ボクには大切な旦那様がいるんだニャ!」
男のナンパをこっぴどく断って、不機嫌そうに去っていく。
「チッ!クソが!庶民様はどいつもこいつもイチャイチャしやがってよ!」
男は舌打ちをすると、地団駄を踏んで怒りだした。
「なんだよ!?なんで俺モテねぇんだよ!?俺の親父は超大物俳優なんだぜ?金もあんだせ?それなりにコネもあんだぜ?俺だって良い大学出てるんだぜ?それなのになんで女はなびかねーんだよ!?」
男は周囲のことなどお構いなしに喚き散らした。
「うわ、なにあれ・・・ヒソヒソ」
「あれって確か明石町めんまの・・・ヒソヒソ」
「ああいうのをドラ息子とかバカ二世って言うんだよなぁ・・・ボソボソ」
「全く親の躾がなってないからああなるんだ・・・ボソボソ」
集まってきた群衆が陰口を叩く。
「おい!一般庶民共!見せモンじゃねぇぞゴルァ!」
男は群衆に向かって大声で怒鳴り、脇に抱えていたサーフボードを砂浜に叩きつけると、驚いた群衆は一目散に逃げ出した。
「ケッ!クソが!大勢で遠くからネチネチ言いやがって!全くこれだから一般庶民はよぉ!」
男は地面に転がっているサーフボードを蹴り背を向け、一、二歩ほど歩くと振り向いて地面にタンを吐いた。
「あー、ムカつくぜ!こうなったら誕生日にパパに買って貰ったアレにでも乗って気分転換するか!」
男はそう言うと、海水浴場の端にある桟橋まで行き、その脇に浮かんでいる水上バイクに跨がった。
「久々にいっちょフかしてやるか!」
男は水上バイクのエンジンを全開にして、遊泳区域で泳いでいるカップルや親子連れの間を駆け抜けて行く。
「うわあぁぁぁぁ!」
「きゃあぁぁぁぁ!」
「うわ〜ん!ママ〜!」
「え〜ん!お兄ちゃ〜ん!」
老若男女人魔問わず強烈な水飛沫を被った人々が悲鳴を上げる。
「ぶはははははは!ざまぁ見やがれ一般庶民共!」
ほのぼのとした雰囲気から阿鼻仰喚の大騒ぎになった遊泳区域を見て男は高笑いする。
「そこの水上バイク!待ちなさい!」
「私が誘導しますので皆さんは速やかに避難してください!」
騒ぎを聞きつけ駆けつけたマーメイド、ネイレス、セルキーの監視員たちが飛んで来る。
マーメイドとネイレスは男を追い、セルキーの監視員が海水浴客を安全な場所に避難させる。
「待てと言われて待つほど俺はバカじぇねぇーよ!アホンダラァ!」
ブオオオオオオオオン!
「ぶわーはっはっはっはぁ〜!捕まえられるもんなら捕まえてみやがれ〜!」
水上バイクは監視員たちを挑発するかのように蛇行などの危険運転を繰り返す。水中での泳ぎなら一番といわれるマーメイドやネイレスでも水上バイクには誰一人追い付けていない。
「逃がさないわよ!」
一人のマーメイドが水上バイクを捕らえようとするが、
「オラオラァ!邪魔すんじゃねぇ!」
ドガンッ!
「きゃあ!」
立ち塞がって進路を止めようとしたところを砂浜まではね飛ばされてしまった。
「う、ううぅぅ・・・・」
「いよぉ〜し!人魚のタタキいっちょ上がり〜!なんちゃって!」
男は砂浜ではね飛ばされた衝撃で動けずに苦しそうにしているマーメイドを指差して笑う。
「だっ、誰か!早く救急車を!」
それを見たネイレスが慌てる。
さっきまで砂浜で日光浴をしていた中年のおじさんが電話を掛ける。
「余所見してんじゃねぇぞ〜!」
ブアアアアアアァンッ!
男は怒号を上げ、バイクでネイレスに体当たりした。
ドゴン!
「あうっ!」
ネイレスの体が宙を回り、さっきのマーメイドのように砂浜に叩きつけられる。すぐに、近くにいた男が彼女を担ぎ、近くでマーメイドを搬送しようとしている救急隊員の元まで向かい、彼女も搬送してもらうように頼む。
「せ、先輩っ!」
この三人の中で一番若いであろう童顔のセルキーが声を上げる。
「てめぇで最後だぁ〜!」
「・・・・・ッ!」
水上バイクに乗った男がセルキーの目の前まで迫る。
「に、逃げなきゃ・・・・!」
セルキーは恐怖で泳いで逃げ出そうとするが、追い付かれそうになる。
「ぶははははぁ〜!魚肉のミンチになりやがれ!」
ドガォンッ!
「ぐふぉっ!?」
「え・・・?」
体当たりによる強い衝撃にはね飛ばされて宙を舞ったのは、セルキーではなく、男と水上バイクだった。
男と水上バイクは空中で分離し、別々に落ちていった。
ドボォン!
ドボボボォンッ!
「おいおい、ド派手なショーなら他のとこでやってくれよな!」
「な、なんだテメェ!俺のジャマしやがって!」
ずぶ濡れになって怒り心頭の男と状況が掴めずオロオロしているセルキーの前に現れたのは、
大柄なマーメイドだった。
顔立ちはどちらかと言えば男性に近い中性的で、袖が無く腹の見えるパンクファッションの服を着て、腕と腹には逞しい筋肉が付いている。(胸は無いに等しい)
額から鋭く大きい黒い一本角が生え、魚の下半身の部分は、まるでミサイルのような胴体に、尖った背ビレ、尻尾の部分には三日月の形をした尾ビレがある、メカジキの胴体だ。
「んだぁ?おいこの野郎?俺の邪魔なんかしやがってよぉ?ああん?」
男が目の前のカジキマーメイドに食って掛かる。
「ここのビーチは水上バイクで人を追い回したりか弱い女の子をはね飛ばすようなイカれたショーを開いているのかい?」
「ああ、女にモテる要素揃えている俺様になびかないバカ女や、目の前でイチャイチャしやがる目障りなバカップル共をギャフンと言わせてやる為に特別に開いてやったのよ!」
「なーるほど、てめぇが魅力無くてモテねぇのを棚にあげ腹いせで暴れてるってワケか。」
「・・・・。」
事実を突かれて男は苦い顔をする。
「ッ!うるせぇなこの野郎ッ!てめぇも俺のバイクでヒキ殺して・・・・」
男が飛ばされた水中バイクに向かって泳ぎ出そうとするが、
「おっと、ヒレがスベっちまった!」
カジキマーメイドは目にも止まらぬ速さで泳ぎ、浮いている水上バイクにエルボータックルの姿勢で体当たりを食らわせ、
「どらららららららぁぁぁっ!!!」
ドガガガガガガガガガガ・・・・
バゴガァァァァンッ!!!
宙を舞ったところを水面から飛び上がり、猛烈な拳や尾ビレの連打で粉々に破壊した。
「う、嘘だろ・・・・」
「す、凄い・・・・!」
余りの光景に男は呆然とし、セルキーはただその光景を見上げているしかなかった。
「よし、後はてめぇだけだな!」
ズシャアーーーーーッ!
バイクを破壊し終えたカジキマーメイドは男に向かってさっきのように猛スピードで泳ぎ出す。その姿はまるで銀色の閃光だ。
「のおぉぉぉぉん!来ないでぇぇぇぇ〜!」
「悪いねぇ、俺は来るなと言われて来ない程バカじゃねぇんだよ!」
ドグァッ!
銀色の閃光が男を貫いた。
ガガン!ガドン!ズドン!バキャッ!
銀色の閃光は何度も何度も男を打ちのめす。弾かれて吹っ飛んだ所に追い付いてまた打弾いて吹っ飛ばし・・・・
銀色の閃光はしばらくその繰り返しを続けていたが、ついに、
「コイツでラストだ!」
カジキマーメイドは男に向けてアッパーカットを放つ!しかも泳ぎで助走を付けているので破壊力はケタ違いだ!
バキャオンッ!!!
「ぶびいいいいぃぃぃぃ〜っ!!!」
全身が痣だらけになった男は、膨れ上がった顔から涙と鼻水と鼻血と涎を吹き出しながら砂浜に叩きつけられた。
「・・・・。」
「・・・・。」
セルキーはしばらく放心状態になっていた。
そして、いつの間にかさっきまで逃げ出した筈の海水浴客によるギャラリーもできていた。
「あっ!いけねぇっ!忘れてた!」
カジキマーメイドがセルキーの元に駆け(泳ぎ)寄る。
「ケガはないかい?」
「は、はい・・・・」
カジキマーメイドの爽やかな笑顔にセルキーは惚れそうになる、というか惚れてしまった。
「お、おぉぉぇぇぇ・・・」
砂浜に叩きつけられた男が立ち上がる。しぶといってレベルじゃねぇ。
「おい」
「ヒッ」
カジキマーメイドが低い声で威圧する。まるでイケメンが女性を襲う暴漢を怯ませるように。
さらに、海水浴客の怒りの視線も男に容赦なく浴びせられる。
「次、ここに来たらさっきみてぇにブチのめしてやるからな!失せろ!」
「びぇぇぇぇぇぇぇ!しゅ、しゅびばぜんでじばぁぁあっ!」
男はカジキマーメイドとの威圧と海水浴客の怒りの視線に怯えてボロ雑巾のような姿で逃げ出した。
「あいつをぶちのめすのにアンタをほったらかしにしちまって悪かったな。」
「い、いえそんなこと・・・・」
「おー、カップル誕生かー?」
セルキーとカジキマーメイドのやり取りを見て、一人のチャラ男が茶化した。
「うるせぇな!俺はこう見えても結婚してんだバカヤロー!浮気なんてできっかっんでぇ!」
カジキマーメイドは茶化したチャラ男に対して顔を赤くして怒る。
こんなイケメンさんでも女の子なんです。
「ああっ!そういや今日はダーリンと結婚記念日だからデートするって言った日だったのにすっかり忘れてたっ!」
デートの約束を思い出して赤面するカジキマーメイドさん。かわいい。
「やばいっ!どうしようっ!怒られちゃうっ!てわけで、俺はこの辺で失礼させてもらうぜ!じゃあな!」
焦りつつもセルキーさんに笑顔を向けるカジキマーメイドさん。
相変わらず男前なお顔です。
「・・・・・。」
セルキーも顔を赤らめつつほんの少し手を振る。
こうして、海水浴場の大騒動は幕を下ろしたのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜とある海底にて〜
「こんな時間までどこ行ってたの!?」
カジキマーメイドの夫である女の子のような見た目をした青年、つまり男の娘が手を腰に当てて怒っている。
「ご、ごめん・・・俺の行きつけの場所がトラブッてたの見たからつい助けたくなっちゃって・・・」
「まったくもう・・・。ビルフィンのそういうとこ、好きだよ・・・///」
「ブーーーッ!!!」
カジキマーメイドこと、ビルフィンの鼻から血が噴き出した。
「あっ!?ビ、ビルフィン!?し、しっかりしてぇ〜っ!」
男前なビルフィン姐さんといえどもやはり魔物娘であることには変わりません。
おまけ マーソードフィッシュ・ビルフィン イメージ図
19/02/07 21:05更新 / 消毒マンドリル
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