中編 (2)
トン、トン、トト、トン、トトトトト…
手慣れた手つきで野菜やキジを捌き、ソースを溶かした鍋に投入していく。
「相変わらず美味そうなメシだな。町のレストランで働いても良いんじゃないのか?」
私の横から太った髭面の男が話しかけてきた。
コイツは名をトールといい、この森で木こりをやっている者だ。
ミミズに乳を吸われ、絶頂して倒れていた私をわざわざ自分の家に運んで介抱した恩人である。
格下に、それもただの大ミミズごときに蹂躙された後の無様な姿を領民に見られてしまったのは大変情けない限りだ。
しかし、恩を受けたならばそれに応えてこそエリート。
私はトールに頼み込み、恩返しとして「畜生の試練」の効果が消える五日後までの間、彼の家に住み込みで身の回りの世話をさせて貰うことにした。
このトールという男は相当だらしない男のようで、洗った服はヤニや土が取れていないわ、食べ終わった後の食器は台所に山積みになっているわといわゆる「ダメ人間」たるポイントがあちらこちらに見られる。
特に私が呆れたのは、コイツの仕事道具であるオノがロクに研がれておらずナマクラ同然だった事で、そんな状態になったのを改めて見せてやっても「これでも木はまだ切れるから別に良いだろ」とのたまった。
あの堕落ぶりは流石の私でもなんと言えば良いのか分からない。
それから、私は堕落しきったトールの生活を家事を通して改善してやっている。
アイツはそんな私のことを「死んだお袋みてぇだ」と茶化してはいるものの、感謝はしているようでそのあたり根はマトモだ。不真面目ではあるが。
そして、今日はアイツの偏った食事を直してやるべく栄養バランスの整った料理の作り方を教えてやっている所だ。
「可もなく不可もなく、必要な分の栄養を補給できてこそ食事だ。」
「つまり、バランスが大事ってか」
「そういうことだな。」
他愛もない話をしている間に、煮詰まったキジ肉スープを木のしゃもじでかき回しながら思う。
「なんで、服がこれなんだ…」
「それはしゃーないな。俺の服のサイズがこれしか合うもんねぇしよ。」
今の私は、トールがコックのアルバイトをしていた時に着ていたエプロンを一枚を付けているだけだった。
あの下着はミミズの体液によって溶かされてしまい、ただのボロ布になってしまったのである。
流石に媚婦でもあるまいし、他人の前で乳をそのままさらけ出しているなど下品極まりない。
「どうしてもってんなら、俺秘蔵の衣装があるぜ。」
「ほう?」
私のぼやきに反応したトールはクローゼットをガサガサと漁っている。
今の私に着られる衣装などアイツが持っているとは思わないが、どんなものが出てくるかという好奇心から目が離せない。
「じゃーん!元カノのスイカ柄ビキニ〜!」
「………………。」
「スベったか?」
「当たり前だ、大馬鹿者。というかそんな下品なマネがよくできるな。」
「だははは!照れるぜぇ〜!」
「別に褒めてないぞ!」
トールは悪い奴ではないものの、デリカシーに欠けた言動や行動が結構多い。
だが五日後に別れてしまうとなると、こんな奴でも別れるとなったら寂しいものだ。せいぜい悔いがないように相手してやる。
手慣れた手つきで野菜やキジを捌き、ソースを溶かした鍋に投入していく。
「相変わらず美味そうなメシだな。町のレストランで働いても良いんじゃないのか?」
私の横から太った髭面の男が話しかけてきた。
コイツは名をトールといい、この森で木こりをやっている者だ。
ミミズに乳を吸われ、絶頂して倒れていた私をわざわざ自分の家に運んで介抱した恩人である。
格下に、それもただの大ミミズごときに蹂躙された後の無様な姿を領民に見られてしまったのは大変情けない限りだ。
しかし、恩を受けたならばそれに応えてこそエリート。
私はトールに頼み込み、恩返しとして「畜生の試練」の効果が消える五日後までの間、彼の家に住み込みで身の回りの世話をさせて貰うことにした。
このトールという男は相当だらしない男のようで、洗った服はヤニや土が取れていないわ、食べ終わった後の食器は台所に山積みになっているわといわゆる「ダメ人間」たるポイントがあちらこちらに見られる。
特に私が呆れたのは、コイツの仕事道具であるオノがロクに研がれておらずナマクラ同然だった事で、そんな状態になったのを改めて見せてやっても「これでも木はまだ切れるから別に良いだろ」とのたまった。
あの堕落ぶりは流石の私でもなんと言えば良いのか分からない。
それから、私は堕落しきったトールの生活を家事を通して改善してやっている。
アイツはそんな私のことを「死んだお袋みてぇだ」と茶化してはいるものの、感謝はしているようでそのあたり根はマトモだ。不真面目ではあるが。
そして、今日はアイツの偏った食事を直してやるべく栄養バランスの整った料理の作り方を教えてやっている所だ。
「可もなく不可もなく、必要な分の栄養を補給できてこそ食事だ。」
「つまり、バランスが大事ってか」
「そういうことだな。」
他愛もない話をしている間に、煮詰まったキジ肉スープを木のしゃもじでかき回しながら思う。
「なんで、服がこれなんだ…」
「それはしゃーないな。俺の服のサイズがこれしか合うもんねぇしよ。」
今の私は、トールがコックのアルバイトをしていた時に着ていたエプロンを一枚を付けているだけだった。
あの下着はミミズの体液によって溶かされてしまい、ただのボロ布になってしまったのである。
流石に媚婦でもあるまいし、他人の前で乳をそのままさらけ出しているなど下品極まりない。
「どうしてもってんなら、俺秘蔵の衣装があるぜ。」
「ほう?」
私のぼやきに反応したトールはクローゼットをガサガサと漁っている。
今の私に着られる衣装などアイツが持っているとは思わないが、どんなものが出てくるかという好奇心から目が離せない。
「じゃーん!元カノのスイカ柄ビキニ〜!」
「………………。」
「スベったか?」
「当たり前だ、大馬鹿者。というかそんな下品なマネがよくできるな。」
「だははは!照れるぜぇ〜!」
「別に褒めてないぞ!」
トールは悪い奴ではないものの、デリカシーに欠けた言動や行動が結構多い。
だが五日後に別れてしまうとなると、こんな奴でも別れるとなったら寂しいものだ。せいぜい悔いがないように相手してやる。
20/02/10 07:13更新 / 消毒マンドリル
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