連載小説
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霧の大陸:01
 図鑑世界の中にある土地の一つに、霧の大陸がある。
 人間界の「中国」の中世時代に似たそこは、名前の通り濃い霧が発生する場所が多く存在している。
 やはり図鑑世界のお約束と言うべきか、この霧は沢山吸い込んでしまうとエロい意味で大変なことになってしまうのだ。
 だがもし、その「霧」が意思を持ち、生物の様に動き回ることがあるとすれば、貴方は信じられるだろうか?

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 霧の大陸のある峠。
 野菜が入った篭を背負った一人の農夫が、上に向かって歩いている。
 彼は少々疲れている様子だが、歩くペースは変わらず、速さを落とすことはない。
 やがて頂点へ着いた農夫は、そこにあった切り株の上に腰掛け、腰に下げた水筒から水を二口飲んだ。
 
 「今日はあんまり売れなかったべな。んま、明日があるからええか。」

 素朴でのほほんとした、典型的な田舎者の感じが漂うこの農夫は、至って普通の農夫だ。
 故郷の村での評判も、作る野菜の質も、可もなく不可もない。
 そんな彼だが、実は…特に何にも無い。
 実は高貴な王族の子孫だとか、隠れた才能がある、なんてことは無い。
 本当に特徴が無いのだ。
 役職名の後ろにAとかBみたいに英数字が入った物が名前になるような脇役である。
 だがしかし、作者である消毒マンドリルは捻くれ者である為、あえて彼のような人間を主役にしたのだ。
 もっとも、自分で考えた魔物娘のオリジナル種族を題材として、物語を書いている時点で充分捻くれていると思うのだが。
 休憩が終わった農夫は、ゆっくりと腰を上げ、峠を下り始めた。
 村のわらべ歌を鼻歌で歌いながら、彼は下り坂で足を進めていると、少し先の方で妙な物を見つける。

 「ありゃ…霧か……?」

 農夫が目を凝らして見つめる先には、白い霧の「ようなもの」が漂っている。
 そのことから彼は一瞬、霧が立ち込めてきたのだろうと思った。
 この辺りは秋頃になると、濃い霧が出始める時期があるのだが、今は初夏を迎えたばかりだ。霧など出るはずがない。
 さらにおかしなことに、「霧」は一帯に広がらず、モヤ状のものが四つ漂っているだけだ。
 このモヤ状のものは、以下「霧」と称することにしよう。

 「なんか、気味が悪いのう……」

 農夫は「霧」のようで「霧」ではないそれに気味の悪さを覚え、それらの脇を通ってやり過ごそうとする。
 しかし、それをみすみす逃すまいと言うかのように「霧」達は素早く農夫の前に回り込んだ。
 
 「……!」

 農夫は不気味な出来事に腰を抜かしそうになるものの、冷静にその動きを警戒し、じりじりと後ろへと後ずさる。
 彼の動きに合わせ、霧達も前へと進む。
 果たして、どちらが先に動くのか。
 農夫が逃げ出すのが先か、霧が農夫を捕らえるのが先か。
 両者の駆け引きが始まった。

 「……………!」
 「……………。」

 一瞬でも隙を見せれば見自分達の運命が決まる。
 両者共に緊迫した状態で、お互いの様子を伺う。

 「……。」

 先に動いたのは霧の一つだ。
 ヌルリとした動きで。農夫の方へと自身の一部を伸ばして迫る。

 「わっ!」

 驚いた農夫は咄嗟に後ろに飛びくと、最初に彼に迫ったものとは別の霧が後ろに回り込んで彼の上半身を取り巻いた。
 すると、その霧の一部の粒子がわずかに集まり、宙に浮かぶ水滴となった。
 そして、水滴の大きさはどんどん大きくなり始め、人間の手の形に形成される。
 ほぼ液体に近い手は、農夫の腕を掴んだ。
 農夫はそれを必死に振り解こうと腕を振り回していると、そこへさらに三つの霧が迫ってくる。

 「うぉぉぉぉぉっ!」

 間一髪のところで、農夫は自分の腕を掴んでいた手を払い、一目散に駆けだした。

 「……!」

 声も出せない恐怖に刈られつつ、農夫は走り続けた。
 だが、いくら走れども、いくら走れども、消えることは無い。
 背中のヒンヤリと感じるモノ…まるで、霧の中にいる時のような感覚が。
 恐る恐る農夫が振り向くと、四つの霧がその後を追ってくるのが見える。
 農夫との距離は離れているものの、移動するスピードはあちらの方が上で、じわりじわりと追い詰めていた。

 「はぁっ!はぁっ!はぁっ……!」

 最後の力を振り絞り、農夫は足に力を込め、ある場所へと全力へ駆けていった。
 道を駆け、ある場所へと移動する。

 「ここなら行けるべ!」

 彼が目指す先にあるのは、竹林の中に佇まう一見の山小屋だ。
 竹を組み合わせて作られたもので、骨組みもしっかりとしている。
 これは旅人が休憩を取る目的で作られたもので、今は誰も居ない。
 小屋の前まで来たとき、農夫は戸を手馴れた手つきで素早く開け、霧達が中へ侵入してくる前に閉めた。

 「ふぅ……」

 霧達から逃れ、一安心する農夫。
 額の汗をぬぐい、景気づけにきび餅を食べようとすると、何故か感じ取ってしまう。
 走っていた時に感じた、あの悪寒を。

 「一体、何だ……!?」

 彼の嫌な予感は当たった。
 竹の小屋の隙間から、あの霧達が侵入していたのである。
 四方から入り込んできているそれは、唖然としている農夫を取り囲むと、形状を変化させていく。
 
 「えへへ、みーつけたー」
 「もうにがさないよー」

 白いモヤの形状だった「霧」達は実体である薄い藍色のスライムとなり、一斉に農夫に襲い掛かった。

 「うわぁぁぁ〜っ!」

 その後の展開は……言うまでも無かろう。
 セックスしまくりました。ハイ。

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 「……というのが今の奥様方と出会った経緯ですね?」
 「そ、そうだが……」

 霧の大陸のとある村。
 農夫は、妻である四人の藍色のスライム(液状)にくっつかれながら、良い身なりの青年と話していた。
 青年は、深緑色の髪と水色のカラーリングの漢服(中国の民族衣装)を着ており、胸には牡丹の刺繍が施されている。
 彼は魔物調査機構の隊員の一人、「碧山(ピィシャン)」。
 霧の大陸にある部署に勤務しており、冷静で真面目な性格から、隊員の中では中々信頼されており、人魔を問わず女性隊員からの視線も熱い。

 「この辺りは霧がよく出るだが、まさか霧が魔物だったなんて信じらんねぇだ。」
 「男を追う時は霧に、男を捕えて犯す際には液状になる……」
 「おーう!相変わらず良い仕事っぷりだな!碧山!」
 
 両手に肉まんの入った袋を持った男が彼に声を掛ける。
 身なりは碧山よりも豪華な赤地の布でできた洋風の服を羽織り、袖や襟には金細工の唐草模様が施してある。
 
 「フランベルジュさん、こちらは順調です。」
 「おうよー!そいつは何よりだぜー!」

 袋から取り出した肉まんを頬張る彼は、「ファフ・フラムベルジュ」。
 魔物調査機構の部署を束ねる最高責任者だ。
 彼は魔物娘の未知なる生態を解明する事を生き甲斐としており、その熱意のこもり具合は、新種や珍種の魔物娘のウワサを聞きつけると職務を放ってすぐに現地へ直行する程だ。
 ちなみに放棄された職務は副責任者の「ザグロ・グレンウォル」が処理する。

 「碧山!頼まれていた荷物まとめを終わらせたぜ!」
 「ありがとうございます。」

 フラムベルジュは現地に行ってもただ何もしないわけではなく、自ら率先して交渉役や雑用といった研究員のサポートを行う。

 「近くの屋台で買ってきた肉まんがあるぜ!ホラ、食いな!」
 「私は大丈夫ですよ。携帯食料があるので……」
 「ダメだ!そればっかり食ってたら体壊すって!たまには栄養もちゃんと取りな!」
 「え、ちょ…むぐぐぐぐ!」

 碧山とフラムベルジュ。
 二人の霧の大陸の旅はまだまだ始まったばかりだ……

 
20/07/02 23:27更新 / 消毒マンドリル
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■作者メッセージ
 続いて始まりました〜!霧の大陸編〜!
 今回は体を霧状にしたり液状に出来るスライムちゃんだ!
 この小説を執筆している理由だけど、とにかく、魔物娘図鑑を題材にした創作をしている方とか、ここにいるSSの読み手や書き手の方を驚かせたり、唸らせてやりたい訳で書いているぜ!
 我らが健康クロス大先生、この「魔物娘奇想天外!」を読んでおられるのであれば、是非ご感想をお願いしま…ちょ、何なの!?君達!
 何するの!?エロ同人みたいに乱暴する気!?とにかくやめーーーーー

 by 作者の消毒マンドリル

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 〜しばらくお待ちください〜

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 おっと、作者の戯言が長々と入ってしまう事故が起きちまった!
 引き続き本編を楽しんでくれ!
 次回も霧の大陸に生息する新種の魔物娘についての内容だ!
 いつも通り、voteとコメでの応援よろしくな!
 by 魔物調査機構最高責任者 ファフ・フラムベルジュ

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