連載小説
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堕ち前


 人間の男か。
 その風体からして冒険者と見るが、この私に何の用だ?
 この城にある財宝を戴きに来た…とな。
 良いだろう。宝が欲しくば私を倒し、その力を示して見せよ。
 力ある者にこそ、宝を持つのは相応し………………
 ………ふぅ。
 話している隙を突いて催眠魔法を仕掛けてきたか。
 あいにく私には効かん。
 貴様の様に催眠を使ってきた小賢しい奴等は居るには居たが、私の精神を乗っ取るには力不足だった。
 尤も、私の精神力が強靭すぎるだけかもしれんが。
 そのお陰で、こういった事態の対処はある程度慣れている。
 私は脳味噌の代わりにプライドと筋肉だけが詰まっているような他の同胞どもとは違うのだ。お判りいただけたかね?
 ところで、貴様が起こす行動は…それだけか?
 私の隙を突いた事に対する褒美として、特別にもう一度貴様が私に攻撃を仕掛けるチャンスをやる。
 魔法なり、武器による攻撃なりしても構わん。道具だって使っても良いのだぞ。
 む?これ以上は何もしない…だと?
 度胸があるのかないのか分からぬが、まぁ良いだろう。
 貴様など、私の拳か火球を一発当てさえすれば簡単に気絶させられる。
 殺しはせん。破壊の化身たるドラゴンとて、無闇に命を奪う事はご法度となってるからな。
 貴様を圧倒的な力でねじ伏せた後は、近場の病院に送る。
 そして、治療費も私が全額負担してやろう。
 仇に情けをかけられた屈辱に打ち震えるがいい。
 何?優しすぎる?普通にいい人で安心?
 そんな事などない。私は悪の象徴たる竜の一族だ。心根が善良であることなどありえん。
 さて、話が長くなってしまった。
 今から貴様に私の一撃を見舞う。
 覚悟は良いか?最後に言うことはないか?神に祈りは済ませたか?
 ママにお手紙は書いたか……………
 うっ!?
 あ、頭が…………ッ!
 貴様………私に気づかれぬように強力な催眠魔法を唱えていたのか!
 グッ……………!私とした事が、ふ、不覚………!

  …………………………………………………………………………。

 さ、催眠に掛けられちゃいましたので、私の負けですぅ♥
 私の城にあるお宝はぁ、み〜んな勝者である貴方のものですぅ♥
 大粒の宝石、純金の延べ棒、画伯が仕上げた名画、圧倒的な力を持った武具……あらゆるものを好きにしていいんです♥
 売るなり、眺めるなり、好きにしてくださぁい♥
 そんなものはどうでも良い?それじゃあ、いったい何を…
 えっ!?私を妻にしたいんですかぁ!?
 なるほど、貴方が求めていた宝というのは私だったんですか。
 駆け出し冒険者の頃に見かけて一目惚れした…私なんかに惚れるなんて、貴方も結構物好きなんですねぇ〜
 了解ですっ♥私は貴方のお嫁さんです!
 炊事、洗濯、家事、戦闘、自分なりに精一杯頑張ります!
 さぁなんなりとお申し付けくださいませ!
 ……、夜のお相手ですか…良いですよ!
 私も私を負かした強いオスである貴方の寵愛を受けたくて仕方がなかったんですよ♥
 やぁん♥変態だなんてそんなっ♥照れちゃいますっ♥
 ささ、早くベッドインしちゃいましょ♥
 
20/02/06 02:23更新 / 消毒マンドリル
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