外伝2 〜真っ赤に燃やせ!熱き愛の心!ドリル軍団愛の特訓!?〜
「ふぅ・・・」
この日、龍二は深夜にひどく疲れて帰宅した。
「龍二。帰りが随分と遅かったが、一体どうしたんだ?」
蒼はそんな夫の様子に激しい不安を覚える。
「まさかマンドリルや他の幹部の奴等に何かやましい事をされたりしているのではあるまいな!?だとするならば私が今すぐ乗り込んで灸を据えてきて・・・・」
「そんなに心配しなくていいよ蒼ちゃん。実はね・・・」
それは、今から数日前に遡る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「フハハハハッ!これからここは私が侵略させてもらうとしよう!」
「キャ〜ッ!ネクロネビュラ様〜っ!」
「あぁ〜ん、アタシを僕にしてぇ〜ん♪」
「おーい!俺の会社も侵略してくれ〜!」
龍二のもう一つの姿であるコウモリの様な戦闘スーツを身に付けたマンドリル軍団八大幹部の一人、暗黒帝王ネクロネビュラがとある都心部に現れた。
人々は平和を脅かす侵略者の出現に恐怖し恐れおののくどころか、むしろ歓喜の声を上げている。
それもそのはず、中性的な美少女の様な可憐な外見とそれに反した威風堂々としたカリスマ性を持ち合わせたネクロネビュラにはファンが男女を問わず多くいるのだ。
その人気ぶりたるや凄まじく、超大物クラスのヒーローをも凌駕し、ファンサイトも立ち上がっている程である。
「相変わらず愚かな奴等よ。敵を目前にして恐れるどころか喜ぶとはな・・・・」
「ネクロネビュラ様!いつも応援してますっ!」
「あなたの活躍で元気付けられたおかげで就職できました!ありがとうございます!」
ネクロネビュラを取り囲むギャラリーから次々と感謝や歓迎の言葉が上がっていく。
「ハッハッハッハ・・・貴様らの言葉、ありがたく受け取ってやろう。」
群衆に向かって彼は手を振ってサービスして見せていたが、突如後ろから殺気を感じた。
「!!!」
ドガァンッ!
後ろから降り下ろされたトゲの生えた巨大な警棒の一撃を、ネクロネビュラは間一髪の所で飛び退いて回避する。
「チッ!仕留め損なっちまったか!」
背後から奇襲を仕掛けた刺々しい警官服のようなコスチュームを着た筋骨隆々の巨漢、B級ヒーロー・マッドジャスティスは忌々しげに地面にめり込んだ警棒を無理矢理引き抜く。
「相変わらず奇襲の下手な奴だな。飼い猫の方がまだ上手いぞ。」
「うるせぇ!」
「フン、遅いな。全く遅すぎる。」
何度も降り下ろされる巨大な警棒をネクロネビュラは余裕で次々と避けていく。
「チィッ!悪党なら大人しく正義のヒーローである俺様にすり潰されてりゃいいモンを・・・・!」
「貴様こそ、その程度の実力で正義を名乗り語るとは極めて愚かだな。」
「そうよ!アンタなんて見た目も素性も汚いくせによくそんなこと言えるわね!」
ブゥ〜ッ!帰れ〜!
ギャラリー達が一斉にマッドジャスティスに向かってブーイングやヤジを飛ばす。
「・・・・畜生!ふざけやがってぇ!このクソガキがぁ!」
警棒が横凪ぎに振られて唸りを上げ、再度ネクロネビュラに襲いかかる。
「感情に任せて行動するか・・・つくづく愚かな奴め。」
ビシュンッ!
ネクロネビュラは上に飛び上がり攻撃を回避し、警棒攻撃が届かない位置の空中へと上昇してその場に留まり、右腕の手甲にエネルギーを溜めていく。
「テメェ!俺様の警棒が届かねえ空中に逃げやがって!この卑怯者が!」
「卑怯?生憎だが私は勝つためには手段は選ばないという信念を持っているのでな。貴様は罵倒のつもりで吐いたのだろうが、私にとっては誉め言葉なのだよ。」
「ぐっ・・・!」
「それに、貴様もいつも私を発見するや否やその手に持っているオモチャで後ろから殴り倒そうとしていただろう。それこそ卑怯なのではないか?」
返された言葉に即発されたマッドジャスティスは怒りのボルテージをますます上げた。
「ざけんじゃねぇぇぇ!どんな手段使ってでも相手を倒すことはヒーローの特権なんだよ!だから悪の癖にテメェがその神聖な特権を使うなんておこがましいんだよコラァ!」
「やれやれ、自分の盲点を怒りで誤魔化そうとしているのが見え見えではないか。・・・さて、そろそろ頃合いだな。」
ネクロネビュラはエネルギーが溜まり、紫色の蛍光色の光を放ち点滅している右腕を抑えながらマッドジャスティスに向ける。
「つーか!いい加減降りてこいって言っているのが聞こえねぇのか!」
バギュンッ!
右腕から特大サイズの紫色のエネルギー弾が撃ち出され、直線上にいるマッドジャスティスに迫っていく。
「オイコラ!シカトしてんじゃァァァアァーーーーーーッ!」
紫色のエネルギーがマッドジャスティスの全身を直撃する。
凄まじい威力の攻撃を食らったマッドジャスティスの悲痛な叫びは一瞬のうちにエネルギー弾の炸裂音にかき消される。
「何時でも正義が勝つとは限らないのだよ・・・・」
スーツをエネルギー弾で焼き払われて全裸になり倒れていれる哀れなB級ヒーローに、ネクロネビュラは冷ややかな視線を送った。
「流石ネクロネビュラ様!B級ヒーローなんて全然敵じゃないや!」
「あの冷ややかな眼に射抜かれたい・・・」
「どうやらスカイドラグーンの奴等が我らマンドリル軍団の存在に勘付いていたようだな・・・。今日はここで引き上げて策を練るとしよう!さらばだ!」
ネクロネビュラは転移魔法を唱え、マンドリル軍団の本部の基地へと帰還した。
基地の自分の担当する部署へと転送されると、真っ先に机の上に置いてあるスケジュール表を見て業務内容をチェックする。
「よし、都市へのPRは終わらせたな。しかしヒーローが出てくるのは予想してなかった・・・」
残りの仕事を片付けようと作業に取りかかろうとすると、軍団内に放送が掛けられた。
「ドクター・マンドリルより八大幹部たちに告ぐ!至急今すぐ俺様の元へ来い!そして、残りの部下達は速やかに帰れ!隠れて残業なんてするんじゃねぇぞ!分かったな!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
マンドリル軍団の会議室。
耐火、防音、防水など、ありとあらゆる処理が施された強力な壁に囲まれた空間にマンドリル軍団の八大幹部は集結した。
部屋のレイアウトは演説台にいるマンドリルの前に幹部全員である8人分が座れる議席が置かれているというものである。
「マンドリル様!俺らに話があるって一体何なんだよ!」
恐竜を思わせるゴツゴツとした尻尾の生えた深紅の鎧に身を包んだ大男、「ヴォルカ・テラノレックス」がマンドリルに向かって話し掛けた。
彼は普通の音量で話しているつもりなのだが、あまりにも声が大きすぎて怒鳴っているように聞こえる。
「マンドリル様。我々八大幹部を集結させるとは、よほど重大なお話があるのでしょうか?」
テラノレックス並みの体格を持つ銀色の三日月をイメージした鎧を纏ったデーモン「クレッセント・サタナロイド」がマンドリルに落ち着いた口調で問う。
「おうおう、全員ちゃんと来てくれたな。お前ら。本題に移るぜ。」
マンドリルは幹部全員に目配せをする。
「最近、俺様は新たなる発見をした・・・それはだ。敵味方を問わず、日頃から婚約者や恋人といった配偶者を自慢していた奴の戦闘力の成長率や勝率が格段に高いということが分かった!」
「・・・・えっ?」
発表のメチャクチャで唐突な内容に幹部一同は困惑した。
「もう一度言うぜ。日頃から婚約者や恋人といった配偶者を自慢していたヤツは勝率が高かかったことが分かったのよ。」
「そ、それが一体どうしたそいうのでありますの?」
触手が全て機械化されたクラーケン、「ダイナモ・コロッサス」が疑問の声を上げる。
「この結果を受け、うちで今週から配偶者のいる奴等にこれでもかと嫁や旦那を自慢させまくって戦力を強化する訓練を実施することにした!そしてその訓練のテスト対象は全員が既婚者である八大幹部で行う!」
「・・・・・。」
「おいおい!そんなにシラけないで乗ってくれよ!頼むからよ!?な?な?」
静まり返った幹部達の態度にマンドリルはやや焦る。
「・・・こうなりゃ実演させてその効能を証明するしかねぇようだ!おい!ペガサソイド!お前の嫁をこの場でこれでもかと自慢してくれ!」
「えっ、僕がですか?他人の前でノロけてしまうのは恥ずかし・・・」
「その気持ちは分かるが頼む!やってくれ!」
マンドリルの強い説得を受け、羽の生えた馬、天馬ペガサスを模した戦闘スーツを身に付けた青年「イカロス・ペガサソイド」は自身を指差すリアクションをして動揺していたが、少し時間が経過すると覚悟を決め深呼吸をして、命令通りに嫁自慢を実行した。
「僕の妻はロリ妖狐なのですが、普段はわがまま放題で生意気な癖にいざという時は徹底的に甘えさせてくれるんです!これがまたたまらないんですよぉっ!一日どころか一ヶ月間の疲れが吹っ飛んでしまうんですからぁぁッ!」
さっきまでぎこちない態度だったペガサソイドは目を輝かせてハキハキとした口調で妻の魅力を語り倒した。
「ほ、本当だ・・・な、何かある意味自分を解き放って強くなった気がするな・・・」
ペガサソイドの吹っ切れぶりを見た幹部たちはマンドリルの言葉に次第に納得していった。
「ようし、お前ら!納得したな!さぁ我こそはという者はジャンジャン自慢しやがれ!」
「ぬぉぉぉっ!二番手はワシじゃっ!妻は白澤なのだがおしとやかで知的、インテリジェンスな態度がまたそそられるんじゃっ!」
ホタル型の戦闘スーツを纏った初老の男性「シャイン・フライニクス」が体を震わせ、若年時代さながらの情熱を爆発させて熱弁を振るう。
「私も負けてはいられん!私の夫は厳しくも優しい所が取り柄だっ!彼がいなければとてもではないがもう生きてはいけないッ!」
紺色のクジラ型の戦闘スーツを纏った筋肉質なネイレス「ダイダル・スパムウェイル」は海兵の様な勇ましい大声で魅力を周囲に伝える。
「ボクのフィアンセは可憐でありながら芯の強い所が素晴らしいんだ。胸を張って言おう。」
薔薇のような気品のある赤と緑のアクセントの戦闘スーツを身に纏ったダンピール、「ブラッド・ローズスカーレット」が優雅に語る。
「いいぞいいぞ!この調子でドンドン愛する者を徹底的に自慢しまくれ〜!ヌハハハハ〜ッ!」
会議室が激しいノロケムードに包まれ、幹部達が気力をみなぎらせていく様を見て、マンドリルは高笑いした。
幹部たちは彼の思惑通りに一人ずつ自慢トークやノロケ話を炸裂させていき、テラノレックスとサタナロイド、コロッサスも語り終え、最後はついにネクロネビュラの番となった。
「さぁ、最後のトリを飾るのはオメェだぜ!ネクロネビュラ!」
「はい!張り切って参りますっ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「僕が話す番になったんだけど、みんな僕のお嫁さんが蒼ちゃんだってことを聞いてビックリしていたよ!」
龍二は蒼に今日のエピソードを興奮気味に伝える。
「しかし同僚の妻が自分達と何度も刃を交えてきた特A級ヒーローである私だと知れば驚くのも無理はないな・・・」
「でね、今回のことで幹部の皆と改めて意気投合しちゃって夜遅くまで飲んじゃったんだよね・・・」
「それで帰りが遅くなってしまったというわけか・・・。」
腕を組ながら蒼は頷く。
「それで蒼ちゃんを待たせてしまって悪かったなって思うんだ。お詫びとして、して欲しいことがあったら何でも言っていいよ。」
「そうだな・・・丁度組織で常務から日頃の激励として二泊三日ドラゴニア旅行のペアチケットを貰ったのだが一緒に行ってくれないか?明日から連休だし丁度良いと思ったんだ。」
「うん、旅行なんて最近行ってなかったしたまには良いかもね。良いよ。」
翌日、二人は三日間ドラゴニア旅行を満喫して来たのであった。
だが二日目にバイキング形式のレストランで食べ過ぎてしまったせいで体重が増えてしまったことがスカイドラグーンの健康診断で発覚してしまい、蒼はショックを受けるのだがそれはまた別のお話。
この日、龍二は深夜にひどく疲れて帰宅した。
「龍二。帰りが随分と遅かったが、一体どうしたんだ?」
蒼はそんな夫の様子に激しい不安を覚える。
「まさかマンドリルや他の幹部の奴等に何かやましい事をされたりしているのではあるまいな!?だとするならば私が今すぐ乗り込んで灸を据えてきて・・・・」
「そんなに心配しなくていいよ蒼ちゃん。実はね・・・」
それは、今から数日前に遡る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「フハハハハッ!これからここは私が侵略させてもらうとしよう!」
「キャ〜ッ!ネクロネビュラ様〜っ!」
「あぁ〜ん、アタシを僕にしてぇ〜ん♪」
「おーい!俺の会社も侵略してくれ〜!」
龍二のもう一つの姿であるコウモリの様な戦闘スーツを身に付けたマンドリル軍団八大幹部の一人、暗黒帝王ネクロネビュラがとある都心部に現れた。
人々は平和を脅かす侵略者の出現に恐怖し恐れおののくどころか、むしろ歓喜の声を上げている。
それもそのはず、中性的な美少女の様な可憐な外見とそれに反した威風堂々としたカリスマ性を持ち合わせたネクロネビュラにはファンが男女を問わず多くいるのだ。
その人気ぶりたるや凄まじく、超大物クラスのヒーローをも凌駕し、ファンサイトも立ち上がっている程である。
「相変わらず愚かな奴等よ。敵を目前にして恐れるどころか喜ぶとはな・・・・」
「ネクロネビュラ様!いつも応援してますっ!」
「あなたの活躍で元気付けられたおかげで就職できました!ありがとうございます!」
ネクロネビュラを取り囲むギャラリーから次々と感謝や歓迎の言葉が上がっていく。
「ハッハッハッハ・・・貴様らの言葉、ありがたく受け取ってやろう。」
群衆に向かって彼は手を振ってサービスして見せていたが、突如後ろから殺気を感じた。
「!!!」
ドガァンッ!
後ろから降り下ろされたトゲの生えた巨大な警棒の一撃を、ネクロネビュラは間一髪の所で飛び退いて回避する。
「チッ!仕留め損なっちまったか!」
背後から奇襲を仕掛けた刺々しい警官服のようなコスチュームを着た筋骨隆々の巨漢、B級ヒーロー・マッドジャスティスは忌々しげに地面にめり込んだ警棒を無理矢理引き抜く。
「相変わらず奇襲の下手な奴だな。飼い猫の方がまだ上手いぞ。」
「うるせぇ!」
「フン、遅いな。全く遅すぎる。」
何度も降り下ろされる巨大な警棒をネクロネビュラは余裕で次々と避けていく。
「チィッ!悪党なら大人しく正義のヒーローである俺様にすり潰されてりゃいいモンを・・・・!」
「貴様こそ、その程度の実力で正義を名乗り語るとは極めて愚かだな。」
「そうよ!アンタなんて見た目も素性も汚いくせによくそんなこと言えるわね!」
ブゥ〜ッ!帰れ〜!
ギャラリー達が一斉にマッドジャスティスに向かってブーイングやヤジを飛ばす。
「・・・・畜生!ふざけやがってぇ!このクソガキがぁ!」
警棒が横凪ぎに振られて唸りを上げ、再度ネクロネビュラに襲いかかる。
「感情に任せて行動するか・・・つくづく愚かな奴め。」
ビシュンッ!
ネクロネビュラは上に飛び上がり攻撃を回避し、警棒攻撃が届かない位置の空中へと上昇してその場に留まり、右腕の手甲にエネルギーを溜めていく。
「テメェ!俺様の警棒が届かねえ空中に逃げやがって!この卑怯者が!」
「卑怯?生憎だが私は勝つためには手段は選ばないという信念を持っているのでな。貴様は罵倒のつもりで吐いたのだろうが、私にとっては誉め言葉なのだよ。」
「ぐっ・・・!」
「それに、貴様もいつも私を発見するや否やその手に持っているオモチャで後ろから殴り倒そうとしていただろう。それこそ卑怯なのではないか?」
返された言葉に即発されたマッドジャスティスは怒りのボルテージをますます上げた。
「ざけんじゃねぇぇぇ!どんな手段使ってでも相手を倒すことはヒーローの特権なんだよ!だから悪の癖にテメェがその神聖な特権を使うなんておこがましいんだよコラァ!」
「やれやれ、自分の盲点を怒りで誤魔化そうとしているのが見え見えではないか。・・・さて、そろそろ頃合いだな。」
ネクロネビュラはエネルギーが溜まり、紫色の蛍光色の光を放ち点滅している右腕を抑えながらマッドジャスティスに向ける。
「つーか!いい加減降りてこいって言っているのが聞こえねぇのか!」
バギュンッ!
右腕から特大サイズの紫色のエネルギー弾が撃ち出され、直線上にいるマッドジャスティスに迫っていく。
「オイコラ!シカトしてんじゃァァァアァーーーーーーッ!」
紫色のエネルギーがマッドジャスティスの全身を直撃する。
凄まじい威力の攻撃を食らったマッドジャスティスの悲痛な叫びは一瞬のうちにエネルギー弾の炸裂音にかき消される。
「何時でも正義が勝つとは限らないのだよ・・・・」
スーツをエネルギー弾で焼き払われて全裸になり倒れていれる哀れなB級ヒーローに、ネクロネビュラは冷ややかな視線を送った。
「流石ネクロネビュラ様!B級ヒーローなんて全然敵じゃないや!」
「あの冷ややかな眼に射抜かれたい・・・」
「どうやらスカイドラグーンの奴等が我らマンドリル軍団の存在に勘付いていたようだな・・・。今日はここで引き上げて策を練るとしよう!さらばだ!」
ネクロネビュラは転移魔法を唱え、マンドリル軍団の本部の基地へと帰還した。
基地の自分の担当する部署へと転送されると、真っ先に机の上に置いてあるスケジュール表を見て業務内容をチェックする。
「よし、都市へのPRは終わらせたな。しかしヒーローが出てくるのは予想してなかった・・・」
残りの仕事を片付けようと作業に取りかかろうとすると、軍団内に放送が掛けられた。
「ドクター・マンドリルより八大幹部たちに告ぐ!至急今すぐ俺様の元へ来い!そして、残りの部下達は速やかに帰れ!隠れて残業なんてするんじゃねぇぞ!分かったな!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
マンドリル軍団の会議室。
耐火、防音、防水など、ありとあらゆる処理が施された強力な壁に囲まれた空間にマンドリル軍団の八大幹部は集結した。
部屋のレイアウトは演説台にいるマンドリルの前に幹部全員である8人分が座れる議席が置かれているというものである。
「マンドリル様!俺らに話があるって一体何なんだよ!」
恐竜を思わせるゴツゴツとした尻尾の生えた深紅の鎧に身を包んだ大男、「ヴォルカ・テラノレックス」がマンドリルに向かって話し掛けた。
彼は普通の音量で話しているつもりなのだが、あまりにも声が大きすぎて怒鳴っているように聞こえる。
「マンドリル様。我々八大幹部を集結させるとは、よほど重大なお話があるのでしょうか?」
テラノレックス並みの体格を持つ銀色の三日月をイメージした鎧を纏ったデーモン「クレッセント・サタナロイド」がマンドリルに落ち着いた口調で問う。
「おうおう、全員ちゃんと来てくれたな。お前ら。本題に移るぜ。」
マンドリルは幹部全員に目配せをする。
「最近、俺様は新たなる発見をした・・・それはだ。敵味方を問わず、日頃から婚約者や恋人といった配偶者を自慢していた奴の戦闘力の成長率や勝率が格段に高いということが分かった!」
「・・・・えっ?」
発表のメチャクチャで唐突な内容に幹部一同は困惑した。
「もう一度言うぜ。日頃から婚約者や恋人といった配偶者を自慢していたヤツは勝率が高かかったことが分かったのよ。」
「そ、それが一体どうしたそいうのでありますの?」
触手が全て機械化されたクラーケン、「ダイナモ・コロッサス」が疑問の声を上げる。
「この結果を受け、うちで今週から配偶者のいる奴等にこれでもかと嫁や旦那を自慢させまくって戦力を強化する訓練を実施することにした!そしてその訓練のテスト対象は全員が既婚者である八大幹部で行う!」
「・・・・・。」
「おいおい!そんなにシラけないで乗ってくれよ!頼むからよ!?な?な?」
静まり返った幹部達の態度にマンドリルはやや焦る。
「・・・こうなりゃ実演させてその効能を証明するしかねぇようだ!おい!ペガサソイド!お前の嫁をこの場でこれでもかと自慢してくれ!」
「えっ、僕がですか?他人の前でノロけてしまうのは恥ずかし・・・」
「その気持ちは分かるが頼む!やってくれ!」
マンドリルの強い説得を受け、羽の生えた馬、天馬ペガサスを模した戦闘スーツを身に付けた青年「イカロス・ペガサソイド」は自身を指差すリアクションをして動揺していたが、少し時間が経過すると覚悟を決め深呼吸をして、命令通りに嫁自慢を実行した。
「僕の妻はロリ妖狐なのですが、普段はわがまま放題で生意気な癖にいざという時は徹底的に甘えさせてくれるんです!これがまたたまらないんですよぉっ!一日どころか一ヶ月間の疲れが吹っ飛んでしまうんですからぁぁッ!」
さっきまでぎこちない態度だったペガサソイドは目を輝かせてハキハキとした口調で妻の魅力を語り倒した。
「ほ、本当だ・・・な、何かある意味自分を解き放って強くなった気がするな・・・」
ペガサソイドの吹っ切れぶりを見た幹部たちはマンドリルの言葉に次第に納得していった。
「ようし、お前ら!納得したな!さぁ我こそはという者はジャンジャン自慢しやがれ!」
「ぬぉぉぉっ!二番手はワシじゃっ!妻は白澤なのだがおしとやかで知的、インテリジェンスな態度がまたそそられるんじゃっ!」
ホタル型の戦闘スーツを纏った初老の男性「シャイン・フライニクス」が体を震わせ、若年時代さながらの情熱を爆発させて熱弁を振るう。
「私も負けてはいられん!私の夫は厳しくも優しい所が取り柄だっ!彼がいなければとてもではないがもう生きてはいけないッ!」
紺色のクジラ型の戦闘スーツを纏った筋肉質なネイレス「ダイダル・スパムウェイル」は海兵の様な勇ましい大声で魅力を周囲に伝える。
「ボクのフィアンセは可憐でありながら芯の強い所が素晴らしいんだ。胸を張って言おう。」
薔薇のような気品のある赤と緑のアクセントの戦闘スーツを身に纏ったダンピール、「ブラッド・ローズスカーレット」が優雅に語る。
「いいぞいいぞ!この調子でドンドン愛する者を徹底的に自慢しまくれ〜!ヌハハハハ〜ッ!」
会議室が激しいノロケムードに包まれ、幹部達が気力をみなぎらせていく様を見て、マンドリルは高笑いした。
幹部たちは彼の思惑通りに一人ずつ自慢トークやノロケ話を炸裂させていき、テラノレックスとサタナロイド、コロッサスも語り終え、最後はついにネクロネビュラの番となった。
「さぁ、最後のトリを飾るのはオメェだぜ!ネクロネビュラ!」
「はい!張り切って参りますっ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「僕が話す番になったんだけど、みんな僕のお嫁さんが蒼ちゃんだってことを聞いてビックリしていたよ!」
龍二は蒼に今日のエピソードを興奮気味に伝える。
「しかし同僚の妻が自分達と何度も刃を交えてきた特A級ヒーローである私だと知れば驚くのも無理はないな・・・」
「でね、今回のことで幹部の皆と改めて意気投合しちゃって夜遅くまで飲んじゃったんだよね・・・」
「それで帰りが遅くなってしまったというわけか・・・。」
腕を組ながら蒼は頷く。
「それで蒼ちゃんを待たせてしまって悪かったなって思うんだ。お詫びとして、して欲しいことがあったら何でも言っていいよ。」
「そうだな・・・丁度組織で常務から日頃の激励として二泊三日ドラゴニア旅行のペアチケットを貰ったのだが一緒に行ってくれないか?明日から連休だし丁度良いと思ったんだ。」
「うん、旅行なんて最近行ってなかったしたまには良いかもね。良いよ。」
翌日、二人は三日間ドラゴニア旅行を満喫して来たのであった。
だが二日目にバイキング形式のレストランで食べ過ぎてしまったせいで体重が増えてしまったことがスカイドラグーンの健康診断で発覚してしまい、蒼はショックを受けるのだがそれはまた別のお話。
19/01/29 21:42更新 / 消毒マンドリル
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