BossBattle:01 深緑の巨竜の侵攻
ワーワー!
ドドドドドッ!
ガラガラガラガラッ!
「そこ、モタモタするなぁッ!」
「は、はいぃぃぃっ!」
反魔物国のハンモーン。
正式名称ハンモーン・カンドセ王国。
この国は強力な軍国で、国が強固な要塞に囲まれていることから「難攻不落のハンモーン」という通り名を周囲の国に轟かせている。
ここは、そんなハンモーン王国の要でもあり、国への入口でもある巨大要塞の正門である。
無骨な鎧に身を包んだ中年の男が大砲の球を運んでいる若い兵士に激を飛ばす。
「どうだ、作業の様子は?」
「はい!只今急ピッチで作業を進めており、先程バリスタの全ての装弾が完了いたしました!」
中年の男が上唇に先端がカールした二対のヒゲを生やした派手な身なりの男に状況を報告した。
「宜しい!この調子で大砲も出せ!」
「了解致しました!」
中年の男は髭の男に指差された方向へと走って行った。
「何としてでも・・・食い止めねば・・・!」
髭の男の名は、オーラ・ロンシャン。
つい一昨日この要塞の最高責任者になったばかりである。
彼は大変向上意欲が強く、手柄を立て、邪魔者は利用するなり蹴落としたすなりしてただの一般兵士からここまで上り詰めた野心家だ。
「オーラ様!敵は魔王軍で、レーダー結晶が魔力を感知した方向から推測するとこの門の正面へと向かっております!」
眼鏡を掛けた伝達係の若い女性が血相を変えてオーラの前に躍り出た。
「分かった。第2門、第3門から兵力を1000人ほどこちらへ移動するように伝えろ。」
「はい!」
伝達係が居なくなったのを確認すると、オーラは呟く。
「せっかく手に入れた地位だ・・・!誰にも奪わせてなるものか・・・!」
ズズンッ、ズズンッ、ズズンッ
突如地響きが要塞に伝わった。
地響きは少しずつ大きくなっており、こちらへと向かっているのが分かる。
「一体なんだ?20年程要塞に居たが、これほどまでの振動は経験したことがない・・・!よほど大軍を率いてきたのか・・・!?」
砦の頂上へ上ったオーラは血走り気味の目で、首にぶら下げていた双眼鏡を手に取り覗く。
「なんだ・・・!?こいつは・・・!?」
双眼鏡に見えたのは旧魔王時代のドラゴンだった。
今まで何度もこの要塞で撃退してきたものよりもかなり大きい。
体は緑色の鱗に覆われ、角の形、翼は通常の個体と変わらないが、他の体のパーツに対して胴体と尾が大きいため、他のパーツが小さく見える。
この強固な砦すら大きく揺るがす地響きを立てて、四足歩行で移動するそれはまるで山に手足が生えて歩いているようだ。
ドズゥンッ!ドズゥンツ!
「撃てぇぇぇーっ!」
バシシィンッ!バシシィンッ!
オーラの号令と共にドラゴンに向けて一斉にバリスタが放たれた。
あの世界一硬いと言われているオリハルコンで加工され、一流の職人の手で鋭利に研ぎ澄まされたそれは武装した飛行船すら一撃で撃墜する代物だ。
シィィィィンッ!
ガバキンッ!ガバキンッ!
「なっ!?」
なんと、ドラゴンの甲殻に当たった最新の加工技術と職人の業で作られたバリスタの弾が粉々に砕けていっている。
これにはオーラも驚くが、すぐに冷静に次の指示を飛ばす。
「バリスタ撃ち方止めぇいっ!大砲を構えよっ!」
ガガガガガッ・・・
バリスタに続いて、大きな城すら瓦礫に変える量の火薬が詰められた大砲の照準が一斉に進行するドラゴンに向けられる。
「撃てぇぇぇぇーいっ!」
ドッガァァァァァン!
ズガドンッ!ズガドンッ!ズカドンッ!
おびただしい量の灰色の煙と共に、火薬の臭いが辺り一面に充満する。
「これだけの集中放火を浴びせられればヤツもひとたまりも・・・・!?」
またしてもオーラは驚愕した。
バリスタに続いて大砲の雨を浴びせられても、ドラゴンは怯むことなく砦へと進行していたのだ。
しかも体に一つの焦げ跡や傷もない。
ーその程度か?ー
オーラはドラゴンがこちらを一瞥した時にそう言っているかのような気がした。
「えぇいっ!まだだっ!もう一度撃てぇぃっ!」
ズガドォンッ!ズガドォンッ!
再び集中放火を浴びせられても、ドラゴンはそれをものともせずに砦へ足を進める。
ズゴォォォォォオッ!
ボガァァァァァンッ!
「うわぁーーーーっ!!!」
「総員退避ーーーー!!!」
大砲がドラゴンが吐いた緑色の炎に凪ぎ払われて爆発炎上した。
それに怯えた兵士たちが、指揮官の指示に従い逃げていく。
「オーラ様!大砲は今の攻撃で全て破壊されてしまいました!」
「何だとっ!?ならば次は拘束弾を撃てっ!動けなくした所を遠くから魔法で叩け!」
「はいっ!」
グォォォーーーン・・・
ドラゴンが立ち上がって二足歩行になる。
バヒィーーーンッ!
大砲の先に配置された砲台から拘束弾が放たれる。
先端に鋭く頑丈な銛が付いた頑丈な綱を拘束対象に撃ち込んで相手を動けなくする仕組みだ。
ガッ、ブニィッ!
「なにぃぃぃぃっ!?」
拘束弾の先端がドラゴンの腹にめり込んだかと思いきや、ドラゴンの腹の弾力が強すぎるため弾き返された。
「・・・・・!」
オーラはいくら攻撃しても倒れるどころか怯みもしないドラゴンに怒りと焦りを覚えた。
「ぐぬぬぬぬぬぬぅっ!ええいっ!こうなったら・・・・!」
わなわなと震わせた握り拳から人差し指をピンと立て、後ろの部下に向ける。
「最終手段だ!黒滅砲を用意しろぉぉぉぉぉっ!何としてでも突破させてはならぁあぁぁぁぁんっ!」
滅黒砲。濃縮した破壊魔法エネルギーを発射するこの砦の最終兵器で、その威力は攻めてきた大量の魔物の軍隊を全滅させるほどである。
「ははは、はいいいいいっ!!!!」
兵士がほぼ発狂しかけているオーラの気迫に怯えつつ駆け足で砦の屋上から下へと続く階段へと急ぐ。
「ハァ・・・ハァ・・・」
ーついに気が狂ったか?ー
「黙れぇぇぇぇぇぇえっ!魔物風情めぇぇぇぇぇぇっ!殺してやるぅぅぅぅぅっ!次で殺してやるぅぅぅぅぅっ!」
またしても聞こえてきた忌々しい幻聴にオーラが怒号を上げた。
「オーラ様!黒滅砲の準備が完了しました!」
「よしぃぃぃぃっ!撃てぇぇぇっ!今すぐ撃てぇぇぇぇぇっ!」
ガゴンッ!
人相の悪いスキンヘッドの兵士が青いスイッチに巨大なハンマーを降り下ろした。
ゴゴゴゴゴ・・・・
ドラゴンの正面の要塞の壁から大砲よりも遥かに巨大な一つの砲身が生えるように飛び出る。
ギュイイイイイン・・・・
砲台の穴にドス黒いエネルギーが集まっていく。
ボズガァァァァァァンッ!
チュドォォォォォォンッ!
発射されたドス黒いエネルギー塊がドラゴンの上半身を包む。
「フハハハハハハーーーーッ!いくらなんでもヤツといえどコイツには耐えられま・・・」
ドラゴンに滅黒砲の一撃が当たったことでオーラは狂喜するが、それはすぐに絶望へと変わった。
グルルルル・・・
ドラゴンは滅黒砲の一撃を食らっても微動だにしなかった。それどころか全くノーダメージだ。
「はははは・・・う、嘘だ・・・これは悪い夢なんだ・・・きっとそうなんだ・・・はははは・・・」
だが悲しいがな夢ではない。
苦し紛れに頬をつねれば痛みを感じてしまうのだから夢ではない。
ズズズンッ!ズズズンッ!
グァオォォォォーン・・・
ドラゴンは要塞へと着々と二足歩行で足を進める。
そして・・・・!
ブゥンッ!
ドッガァァァァンッ!
ドッゴォォォオォォオンッ!
ドラゴンが要塞の壁の左側に爪を降り下ろし、右側に尾を打ちつける。
ドラゴンの攻撃を食らった箇所がガラガラと崩れていく。
オーラはその様子を、細い真ん中だけとなった要塞の上から呆然と見ているしかなかった。
「何だったんだよ・・・」
要塞の左端と右端を破壊し終えたドラゴンはオーラの乗る残る真ん中を見やると、息を大きく吸い込み、緑色の火球を吐き出した。
「俺が今までこの要塞を発展させた努力と、最新の装備を揃えた苦労はっ!?一体何だったんだぁぁぁぁぁぁっ!?」
今までの努力や苦労を否定されるような理不尽な出来事に対するオーラの嘆きの叫びと要塞の真ん中の部分は緑色の火球にかき消されていった。
グォォォォォ・・・ウォォォォォォ〜〜〜〜ンッッッ!!!!
ドラゴンは要塞を全て破壊したことを確認すると、頭をもたげて天に向かって吼えた。
「ん、もう終わったのか?」
。
ところ変わって魔王軍の野営地。
ドラゴンの吼える声に気づいた青いスライムが双眼鏡でその方向を向く。
続いて彼女の近くにいたオーガとアカオニも双眼鏡で同じ方向を見る。
「うっひゃー、まーた今回も派手にやったな〜」
「ほんと、いつ見てもバスティアナ隊長の強行突破はいつ見ても凄い迫力で見てて飽きないな〜!」
バスティアナ。
魔王軍第23部隊の隊長を務めるドラゴンで、生まれつき力が強く、旧魔王時代の姿になると同族より遥かに巨体になる。
魔王軍の部隊長の中で一二を争う圧倒的なパワーと吐き出される緑色の炎でありとあらゆるものを押し潰して沈める姿から「翠炎のバスティアナ」「緑の活火山」などの通り名で呼ばれて恐れられている。
「たった今突破口を完成させた!皆、我に続け!」
ブルルルルルルゥンッ♥
「ウォォォォォッ!」
現魔王時代の姿に戻ったバスティアナが遠くからも聞こえる大きな声で自分の部下に号令をかけた。
余談だが、彼女はホルスタウロスを越えるほどかなり乳が大きく、少しでも動けばブルンブルン動くため魔王軍の部隊長の間で密かに「バカ乳」の名前で呼ばれている。
そんな彼女は後に人間界の調査に赴いた際に遭難しかけた所をある一人の人間の会社員の男性に助けられ、彼に一目惚れして猛アタックして結婚に至るのだが、また別のお話。
ドドドドドッ!
ガラガラガラガラッ!
「そこ、モタモタするなぁッ!」
「は、はいぃぃぃっ!」
反魔物国のハンモーン。
正式名称ハンモーン・カンドセ王国。
この国は強力な軍国で、国が強固な要塞に囲まれていることから「難攻不落のハンモーン」という通り名を周囲の国に轟かせている。
ここは、そんなハンモーン王国の要でもあり、国への入口でもある巨大要塞の正門である。
無骨な鎧に身を包んだ中年の男が大砲の球を運んでいる若い兵士に激を飛ばす。
「どうだ、作業の様子は?」
「はい!只今急ピッチで作業を進めており、先程バリスタの全ての装弾が完了いたしました!」
中年の男が上唇に先端がカールした二対のヒゲを生やした派手な身なりの男に状況を報告した。
「宜しい!この調子で大砲も出せ!」
「了解致しました!」
中年の男は髭の男に指差された方向へと走って行った。
「何としてでも・・・食い止めねば・・・!」
髭の男の名は、オーラ・ロンシャン。
つい一昨日この要塞の最高責任者になったばかりである。
彼は大変向上意欲が強く、手柄を立て、邪魔者は利用するなり蹴落としたすなりしてただの一般兵士からここまで上り詰めた野心家だ。
「オーラ様!敵は魔王軍で、レーダー結晶が魔力を感知した方向から推測するとこの門の正面へと向かっております!」
眼鏡を掛けた伝達係の若い女性が血相を変えてオーラの前に躍り出た。
「分かった。第2門、第3門から兵力を1000人ほどこちらへ移動するように伝えろ。」
「はい!」
伝達係が居なくなったのを確認すると、オーラは呟く。
「せっかく手に入れた地位だ・・・!誰にも奪わせてなるものか・・・!」
ズズンッ、ズズンッ、ズズンッ
突如地響きが要塞に伝わった。
地響きは少しずつ大きくなっており、こちらへと向かっているのが分かる。
「一体なんだ?20年程要塞に居たが、これほどまでの振動は経験したことがない・・・!よほど大軍を率いてきたのか・・・!?」
砦の頂上へ上ったオーラは血走り気味の目で、首にぶら下げていた双眼鏡を手に取り覗く。
「なんだ・・・!?こいつは・・・!?」
双眼鏡に見えたのは旧魔王時代のドラゴンだった。
今まで何度もこの要塞で撃退してきたものよりもかなり大きい。
体は緑色の鱗に覆われ、角の形、翼は通常の個体と変わらないが、他の体のパーツに対して胴体と尾が大きいため、他のパーツが小さく見える。
この強固な砦すら大きく揺るがす地響きを立てて、四足歩行で移動するそれはまるで山に手足が生えて歩いているようだ。
ドズゥンッ!ドズゥンツ!
「撃てぇぇぇーっ!」
バシシィンッ!バシシィンッ!
オーラの号令と共にドラゴンに向けて一斉にバリスタが放たれた。
あの世界一硬いと言われているオリハルコンで加工され、一流の職人の手で鋭利に研ぎ澄まされたそれは武装した飛行船すら一撃で撃墜する代物だ。
シィィィィンッ!
ガバキンッ!ガバキンッ!
「なっ!?」
なんと、ドラゴンの甲殻に当たった最新の加工技術と職人の業で作られたバリスタの弾が粉々に砕けていっている。
これにはオーラも驚くが、すぐに冷静に次の指示を飛ばす。
「バリスタ撃ち方止めぇいっ!大砲を構えよっ!」
ガガガガガッ・・・
バリスタに続いて、大きな城すら瓦礫に変える量の火薬が詰められた大砲の照準が一斉に進行するドラゴンに向けられる。
「撃てぇぇぇぇーいっ!」
ドッガァァァァァン!
ズガドンッ!ズガドンッ!ズカドンッ!
おびただしい量の灰色の煙と共に、火薬の臭いが辺り一面に充満する。
「これだけの集中放火を浴びせられればヤツもひとたまりも・・・・!?」
またしてもオーラは驚愕した。
バリスタに続いて大砲の雨を浴びせられても、ドラゴンは怯むことなく砦へと進行していたのだ。
しかも体に一つの焦げ跡や傷もない。
ーその程度か?ー
オーラはドラゴンがこちらを一瞥した時にそう言っているかのような気がした。
「えぇいっ!まだだっ!もう一度撃てぇぃっ!」
ズガドォンッ!ズガドォンッ!
再び集中放火を浴びせられても、ドラゴンはそれをものともせずに砦へ足を進める。
ズゴォォォォォオッ!
ボガァァァァァンッ!
「うわぁーーーーっ!!!」
「総員退避ーーーー!!!」
大砲がドラゴンが吐いた緑色の炎に凪ぎ払われて爆発炎上した。
それに怯えた兵士たちが、指揮官の指示に従い逃げていく。
「オーラ様!大砲は今の攻撃で全て破壊されてしまいました!」
「何だとっ!?ならば次は拘束弾を撃てっ!動けなくした所を遠くから魔法で叩け!」
「はいっ!」
グォォォーーーン・・・
ドラゴンが立ち上がって二足歩行になる。
バヒィーーーンッ!
大砲の先に配置された砲台から拘束弾が放たれる。
先端に鋭く頑丈な銛が付いた頑丈な綱を拘束対象に撃ち込んで相手を動けなくする仕組みだ。
ガッ、ブニィッ!
「なにぃぃぃぃっ!?」
拘束弾の先端がドラゴンの腹にめり込んだかと思いきや、ドラゴンの腹の弾力が強すぎるため弾き返された。
「・・・・・!」
オーラはいくら攻撃しても倒れるどころか怯みもしないドラゴンに怒りと焦りを覚えた。
「ぐぬぬぬぬぬぬぅっ!ええいっ!こうなったら・・・・!」
わなわなと震わせた握り拳から人差し指をピンと立て、後ろの部下に向ける。
「最終手段だ!黒滅砲を用意しろぉぉぉぉぉっ!何としてでも突破させてはならぁあぁぁぁぁんっ!」
滅黒砲。濃縮した破壊魔法エネルギーを発射するこの砦の最終兵器で、その威力は攻めてきた大量の魔物の軍隊を全滅させるほどである。
「ははは、はいいいいいっ!!!!」
兵士がほぼ発狂しかけているオーラの気迫に怯えつつ駆け足で砦の屋上から下へと続く階段へと急ぐ。
「ハァ・・・ハァ・・・」
ーついに気が狂ったか?ー
「黙れぇぇぇぇぇぇえっ!魔物風情めぇぇぇぇぇぇっ!殺してやるぅぅぅぅぅっ!次で殺してやるぅぅぅぅぅっ!」
またしても聞こえてきた忌々しい幻聴にオーラが怒号を上げた。
「オーラ様!黒滅砲の準備が完了しました!」
「よしぃぃぃぃっ!撃てぇぇぇっ!今すぐ撃てぇぇぇぇぇっ!」
ガゴンッ!
人相の悪いスキンヘッドの兵士が青いスイッチに巨大なハンマーを降り下ろした。
ゴゴゴゴゴ・・・・
ドラゴンの正面の要塞の壁から大砲よりも遥かに巨大な一つの砲身が生えるように飛び出る。
ギュイイイイイン・・・・
砲台の穴にドス黒いエネルギーが集まっていく。
ボズガァァァァァァンッ!
チュドォォォォォォンッ!
発射されたドス黒いエネルギー塊がドラゴンの上半身を包む。
「フハハハハハハーーーーッ!いくらなんでもヤツといえどコイツには耐えられま・・・」
ドラゴンに滅黒砲の一撃が当たったことでオーラは狂喜するが、それはすぐに絶望へと変わった。
グルルルル・・・
ドラゴンは滅黒砲の一撃を食らっても微動だにしなかった。それどころか全くノーダメージだ。
「はははは・・・う、嘘だ・・・これは悪い夢なんだ・・・きっとそうなんだ・・・はははは・・・」
だが悲しいがな夢ではない。
苦し紛れに頬をつねれば痛みを感じてしまうのだから夢ではない。
ズズズンッ!ズズズンッ!
グァオォォォォーン・・・
ドラゴンは要塞へと着々と二足歩行で足を進める。
そして・・・・!
ブゥンッ!
ドッガァァァァンッ!
ドッゴォォォオォォオンッ!
ドラゴンが要塞の壁の左側に爪を降り下ろし、右側に尾を打ちつける。
ドラゴンの攻撃を食らった箇所がガラガラと崩れていく。
オーラはその様子を、細い真ん中だけとなった要塞の上から呆然と見ているしかなかった。
「何だったんだよ・・・」
要塞の左端と右端を破壊し終えたドラゴンはオーラの乗る残る真ん中を見やると、息を大きく吸い込み、緑色の火球を吐き出した。
「俺が今までこの要塞を発展させた努力と、最新の装備を揃えた苦労はっ!?一体何だったんだぁぁぁぁぁぁっ!?」
今までの努力や苦労を否定されるような理不尽な出来事に対するオーラの嘆きの叫びと要塞の真ん中の部分は緑色の火球にかき消されていった。
グォォォォォ・・・ウォォォォォォ〜〜〜〜ンッッッ!!!!
ドラゴンは要塞を全て破壊したことを確認すると、頭をもたげて天に向かって吼えた。
「ん、もう終わったのか?」
。
ところ変わって魔王軍の野営地。
ドラゴンの吼える声に気づいた青いスライムが双眼鏡でその方向を向く。
続いて彼女の近くにいたオーガとアカオニも双眼鏡で同じ方向を見る。
「うっひゃー、まーた今回も派手にやったな〜」
「ほんと、いつ見てもバスティアナ隊長の強行突破はいつ見ても凄い迫力で見てて飽きないな〜!」
バスティアナ。
魔王軍第23部隊の隊長を務めるドラゴンで、生まれつき力が強く、旧魔王時代の姿になると同族より遥かに巨体になる。
魔王軍の部隊長の中で一二を争う圧倒的なパワーと吐き出される緑色の炎でありとあらゆるものを押し潰して沈める姿から「翠炎のバスティアナ」「緑の活火山」などの通り名で呼ばれて恐れられている。
「たった今突破口を完成させた!皆、我に続け!」
ブルルルルルルゥンッ♥
「ウォォォォォッ!」
現魔王時代の姿に戻ったバスティアナが遠くからも聞こえる大きな声で自分の部下に号令をかけた。
余談だが、彼女はホルスタウロスを越えるほどかなり乳が大きく、少しでも動けばブルンブルン動くため魔王軍の部隊長の間で密かに「バカ乳」の名前で呼ばれている。
そんな彼女は後に人間界の調査に赴いた際に遭難しかけた所をある一人の人間の会社員の男性に助けられ、彼に一目惚れして猛アタックして結婚に至るのだが、また別のお話。
18/02/14 02:28更新 / 消毒マンドリル
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