黒騎士〜史実と真実と・・・〜
第零章:歴史としての“黒騎士” それは、英雄だった。 民を守り、強大な敵に立ち向かうその姿はまさしく英雄だった。 それは、好敵手だった。 どのような敵にも、正々堂々果たし合うその姿はまさしく好敵手にふさわしかった。 それは、怨敵だった。 無慈悲に仲間を斬り殺された者にとって、それはまさしく怨敵だった。 それは、恐怖だった。 たった一騎で戦場を支配するその姿は、まさしく恐怖の象徴だった。 それは、裏切り者だった。 魔に産まれ人に生き、そのどちらも討ったそれは、まさしく裏切り者だった。 しかし、ただしくそれを知る者はおらず、それもまたただしく理解されようとしなかった。だから、今から語られる物語はそれの真意を伝えるものとは限らない。だが、何かを感じ、これを読まんとする者は、それの、黒騎士の思いの一端を知ることとなると保証しよう。 ――歴史学者 アンドリュー・グロウ『黒き聖騎士の追憶』 |
||
|
||