読切小説
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マッド?サイエンティストの発明品


「ついに!ついに完成しました!」


とある研究室で、白衣を着た男『ザマ・リーン』が諸手を上げて喜んでいた。

「どうしました、マスター?またくだらない発明品を作ったんですか?」

その男の後ろで、助手のゴーレムが呆れた声で言った。

「なんですか、貴女。せっかく喜んでるご主人様を落胆させるような事言って・・・」

「すいません、マスター。つい事実を言ってしまって・・・」

「アンタ、私を舐めてるんですか?四肢切断面して犯しまくってやろうかゴラァ!!」

「きゃー、マスターにレイプされるー。」(スーパー棒読み)

「・・・はぁ。貴女にこんな冗談言っても、冷めた反応しか帰ってこないから面白くないですねぇ・・・」

ザマがため息を吐いた。どうやらこのようなやり取りはよくやられているようだ。

「・・・で、マスター。何を開発したんですか?」

「ふっふっふっ・・・よく聞いてくれました・・・貴女、魔物の種族による性格づけ、性癖づけって分かりますか?」

「・・・?」

ゴーレムが可愛く小首を傾げると、ザマがため息をついてやれやれと首を振った。

「やれやれ・・・低脳な助手を持つと疲れますねぇ・・・いいですか?例えば、メドゥーサを例に取ると、ツンデレ安定だったりとか、オークを例に取りますと、相手に負けたら完全にドMになったりとか、あるじゃないですか」

「はい」

「私は考えたんです・・・そういうのがコロッと変わっちゃったら、楽しくありません?」

「別に」

「私は楽しいんです!そこでぇ・・・私は作ったんですよ!『このクスリ』をねぇ!」

ザマが後ろのフラスコを高くかざした。フラスコの中身はゴポゴポという音を立てていた。

「名付けて、『セイカクカワール』!」

「青猫ロボみたいなネーミング・・・」

「クスリってのは、分かりやすい名前がいいんですよ」

「・・・ところでマスター。そのクスリは実験はしたんですか?」

ゴーレムが言うと、ザマはキョトンとした。

「いえ?まだですよ?」

「じゃあ成功したかどうかまだ分からないんじゃないんでしょうか」

ゴーレムがそう言うと、男が白衣を脱ぎ捨て、黒いコートを羽織った。


「今から人体・・・いや、魔体実験に行くんですよ。ま、すでにどうあがいても成功した事実は変わりませんがね」


ザマがあっはっはっはと笑いながら研究室を出て行った。はぁとため息を吐いたゴーレムが、後を付いていった・・・


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[Case1、メドゥーサ]


「フォン?どう?原稿は上手くできそう?」

「うん。今日の夕方にはエドに渡せそうだよ、シェリー」

とある小さな街の郊外にある家の中で、隻眼の男が何か執筆している後ろで、メドゥーサの妻が洗い物をしながら聞いた。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

(さて、第一の目標はメドゥーサですよ。典型的なメドゥーサは妻になっても、普段自分からベタベタ甘えるようなことはしません)

(ツンデレですね。わかります)

(さてさて、クスリの効果はどうでしょうか・・・)

ザマは家の外の茂みにゴーレムと共に隠れていた。

(そ、れ、で、は・・・ステルスシステム、起動!)

ザマが自分の首に巻かれた機械のスイッチを入れると、なんとザマの姿が首を中心にバヂバヂと音をたてて消えた。

(ガチな発明品は素晴らしいのに・・・マスター、ご武運を・・・)

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


ザマが動いたのだろうか、開けられた窓の前の茂みがガサガサと音をたてた。

「・・・ん?」

ふと隻眼の男が顔を上げたが、何も見えなかったのか、首を傾げてまた手元の原稿に視線を落とした。
しかし、わずかに歩く音が家の中に入って行った。

「・・・ん、ん??」

隻眼の男がキョロキョロと辺りを見回すが、誰もいない。隻眼の男は、また首を傾げてまた視線を落とした。
とうとう足音はメドゥーサの後ろに来て、サッと机の上に小さな小瓶を置いた。

「・・・あれ?」

メドゥーサがふと後ろを向くと、小瓶と紙が置いてあった。


『いつもありがとう。疲れが取れる薬だよ。フォンより』


「・・・フォン////」

メドゥーサが嬉しそうに笑って隻眼の男を見る。さっそくメドゥーサは、小瓶の栓を抜き、ぐいっと中身を仰いだ。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

『バヂッ、バヂヂッ!』

(任務、完了♪)

(おかえりなさい、マスター)

(さぁて、結果は如何なるものでしょうか・・・?)

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


『コトン・・・』

メドゥーサの手元から、小瓶が転げ落ちた。

「・・・シェリー?なんか落とした?」

物音に気づいた隻眼の男が後ろを振り向くと・・・



「フォ〜〜〜ン♥」



なんと眩しいばかりの笑顔を浮かべた妻のメドゥーサが、男にぶっちゅ〜という音が見合うキスをした。

「・・・え、え?え???」


「フォン、好き♥好き♥だぁい好き♥私の最高の王子様♥あぁ、なんでこんなにもカッコいいの♥あぁ、フォ〜ン♥」


「ちょ、シェリー!?どうしたの!?シェリー!?」

キスをかました後、いつもと全く違い、これでもかと甘えてくる妻に大慌ての夫。身体全体で夫を巻き込み、力いっぱいに抱きしめる。


「好き♥好き♥死ぬほど好き〜〜〜っ♥」

『ぎゅうぅぅぅぅぅぅっ♥』


「ぐぇぇぇっ!?ちょ、シェリー、力が強すぎいだだだだだだだ!!?」





『ぼき。』




「いっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」





〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

「・・・折れましたね」

「肋骨あたり、いきましたね」

「・・・じゃ、次の実験体行きましょう♪」

「先に救急呼んどきます」

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

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[Case2:マンティス]


「・・・ファング、葡萄酒、飲む?」

「おう、サンキュ」

「ママー、ミコトもぶどうしゅ欲しいー」

「・・・もっと大きくなってから」


とある巨大な城。とある事情により永遠の命を得たマンティス一家が、そこに住んでいた。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

(お次は無口なマンティスですよ)

(娘は結構しゃべってますけど?)

(たぶん父親の影響でしょう。今回は無口な母親が被験体です。では、行ってきます)

『バヂバヂバヂッ!』

(いってらっしゃい、マスター)

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


『・・・コツッ』

「ッ!」
「・・・ッ」

父親が素早く剣を抜き、母親マンティスが鎌を構えた。

「パパ?ママ?どーしたの?」

父親と母親が辺りを見回すが、誰も確認できない。

(・・・気のせいか?)
(・・・なにか、聞こえたはず・・・)

ふたりはあちらこちらを注意していた。母親の葡萄酒の入ったグラスに、わずかな液体が入ったことに気づかずに・・・


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

『バヂッ、バヂヂッ!』

(あ、あぶなかったぁ・・・し、死ぬかと思いました・・・)

(姿が見えなくなるだけで、切られたら死にますもんね)

(さて、結果は・・・?)

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「・・・気のせいのようだな」

「・・・(コクン)」

父母が警戒を解き、椅子に座る。

「パパー、なにがあったの?」

「んー?いや、なんでもないよ。な、マコト?」

「・・・(コクン)」

母親マンティスは頷くと、グラスを持って、くいっと景気よく飲んだ。

「ねー、パパー。私もぶどうしゅ飲みた〜い」

「うーん・・・なぁ、マコト、少しくらいならいいか?」



『・・・コトン』

「いいわけないわよ、ファング」



間髪入れずに、母親マンティスが応えた。

「えぇ〜・・・」

「う〜ん・・・ちょびっとくらいならいいんじゃn」


「ファング?私はダメって言ってるの。子供にお酒なんて身体に害しか与えないんだからそんなもの飲ましちゃダメなの。ていうか、なんで私がダメと言ったことに異を唱えるの?ミコトの健康管理は私がするから協力してねって前に言ったよね?」


どうだろうか。
突然無口な母親がベラベラと立て板に水を流すかの様にしゃべりまくる様に、父親も娘もポカーンとなっていた。

「え・・・あ、おう・・・すまん・・・」


「ミコトもパパに頼んだらなんとかできると考えないの。パパは基本貴女に甘いんだから確かに言ったらわがまま許しそうだけど、そんなのに頼ってたら大きくなったら困るのは貴女なんだからね?魔物としての自覚と、将来に対する危機感を持ちなさい。このままだと貴女パパ以外に信じられる人がいなくなるでしょう」


「ご、・・・ごめんなさい」

「全くあなたたちは私が気にかけていることを根底から覆すようなことばかりして。この前なんか(くどくどくど・・・)」

(・・・パパ。ママがおかしい)

(な、なにがあったんだ・・・?)


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

「大成功、ですね♪」

「おしゃべりなマンティス・・・」

「アリな方はアリなんじゃないでしょうか?私は興味ないですけど」

「ちなみに薬の効果はどれくらいなんですか?」

「・・・さぁ?」

「さぁ、て・・・」

「じゃ、次の実験体、行きますよ〜」

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

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[Case3:ドッペルゲンガー]


「貞春〜、お待たせ♪」

「おう、帰るか」


時代変わって、現代。
とあるメイド喫茶からドッペルゲンガーが出てきて、ヤンキーらしい男に甘えるように駆け寄った。男はドッペルゲンガーと手を繋いで歩き始めた。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

(最後の被験体はドッペルゲンガーにしようと思ったんですが・・・)

(本来は臆病・・・という特徴が皆無に見えますが?)

(チィッ・・・最後の最後でイレギュラーかよクソが・・・ま、とりあえずは飲ませますかね・・・しかしどうやって飲ませますか・・・)

(・・・マスター、私がやってきましょう)

(はい?貴女、できるんですか?)

(見ててください)

(・・・ま、骨は拾ってあげますよ。あ、貴女、骨ねぇや・・・ん?あるのか?)

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「へいへーい。そこの幸せカップルー。ラブラブ立ち飲みドリンクはいらないかーい」(スーパー棒読み)

「・・・はぁ?」

「へぅ・・・」(ササッ)

「怖がらないでちびっ子ちゃん。私は怖くないゴーレム。貴女たちにドリンクを試飲してもらいたいだけー。」(スーパー棒読み)

「・・・ドリンクぅ?」

「実はこのドリンク、虜の果実というものを使ってます。男が飲めばモテモテに、レディが飲めばエロエロになるんですー。彼女さんに魅力を上乗せしてみてはいかがですかー?」(スーパー棒読み)

「・・・っ」

「んだと?真闇に魅力がねぇっつうのか?」

「そーじゃないですよー。魔物娘はみんな考えるものですよー?彼氏により強い魅力を感じてもらいたいってー」(スーパー棒読み)

「・・・あの、試飲、できる、ん、ですか?」

「真闇?」

「はいどうぞありがとうございます返品はききませんのでじっくり味わって飲んでくださいねありがとうございました失礼します」(マッハ早口)

『タタタタタタ・・・』

「あ!?あの野郎、走ってにげやがった!?」

ゴーレムが去った後、ヤンキーが後を見ていたが、ドッペルゲンガーはジッと手元のコップの中身を見て、ぐっと一息に飲んだ。


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「・・・任務、完了」

「任務、完了、キリッ・・・じゃ、ねーよ!なんだあの強引な渡し方は!ヤンキーがブチ切れなかったのが奇跡だろうが!」

「でも、渡せましたよ?」

「あぁ、全く・・・てか、虜の果実のジュースなんて飲ませたら、検証に支障が・・・」

「あれ、砂糖水です」

「・・・貴女もワルですね」

「あ・・・」

「お?」

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「ん?あ、おい、真闇、そんなもん飲んで大丈夫か?」

「・・・美味しくない」

「へ?」

「・・・虜の果実の、味じゃない」

「んだと!?あのアマ、嘘言いやがっ・・・」



『パッリィーーーン!』

瞬間、ドッペルゲンガーがコップを投げ捨てた!



「ふっざけやがって!あの土人形、私を騙しやがったなぁっ!!!」




「!?」


「こちとら貞春に見合う女になろうと日々努力してんのにこんなまがいもん渡しやがって!捕まえてふんじばってブサイクキモオタデブの家に放り込んでやる!」


「ま、ま、ま・・・真闇?」


「貞春ゥ!さっさとあの乳デカダッチワイフ探すよ!」


「え、あ、お、おぅ・・・」


「うらぁぁぁっ!あのクソアマどこ行きやがったぁぁぁっ!!!」


「 ( °□°)ポカーン 」


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

「・・・変わりましたね、性格」

「凶暴化してるじゃないですか。しかも貴女のせいで」

「マスターの薬が成功したと立証されましたね」

「聞けよ、私の話・・・まぁ、そうですね。さて、凶暴ドッペルゲンガーに襲われる前に、トンズラしましょう」

〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

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「いやぁ、なかなかいいサンプルが取れましたね」

研究室に帰ってきたザマは黒のコートを脱ぎ捨て、椅子にギッシと音がなるくらい勢いよく座った。

「どうぞ、マスター」

ゴーレムはすぐさまコーヒーを淹れ、ザマに渡した。

「ありがとうございます。はぁ・・・しかし、疲れましたねぇ・・・ん?」

「・・・どうしました?」

「・・・そうだ。貴女も飲んでみてくださいよ」

「・・・分かりました」


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[Case4:ゴーレム]


『ごくん』

ゴーレムが薬を飲んだ。
小瓶を口から離し、じっとしていたが、ふと首を傾げた。

「・・・どうしました?」

「・・・なにも、変わりません」

「え、マジですか?」

「・・・はい」

「えぇ・・・最後の最後の最後で失敗ですかぁ?」

「・・・申し訳ありません」

「ま、しょうがないですね・・・う〜ん、なにが原因なんでしょうかねぇ・・・」

ザマは白衣をとり、また研究台に向かって研究を始めた。




(・・・マスターに包み隠さない性格が、嘘つきになってしまいました・・・でも、楽しいから、しばらくこのままでいいや・・・)



12/04/19 23:06更新 / ganota_Mk2

■作者メッセージ
なんかポッと思いついたギャグ。
いかがでしょうか?

ちなみに。
ザマは某格闘ゲームの鬼畜紳士がモデル、
ゴーレムは同じゲームの11番さんがモデルです。
分かる人は、分かるかもね。

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