魔物娘図鑑世界内肉食系男子告白集3
Case1:ウシオニ
「まさか、オレがこんな芋侍にやられるとはね・・・」
ウシオニがズシンと倒れる。その目の先には、鉄刀(刃がまったく付いていない鉄の板に刀の拵えをつけた武器)を肩に抱えた侍が立っていた。
「お前の血を浴びると正気でなくなると聞いたのでな。血を出さぬ得物を持ってきたのだが・・・全くずいぶんと図太い女子だ・・・もう日が沈むぞ」
彼らは昼間から闘っていたのだが、すでに夕方を過ぎようとしていた。侍は鉄刀でウシオニに挑み、ウシオニの再生力に悪戦苦闘しながらも、最後にはウシオニを疲労困憊させて膝(?)をつかせることに成功した。
「あーもー、ヤケだ。煮るなり焼くなり、好きにしやがれ」
「いいのか?」
「強いて言えば男を抱けなかったことが未練だけどよぉ・・・ま、気に入った男に殺られるなら本望だよ」
「ほう、拙者を気に入ったと?・・・なら話は早いな」
話は早い、と聞いてウシオニは首を傾げたが、侍は懐から書と筆を取り出し、シャッと縦線を引いた。
「では次の段に移るとしよう。ついてこい」
「・・・は?ついてこい?」
ウシオニが聞き返すと、侍は手元の書を見ながら言った。
「お前を好きにしてよいのであろう?なら今から言うことをしてもらう。
ひとつ、食事を作る修行
ふたつ、着付けの修行
みっつ、礼法の修行
よっつ、・・・・・・」
つらつらと侍がしゃべる内容にウシオニは目を丸くし、そして聞いた。
「お、おい?それってまるで・・・」
すると侍はウシオニに視線を戻し、にっと片方の口角を吊り上げて笑った。
「まるで、ではなく、花嫁修業をしてもらう。
お前は拙者を『好きにした』のだ。拙者もお前を『好きにする』」
『後日、とある家臣の言葉:
いやしかし、お館様の嫁様を見たときは家臣一同目を丸くしたものだ。ゲテモノ好きと呼ばれていたお館様も嫁くらいは人を選ぶと思っていたが・・・まぁ、夫婦仲は国一らしいが、拙者なら耐えられんな』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Case2:マンドラゴラ
マンドラゴラは、今日も一日、地面に埋まって寝ているものだと思っていた。
(最近、人さえ通らないもんなぁ・・・)
最近、周りの地面から足音も振動も伝わってこない。ちょっとした林道の脇に花を出してずっと待っているのに、人どころか魔物娘さえ通りかからない。
(このままじゃ、お婿さん見つからずに行き遅れちゃうよぅ・・・)
土の中でじんわりと涙を浮かべるマンドラゴラ。
そんな彼女に、足音が聞こえた。
『サクッ、サクッ、サクッ・・・』
(・・・はっ!?人!?男の人!?)
しかも足音は遠くから真っ直ぐ、マンドラゴラに近づくように大きくなってくる。そして、マンドラゴラの前でピタリと止まった。
(わっ、わっ、わっ!人、だよね!?引き抜いて、くれるよね!?)
期待に胸を膨らますマンドラゴラに応えるように、マンドラゴラの花が根元からガシリと掴まれ、文字通り引き抜かれた!
マンドラゴラは、今まで溜めていた声を吐き出すかのように大声で叫んだ!
「っ、き」
「俺のプロポーズを聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!」
しかし、瞬間、マンドラゴラの鼓膜をつんざいた、引き抜いた男の大声にピタリと叫びを止めてしまった。
「俺は君が好きだぁぁぁぁぁぁっ!!!ちょっとおどおどしたその表情ぉぉぉぉっ!!!恥ずかしがり屋な性格ぅぅぅぅっ!!!成長不足なフラット体型ぇぇぇぇっ!!!木の根のような生足や花そのものな頭もぉぉぉぉ!!!全部引っくるめて大好きだぁぁぁぁぁぁっ!!!
この気持ちを、君の叫びで本能に負けてしまうことは認めないぃぃぃぃぃぃ!!!他の奴に引き抜かせるのも認めないぃぃぃぃぃぃ!!!他の奴らが発情するのも認めないぃぃぃぃぃぃ!!!だから遮断するぅぅぅぅぅぅ!!!この大音量の叫びで君の声を!!!土地を買って通行を!!!他の魔物たちに旦那を与えて範囲内での発情を!!!すべてシャッダウンんんんんんん!!!
そして俺は叫ぶんだぁぁぁぁぁぁっ!!!
俺は!!!君を!!!
愛してげぇっほぉっ!?」
男の大音量の告白は、最後の最後に咳き込んでストップしてしまった。
ゲホゲホとむせる男の呼吸はか細く、むせ終わってもヒューヒューと死にそうな息を漏らしている。
そしてキョトンとしていたマンドラゴラは、顔をどんどん赤くしたあと、顔を押さえて、小さく・・・
「・・・きゃあ♥」
このあと、滅茶苦茶青姦してた。
『後日、マンドラゴラの言葉:
・・・・・・・・・・・・
(あの人に、他の人に声を聞かせちゃいけないと言われたので、筆談です。あの人はとっても優しくて男らしくって・・・褒めるところを探してたらスケッチブックに書ききれないくらいです。エッチのときはお互い叫び合うんですよ♥)』
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Case3:ダークプリースト
ダークプリーストは、堕落神を崇め、その教えを広めることを目的と掲げ(名目を作り)、愛する旦那を探している。
そういうものであるのが、当たり前なのだが。
「今日も一日、布教活動頑張りましょー!」
「は、はい・・・」
このダークプリーストの旦那である司祭は、堕落神の教えを『説く』ことで、あっという間に信者を増やしてしまうカリスマ布教者となってしまっていた。
「数日前にはトヌカム村の方々が堕落神様の教えを理解してくれて、パンデモニウムへ行ってくれましたからね。さぁ、新しい村へ行きましょう!」
「あの、司祭様?その、張り切るのはいいんですけど・・・」
司祭が張り切る横で、ダークプリーストは股をこすり合わせてもじもじさせている。何故か頬も赤く染まり、息が荒くなっていた。
「どうしましたか?」
「なにも私たちが数日間H抜きにして張り切らなくてもいいと思うの・・・ていうかぶっちゃけ私限界なんだけど・・・」
そう、この二人、新しい村へ旅している間、一回もまぐわいをしていないのだ。もちろん食事、睡眠はとっているが。
「何を言ってるんです。前の村で『教えを説いて』からまだ6日しか経ってないじゃないですか」
「私たちダークプリーストにとってそれがどれだけ辛いお預けか分かってくださらないの?」
なんとかニコニコ笑って話しているダークプリーストだが、その笑った目の奥にはよだれを垂らしたケモノが現れていた。
「こればっかりは我慢してください。『空腹は最高の調味料』ともいいます。お互い堕落欲(要は性欲)を高めてから教えを説いたほうが、皆さんにも伝わりやすいでしょう」
言ってることはシモの話であるのにキラキラと輝いて話す彼の前で、ダークプリーストは笑いながらも性欲の渇望からなのか、ちょっと涙目になっていた。
「・・・それに、私を求めてより乱れて堕ちる貴女の方が、より美しく、好きですから」
瞬間、ダークプリーストの頭でなにかがブツリと音を立て、司祭を担いでケンタウロスが如き俊足を発揮した。
『後日、とある村人の言葉:
いや、意味わかんなかったんだけどもな、突然司祭様?と魔物の娘御が走ってきてだよ。村の真ん中でいきなりおっ始めたんよ。え?何をって?まぐわいをよ。んで司祭様がなんか声高らかになんか説いてくれてな、魔物の娘御はもう乱れに乱れてんだわ。うん。そんで話聞いてソレ見てたらよ、こんなとこ着いてたんだわ。ところで羽の生えたお嬢ちゃん、なんでワシのズボン脱がしておふぅ♥』
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Case4:龍
とある社に住んでいた龍は、ある日、立派な旦那をもらった。その旦那は、そこら一帯の村を仕切り、ありとあらゆる万全な備えをしていた。
農作物の収穫・支出を細かく管理し、干ばつが起きても平気なようにため池を作らせ、嵐が来ても川が決壊しないよう整備させ、村々みんなが平等、かつ無理がないように暮らせるように指揮していた。
おかげで旦那は毎日が忙しく、帳面やら手紙やら筆を手放さない日がほとんどなかった。
「お疲れ様です、貴方」
「おぉ、すまない」
今日も日が落ち夜になっても作業している旦那に、龍が温かいお茶を用意した。
「毎日大変ですね」
「みんなのためだ、私が少し頑張るので済むなら容易いこと」
お茶を飲みながら帳面を見つめる旦那を見ながら、龍は寂しそうに言った。
「でも、天気や災害のことまで気にして管理して・・・私もそこは手伝いができるのですから、少しくらい、休んでも・・・」
「・・・」
旦那は龍の言葉に茶を飲むのをやめ、帳面を閉じた。
「お前の言う手伝いとは、雨乞いのことか」
「はい、干ばつの時は降らせるのはもちろん、普段私が気をつけていれば洪水など滅多に・・・」
「俺はお前のそういうところは嫌いだ」
旦那が発した言葉にぎょっと目を丸くした龍は、わけがわからないやら悲しいやらで落ち着きをなくした。
「ご、ごめんなさい!貴方の仕事に口出しして、機嫌を損ねてしまったのなら謝ります!」
「ん?いや、そうではない。仕事に口出しされて臍を曲げるほど、俺は小心者ではないぞ」
「え・・・え?」
では何がいけなかったのかわからない龍がキョトンとしていると、旦那は龍を見ずに腕を組んだ。
「お前は龍であり、水を操ってくれる神であると教えられた。しかし、お前と婚姻して知ったが、お前は俺の精によってそれが変わると言うでないか。つまり、どれほどかは分からんが、お前は俺との交わりを自由にできんわけだろう。雨乞いしてくれといわれたらまぐわい、洪水となったらそっちに忙しくなる。そんな感じだと俺は思ってる」
旦那は顔を上げ、龍と反対方向を見てしまう。が、わずかに見える耳や首は真っ赤になっていた。
「・・・俺とお前は夫婦なのだ。好きな時にまぐわい、好きな時にゆったりしたい・・・それを自由にするために、俺は頑張っているのだ・・・要は遠回しに私利私欲で動いているのだ。蓋を開けてみればなんと恥ずかしいことか・・・」
すると龍は旦那の言葉に、すぐに顔を赤面させ、旦那に寄り添って耳打ちをした。
『後日、とある村長の言葉:
龍に嫁いだ貢物の男から、龍神様のお言葉として聞いていた川の整備が役に立ったわい。こんな大雨でも川が氾濫せん。畑が荒れなくていいことじゃ・・・そういえば、龍神様の社に「暫くの間、如何なる人も、近づくべからず」とお言葉があったが、なにがあったんじゃろなぁ?』
「まさか、オレがこんな芋侍にやられるとはね・・・」
ウシオニがズシンと倒れる。その目の先には、鉄刀(刃がまったく付いていない鉄の板に刀の拵えをつけた武器)を肩に抱えた侍が立っていた。
「お前の血を浴びると正気でなくなると聞いたのでな。血を出さぬ得物を持ってきたのだが・・・全くずいぶんと図太い女子だ・・・もう日が沈むぞ」
彼らは昼間から闘っていたのだが、すでに夕方を過ぎようとしていた。侍は鉄刀でウシオニに挑み、ウシオニの再生力に悪戦苦闘しながらも、最後にはウシオニを疲労困憊させて膝(?)をつかせることに成功した。
「あーもー、ヤケだ。煮るなり焼くなり、好きにしやがれ」
「いいのか?」
「強いて言えば男を抱けなかったことが未練だけどよぉ・・・ま、気に入った男に殺られるなら本望だよ」
「ほう、拙者を気に入ったと?・・・なら話は早いな」
話は早い、と聞いてウシオニは首を傾げたが、侍は懐から書と筆を取り出し、シャッと縦線を引いた。
「では次の段に移るとしよう。ついてこい」
「・・・は?ついてこい?」
ウシオニが聞き返すと、侍は手元の書を見ながら言った。
「お前を好きにしてよいのであろう?なら今から言うことをしてもらう。
ひとつ、食事を作る修行
ふたつ、着付けの修行
みっつ、礼法の修行
よっつ、・・・・・・」
つらつらと侍がしゃべる内容にウシオニは目を丸くし、そして聞いた。
「お、おい?それってまるで・・・」
すると侍はウシオニに視線を戻し、にっと片方の口角を吊り上げて笑った。
「まるで、ではなく、花嫁修業をしてもらう。
お前は拙者を『好きにした』のだ。拙者もお前を『好きにする』」
『後日、とある家臣の言葉:
いやしかし、お館様の嫁様を見たときは家臣一同目を丸くしたものだ。ゲテモノ好きと呼ばれていたお館様も嫁くらいは人を選ぶと思っていたが・・・まぁ、夫婦仲は国一らしいが、拙者なら耐えられんな』
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Case2:マンドラゴラ
マンドラゴラは、今日も一日、地面に埋まって寝ているものだと思っていた。
(最近、人さえ通らないもんなぁ・・・)
最近、周りの地面から足音も振動も伝わってこない。ちょっとした林道の脇に花を出してずっと待っているのに、人どころか魔物娘さえ通りかからない。
(このままじゃ、お婿さん見つからずに行き遅れちゃうよぅ・・・)
土の中でじんわりと涙を浮かべるマンドラゴラ。
そんな彼女に、足音が聞こえた。
『サクッ、サクッ、サクッ・・・』
(・・・はっ!?人!?男の人!?)
しかも足音は遠くから真っ直ぐ、マンドラゴラに近づくように大きくなってくる。そして、マンドラゴラの前でピタリと止まった。
(わっ、わっ、わっ!人、だよね!?引き抜いて、くれるよね!?)
期待に胸を膨らますマンドラゴラに応えるように、マンドラゴラの花が根元からガシリと掴まれ、文字通り引き抜かれた!
マンドラゴラは、今まで溜めていた声を吐き出すかのように大声で叫んだ!
「っ、き」
「俺のプロポーズを聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!」
しかし、瞬間、マンドラゴラの鼓膜をつんざいた、引き抜いた男の大声にピタリと叫びを止めてしまった。
「俺は君が好きだぁぁぁぁぁぁっ!!!ちょっとおどおどしたその表情ぉぉぉぉっ!!!恥ずかしがり屋な性格ぅぅぅぅっ!!!成長不足なフラット体型ぇぇぇぇっ!!!木の根のような生足や花そのものな頭もぉぉぉぉ!!!全部引っくるめて大好きだぁぁぁぁぁぁっ!!!
この気持ちを、君の叫びで本能に負けてしまうことは認めないぃぃぃぃぃぃ!!!他の奴に引き抜かせるのも認めないぃぃぃぃぃぃ!!!他の奴らが発情するのも認めないぃぃぃぃぃぃ!!!だから遮断するぅぅぅぅぅぅ!!!この大音量の叫びで君の声を!!!土地を買って通行を!!!他の魔物たちに旦那を与えて範囲内での発情を!!!すべてシャッダウンんんんんんん!!!
そして俺は叫ぶんだぁぁぁぁぁぁっ!!!
俺は!!!君を!!!
愛してげぇっほぉっ!?」
男の大音量の告白は、最後の最後に咳き込んでストップしてしまった。
ゲホゲホとむせる男の呼吸はか細く、むせ終わってもヒューヒューと死にそうな息を漏らしている。
そしてキョトンとしていたマンドラゴラは、顔をどんどん赤くしたあと、顔を押さえて、小さく・・・
「・・・きゃあ♥」
このあと、滅茶苦茶青姦してた。
『後日、マンドラゴラの言葉:
・・・・・・・・・・・・
(あの人に、他の人に声を聞かせちゃいけないと言われたので、筆談です。あの人はとっても優しくて男らしくって・・・褒めるところを探してたらスケッチブックに書ききれないくらいです。エッチのときはお互い叫び合うんですよ♥)』
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Case3:ダークプリースト
ダークプリーストは、堕落神を崇め、その教えを広めることを目的と掲げ(名目を作り)、愛する旦那を探している。
そういうものであるのが、当たり前なのだが。
「今日も一日、布教活動頑張りましょー!」
「は、はい・・・」
このダークプリーストの旦那である司祭は、堕落神の教えを『説く』ことで、あっという間に信者を増やしてしまうカリスマ布教者となってしまっていた。
「数日前にはトヌカム村の方々が堕落神様の教えを理解してくれて、パンデモニウムへ行ってくれましたからね。さぁ、新しい村へ行きましょう!」
「あの、司祭様?その、張り切るのはいいんですけど・・・」
司祭が張り切る横で、ダークプリーストは股をこすり合わせてもじもじさせている。何故か頬も赤く染まり、息が荒くなっていた。
「どうしましたか?」
「なにも私たちが数日間H抜きにして張り切らなくてもいいと思うの・・・ていうかぶっちゃけ私限界なんだけど・・・」
そう、この二人、新しい村へ旅している間、一回もまぐわいをしていないのだ。もちろん食事、睡眠はとっているが。
「何を言ってるんです。前の村で『教えを説いて』からまだ6日しか経ってないじゃないですか」
「私たちダークプリーストにとってそれがどれだけ辛いお預けか分かってくださらないの?」
なんとかニコニコ笑って話しているダークプリーストだが、その笑った目の奥にはよだれを垂らしたケモノが現れていた。
「こればっかりは我慢してください。『空腹は最高の調味料』ともいいます。お互い堕落欲(要は性欲)を高めてから教えを説いたほうが、皆さんにも伝わりやすいでしょう」
言ってることはシモの話であるのにキラキラと輝いて話す彼の前で、ダークプリーストは笑いながらも性欲の渇望からなのか、ちょっと涙目になっていた。
「・・・それに、私を求めてより乱れて堕ちる貴女の方が、より美しく、好きですから」
瞬間、ダークプリーストの頭でなにかがブツリと音を立て、司祭を担いでケンタウロスが如き俊足を発揮した。
『後日、とある村人の言葉:
いや、意味わかんなかったんだけどもな、突然司祭様?と魔物の娘御が走ってきてだよ。村の真ん中でいきなりおっ始めたんよ。え?何をって?まぐわいをよ。んで司祭様がなんか声高らかになんか説いてくれてな、魔物の娘御はもう乱れに乱れてんだわ。うん。そんで話聞いてソレ見てたらよ、こんなとこ着いてたんだわ。ところで羽の生えたお嬢ちゃん、なんでワシのズボン脱がしておふぅ♥』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Case4:龍
とある社に住んでいた龍は、ある日、立派な旦那をもらった。その旦那は、そこら一帯の村を仕切り、ありとあらゆる万全な備えをしていた。
農作物の収穫・支出を細かく管理し、干ばつが起きても平気なようにため池を作らせ、嵐が来ても川が決壊しないよう整備させ、村々みんなが平等、かつ無理がないように暮らせるように指揮していた。
おかげで旦那は毎日が忙しく、帳面やら手紙やら筆を手放さない日がほとんどなかった。
「お疲れ様です、貴方」
「おぉ、すまない」
今日も日が落ち夜になっても作業している旦那に、龍が温かいお茶を用意した。
「毎日大変ですね」
「みんなのためだ、私が少し頑張るので済むなら容易いこと」
お茶を飲みながら帳面を見つめる旦那を見ながら、龍は寂しそうに言った。
「でも、天気や災害のことまで気にして管理して・・・私もそこは手伝いができるのですから、少しくらい、休んでも・・・」
「・・・」
旦那は龍の言葉に茶を飲むのをやめ、帳面を閉じた。
「お前の言う手伝いとは、雨乞いのことか」
「はい、干ばつの時は降らせるのはもちろん、普段私が気をつけていれば洪水など滅多に・・・」
「俺はお前のそういうところは嫌いだ」
旦那が発した言葉にぎょっと目を丸くした龍は、わけがわからないやら悲しいやらで落ち着きをなくした。
「ご、ごめんなさい!貴方の仕事に口出しして、機嫌を損ねてしまったのなら謝ります!」
「ん?いや、そうではない。仕事に口出しされて臍を曲げるほど、俺は小心者ではないぞ」
「え・・・え?」
では何がいけなかったのかわからない龍がキョトンとしていると、旦那は龍を見ずに腕を組んだ。
「お前は龍であり、水を操ってくれる神であると教えられた。しかし、お前と婚姻して知ったが、お前は俺の精によってそれが変わると言うでないか。つまり、どれほどかは分からんが、お前は俺との交わりを自由にできんわけだろう。雨乞いしてくれといわれたらまぐわい、洪水となったらそっちに忙しくなる。そんな感じだと俺は思ってる」
旦那は顔を上げ、龍と反対方向を見てしまう。が、わずかに見える耳や首は真っ赤になっていた。
「・・・俺とお前は夫婦なのだ。好きな時にまぐわい、好きな時にゆったりしたい・・・それを自由にするために、俺は頑張っているのだ・・・要は遠回しに私利私欲で動いているのだ。蓋を開けてみればなんと恥ずかしいことか・・・」
すると龍は旦那の言葉に、すぐに顔を赤面させ、旦那に寄り添って耳打ちをした。
『後日、とある村長の言葉:
龍に嫁いだ貢物の男から、龍神様のお言葉として聞いていた川の整備が役に立ったわい。こんな大雨でも川が氾濫せん。畑が荒れなくていいことじゃ・・・そういえば、龍神様の社に「暫くの間、如何なる人も、近づくべからず」とお言葉があったが、なにがあったんじゃろなぁ?』
14/03/15 13:17更新 / ganota_Mk2