12日目昼〜夕方『アイツの出番ねぇから!』
[鬱天の密林]
(ダンジョンLevel 5〜10)
『鬱天の密林・転移門』
鬱天の密林の始まりの地は、小高い丘の上だった。
転移門を出たベルンたちは、目の前に広がる密林に呆然としていた。本当にいわゆるジャングルの地で、さらに太陽が瘴気に包まれてるが故に薄暗く、これで雷でも鳴ろうものならホラーゲームのような場所である。
「つーか、広・・・」
「どんだけ探索すればいいのかしら・・・」
ベルンの呟きに、サティアがげっそりした声色で応えた。
「別にいける場所だけしっかり探索すればいいのではないかしら?ミミル先生だって、ここすべて探索しろなんて言わなかったし、『何がどこで採れたか』を明記せよとの話だったでしょう?」
「みんな、頑張ろ〜♪」
クラリアが続けて言い、ミルキィはマイペースに励ましを入れた。
「・・・よし、みんな、気を引き締めていこう!」
『おー!』
ベルンが改めて喝をいれたところで、全員、密林へと足を踏み入れて行った・・・
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『鬱天の密林・入口付近』
(時刻、13:00)
密林に入ってすぐの場所は開けており、みっつの道に分かれていた。ひとつは開けた道へ続き、ひとつは草木が生い茂る森の中へ続く。もうひとつ道があるが、こちらはさらに陰鬱とした雰囲気を漂わせ、危ない通路であると予想させた。
「まずはここでなんか探すか」
ベルンたちは周囲を探索した。
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[周囲探索、アイテム探し]
[察知難度:5d10
出目(7+10+8+5+2)=32]
[全員、失敗・・・]
(経過時間30分)
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しかし、とくにこれと言ったものは見つからなかった。メンバーは、明るい場に続く道を選び、エリアを移動した。
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『鬱天の密林・入り口付近
→鬱天の密林・ルートAー1』
(時刻、14:30)
開けた道を進むと、大きな広場のような場所に出た。さっきとは違い、草木が空を覆い隠すようなことはなく、木がちらほら生え、草原のように草が一面にざぁっと生えていた。奥には道がもう一本あった。
そこには、三匹の魔界豚が集まっており、食事をしていた。
「うわぁー!でかいのがいるー!」
ラトラは魔界豚を見て、無邪気に駆け寄り、いきなり魔界豚を登り始めた。
「ちょっ!ラトラ!あぶないぞ!?」
「へーき、へーき!」
魔界豚はラトラを気にせず、もしゃもしゃと草を咀嚼している。ラトラから命の危険を感じないようだ。ラトラはさっさと登り、魔界豚の上に座ってぼいんぼいんと跳ねた。
「あははは!たーのしー!」
「・・・子どもか、お前は・・・」
はしゃぐラトラと疲れたようにため息を吐くベルンの姿を見た他メンバーは・・・
(親子みたい・・・)
・・・と、思い、微笑したり、嫉妬したり、何故か赤面して頭を振ったりしていた。
「いい人も乗ったらー?」
「いや、俺は・・・」
その時。
今まで草を食べていた魔界豚が反応し、ぐるんと勢いよく顔を回し、牙をベルンに叩きつけた。
『ばぎぃっ!』
「ぐぉべらっ!?」
「うわわっ!?」
急に動いたため、ラトラも振り落とされかけたが、なんとか堪えた。牙をぶち当てられたベルンは目をパチクリさせた。
『ぶるぅ、ぶるるぅ、ぶるるぁ・・・』
対する魔界豚はベルンを見定め、ギロリとした睨みに加え、軽く息を荒げている。
完全に、『お前は乗るな』の意思表示である。
「・・・はいはい、俺は乗りませんよ・・・」
ベルンは痛む頬をさすりながら、他のメンバーの下へ近寄った。
「・・・だ、大丈夫?痛みます?」
「ベルンく〜ん、痛かった〜?」
クラリアとミルキィがベルンに駆け寄り、ベルンの頬をさすったりしていた。
「ちくしょう・・・人懐っこいと言われる魔界豚にまで嫌われんのか、俺は・・・」
「・・・ベルン、昔から動物には嫌われるよね」
ベルンが落ち込んだように言うと、サティアが思い出したようにつぶやいた。
「そうなんですの?」
「すごいわよ?ベルンったら、犬には吠えられる、猫には威嚇された上引っかかれる、牛や羊には突撃される、馬には後肢で蹴られる、さらにはカラスやハトにまで空中から蹴られたりするんだから。学校付近に野生動物が少ないからいいけど・・・ウィルベル(ベルンたちの故郷)では大変だったんだから・・・」
「・・・な、なんという・・・」
「・・・あれ〜?成美ちゃんは〜?」
その時、真っ先にベルンに駆け寄りそうな成美がいないことに気づいたミルキィが辺りを見回すと・・・
『ぶるぅ!ぶるぅ!ぶぅるぅぁ!』
「兄様を傷つけた兄様の頬を傷つけた兄様の綺麗な頬を傷つけた兄様をにいさまをニイサマヲ・・・」
明らかに興奮している魔界豚に対峙する、槍と盾を構えた成美がいた。
「成美なにやってんだお前ーーーっ!?」
「に、兄様?いえ、この豚畜生を成敗してやろうと・・・」
「やめれ!?今の俺たちが魔界豚に勝てるわけねぇだろ!?周りみろ!?数匹いるんだぞ!?」
「でも此奴は兄様ヲ傷ツケ・・・」
「いいから!慣れてるから!やらなくていいから!とりあえず落ち着け!?な!?」
「・・・兄様がそう言うなら・・・命拾イシタナ・・・」
ギロリと成美がひと睨みしたあと、槍をしまう。魔界豚は興奮をやめ、また草を食み始めた。
「ふぅ・・・とりあえず、探索しようぜ」
ベルンの安堵のため息と共に、みんなが探索を始めた。
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[周囲探索、アイテム探し]
[察知難度:4d10
出目(1、5、7、10)=23]
[ラトラ察知点、30]
[成美察知点、25]
[二人成功!]
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[ハプニング判定]
[運勢難度:5d10
出目(2、7、5、9、8)=31]
[ミルキィ運勢点、40]
[成功!]
(経過時間30分)
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「・・・いい加減離れてくんねぇかなぁ?」
「い〜や〜で〜す〜♥」
探索中、マミーはずっとベルンにくっついていた。追従魔物とはいえ、(ベルンを襲わないとはいえ)サティアたちが睨んでいたのは言うまでもない。
「いい人ー。こんなん見つけたー!」
そんな中、ラトラが嬉しそうにベルンに見つけたものを持ってきた。
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[物品鑑定]
[知識難度:ラトラ運勢点(20)+1d6
出目(2)=22]
[ベルン知識点、21+4=25]
[成功!]
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「これは・・・『タケリダケ』か?いきなりえらいもん見つけたな・・・」
「?なんかあぶないものー?」
「・・・とりあえず、俺には食わせるなよ」
「???・・・はーい」
首をかしげていたラトラは、自分のポーチの中に、『タケリダケ』を入れた。
「あ・・・兄様、こんなものを見つけました」
そこに、成美が足を鳴らし、見つけたものを持ってきた。
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[物品鑑定]
[知識難度:成美運勢点(15)+1d6
出目(3)=18]
[ベルン知識点、21+4=25]
[成功!]
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「これは・・・あ、食用になる草だな」
「さすが兄様♪よくお分かりになりましたね」
「ははは・・・まぁな(昨日見たばっかだからな・・・)」
そこに、サティアとクラリアがやってきた。
「お、どうだった?」
「なんにもなかったぁ・・・」
「申し訳ありません・・・」
ふたりとも申し訳なさそうにしており、ベルンはふたりを慰めた。
「・・・あとは、ミルキィ先輩だな」
その時・・・
「きゃーーーっ!!」
ミルキィの叫び声が聞こえ、全員がそちらを振り向くと、ミルキィが三匹の魔界豚にもみくちゃにされていた。
「ミルキィ先輩っ!?」
反射的にベルンは、ヴィンギナーを抜いて、空に向けて撃った。
『ドキュゥーンッ!』
その発砲音に、魔界豚たちがびくりと震え、慌てて走り去って行った。
「威嚇射撃がうまくいったな・・・先輩、大丈夫で・・・ッ!?」
慌てて駆け寄ったベルンは、動きを止めてしまった。
「やぁ〜ん。べたべただよぉ〜」
どうやら、魔界豚はミルキィに構って欲しかったらしく、舐めていたのがエスカレートし、押し倒してなめまわしていたようだ。
ミルキィの顔や胸が魔界豚の唾でベタベタになり、顔には薄く濁ったものがへばりつき、胸はそれが浸透したせいか服が身体にまとわりついて形をハッキリさせた上、うっすらと肌が透き通って見え・・・
「見るなバカーーーーーーーーーッ!!!」
『ドギャアァッ!!!』
瞬間、サティアの鉄拳がベルンの頬に直撃し、ベルンは叫び声もあげずに錐揉み回転して地面に倒れた。
「先輩、大丈夫ですか?」
「気持ちわるい〜」
「メロンの人、汚ーい」
「そんなこと言わないでよ〜、ラトラちゃ〜ん」
クラリアとラトラはミルキィを介抱しに行ったが、サティアと成美は・・・
「ベルン?あんた、ミルキィ先輩が困ってる姿見て、なに鼻の下のばしてたのよ?えぇ?」
「不健全です、兄様。不健全です」
「・・・なんで俺ばっかこんな目に・・・」
『何か言った?』
『何か言いました?』
「・・・ぃぇ、すんません・・・」
何故かベルンを正座させて説教?をしていた。
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『鬱天の密林・ルートAー1
→鬱天の密林・ルートAー2』
(時刻、16:00)
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ベルンのマッピングが終わったあと、さらに奥の道を進むと、似たような広く開けた場所に出た。先ほどと違うのは、茂みが多く、そこの中央で魔物の群れが肉を食んでいることだった。
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[隠密判定]
[成功率:
ベルン隠密値(6)+ラトラ隠密値(10)
=16]
[成功判定:1d100(百面ダイスなんてあったのね)
出目(09)]
[成功!→魔物に気づかれなかった]
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(ッ、隠れろ!)
ベルンのとっさの判断により、ベルンたちは茂みに隠れた。
「・・・ン〜?」
「どうしタ?」
「なんか物音シタ気がした」
「ふ〜ン」
魔物のひとりが辺りを見回したが、奇跡的にもベルンたちに気づかず、また肉を食べはじめた。
(・・・気づかなかったようだな)(ベルン)
(ど、どうします?)(クラリア)
(あいつらが邪魔で、探索できないわよ?)(サティア)
そろりと首を出したベルンは、魔物の種族と数を確認した。
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[識別判定]
[難度:5d10
出目(1、10、10、3、1)=25]
[ベルン知識点、25]
[成功!]
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(あれはワーウルフだな。数は・・・見えるだけで5人・・・ワーウルフの群れとしては小規模か?いや、仲間と別行動してる可能性もあるな)
(・・・なら、場所変える〜?)
ミルキィの言葉にベルンは頷き、ゆっくり、気づかれないように、ベルンたちは来た道を戻った。
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『鬱天の密林・ルートAー2
→鬱天の密林・ルートAー1
→鬱天の密林・入り口付近』
(時刻、18:00)
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「・・・もう暗くなってきたな」
ベルンたちが入り口付近まで戻ったところで、密林の木が遮ってることもあり、早くも辺りが暗くなりはじめた。
「ここでテントを張りましょうか。入り口が近いから、魔物にも襲われにくいかもですし」
「そだな。よし、テントをはろう」
クラリアの助言もあり、ベルンたちはテントを張った。
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[テント建設中・・・]
(時刻:18:30)
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さて、テントを張り終えた後、ベルンは全員分の夕食を作っていた。とは言っても、非常食キットを湯煎したりしてあっためただけの簡素なものだが。
「・・・しかし、なんで俺一人で・・・」
先ほど、クラリアが全員分の非常食を持ってきて、『ごめんなさい、ちょっとみんなで話すことがあるの。お願いできる?』と頼まれたのだ。それをOKしてしまうベルンもベルンだが。
「・・・なぁ、ひっつくくらいなら手伝ってくれ」
「や〜ですぅ〜。乙女の事情から、やですぅ〜」
「なんじゃそりゃ」
ベルンにくっついているマミーも手伝ってくれず、ベルンは大きくため息を吐いた。
「・・・一体、なに話しに行ったんだろうな?」
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一方、女性陣は・・・
「クラリア、なによ?全員呼び出して」
サティアが不機嫌そうに聞いた。
「エロい人ー、なんなのー?」
「兄様のお手伝いがしたいのですが」
ラトラがぴょんこぴょんこと跳ねながら聞き、成美はそわそわしていた。
「もしかして〜、ガールズトーク〜?」
ミルキィが小首を傾げたところで、クラリアがはぁ、とため息を吐いた。
「・・・嘆かわしい、というべきですわね。皆さん、ベルンくんと一緒に冒険しているからといって、浮かれてるんですの?」
クラリアが見下したように言い、サティアがむっとして口答えした。
「なによ?アンタ、何が言いたいの?」
「今から説明しますわ。これから、私たちが決めなくてはならないことを」
クラリアがピシリと人差し指を立てて言った。
「皆さん?今日はここで野宿となりました。我々が持ってきたテントはふたつです。あれは3人用と銘打たれてますが、実際は4人までなら普通に入ります。ちょっと狭いかもしれませんけど。さて、ひとつに4人入ったとして、残りテントには何人入れます?」
そこまで言うと、全員がハッとした。
そう、その計算から言うと誰かがベルンとふたりで寝れるのだ。
「ちなみにマミーさんには話をつけてありますわ。今日の出発前に、『昼間ずっとくっついてていいから、夜、外の見張りをお願いします』ってね。どうやら、今はベルンくんにくっついてるだけで満足らしいので、了承してくれましたわ。
・・・さて。何で決めます?」
ニッコリと笑ったクラリアを含め、各々のやる気は目に見えていた。
「やっぱジャンケンじゃない?公平にしてやろうじゃないの」
喧嘩前かのようにパキポキ指を鳴らすサティアは、髪の蛇たちさえ目の色が変わっていた。
「ラトラ賛成!あ、ちなみに、『ラトラはグーだすよ』!」
ラトラはぶんぶん腕を振り回しながら、子供っぽい、しかしある程度強力なひっかけを始めていた。
(兄様と添い寝、兄様と一晩、兄様とまぐわいを・・・ユズレルモノカ)
成美はギチギチと顎を鳴らしながら毒を垂らし、目の色を失っていた。
「頑張るよっ!」
ミルキィは・・・安定してやる気を出していた。
「・・・では満場一致で・・・」
クラリアがゆっくり片手を上げ・・・
『・・・最初はグー!ジャンケンポン!』
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ベルンは夕食時、疑問に思った何故なら・・・
1、サティアがやけにチラチラとベルンを見るからだ。
2、クラリアが勝ち誇ったような笑顔だからだ。
3、ラトラが超ご機嫌だったからだ。
4、成美が俯いてあまり食べないからだ。
5、ミルキィが鼻歌を歌っていたからだ。
12/10/05 12:23更新 / ganota_Mk2
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