飽く無き増殖の果て
――数日後――
「皇さま、本日の贄にてございます」
ヴァルレン、いや元ヴァルレン王国の謁見の間には数名の侍女と執事、それに私と贄が佇んでいた。
煌びやかな黄金色を放ち王族の証明ともされた玉座は、今や紫色の触手に包まれぬめり蠢く怪椅子へと成り果てかつての面影すら伺うことは出来ない。シャンデリアは禍々しいまでのショッキングピンクを照らし出し、壁一面は赤と黒に塗り潰された壁紙で覆われている。正常な者が見ようものなら一部精神に支障をきたしそうなほど城は変貌しており、それらを何の異常とも思わない私や執事、並びに侍女らは既に異常なのであると証明する証でもある。
「メ、メリアさん……貴女その姿は……」
眼前に横たえる贄に目をやる。
全身を縄、もとい触手で拘束されもがくことすらも許されない贄は目に涙を溜め必死の願いをしているようであった。これから己の身に降りかかるであろうことを知っているのだろう、彼女らの抵抗具合を見ればそんなことはすぐにわかる。
だが、私は自分で言うのもあれだが相当いやらしい性格らしい。こうやって必死に抵抗する姿を見させられると、その顔を絶望の色に染め上げることがこの上なく愉悦に感じてしまうのだから、そう思っても仕方のないことだ。
一切の希望など見せず、絶望の奈落へと突き落としてみたいものだと想起してしまうのだからこれほど酷悪で惨たらしい性格には自分ですら恐れ入ってしまう。
「本日の贄は二名。まずこちら、蒼髪の者は隣国の騎士兵長プリシラ=ザルツドルフ。齢26、名門ザルツドルフ家の長女であり次期当主を期待されている存在とのことです」
「もう一人金髪の者は皇さまもご存知の隣国の王女アンジェリカ様にてございます」
じゅるり、と触手が期待の音を上げる。
その音を聞いた侍女らも赤い目を煌々と輝かせ、より強く贄を縛り上げる。
贄を拘束する侍女らも、私と同じように体から触手を生やし粘液に塗れる同種となっているので彼女らは私の配下であり、同属であり、また家族である。
俗世を離れ、生命として次のステージへと昇華した言わば新人類であるのだ。人の数倍生命力が強く、切断されても再生する体を持ち、二つあった腕を数十本までに増やすことができた新たなる人類。
……まぁ人はそれを魔物娘のローパーというのだがね。私としては新人類という呼び名を提唱したい。個人的に。
「王女、もはや魔に墜ちた者には如何なる言葉も無意味です」
「し、しかし……この目の前の者があのメリアさんですって?信じられ……ません」
「信じるもなにも、まさかこの顔を忘れたとは言わせませんが♪私とは親しい仲ではありませんかアンジェリカ」
女騎士はキッと私を力強い目で睨みつけ、アンジェリカは未だに眼前に佇む私を私と認められないでいるらしい。想像通り過ぎる光景だ。
女騎士の気迫は拘束を解こうものなら今すぐにでも首元を跳ねられんとするものである。このようなつわものがごろごろと転がっている隣国の騎士団はやはり素晴らしいものであるなと再認識するのであった。
「アナタたち少し力を抜きなさい。跪け」
「ぐッ!?」
「あぐぅっ……!」
玉座に座る私が指を差し出しそう命令すると、私の背後に佇む執事を除きその場にいる全員が片膝をつく形を取り地に伏せる。
すでに床にうつ伏せに拘束されている贄の二人は、さらに床にめり込むように頭を垂れる。女騎士からの甲冑からはメキメキと軋む音が聞こえ、アンジェリカからは苦悶のうめき声が聞こえる。
見えざる言葉の重圧により贄らは恐怖の表情を描き、また自分は一体何をされているのかという疑問の念で頭が一杯になっていることだろう。既に敵と見なしている相手の言葉に無意識のうちに従ってしまう奇怪さ、それも相手は人外ときたものだ、不思議がるのが当然と言えよう。
とまぁこうも語っておいてなんなのだが、種を明かしてしまうとなんのことはない。
ただ単純に重力魔法で謁見の間にかかる重力を増しただけの話である。魔術に知識のある者ならすぐに分かってしまうものだろう。
だがこれに「跪け」という言葉と王族という身分が合わさると想像を超える効果を発揮することがある。見えざる言葉の重圧は数倍にも増強され、あたかもそれは言葉自身が質量を持ち己の身に圧し掛かっているのではないかと錯覚するほどに、だ。
「ぐ、ぅ……なんだこれは……」
「メリア、さん……どうして……」
こうして遊んでいるのも面白いのだけれども、すぐに飽きてしまうのが私の悪いところでもある。
前座はオシマイだ。
これからが本当のお楽しみの時間である。我が国家を連綿の繁栄へと結び、王族を恒久のものとする儀式を始めようとしよう。
重力魔法を解除すると侍女らはすかさず動き出し、玉座に座る私を敬うかのごとく腰を低くしながら列に並んだ。
私はうつ伏せになる贄の二人にこう告げる。
「えーコホン……首を挙げ私を崇めなさい贄どもよ。お前達はこれから我が一族の一員になるべく選ばれた特別な存在だ。お前達はこれから新人類として人を超えた存在として生まれ変わり我が国家を繁栄させるため尽力しなければならない」
「そんなことされてたまるものかっ!私は認めないぞっ!」
「メリアさん……あなた本当に……」
「なれどお前達は心の奥底に醜い心を宿している。私には手を取るようにわかるぞ。
女騎士よ、お前は人を切り伏せた時に身もだえするほどの快感を感じている。戦場とは快感を感じる場であり、生と死の狭間においてお前は変態的趣向を晒し出し快楽を望んでいる。戦争の経験を思い出し自慰に耽っているのだろう」
「ち、違う!そんなことは、ないッ!嘘だ!」
「女騎士さん……あなた、そんなことを……」
「騙されてはなりません王女!!う、嘘に決まっています!!」
「アンジェリカよ、お前はその善良な人柄とは裏腹に酷く邪な心を宿している。人々が自分の人気に寄り添い親しみを感じてくれていればそれを愉悦とし、貧しい人々に配給をすればそれを優越感とし、男が寄ってくれば女豹へと姿を変える。慈愛の心など仮初であり、本心は自己中心的で優劣をつけたがるまことに下等な心の持ち主なのであろう」
「ひ、ひどい……私はそんなこと、思ったことはありませんことよ……」
「そうだ!王女は潔白だ!私と王女に関して訂正してもらおうか!」
「嘘と嘘と見抜けぬ盲目の騎士よ。今からお前の目を我らと同じ赤黒のまなこへと変えてやろう。清々と叫ぶといい。『私は戦いで感じちゃう変態です♪』と」
「ふっ……ざけるな!!いくらメリア様と言えど、もはや容認しかねる!!くそっ、離せっ、離せェッ!!!」
もはや女騎士が私を見つめる目付きは、一国の姫を見る目ではなく家畜の豚を見下したような目付きであった。
私を見上げながら見下しているその光景が何とも面白おかしく、つい声高らかに笑ってしまう。女騎士が私を家畜の豚程度としか見てないとしたとしても、私は女騎士のことを道端の塵程度にしか思っていないものだから尚更おかしいものだ。
私はいつでも彼女を造り替えることができる。勿論文字通り造り替えるのだ。だけど私はこの期に及んでさらに面白いことを思いついてしまった。
「これから贄の儀式を始める。侍女たち」
「「はっ、皇さま」」
「貴方たちの日頃の働きに免じて今日は片方好きにしていいわよ♪そうねぇ……」
私がそう言うと侍女らは触手をピンと剛直させ、性欲という名の期待を今か今かと待ちどおしくしている。
ある者は股間から生える極太の触手をしごき、またある者は筒状の触手を意味深に蠕動運動させ先端から粘液を垂れ流し恍惚とした表情だ。
触手のどれもこれもが背徳的なデザインを醸し出しており、魔界のアート展に出展しようものなら受賞総なめ間違いなしとでも言わんばかりの造型である。
「じゃあ女騎士で。私はアンジェリカの相手をするから、貴女達は女騎士の相手をシテ頂戴♪」
贄を見下す私の満面の笑みは、魔物からしてみればごくごく普通の笑みであるのだろうが、ただの人間からしてみれば悪夢となって思い出さざるを得ないほど歪んだ、そういう類の顔だったに違いない。舌なめずりをし、口を水棲生物のようにぬめらせると赤々とした粘膜が外側から見える。その姿は言葉で例えるならば"淫"そのものであった。
ギンギンにいきり立つ侍女たちは一斉に女騎士の方を向くと濁流の如く襲いかかる。
「や、やめ、やめてくれっ!!私はッ……私はまだこんなところで……」
「ンふふ♪もうどう足掻いたって無駄なことを。お前は、人間じゃ、なくなるのだ」
「やめろっ……やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめ、ろ、やめ……
う…………うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
侍女たちの大量の触手が女騎士を嬲り始める。
拘束され続けている女騎士は四方八方を侍女に囲まれ、触手に覆いかぶされて始めていた。鎧の隙間から侵入するこの上ない不快感と気持ち悪さに、気丈を振舞っていた女騎士の声から恐怖が漏れ出す。
ゴトリ、ゴトリとまたたく間に甲冑は外され女騎士は丸腰へと変わり果ててしまった。
「たっ、助け…………王女!!助けて、ください!!王女ぉ!!!!」
触手に覆われ、どろどろの粘液に包まれながら女騎士は最後の力を振り絞って手を差し伸ばした。
もやは騎士のプライドなどそっちのけで、今はただ助かりたい、逃れたいというごくごく単純明快な生物としての本能が働いたのだ。
女性がローパーに襲われるということが何を意味するか。それを知っているか否かでは、恐怖のあり方というのがまるで違ってくる。
何も知らない者は、魔物娘に襲われたという恐怖に怯えながらも快楽に身を任せていたらいつの間にかコトが終わっている、というのが大半である。無知なるがゆえに快楽に順応することが出来るのだ。
だがしかし、ローパーの生態を知る者ではどうなるか。それは卵を産み付けられ、自分が自分でなくなっていくその経過を自分自身で実感しなければならないという別次元の恐怖が存在する。人の身をしていながらも確実に魔物となってしまう未来を決定付けられたその瞬間、勝敗の決まっている葛藤が始まるのである。快楽に身を任せてしまったら負けだと思いつつもオトコを食べ漁りたいという魔物としての感性がその身を襲うのだ。
私がそうであったように。いや、私は若干イレギュラーだったけども。
故に女騎士は手を差し伸べる。
あのような者達にはなりたくないと心から願い、救いを求めるために最後の希望をアンジェリカに向けて手を差し伸ばしたのだ。
そして、アンジェリカは女騎士の願いを感じ取り、彼女の手を取―――
「ご、ごご、ごめんなさい……」
「な……な、ぜ……!!」
差し出された手を、アンジェリカは掴むことはなかった。
女騎士の顔色がサーッと青白くなるのが遠目で見てもわかる。この瞬間がこの上なく爽快に感じる私はやはり相当歪んでいるのだろう。
気が付けば自分の股間がいつにも増して粘液を放出しており、絶望に染まる女騎士の表情が私の性癖にピンポイントに突き刺さり、ジュクジュクと粘液の放出を促している。
「ひぃぃぃ!!やめろっ、やめ…………んあああああああぁぁl♪♪♪」
再び侍女たちの中へと引きずり込まれた女騎士はその姿を最後に、もう二度と人間の姿を保つことは適わなかった。それは夥しいまでの触手に包まれる彼女の嬌声が物語っているのは誰が見ても明からであるからだ。
私は触手を使って玉座から降りると、横たえるアンジェリカの側に寄り語りかける。
「おやぁ、おやおやおや、アンジェリカ様ともあろう者が他者の救いの手を拒むとはどういう風の吹き回しなのかな」
ククク、とほくそ笑む私とは対照にアンジェリカはガタガタと振るえその視線の先に異形を映す。身体のいたるところから触手を生やし、その一本一本が異なる造形をしているものだから多少アンバランスと思われても仕方のないことであるが。
ともかく。
今の光景を例えるならば獅子と子兎が対面しているとでも形容すればいいだろうか。生物的にどう足掻こうとも決して不可能な抵抗という場面はこういう場面のことを意味するに違いない。
すでに侍女たちの拘束は解けているのにも関わらず身動きのとれない彼女。頭では逃げろと思っているのだろうが、体がすくみあがっていうことが利かないのだろう。身動きをとらないというよりは、身動きがとれないと言った方がいい。
「わ、わたくし、はっ……!なんてことを……うぅっ!」
「そうやって泣いたフリをしたら今までは誰か彼かが助けてくれたのだろう。だけど今は助けなんて来ない。来るわけがない」
「そ、そんなこと……」
「手助けすれば自分も巻き込まれる。どうせ手助けしたって適いっこない。それよりも逃げるチャンスなんじゃないか。大方そんなところだろう。
アンジェリカ、アナタ一国の王女としてはこの上ない最低な性格だけど……うん、いいじゃないか♪」
「ひっ!!」
「そういう人間性の欠片も見えないクズ中のクズほど逆に私の一族に加えたくなる♪ふふふ……はははははは!!!」
私は全身の触手を一片に広げ、小動物のようなアンジェリカを押さえつける。
その姿はまるで羽を広げた孔雀を思い出させる様な姿だが、残念ながら孔雀のような美しさは皆無であり、触手と糸引く粘液が扇状に広がっているだけの気味が悪い光景でしかなかった。孔雀には失礼かもしれないな。
四肢の拘束用にまずは4本。
エキス注入用の1本。
粘液分泌用の3本。
愛撫用の2本。
寄生用の特殊なものを2本。
そして最後に産卵管を1本。
それぞれが異なった形状をしているが、どれも統一して言えることはこの上なくグロテスクだということだ。
拘束用の触手は蛸の吸盤のようなものがついているし、エキス注入用は小さな注射針のような形である。産卵管は筒状になっておりいつでも私の卵を放出できるような生々しいデザインだ。
私が欲しいと望めば、身体はその要望を応えてくれるかのようにそれぞれに特徴のある触手を生やしてくれる。ああ、新人類とはなんとすばらしいものか。まぁこの触手は私だけの特別製のようであり、侍女たちは愛撫用と産卵管しか持ち得ていないようだが……細かいところは気にしていない。
「その童顔の残す心の奥底には偽善で塗り固められた醜い心が眠っている。私はそういうところが好ましいのだ」
「や、めっ……はなしてっ!!いや、だっ!助け……」
「その助けてという願いをお前は今さっき見て見ぬフリをしたではないか。ならばお前も見て見ぬフリをされても文句は言えまい?まぁ見て見ぬフリをする者など誰もいないのだがな!」
「や、やめ……いやぁぁぁぁぁ!!!!」
愛撫用の触手でアンジェリカの服をまさぐり、そして一斉に破り捨てる。
純白のドレスの内側からは日焼けのしていない健康的な肌色が姿を現し、なだらかなカーブを描いている。ぷっくりと膨らんだやや小ぶりの乳房がふるふると振るえ、その頂には小さな突起がピンと突き出ていた。
実に芳しい。
「口うるさい小娘にはまずこれが手っ取り早いか♪くくく……」
「え、あ――――んむぅっ!?!?」
はぁー、と私は深呼吸するとその刹那アンジェリカの唇目がけて己の唇を合わせ交える。
じたばたと抵抗しているようだが4本の触手の拘束の前にはその抵抗も無意味というものだ。手足の筋肉がピクピクと動いているだけで、身動きの一つも取れていない。弱者がどう頑張ろうと強者を上回ることなど無理なのだからな。
私は右の腰から寄生用の触手を1本這い出させる。
「ぷはぁ――さて、コレを使って今から何をするかわかるかな♪」
「な、なにを……?」
その触手は他の触手のどれよりも激しく動き回り、その姿はまるで狂い舞い踊っている芋虫のような姿だ。
この寄生用触手は私の一番のお気に入りであり、そして一番凶悪なものであるといっても差し控えない。
1本は人の腕ほどの太さの触手。もう1本は目には見えぬ細さの超小型の触手でありそれぞれが同じ寄生用でありながらも異なる用途を持っている。
「では……覚悟したほうがいいぞ♪」
「え、な、なに……んむむぅっ!?!」
まず私は太めの触手を体内にしまい込むと、もう一度アンジェリカの唇を合わせる。
そしてアンジェリカの唇、歯を開かせると、私の口腔内からその太めの触手を発現させ突き出させるのだ。
でゅるん!
「!?!?んむぅうぅ!!ん゛ん゛っー!!」
当然行き場のなくなった触手は私の口腔内を渡り、相手の、アンジェリカの口腔内へとねじり込み侵入していく。
アンジェリカの抵抗が今までで一番強く感じられると、私もついその気になってしまい決して唇を外させまいと力強く押し付ける。私の内側から触手が出て行く感覚と同時に、彼女は未知なる存在を無理やり口腔内にねじ込まれているというこの上ない恐怖を感じ取っているのだろう。
大きく目を見開き上下左右を見渡しもがき苦しむ彼女を私は快感に浸りながら眺めていた。
飲み込みたくないと思うアンジェリカの思いや虚しく、暴れまわる触手の力には耐えることが出来なかったらしい。彼女の閉じた咽頭はすでに触手により開かれてしまっており、嗚咽を鳴らしながら触手を飲み込んでいく。
噛み千切ろうとしていたらしいが、想像以上の弾力性にその行為は徒労に終わり、吐き出すことも適わないこの行為にただただ蹂躙されるしかないのである。
やがて私の中からすぽんと触手が抜けると、最後にはするりとアンジェリカの咽頭、食道を通り胃まで通り抜けてしまったようだ。寄生用の触手の一本が全て彼女の中へと入り込んだ。
これでもう、彼女は9割方墜ちたも同然。ふふふ。
「あ、あああぁぁぁ…………なに、これ……あぁぁぁぅぅ!!?」
「どう?お腹の中で触手が暴れる快感は?言葉にならないでしょう」
「おか、し……こんなの、おかし…………はぁぅ!♪」
アンジェリカの身体の中で私の一部が暴れまわっている。
頬を高揚させ必死に抵抗しもがき苦しむ彼女の姿はそれだけでそそるというものだ。私の中でふつふつと燃え上がる何かを感じる。
彼女の体内へと侵入(物理的に)した触手はしばらくの間胃で暴れ回ると、やがて次は腸へと進み、そこでようやく吸収され全身へと行き渡る。
いや、吸収されるというのとは少し違うな。触手は自らの意志を持って無理やり全身へと行き渡るのだ。血液の流れに乗り体の隅々まで行き渡る魔力を孕んだ触手は人間の細胞の一つ一つを造り替えてゆく、その生命の神秘たるや……
「うううぅぅぅうっぅっぅ……あふぅぅっ……」
瞳孔を過度に縮瞳させ、半開きの口からはだらしなく唾液を流している。一国の王女とは、常に人民に慕われる高貴で清潔な存在でなければならない。だがその身分とはなんだったのかといわんばかりの崩落ぶりには流石の私も心の中で勝利の拳を挙げてしまうものだ。もう少しで彼女を私たちと同じ仲間にすることができる、そう考えると心が高まる。
私も先日まではアンジェリカと同じような身分であったのだが、人でなくなるとそういう問題はいかに低俗な問題であったというのを改めて思わされたものだ。
未知なる感覚に体を振るわせるアンジェリカ。その姿を見守る私はいてもたってもいられず、すぐさまもう一つの触手を彼女に植え付けることにした。
「た、たすけ……やめ、や……やだ、やだ、やだ、やだっ!!ああっ!」
「恐れる必要はない……さあ、受け入れるの♪」
「あっ――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛がががががっ……!!」
ずるるるるる!!
私は指先から糸よりも数倍細い目に見えぬ触手を生やすと、アンジェリカの耳に指先を突っ込ませた。
触手は私の指を抜け彼女の耳の奥へと突き進み、鼓膜を突き破る。そして中耳、内耳へと進み聴覚神経へとたどり着くと、それを伝い一気に上行し脳内へとたどり着くのだ。その間わずか20秒。
痛みなど当然無く、むしろ耳が性器になってしまったのかと言わんばかりの快感が彼女を襲う。鼓膜はさながら処女膜に例えることができ、それを失うということで初めて私の支配下、もとい家臣になることを証明する物理的な証拠なのである。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!頭がっ!!割れ……ぐううぅぅぅ!!」
「我慢すればするほど辛くなる。それならばいっそ全て身を委ねてしまえば……」
「わっ、わたくしは……王女、なので、す!!こんなとこ、で……」
「王女だから、何?気持ちいいことは我慢しなければならないの?それは平等じゃぁない♪」
「あ、貴女にもっっ……志すモノがあったのでは、あ、あ、ありませんことっ……?」
「私はただ、皆が皆平等に平和暮らせる国を目指しているだけ。だけどその為には基盤づくりをしなければならないの。たくさんの国を吸収し領土を増やすために、ね♪」
「そそ、それは単なる……貴女のエゴにすぎません…………平等でもなんでもない、ただの侵略です、わ……」
「好きに言うといいわ。ここでは私がルールなのだから。王である私がそうしたいと望めば全てがそうなるようにできているの」
「こ、の……暴君……貴女には、し、失望しましたわ……」
「強がっているのも今のうち♪」
脳内に侵入した触手はアンジェリカのありとあらゆる神経活動を支配する。自律神経から運動神経、感覚神経、さらには精神活動さえまでも。そして彼女が何を考えているのかも、母体である私には全て筒抜けなのである。
「アンジェリカ、あなたもう半分魔に染まっちゃってるのよ。もうおしまいよ」
「ぐ、くく……半分残っていれば結構ですわ……半分あればまだ王女としての誇りを取り戻、せる……」
「そう。じゃぁ――」
「全部染まってしまえ♪」
儀式の最終段階へと取り掛かる。
体の自由の利かなくなったアンジェリカは私の触手に自由に踊らされるだけである。両足を広げられ、女性器をおおっぴろげにさらけ出す体勢になってもすでに抵抗する気力さえ持ちえていなかった。
脳内に侵入した触手がアンジェリカの思考を魔物へと書き換えているのも抵抗しない一因と言えよう。嫌悪する表情を見せながらも、鼓動で揺れる胸と荒い吐息が否応なしに私をその気にさせてしまう。
「ふふふ……ねぇアンジェリカ、ローパーって魔物知ってる?」
「聞いたことは、ある……が、見たことは無いし生態も知りませんですわ……」
そう聞いて私の剛直がいきり立つ。
無知なる者をこれから犯す楽しみほど快感なものはない。
知らぬが仏と言わんばかりの情報を全て手遅れになってから相手に与えるという愉悦感は一度しか味わえぬことであるが故にそれ相応の快感を私に授けてくれる。
ああ、なんと甘美なことか。
私は下腹部、丁度へその下部辺りから生える筒状の触手を伸ばすと、その先端を巧みに操りアンジェリカに秘部に近づける。
半分は抵抗しながらも、半分は膣を湿らせながら待機しているという奇妙な感覚に板ばさみにされアンジェリカは困惑しているようだ。
「それじゃあ、お互い楽しみながらお話しましょう♪」
「くそっ……からだが、いうことを……ああぅっ!♪」
ぬぷ……
ずぶ……
触手をアンジェリカの内に挿れると、一際体を大きく跳ねらせメスの叫びを上げる彼女。
ローパーを知る者ならばこの状況ですぐに半狂乱になるほど泣き叫んでいるところであろうが、そうしないところを見ると本当にこの王女はローパーの生態を知らないのだろう。流石の私も罪悪感というものを感じかねない。
いや、実際にはそんなもの感じるわけが無いんだけども。建前的にそう言ってみた。
「あはぁ♪いいわぁアンジェリカのおまんこぉ♪キツキツで……ってあら、これ」
何か膣液とは異なる生暖かいものを感じ、ふと接合部に目をやる。
と、そこにはま真っ赤な鮮血がぶちまけられており、触手と膣口が末恐ろしいまでの赤色に染まっていた。
「アンジェリカ、まさかアナタ処女?」
「…………っ」
ぷい、と顔を横に逸らす彼女。
あああああもうそんな仕草をされると色々と情欲をそそられて制御が利かなくなる。
「まぁ王女という身分がらそういう機会もなさそうだから仕方がないといえばそうなるけどさ」
「と言うか、どうして初めてなのに痛そうにしていないのかなぁ?♪♪」
「そっ、それは……わたくしにも、わ、わかりませんこと……よ……」
脳内の触手が痛覚を快感に変換しているのだろう、というのはすぐさまに理解できる。
ああ、アンジェリカ。以前はあんなにも忌み嫌っていたのに、今となっては私のかわいいかわいい家臣だ。そんなかわいい者には特別に魔力濃度の高いアレを授けてあげようと私は思った。
触手を激しく出し入れしながら、私は自分の体内であるものを精製している。
「ふふ……ローパーっていうのはね、あん♪ちょっと変わった魔物なの」
「ぁ、ぁンっぁ、あぁ! 」
「♪♪元々は卵の殻みたいに丸い球体をしてそれを『ローパーの卵』って言うんだけども」
「それが人間の女性の体に寄生することによって発芽して『ローパーの幼生』という魔物になるの」
「ぁ、ぁう、あ ……ふしぎな、魔物ですわ……んんっ!」
「でしょう♪でも幼生はあくまで幼生であって、成体になるには魔物娘恒例の精液が必要になるわけぇ♪」
「オトコの精液を貰って初めて『ローパーの成体』になるわけなのよねぇ♪」
「め、面倒くさい魔物です、こと……あふぅっ♪ぁぁ、ハァ、ハァ…… 」
ずぞっ!
ぐじゅぅ!
と重く淫靡な水音が響き渡る。
王女としての気質は半分保っていると豪語していたアンジェリカであったが、はたから見ればそのような姿など皆無であり、ただただ快感によがり腰をくねらせている女の姿しか見えることができない。
もはや私の前で嬌声を上げる女は一国の王女アンジェリカではなく、ただ本能のままに欲望を貪るメスだ。食べたい時に食べ、寝たいときに寝て、性交したいときに性交するただのメスであり私の忠実なる家臣。
もうすこし持ちこたえてくれるかと思っていたが……やはりただの人間では私の支配からは逃れることはできないらしいな。多少魔法の腕はあるアンジェリカならばとも思ったが、結果はこの有様である。
同時にアンジェリカの初初しい膣を堪能し、私もそろそろ己を我慢出来なくなりつつある。
女性の初めてを人間の男性でなく、人外の私が征服しているというこの上ない優越が快感を加速し始める。
「うふふ♪……しかもローパーはただでさえ妊娠しにくい魔物娘でも特に子供を作りにくい体質らしくてね」
「だからある特殊な方法で同属を増やしているの♪」
「あっ……ン、ある特殊な……ほ、方法?」
「それはね……『ローパーの卵』を人間の女性に、産み付けてしまうの」
「奥深く、産み付けられた卵は胎内で根を張り、やがて弾けて発芽する……♪」
「へ、へえ……それはそれは、恐ろしいです、わね……」
アンジェリカの顔の雲行きが怪しくなる。
くく、くくく、ハハハっ。
そう、その顔だ、今自分が何をされているのかを実感し、抗いようもない現実に悲観するその顔。
タマラナイ。
私の触手、いや産卵管が興奮に呼応し一際太くなる。
「あ、あうっ!!おっき……ぁぁ、ンぅ!はぁう……」
「あの、メ、メリアさんっ……ひとつ聞いても、よろし、いです、か」
「なぁに?何でも聞いてアンジェリカぁ♪」
「あぁ……、アッ 、その卵って……ど、どうやって産み付け、るのです」
ああ、ついに聞いてしまったのか。
言いたくはなかったけど。
でも、聞かれちゃぁ言うしかないよね。
知らぬが仏なのに、聞いてしまうんだ。
「ふふ……それは勿論魔物娘だからね、セックスしかないけど?」
「…………ま、さ……か」
彼女の表情は先ほどの女騎士同様、青ざめた絶望の色が出始めている。
「相手の子宮の中に直接産み付けるというわけ♪特に何のひねりもないけどそれがまた気持ちいいんだよね……ふふ、っくくく」
アンジェリカの青ざめ、疑問めいた表情はあと一つの答えだけで結果へと導く、そういった表情をしていた。
もはや今更どう願い乞うたところで結果は代わることはないのだが、最後くらいは私から親切に教えてあげるとしよう。
――ヒトとして最後の瞬間に。
「ねぇ、ローパーってどんな姿か知ってる?」
「や、やめてっ!し、しし知りたくない、知りたくないッッ!!言わないで!!」
「下半身はスライムみたいにドロドロで……」
「やだ、いやだ、いやだ、やだ、やだやだやだ……!」
「全身から触手を生やして……」
「言わないで言わないで、言うな言うな言うな言うな言うな言うなッ!!言うなぁッーー!!!」
「ねぇ、そんな魔物見たことない?」
「そう、まるで私みたいな!」
「ッ――――!!!!!!」
アンジェリカは絶叫していた。
まさかこんな声を出せるだけの力が彼女の中に残っていようとは思っていなかっただけに少々驚きである。本能の奥底からわきあがる力が、これが瀬戸際とばかりに荒々しくアンジェリカの体を駆り立て、拘束を振りほどこうと遮二無二、四肢を暴れさせている。
だが、アンジェリカを拘束する触手の力は頑として揺るぎもしない。
「ハハハハハッ!!!!!ありがとうアンジェリカ、最高のオカズを私にくれてありがとう!すぐに楽にしてあげるからね♪」
「わ、わた……わたくし、がっ……あぁっ!!わたくしが、消えっ……」
機は熟した。
寄生した触手は完全に同化し、はやく卵が来るのを今か今かと待ち構えている。
脳内の触手はアンジェリカの人間としての自我を貪り始め、触手自らが持つ魔物としての自我を刷り込むために根を張り始める。神経線維の一本残らずを魔物として生まれ変わらせるために。
「あはっ♪ほら、見テっ!!私の卵……今からアンジェリカにあげるね♪」
「こっ、来ないで!!いやだっ!動けよっ、体動けよぉ!!ああああぁぁっぁぁ!!」
私の下腹部がブクブクを泡立つような音を立てた。
卵が産卵管の根元に行き渡る。
その音がアンジェリカには私が嘲笑う音に聞こえているようであった。
雌として生まれ持った本能の奥底で、アンジェリカはまざまざと悟る。
自分は今から、この魔物と同じになってしまうのだと。王女としての誇りを死なせる残酷な運命を、拒むこともできず……
「や……めて……」
全生命をかけて懇願するその姿は今となっては虚空にすがるほど絶望的な無慈悲である。
ブクブク――とまた私の下腹部は嗤った。
ぐじゅり
一際大きな音を立てると、卵のうちの一つが産卵管を通り始める。
握りこぶし大の球体は、徐々に徐々に、根元から先端へと前進する。
その姿はまるで胎児が子宮から産道を通り外界へと飛び出る、出産に近いものを感じざるを得なかった。
「あはぁぁぁ♪もうすぐ……もうすぐ……ほら」
毎度の事ながら、この瞬間は自分自身意識が飛びそうになるほど強力な快感が迸るものだ。
世の男が射精するときも恐らくこれに近い感覚なのだろう、そう思いながら出産の喜びも同時に感じるという絶頂と幸福の両極とが合わさり天上の至福を味わう。
私はすでに産卵管の前後運動は止め、ただひたすら卵が射出されるのをこの体と目で見守っていた。
アンジェリカは必死に抵抗を試みるも、もはや彼女の体力は限界に達しており、ましてや運動神経を魔に支配されている彼女がこの場から逃れようなど……
根元を渡り、中腹まで通過し、やがて先端部分へと移動する卵。
「あンっ、も、もう……出るよっ♪あはっはぁぁ♪子宮に、植えるよぉ!!♪」
「――――」
もはやアンジェリカの声は裏がえりを通り越して音を発していなかった。空気をかすれる悲痛な音だけが両者の耳を吹き荒ぶ。
卵が産卵管の先端部分にまで近づくと、私は先端を思いっきり深く差し込み子宮に確実に、正確に着床させるために身を震わせる。
「出るっ……出るぅッ!♪!♪」
「ぁ――!!ん゛ん゛ぅ!!」
卵はまず産卵管を隔ててアンジェリカの膣を通過する。
膣口を通るときに握りこぶし大のものが彼女の内へ入るのかという問題は、すでに体の半分以上が魔に犯された彼女の体では杞憂に終わり、すんなりと内部へと侵入した。
やがて、膣を通り、子宮口をねじ開け。
そしてついに子宮へとたどり着き、全ての工程が終わると……
「アッ……イクっ、産むよっ……出、る……っ♪」
「あぅ、えふっ、やめ、もう……や――――」
ぼびゅぅぅ!!
ぐじゅっ!
「ああああああぁぁぁぁッッッ♪♪♪!! 」
「はあぁんんんんんんんぅ!!!」
私は全身を震わせアンジェリカの胎内に卵を放出した。
びゅくっ、びゅくっ、と蠕動を続ける産卵管は卵と同時に大量の体液を彼女の胎へ放出しているようだ。少しでも確実に卵と子宮を定着させるように、悪意を持ったそれは際限なく出続ける。
「あっ、アハッ♪♪マダ、出すよッ!!ハッ、ハァ、あ……あぅぅうっぅぅ!♪♪」
一つ目の卵が産卵されたのをきっかけに、私の中から二つ目、三つ目と立て続けに放出され彼女の内部へと産み落とされるのがわかる。私の卵を受け取ったアンジェリカの腹部はまるで妊婦そのもののように膨らみ、膣口からは私が流し込んだ体液が行き場を失って漏れ出ていた。
産み付けられた卵はその瞬間にすかさず子宮内膜へと癒着し人体と結合し始める。そうしてしばらくの後に皮膚から触手が突き出し幼生となるのだ。
そうなればもう彼女も立派な新人類、もといローパーとして転生したも同義である。
ああ、今ここに我が一族の一員が増えた。実に喜ばしいことだ。
「あぁぅ……おなかぁ…………ははへへえ……」
私が彼女に卵を産みつけたと同時に、彼女の中から人間性が消失したのだろう。
空笑う彼女は胎内の我が子が愛おしくてたまらないとでも言うかのように、優しく撫ではじめたのだ。その姿は母そのものである。
瞳は黒と赤に濁り、融けはじめる下半身。
胸部と下腹部には私たちと同じく黒紫色の邪悪なレース模様が浮かび上がり蠢きだす。
「あう、あふ、うへー……なぁにこれ、アタマとろけるのですわぁ……オトコぉ、オトコほしぃ……」
「フフ、アンジェリカ。オトコの前にアナタには素晴らしい服を用意しているのよ♪あんなドレスよりも断然美しく……気持ちいい最高の服をね」
「はぁぁへぁ……メリアお姉さまぁ……わたくしめにもっとタマゴをぉ♪オトコをぉ♪」
「ほぅら、私を感じなさい。私の目を見なさい、声を聞きなさい、私を肌で感じなさい。頭の中から細胞の隅々まで、全てが私色に染められているのよ。私に委ねれば全てが気持ちいい、私を信じれば全てが上手くいくの……」
膨らんだ彼女の胎に再び産卵管を奥まで挿し込むと、目を血走らせながら今度はアンジェリカの方から自ら進んで腰を降り始めた。崩れ落ちる下半身など目にもくれず、ただひたすらに私の産卵管を上下し全身の液体を発生させながら求める彼女。
その姿はもはや立派な魔物そのものであった。
「私のかわいい家臣、所有物……たくさん搾り取りなさい♪それがアナタの糧となるのよ」
ふと横目で女騎士のほうを見ると、彼女はすでに体から触手を生やし祝福されているようであった。
侍女たちと共につがいのオトコを探しに出かけるのも時間の問題だろう。
「執事、ちゃんと記録してた?」
「はい、一分一秒見逃すことなく」
玉座の後ろ側で物音一つ立てず佇んでいた執事。
いつからいたのかと聞かれれば初めからいたのだが、あまりにも気配の殺し方が上手過ぎて存在すらも忘れかねないところだ。
まぁ私の愛する夫なのだから、どんなことがあろうとも忘れることはないのだけれど。
「あンっ、執事は本当にいるのかいないのかわからないわね」
「表に出ないことこそが執事のスキルですので」
「しかしこれすごいですねメリア。『記録箱』でしたっけ、写した光景をそのまま保管できるという」
「ンフフ♪私のお気に入りの道具の一つよ。宝物庫に眠っていたのをついこの間まで忘れていたわ」
「それ、お気に入りとは言わないのでは」
「あまり小言の多い人は嫌われるわよ」
「あっ♪もうアンジェリカ腰振りすぎ♪」
執事は『記録箱』という私の道具でこの光景の一部始終を記録してもらっていた。
何故かって?
それはもちろん、私の家臣が増える記念すべき光景だもの保存しない手はないと思ったからさ。
欲を言えば、私に屈服する者らを見直して日々のオカズになるからとも付け加えておく。
「それよりもメリア、そろそろ自分の相手をしてくれないですか。もう我慢できそうにない」
「だって、アンジェリカが予想以上に欲しがるんだもの……あああんっ♪」
「そういう姿を見せないでください。逆効果です」
「んふー♪なんなら混ざってみる?」
「嫌です。自分はメリアでないと勃ちませんので」
「あんっ、嬉しいこと言ってくれてまったく……執事の癖に生意気よ♪」
「感謝の極み。……それでは、先に部屋で待っていますので、終わったら来てください。でないとタケリダケ食べますよ」
「わ、わかったわよぅ。もうしばらくしたら終わらせるから」
(そういうプレイもアリね……わざと時間稼ごうかしら)
そう言って執事は謁見の間を後にする。
この後、私はタケリダケを食べまくった執事に逆に三日三晩食べられつくされたのは言うまでもない。
―――――
私は私の思うがままに姫であり、王であり、悪である。だがそれでいい。
我が国と一族が恒久の繁栄を約束できるのならば、悪逆非道の限りを尽くしても、絶対服従の暴君と恐れられてもそれでいい。
潜み、宿り、喰らい尽くす。侵略する。
それが我が国家の元よりある姿であり、侵略国家たるヴァルレンの由来なのだから。
たとえ異形となりて魔の道を歩もうとしても私は王として君臨し続ける。
それが私の思う思うがままであり。
私の理想とする国なのだから。
―一糸纏わぬ女帝は、ありとあらゆる物を征服し服従させ屈服させる。卵を服用させ服役させる。豊衣足食、衣冠盛事の魔物は増やし続ける―
―――――
教団本部情報局部
〜緊急連絡速報〜
「禁忌区域及び避難勧告について」
【侵略移動要塞国家ヴァルレン大帝国】もとい【旧ヴァルレン王国】
女皇帝メリアドルカ=ラヴレスルーズ=ヴァルレン?世が収める極めて危険な国が新たにS級禁忌区域として登録されたことをお知らせします。
このたび登録された【侵略移動要塞国家ヴァルレン大帝国】(以下旧ヴァルレン)の情報を現時点で判明している情報をお伝えします。
かつて旧ヴァルレンは人間と魔物とを差別しない中立国家として存在しており、我々教団側としてもいち早く反魔物領へと変えて行きたい方針であったのですが、その甲斐虚しく魔界、それもS級禁忌区域へと変貌してしまいました。
なぜそのような原因になってしまったのかは未だ調査中ではありますが、教団側が推測するに魔物ローパーによる寄生からの国家崩壊であるものと思われます。というのも旧ヴァルレンの構成する魔物のほとんどがローパーであり、ローパーの感染が拡大しこのような事態に至ったものだと推測される次第であります。
なぜS級の区域に登録されたかといいますと、この国は絶えずその土地に佇むのではなく自らの意志を持って城ごと移動するという恐るべき特徴を備えている目撃情報が多数上げられるからです。その城、城下町を持ち支えているは観測所からの通達によりますところ、【触手の森】原産の極めて凶暴で強靭な触手であり、国一つを触手で持ち支えているというのです。
億多の触手が一定方向に蠕動しますと、持ち上げられた国そのものが移動し歩くのです。進行方向に町や村があると、たちまち人民は捕らえられローパー、インキュバスへと変貌させられてしまう、との事であります。
また、たちの悪いことに旧ヴァルレンの通過した跡には触手の種が無数に植えられほどなくして新たな触手の森へと成り果ててしまい生態系すら魔界へと変わってしまうことでしょう。
後に残るものが何もない、という言葉がまだマシに思えるほどです。
また、更に厄介なことに、この旧ヴァルレンは今まで対立していた国家【堕落国家ルグドネ】と、更には最近になってS級禁忌区域として登録された【魔蠅の巣窟】と三カ国同盟を結んでいるという情報もあります。いずれの国も極めて危険なため、むやみやたらに刺激しないようお気をつけください。
つきましては教団役員各位に告ぎます。
旧ヴァルレンを目撃次第、即刻その場から退避してください。立ち向かおうとは思わないでください。あれは個人の力でどうにかなる範疇を越えています。自然災害と同義です。
勇気と無謀は異なるのです。時には逃げることも勇気ということを肝に銘じてください。
無事逃げ延びることができた者は、すぐさま教団本部、または近くの支部に旧ヴァルレンを目撃した場所、日時、進行方向をお伝えくださいますようお願いいたします。
以上、教団本部情報局部よりお伝えしました。
<追記>
ここ最近、巷で奇妙な衣服が出回っているという情報があります。
着れば願いがかなう、欲しい物が手に入るなどという謳い文句で格安で販売されている所を目撃します。
決して購入しないでください。また購入しないよう、近隣の村、町、国に呼びかけるよう注意を促してくださいますようお願いいたします。
仮に手にしたとしても、決して着用してはなりません。もし着用してしまった場合は、教団により適切な処置をする場合もございますのでご了承ください。
―――――
※※※
「オヤ……彼方は【寓胎の衣】を授けた執事殿ではありませんか。おひさしぶりでございます……。
ン……おぉ、おぉ。その後ろに見えます御方こそ、ヴァルレン大帝国女皇帝メリアドルカ陛下でございますな……結構結構。実に結構……
して、今日は何用でございます?
むぅ、お礼を言いたい、と。私めなどたいしたことはしておりませんよ。ただ衣服を授けただけではありませんか。えぇ、そうです……ハイ。
あの衣服【寓胎の衣】はですね……幾多の勇者を打ち倒し苗床とした古い古い時代のローパーの強力な魂が宿っているものなのです。勇者を倒し、その勇者の体を借りて新たな勇者へと宿主を変え……そうやって生きながらえてきたローパーの……えぇ……
最近になってデルエラ様がすこし悪戯を施したようでしたが……いかがだったでしょう?……ほぅ、この上ないと、わかりました、良い報告ができそうです。
メリアドルカ陛下、貴女の欲しいものは手に入りましたでしょうか。その求めるものの価値が大きければ大きいほど【寓胎の衣】の魔力も増強されるというもの。陛下の欲しがったものは、身分の違う愛、国そのもの、そして新たなる生命……
それらはいずれも値段のつけることができぬほど価値のある巨大で深淵なるものです。
ヒトの欲というのは無間地獄のように底がありません。一つ与えれば二つ欲しくなるという繰り返しなのです。
そのような無限に続く繰り返しを貴女方は自らの国と一族を持ってして反映させたようですね。それは実に剛が深く……本能に忠実な素晴らしき事柄でしょう。
陛下の築き上げた国はきっといつの時代、どんなことがあろうとも決して滅ぶことがないでしょう。一族が一人でも残っていれば、そこからまた増えることができるのですから……
オヤこれは……?ほうほう、【寓胎の衣】に改良を加えた新たなる衣服でございますか。帝国で量産化を計画しているのでその記念に特別に陛下ご自身の魔力を加えた特注品を私に、とですか。おぉ……ありがたき幸せ。
実に濃厚で眩暈がするほどの魔力が込められていますね。うむ……コレは素晴らしい……
うん?私の国で店を開かないか、ですか……
その気持ちだけでもありがたく受け取っておきます……すみません。私は旅の商人ですので、風の吹くまま、商品を求める者がいるところに現れる、そういった商人なのです……いえいえこちらこそ。陛下が頭を下げないでください。
さて……それでは私はそろそろ去るとしましょうか。とても良い国ですが私は少々乗り物酔いが激しくて……いえいえすみません。
ではまたいずれどこかで会いましょう。そのときはもっと今以上に淫らで素敵な国になってることを願っております」
「皇さま、本日の贄にてございます」
ヴァルレン、いや元ヴァルレン王国の謁見の間には数名の侍女と執事、それに私と贄が佇んでいた。
煌びやかな黄金色を放ち王族の証明ともされた玉座は、今や紫色の触手に包まれぬめり蠢く怪椅子へと成り果てかつての面影すら伺うことは出来ない。シャンデリアは禍々しいまでのショッキングピンクを照らし出し、壁一面は赤と黒に塗り潰された壁紙で覆われている。正常な者が見ようものなら一部精神に支障をきたしそうなほど城は変貌しており、それらを何の異常とも思わない私や執事、並びに侍女らは既に異常なのであると証明する証でもある。
「メ、メリアさん……貴女その姿は……」
眼前に横たえる贄に目をやる。
全身を縄、もとい触手で拘束されもがくことすらも許されない贄は目に涙を溜め必死の願いをしているようであった。これから己の身に降りかかるであろうことを知っているのだろう、彼女らの抵抗具合を見ればそんなことはすぐにわかる。
だが、私は自分で言うのもあれだが相当いやらしい性格らしい。こうやって必死に抵抗する姿を見させられると、その顔を絶望の色に染め上げることがこの上なく愉悦に感じてしまうのだから、そう思っても仕方のないことだ。
一切の希望など見せず、絶望の奈落へと突き落としてみたいものだと想起してしまうのだからこれほど酷悪で惨たらしい性格には自分ですら恐れ入ってしまう。
「本日の贄は二名。まずこちら、蒼髪の者は隣国の騎士兵長プリシラ=ザルツドルフ。齢26、名門ザルツドルフ家の長女であり次期当主を期待されている存在とのことです」
「もう一人金髪の者は皇さまもご存知の隣国の王女アンジェリカ様にてございます」
じゅるり、と触手が期待の音を上げる。
その音を聞いた侍女らも赤い目を煌々と輝かせ、より強く贄を縛り上げる。
贄を拘束する侍女らも、私と同じように体から触手を生やし粘液に塗れる同種となっているので彼女らは私の配下であり、同属であり、また家族である。
俗世を離れ、生命として次のステージへと昇華した言わば新人類であるのだ。人の数倍生命力が強く、切断されても再生する体を持ち、二つあった腕を数十本までに増やすことができた新たなる人類。
……まぁ人はそれを魔物娘のローパーというのだがね。私としては新人類という呼び名を提唱したい。個人的に。
「王女、もはや魔に墜ちた者には如何なる言葉も無意味です」
「し、しかし……この目の前の者があのメリアさんですって?信じられ……ません」
「信じるもなにも、まさかこの顔を忘れたとは言わせませんが♪私とは親しい仲ではありませんかアンジェリカ」
女騎士はキッと私を力強い目で睨みつけ、アンジェリカは未だに眼前に佇む私を私と認められないでいるらしい。想像通り過ぎる光景だ。
女騎士の気迫は拘束を解こうものなら今すぐにでも首元を跳ねられんとするものである。このようなつわものがごろごろと転がっている隣国の騎士団はやはり素晴らしいものであるなと再認識するのであった。
「アナタたち少し力を抜きなさい。跪け」
「ぐッ!?」
「あぐぅっ……!」
玉座に座る私が指を差し出しそう命令すると、私の背後に佇む執事を除きその場にいる全員が片膝をつく形を取り地に伏せる。
すでに床にうつ伏せに拘束されている贄の二人は、さらに床にめり込むように頭を垂れる。女騎士からの甲冑からはメキメキと軋む音が聞こえ、アンジェリカからは苦悶のうめき声が聞こえる。
見えざる言葉の重圧により贄らは恐怖の表情を描き、また自分は一体何をされているのかという疑問の念で頭が一杯になっていることだろう。既に敵と見なしている相手の言葉に無意識のうちに従ってしまう奇怪さ、それも相手は人外ときたものだ、不思議がるのが当然と言えよう。
とまぁこうも語っておいてなんなのだが、種を明かしてしまうとなんのことはない。
ただ単純に重力魔法で謁見の間にかかる重力を増しただけの話である。魔術に知識のある者ならすぐに分かってしまうものだろう。
だがこれに「跪け」という言葉と王族という身分が合わさると想像を超える効果を発揮することがある。見えざる言葉の重圧は数倍にも増強され、あたかもそれは言葉自身が質量を持ち己の身に圧し掛かっているのではないかと錯覚するほどに、だ。
「ぐ、ぅ……なんだこれは……」
「メリア、さん……どうして……」
こうして遊んでいるのも面白いのだけれども、すぐに飽きてしまうのが私の悪いところでもある。
前座はオシマイだ。
これからが本当のお楽しみの時間である。我が国家を連綿の繁栄へと結び、王族を恒久のものとする儀式を始めようとしよう。
重力魔法を解除すると侍女らはすかさず動き出し、玉座に座る私を敬うかのごとく腰を低くしながら列に並んだ。
私はうつ伏せになる贄の二人にこう告げる。
「えーコホン……首を挙げ私を崇めなさい贄どもよ。お前達はこれから我が一族の一員になるべく選ばれた特別な存在だ。お前達はこれから新人類として人を超えた存在として生まれ変わり我が国家を繁栄させるため尽力しなければならない」
「そんなことされてたまるものかっ!私は認めないぞっ!」
「メリアさん……あなた本当に……」
「なれどお前達は心の奥底に醜い心を宿している。私には手を取るようにわかるぞ。
女騎士よ、お前は人を切り伏せた時に身もだえするほどの快感を感じている。戦場とは快感を感じる場であり、生と死の狭間においてお前は変態的趣向を晒し出し快楽を望んでいる。戦争の経験を思い出し自慰に耽っているのだろう」
「ち、違う!そんなことは、ないッ!嘘だ!」
「女騎士さん……あなた、そんなことを……」
「騙されてはなりません王女!!う、嘘に決まっています!!」
「アンジェリカよ、お前はその善良な人柄とは裏腹に酷く邪な心を宿している。人々が自分の人気に寄り添い親しみを感じてくれていればそれを愉悦とし、貧しい人々に配給をすればそれを優越感とし、男が寄ってくれば女豹へと姿を変える。慈愛の心など仮初であり、本心は自己中心的で優劣をつけたがるまことに下等な心の持ち主なのであろう」
「ひ、ひどい……私はそんなこと、思ったことはありませんことよ……」
「そうだ!王女は潔白だ!私と王女に関して訂正してもらおうか!」
「嘘と嘘と見抜けぬ盲目の騎士よ。今からお前の目を我らと同じ赤黒のまなこへと変えてやろう。清々と叫ぶといい。『私は戦いで感じちゃう変態です♪』と」
「ふっ……ざけるな!!いくらメリア様と言えど、もはや容認しかねる!!くそっ、離せっ、離せェッ!!!」
もはや女騎士が私を見つめる目付きは、一国の姫を見る目ではなく家畜の豚を見下したような目付きであった。
私を見上げながら見下しているその光景が何とも面白おかしく、つい声高らかに笑ってしまう。女騎士が私を家畜の豚程度としか見てないとしたとしても、私は女騎士のことを道端の塵程度にしか思っていないものだから尚更おかしいものだ。
私はいつでも彼女を造り替えることができる。勿論文字通り造り替えるのだ。だけど私はこの期に及んでさらに面白いことを思いついてしまった。
「これから贄の儀式を始める。侍女たち」
「「はっ、皇さま」」
「貴方たちの日頃の働きに免じて今日は片方好きにしていいわよ♪そうねぇ……」
私がそう言うと侍女らは触手をピンと剛直させ、性欲という名の期待を今か今かと待ちどおしくしている。
ある者は股間から生える極太の触手をしごき、またある者は筒状の触手を意味深に蠕動運動させ先端から粘液を垂れ流し恍惚とした表情だ。
触手のどれもこれもが背徳的なデザインを醸し出しており、魔界のアート展に出展しようものなら受賞総なめ間違いなしとでも言わんばかりの造型である。
「じゃあ女騎士で。私はアンジェリカの相手をするから、貴女達は女騎士の相手をシテ頂戴♪」
贄を見下す私の満面の笑みは、魔物からしてみればごくごく普通の笑みであるのだろうが、ただの人間からしてみれば悪夢となって思い出さざるを得ないほど歪んだ、そういう類の顔だったに違いない。舌なめずりをし、口を水棲生物のようにぬめらせると赤々とした粘膜が外側から見える。その姿は言葉で例えるならば"淫"そのものであった。
ギンギンにいきり立つ侍女たちは一斉に女騎士の方を向くと濁流の如く襲いかかる。
「や、やめ、やめてくれっ!!私はッ……私はまだこんなところで……」
「ンふふ♪もうどう足掻いたって無駄なことを。お前は、人間じゃ、なくなるのだ」
「やめろっ……やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめ、ろ、やめ……
う…………うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
侍女たちの大量の触手が女騎士を嬲り始める。
拘束され続けている女騎士は四方八方を侍女に囲まれ、触手に覆いかぶされて始めていた。鎧の隙間から侵入するこの上ない不快感と気持ち悪さに、気丈を振舞っていた女騎士の声から恐怖が漏れ出す。
ゴトリ、ゴトリとまたたく間に甲冑は外され女騎士は丸腰へと変わり果ててしまった。
「たっ、助け…………王女!!助けて、ください!!王女ぉ!!!!」
触手に覆われ、どろどろの粘液に包まれながら女騎士は最後の力を振り絞って手を差し伸ばした。
もやは騎士のプライドなどそっちのけで、今はただ助かりたい、逃れたいというごくごく単純明快な生物としての本能が働いたのだ。
女性がローパーに襲われるということが何を意味するか。それを知っているか否かでは、恐怖のあり方というのがまるで違ってくる。
何も知らない者は、魔物娘に襲われたという恐怖に怯えながらも快楽に身を任せていたらいつの間にかコトが終わっている、というのが大半である。無知なるがゆえに快楽に順応することが出来るのだ。
だがしかし、ローパーの生態を知る者ではどうなるか。それは卵を産み付けられ、自分が自分でなくなっていくその経過を自分自身で実感しなければならないという別次元の恐怖が存在する。人の身をしていながらも確実に魔物となってしまう未来を決定付けられたその瞬間、勝敗の決まっている葛藤が始まるのである。快楽に身を任せてしまったら負けだと思いつつもオトコを食べ漁りたいという魔物としての感性がその身を襲うのだ。
私がそうであったように。いや、私は若干イレギュラーだったけども。
故に女騎士は手を差し伸べる。
あのような者達にはなりたくないと心から願い、救いを求めるために最後の希望をアンジェリカに向けて手を差し伸ばしたのだ。
そして、アンジェリカは女騎士の願いを感じ取り、彼女の手を取―――
「ご、ごご、ごめんなさい……」
「な……な、ぜ……!!」
差し出された手を、アンジェリカは掴むことはなかった。
女騎士の顔色がサーッと青白くなるのが遠目で見てもわかる。この瞬間がこの上なく爽快に感じる私はやはり相当歪んでいるのだろう。
気が付けば自分の股間がいつにも増して粘液を放出しており、絶望に染まる女騎士の表情が私の性癖にピンポイントに突き刺さり、ジュクジュクと粘液の放出を促している。
「ひぃぃぃ!!やめろっ、やめ…………んあああああああぁぁl♪♪♪」
再び侍女たちの中へと引きずり込まれた女騎士はその姿を最後に、もう二度と人間の姿を保つことは適わなかった。それは夥しいまでの触手に包まれる彼女の嬌声が物語っているのは誰が見ても明からであるからだ。
私は触手を使って玉座から降りると、横たえるアンジェリカの側に寄り語りかける。
「おやぁ、おやおやおや、アンジェリカ様ともあろう者が他者の救いの手を拒むとはどういう風の吹き回しなのかな」
ククク、とほくそ笑む私とは対照にアンジェリカはガタガタと振るえその視線の先に異形を映す。身体のいたるところから触手を生やし、その一本一本が異なる造形をしているものだから多少アンバランスと思われても仕方のないことであるが。
ともかく。
今の光景を例えるならば獅子と子兎が対面しているとでも形容すればいいだろうか。生物的にどう足掻こうとも決して不可能な抵抗という場面はこういう場面のことを意味するに違いない。
すでに侍女たちの拘束は解けているのにも関わらず身動きのとれない彼女。頭では逃げろと思っているのだろうが、体がすくみあがっていうことが利かないのだろう。身動きをとらないというよりは、身動きがとれないと言った方がいい。
「わ、わたくし、はっ……!なんてことを……うぅっ!」
「そうやって泣いたフリをしたら今までは誰か彼かが助けてくれたのだろう。だけど今は助けなんて来ない。来るわけがない」
「そ、そんなこと……」
「手助けすれば自分も巻き込まれる。どうせ手助けしたって適いっこない。それよりも逃げるチャンスなんじゃないか。大方そんなところだろう。
アンジェリカ、アナタ一国の王女としてはこの上ない最低な性格だけど……うん、いいじゃないか♪」
「ひっ!!」
「そういう人間性の欠片も見えないクズ中のクズほど逆に私の一族に加えたくなる♪ふふふ……はははははは!!!」
私は全身の触手を一片に広げ、小動物のようなアンジェリカを押さえつける。
その姿はまるで羽を広げた孔雀を思い出させる様な姿だが、残念ながら孔雀のような美しさは皆無であり、触手と糸引く粘液が扇状に広がっているだけの気味が悪い光景でしかなかった。孔雀には失礼かもしれないな。
四肢の拘束用にまずは4本。
エキス注入用の1本。
粘液分泌用の3本。
愛撫用の2本。
寄生用の特殊なものを2本。
そして最後に産卵管を1本。
それぞれが異なった形状をしているが、どれも統一して言えることはこの上なくグロテスクだということだ。
拘束用の触手は蛸の吸盤のようなものがついているし、エキス注入用は小さな注射針のような形である。産卵管は筒状になっておりいつでも私の卵を放出できるような生々しいデザインだ。
私が欲しいと望めば、身体はその要望を応えてくれるかのようにそれぞれに特徴のある触手を生やしてくれる。ああ、新人類とはなんとすばらしいものか。まぁこの触手は私だけの特別製のようであり、侍女たちは愛撫用と産卵管しか持ち得ていないようだが……細かいところは気にしていない。
「その童顔の残す心の奥底には偽善で塗り固められた醜い心が眠っている。私はそういうところが好ましいのだ」
「や、めっ……はなしてっ!!いや、だっ!助け……」
「その助けてという願いをお前は今さっき見て見ぬフリをしたではないか。ならばお前も見て見ぬフリをされても文句は言えまい?まぁ見て見ぬフリをする者など誰もいないのだがな!」
「や、やめ……いやぁぁぁぁぁ!!!!」
愛撫用の触手でアンジェリカの服をまさぐり、そして一斉に破り捨てる。
純白のドレスの内側からは日焼けのしていない健康的な肌色が姿を現し、なだらかなカーブを描いている。ぷっくりと膨らんだやや小ぶりの乳房がふるふると振るえ、その頂には小さな突起がピンと突き出ていた。
実に芳しい。
「口うるさい小娘にはまずこれが手っ取り早いか♪くくく……」
「え、あ――――んむぅっ!?!?」
はぁー、と私は深呼吸するとその刹那アンジェリカの唇目がけて己の唇を合わせ交える。
じたばたと抵抗しているようだが4本の触手の拘束の前にはその抵抗も無意味というものだ。手足の筋肉がピクピクと動いているだけで、身動きの一つも取れていない。弱者がどう頑張ろうと強者を上回ることなど無理なのだからな。
私は右の腰から寄生用の触手を1本這い出させる。
「ぷはぁ――さて、コレを使って今から何をするかわかるかな♪」
「な、なにを……?」
その触手は他の触手のどれよりも激しく動き回り、その姿はまるで狂い舞い踊っている芋虫のような姿だ。
この寄生用触手は私の一番のお気に入りであり、そして一番凶悪なものであるといっても差し控えない。
1本は人の腕ほどの太さの触手。もう1本は目には見えぬ細さの超小型の触手でありそれぞれが同じ寄生用でありながらも異なる用途を持っている。
「では……覚悟したほうがいいぞ♪」
「え、な、なに……んむむぅっ!?!」
まず私は太めの触手を体内にしまい込むと、もう一度アンジェリカの唇を合わせる。
そしてアンジェリカの唇、歯を開かせると、私の口腔内からその太めの触手を発現させ突き出させるのだ。
でゅるん!
「!?!?んむぅうぅ!!ん゛ん゛っー!!」
当然行き場のなくなった触手は私の口腔内を渡り、相手の、アンジェリカの口腔内へとねじり込み侵入していく。
アンジェリカの抵抗が今までで一番強く感じられると、私もついその気になってしまい決して唇を外させまいと力強く押し付ける。私の内側から触手が出て行く感覚と同時に、彼女は未知なる存在を無理やり口腔内にねじ込まれているというこの上ない恐怖を感じ取っているのだろう。
大きく目を見開き上下左右を見渡しもがき苦しむ彼女を私は快感に浸りながら眺めていた。
飲み込みたくないと思うアンジェリカの思いや虚しく、暴れまわる触手の力には耐えることが出来なかったらしい。彼女の閉じた咽頭はすでに触手により開かれてしまっており、嗚咽を鳴らしながら触手を飲み込んでいく。
噛み千切ろうとしていたらしいが、想像以上の弾力性にその行為は徒労に終わり、吐き出すことも適わないこの行為にただただ蹂躙されるしかないのである。
やがて私の中からすぽんと触手が抜けると、最後にはするりとアンジェリカの咽頭、食道を通り胃まで通り抜けてしまったようだ。寄生用の触手の一本が全て彼女の中へと入り込んだ。
これでもう、彼女は9割方墜ちたも同然。ふふふ。
「あ、あああぁぁぁ…………なに、これ……あぁぁぁぅぅ!!?」
「どう?お腹の中で触手が暴れる快感は?言葉にならないでしょう」
「おか、し……こんなの、おかし…………はぁぅ!♪」
アンジェリカの身体の中で私の一部が暴れまわっている。
頬を高揚させ必死に抵抗しもがき苦しむ彼女の姿はそれだけでそそるというものだ。私の中でふつふつと燃え上がる何かを感じる。
彼女の体内へと侵入(物理的に)した触手はしばらくの間胃で暴れ回ると、やがて次は腸へと進み、そこでようやく吸収され全身へと行き渡る。
いや、吸収されるというのとは少し違うな。触手は自らの意志を持って無理やり全身へと行き渡るのだ。血液の流れに乗り体の隅々まで行き渡る魔力を孕んだ触手は人間の細胞の一つ一つを造り替えてゆく、その生命の神秘たるや……
「うううぅぅぅうっぅっぅ……あふぅぅっ……」
瞳孔を過度に縮瞳させ、半開きの口からはだらしなく唾液を流している。一国の王女とは、常に人民に慕われる高貴で清潔な存在でなければならない。だがその身分とはなんだったのかといわんばかりの崩落ぶりには流石の私も心の中で勝利の拳を挙げてしまうものだ。もう少しで彼女を私たちと同じ仲間にすることができる、そう考えると心が高まる。
私も先日まではアンジェリカと同じような身分であったのだが、人でなくなるとそういう問題はいかに低俗な問題であったというのを改めて思わされたものだ。
未知なる感覚に体を振るわせるアンジェリカ。その姿を見守る私はいてもたってもいられず、すぐさまもう一つの触手を彼女に植え付けることにした。
「た、たすけ……やめ、や……やだ、やだ、やだ、やだっ!!ああっ!」
「恐れる必要はない……さあ、受け入れるの♪」
「あっ――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛がががががっ……!!」
ずるるるるる!!
私は指先から糸よりも数倍細い目に見えぬ触手を生やすと、アンジェリカの耳に指先を突っ込ませた。
触手は私の指を抜け彼女の耳の奥へと突き進み、鼓膜を突き破る。そして中耳、内耳へと進み聴覚神経へとたどり着くと、それを伝い一気に上行し脳内へとたどり着くのだ。その間わずか20秒。
痛みなど当然無く、むしろ耳が性器になってしまったのかと言わんばかりの快感が彼女を襲う。鼓膜はさながら処女膜に例えることができ、それを失うということで初めて私の支配下、もとい家臣になることを証明する物理的な証拠なのである。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!頭がっ!!割れ……ぐううぅぅぅ!!」
「我慢すればするほど辛くなる。それならばいっそ全て身を委ねてしまえば……」
「わっ、わたくしは……王女、なので、す!!こんなとこ、で……」
「王女だから、何?気持ちいいことは我慢しなければならないの?それは平等じゃぁない♪」
「あ、貴女にもっっ……志すモノがあったのでは、あ、あ、ありませんことっ……?」
「私はただ、皆が皆平等に平和暮らせる国を目指しているだけ。だけどその為には基盤づくりをしなければならないの。たくさんの国を吸収し領土を増やすために、ね♪」
「そそ、それは単なる……貴女のエゴにすぎません…………平等でもなんでもない、ただの侵略です、わ……」
「好きに言うといいわ。ここでは私がルールなのだから。王である私がそうしたいと望めば全てがそうなるようにできているの」
「こ、の……暴君……貴女には、し、失望しましたわ……」
「強がっているのも今のうち♪」
脳内に侵入した触手はアンジェリカのありとあらゆる神経活動を支配する。自律神経から運動神経、感覚神経、さらには精神活動さえまでも。そして彼女が何を考えているのかも、母体である私には全て筒抜けなのである。
「アンジェリカ、あなたもう半分魔に染まっちゃってるのよ。もうおしまいよ」
「ぐ、くく……半分残っていれば結構ですわ……半分あればまだ王女としての誇りを取り戻、せる……」
「そう。じゃぁ――」
「全部染まってしまえ♪」
儀式の最終段階へと取り掛かる。
体の自由の利かなくなったアンジェリカは私の触手に自由に踊らされるだけである。両足を広げられ、女性器をおおっぴろげにさらけ出す体勢になってもすでに抵抗する気力さえ持ちえていなかった。
脳内に侵入した触手がアンジェリカの思考を魔物へと書き換えているのも抵抗しない一因と言えよう。嫌悪する表情を見せながらも、鼓動で揺れる胸と荒い吐息が否応なしに私をその気にさせてしまう。
「ふふふ……ねぇアンジェリカ、ローパーって魔物知ってる?」
「聞いたことは、ある……が、見たことは無いし生態も知りませんですわ……」
そう聞いて私の剛直がいきり立つ。
無知なる者をこれから犯す楽しみほど快感なものはない。
知らぬが仏と言わんばかりの情報を全て手遅れになってから相手に与えるという愉悦感は一度しか味わえぬことであるが故にそれ相応の快感を私に授けてくれる。
ああ、なんと甘美なことか。
私は下腹部、丁度へその下部辺りから生える筒状の触手を伸ばすと、その先端を巧みに操りアンジェリカに秘部に近づける。
半分は抵抗しながらも、半分は膣を湿らせながら待機しているという奇妙な感覚に板ばさみにされアンジェリカは困惑しているようだ。
「それじゃあ、お互い楽しみながらお話しましょう♪」
「くそっ……からだが、いうことを……ああぅっ!♪」
ぬぷ……
ずぶ……
触手をアンジェリカの内に挿れると、一際体を大きく跳ねらせメスの叫びを上げる彼女。
ローパーを知る者ならばこの状況ですぐに半狂乱になるほど泣き叫んでいるところであろうが、そうしないところを見ると本当にこの王女はローパーの生態を知らないのだろう。流石の私も罪悪感というものを感じかねない。
いや、実際にはそんなもの感じるわけが無いんだけども。建前的にそう言ってみた。
「あはぁ♪いいわぁアンジェリカのおまんこぉ♪キツキツで……ってあら、これ」
何か膣液とは異なる生暖かいものを感じ、ふと接合部に目をやる。
と、そこにはま真っ赤な鮮血がぶちまけられており、触手と膣口が末恐ろしいまでの赤色に染まっていた。
「アンジェリカ、まさかアナタ処女?」
「…………っ」
ぷい、と顔を横に逸らす彼女。
あああああもうそんな仕草をされると色々と情欲をそそられて制御が利かなくなる。
「まぁ王女という身分がらそういう機会もなさそうだから仕方がないといえばそうなるけどさ」
「と言うか、どうして初めてなのに痛そうにしていないのかなぁ?♪♪」
「そっ、それは……わたくしにも、わ、わかりませんこと……よ……」
脳内の触手が痛覚を快感に変換しているのだろう、というのはすぐさまに理解できる。
ああ、アンジェリカ。以前はあんなにも忌み嫌っていたのに、今となっては私のかわいいかわいい家臣だ。そんなかわいい者には特別に魔力濃度の高いアレを授けてあげようと私は思った。
触手を激しく出し入れしながら、私は自分の体内であるものを精製している。
「ふふ……ローパーっていうのはね、あん♪ちょっと変わった魔物なの」
「ぁ、ぁンっぁ、あぁ! 」
「♪♪元々は卵の殻みたいに丸い球体をしてそれを『ローパーの卵』って言うんだけども」
「それが人間の女性の体に寄生することによって発芽して『ローパーの幼生』という魔物になるの」
「ぁ、ぁう、あ ……ふしぎな、魔物ですわ……んんっ!」
「でしょう♪でも幼生はあくまで幼生であって、成体になるには魔物娘恒例の精液が必要になるわけぇ♪」
「オトコの精液を貰って初めて『ローパーの成体』になるわけなのよねぇ♪」
「め、面倒くさい魔物です、こと……あふぅっ♪ぁぁ、ハァ、ハァ…… 」
ずぞっ!
ぐじゅぅ!
と重く淫靡な水音が響き渡る。
王女としての気質は半分保っていると豪語していたアンジェリカであったが、はたから見ればそのような姿など皆無であり、ただただ快感によがり腰をくねらせている女の姿しか見えることができない。
もはや私の前で嬌声を上げる女は一国の王女アンジェリカではなく、ただ本能のままに欲望を貪るメスだ。食べたい時に食べ、寝たいときに寝て、性交したいときに性交するただのメスであり私の忠実なる家臣。
もうすこし持ちこたえてくれるかと思っていたが……やはりただの人間では私の支配からは逃れることはできないらしいな。多少魔法の腕はあるアンジェリカならばとも思ったが、結果はこの有様である。
同時にアンジェリカの初初しい膣を堪能し、私もそろそろ己を我慢出来なくなりつつある。
女性の初めてを人間の男性でなく、人外の私が征服しているというこの上ない優越が快感を加速し始める。
「うふふ♪……しかもローパーはただでさえ妊娠しにくい魔物娘でも特に子供を作りにくい体質らしくてね」
「だからある特殊な方法で同属を増やしているの♪」
「あっ……ン、ある特殊な……ほ、方法?」
「それはね……『ローパーの卵』を人間の女性に、産み付けてしまうの」
「奥深く、産み付けられた卵は胎内で根を張り、やがて弾けて発芽する……♪」
「へ、へえ……それはそれは、恐ろしいです、わね……」
アンジェリカの顔の雲行きが怪しくなる。
くく、くくく、ハハハっ。
そう、その顔だ、今自分が何をされているのかを実感し、抗いようもない現実に悲観するその顔。
タマラナイ。
私の触手、いや産卵管が興奮に呼応し一際太くなる。
「あ、あうっ!!おっき……ぁぁ、ンぅ!はぁう……」
「あの、メ、メリアさんっ……ひとつ聞いても、よろし、いです、か」
「なぁに?何でも聞いてアンジェリカぁ♪」
「あぁ……、アッ 、その卵って……ど、どうやって産み付け、るのです」
ああ、ついに聞いてしまったのか。
言いたくはなかったけど。
でも、聞かれちゃぁ言うしかないよね。
知らぬが仏なのに、聞いてしまうんだ。
「ふふ……それは勿論魔物娘だからね、セックスしかないけど?」
「…………ま、さ……か」
彼女の表情は先ほどの女騎士同様、青ざめた絶望の色が出始めている。
「相手の子宮の中に直接産み付けるというわけ♪特に何のひねりもないけどそれがまた気持ちいいんだよね……ふふ、っくくく」
アンジェリカの青ざめ、疑問めいた表情はあと一つの答えだけで結果へと導く、そういった表情をしていた。
もはや今更どう願い乞うたところで結果は代わることはないのだが、最後くらいは私から親切に教えてあげるとしよう。
――ヒトとして最後の瞬間に。
「ねぇ、ローパーってどんな姿か知ってる?」
「や、やめてっ!し、しし知りたくない、知りたくないッッ!!言わないで!!」
「下半身はスライムみたいにドロドロで……」
「やだ、いやだ、いやだ、やだ、やだやだやだ……!」
「全身から触手を生やして……」
「言わないで言わないで、言うな言うな言うな言うな言うな言うなッ!!言うなぁッーー!!!」
「ねぇ、そんな魔物見たことない?」
「そう、まるで私みたいな!」
「ッ――――!!!!!!」
アンジェリカは絶叫していた。
まさかこんな声を出せるだけの力が彼女の中に残っていようとは思っていなかっただけに少々驚きである。本能の奥底からわきあがる力が、これが瀬戸際とばかりに荒々しくアンジェリカの体を駆り立て、拘束を振りほどこうと遮二無二、四肢を暴れさせている。
だが、アンジェリカを拘束する触手の力は頑として揺るぎもしない。
「ハハハハハッ!!!!!ありがとうアンジェリカ、最高のオカズを私にくれてありがとう!すぐに楽にしてあげるからね♪」
「わ、わた……わたくし、がっ……あぁっ!!わたくしが、消えっ……」
機は熟した。
寄生した触手は完全に同化し、はやく卵が来るのを今か今かと待ち構えている。
脳内の触手はアンジェリカの人間としての自我を貪り始め、触手自らが持つ魔物としての自我を刷り込むために根を張り始める。神経線維の一本残らずを魔物として生まれ変わらせるために。
「あはっ♪ほら、見テっ!!私の卵……今からアンジェリカにあげるね♪」
「こっ、来ないで!!いやだっ!動けよっ、体動けよぉ!!ああああぁぁっぁぁ!!」
私の下腹部がブクブクを泡立つような音を立てた。
卵が産卵管の根元に行き渡る。
その音がアンジェリカには私が嘲笑う音に聞こえているようであった。
雌として生まれ持った本能の奥底で、アンジェリカはまざまざと悟る。
自分は今から、この魔物と同じになってしまうのだと。王女としての誇りを死なせる残酷な運命を、拒むこともできず……
「や……めて……」
全生命をかけて懇願するその姿は今となっては虚空にすがるほど絶望的な無慈悲である。
ブクブク――とまた私の下腹部は嗤った。
ぐじゅり
一際大きな音を立てると、卵のうちの一つが産卵管を通り始める。
握りこぶし大の球体は、徐々に徐々に、根元から先端へと前進する。
その姿はまるで胎児が子宮から産道を通り外界へと飛び出る、出産に近いものを感じざるを得なかった。
「あはぁぁぁ♪もうすぐ……もうすぐ……ほら」
毎度の事ながら、この瞬間は自分自身意識が飛びそうになるほど強力な快感が迸るものだ。
世の男が射精するときも恐らくこれに近い感覚なのだろう、そう思いながら出産の喜びも同時に感じるという絶頂と幸福の両極とが合わさり天上の至福を味わう。
私はすでに産卵管の前後運動は止め、ただひたすら卵が射出されるのをこの体と目で見守っていた。
アンジェリカは必死に抵抗を試みるも、もはや彼女の体力は限界に達しており、ましてや運動神経を魔に支配されている彼女がこの場から逃れようなど……
根元を渡り、中腹まで通過し、やがて先端部分へと移動する卵。
「あンっ、も、もう……出るよっ♪あはっはぁぁ♪子宮に、植えるよぉ!!♪」
「――――」
もはやアンジェリカの声は裏がえりを通り越して音を発していなかった。空気をかすれる悲痛な音だけが両者の耳を吹き荒ぶ。
卵が産卵管の先端部分にまで近づくと、私は先端を思いっきり深く差し込み子宮に確実に、正確に着床させるために身を震わせる。
「出るっ……出るぅッ!♪!♪」
「ぁ――!!ん゛ん゛ぅ!!」
卵はまず産卵管を隔ててアンジェリカの膣を通過する。
膣口を通るときに握りこぶし大のものが彼女の内へ入るのかという問題は、すでに体の半分以上が魔に犯された彼女の体では杞憂に終わり、すんなりと内部へと侵入した。
やがて、膣を通り、子宮口をねじ開け。
そしてついに子宮へとたどり着き、全ての工程が終わると……
「アッ……イクっ、産むよっ……出、る……っ♪」
「あぅ、えふっ、やめ、もう……や――――」
ぼびゅぅぅ!!
ぐじゅっ!
「ああああああぁぁぁぁッッッ♪♪♪!! 」
「はあぁんんんんんんんぅ!!!」
私は全身を震わせアンジェリカの胎内に卵を放出した。
びゅくっ、びゅくっ、と蠕動を続ける産卵管は卵と同時に大量の体液を彼女の胎へ放出しているようだ。少しでも確実に卵と子宮を定着させるように、悪意を持ったそれは際限なく出続ける。
「あっ、アハッ♪♪マダ、出すよッ!!ハッ、ハァ、あ……あぅぅうっぅぅ!♪♪」
一つ目の卵が産卵されたのをきっかけに、私の中から二つ目、三つ目と立て続けに放出され彼女の内部へと産み落とされるのがわかる。私の卵を受け取ったアンジェリカの腹部はまるで妊婦そのもののように膨らみ、膣口からは私が流し込んだ体液が行き場を失って漏れ出ていた。
産み付けられた卵はその瞬間にすかさず子宮内膜へと癒着し人体と結合し始める。そうしてしばらくの後に皮膚から触手が突き出し幼生となるのだ。
そうなればもう彼女も立派な新人類、もといローパーとして転生したも同義である。
ああ、今ここに我が一族の一員が増えた。実に喜ばしいことだ。
「あぁぅ……おなかぁ…………ははへへえ……」
私が彼女に卵を産みつけたと同時に、彼女の中から人間性が消失したのだろう。
空笑う彼女は胎内の我が子が愛おしくてたまらないとでも言うかのように、優しく撫ではじめたのだ。その姿は母そのものである。
瞳は黒と赤に濁り、融けはじめる下半身。
胸部と下腹部には私たちと同じく黒紫色の邪悪なレース模様が浮かび上がり蠢きだす。
「あう、あふ、うへー……なぁにこれ、アタマとろけるのですわぁ……オトコぉ、オトコほしぃ……」
「フフ、アンジェリカ。オトコの前にアナタには素晴らしい服を用意しているのよ♪あんなドレスよりも断然美しく……気持ちいい最高の服をね」
「はぁぁへぁ……メリアお姉さまぁ……わたくしめにもっとタマゴをぉ♪オトコをぉ♪」
「ほぅら、私を感じなさい。私の目を見なさい、声を聞きなさい、私を肌で感じなさい。頭の中から細胞の隅々まで、全てが私色に染められているのよ。私に委ねれば全てが気持ちいい、私を信じれば全てが上手くいくの……」
膨らんだ彼女の胎に再び産卵管を奥まで挿し込むと、目を血走らせながら今度はアンジェリカの方から自ら進んで腰を降り始めた。崩れ落ちる下半身など目にもくれず、ただひたすらに私の産卵管を上下し全身の液体を発生させながら求める彼女。
その姿はもはや立派な魔物そのものであった。
「私のかわいい家臣、所有物……たくさん搾り取りなさい♪それがアナタの糧となるのよ」
ふと横目で女騎士のほうを見ると、彼女はすでに体から触手を生やし祝福されているようであった。
侍女たちと共につがいのオトコを探しに出かけるのも時間の問題だろう。
「執事、ちゃんと記録してた?」
「はい、一分一秒見逃すことなく」
玉座の後ろ側で物音一つ立てず佇んでいた執事。
いつからいたのかと聞かれれば初めからいたのだが、あまりにも気配の殺し方が上手過ぎて存在すらも忘れかねないところだ。
まぁ私の愛する夫なのだから、どんなことがあろうとも忘れることはないのだけれど。
「あンっ、執事は本当にいるのかいないのかわからないわね」
「表に出ないことこそが執事のスキルですので」
「しかしこれすごいですねメリア。『記録箱』でしたっけ、写した光景をそのまま保管できるという」
「ンフフ♪私のお気に入りの道具の一つよ。宝物庫に眠っていたのをついこの間まで忘れていたわ」
「それ、お気に入りとは言わないのでは」
「あまり小言の多い人は嫌われるわよ」
「あっ♪もうアンジェリカ腰振りすぎ♪」
執事は『記録箱』という私の道具でこの光景の一部始終を記録してもらっていた。
何故かって?
それはもちろん、私の家臣が増える記念すべき光景だもの保存しない手はないと思ったからさ。
欲を言えば、私に屈服する者らを見直して日々のオカズになるからとも付け加えておく。
「それよりもメリア、そろそろ自分の相手をしてくれないですか。もう我慢できそうにない」
「だって、アンジェリカが予想以上に欲しがるんだもの……あああんっ♪」
「そういう姿を見せないでください。逆効果です」
「んふー♪なんなら混ざってみる?」
「嫌です。自分はメリアでないと勃ちませんので」
「あんっ、嬉しいこと言ってくれてまったく……執事の癖に生意気よ♪」
「感謝の極み。……それでは、先に部屋で待っていますので、終わったら来てください。でないとタケリダケ食べますよ」
「わ、わかったわよぅ。もうしばらくしたら終わらせるから」
(そういうプレイもアリね……わざと時間稼ごうかしら)
そう言って執事は謁見の間を後にする。
この後、私はタケリダケを食べまくった執事に逆に三日三晩食べられつくされたのは言うまでもない。
―――――
私は私の思うがままに姫であり、王であり、悪である。だがそれでいい。
我が国と一族が恒久の繁栄を約束できるのならば、悪逆非道の限りを尽くしても、絶対服従の暴君と恐れられてもそれでいい。
潜み、宿り、喰らい尽くす。侵略する。
それが我が国家の元よりある姿であり、侵略国家たるヴァルレンの由来なのだから。
たとえ異形となりて魔の道を歩もうとしても私は王として君臨し続ける。
それが私の思う思うがままであり。
私の理想とする国なのだから。
―一糸纏わぬ女帝は、ありとあらゆる物を征服し服従させ屈服させる。卵を服用させ服役させる。豊衣足食、衣冠盛事の魔物は増やし続ける―
―――――
教団本部情報局部
〜緊急連絡速報〜
「禁忌区域及び避難勧告について」
【侵略移動要塞国家ヴァルレン大帝国】もとい【旧ヴァルレン王国】
女皇帝メリアドルカ=ラヴレスルーズ=ヴァルレン?世が収める極めて危険な国が新たにS級禁忌区域として登録されたことをお知らせします。
このたび登録された【侵略移動要塞国家ヴァルレン大帝国】(以下旧ヴァルレン)の情報を現時点で判明している情報をお伝えします。
かつて旧ヴァルレンは人間と魔物とを差別しない中立国家として存在しており、我々教団側としてもいち早く反魔物領へと変えて行きたい方針であったのですが、その甲斐虚しく魔界、それもS級禁忌区域へと変貌してしまいました。
なぜそのような原因になってしまったのかは未だ調査中ではありますが、教団側が推測するに魔物ローパーによる寄生からの国家崩壊であるものと思われます。というのも旧ヴァルレンの構成する魔物のほとんどがローパーであり、ローパーの感染が拡大しこのような事態に至ったものだと推測される次第であります。
なぜS級の区域に登録されたかといいますと、この国は絶えずその土地に佇むのではなく自らの意志を持って城ごと移動するという恐るべき特徴を備えている目撃情報が多数上げられるからです。その城、城下町を持ち支えているは観測所からの通達によりますところ、【触手の森】原産の極めて凶暴で強靭な触手であり、国一つを触手で持ち支えているというのです。
億多の触手が一定方向に蠕動しますと、持ち上げられた国そのものが移動し歩くのです。進行方向に町や村があると、たちまち人民は捕らえられローパー、インキュバスへと変貌させられてしまう、との事であります。
また、たちの悪いことに旧ヴァルレンの通過した跡には触手の種が無数に植えられほどなくして新たな触手の森へと成り果ててしまい生態系すら魔界へと変わってしまうことでしょう。
後に残るものが何もない、という言葉がまだマシに思えるほどです。
また、更に厄介なことに、この旧ヴァルレンは今まで対立していた国家【堕落国家ルグドネ】と、更には最近になってS級禁忌区域として登録された【魔蠅の巣窟】と三カ国同盟を結んでいるという情報もあります。いずれの国も極めて危険なため、むやみやたらに刺激しないようお気をつけください。
つきましては教団役員各位に告ぎます。
旧ヴァルレンを目撃次第、即刻その場から退避してください。立ち向かおうとは思わないでください。あれは個人の力でどうにかなる範疇を越えています。自然災害と同義です。
勇気と無謀は異なるのです。時には逃げることも勇気ということを肝に銘じてください。
無事逃げ延びることができた者は、すぐさま教団本部、または近くの支部に旧ヴァルレンを目撃した場所、日時、進行方向をお伝えくださいますようお願いいたします。
以上、教団本部情報局部よりお伝えしました。
<追記>
ここ最近、巷で奇妙な衣服が出回っているという情報があります。
着れば願いがかなう、欲しい物が手に入るなどという謳い文句で格安で販売されている所を目撃します。
決して購入しないでください。また購入しないよう、近隣の村、町、国に呼びかけるよう注意を促してくださいますようお願いいたします。
仮に手にしたとしても、決して着用してはなりません。もし着用してしまった場合は、教団により適切な処置をする場合もございますのでご了承ください。
―――――
※※※
「オヤ……彼方は【寓胎の衣】を授けた執事殿ではありませんか。おひさしぶりでございます……。
ン……おぉ、おぉ。その後ろに見えます御方こそ、ヴァルレン大帝国女皇帝メリアドルカ陛下でございますな……結構結構。実に結構……
して、今日は何用でございます?
むぅ、お礼を言いたい、と。私めなどたいしたことはしておりませんよ。ただ衣服を授けただけではありませんか。えぇ、そうです……ハイ。
あの衣服【寓胎の衣】はですね……幾多の勇者を打ち倒し苗床とした古い古い時代のローパーの強力な魂が宿っているものなのです。勇者を倒し、その勇者の体を借りて新たな勇者へと宿主を変え……そうやって生きながらえてきたローパーの……えぇ……
最近になってデルエラ様がすこし悪戯を施したようでしたが……いかがだったでしょう?……ほぅ、この上ないと、わかりました、良い報告ができそうです。
メリアドルカ陛下、貴女の欲しいものは手に入りましたでしょうか。その求めるものの価値が大きければ大きいほど【寓胎の衣】の魔力も増強されるというもの。陛下の欲しがったものは、身分の違う愛、国そのもの、そして新たなる生命……
それらはいずれも値段のつけることができぬほど価値のある巨大で深淵なるものです。
ヒトの欲というのは無間地獄のように底がありません。一つ与えれば二つ欲しくなるという繰り返しなのです。
そのような無限に続く繰り返しを貴女方は自らの国と一族を持ってして反映させたようですね。それは実に剛が深く……本能に忠実な素晴らしき事柄でしょう。
陛下の築き上げた国はきっといつの時代、どんなことがあろうとも決して滅ぶことがないでしょう。一族が一人でも残っていれば、そこからまた増えることができるのですから……
オヤこれは……?ほうほう、【寓胎の衣】に改良を加えた新たなる衣服でございますか。帝国で量産化を計画しているのでその記念に特別に陛下ご自身の魔力を加えた特注品を私に、とですか。おぉ……ありがたき幸せ。
実に濃厚で眩暈がするほどの魔力が込められていますね。うむ……コレは素晴らしい……
うん?私の国で店を開かないか、ですか……
その気持ちだけでもありがたく受け取っておきます……すみません。私は旅の商人ですので、風の吹くまま、商品を求める者がいるところに現れる、そういった商人なのです……いえいえこちらこそ。陛下が頭を下げないでください。
さて……それでは私はそろそろ去るとしましょうか。とても良い国ですが私は少々乗り物酔いが激しくて……いえいえすみません。
ではまたいずれどこかで会いましょう。そのときはもっと今以上に淫らで素敵な国になってることを願っております」
17/02/26 14:36更新 / ゆず胡椒
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