4章 深夜
ここは･･･いや『これ』はなんだろう。
『これ』を簡単に説明できる者はいるのだろうか。
ただひたすらに暗く、どす黒く、禍々しく、おぞましく、恐ろしく･･･
どう言葉で説明できようか。
ただ『これ』が何なのか。
理解できたものは―――
-------------------------------------
（遅い･･･少し時間がかかりすぎているんじゃ･･･）
ソフィアはグレイ達の戻りが想像以上に遅く、彼女の顔は不安の色を隠せないで居た。
そこにミラージュが歩み寄り耳元でささやく。
「大丈夫よ。団長がついてるじゃない。団長の強さやたくましさは貴方が一番わかっているでしょ？
それにね･･･私の彼は頼りないけど･･･いざという時は役に立つのよ？もっと信じてあげなさいよ。」
不安そうな気持ちを感じ取ったのか、笑いながら声をかける。
「･･･そうよね。
ありがとう。･･･励ましてもらうとは私も副団長としてまだまだね！彼にもっと近づかなければね！それにスノウの実力は私も十分熟知していますよ！」
「そうそう♪あなたはやっぱりそんな暗い顔してるより、笑った顔の方がお似合いだわ♪」
ささやいているつもりがくすくすと笑い声に変わり、周囲の兵士達へと伝染していった。
しかし、その場の空気をかき消すかのように―――
「何だ･･･あれ･･･？」
一人の兵士が前方を見て驚愕する。
「なっ･･･！？どういうことなの･･･？あの数は･･･」
ソフィアもそう呟く。そこには、魔界の暗闇でもわかるほどのハーピーの群れが前方、まさにグレイ達が居るであろう裏門前に無数に群がっていた。
（やはり起きてはならないことが起きてしまった･･･！）
ハーピーの群れを見て兵士達、魔術師達は腰を落とし落胆する。完全に戦意を喪失してしまったようだ。
「あ、あんなのどうすりゃいいんだよ･･･
私達どうなっちゃうの！？
もうお終いだぁ･･･」
「喝！！！！！」
ソフィアは渾身の大声で怒鳴り散らす。大声を出してしまったが、今はそんなことはどうでもいいという様に。
「あなた達！その姿は何ですか！？私達には帰るべき場所があるのでしょう？待っている人が居るのでしょう？必ず帰ると約束したじゃないですか！
私達は今までたとえどんな状況でも決してあきらめずに最後まで屈しませんでした。今も同じです。団長達があきらめていない限り、私達もあきらめるわけにはいかないのです！！！！！」
ソフィアは熱意を込めて叫ぶ。その魂の叫びは兵士達に届いたのだろうか。だがそれを確かめることは彼女はしない。
「私は先に行きます。あなた達は私の後をついてきてください。」
ソフィアはそう言うと剣を取る。
「ミラージュ！魔法をお願いします！」
「ソフィア･･･私たちもすぐに駆けつけるわ。『速度増加！』」
ミラージュは魔法を唱えると、ソフィアの体はたちまち軽くなった。
「助かるわ。また後で会いましょう。」
彼女はそう言うと物凄い速さで土煙を上げ裏門へ走っていった。
（待っててね･･･グレイ！）
彼女が副団長たるゆえんはそのリーダーシップや剣術が主だが、そのほかに彼女の『速さ』にもある。この『速さ』は訓練で鍛えたものではなく、生まれつきで持った彼女の才能である。彼女の『速さ』と剣技が合わさると、相手は痛みを感じる前にトドメをさされているというがそれはまた別の話。
今はミラージュの魔法によって身体能力が格段に上昇しており彼女の『速さ』は風のそれと変わらないだろう。
彼女の黒い長髪はなびいている。まるで魔界の暗闇に負けじと抗うかのように･･･
「ほぉれぇほれ〜何にもしてこんのかぁ？」
バフォメットはグレイ達を軽く挑発するかのような口調で話し続ける。
（どう考えても戦って勝てる数じゃない･･･じゃあどうする？むざむざ負け戦をするか？いや駄目だ。俺達には帰る場所がある。いまこの状況をどう打開するか考えるんだ。）
グレイは非常に今の状況に焦っているが、逆に安心もしていた。バフォメットの背後に控えている魔物の大軍勢を見ても、先ほどの異質な恐怖を感じなかったからである。
さらに、その様なグレイを見て、スノウもまた思う。
（クソッ！こんなとこまで来てこんな最悪なことになるとは！
俺がもっとちゃんとしてれば！もっと強ければ･･･）
スノウはこぶしを握り締め震えていた。また、他の兵士達もどうにかならないかと一生懸命考えている者もいるようだが、しかし、ここまで来た疲労のせいかまともな考えを思いつくはずもなかった。
長い間両者の沈黙は続く。
「むぅ。つまらんのぉ。何もしてこないなら―――わしの方から何かしちゃうぞ♪」
「「「「「！！！！」」」」
バフォメットは沈黙を切り裂くと同時にその様なことを呟きこちらをちらちらと見ている。
「皆、奴の言葉に騙されるな。安心しろ、奴はかかっては来ない。
あいつは･･･あのバフォメットは俺達が困っているのを楽しんでやがる･･･」
「･･･ちっ、気づきおったか。つまらんやつじゃの。」
バフォメットもまた考え事をしているようだった。倒そうと思えば簡単に倒すことが出来るが、それではつまらないのでもっと面白いことが出来るのではないかと･･･
「グレイッ！」
再度沈黙は切り裂かれる。
「皆も･･･よかった、無事だったのね！･･･でもこの状況は無事じゃないか･･･」
ソフィアが驚くべき速さでグレイ達のところへたどり着いた。彼らが１０分かけて歩いてきたところを彼女はものの１分で。そして遅れて残された兵士達やミラージュ達魔術師たちが追いついた。
駆けつけたソフィアはバフォメット、魔物の大軍勢、そして兵士達の顔を見て、やはり良くないことが起こったと一瞬で理解した。
「ソフィアか！無事でよかった･･･だがここは危険だ。今すぐ戻れ。」
「･･･嫌！私は恋人であると同時に副団長よ！団長の背中は副団長にしか務まらないわ！」
「･･･わかったわかった。頼りにしてるぞ。副団長兼恋人さんよ！」
（カアァッ･･･////）
ソフィアはそう言われるとゆでだこのように顔を真っ赤にする。グレイも自分で言って恥ずかしかったのか同じく顔が赤くなった。
「お二人とも〜！イチャイチャは地上に戻ってからにしてくださいよ！
とりあえず今をどうにかしないと･･･」
「あらあら、あなたらしくないセリフねぇ〜？」
ミラージュは杖でスノウを突っついた。
「･･･むぅ。つまらん。もしかしてわし、空気になっておらんかぁ？」
「なんじゃあの小娘？んん〜？恋人だとぉ？･･････！これはこれはなんとも面白い！」
彼女はとても気味が悪いほどにニタリと笑うとこう言った。
「おい！そこのグ･･･（名前なんじゃっけ？）アホの大将！おまえじゃおまえ！」
突如聞こえた彼女の怒鳴りにグレイは耳を傾けなおかつ、睨みをきかせる。
「そうそうおまえじゃ。わしの見る限りおまえは人間でも勇者に近い実力者のようじゃ。だから―――
わしの『お兄ちゃん』になってくれんかの♪」
衝撃の言葉にその場にいる全員、魔物たちでさえ驚愕した。
「そんなことできるわけがな「んななななななに言ってんのよ！！！」
グレイの言葉を押しのけ食いかかるソフィア。
「わしも『お兄ちゃん』がいないままもう数千年とたってしまってのぉ。そろそろ欲しいと思っていたんじゃが･･･なんせわしらバフォメットはよほど強い男でないと結ばれんからのぉ。だから丁度目の前にいるアホの大将に『お兄ちゃん』になってもらうんじゃ////きゃっ♪」
バフォメットは頬を赤らめ照れくさそうにモジモジしている。先ほどの様子とは一変して、一人の少女のように。
「ハァァ！？そんな理由で結婚しようっての！？ざけんじゃねぇぞごら！てめぇがグレイと結ばれようなんて一万年はやいんじゃぼげぇ！」
「･･･ソフィア。まずはよく落ち着け。よーく落ち着け奴の顔をよく見てみろ、おまえは口車に乗せられているだけだ。」
「ハッ！！！ご、ごめん･･･取り乱しちゃった////」
普通は今のように罵声を浴びせられたらどんな者でも腹が立つはずなのだが、バフォメットはまるでそれを知っているかのように笑いが吹き出すのをこらえていた。
「くっ･･･うっ･･･ぷっ･･･はぁぁ。まったくリアクションが最高じゃったぞぉ〜あぁなんともユカイユカィ」
「ほらな。ああいう奴はまともな話しをしても無駄ってわけだ。」
「くっ･･･私としたことが弱みをつけられたわけね･･･」
グレイはもう選択肢がないことに気がついていた。
（よくよく考えると先ほどの話し合いでもまともに話していたのはあのドラゴンだけだったじゃないか。俺達は初めからまんまとはめられていた訳か･･･）
グレイ達は覚悟を決めなければいけないようだ。
「にしてもそこのアホの大将、よくわしの演技を見破ったのぉ。
･･･つっくづく気にくわぬしつまらん奴じゃ」
バフォメットがそうため息をついたその時――――――
ピシッ
「！？」
どこからか奇妙な音がする。よくよく耳を澄ますとそれはグレイ達とバフォメット大軍勢のにらみ合ってる間から鳴っているようだ。その音は二度三度･･･と段々が増えていく。
その音は一度大きく鳴ったと思うと、グレイ達とバフォメット大軍勢の間に大きな亀裂が生じた。
「なんだこれは･･･おい。お前がやったのか？」
「？？お前達じゃないのかのぉ？わしは知らぬぞ？」
亀裂はどんどん大きくなり空間が歪んでいく。そしてその中心には黒く小さな点が一つ形成されていき、たちまち膨張していく。
それが人一人分の大きな黒い球体になったかと思うと―――
黒く大きな球体から黒髪の少女が一人･･･浮き出てきた。
突然黒い球体から無数の触手が生えてきて、少女を弄ぶかのように体をまさぐる。少女の秘部はというと黒い球体と密着しており、直に刺激させられているようだ。少女の顔はたちまち赤くなり、体をくねらせ、快感に浸っている。
「なによ『これ』･･･『これ』は魔物なの？」
「俺が知る限り･･･いままで肉眼でも王国図書館の図鑑でも見たことがない。」
「わしも長いこと生きているが、こんなやつ見たことないのぉ。」
一同は『これ』をじっと見つめている。
「あんっ！あっ･･･き、きもちいい･･･」
少女が発した初めての声が喘ぎ声であった。無数に生える触手によって体中の性感帯が刺激される少女。常人ならば発狂ものだろうがそれに耐えうる姿を見ると、やはり人ならざる者なのかもしれない。
「はいってく･･･くろいの！くろくてながいのはいってくよぉ！」
容赦なく少女の中に入っていく触手。入れたばかりだというのにもうラストスパートかというほどの激しさで少女を突く触手は、少女を絶頂にさせるのに十分であった。少女の秘部からは蜜が滴り落ちる。
「はっ･･･はげしっ･･･あっ･･･もう･･･い、いく！いっちゃう！！」
少女の体がピクピクと動き出した時、ただならぬ恐怖を感じた。そう、グレイが今までずっと感じていた恐怖そのものである。
（！！！！！この恐怖は！？）
グレイは瞬時に大剣を抜き地面に刺し、その影に隠れた。
ソフィアやスノウ、恐怖を感じた一部の兵士達はすかさず後ろへ身を引いた。
ミラージュや力の残っている魔術師は瞬時に出せる一人分の障壁を出す。
「･･･もうだめ！いくいく！！･･････あああああああああああああぁぁぁぁん！」
少女が絶頂を迎えたと同時に、『それ』から黒い光が輝く。逃げ遅れた兵士達や魔術師達は、黒い光に呑まれ―――
そこにはインキュバスとレッサーサキュバスだけが残った･･･
『これ』を簡単に説明できる者はいるのだろうか。
ただひたすらに暗く、どす黒く、禍々しく、おぞましく、恐ろしく･･･
どう言葉で説明できようか。
ただ『これ』が何なのか。
理解できたものは―――
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（遅い･･･少し時間がかかりすぎているんじゃ･･･）
ソフィアはグレイ達の戻りが想像以上に遅く、彼女の顔は不安の色を隠せないで居た。
そこにミラージュが歩み寄り耳元でささやく。
「大丈夫よ。団長がついてるじゃない。団長の強さやたくましさは貴方が一番わかっているでしょ？
それにね･･･私の彼は頼りないけど･･･いざという時は役に立つのよ？もっと信じてあげなさいよ。」
不安そうな気持ちを感じ取ったのか、笑いながら声をかける。
「･･･そうよね。
ありがとう。･･･励ましてもらうとは私も副団長としてまだまだね！彼にもっと近づかなければね！それにスノウの実力は私も十分熟知していますよ！」
「そうそう♪あなたはやっぱりそんな暗い顔してるより、笑った顔の方がお似合いだわ♪」
ささやいているつもりがくすくすと笑い声に変わり、周囲の兵士達へと伝染していった。
しかし、その場の空気をかき消すかのように―――
「何だ･･･あれ･･･？」
一人の兵士が前方を見て驚愕する。
「なっ･･･！？どういうことなの･･･？あの数は･･･」
ソフィアもそう呟く。そこには、魔界の暗闇でもわかるほどのハーピーの群れが前方、まさにグレイ達が居るであろう裏門前に無数に群がっていた。
（やはり起きてはならないことが起きてしまった･･･！）
ハーピーの群れを見て兵士達、魔術師達は腰を落とし落胆する。完全に戦意を喪失してしまったようだ。
「あ、あんなのどうすりゃいいんだよ･･･
私達どうなっちゃうの！？
もうお終いだぁ･･･」
「喝！！！！！」
ソフィアは渾身の大声で怒鳴り散らす。大声を出してしまったが、今はそんなことはどうでもいいという様に。
「あなた達！その姿は何ですか！？私達には帰るべき場所があるのでしょう？待っている人が居るのでしょう？必ず帰ると約束したじゃないですか！
私達は今までたとえどんな状況でも決してあきらめずに最後まで屈しませんでした。今も同じです。団長達があきらめていない限り、私達もあきらめるわけにはいかないのです！！！！！」
ソフィアは熱意を込めて叫ぶ。その魂の叫びは兵士達に届いたのだろうか。だがそれを確かめることは彼女はしない。
「私は先に行きます。あなた達は私の後をついてきてください。」
ソフィアはそう言うと剣を取る。
「ミラージュ！魔法をお願いします！」
「ソフィア･･･私たちもすぐに駆けつけるわ。『速度増加！』」
ミラージュは魔法を唱えると、ソフィアの体はたちまち軽くなった。
「助かるわ。また後で会いましょう。」
彼女はそう言うと物凄い速さで土煙を上げ裏門へ走っていった。
（待っててね･･･グレイ！）
彼女が副団長たるゆえんはそのリーダーシップや剣術が主だが、そのほかに彼女の『速さ』にもある。この『速さ』は訓練で鍛えたものではなく、生まれつきで持った彼女の才能である。彼女の『速さ』と剣技が合わさると、相手は痛みを感じる前にトドメをさされているというがそれはまた別の話。
今はミラージュの魔法によって身体能力が格段に上昇しており彼女の『速さ』は風のそれと変わらないだろう。
彼女の黒い長髪はなびいている。まるで魔界の暗闇に負けじと抗うかのように･･･
「ほぉれぇほれ〜何にもしてこんのかぁ？」
バフォメットはグレイ達を軽く挑発するかのような口調で話し続ける。
（どう考えても戦って勝てる数じゃない･･･じゃあどうする？むざむざ負け戦をするか？いや駄目だ。俺達には帰る場所がある。いまこの状況をどう打開するか考えるんだ。）
グレイは非常に今の状況に焦っているが、逆に安心もしていた。バフォメットの背後に控えている魔物の大軍勢を見ても、先ほどの異質な恐怖を感じなかったからである。
さらに、その様なグレイを見て、スノウもまた思う。
（クソッ！こんなとこまで来てこんな最悪なことになるとは！
俺がもっとちゃんとしてれば！もっと強ければ･･･）
スノウはこぶしを握り締め震えていた。また、他の兵士達もどうにかならないかと一生懸命考えている者もいるようだが、しかし、ここまで来た疲労のせいかまともな考えを思いつくはずもなかった。
長い間両者の沈黙は続く。
「むぅ。つまらんのぉ。何もしてこないなら―――わしの方から何かしちゃうぞ♪」
「「「「「！！！！」」」」
バフォメットは沈黙を切り裂くと同時にその様なことを呟きこちらをちらちらと見ている。
「皆、奴の言葉に騙されるな。安心しろ、奴はかかっては来ない。
あいつは･･･あのバフォメットは俺達が困っているのを楽しんでやがる･･･」
「･･･ちっ、気づきおったか。つまらんやつじゃの。」
バフォメットもまた考え事をしているようだった。倒そうと思えば簡単に倒すことが出来るが、それではつまらないのでもっと面白いことが出来るのではないかと･･･
「グレイッ！」
再度沈黙は切り裂かれる。
「皆も･･･よかった、無事だったのね！･･･でもこの状況は無事じゃないか･･･」
ソフィアが驚くべき速さでグレイ達のところへたどり着いた。彼らが１０分かけて歩いてきたところを彼女はものの１分で。そして遅れて残された兵士達やミラージュ達魔術師たちが追いついた。
駆けつけたソフィアはバフォメット、魔物の大軍勢、そして兵士達の顔を見て、やはり良くないことが起こったと一瞬で理解した。
「ソフィアか！無事でよかった･･･だがここは危険だ。今すぐ戻れ。」
「･･･嫌！私は恋人であると同時に副団長よ！団長の背中は副団長にしか務まらないわ！」
「･･･わかったわかった。頼りにしてるぞ。副団長兼恋人さんよ！」
（カアァッ･･･////）
ソフィアはそう言われるとゆでだこのように顔を真っ赤にする。グレイも自分で言って恥ずかしかったのか同じく顔が赤くなった。
「お二人とも〜！イチャイチャは地上に戻ってからにしてくださいよ！
とりあえず今をどうにかしないと･･･」
「あらあら、あなたらしくないセリフねぇ〜？」
ミラージュは杖でスノウを突っついた。
「･･･むぅ。つまらん。もしかしてわし、空気になっておらんかぁ？」
「なんじゃあの小娘？んん〜？恋人だとぉ？･･････！これはこれはなんとも面白い！」
彼女はとても気味が悪いほどにニタリと笑うとこう言った。
「おい！そこのグ･･･（名前なんじゃっけ？）アホの大将！おまえじゃおまえ！」
突如聞こえた彼女の怒鳴りにグレイは耳を傾けなおかつ、睨みをきかせる。
「そうそうおまえじゃ。わしの見る限りおまえは人間でも勇者に近い実力者のようじゃ。だから―――
わしの『お兄ちゃん』になってくれんかの♪」
衝撃の言葉にその場にいる全員、魔物たちでさえ驚愕した。
「そんなことできるわけがな「んななななななに言ってんのよ！！！」
グレイの言葉を押しのけ食いかかるソフィア。
「わしも『お兄ちゃん』がいないままもう数千年とたってしまってのぉ。そろそろ欲しいと思っていたんじゃが･･･なんせわしらバフォメットはよほど強い男でないと結ばれんからのぉ。だから丁度目の前にいるアホの大将に『お兄ちゃん』になってもらうんじゃ////きゃっ♪」
バフォメットは頬を赤らめ照れくさそうにモジモジしている。先ほどの様子とは一変して、一人の少女のように。
「ハァァ！？そんな理由で結婚しようっての！？ざけんじゃねぇぞごら！てめぇがグレイと結ばれようなんて一万年はやいんじゃぼげぇ！」
「･･･ソフィア。まずはよく落ち着け。よーく落ち着け奴の顔をよく見てみろ、おまえは口車に乗せられているだけだ。」
「ハッ！！！ご、ごめん･･･取り乱しちゃった////」
普通は今のように罵声を浴びせられたらどんな者でも腹が立つはずなのだが、バフォメットはまるでそれを知っているかのように笑いが吹き出すのをこらえていた。
「くっ･･･うっ･･･ぷっ･･･はぁぁ。まったくリアクションが最高じゃったぞぉ〜あぁなんともユカイユカィ」
「ほらな。ああいう奴はまともな話しをしても無駄ってわけだ。」
「くっ･･･私としたことが弱みをつけられたわけね･･･」
グレイはもう選択肢がないことに気がついていた。
（よくよく考えると先ほどの話し合いでもまともに話していたのはあのドラゴンだけだったじゃないか。俺達は初めからまんまとはめられていた訳か･･･）
グレイ達は覚悟を決めなければいけないようだ。
「にしてもそこのアホの大将、よくわしの演技を見破ったのぉ。
･･･つっくづく気にくわぬしつまらん奴じゃ」
バフォメットがそうため息をついたその時――――――
ピシッ
「！？」
どこからか奇妙な音がする。よくよく耳を澄ますとそれはグレイ達とバフォメット大軍勢のにらみ合ってる間から鳴っているようだ。その音は二度三度･･･と段々が増えていく。
その音は一度大きく鳴ったと思うと、グレイ達とバフォメット大軍勢の間に大きな亀裂が生じた。
「なんだこれは･･･おい。お前がやったのか？」
「？？お前達じゃないのかのぉ？わしは知らぬぞ？」
亀裂はどんどん大きくなり空間が歪んでいく。そしてその中心には黒く小さな点が一つ形成されていき、たちまち膨張していく。
それが人一人分の大きな黒い球体になったかと思うと―――
黒く大きな球体から黒髪の少女が一人･･･浮き出てきた。
突然黒い球体から無数の触手が生えてきて、少女を弄ぶかのように体をまさぐる。少女の秘部はというと黒い球体と密着しており、直に刺激させられているようだ。少女の顔はたちまち赤くなり、体をくねらせ、快感に浸っている。
「なによ『これ』･･･『これ』は魔物なの？」
「俺が知る限り･･･いままで肉眼でも王国図書館の図鑑でも見たことがない。」
「わしも長いこと生きているが、こんなやつ見たことないのぉ。」
一同は『これ』をじっと見つめている。
「あんっ！あっ･･･き、きもちいい･･･」
少女が発した初めての声が喘ぎ声であった。無数に生える触手によって体中の性感帯が刺激される少女。常人ならば発狂ものだろうがそれに耐えうる姿を見ると、やはり人ならざる者なのかもしれない。
「はいってく･･･くろいの！くろくてながいのはいってくよぉ！」
容赦なく少女の中に入っていく触手。入れたばかりだというのにもうラストスパートかというほどの激しさで少女を突く触手は、少女を絶頂にさせるのに十分であった。少女の秘部からは蜜が滴り落ちる。
「はっ･･･はげしっ･･･あっ･･･もう･･･い、いく！いっちゃう！！」
少女の体がピクピクと動き出した時、ただならぬ恐怖を感じた。そう、グレイが今までずっと感じていた恐怖そのものである。
（！！！！！この恐怖は！？）
グレイは瞬時に大剣を抜き地面に刺し、その影に隠れた。
ソフィアやスノウ、恐怖を感じた一部の兵士達はすかさず後ろへ身を引いた。
ミラージュや力の残っている魔術師は瞬時に出せる一人分の障壁を出す。
「･･･もうだめ！いくいく！！･･････あああああああああああああぁぁぁぁん！」
少女が絶頂を迎えたと同時に、『それ』から黒い光が輝く。逃げ遅れた兵士達や魔術師達は、黒い光に呑まれ―――
そこにはインキュバスとレッサーサキュバスだけが残った･･･
10/09/12 21:53更新 / ゆず胡椒
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