1章 黄昏
ここは魔界。
空は暗く、大地は荒れ果て、木々はなんとも禍々しいものばかりである。
だがそれは人間の視点なのであって、魔物からしてみれば美しいのだ。
そこに重装備を着て歩く者。弓や武器を担ぐ者。
ローブを羽織り杖を持つ者など多種多様の人間が・・・進軍していた。
---------------------------------
「目的地まであとどれくらいだ?」
「この位置ですと・・・あと一時間ほどですね」
「もうそれだけ近づいたか・・・よし!」
先頭にいる身の丈はかなり大きく、一際大きな鎧にマント。そして身の丈をゆうに超える大剣を背負った男がそう言うと、さらに前に出て兵士達の目に映る小高い丘に登り、こう叫ぶ。
「皆聞け!目的地まであと一時間だという!よって各自休憩を入れ、万全の体調で挑めるように!!」
そう叫ぶと彼はまたさっきまで居たところに戻った。
彼は王国騎士団団長のグレイ=ヴォルグ。
今、ここの休憩を入れている軍の団長でもある。なぜ王国騎士団が魔界にいるのかというと、理由は一つしかなく近々、魔王軍が王国に進軍する予定という情報が入ったからだ。
元々騎士団は王国を守る為にあるので、自分達から攻撃などは絶対にしない。だが、魔物が絡むとそういうこともいかなく、早期に事を解決しなければいけない。気を抜くと一晩で魔物によって王国は堕ちてしまうからだ。
今回は魔王軍が「進軍する予定」という確かな情報が入ったので進軍される前に魔王軍側に威嚇と警告をする為、魔界に入ったというわけである。
「996!997!998!」
グレイは食事を終え背中に背負っていた大剣を素振りしていた。
今回は戦う予定ではないのだが、かならず毎日、昼食後に素振り千回が彼の日課らしい。といっても、常に薄暗い魔界では昼か夜かわからないので、この素振りも昼食後なのかと聞かれると微妙である。
だが、この休憩場所は騎士団の兵士達が全員やっと入りきれるくらいの狭さなので、兵士達の居場所が無い。ましてや彼の大剣は大きすぎるので、非常に迷惑である。
「999!100・・・」
千回に達しようとしたその時、誰かの手により小石がグレイ目掛けて飛んでいく。
ゴスッ
「痛っ!」
グレイは頭に当たっただろう小石を拾いこう言う。
「・・・文句がある人はちゃんとお兄さんとお話しような?な?」
顔は笑顔だが凄まじい気迫。兵士達は自分じゃないという顔つきでざわつきだした。
「グレイ!またあなたは兵士達の邪魔をして!!何度言えばわかるのよもう・・・」
美しいほど黒く長いロングヘアーで凛とした顔立ち、細い体に腰には剣を挿している女性が一人いた。
彼女は何か物を投げたフォームをしておりグレイはすぐに理解した。
「あぁ・・・悪い悪い。もっと回数を減らせばよかったな。」
「そういう問題じゃないんだけど・・・」
「冗談だ。皆悪かったな。」
彼は大剣を置くとドスンと少し地が揺れたが、兵士達はグレイの素振りに開放されたのか安堵の顔つきだ。
彼女はソフィア=ウィン。
王国騎士団副団長を務めており、数少ない女性の騎士団員である。
女性だが副団長だけあって実力は本物だ。剣技とスピードならグレイより格上だろう。もっとも他の女性の騎士団員はほとんどが魔術師部隊なので実際、剣を使う女性は彼女くらいなのだが。
そしてなんとソフィアはグレイの彼女でもある!
ソフィアはグレイの隣に座る。
「もうすぐだね・・・」
「ああ。だが今回の任務はそんなに気合をいれなくてもいいぞ?魔王軍に警告をしたら俺達もすぐに帰還するつもりだからな。こんな湿っぽくて陰気なところは気分が悪い。」
「それもそうだね。私も同感。」
「まぁソフィアの腕前なら魔界にいても十分太刀打ちできるんじゃないか?」
「そうねぇ・・・ヴァンパイアくらいならどうにかなるかな。」
「ヴァンパイアか。戦ったことはあるのか?」
「あるわよ!副団長をなめないでほしいわ!」
「ふーむ・・・でもソフィアは魔界初めてだろ?まぁ一応アドバイスするならまず『逃げとけ』ってこったな。」
「え・・・そ、それじゃ騎士の名に恥よ!『後ろを振り向くな』よ!」
ソフィアの騎士道精神は団長のグレイのそれよりも高いのではないだろうか。
「魔界の魔物は地上の魔物よりひとまわり強い。それにヴァンパイアは速いわ怪力だわ魔力は高いわだぞ。逃げるのも困難だろうな。」
「そんな・・・どうにかならないの?」
「ソフィアの実力なら惜しいところまでいけると思うがな。捕まってヴァンパイアに魔物化されるのがオチだな。」
「うぅ・・・そこは冗談って言ってよ〜」
「まぁそうならないためにも俺がお前を守ってやるけどな。」
「グレイ・・・あ、ありがとう////」
などと他愛も無いことを話す二人。
兵士達はニヤニヤしている者とイライラしている者がいて二人を見ていた。
休憩が終わり、再び歩き続ける一行。気力を取り戻したのか足早になる。そしてようやく目的地が見えてきた。
「あ、あれが魔王城・・・」
兵士達は皆、口を開けて見上げていた。そこにあるのは人間界には存在しないほどの巨大な建造物『魔王城』。見上げても途中から魔界の雲によって見ることが出来なかった。
やはり魔界の雰囲気なのか禍々しい彫刻などがたくさん飾ってある。これも魔物にとっては美術作品なのだろう。
正門前には『サキュバスの城下町』があり、一体を囲むように『触手の森』が鬱蒼としている。グレイは少し考え事をし、
「待て。俺達に用があるのはこっちじゃない。」
そう言うと一行を止める。
「このまま進んでいっても城下町に出て、非常に危ない。まして、突破したとして魔王城の正門だ。危険に変わりは無いだろう。」
「よってこれから俺達はこの触手の森を抜け、魔王城裏門に回る。」
兵士達はざわつく。
「触手の森か・・・やはりそこしか道はないようですね。」
ソフィアがしんみりとうつむいて言う。
「ああ。危険だが、逆を言えば安全でもある。魔物は少なく、森を駆け抜けるだけだからな。だが・・・」
「すいません!それ以外ではどうにかならないんですか!?」
そう言ったのは女兵士達である。グレイもこうなる事とはわかっていた。
触手の森は男性なら肉体的攻撃を受けるだけだが、女性がひとたび足を踏み入れたらツル状の植物によって性的攻撃を受け、体の穴という穴に触手がもぐりこみ快楽地獄に陥り抜け出すことは出来なくなる。
唯一抜け出す方法が皮肉なことに魔物化でしかなく、つまり一度捕まれば死にこそはしないが、人間としての死を意味する。それらは彼女達を躊躇させるには十分であった。
「帰りを待ってる夫子がいるのに・・・
まだ死にたくないよぉ・・・」
一人泣くとまた一人、恐怖というもらい泣きが伝染していく中でソフィアは怒鳴る。
「泣くんじゃない!あなた達はそれを覚悟した上で魔界に来たんでしょ?わたしだって怖いわよ。でもね、ここまできておめおめ引き下がることもいかないのよ・・・」
そういうソフィアの瞳にも涙が流れていた。彼女も恐怖に押し潰されないよう耐えてたが限界だったのだろう。ぺたりと腰が落ち、そして長い沈黙。
グレイが何かを決意したのか、重々しい沈黙を破った。
「大丈夫だ。俺達がついてる。
俺達がどんなことがあっても全力をかけてお前達を守り通す。絶対にな。」
グレイはそう言うと男兵士に目をやりクイッと顎で女兵士達を指す。
「そうだろう?お前達?」
グレイが語りかける。男兵士は女兵士に一人一人歩み寄り肩を貸し、その声は自信のあふれるものだった。
「私行けます!
私も・・・ 私も・・・!」
しばらくすすり泣く彼女らの声は段々少なくなり、やがて消えた。女兵士達の目からは涙はなくなり、代わりに決意に溢れている。
「ソフィア・・・俺が守ってやるから。だから、泣くな。それにな、もともと騎士団は守る専門なのは知らないわけないだろ?」
「うっ・・・かっこつけすぎ・・・」
ソフィアは今までの栓が外れたようにまだ泣いていたが、それを制するようにグレイはソフィアを優しく抱いた。
「皆聞いてくれ。俺も実はこんな魔界の深部まで脚を踏み入れたことが故、こんな厳しい任務だと思わなかった。まずはあやまっておく『すまない』。全員でそろって無事という保障は出来ないだろう。」
「しかし俺達には帰る場所がある。それだけは忘れないでくれ。」
皆の決意は固まったようで、揺るぎない気を感じる。これなら安心だろう。
「男は女を取り囲みながら進め。女はできるだけ男に密着し全力で走るように!私とグレイで道を切り開きます。」
ソフィアは兵士達に指示をこと細かく出していた。何が起こるかまるでわからないため、厳重に厳重を重ね用心していなければならない。
「万が一触手に捕まったら・・・」
そこでソフィアの口が止まった。わかってはいるが口に出したくなかった。
「はい。『後ろを振り向くな』ですよね。」
「・・・そうだ。決して振り向くな。男達もそこまで守りきれないだろう。これが最善の策なんだ・・・」
準備は整った。あとはグレイの指示だけである。
グレイとソフィアが先頭に立つ。その後ろに女兵士達を囲むように男兵士達が円になっている。奇妙で滅茶苦茶な陣形だがこれが即席で考えうる最高の陣であった。そしてグレイは叫ぶ。
「覚悟はいいか!目指すは魔王城裏門!!!!」
騎士団一行は森に吸い込まれるように姿を消した・・・
空は暗く、大地は荒れ果て、木々はなんとも禍々しいものばかりである。
だがそれは人間の視点なのであって、魔物からしてみれば美しいのだ。
そこに重装備を着て歩く者。弓や武器を担ぐ者。
ローブを羽織り杖を持つ者など多種多様の人間が・・・進軍していた。
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「目的地まであとどれくらいだ?」
「この位置ですと・・・あと一時間ほどですね」
「もうそれだけ近づいたか・・・よし!」
先頭にいる身の丈はかなり大きく、一際大きな鎧にマント。そして身の丈をゆうに超える大剣を背負った男がそう言うと、さらに前に出て兵士達の目に映る小高い丘に登り、こう叫ぶ。
「皆聞け!目的地まであと一時間だという!よって各自休憩を入れ、万全の体調で挑めるように!!」
そう叫ぶと彼はまたさっきまで居たところに戻った。
彼は王国騎士団団長のグレイ=ヴォルグ。
今、ここの休憩を入れている軍の団長でもある。なぜ王国騎士団が魔界にいるのかというと、理由は一つしかなく近々、魔王軍が王国に進軍する予定という情報が入ったからだ。
元々騎士団は王国を守る為にあるので、自分達から攻撃などは絶対にしない。だが、魔物が絡むとそういうこともいかなく、早期に事を解決しなければいけない。気を抜くと一晩で魔物によって王国は堕ちてしまうからだ。
今回は魔王軍が「進軍する予定」という確かな情報が入ったので進軍される前に魔王軍側に威嚇と警告をする為、魔界に入ったというわけである。
「996!997!998!」
グレイは食事を終え背中に背負っていた大剣を素振りしていた。
今回は戦う予定ではないのだが、かならず毎日、昼食後に素振り千回が彼の日課らしい。といっても、常に薄暗い魔界では昼か夜かわからないので、この素振りも昼食後なのかと聞かれると微妙である。
だが、この休憩場所は騎士団の兵士達が全員やっと入りきれるくらいの狭さなので、兵士達の居場所が無い。ましてや彼の大剣は大きすぎるので、非常に迷惑である。
「999!100・・・」
千回に達しようとしたその時、誰かの手により小石がグレイ目掛けて飛んでいく。
ゴスッ
「痛っ!」
グレイは頭に当たっただろう小石を拾いこう言う。
「・・・文句がある人はちゃんとお兄さんとお話しような?な?」
顔は笑顔だが凄まじい気迫。兵士達は自分じゃないという顔つきでざわつきだした。
「グレイ!またあなたは兵士達の邪魔をして!!何度言えばわかるのよもう・・・」
美しいほど黒く長いロングヘアーで凛とした顔立ち、細い体に腰には剣を挿している女性が一人いた。
彼女は何か物を投げたフォームをしておりグレイはすぐに理解した。
「あぁ・・・悪い悪い。もっと回数を減らせばよかったな。」
「そういう問題じゃないんだけど・・・」
「冗談だ。皆悪かったな。」
彼は大剣を置くとドスンと少し地が揺れたが、兵士達はグレイの素振りに開放されたのか安堵の顔つきだ。
彼女はソフィア=ウィン。
王国騎士団副団長を務めており、数少ない女性の騎士団員である。
女性だが副団長だけあって実力は本物だ。剣技とスピードならグレイより格上だろう。もっとも他の女性の騎士団員はほとんどが魔術師部隊なので実際、剣を使う女性は彼女くらいなのだが。
そしてなんとソフィアはグレイの彼女でもある!
ソフィアはグレイの隣に座る。
「もうすぐだね・・・」
「ああ。だが今回の任務はそんなに気合をいれなくてもいいぞ?魔王軍に警告をしたら俺達もすぐに帰還するつもりだからな。こんな湿っぽくて陰気なところは気分が悪い。」
「それもそうだね。私も同感。」
「まぁソフィアの腕前なら魔界にいても十分太刀打ちできるんじゃないか?」
「そうねぇ・・・ヴァンパイアくらいならどうにかなるかな。」
「ヴァンパイアか。戦ったことはあるのか?」
「あるわよ!副団長をなめないでほしいわ!」
「ふーむ・・・でもソフィアは魔界初めてだろ?まぁ一応アドバイスするならまず『逃げとけ』ってこったな。」
「え・・・そ、それじゃ騎士の名に恥よ!『後ろを振り向くな』よ!」
ソフィアの騎士道精神は団長のグレイのそれよりも高いのではないだろうか。
「魔界の魔物は地上の魔物よりひとまわり強い。それにヴァンパイアは速いわ怪力だわ魔力は高いわだぞ。逃げるのも困難だろうな。」
「そんな・・・どうにかならないの?」
「ソフィアの実力なら惜しいところまでいけると思うがな。捕まってヴァンパイアに魔物化されるのがオチだな。」
「うぅ・・・そこは冗談って言ってよ〜」
「まぁそうならないためにも俺がお前を守ってやるけどな。」
「グレイ・・・あ、ありがとう////」
などと他愛も無いことを話す二人。
兵士達はニヤニヤしている者とイライラしている者がいて二人を見ていた。
休憩が終わり、再び歩き続ける一行。気力を取り戻したのか足早になる。そしてようやく目的地が見えてきた。
「あ、あれが魔王城・・・」
兵士達は皆、口を開けて見上げていた。そこにあるのは人間界には存在しないほどの巨大な建造物『魔王城』。見上げても途中から魔界の雲によって見ることが出来なかった。
やはり魔界の雰囲気なのか禍々しい彫刻などがたくさん飾ってある。これも魔物にとっては美術作品なのだろう。
正門前には『サキュバスの城下町』があり、一体を囲むように『触手の森』が鬱蒼としている。グレイは少し考え事をし、
「待て。俺達に用があるのはこっちじゃない。」
そう言うと一行を止める。
「このまま進んでいっても城下町に出て、非常に危ない。まして、突破したとして魔王城の正門だ。危険に変わりは無いだろう。」
「よってこれから俺達はこの触手の森を抜け、魔王城裏門に回る。」
兵士達はざわつく。
「触手の森か・・・やはりそこしか道はないようですね。」
ソフィアがしんみりとうつむいて言う。
「ああ。危険だが、逆を言えば安全でもある。魔物は少なく、森を駆け抜けるだけだからな。だが・・・」
「すいません!それ以外ではどうにかならないんですか!?」
そう言ったのは女兵士達である。グレイもこうなる事とはわかっていた。
触手の森は男性なら肉体的攻撃を受けるだけだが、女性がひとたび足を踏み入れたらツル状の植物によって性的攻撃を受け、体の穴という穴に触手がもぐりこみ快楽地獄に陥り抜け出すことは出来なくなる。
唯一抜け出す方法が皮肉なことに魔物化でしかなく、つまり一度捕まれば死にこそはしないが、人間としての死を意味する。それらは彼女達を躊躇させるには十分であった。
「帰りを待ってる夫子がいるのに・・・
まだ死にたくないよぉ・・・」
一人泣くとまた一人、恐怖というもらい泣きが伝染していく中でソフィアは怒鳴る。
「泣くんじゃない!あなた達はそれを覚悟した上で魔界に来たんでしょ?わたしだって怖いわよ。でもね、ここまできておめおめ引き下がることもいかないのよ・・・」
そういうソフィアの瞳にも涙が流れていた。彼女も恐怖に押し潰されないよう耐えてたが限界だったのだろう。ぺたりと腰が落ち、そして長い沈黙。
グレイが何かを決意したのか、重々しい沈黙を破った。
「大丈夫だ。俺達がついてる。
俺達がどんなことがあっても全力をかけてお前達を守り通す。絶対にな。」
グレイはそう言うと男兵士に目をやりクイッと顎で女兵士達を指す。
「そうだろう?お前達?」
グレイが語りかける。男兵士は女兵士に一人一人歩み寄り肩を貸し、その声は自信のあふれるものだった。
「私行けます!
私も・・・ 私も・・・!」
しばらくすすり泣く彼女らの声は段々少なくなり、やがて消えた。女兵士達の目からは涙はなくなり、代わりに決意に溢れている。
「ソフィア・・・俺が守ってやるから。だから、泣くな。それにな、もともと騎士団は守る専門なのは知らないわけないだろ?」
「うっ・・・かっこつけすぎ・・・」
ソフィアは今までの栓が外れたようにまだ泣いていたが、それを制するようにグレイはソフィアを優しく抱いた。
「皆聞いてくれ。俺も実はこんな魔界の深部まで脚を踏み入れたことが故、こんな厳しい任務だと思わなかった。まずはあやまっておく『すまない』。全員でそろって無事という保障は出来ないだろう。」
「しかし俺達には帰る場所がある。それだけは忘れないでくれ。」
皆の決意は固まったようで、揺るぎない気を感じる。これなら安心だろう。
「男は女を取り囲みながら進め。女はできるだけ男に密着し全力で走るように!私とグレイで道を切り開きます。」
ソフィアは兵士達に指示をこと細かく出していた。何が起こるかまるでわからないため、厳重に厳重を重ね用心していなければならない。
「万が一触手に捕まったら・・・」
そこでソフィアの口が止まった。わかってはいるが口に出したくなかった。
「はい。『後ろを振り向くな』ですよね。」
「・・・そうだ。決して振り向くな。男達もそこまで守りきれないだろう。これが最善の策なんだ・・・」
準備は整った。あとはグレイの指示だけである。
グレイとソフィアが先頭に立つ。その後ろに女兵士達を囲むように男兵士達が円になっている。奇妙で滅茶苦茶な陣形だがこれが即席で考えうる最高の陣であった。そしてグレイは叫ぶ。
「覚悟はいいか!目指すは魔王城裏門!!!!」
騎士団一行は森に吸い込まれるように姿を消した・・・
10/09/12 21:50更新 / ゆず胡椒
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