目醒
そして朝になり、いつものように起きる。
「おはよう、ユリ。」
起きるとまず、彼女への朝の挨拶は欠かさない。 もちろん昨晩のあの格好のまま、寸分も違いはしないのだが。
パジャマから着替えて、居間へと向かうと、何かいつもと違うものを感じた。 何事だろうか、そう思うと何と、テーブルの上には作りたての朝食が用意してあった。
「これはまさか?」
もちろん用意した覚えは無い。 まして自分では作ったことが無いものまでそこにある。 そこで俺は考えた。
「もしかして、夢でユリが言ってたのは、このことだったのかな。」
あの時彼女は確かにこう言った、朝を楽しみにしてて欲しい。 その時はどういう意味かはわからなかったけれど、今目の前にあるものを見れば、これがその意味だと思うのは必然だ。
さてせっかく用意してある朝食だ、冷める前に食べたいと思い、すぐにテーブルの前にある椅子に座る。
「うん、うまい。」
味は正に俺の好みをよく知っていればこそできるものだった。 いつの間にそんなことを覚えたのだろうか、そこが不思議だとは思ったが、自分で作るよりもずっといいものができているので、気にしなくてもいいと思えてきた。 もちろん栄養バランスについても、ちゃんと考えた内容になっている。 優璃に料理のことなんて教えた覚えは無いのに、いったいいつどこでこんなことを覚えて来ているのだろうか?
もちろん、使った材料は全部、俺が買ってあったものだってことはわかっていたけれど、自分では考えられないものが作れるなんて、凄いなと思わずにはいられなかった。 仮に俺の生まれる前に、曾祖父母が料理について彼女に聞かせていたとしても、100年近くも前になる当時と今では全くわけが違うのだから、同じことをするというわけにも行かないだろう。
朝食が終わると食器を片付け、彼女の前に戻る。 感謝の言葉を伝えたくて。
「ごちそうさま、うまかったよ。」
そして仕事の用意をして、いつものように出勤する時間になる。 支度を済ませると、玄関に向かう前に、彼女に挨拶をしに行く。
「行ってくるよ、ユリ。」
彼女にそう言うと、ケースにカヴァーを被せ、俺は仕事に向かう。
彼女にあの大修理をしてからというもの、仕事がはかどるようになったのは、以前にも言っていた通りだった。 最初はなかなか難しかったことも、あの日以来まるで慣れ親しんだことのように、平然とできるようになってしまった。 しかしどういうことだろうか、今日はそれ以上に仕事がうまく行く。 これもあの朝食のおかげだろうか?
いろいろ思い返してはみるが、心当たりがあると言えるものは何も無く、やっぱりその1択しか考えられるものは無い。 ただ、ハッキリ言えるものとして、はかどるようになったおかげで、仕事が以前よりも楽しくなってきている。
他の人なら時間までに終わらないような仕事も、なぜかちゃんと時間内にこなし切れてしまい、定時になれば安心して帰れるし、そのことに嫌な顔をする人もいない。 まあやることは全部こなしているのだから、文句は言えないだろうけれど。 ただ同期入社した仲間達からは、どうしてあんなに早く仕事を覚えられるのかと、変な目で見られることはあるけれど。
そして結局今日は、いつもより1段階多くの仕事をこなすことができた。 帰りの足取りも軽い。 疲れた気がしないから当然だろうけれど、自分が奇跡を起こしているのかと思えてしまうのが何か不思議な気もする。
「おはよう、ユリ。」
起きるとまず、彼女への朝の挨拶は欠かさない。 もちろん昨晩のあの格好のまま、寸分も違いはしないのだが。
パジャマから着替えて、居間へと向かうと、何かいつもと違うものを感じた。 何事だろうか、そう思うと何と、テーブルの上には作りたての朝食が用意してあった。
「これはまさか?」
もちろん用意した覚えは無い。 まして自分では作ったことが無いものまでそこにある。 そこで俺は考えた。
「もしかして、夢でユリが言ってたのは、このことだったのかな。」
あの時彼女は確かにこう言った、朝を楽しみにしてて欲しい。 その時はどういう意味かはわからなかったけれど、今目の前にあるものを見れば、これがその意味だと思うのは必然だ。
さてせっかく用意してある朝食だ、冷める前に食べたいと思い、すぐにテーブルの前にある椅子に座る。
「うん、うまい。」
味は正に俺の好みをよく知っていればこそできるものだった。 いつの間にそんなことを覚えたのだろうか、そこが不思議だとは思ったが、自分で作るよりもずっといいものができているので、気にしなくてもいいと思えてきた。 もちろん栄養バランスについても、ちゃんと考えた内容になっている。 優璃に料理のことなんて教えた覚えは無いのに、いったいいつどこでこんなことを覚えて来ているのだろうか?
もちろん、使った材料は全部、俺が買ってあったものだってことはわかっていたけれど、自分では考えられないものが作れるなんて、凄いなと思わずにはいられなかった。 仮に俺の生まれる前に、曾祖父母が料理について彼女に聞かせていたとしても、100年近くも前になる当時と今では全くわけが違うのだから、同じことをするというわけにも行かないだろう。
朝食が終わると食器を片付け、彼女の前に戻る。 感謝の言葉を伝えたくて。
「ごちそうさま、うまかったよ。」
そして仕事の用意をして、いつものように出勤する時間になる。 支度を済ませると、玄関に向かう前に、彼女に挨拶をしに行く。
「行ってくるよ、ユリ。」
彼女にそう言うと、ケースにカヴァーを被せ、俺は仕事に向かう。
彼女にあの大修理をしてからというもの、仕事がはかどるようになったのは、以前にも言っていた通りだった。 最初はなかなか難しかったことも、あの日以来まるで慣れ親しんだことのように、平然とできるようになってしまった。 しかしどういうことだろうか、今日はそれ以上に仕事がうまく行く。 これもあの朝食のおかげだろうか?
いろいろ思い返してはみるが、心当たりがあると言えるものは何も無く、やっぱりその1択しか考えられるものは無い。 ただ、ハッキリ言えるものとして、はかどるようになったおかげで、仕事が以前よりも楽しくなってきている。
他の人なら時間までに終わらないような仕事も、なぜかちゃんと時間内にこなし切れてしまい、定時になれば安心して帰れるし、そのことに嫌な顔をする人もいない。 まあやることは全部こなしているのだから、文句は言えないだろうけれど。 ただ同期入社した仲間達からは、どうしてあんなに早く仕事を覚えられるのかと、変な目で見られることはあるけれど。
そして結局今日は、いつもより1段階多くの仕事をこなすことができた。 帰りの足取りも軽い。 疲れた気がしないから当然だろうけれど、自分が奇跡を起こしているのかと思えてしまうのが何か不思議な気もする。
21/03/09 19:07更新 / Luftfaust
戻る
次へ