―――この摩訶不思議な世界での家政夫のお仕事に馴染み、一方でうろ覚え出身につけた偵察を怠らずにこなして数カ月経ったある日。

この館の妙な居心地の良さに馴れてしまい、脱出するか否か躊躇しながらも、屋敷内の廊下の窓を一枚一枚吹いていると、妙にご機嫌顔のキキーモラが面白そうな笑みを浮かべながらこちらに近づいてきた。

「やぁ、セレンさんお疲れ様です。やけにご機嫌ですね」

セレンさんと呼んだキキーモラの彼女は俺よりも一足早くお仕事を終わらせている。
彼女は俺にこの屋敷の掃除の仕方を丁寧に教えてくれた良き先輩であり、良き仕事仲間である･･･俺が教団から裏切ればやましい事隠さずにいられるのだが。

とはいえ、何やら話たげな表情を浮かべているため、彼女を待たせないようにｶｶｯと窓を拭き、台座から降りた。

「いつも御苦労さまです、ミタナーさん♪今日は素敵な来訪者が来てるらしいですよぉ…♪」

「へぇ…いつもこの国に来て阿鼻叫喚の地獄絵図に遭うあいｔ…教団じゃなくてですか?」

噂話が好きで仕事仲間に乃噂話を振りまくのが好きだという彼女はさながらオｂ…いえ、何でもありません。
思い浮かんだ禁句を振り払いながら、近頃珍しくなくなってきた仲間の教団兵らがこの国に来た事かと尋ねるが。

「半分正解です♪ですが、正確には彼らが追いかけているお方ですよ?♪」

そう言ってセレンさんは仕事が終わったので今回来たあいつらの中でどんな子がいるか見てきますねと言って屋敷の外へ歩いて…行かなかった。
その代わりにいつの間にか置かれていた縄が意志を持ったかのように、突然彼女の身体を六角形状(俗に言う亀甲縛りであり、しっかりと股間が食い込まれている)に捕縛し、「エ"ァ"アァァァッ"！」と叫びながら上に急上昇し―――消えていなくなった。　…ふむ、白か。

きっと絶賛狂乱中のあいつらに向かっていったのだろう。


傍から見れば異様な光景であるが不思議の国故致し方無、この国に常識を求めてはいけない。(戒め)


そしてその常識は魔物にも当てはまり、普段家事好きな彼女とは言え、仕事が終わればすぐにでも男を求め、男狩りが始まる程に飢えているようだ。



ちなみに俺が相手にされないのは単に嫌っているわけでは無く、予約が入っているため手は出してないという。

はて、そう言われてこれまでの記憶を手繰りよせたものの、思い当たるような人物は出てこない。

ハートの女王たま様は勿論、他の仕事仲間は殆ど夫持ち、この国に案内してもらったチェシャ猫は別のショタを狙っている。

他に面識のある女性と言えば、訓練生時代に(色んな意味を込めて)お世話になったウィルマリナ様。あの方のぷりケツで何度お世話になった事か。

あるいは初対面で「むっつりスケベ野郎♪」と罵られたミミルたんさん。
一般兵の俺にこの様な名称を呼ばれて恐縮ものである。

もしくはいつも手本の相手役となっていた「アイツ」を妬ましく羨ましく思えた、メルセ教官。あの胸に顔を埋めたい。

だが、出会ってもう１年たつ。さもすれば彼女たちには一般兵の俺など記憶に全く残ってないだろう。万一魔物に変わり果てようとも･･･結論から言えば俺の対象には入ってないはずだ。



―――もしかすると道中で出くわした魔物達かと、今日も『予約相手』が誰なのか考え込んでいた所に何かが聞こえた。

その音に思考世界から現実に戻ってくる感覚を感じ、慌てて周りを見渡す。

この国ではほんの一瞬でも油断すればあっという間に別の場所へ飛ばされる、淫らなハプニングに見舞われる危険性が潜む世界なのだ。

俺自身もこの屋敷内でも幾度と引っかかり、下半身だけがマッパになったり、その場で強制勃起してそのまま射精させられたり(自室が目の前だったので急いで穿き直し、洗面所で洗って部屋干しした)はほんの序の口。

ヤバイ飛ばされ先では、不思議の国でも存在する触手の森の中心部とか(幸いアレらに掘られることなく帰らせてもらえたが)、夫婦の営みの真っ最中の寝室(すごく…気まずいです。)とかも経験している。

そんな迷惑極まりない罠を作った元凶はこの屋敷の中でぶいぶい言わせているハートの女王たま様だから性質が悪い。

だが、咎める者はなく、むしろ可愛がられている。このまま現状が悪化するのは確定的に明らかである。
その現状を打開すべく、俺は教団兵の一員としてでも、この館の雇われた身としても、ハートの女王様と甘やかす者に性意を込めて。


ヤ　ら　ね　ば　。


その想いを股間に込めたまま、声がした方へそっと戸を半開きすると･･･。

衝撃の光景が目に飛び込んできた！


「ふぁぁっ、そこはだめぇっ…///」

「フフ、ココが弱いのか･･･?♪　お主の弱点など、全てお見通しよ…♪」

俺が立ち止まるきっかけとなった声の元凶は―――。



「っあつつ…ここはっ…てミタナー、お前、今までここで―――むぐｯ!?」

「Shiiiii!!」

突然現れた援軍と思わしき兵（幸い訓練時で一緒のチームに入っていた同期の仲間だ!）の口を塞ぎ、静かにさせた。

「…はぁっ…ふぅ、ふぅ…ど、どうしたんだ一体」

ようやく小声で何があったのかを訊ねる仲間に俺は慌てながらも説明した。

「…俺が何をしているかを答える前に言っておくッ！俺は今あの部屋をほんのちょっぴりだが覗いた。い…いや…覗いたにしてはまったく理解を超えていたのだが……あ…ありのまま、今見てきた事を話すぜ！ 『俺が目にしたのは本来勇者が率先して討伐すべき相手の魔王の＜姉妹＞が情事に入っている光景だった』」

そう、ほんの少しであれど、目にし、耳にしたのは、『ハートの女王』と呼ばれる幼女体格を持つ「リリム」と、かのレスカティエ教国を陥落させた「リリム」である、『デルエラ』が扉一枚の先でよろしくシているのだ。

「お…おぃィ？ここが如何に非常識な所であってもその冗談は無いぜ…!」

流石の仲間も俺の言葉を理解できないようだが、扉から漏れだす強烈な魔力が今更になって身体を侵し、それが嘘ではないという事を示していた…!

「な…何を言っているのかわからねーと思うが、俺もあの光景を信じたくなかった…。頭がどうにかなりそうだった…魔物の群れだとかモンスターハウスだ！とかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしい光景が目にひろがったぜ…」

現にいま俺の身体はがたがたと震え、腰が抜けている。だが、その震えは恐怖だけでは無い。
とても妖艶で淫靡な光景に雄の本能が覚醒しているのだ。

俺は仲間と一度目を合わせ、互いに頷き…もう一度半開きの戸を覗かざるを得なかった。

そう、どこからか聞こえてくる「知らなかったのかい…？魔王様の娘からは逃げられないのよね……!!♪」と言う囁き声がまるで身体に逃げるなと言われているかのように。


「やっ、あぁぁ…ぉ、おねぇさまぁぁ!!!///」

「んくっ…んん、もうイきそうか…?♪全く、侵攻に夢中でコッチが疎かになるとはな･･･♪」

扉から漏れる魔灯花の淡い光と共に聞こえる、ぬじゅり、ぐちゅりと粘着的でやらしい水音。

だが、イキかけているのは恐ろしげでありながらも艶かしい美貌を持つデルエラ様であり、容赦なく責めているのはハートの憲兵に呼ばれ

かねないほどの犯罪的な可愛らしい容姿をもつハートの女王様である。


そんな光景を見て俺達の身体は全く動かない。代わりに股間が勇ましくなって、一心に手で扱くしか出来なかった。

「あぁ…くそっ…！こんなの見せられて我慢できるか…!クソッ、ちかくに手頃な女がいれば…!誰かっ、この性欲を鎮めてくれる者はいないのか……っ!///」


あの女勇者と一緒にいれば良かったなどと思っているであろう、魔力に侵された仲間は欲望むき出しの言葉を漏らしながら必死の形相で扱き上げ…そして、イこうとした途端、喜劇悲劇が襲いかかった。


＼ここにいるよ！♪／＼ここにいます！?／＼ここにいるわ！／＼ここにいるよぉ！／＼ここにいるゾ！／「ここにいるぞ！！！」＼ここにいるお！／＼ここにいたぞ！／＼中出屋！／＼こころにいるぞ！／

どこからともなく＼ｼﾞｬｰﾝ!ｼﾞｬｰﾝ!ｼﾞｬｰﾝ！／とシンバルの音が鳴り響くと同時に、チェシャ猫率いる魔物娘達が一斉に姿を現した！

「げぇっ、魔物っ！！」

思わず叫ぶ仲間は腰を抜かし、逃げる機会をうせてしまった。

「お、俺の事は気にせずっ、今はここから逃げ―――…ぬわーーーーーっ！！」


彼の最期に口にした言葉は絶望から嬌声へと変わった、情けない声だった。あはれ。

何とか包囲網から抜け出して逃げだす俺はきっと後ろで多くの魔物娘の群れに輪姦されているだろうとうらやましく思い、彼がくれたチャンスを無駄にしない為にも逃げる事に集中する。

僅かな可能性でも希望を持ってさえすればきっと、奇跡が起こる――――


「―――とおもーじゃん?♪知らなかったのか?魔物娘からは逃げられない…!!!」

再び聞こえる妖しげな声が館内に響く。　知るものか。とにかく逃げだしてやる。

そう意地を力に変えて、足を床に蹴りつけ、もうすぐ見えるであろう出口に向かっていったが。



「―――スタァァァァップ！！！」

　　　　　　　　　　　　　　　　　ｳﾞｫｰﾊﾟﾙﾗﾋﾞｯﾄ
突如現れたマーチヘアーが繰り出した首 切 り 兎の如くのタックルが横腹に綺麗に突き刺さり、胃液が出そうな息苦しを感じながら床にたたきつけられた。


「んもぅ･･･貴方に初めてあげたのに、今まで私を放置しちゃうなんて酷いですよぉ///」

少しかすむ視界の大半を占めたのはバニースーツっぽい衣装（見た目のわりにふくよかな胸は先ほどの衝撃でポロリしている）のバニーガールは目を潤ませ、こちらを見ている。

……誰だコイツは。

「おっと、ボクもキミに犯られたのに忘れちゃ困るな♪」

と、目の前の兎の事を思い出そうとするが、横から新しい援軍ともいうべき麗人―――マッドハンター―――が。

「吾輩を差し置いてどう言うことだ…?#」

そして後ろからは怒気を孕んだレディ――おそらくジャバヴォック――の声が。



「ボクがモガリさ！ほら、ラブルームでヤらないか♂」

「吾輩はトゥリオである!！愛が欲しいなら…くれてやるっ!!//」

「シエラと申します///次からは忘れないでくださいね?//」


俺を囲うように、罵声を浴びかせるかのように、三者三様の自己紹介を兼ねた愛の告白に、正気が保てなくなり。


「やめろぉぉぉぉお！！！」

と、叫んだ後、目の前が真っ暗になった―――。




続かない

■作者メッセージ
あけましておめでとうごｚ･･･すんません遅すぎですね。
お久しぶりです、浮浪物です。

新しい魔物娘がいるという中、去年に出すはずだった微エロＳＳを今年になってようやく出す程の遅筆となり、肝心の内容がこの始末☆はてさてこの先顔射描写があるやらそうやら･･･。

ということで、今年もよろしくお願いします･･･!