読切小説
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再会
――みーちゃんは、なんでみみがおおきいの?

――んー、ないしょ。

――えー、おしえてよー。

――ごめんね、りゅーくん。

――みーちゃんのずるっこー。

――りゅーくん、まだかえんなくていいの? もうおひさましずんじゃうよ?

――あ、ほんとだ! じゃあ、またあしたねー!

――うん、じゃーねー!


  * * * *


「……夢か」

 ベッドから落ち、頭を床に打った体勢で俺は目を覚ました。
随分と懐かしい夢だ。あれはもう……十二年前か。
結局、次の日もその次の日も、彼女が来ることはなかった。
未だに夢に見るとか、未練がましいったらないな。

 俺の名前はリューイ。
街の中央通りにある、実家の店を少し前に継いだ。
というか、隠居宣言した両親に押し付けられた。
こんなボロ店継いだって嬉しくもなんともないっての。
しかも自分たちは移住とか、後は一人でどうにかしろとか……ハァ。

 今日も店に立ち、通りの人込みを眺める。
その中に魔物の姿が混じるようになったのは、ここ最近のこと。
 元々、この街は長いこと反魔物領としてやってきた。
が、十年ほど前に領主が変わって、その新領主が親魔物を宣言した。
長いこと反魔物でやってきた割に、それに反対する人は少なかったらしい。

「おーい、リューイー」
「ん?」

 やってきたのは、街の門番をやってる顔なじみ。
掲げた手には、何やら手紙のようなものを持っている。

「何だー? どうせ来たならなんか買ってってくれー」
「バッカ、冗談言ってる場合じゃねえよ。お前、いつの間にあんな美人とお知り合いになったんだよ」
「何の話だよ?」
「コレだよ、ホレ」

 ニヤニヤ笑いながら、そいつは手に持った手紙を突き出す。
釈然としないままそれを受け取り、開いてみる。
それは、たった三行の短い手紙だった。

『 りゅーくんへ
  あの場所で待ってる
         みー 』

「お、お前、これ何処で!?」
「どこって言われても……ついさっき、美人のエルフが『この街にリューなんとかって名前の人はいる?』って――オイ!? リューイ!?」

 そいつが言い終えるより先に、俺は手紙を握り締めて走り出した。
目指すのは、街の近くの森の外れにある一本杉。
毎日毎日、俺たちが日暮れまで遊んだ場所。
――そして、あの最後の日、俺たちが別れた場所。


  **


「みーちゃん!」

 あの日から十二年。
そこには、淡い青色の髪を腰まで伸ばした美しい女性が待っていた。

「……りゅー、くん?」

 振り返った彼女は、俺の姿を見てゆっくりと微笑む。
すっかり大人の女性になっていたけれど、その微笑みは、紛れも無い『みーちゃん』のものだった。

「久しぶり、だね」
「うん……」
「………」
「………」

 ずっと会いたかったはずなのに。
言いたいことなんて、いくらでもあるはずなのに。
こうして向かいあうと、言葉が出てこない。

「と、とりあえず、ウチ来る?」

 俺がようやく絞り出した苦し紛れの提案に、彼女はこくりと頷いた。




「この街も、だいぶ変わったんだね」

 俺が出したお茶を飲みながら、みーちゃんはしみじみと呟いた。

「昔は、魔物が大通りを歩くなんて考えられなかったのに」
「……やっぱり、みーちゃんが突然いなくなったのは」
「うん、そういうこと」

 ごめんね、と彼女は小さく頭を下げた。

「いや、みーちゃんが謝ることじゃ」
「しょうがないよ、あたしは人間じゃないから」
「……なんで魔物だからって忌み嫌うのかね? 別に危険でもないのに」
「違うよ」
「え?」

 どういうこと――と聞く間もなく、俺は床に押し倒された。
怪しく瞳を輝かせたみーちゃんが、俺を見下ろしている。

「魔物はね、危険なんだよ。目的のためなら手段は選ばないんだから」
「み、みーちゃん……?」
「馬鹿だね、りゅーくん。『魔物』をわざわざ自分の家に連れ込むなんて。あたしには好都合だったけど」

 俺はそこで、自分の上に乗っているモノに恐怖を覚えた。
違う。
コイツは――この魔物は――俺の知っているみーちゃんじゃない。

「ふふっ……やっとここまで来たんだぁ……ね、りゅーくんの全部、あたしがもらうね?」


  **


「う、ああっ……!」
「ふふ、出したい? 白いのいっぱい、びゅーってしたい?」

 彼女は俺のモノを上下にしごいたり、先っぽを舐めたりしながら聞いてくる。
がくがくと頷くと、彼女はにんまりと笑って、モノを口に含んだ。
さっきまでの、すべすべの指で弄られるのとはまったく違う感触。
あったかくて、ぬるぬるして、ああもうなんていえば――

「うぁ、で、出るっ!!」
「んっ♪ んっ、んくっ」

 自慰とは比べものにならない快感。
到底耐え切れるはずもなく、俺は彼女の口内に吐き出した。

「むー、ずっ、じゅるっ」

 吐精が終わっても、彼女はソレをくわえたまま、中に残った分までも吸い出していく。

「ん、ちゅっ……りゅーくんの、すっごくおいしい……」

 とろんとした表情で、彼女は口の周りについた精液を舐めとる。
その様子はとても官能的で、俺は分身が再び勃ち上がるのがわかった。

「あはっ、りゅーくん、まだカチカチだね……♪ じゃあ、今度はこっちに、ね?」

 そう言って彼女が開いたそこからは、とろとろと蜜が染み出していた。

「う、あ、ああっ……」

 もう俺の理性は頭の中だけ、それも皮一枚で繋がっているようなものだった。
全身が彼女との交わりを、そこに突っ込むことを求めていた。

「そんな顔しなくても、すぐ入れてあげるよっ……えいっ♪」

 ずずっ、ブッ、ぢゅくっ。

「っ、ううっ……りゅ、くん、の、奥までっ……」
「ぐ、ぁ、うっ……!」
「はあっ、は、あうっ……やっぱ、り、初めては、痛い、んだね……」

 苦しそうに顔を歪めながら、彼女は息を吐いた。
彼女と繋がったそこに目をやれば、わずかに赤いものが漏れ出ているのが見える。

「りゅーくんの、はあっ、ために……ずっと、取っておいたんだよ……?」

 瞳の端に光るものを乗せたまま、彼女は微笑む。
俺は、彼女の中にある分身が、どくん、と震えるのを感じた。

「はうっ……また、おっきくなったね、りゅーくん……でも、もう少し……」

 もうダメだった。むしろ、ここまでよく耐えたほうだと思う。
頭の中にかろうじて残っていた理性の断片が切れる音が聞こえた。
俺は彼女の腰を掴んで、腰を跳ね上げた。

「ひあっ!? ダメっ、りゅーくんっ、まだっ、ああっ!」

 動くたびに彼女が声を上げるが、それでも腰は止まらない。
彼女の悲鳴も、今の俺には興奮を煽るスパイスでしかない。

「やっ、おくっ、そんなに激しくふうっ!」

 興奮と快楽に浮かされて、俺はもう何も考えられなかった。
本能が求めるままに、ひたすら彼女を突き続けた。

「あっ、あっ、あっ、りゅっ、くっ、あたしっ、もっ、あーーーっ!!」

 最後の瞬間、俺は自身の中にあった精をすべて、彼女の一番奥に撃ち込んだ。


  **


「……ごめん」
「ううん、謝るのはこっちだよ。ごめんね」

 気がつけば、外はすっかり暗くなっていた。

「あたしはね、エルフなんだけど、サキュバスなんだ」
「どういうこと?」
「よくわかんない。魔王の魔力のせいで、そういうふうになっちゃったんだって」
「へえ……」
「……ずっとりゅーくんが好きで、サキュバス化してからは、りゅーくんが欲しくてたまらなくて。だから、あんな……ごめんね、ごめんねりゅーくっ!?」

 だんだんと涙声になる彼女を、俺はきつく抱きしめた。
なんだ。やっぱりみーちゃんじゃないか。
一瞬とはいえ、この子の何を恐がってたんだ俺は。
俺を押し倒したあれも、俺が知らなかっただけの、みーちゃんの一面じゃないか。

「りゅーくん……?」
「俺も、みーちゃんのことがずっと好きだった」
「でも……」
「大丈夫」

 みーちゃんがエルフなら、エルフが好きになる。
みーちゃんがサキュバスなら、サキュバスが好きになる。
みーちゃんがエッチな魔物なら、エッチも魔物も好きになる。
そういうのも全部ひっくるめて、大好きなみーちゃんだから。
みーちゃんのことなら、俺は全部受け入れるから。
だから、大丈夫。

「……俺の全部、もらってくれる?」

 彼女からの答えは、とびきり甘いキスだった。

( 了 )
10/11/06 01:08更新 / かめやん

■作者メッセージ
俺って奴は、無茶しやがって……
うん、やっぱりエロは難しい。

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