連載小説
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Happy Birthday:E&… ―― the age of 21
 それから。

 マミーとなったクチナは、レイスが独立したことを機に冒険者に復帰。
もともと人間離れしていた身体スペックが魔物化によってさらに強化され、活躍している模様。
ただし、よく動くだけあって魔力の消費も激しいらしく、頻繁な補給が必要になっている。

 というわけで、そんな妻に搾られる立場であるジャオは見事にインキュバス化。
こちらもそのチート級の能力に更なる磨きがかかり、順調に伝説の数を増やしている。
参考:最新伝説『ドラゴン数人とバフォメット&サバトのマジ喧嘩(戦争?)に一人で割って入り、両成敗に処した』

 二人はコンビ冒険者として共に旅しており、街には数週間〜数ヶ月に一度くらいの頻度で帰ってきている。
 一方、もう一組の夫婦は。

 シベルは特に変化もなく、これまで通り街で生活を送っている。
ただ、クチナがいなくなって張り合いがなくなったらしく、たまに寂しそう。
一人で家にいるのが暇なのか、無人がちになった隣家を掃除したり、特に用も無くエジェレを訪ねたりしている。

 トーマスは発狂(SAN値ゼロ)寸前まで行ったが、どうにか踏み止まったらしい。
 レイスに対しては未だぎこちない対応だが、だんだんと受け入れ始めた様子。
彼が正式に結婚の挨拶に来たときにはかつて言った通りに渾身の一拳をかまし、キレたエジェレにボコされた。
それ以後は、娘LOVEの症状もいくらかは改善されている。


 そして、肝心の二人はと言えば。


  * * * *


「ふっ、ん、んぅ、うんっ」
「っ……ぁ……!」

 とある新築の一軒家、夫婦の寝室。
ベッド脇の椅子に座ったレイスの足元に膝立ちになり、エジェレは彼のモノをくわえていた。
 ぐじゅぐじゅと音を立てながら、頭を前後に動かしてペニスの表面を刺激する。
もちろん、同時に口の中では舌を使うことも忘れない。

「が、あうぅ、あぁ……っ!」
「んっ、んっ、れい、ふっ、ひもち、ひひっ?」

 耐え切れずにレイスが声を漏らせば、エジェレは前後運動を続けたまま問い掛ける。
喋ったことにより口の中が不規則に動き、それがさらなる刺激となってレイスを襲う。

「っあ……と、ぐぅ……あぁ……!」

 反応から限界が近いことをさとったエジェレは、前後運動を止め、彼を完全に飲み込み、それまでとは段違いの激しさで吸い込み、しゃぶりつき、舌を絡ませた。

「っ、う……ぐっ!」
「んっ……ん、んくっ♪」

 レイスが吐き出した精を、エジェレは嬉しそうに飲み干していく。
律動が終わっても、モノの中に残った分は吸い出し、表面についた分は舐め取る。
そうしてモノの掃除を終えてから、ようやく彼女は口を離した。

「は……ふぅ。ごちそうさま、美味しかったぞ♪」
「やっ……やっと、終わった……」

 口の周りについた分を舐め取り、うっすらと微笑んで彼のモノを収める。
レイスはぜぇはぁと荒い息をつきながら背もたれに体を預け、天井を見上げた。

「毎日、5発は……さすがに、キツい……」
「そうは言っても、私も体力をつけなくてはならないからな。すまないが、頑張ってくれ――っと!」
「ちょっ、バカ!?」

 立ち上がろうとした彼女だったが、足がもつれてバランスを崩す。
慌ててレイスが手を伸ばし、彼女の身体を支えた。

「はあぁ……お前、マジで気をつけろよ。ほれ、椅子」
「ああ、すまないな。ありがとう」

 レイスは安堵のため息とともにエジェレの手を引いて助け起こすと、自分が座っていた椅子を彼女に譲る。

「お前も疲れてんじゃねえのか? マッサージしてやるから、足出せよ」
「ん、む……たしかに、けっこうな重さがあるからな。足には負担なのかも知れん」

 今度はレイスがエジェレの足元にしゃがみ込むと、彼女が出した足をとる。
その足首には、チェーンのようなアクセサリーがつけられていた。

「ったく、転んだりしてなんかあったらシャレじゃ済まねぇんだからな?」

 レイスは彼女のモフ足を、ときに強くときに弱く、巧みに揉みほぐしていく。
その不安げな視線の行き先は、彼女の大きく膨らんだお腹。
 そんな彼を見て、エジェレはくすりと笑った。

「なに笑ってんだよ?」
「いやいや、父様といい君といい、父親というのは心配性だと思ってな」




 あのプロポーズの直後、二人は結婚。
毎日のように励み、エジェレの妊娠がわかったのは四ヶ月ほど経ってのこと。
そのときにはニヶ月目に入ったところで、初回のアレでできたわけではなさそうだった。
 その後は、彼女の聞き付けた『精液を飲むとつわりが軽くなる』という民間療法と、彼の『子供がいるトコに突っ込めるわけねーだろ!』という主張により、精の摂取は先程のように口淫で行われている。
医者やシベル曰く、魔物は安定期に入ればお腹に子供がいてもシていいとのことだったが、レイスは断固拒否の構えだった。




「……悪いかよ」
「いいや。君に心配してもらえるのは嬉しいぞ? それに――お?」
「どした?」

 エジェレは話を途中で切ると、微笑みを浮かべ、愛おしむように自らの腹部を撫でた。

「ふふ、この子も君に心配してもらえて嬉しいそうだ」
「動いたのか?」
「ああ。最近は頻繁に動くようになってきたな」
「あと少しだからな……」

 マッサージの手は動かしたまま、レイスは壁のカレンダーを見た。
約二週間後の月曜日。そこに印が付けられている。

「よりによって私の日が予定日とは……親孝行なのか親不孝なのかわからない子だな」

 ただし、その日に付いている印は二つあった。
一つは出産予定日、もう一つはエジェレの22回目の誕生日。
ちなみに、そのさらに一週間後にはレイスの22回目の誕生日があったりする。

「親孝行とか親不孝とか、なに言ってんだお前?」
「生まれてきてくれるのは、私にとって――いや、私たちにとってだな? これ以上ない喜びだ。だから、親孝行」
「ん、まあな」
「でも、誕生日が同じだと『私の誕生日だから』という理由で君を独り占めすることができなくなってしまうじゃないか」
「……だから親不孝だってか?」
「そうだ。もしこの子が『きょうはわたしのたんじょーびだから、ぷれぜんとのとーさまはわたしのものー!』とか言い出したら……私はいったいどうすればいいんだ!?」

 べしっ。
「ぅにゅっ!?」
「どうもしなくていいから、とりあえず落ち着け」

 一人で勝手にハッスルし始めたエジェレに、レイスはとりあえず立ち上がってチョップ一発。

「母親が子供と張り合おうとすんじゃねえよ。しかもなんでファザコン娘で確定してんだ」
「だ、だって君は魅力的な男性だし、近親上等な魔物はいくらでもいるわけで」
「はあぁ……」

 レイスは額を押さえ、深々と息を吐いて。

 ぺしっ。
「……お?」

 いつもより遥かに弱いチョップを繰り出した。

「いつだったか、言ったろ……お前が一番大切だって。恥ずかしいんだから何度も言わせんな」

 レイスは赤い顔を横に向けながら、やや早口に。
その言葉に、エジェレも頬を朱く染め、彼に遠慮して俯く。

「……ありがとう」
「ん」



 最初から、今まで。
二人は、いつも一緒だった。

「なあ、レイス……」
「なんだよ」
「私も、君がいちばんだ」
「……知ってるよ」

 そして二人は、いつも一緒にいる。
たぶん――これからも、ずっと。
10/12/28 00:32更新 / かめやん
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■作者メッセージ
よっしゃ、終わったあああああああああ!!
8月半ばから始めて早4ヶ月と少し、ようやく終えることができました。
読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

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