第五章 紅玉と錬金の恋心 前編
今日は工房が騒がしかった。
炉が壊れたのかと思い欠伸をしながら工房へ向かうと、朝刊を片手にお父さんとお母さん、そしてアルヒミアが何かを話している。
「おはよう、どうしたの?」
「あっ、ルヴィニ。ちょっとこれ見なさいよ。」
アルヒミアが僕に朝刊を渡してくれた。
「うん・・・。¨憲兵署にて強姦・・・。接近戦総括長のスギロス氏が・・・、総隊長スパスィ・ネフリティス氏を宿舎内で強姦しようとした・・・。幸いスパスィ氏の夫エルフィール氏が早急に駆けつけ未遂に終わったが・・・、スギロス氏は総括長の職を解職となり現在は独房入りとなっている・・・。¨」
記事を見て目を疑ってしまう。
スギロスさんはこの店の常連で、つい先日も重剣を納品したばかりだったから。
「驚いたでしょ?」
「そうだね・・・。スギロスさんなんでこんなことしたのかな・・・?」
「それは書いてないからわからないわって、驚くところが違う!こっちよこっち!」
朝刊をアルヒミアにとられ、彼女は記事のある部分を指す。
「スパスィ氏の夫エルフィール氏・・・。えっ・・・?」
「そうよ。あの娘いつの間にか男を見つけてきてるのよ!絶対アタイの方が先だと思ったのに!」
「あらあら、スパスィちゃんに夫が出来てそんなに悔しいの?」
「当たり前です!同じ歳の飲み仲間なんですから、悔しいに決まってるじゃないですか!」
「ルヴィニもそうなの?」
「私は・・・、驚いただけ・・・。でもどんな人なんだろう・・・?」
「気になるのかい?」
「うん・・・。」
「ルヴィニも御年頃なんだね。ちょっと寂しくなるな。」
お父さんが遠い目をして私を見てる。
まだ恋人も出来てないし、結婚するわけでもないのに・・・。
「アナタ、まだ先のことでしょ?それとも、もう一人娘を作って寂しさを紛らわします?」
「そうだね。次の仕事が終わったら励んでみるか。」
「あらやだ。頼もしい。」
娘の私やアルヒミアがいる事なんて構わずにお父さんとお母さんは家族計画の話で盛り上がっていく。
アルヒミアはうらやましそうな目で二人の会話を見ている。
僕に妹ができる日も近いかもしれない。
「やっぱりアタイも彼氏欲しいなぁ・・・。」
「まだ言ってる・・・。」
朝刊の一件を引きずりながらアルヒミアは一本の剣を仕上げていた。
一般的に普及しているショートソードより刃の掘りが鋭く、お父さんが打つジパングの刀より刃渡りが広い。
「あれ・・・?それスパスィさんの・・・。」
「課題の剣ね。ルヴィニも早く設計してトリマル親方に見せないと。アタイが先に巣立っちゃうわよ?」
「うん・・・。」
課題。
僕達の工房、¨鍛冶処「不二の鎚」¨では多くの職人が生み出されていった。
人間、ドワーフ、サイクロプス、その他様々な種族が門戸を叩いて弟子入りし、巣立っていく。
その巣立ちに関して行われるのが課題。
自分の作りたい武器、防具を作図してお父さんとお母さんに提出。
二人の製作許可が下りれば製作してお店に並ぶ。
最後にその品が売れれば晴れて合格という流れだ。
僕は作図の段階にまではいっている。
だけどお父さんとお母さんの製作許可が下りない。
お父さんには使い手を選ぶと言われ、お母さんからはあなたは何と戦うつもりで作図したの?と言われてしまった。
そんなにおかしなものは作図してないはずなのにとアルヒミアに一度見せたら、浪漫の塊ねといわれてしまう。
次は何を作図しようかと、彼女が刃を見つめる姿を見ながら考えているとお客さんが来た事を知らせる鐘が鳴る。
「いらっしゃい・・・。あっ・・・。」
工房から店のカウンターへ行きお客さんを出迎えると、そこにはスパスィさんと男性の姿があった。
「久しぶりだな、ルヴィニ。元気だったか?」
「うん・・・、元気だった。隣の人・・・、旦那さん・・・?」
「この人は旦那様といったら旦那様なんだが少し違うんだ。」
「・・・?」
スパスィは何か説明し辛そうな顔をして、言葉を探している感じだ。
「実は・・・。」
「あら、聞き覚えのある声と思ったらスパスィじゃない。旦那を連れてのろけにきたの?」
奥からアルヒミアが出てきて彼女が話しだそうとしたことを途切れさせてしまう。
「アルヒミア、のろけに来たわけじゃないよ。あっ、旦那様。この娘は鍛冶処の娘でサイクロプスのルヴィニ。こっちの娘はここに弟子入りしているドワーフのアルヒミア。」
「エルフィールだ。ルヴィニ、アルヒミア。よろしく。」
「あ・・・、う・・・。よ・・・、よろしく・・・。」
「いい男じゃない。よろしく、エルフィール。」
差し出された手を握り、エルフィールさんの顔を見ると頬が熱くなるのを感じる。
なんでだろう・・・。
「ルヴィニ?」
「なにアンタ紅くなってるのよ・・・。」
「う・・・。な・・・、なんでもないよ・・・。」
スパスィの大切な人なのに・・・。
僕、なんで・・・。
「ところでアルヒミア、例のもの出来てるのか?」
頭の中から顔の表面まで熱く紅くなって困惑していると、スパスィが話を筋を元に戻してくれた。
内心、ちょっとホッとする。
「あれね。できてるわ、ちょっと待ってて。」
そういうとアルヒミアは工房の奥へと移動して。
「それとルヴィニ。特注したいんだがトリマルさんとスフィリさんを呼んでくれないか?」
「うん・・・、ちょっと待って・・・。」
紅く火照る頬を気にしながら、お父さんとお母さんを奥の居住してる部屋へと呼びに行った。
アルヒミアの視点
「あー、うらやましい。見れば見るほどいい男じゃない。ちょっかいだしてやろうかしら。」
アタイは先刻完成させたスパスィの剣を最終調整する為の準備をしている最中だ。
各部品、刃、柄、鞘、鍔は出来上がっていたのだが組み立てはしておらず。
仮組みをして形だけは作っていたのだが、やはり本人がいないと柄の握り加減や刃の押さえつけ等の調整ができない。
「さて、顔を拝みながら作業させてもらいましょうか。」
眼福を期待しつつ、カウンターへ戻っていくとそこにエルフィール姿はない。
どこいった!私の眼福!
「どうした?アルヒミア。」
「ん?エルフィールの姿が見えないなと思って。」
「彼は奥で・・・、お父さんとお母さんと意匠の相談中・・・。」
「そうなの?残念。」
「何が残念なんだ何が。」
「眼福よ!眼福!見るだけならいいでしょ?それよりスパスィ。そんなところに立ってないで中に来て調整するから。」
「ああ・・・。」
彼女を店の中に入れて適当な場所に座らせてこちらは注文の品の組み立てにはいる。
「まだ出てきてなかったんだな。」
「これは特注品だからね。本人に合わせて調整しないと意味ないでしょ?」
柄に刃と鍔を組み、しっかりと固定させてスパスィに渡す。
「振ってみて。刃に違和感とかない?」
「ああ、思ったより軽いんだな。」
振った刃から風を斬るような音が鳴り、彼女は得物の感触を確かめていく。
「どう?」
「違和感はないが、素晴らしいな。機能的、芸術的とはまさにこのことじゃないか?」
「照れるわね。ほら、柄に滑り止め巻くから一旦返して。」
「わかった。」
振り終わった得物をスパスィから受け取り、滑り止めを巻いていると・・・。
「ねぇ・・・、スパスィ・・・。」
「どうした?」
「さっきの旦那様だけど旦那様じゃないって・・・。どういう意味・・・?」
巻き付けている手が止まり、二人の方を見る。
「あれか・・・、実は正式に結婚してるわけじゃないんだ。私が討ち負かされて求婚をしたら断られてな。それで、どこまでも着いていく宣言をすると、だったら一緒に旅をしないかと誘われて。妥協して共に旅をすることにしたんだ。」
「へぇ・・・。」
その言葉を聞き関心を示すルヴィニ。
彼女が今何を考えているか、アタイには手に取る様にわかるわ。
結婚をしてないならチャンスがあるかもってね・・・。
「でも、よく貴女はそれで妥協したわね。」
スパスィは一本の剣を取り出してルヴィニに渡す。
アタイはまた滑り止めを巻き始めて顔を下ろした。
「あれ・・・?これ・・・。」
鞘から剣を抜いたルヴィニの声に視線だけ上に戻すと抜かれた剣は途中からポッキリと折れていた。
「綺麗に折れている。こっちが折れた方だ。」
折られた方の刃を棚に置き、スパスィは話を続けていく。
「量産品とは言え、ここのスフィリさんが打ったものを教団が使っている数打ちのロングソードで折られたんだ。正攻法で追いかけたら撒かれるのは目に見て明らかだと思ったのさ。」
「だから提案を・・・?」
「ああ、離れなければ機会はあると思ってな。」
視線を元に戻し最後の一巻きをして、接着用の樹脂を塗り固定させる。
「これで乾けばいいわね。後で握り具合を確認してもらうわよ。」
「わかった。」
「で、スパスィ。肝心のあれはやったの?」
「アレ・・・?」
アレが何か分かってないルヴィニと興味津津のアタイ。
そして、顔を真っ赤にするスパスィ。
「もう、ルヴィニったらお子様じゃあるまいし。あれといったらセックスよ!子作り、交尾、まぐあい!」
言葉の意味を理解したのか、ルヴィニはボンっと顔を紅くし、スパスィは俯いてしまう。
「あ・・・、あう・・・。せ・・・、セックス・・・。」
「あーあ、真っ赤になっちゃって。どうなのスパスィやったの?」
「やった・・・。」
「あらら、結婚もしてないのに身体許しちゃんったんだ。」
「あう・・・、あう・・・。スパスィ・・・、どんな感じだったの・・・?」
真っ赤になっても聞きたいところは聞くのね。
逞しいわよ、ルヴィニ。
「あの時は・・・。その、襲われた後で身体の疼きが止めれなくてな・・・。つい・・・。」
「それならしょうがないか。」
「それで・・・、どうだったの・・・?」
アタイよりルヴィニの方がスパスィに近づき息を荒くして聞いている。
ルヴィニ。
貴女、今とんでもなく危ない女になってるわよ。
「一言で言ったら凄かった。一突かれするたびに自分の中の女を満たしてくれて、焼けつくような濃い精液が私を内側から染め上げていくんだ・・・。」
行為を思い出しているのか彼女はトロンっと光悦した表情になり、口の端から何か透明なものが垂れている。
そして、話を隣で聞いていたルヴィニも同じくトロンっと光悦した表情をして口の端から垂らしていた。
「ふぅん、そんなにいいのかー。ならアタイもちょっかいかけてみようかな。」
『えっ?』
二人がギョッとした顔になり、こちらをみる。
「何を言っているんだアルヒミア。旦那様は私に一回プロポーズまでしてくれてるんだぞ?そんなこと罷り成らぬだろう。」
「そうだよ・・・、アルヒミア・・・。一人だけずるいよ・・・。」
ルヴィニの言葉にスパスィは彼女の方を向く。
「なっ!?ルヴィニ、お前まで・・・。」
「だって・・・、プロポーズまでしてもらって結婚してないなんて・・・。変じゃない・・・?」
「そうね。そこまでしてもらって結婚してないんじゃ、他に女作ってもいいですよって言ってるようなものだしね。」
「お前らーっ!」
ルヴィニは本気の様だが、アタイはスパスィをからかって遊んでいた。
でも、本気で考えてみようかしら・・・。
店の方にも客が来ず、三人で談話していると奥からトリマルさんがルヴィニを呼ぶ声がする。
「なんだろ・・・。ちょっと行ってくる・・・。」
「いってらっしゃい。で、教団の騎士達は何が目的だったのよ?」
「そこまではわからないが、私も推測では・・・。」
スパスィの話から一旦抜け、ルヴィニはトリマルさん達がいる奥へと向かっていった。
何の用事だろうと思いつつ、彼女の旅話に耳を傾けていく。
ルヴィニの視点
「お父さん・・・、お母さん・・・。どうしたの・・・?」
「ルヴィニ、来たわね。」
「まずはそこに座って、話はそれからだよ。」
僕は言われるがまま、畳の上に座る。
お父さんの生まれジパング特有の敷物、それは日に当たった干し草の様な匂いがして好きなんだ。
「じゃ、ルヴィニ。まずは課題の話からしようか。」
湯呑に入ったお茶を一啜りしながらお父さんは話を進めていく。
「ルヴィニの作図。製作許可を出そう。」
「えっ・・・?どうして急に・・・。」
「実はこちらのエルフィールさんが特注されたのが、ルヴィニの作図したものと同じなの。」
横で胡坐をかいているエルフィールさんを見ると、小さく手を振ってくれる。
それだけでまた頬が紅くなっていくのがわかった。
「ん?どうした。ルヴィニ。」
「な・・・、なんでもない・・・。」
「あらあら。」
お母さんがニコニコして僕を見てる。
うぅ・・・、なんだか恥ずかしい。
「それでエルフィールさんに聞くと君が作成していいと言ってくれたんだ。」
「うん・・・。えっ!?ええぇぇ!?」
あまりの事に大きな声が出てちゃった。
こんな大きな声生まれて初めて出したかも。
「僕の作図、本当に僕が作ってもいいの?」
「ああ、いいとも。いいものを作るんだぞ?」
「わかった。ありがとうエルフィールさん。」
嬉しさのあまりギュッとエルフィールさんの手を握り上下に大きく振ってしまう。
「いやいや、こっちも必要だったからね。気にしないでくれ。じゃ、ルヴィニの作図を見せてくれないか?」
「うん!」
待たせたくないと思い、僕は急いで自分の部屋に置いている図面紙を取りに戻る。
「生き生きしだしたね。」
「そうね、うふふ。」
「どうした?そんな嬉しそうに。」
「ちょっとね。」
どうしてだろう、胸がドキドキするよ。
課題ができるから?自分の作りたいものが製作できるから?二つとも違う。
繋がりが、エルフィールさんとの繋がりができるからドキドキしてるんだ。
部屋に着き、今まで作図したものの束を見て我に返る。
「あれ?何を作るんだっけ?」
製作許可が下りたことと彼の特注品が作れる事に舞い上がり過ぎて肝心なことを聞くのを忘れてた。
「・・・とりあえず、全部持っていこう。」
厚みのある紙の束を抱えて、お父さん達が待っているところへと戻っていく。
「エルフィールさんお待たせ、これが全作図。」
ちゃぶ台の上に束を置き、隣に座ると一枚ずつ渡して作図を見てもらう。
籠手の中に小型の杭打ち機を仕込んだもの、分離する鞭剣、両先に刃をつけた双刃槍、抜く・振り斬る・戻すに特化させた細身の刀と色々ある。
「・・・。いや、凄いなこの発想力。これを見ただけでここに来た価値はあるな。」
「褒めすぎですよエルフィールさん。奇抜なものや特化されたものですが使い手がいなければ武器とは言えません。」
「確かに、一理ありますね。でもこれは凄い・・・。」
一枚一枚丁寧に目を通していって、ある一枚の作図で彼の手は止まった。
「うん、これだ。俺の愛用していたものと寸分違わない。」
そこに描かれていたのは一本の傘。
だけど、只の傘じゃない。
二種類の仕込みを施して、覆う布もアラクネにルーン文字を刻みこんで編んでもらったものを使っている。
これで布自体の丈夫さが強化されて防御もでき、攻守ともにこなせる代物なのだ。
「これをエルフィールさんが愛用?傘ですよ?」
「傘だといっても素材次第では最高なものができあがりますよ。それに、突く、薙ぐ、斬る、仕込む、防ぐなど多様性もありますので一人で戦うにも多人数で戦うにも応用が効きます。」
自分が考えていたこの武器の概念を余すことなく理解してくれている。
初めて僕が認めてもらえた。
嬉しい感情と共に認めてくれたこの人に尽くしたいという想いが胸の中に芽生え始めて、また顔が紅くなっていく。
「ではこの作図で?」
「はい、お願いします。次に料金なんですが・・・。」
料金・・・。
その一言で僕は一気に熱が冷めてしまう。
見積もりをたてた時、出てきた金額は現在もらっているお給金の約3年分。
尽くしたい人の為に課題をこなせると思ったが、料金という壁が立ちふさがる。
「えっと、見積もるとこの金額になります。」
「ルヴィニ、この金額は・・・。」
恐る恐る出してみると、やっぱりお父さんもお母さんも金額の数値に驚いてるよ。
「まあ、こんなもんか。」
『えっ!?』
僕達は耳を疑った。
この金額をこんなものかというなんて・・・。
「特注でこの値段。これは素材持ち込みと意匠、加工料金込みなのか?」
材料の持ち込み、今までそんな事したお客は一人もいない。
特注をする人は意匠だけ伝えて、素材の選別から加工までは職人に任せているから。
投げかけられた質問に慌てて首を振り、持ち込み可能な素材とそれを差し引いた分の金額を計算し直して彼に見せる。
「それだとこれぐらい。」
さっきよりも若干値は落ちているが、それでも常人は驚く値段だろう。
「結構落ちたね。これなら即金の前払出来るな。じゃ、材料持ち込みの方で。」
そういうと彼はどこからか巾着袋を取り出してちゃぶ台の上に置くと見積書をもって立ちあがった。
「どこいくの?」
「そりゃ、材料集めるための下準備にさ。お茶御馳走様でした。」
「いいえ、大したお構いもできませんで。」
お礼を言って部屋を後にするエルフィールさん。
僕はその後をついて部屋を出ていく。
「どうした?ルヴィニ。」
「貴方だけで行くの?」
後ろ姿を追いながら話しかける。
ここで関係を固定されて終わらせたくなかったから。
「いや、スパスィと一緒に行くつもりだが?」
「僕も一緒に行っていい?」
「構わないがどうして?」
「鉱脈の場所や鉱石の質、わかる?」
山を登り、鉱脈を探してそれを掘り。
しかも、その鉱石の質まで見分けないといけないから専門知識のある者がいれば心強いと彼に助言してついていく口実を作っていく。
「質はある程度分かるが、鉱脈を探すとなると情報が少しいるかな・・・。」
「でしょ?なら僕等が使ってる所教えてあげるよ。」
「いいのか?」
「うん、だって僕にとっての初めてのお客さんなんだもの。特別だよ。」
色々と特別だから・・・。
「ありがとう。助かるよ。」
「じゃ、明日掘りに行こう。」
「ああ。」
エルフィールさんと約束を取り付けることができた。
これでまだ関係を深くすることができる。
「あらあら、ルヴィニったら積極的ね。喋る速度まで変わっちゃって、恋っていいわね。」
「ルヴィニが恋ねぇ・・・。彼、スパスィの旦那さんだよね。」
「一夫一妻なんて縛りはここにはないんじゃない?あの娘が好きになったんだからいいじゃない?」
「ちょっと心配だけどね。」
炉が壊れたのかと思い欠伸をしながら工房へ向かうと、朝刊を片手にお父さんとお母さん、そしてアルヒミアが何かを話している。
「おはよう、どうしたの?」
「あっ、ルヴィニ。ちょっとこれ見なさいよ。」
アルヒミアが僕に朝刊を渡してくれた。
「うん・・・。¨憲兵署にて強姦・・・。接近戦総括長のスギロス氏が・・・、総隊長スパスィ・ネフリティス氏を宿舎内で強姦しようとした・・・。幸いスパスィ氏の夫エルフィール氏が早急に駆けつけ未遂に終わったが・・・、スギロス氏は総括長の職を解職となり現在は独房入りとなっている・・・。¨」
記事を見て目を疑ってしまう。
スギロスさんはこの店の常連で、つい先日も重剣を納品したばかりだったから。
「驚いたでしょ?」
「そうだね・・・。スギロスさんなんでこんなことしたのかな・・・?」
「それは書いてないからわからないわって、驚くところが違う!こっちよこっち!」
朝刊をアルヒミアにとられ、彼女は記事のある部分を指す。
「スパスィ氏の夫エルフィール氏・・・。えっ・・・?」
「そうよ。あの娘いつの間にか男を見つけてきてるのよ!絶対アタイの方が先だと思ったのに!」
「あらあら、スパスィちゃんに夫が出来てそんなに悔しいの?」
「当たり前です!同じ歳の飲み仲間なんですから、悔しいに決まってるじゃないですか!」
「ルヴィニもそうなの?」
「私は・・・、驚いただけ・・・。でもどんな人なんだろう・・・?」
「気になるのかい?」
「うん・・・。」
「ルヴィニも御年頃なんだね。ちょっと寂しくなるな。」
お父さんが遠い目をして私を見てる。
まだ恋人も出来てないし、結婚するわけでもないのに・・・。
「アナタ、まだ先のことでしょ?それとも、もう一人娘を作って寂しさを紛らわします?」
「そうだね。次の仕事が終わったら励んでみるか。」
「あらやだ。頼もしい。」
娘の私やアルヒミアがいる事なんて構わずにお父さんとお母さんは家族計画の話で盛り上がっていく。
アルヒミアはうらやましそうな目で二人の会話を見ている。
僕に妹ができる日も近いかもしれない。
「やっぱりアタイも彼氏欲しいなぁ・・・。」
「まだ言ってる・・・。」
朝刊の一件を引きずりながらアルヒミアは一本の剣を仕上げていた。
一般的に普及しているショートソードより刃の掘りが鋭く、お父さんが打つジパングの刀より刃渡りが広い。
「あれ・・・?それスパスィさんの・・・。」
「課題の剣ね。ルヴィニも早く設計してトリマル親方に見せないと。アタイが先に巣立っちゃうわよ?」
「うん・・・。」
課題。
僕達の工房、¨鍛冶処「不二の鎚」¨では多くの職人が生み出されていった。
人間、ドワーフ、サイクロプス、その他様々な種族が門戸を叩いて弟子入りし、巣立っていく。
その巣立ちに関して行われるのが課題。
自分の作りたい武器、防具を作図してお父さんとお母さんに提出。
二人の製作許可が下りれば製作してお店に並ぶ。
最後にその品が売れれば晴れて合格という流れだ。
僕は作図の段階にまではいっている。
だけどお父さんとお母さんの製作許可が下りない。
お父さんには使い手を選ぶと言われ、お母さんからはあなたは何と戦うつもりで作図したの?と言われてしまった。
そんなにおかしなものは作図してないはずなのにとアルヒミアに一度見せたら、浪漫の塊ねといわれてしまう。
次は何を作図しようかと、彼女が刃を見つめる姿を見ながら考えているとお客さんが来た事を知らせる鐘が鳴る。
「いらっしゃい・・・。あっ・・・。」
工房から店のカウンターへ行きお客さんを出迎えると、そこにはスパスィさんと男性の姿があった。
「久しぶりだな、ルヴィニ。元気だったか?」
「うん・・・、元気だった。隣の人・・・、旦那さん・・・?」
「この人は旦那様といったら旦那様なんだが少し違うんだ。」
「・・・?」
スパスィは何か説明し辛そうな顔をして、言葉を探している感じだ。
「実は・・・。」
「あら、聞き覚えのある声と思ったらスパスィじゃない。旦那を連れてのろけにきたの?」
奥からアルヒミアが出てきて彼女が話しだそうとしたことを途切れさせてしまう。
「アルヒミア、のろけに来たわけじゃないよ。あっ、旦那様。この娘は鍛冶処の娘でサイクロプスのルヴィニ。こっちの娘はここに弟子入りしているドワーフのアルヒミア。」
「エルフィールだ。ルヴィニ、アルヒミア。よろしく。」
「あ・・・、う・・・。よ・・・、よろしく・・・。」
「いい男じゃない。よろしく、エルフィール。」
差し出された手を握り、エルフィールさんの顔を見ると頬が熱くなるのを感じる。
なんでだろう・・・。
「ルヴィニ?」
「なにアンタ紅くなってるのよ・・・。」
「う・・・。な・・・、なんでもないよ・・・。」
スパスィの大切な人なのに・・・。
僕、なんで・・・。
「ところでアルヒミア、例のもの出来てるのか?」
頭の中から顔の表面まで熱く紅くなって困惑していると、スパスィが話を筋を元に戻してくれた。
内心、ちょっとホッとする。
「あれね。できてるわ、ちょっと待ってて。」
そういうとアルヒミアは工房の奥へと移動して。
「それとルヴィニ。特注したいんだがトリマルさんとスフィリさんを呼んでくれないか?」
「うん・・・、ちょっと待って・・・。」
紅く火照る頬を気にしながら、お父さんとお母さんを奥の居住してる部屋へと呼びに行った。
アルヒミアの視点
「あー、うらやましい。見れば見るほどいい男じゃない。ちょっかいだしてやろうかしら。」
アタイは先刻完成させたスパスィの剣を最終調整する為の準備をしている最中だ。
各部品、刃、柄、鞘、鍔は出来上がっていたのだが組み立てはしておらず。
仮組みをして形だけは作っていたのだが、やはり本人がいないと柄の握り加減や刃の押さえつけ等の調整ができない。
「さて、顔を拝みながら作業させてもらいましょうか。」
眼福を期待しつつ、カウンターへ戻っていくとそこにエルフィール姿はない。
どこいった!私の眼福!
「どうした?アルヒミア。」
「ん?エルフィールの姿が見えないなと思って。」
「彼は奥で・・・、お父さんとお母さんと意匠の相談中・・・。」
「そうなの?残念。」
「何が残念なんだ何が。」
「眼福よ!眼福!見るだけならいいでしょ?それよりスパスィ。そんなところに立ってないで中に来て調整するから。」
「ああ・・・。」
彼女を店の中に入れて適当な場所に座らせてこちらは注文の品の組み立てにはいる。
「まだ出てきてなかったんだな。」
「これは特注品だからね。本人に合わせて調整しないと意味ないでしょ?」
柄に刃と鍔を組み、しっかりと固定させてスパスィに渡す。
「振ってみて。刃に違和感とかない?」
「ああ、思ったより軽いんだな。」
振った刃から風を斬るような音が鳴り、彼女は得物の感触を確かめていく。
「どう?」
「違和感はないが、素晴らしいな。機能的、芸術的とはまさにこのことじゃないか?」
「照れるわね。ほら、柄に滑り止め巻くから一旦返して。」
「わかった。」
振り終わった得物をスパスィから受け取り、滑り止めを巻いていると・・・。
「ねぇ・・・、スパスィ・・・。」
「どうした?」
「さっきの旦那様だけど旦那様じゃないって・・・。どういう意味・・・?」
巻き付けている手が止まり、二人の方を見る。
「あれか・・・、実は正式に結婚してるわけじゃないんだ。私が討ち負かされて求婚をしたら断られてな。それで、どこまでも着いていく宣言をすると、だったら一緒に旅をしないかと誘われて。妥協して共に旅をすることにしたんだ。」
「へぇ・・・。」
その言葉を聞き関心を示すルヴィニ。
彼女が今何を考えているか、アタイには手に取る様にわかるわ。
結婚をしてないならチャンスがあるかもってね・・・。
「でも、よく貴女はそれで妥協したわね。」
スパスィは一本の剣を取り出してルヴィニに渡す。
アタイはまた滑り止めを巻き始めて顔を下ろした。
「あれ・・・?これ・・・。」
鞘から剣を抜いたルヴィニの声に視線だけ上に戻すと抜かれた剣は途中からポッキリと折れていた。
「綺麗に折れている。こっちが折れた方だ。」
折られた方の刃を棚に置き、スパスィは話を続けていく。
「量産品とは言え、ここのスフィリさんが打ったものを教団が使っている数打ちのロングソードで折られたんだ。正攻法で追いかけたら撒かれるのは目に見て明らかだと思ったのさ。」
「だから提案を・・・?」
「ああ、離れなければ機会はあると思ってな。」
視線を元に戻し最後の一巻きをして、接着用の樹脂を塗り固定させる。
「これで乾けばいいわね。後で握り具合を確認してもらうわよ。」
「わかった。」
「で、スパスィ。肝心のあれはやったの?」
「アレ・・・?」
アレが何か分かってないルヴィニと興味津津のアタイ。
そして、顔を真っ赤にするスパスィ。
「もう、ルヴィニったらお子様じゃあるまいし。あれといったらセックスよ!子作り、交尾、まぐあい!」
言葉の意味を理解したのか、ルヴィニはボンっと顔を紅くし、スパスィは俯いてしまう。
「あ・・・、あう・・・。せ・・・、セックス・・・。」
「あーあ、真っ赤になっちゃって。どうなのスパスィやったの?」
「やった・・・。」
「あらら、結婚もしてないのに身体許しちゃんったんだ。」
「あう・・・、あう・・・。スパスィ・・・、どんな感じだったの・・・?」
真っ赤になっても聞きたいところは聞くのね。
逞しいわよ、ルヴィニ。
「あの時は・・・。その、襲われた後で身体の疼きが止めれなくてな・・・。つい・・・。」
「それならしょうがないか。」
「それで・・・、どうだったの・・・?」
アタイよりルヴィニの方がスパスィに近づき息を荒くして聞いている。
ルヴィニ。
貴女、今とんでもなく危ない女になってるわよ。
「一言で言ったら凄かった。一突かれするたびに自分の中の女を満たしてくれて、焼けつくような濃い精液が私を内側から染め上げていくんだ・・・。」
行為を思い出しているのか彼女はトロンっと光悦した表情になり、口の端から何か透明なものが垂れている。
そして、話を隣で聞いていたルヴィニも同じくトロンっと光悦した表情をして口の端から垂らしていた。
「ふぅん、そんなにいいのかー。ならアタイもちょっかいかけてみようかな。」
『えっ?』
二人がギョッとした顔になり、こちらをみる。
「何を言っているんだアルヒミア。旦那様は私に一回プロポーズまでしてくれてるんだぞ?そんなこと罷り成らぬだろう。」
「そうだよ・・・、アルヒミア・・・。一人だけずるいよ・・・。」
ルヴィニの言葉にスパスィは彼女の方を向く。
「なっ!?ルヴィニ、お前まで・・・。」
「だって・・・、プロポーズまでしてもらって結婚してないなんて・・・。変じゃない・・・?」
「そうね。そこまでしてもらって結婚してないんじゃ、他に女作ってもいいですよって言ってるようなものだしね。」
「お前らーっ!」
ルヴィニは本気の様だが、アタイはスパスィをからかって遊んでいた。
でも、本気で考えてみようかしら・・・。
店の方にも客が来ず、三人で談話していると奥からトリマルさんがルヴィニを呼ぶ声がする。
「なんだろ・・・。ちょっと行ってくる・・・。」
「いってらっしゃい。で、教団の騎士達は何が目的だったのよ?」
「そこまではわからないが、私も推測では・・・。」
スパスィの話から一旦抜け、ルヴィニはトリマルさん達がいる奥へと向かっていった。
何の用事だろうと思いつつ、彼女の旅話に耳を傾けていく。
ルヴィニの視点
「お父さん・・・、お母さん・・・。どうしたの・・・?」
「ルヴィニ、来たわね。」
「まずはそこに座って、話はそれからだよ。」
僕は言われるがまま、畳の上に座る。
お父さんの生まれジパング特有の敷物、それは日に当たった干し草の様な匂いがして好きなんだ。
「じゃ、ルヴィニ。まずは課題の話からしようか。」
湯呑に入ったお茶を一啜りしながらお父さんは話を進めていく。
「ルヴィニの作図。製作許可を出そう。」
「えっ・・・?どうして急に・・・。」
「実はこちらのエルフィールさんが特注されたのが、ルヴィニの作図したものと同じなの。」
横で胡坐をかいているエルフィールさんを見ると、小さく手を振ってくれる。
それだけでまた頬が紅くなっていくのがわかった。
「ん?どうした。ルヴィニ。」
「な・・・、なんでもない・・・。」
「あらあら。」
お母さんがニコニコして僕を見てる。
うぅ・・・、なんだか恥ずかしい。
「それでエルフィールさんに聞くと君が作成していいと言ってくれたんだ。」
「うん・・・。えっ!?ええぇぇ!?」
あまりの事に大きな声が出てちゃった。
こんな大きな声生まれて初めて出したかも。
「僕の作図、本当に僕が作ってもいいの?」
「ああ、いいとも。いいものを作るんだぞ?」
「わかった。ありがとうエルフィールさん。」
嬉しさのあまりギュッとエルフィールさんの手を握り上下に大きく振ってしまう。
「いやいや、こっちも必要だったからね。気にしないでくれ。じゃ、ルヴィニの作図を見せてくれないか?」
「うん!」
待たせたくないと思い、僕は急いで自分の部屋に置いている図面紙を取りに戻る。
「生き生きしだしたね。」
「そうね、うふふ。」
「どうした?そんな嬉しそうに。」
「ちょっとね。」
どうしてだろう、胸がドキドキするよ。
課題ができるから?自分の作りたいものが製作できるから?二つとも違う。
繋がりが、エルフィールさんとの繋がりができるからドキドキしてるんだ。
部屋に着き、今まで作図したものの束を見て我に返る。
「あれ?何を作るんだっけ?」
製作許可が下りたことと彼の特注品が作れる事に舞い上がり過ぎて肝心なことを聞くのを忘れてた。
「・・・とりあえず、全部持っていこう。」
厚みのある紙の束を抱えて、お父さん達が待っているところへと戻っていく。
「エルフィールさんお待たせ、これが全作図。」
ちゃぶ台の上に束を置き、隣に座ると一枚ずつ渡して作図を見てもらう。
籠手の中に小型の杭打ち機を仕込んだもの、分離する鞭剣、両先に刃をつけた双刃槍、抜く・振り斬る・戻すに特化させた細身の刀と色々ある。
「・・・。いや、凄いなこの発想力。これを見ただけでここに来た価値はあるな。」
「褒めすぎですよエルフィールさん。奇抜なものや特化されたものですが使い手がいなければ武器とは言えません。」
「確かに、一理ありますね。でもこれは凄い・・・。」
一枚一枚丁寧に目を通していって、ある一枚の作図で彼の手は止まった。
「うん、これだ。俺の愛用していたものと寸分違わない。」
そこに描かれていたのは一本の傘。
だけど、只の傘じゃない。
二種類の仕込みを施して、覆う布もアラクネにルーン文字を刻みこんで編んでもらったものを使っている。
これで布自体の丈夫さが強化されて防御もでき、攻守ともにこなせる代物なのだ。
「これをエルフィールさんが愛用?傘ですよ?」
「傘だといっても素材次第では最高なものができあがりますよ。それに、突く、薙ぐ、斬る、仕込む、防ぐなど多様性もありますので一人で戦うにも多人数で戦うにも応用が効きます。」
自分が考えていたこの武器の概念を余すことなく理解してくれている。
初めて僕が認めてもらえた。
嬉しい感情と共に認めてくれたこの人に尽くしたいという想いが胸の中に芽生え始めて、また顔が紅くなっていく。
「ではこの作図で?」
「はい、お願いします。次に料金なんですが・・・。」
料金・・・。
その一言で僕は一気に熱が冷めてしまう。
見積もりをたてた時、出てきた金額は現在もらっているお給金の約3年分。
尽くしたい人の為に課題をこなせると思ったが、料金という壁が立ちふさがる。
「えっと、見積もるとこの金額になります。」
「ルヴィニ、この金額は・・・。」
恐る恐る出してみると、やっぱりお父さんもお母さんも金額の数値に驚いてるよ。
「まあ、こんなもんか。」
『えっ!?』
僕達は耳を疑った。
この金額をこんなものかというなんて・・・。
「特注でこの値段。これは素材持ち込みと意匠、加工料金込みなのか?」
材料の持ち込み、今までそんな事したお客は一人もいない。
特注をする人は意匠だけ伝えて、素材の選別から加工までは職人に任せているから。
投げかけられた質問に慌てて首を振り、持ち込み可能な素材とそれを差し引いた分の金額を計算し直して彼に見せる。
「それだとこれぐらい。」
さっきよりも若干値は落ちているが、それでも常人は驚く値段だろう。
「結構落ちたね。これなら即金の前払出来るな。じゃ、材料持ち込みの方で。」
そういうと彼はどこからか巾着袋を取り出してちゃぶ台の上に置くと見積書をもって立ちあがった。
「どこいくの?」
「そりゃ、材料集めるための下準備にさ。お茶御馳走様でした。」
「いいえ、大したお構いもできませんで。」
お礼を言って部屋を後にするエルフィールさん。
僕はその後をついて部屋を出ていく。
「どうした?ルヴィニ。」
「貴方だけで行くの?」
後ろ姿を追いながら話しかける。
ここで関係を固定されて終わらせたくなかったから。
「いや、スパスィと一緒に行くつもりだが?」
「僕も一緒に行っていい?」
「構わないがどうして?」
「鉱脈の場所や鉱石の質、わかる?」
山を登り、鉱脈を探してそれを掘り。
しかも、その鉱石の質まで見分けないといけないから専門知識のある者がいれば心強いと彼に助言してついていく口実を作っていく。
「質はある程度分かるが、鉱脈を探すとなると情報が少しいるかな・・・。」
「でしょ?なら僕等が使ってる所教えてあげるよ。」
「いいのか?」
「うん、だって僕にとっての初めてのお客さんなんだもの。特別だよ。」
色々と特別だから・・・。
「ありがとう。助かるよ。」
「じゃ、明日掘りに行こう。」
「ああ。」
エルフィールさんと約束を取り付けることができた。
これでまだ関係を深くすることができる。
「あらあら、ルヴィニったら積極的ね。喋る速度まで変わっちゃって、恋っていいわね。」
「ルヴィニが恋ねぇ・・・。彼、スパスィの旦那さんだよね。」
「一夫一妻なんて縛りはここにはないんじゃない?あの娘が好きになったんだからいいじゃない?」
「ちょっと心配だけどね。」
11/07/26 12:50更新 / 朱色の羽
戻る
次へ