第四章 翡翠の剣 後編
「ふざけないでください!」
部屋の中に怒号が響き渡る。
「ふざけてなどいない!私は本気だ!」
「何が本気ですか!どこの世界に夫となる者を見つけたから重職やめて旅に出る人がいるんです!」
「ここにいる!」
溜まっていた書類に目を通しながら接近戦統括部長のスギロスと口論を繰り広げていく。
「とにかく!僕はみとめ・・・。」
「ここ数字違うぞ。」
「あっ、また会計係の奴ミスしたな!って人の話を聞いて下さい!とにかく僕は認めませんからね!」
「お前に認められなくても書類は通るさ。それとも、意地を通すために旦那様を倒してみるか?あの人に勝てたら書類は破棄してやろう。」
「今の言葉本当ですね?」
「嘘は言わないさ。私に一度も勝ててないおまえがあの人に勝てるとは思えんがな。」
「見ていてくださいよ!勝ってみせますから!」
そういってスギロスは部屋の扉を乱暴に閉めて出ていった。
「やれやれ、子供だな奴も・・・。おっと旦那様に話しておかないと・・・。」
引き受けてくれるか分らないが話て置かないとなと思いつつ、書類の処理に戻る。
全ての仕事が終わったのは日が落ち夜になってからで重い足取りで自分の部屋へと帰っていく。
部屋に戻る途中、ふと思う。
旦那様は引き受けてくれないのではないのかと、自分を厄介払い出来て丁度良いのではないのかと、不安を抱えつつ部屋に入り待ってくれていた旦那様に事情を話す。
「ん?いいよ。スギロスって人と手合わせして勝てばいいんだろ?」
「そうなんだが・・・、いいのか?」
「なんで?スパスィはここに残りたいのか?」
「嫌だ!旦那様と旅がしたい!」
「だったらいいじゃないか。それとも見限って置いていかれると思ったかい?」
「それは・・・。」
「俺達仲間だろ?もう少し信用しろよ。」
「旦那様・・・。」
感極まり、旦那様に抱きついてキスをしようとしたが待っていたのは唇ではなく手のひらだった。
「・・・。だから大人のお楽しみ的な事は期待するなって。」
「つい・・・。」
手を除けてもらい、旦那様を休憩してもらうための部屋に案内する。
本当は一緒に居たかったが旦那様に遠慮されてしまった。
案内が終わった後、扉を背にして唇に残っている旦那様の手の感触を思い出し体が震える。
きちんと抱いてもらえるまで私は耐えれるのだろうか・・・。
旦那様とスギロスが私を賭けて決闘する。という飛躍した話が署内に拡がっていた。
手合わせする修錬場では休みの連中が観戦にきている。
「どうしてこうなった。」
「お祭り騒ぎだな・・・。」
旦那様の介添えとして隣にいて助言するのだが・・・。
「あいつ、いつの間に武器を重剣に変えたんだ?」
私が旅に出る前のスギロスはロングソード主体の手数を重視する奴だったのだが。
今は身長の2倍はある得物を易々と振り回して身体を解している。
「武器に振り回されてないね。彼、相当努力したんじゃないか?」
そうだろ、私が旅に出たのが三月前。
その三月であれだけ使えれば実戦でもある程度使えるだろう。
「両者中央へ!」
審判を務める者の号令で二人は修練場の中央へ歩み寄る。
「旦那様!」
「大丈夫、自分を負かした者を信じなさいって。」
私の頭を撫でて、旦那様は離れていく。
その後ろ姿をただ見守ることしかできなかった。
中央まで歩み、対峙する両者。
何か話しているようだ。
「お前だな!総隊長を誑かした奴は!」
「誑かすって、スパスィから手合わせを申し込んで俺が勝っただけだぞ?」
「嘘だ!手合わせを申し込まれたのはわかるが、お前のような奴が勝てるはずがない!何か卑怯な手を使ったんだろう!そうだろう!」
「おいおい、なんでそこまでしなければいけないんだよ。」
「総隊長は綺麗で強く、皆の憧れなんだ!そこまでやるだろう!それにお前さえ現れなければ僕の重剣で総隊長を・・・。」
「負かして結婚できていたのに!ってか?嫉妬かよ。おい、ガキ。男の嫉妬ってのは見苦しいぞ?」
よく聞こえないが旦那様がスギロスを怒らせたらしい。審判にたしなめられ事はおさまり手合わせへと移っていく。
「これよりエルフィール対スギロスの手合わせを行う。では、両者とも用意はいいな?」
「大丈夫だ。」
「準備いいぞ。」
「では、初め!」
合図とともにスギロスが斬り込んでいった。
「うぁー!」
刃を平行にして薙ぎ払い、範囲の広い斬撃を放つ。
「よっ。」
旦那様は剣を出す隙もなく後ろへ大きく飛び退き、斬撃をかわす。
「おおっ!!」
観戦してる者達から声が上がる。
おそらく初撃を交わしたのを見るのが初めてなのだろう。
踏み込み、速度、軌道の位置、どれをとっても彼にとって最高の一撃だったのだろうから。
「ちぃ!」
「危ない危ない、初撃の大振り。二の太刀が放てると思っているのかい?」
力の乗った一撃は初撃と同じ条件でないと放つのは難しい。
斬り返そうとしても金属の板がある程度の速度で通過するだけだ。
まあ、それでも普通は威力や効果はあるのだが・・・。
「思ってるから放つんだ!」
「ほう?」
スギロスは振り終わった刃を踏ん張り、筋力で止めて斬り返しを放つ。
だが、旦那様は刃の下に潜り込み重剣を蹴りあげる。
鈍い音とともにあらぬ方向へ力を受けて重剣は持主の手を離れて飛んでいく。
「しまっ・・・!」
ここで追撃をかけて終わらせるのが普通だが、旦那様は動かない。
重剣は少し離れた場所に落ちて地面を滑り、しばらく進んで止まった。
「とってくるか、新たな得物を出すといい。まだ得物が一つ吹き飛んだだけだろ?」
「お前・・・、馬鹿にする気か!?」
「早過ぎるんだよ、お前。大口叩いたんだからもうちょっと頑張れよ。」
「なんだと!」
腰に付けていたショートソードを抜き、旦那様に斬りかかっていく。
「くらえ!」
素早く鋭い斬撃が袈裟斬り、突き、薙ぎ払いと繰り出され旦那様に襲いかかる。
元々手数で戦う男だったので軽い武器ではその長所を存分に発揮されるが、旦那様は両手にロングソードを持ちその手数を捌きながら、平然と反撃をしていた。
「・・・。」
観ているものは声が出てこない。
それほどまでに目を離せない手合わせなのだ。
袈裟斬りを右で鍔競りもう片手で振り抜きをして脇を斬り、突きはそのまま弾き上げて突きを返し、薙ぎ払ってくる斬撃は両刃で受け止めスギロスを後ろへ弾きとばす。
「手数が信条なのだろ?たかが二刀流如きに圧倒されるなよ?」
「言わせておけば!」
強い者との戦いで限界を超えた力を出し旦那様の斬撃についていくスギロス。
「くそ!くそ!くそ!」
だが・・・。
相手が悪すぎた。
「そらよ!」
旦那様は私の剣を折った斬撃を放ち、スギロスを吹き飛ばす。
「まだだ、丁度いい場所に飛んだだろ?取れよ。」
スギロスが吹き飛ばされた先は、重剣がある場所。
どうやら狙ってそこへやったようだ。
「後悔させてやる!後悔させてやる!後悔させてやる!」
怒りが頂点に達したのか、あの状態になるのは珍しい。
力と速度は増すが精密度は落ちる。
本来のロングや替えのショートでは相性の悪いが重剣なら生きてくるだろう。
正直、私でも今のスギロスに勝てるか微妙な線だが旦那様は大丈夫だろうか?
ショートソードを投げ捨てて、足元の重剣を持ち上げるとスギロスは腕を引き剣を上段に構え、突撃していく。
「うらぁー!」
重い斬撃が上から横から重剣とは思えない速度で旦那様を襲う。
「重いな・・・、だがそれだけのこと。」
剣を十字に構え、斬撃を受け止め範囲外へと流していくが負担は大きいようで重剣とロングソードが交わる度に鈍い音が鳴りわたる。
「おおおぉ!!」
再び上がる歓声、ロングソードといっても刀身は厚いものではない。
それを受け流したことが旦那様の技量を物語、観戦してる者たちを沸かせたのだ。
だが、重剣から受けるひびや裂け目が剣を侵食していき、何度目かの防御の時に粉々に砕けてしまう。。
だが、それを気にすることもなく新しい剣を出して再び防御をしている。
どれだけの剣が折れただろうか。
防御を繰り返し砕けたものは十や二十はゆうに越えている。
「はぁ・・・!はぁ・・・!守ってばかりで攻撃しないとは一体何を考えているんだ!」
「それをペラペラ話す馬鹿もいないだろう。」
足元の鋼片と柄が足場を悪くしていく。
感触、音、そして砕け刺さる痛み。
それは体力を余計に消耗させ集中力を乱し、疲れを誘う。
怒り状態から冷めていったスギロスを待っていたのは自由に動けない足場と得体の知れない感覚、そして疲れ。
彼は甘く見ていたのだろう。
エルフィールという旦那様を。
私に勝った相手だから、実力が上になった自分なら勝てる。
最悪互角の勝負ができると。
だが、現実は違った。
現に見ているこちらですらよくいままでもったと思うくらいだ。
旦那様は強い、最上位の魔物娘、淫魔化し鍛え抜かれた男性、最高位の司祭や聖騎士、加護や祝福を受けた勇者でないと勝てないのかもしれない。
そう考えているとスギロスの動きが鈍くなってきた。
短期間で扱えるようになった重剣を、長時間振りまわし続けたツケが回ってきたようだ。
「くそっ!なぜだ・・・!?」
「体力を消費し過ぎたんだよ。配分を見誤ったな。」
「なに!?訓練でも実戦でもそんな事は・・・。」
「スパスィが居なくてお前さんが一番強かったんだろ?そのせいで時間のかかる戦闘や怒りに任せて重剣を振った経験がなかった。だったらそうなるもの当然だ。」
「・・・。」
「一つ学んだところで、こちらも一つ学ばせてもらおうか。・・・、死ぬなよ?」
何か会話をしたと思ったら、いきなり旦那様が後方へとさがりスギロスから距離を開ける。
すると何かが木霊しだした。
「七 属 召 喚 心 流 権 化・・・。」
「なんだ、これ・・・。」
観戦しているもの達もざわめき始める。
私も聞いたこともない異国の言葉それのせいだろう。
言葉にあわせて修錬場の中へ渦巻き始める魔力でも気でもない力。
「火 闘 流 争 水 静 流 流・・・。」
腕を真横に伸ばし、手を広げそこから何かを放つように言葉は続いていく。
「風 混 流 染 土 無 流 動・・・。」
「こ、これは詠唱?」
カタカタと何かが振動する音と旦那様の声だけが響き渡る。
スギロスは何が起こるか戸惑いながら、発動する前に潰しにかかろうとするが重剣の重さと疲労でゆっくりとしか動けない。
重剣が届く範囲にまでスギロスが近づき、振りかぶるが旦那様はその上空を跳躍し飛び越えて言葉を更に続ける。
「光 照 流 陽 闇 侵 流 心・・・。」
言葉の流れる時間経過により振動していたものが動きだして、音の正体がわかった。
それは砕けた鋼片、細かく砕けたものが地面とぶつかりあい音を鳴らしていたのだ。
「闘 静 混 無 照 侵 争 流 染 動 陽 心・・・。」
「真上を、飛ばれた・・・?」
「魂現 招来!」
最後の掛け声らしきものと共に鋼片が全てスギロスの方を向き、矢の様に飛んでいく。
「なんだと!?」
鋼片の先は鋭く、おびただしい数の破片が身を裂きに四方八方からスギロスへ向かう。
これでは防ぐこともかわすことも無理だと誰もが思ったが。
「うおおおおぉ!」
雄たけびと共に重剣を渾身の力を込めて振り、側面を使って飛んできた鋼片を叩き落とし行くがこぼれたものもあり。
それは肩を貫き、脇を裂き、頭をかすめ、足に刺さっていった。
「ほお、少しは防いだか。面白い。」
旦那様は素早く両手を組み、形を変えていく。
「流れるものよ 全てに存在するものよ 我が源に集え 我が声に集え・・・。」
今度は私達にも聞き取れる声が辺りに流れると、叩き落され更に砕けた鋼片が動き始める。
「介し吹き込め 介し舞い踊れ・・・。」
言葉とともに流れに乗り、複数の鋼片が風の様にスギロスへ襲いかかった。
「一点なら防ぐことは簡単なこと!」
痛みに耐えながら重剣を盾のように構え、防御の体勢をとって迎え撃つ。
雨の音のように鋼片は重剣へとぶつかっていき、細かくなった身を更に小さくしている。
「なんの攻撃かと思えば・・・。これは仕留め損ったお前のおごりだ!耐えれば!耐えれば勝てるんだ!」
「情けを与えるのではなく 救いを与えるように・・・。」
スギロスは勝機を見出したように防御を固めていくが旦那様はそのまま手の形を組み替えていき、言葉を続けていく。
何度も何度も雨が降る様に鋼片はスギロスへと降り注ぐ。
雨が止み、旦那様の攻撃が止んだ時。
それを待っているのだろう。
だが、止まない。
鋼片いや、鋼粉の雨は止むどころか強さを増して数を増やして重剣の傘へと降り注いでいった。
「慈悲を 慈愛を 二つの救いを抱き・・・。」
鋼粉の雨が降る音と別に他の音が聞こえてくる。
何かが削り取られる音、何かが身を細める音・・・。
それに最初に気がついたのはスギロスだった。
「いつまでこんな無駄な攻撃をするんだ。それにこの音・・・。まさか・・・!?」
「討ち拉がれ 砕け散れ!」
旦那様が再び最後の掛け声を叫ぶと鋼粉は更に速度を増して降り注いでいく。
防ぐ、この判断は正しかったがやはり彼は甘かった。
耐え切れれば、防ぎ切れれば勝てる。
そんな考えで防いでいたのだろう。
自分の尺で旦那様を計り、勝手に決めつけたもので勝機を見出しそれを待つ。
しかし、誰も知らないのだ。
彼の容量を、彼の限界を、彼の技を、彼の力を、彼の心を・・・。
豪雨に絶え間なくさらされた傘は、その身を朽ちさせ限界をむかえる。
刀身は紙の様に薄く、防ぐ術すら失い、鋼粉の雨に貫かれスギロスを濡らす。
「ああああぁぁぁぁ!?」
鋼粉を全身に浴び埋まっていき、雨の止んだ後そこにあったのは腕がだらしなく垂れ気絶した顔を晒して鋼粉に埋まった彼の姿だった。
「・・・。」
修錬場が静寂に包まれる。
審判や観戦した者達、私ですら声が出なかったのだ。
しばらくして審判が我に戻り手合わせの終わりを告げる。
「勝者!エルフィール!」
「おおぉぉぉぉ!」
そこの声でようやく観戦している者たちも我に戻り歓声を上げた。
「旦那様!」
「おう、スパスィ。勝ったぞ。」
何事もなかったかのように戻ってきた旦那様を迎え、勝利を喜ぶ。
「ええ!でも、あそこまでやる必要はないのでは?」
「いや、能力の戻り具合を確認したかったんだが・・・。正直やり過ぎたな。」
「で、スギロスは?」
「大丈夫、死んじゃいないさ。全身打撲と最悪骨折だが、すぐ治せるだろう。」
「・・・、旦那様。」
もはや手合わせと呼べるものではなくなったが決着がつき、晴れて旦那様とずっと旅ができるようになったのだ。
憲兵宿舎での最後の夜、部屋の荷物を整理していると扉が叩かれる。
旦那様が手伝いに来てくれたのかと思い扉を開けると、何かが飛びかかってきていきなり床に押し倒された。
「総隊長・・・。僕ですよ・・・。」
飛びかかって来たのはスギロスで、眼が血走っており正気な状態ではないのがわかる。
息も荒く、彼から恐怖を感じた。
「スギロス!お前!」
「総隊長がいけないんですよ?僕の気持ちを知らずにあんな奴を夫に選ぶから・・・。」
僕の気持ち?何を言っているんだこいつは・・・。
「離さないか!こんな事をして只で済むと思っているのか!」
「思ってますよ?だって貴方はもう総隊長じゃないんですから!だから僕のコレで、貴方に誰が夫にふさわしいか教えに来たんじゃないですか!」
奴がズボンを下ろし中からギンギンに反り返った肉棒が現れる。
「ひっ!?」
足掻き力尽くで脱出しようとするが、恐怖で全身に力がはいらない。
腕を振り、足を上げようとするが虚しく抑え込まれてしまう。
「まずは入れる前に解してあげましょうか。僕は優しいですからね。」
鈍く裂かれる音が鳴り、服が破かれ胸が露出してしまう。
「きゃぁ!?」
「僕の聞いたことのない声だ。もっと聞かせてくださいよ。」
触れてほしくない者の手が伸びて私の乳房へ沈み込み、優しく揉みしだかれる。
「痛いだろう!やめろ!」
「痛いですか・・・、ではこんなのはどうです?」
拒絶を吐き、痛みを訴えると今度は指先でなぞるように触れてきた。
触るか触られないかの感触、こそぐったくも快楽を引きだす動きに痛みではない何かがこみ上げてくる。
引き出すように、じらすようにじっくりと・・・。
「やめろと言っているんだ!そんな触り方をするな!」
「大丈夫ですよ。すぐ良くなりますから。」
指先は乳房をなぞり、時折乳首に触れてまた乳房へと移動していく。
こそぐったさは次第に微弱な気持ちよさへと変わっていき、私を侵食していった。
「おや?乳首が立ってきましたね?気持ちよかったですか?」
「誰が!お前の手なんかで、あっ!?」
ふいに乳首を指でつねられて電気が走るような感覚が襲ってくる。
今まで経験した事のない痛みでもない甘いものでない何かが。
何かが全身に合図するようにそれは走っていく。
「気持ちよくないのにそんな声を出すんですか・・・。では、気持ちよくなるまで続けましょうか。」
奴は乳房を揉みしだきながら顔を近づけてきた。
私はそれを拒もうと顔を背けると、耳鰭に熱い何かが這ってくる感触が・・・。
舌が、奴の舌が私の耳鰭を舐めている・・・。
「ん・・・っ!む・・・っ!」
「声を出すのを我慢しなくていいんですよ?気持ちいいんでしょ?」
「うるさい・・・、黙れ・・・。」
「おや、では確認してみましょうか。」
快楽に耐え、声を殺して逃げる機会をうかがうが。
奴の次の言葉で耐え、押し殺しているものがばれてしまう。
指が秘所にあてがわれ、擦られることにより下着に湿り気を与え私が快楽を受けていることがわかってしまった。
「さわ・・・っ。や・・・っ。」
「水っぽいですね。なんですか?これは・・・。」
「・・・。」
何も言えずにいると、全身に新たな刺激が襲ってくる。
下着の上から奴の指が秘所を擦りあげられ、耐えられない快楽が走り回っていく。
「ひ・・・っ!?やめ・・・、やめろ・・・。」
「おやおや、好きでもない男にマンコを擦られて濡れますか?変態ですね。」
「!?」
変態、無理やりやられている私が変態・・・。
濡れて感じているのは奴のせいなのに・・・。
「準備はよさそうですね。では、入れてあげます僕の雌蜥蜴に堕としてあげます!」
更に反り返って脈打つ肉棒が秘所に迫ってきた。
最後のあがきで声を張り上げ、叫んだ。
「嫌っ!嫌っ!嫌っ!旦那様!旦那様!助けて!助けて!エルフィール!エルフィール!」
必死に、今頼れる。
たった一つ頼れる存在、エルフィールの名を。
「無駄ですよ!彼、今取り込み中ですから!さあ!僕を受け入れてください!」
肉棒で下着の上から秘所を擦り、私の愛液を自分の肉棒に塗るスギロス。
それをされるだけでも身体は熱くなり、女であること魔物娘であることを嫌でも実感し、性を恨めしく思う。
「まだ溢れてきますよ。どうしようもない変態だ!でも、僕は貴方を愛してあげますよ!」
愛液を充分に塗り終えると、下着をずらし、秘所に熱い肉棒をあてがわれた。
絶望が、絶望が眼の前に迫ってきている。
「・・・。」
「いきますよ?」
先が、先が入って・・・。
もう駄目だ。
今入れられたら、中に入ってきたら・・・。
私はこいつに壊され、堕とされ、雌蜥蜴になってしまう・・・。
愛されることもなく好きでもない男の雌になる、絶望で心が壊れそうになり、唯一現実を見ない為に目を閉じる。
だが、スギロスは私の中に一向に入ってこなかった。
恐る恐る目を開けると、そこには宙に上がっているスギロスの姿が・・・。
「すまん。大丈夫か?」
そこには助けを求めた人物が、私の愛を捧げると決めた人物がスギロスを持ち上げていた。
「遅いぞ、遅いぞ!旦那様・・・。もう少しでこの外道に奪われる所だったんだからな・・・。」
「悪い、思いのほか数が多くてな。」
「えっ?」
どうやらスギロスが時間稼ぎのために旦那様に何か足止めをしていたらしい。
「お前・・・、なぜここにいる・・・。」
首を片手で持ちあげられ泡を吹き、苦しんでいるスギロスが旦那様を睨みつけている。
「あのな、大体わかるだろうが。嫉妬振りまいて惨敗した後、露骨にお前の部下達が手合わせ申込みに俺の所に来たらよ。気付かない方が馬鹿だわ。」
「あの役立た・・・、ガァ・・・。」
それ以上は聞きたくはない言わんがばかりにゴキッっと鈍い音をさせると、スギロスは琴切れた人形のようにだらりと首や手足が垂れた。
「自分のことぐらい自分で面倒見ろ。部下なんか使わずにな。」
そういってスギロスは部屋の外に放り出される。
「旦那様!旦那様!」
放り出された者のことなど構わずに起き上がり、愛しい人へと抱きつきにいく。
いつもはここで静止がかかるはずだが、待っていたのは旦那様の胸板。
そして優しい抱擁だった。
「怖かっただろう・・・。奴の行動はわかっていたはずなのに来るのが遅れてすまなかった。」
頭を撫でられ、抱きしめ来る力も強くなっていく。
旦那様の匂い、優しさ、抱きしめられ満たされるもの。
そして、雄を求める疼き。
また、女であり魔物娘の性を恨めしく思った。
旦那様を押し倒したい!
でも、押し倒せば嫌われるかもしれない・・・。
二つの思考が頭の中を駆け巡り、戦い、押され合い、考えができなくなっていく。
気がつけば旦那様を押し倒してキスをしていた。
「んちゅ・・・。ん・・・っ、むう・・・っ。旦那様・・・、旦那様・・・。」
舌を這わせて口の中を舐めていく。
唾液を舌で運び、なすりつけ、私を旦那様へと満たす。
旦那様は合わせて絡めてくれないが優しく頭を撫で続けてくれている。
「ひゃぁ・・・っ、きふ・・・っ、れも・・・っ、かみ・・・っ。」
触られる度に頭から気持ちいいいのが降りていき子宮がうずく、どうやら髪も性感帯みたいだ。
ずっとこうされて包まれていたかった、甘い匂い、甘い刺激、温かい感触。
だけど私の秘所の近くで何がか当たっている。
口を離して、下半身の方を見ると旦那様のズボンが張りあがっていて膨らみがあった。
「旦那様?」
「・・・。ずっと我慢してたんだが・・・、無理だった。すまん。」
我慢なんてしなくていいのにと思いながら旦那様の膨らみを解放してあげる。
出てきたものは、さっき見た肉棒よりも太くで大きいもの。
正直、怖かった。
愛しい人のものであっても私はあれで犯されかけたのだから・・・。
「無理はしなくていいんだぞ?」
「いや、心の準備だけさせてくれ。そしたら大丈夫・・・。」
大地に根ざしている巨木の様な肉棒は少し時間が立っても小さくはならないし、細くもならない。
ジッと脈打ち、熱を発してそびえたつ肉棒を見ているとまた大きくなったように思える。
「じっと見ないでくれ。恥ずかしい・・・。」
「こんなに太くて大きいものが入ってしまうのかと思って・・・。」
いつまでもこのままでは旦那様に悪いと、意を決して肉棒を握った。
「つ・・・っ!?」
「痛かったか?」
「急に触られたから、驚いただけだ。」
「そっか、じゃあ。入れるぞ?」
「準備は・・・?」
「どこぞの外道とさっきのキスで済んでるよ。」
肉棒を秘所にあてがい、擦りつけながら入れるべき所へと導いてく。
「あっ・・・。」
「ん・・・っ。」
互いの熱さを感じる部分が当たる為、声が漏れている。
漏れてるのは声だけでなく、愛液も多く溢れて手を肉棒を床を水浸しにした。
「旦那様・・・。」
擦れただけでこの状態。
入れたら、愛しい人のを入れたらどうなってしまうのかと。
肉欲と好奇心にかられ膣内へと肉棒を誘っていく。
ゆっくりとねっとりと太く大きいものが押しのけるように肉を裂き壁を削りながら入ってくる。
「はあああ・・・っ。あっ。な、なにこれ・・・。」
私の膣は得物を捕えたかのようにギュッと締め上げ奥へ奥へと飲み込んでいく。
「あふっ、はぅ・・・っ。くる・・・、奥・・・。きちゃう・・・。」
もっと奥へ導きたい、感じたいと押し込んでいくがゆっくりだと途中の何かに阻まれてしまい。
これ以上の快楽が得られない。
「あれぇ・・・。これ・・・・。」
「スパスィの処女膜だよ。」
純潔の証、初めての証、子を孕む為に通る最初の儀式。
でも、これ邪魔だな・・・。
もう先にあるものしか見えていない私は腰を上げていく。
「耐えられない・・・っ、上げるよ?破つよ?奥に・・・っ、もっと奥に!」
勢いをつけて降ろすと笠の部分が肉を掻き、包み込んだ肉棒が膣を押し広げる気持ちよさがそのまま全身を駆け巡る。
鈍い音が聞こえたが、それに構わず腰を動かし続けた。
「ひあゃ・・・っ、あっ!あ・・・!あ・・・!」
「スパスィ・・・。」
裂く、擦れる、拡がる、締まる。
その全てが身体中に快感を届けてくれ、眼の前に白い光が迫ってきた。
「あひっ、あっ。な、なにこれ・・・。なにかくる・・・。」
「で、でる・・・っ。」
私の膣内に熱いものが出されて、白い光に包まれていく。
「あっ、あふあああ・・・っ!」
包み込んだ光が晴れていくとまた身体に電気が走ってくる。
だが、最初ほど強くもなく耐えられないほどでもない。
「スパスィ・・・、激しいんだな君・・・。」
「えっ?旦那様?」
何をしているのか自分でもわからないが、意識がはっきりするにつれてわかってきた。
今、旦那様の上で腰を振り続けている・・・。
「あ・・・。」
それに気がつくと、身体は敏感に反応していく。
「また締め付けが・・・。」
「いや・・・っ、なん・・・、で・・・。」
身体は正直なもので、この自分を堕としてくれるものを離すまいと再び締め付けて快楽を貪り始めた。
「はっ・・・。あ、あっ。あ・・・。」
「あぁ・・・。ダメ・・・っ、凄いの・・・。」
艶声が漏れ、何も考えられなくなっていく。
肉と肉がぶつかり合い、水の跳ねる音と合わさり、さらに私と旦那様を高ぶらせ。
「スパスィ・・・、また・・・。」
「いいの、来て!注ぎ込んで!」
奥の奥、子宮の入り口を旦那様のものが叩き続けている。
肉も擦れ、掻かれてまた白い光が近付いてきた。
お互いの腰の動きも激しくなり、速度も上がっていき。
私をあの光がまた包みにやってくる。
「でるっ!」
旦那様の声とともに入口に叩きつけられ肉棒から大量の精液が私の中に入ってきた。
熱く、焼けるような精液が子宮口から中に直接出され壁に当たり隅々まで満たされていく。
「ああ、あはあああ・・・!」
奥へ奥へと全てがエルフィールに染められて、私は旦那様のものとなった。
「はあああ・・・。す、凄かった・・・。」
行為が終わり身体に残る余韻と締め付けてはなさない肉棒の感触に浸っていると、部屋の扉が開いていることに気付く。
「そういえば、開けっぱなしだった・・・。」
そこから見える複数の顔や頭、そして耳。
床に旦那様を押し倒し、繋がっている自分の姿。
行為中の自分の乱れた姿を、声を晒してしまった事に思考は凍り付き・・・。
「い・・・、い・・・。いやぁーっ!」
叫び声が宿舎内に響き渡った。
「では、本日をもってスパスィ・ネフリティスを退職とする。しかし、君が夫と旅に出るとはな。てっきりうちの憲兵署に就職させてくれるのかと思ったよ。」
「すいません。旦那様の目的を優先にしたいので・・・。」
「彼の目的。世界中を旅することだったね。」
「はい。」
「大変だろうけど頑張りなさい。」
「ありがとうございます。それと・・・。」
「スギロス統括長のことかね?」
「ええ・・・。」
「彼があんな行動をするとはね。正直驚いているよ。今は頭を冷やしてもらうために独房へ入れている。統括長職は解職だろうな・・・。」
「そうですか・・・。」
「気に病むことはない。君が悪い所は一つもないのだから、さあ夫が待っているのだろ?早く行ってあげなさい。」
「はい、今までありがとうございました。では、失礼します。」
署長室を後にして一つ溜息をつく。
旦那様の元へ戻りたいが気まずいのだ。
昨晩押し倒した一件の後、朝から会話がない。
嫌われてしまったかと考えてしまい話す事が出来ないでいる。
しかし、戻らないわけにもいかず、憲兵署の入り口で待ってくれている旦那様の元へと向かった。
「終わったか?」
「ああ・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
会話が続かずにお互い黙りこんでしまう。
とりあえず歩きだすが沈黙の方が続いてしまっている。
この空気に耐えきれずに私から話しかけようと口を開くと・・・。
『あの・・・。』
考えていたことは同じらしく同時に同じ声をかけてしまった。
「ぷっ・・・。」
「くすっ・・・。」
『あははははは。』
お互いに笑い合い、息が切れるまで笑いは続き。
『はあ、はあ、はあ・・・。』
周囲の人々の視線で二人とも我に返り笑いが収まる。
「旦那様、昨晩は押し倒してそのまましてしまってすまなかった。自分でも自制が効かなくて・・・。」
「そうか、こちらも身は固めないと言っておきながらスパスィにあんなことをしてしまって・・・。」
「互いに同じ事を考えていたようだな。」
「そのようだ。スパスィ、あそこまでした仲だ。責任を取る意味を込めて改めて一緒に旅をしてくれないか?」
「夫婦としてか?」
「それでも構わない。」
「いや、遠慮しておくよ。最初通り、仲間として私の全てを見てくれ。そして旦那様の眼鏡にかなったら妻にして欲しい。」
「スパスィ・・・。」
「さあ!次はどうしましょうか?旦那様!」
彼の前に出て、くるりと振り返り今後の予定を聞く。
「そうだな。また武器を調達しないと・・・。」
「だったら特注品を作ってみないか?」
街の一角の小さな鍛冶屋、そこは量産品から特注まで引き受けてくれる憲兵御用達の場所。
私の注文したものも出来ているはずなので旦那様のを注文するついでに取りに行こう。
「特注品かそれもいいな、なら出来るかどうか見積もってもらわないとな・・・。」
「何を作るつもりなんだ何を・・・。」
一抹の不安を抱えて、私達は鍛冶処「不二の鎚」へと向かっていった。
部屋の中に怒号が響き渡る。
「ふざけてなどいない!私は本気だ!」
「何が本気ですか!どこの世界に夫となる者を見つけたから重職やめて旅に出る人がいるんです!」
「ここにいる!」
溜まっていた書類に目を通しながら接近戦統括部長のスギロスと口論を繰り広げていく。
「とにかく!僕はみとめ・・・。」
「ここ数字違うぞ。」
「あっ、また会計係の奴ミスしたな!って人の話を聞いて下さい!とにかく僕は認めませんからね!」
「お前に認められなくても書類は通るさ。それとも、意地を通すために旦那様を倒してみるか?あの人に勝てたら書類は破棄してやろう。」
「今の言葉本当ですね?」
「嘘は言わないさ。私に一度も勝ててないおまえがあの人に勝てるとは思えんがな。」
「見ていてくださいよ!勝ってみせますから!」
そういってスギロスは部屋の扉を乱暴に閉めて出ていった。
「やれやれ、子供だな奴も・・・。おっと旦那様に話しておかないと・・・。」
引き受けてくれるか分らないが話て置かないとなと思いつつ、書類の処理に戻る。
全ての仕事が終わったのは日が落ち夜になってからで重い足取りで自分の部屋へと帰っていく。
部屋に戻る途中、ふと思う。
旦那様は引き受けてくれないのではないのかと、自分を厄介払い出来て丁度良いのではないのかと、不安を抱えつつ部屋に入り待ってくれていた旦那様に事情を話す。
「ん?いいよ。スギロスって人と手合わせして勝てばいいんだろ?」
「そうなんだが・・・、いいのか?」
「なんで?スパスィはここに残りたいのか?」
「嫌だ!旦那様と旅がしたい!」
「だったらいいじゃないか。それとも見限って置いていかれると思ったかい?」
「それは・・・。」
「俺達仲間だろ?もう少し信用しろよ。」
「旦那様・・・。」
感極まり、旦那様に抱きついてキスをしようとしたが待っていたのは唇ではなく手のひらだった。
「・・・。だから大人のお楽しみ的な事は期待するなって。」
「つい・・・。」
手を除けてもらい、旦那様を休憩してもらうための部屋に案内する。
本当は一緒に居たかったが旦那様に遠慮されてしまった。
案内が終わった後、扉を背にして唇に残っている旦那様の手の感触を思い出し体が震える。
きちんと抱いてもらえるまで私は耐えれるのだろうか・・・。
旦那様とスギロスが私を賭けて決闘する。という飛躍した話が署内に拡がっていた。
手合わせする修錬場では休みの連中が観戦にきている。
「どうしてこうなった。」
「お祭り騒ぎだな・・・。」
旦那様の介添えとして隣にいて助言するのだが・・・。
「あいつ、いつの間に武器を重剣に変えたんだ?」
私が旅に出る前のスギロスはロングソード主体の手数を重視する奴だったのだが。
今は身長の2倍はある得物を易々と振り回して身体を解している。
「武器に振り回されてないね。彼、相当努力したんじゃないか?」
そうだろ、私が旅に出たのが三月前。
その三月であれだけ使えれば実戦でもある程度使えるだろう。
「両者中央へ!」
審判を務める者の号令で二人は修練場の中央へ歩み寄る。
「旦那様!」
「大丈夫、自分を負かした者を信じなさいって。」
私の頭を撫でて、旦那様は離れていく。
その後ろ姿をただ見守ることしかできなかった。
中央まで歩み、対峙する両者。
何か話しているようだ。
「お前だな!総隊長を誑かした奴は!」
「誑かすって、スパスィから手合わせを申し込んで俺が勝っただけだぞ?」
「嘘だ!手合わせを申し込まれたのはわかるが、お前のような奴が勝てるはずがない!何か卑怯な手を使ったんだろう!そうだろう!」
「おいおい、なんでそこまでしなければいけないんだよ。」
「総隊長は綺麗で強く、皆の憧れなんだ!そこまでやるだろう!それにお前さえ現れなければ僕の重剣で総隊長を・・・。」
「負かして結婚できていたのに!ってか?嫉妬かよ。おい、ガキ。男の嫉妬ってのは見苦しいぞ?」
よく聞こえないが旦那様がスギロスを怒らせたらしい。審判にたしなめられ事はおさまり手合わせへと移っていく。
「これよりエルフィール対スギロスの手合わせを行う。では、両者とも用意はいいな?」
「大丈夫だ。」
「準備いいぞ。」
「では、初め!」
合図とともにスギロスが斬り込んでいった。
「うぁー!」
刃を平行にして薙ぎ払い、範囲の広い斬撃を放つ。
「よっ。」
旦那様は剣を出す隙もなく後ろへ大きく飛び退き、斬撃をかわす。
「おおっ!!」
観戦してる者達から声が上がる。
おそらく初撃を交わしたのを見るのが初めてなのだろう。
踏み込み、速度、軌道の位置、どれをとっても彼にとって最高の一撃だったのだろうから。
「ちぃ!」
「危ない危ない、初撃の大振り。二の太刀が放てると思っているのかい?」
力の乗った一撃は初撃と同じ条件でないと放つのは難しい。
斬り返そうとしても金属の板がある程度の速度で通過するだけだ。
まあ、それでも普通は威力や効果はあるのだが・・・。
「思ってるから放つんだ!」
「ほう?」
スギロスは振り終わった刃を踏ん張り、筋力で止めて斬り返しを放つ。
だが、旦那様は刃の下に潜り込み重剣を蹴りあげる。
鈍い音とともにあらぬ方向へ力を受けて重剣は持主の手を離れて飛んでいく。
「しまっ・・・!」
ここで追撃をかけて終わらせるのが普通だが、旦那様は動かない。
重剣は少し離れた場所に落ちて地面を滑り、しばらく進んで止まった。
「とってくるか、新たな得物を出すといい。まだ得物が一つ吹き飛んだだけだろ?」
「お前・・・、馬鹿にする気か!?」
「早過ぎるんだよ、お前。大口叩いたんだからもうちょっと頑張れよ。」
「なんだと!」
腰に付けていたショートソードを抜き、旦那様に斬りかかっていく。
「くらえ!」
素早く鋭い斬撃が袈裟斬り、突き、薙ぎ払いと繰り出され旦那様に襲いかかる。
元々手数で戦う男だったので軽い武器ではその長所を存分に発揮されるが、旦那様は両手にロングソードを持ちその手数を捌きながら、平然と反撃をしていた。
「・・・。」
観ているものは声が出てこない。
それほどまでに目を離せない手合わせなのだ。
袈裟斬りを右で鍔競りもう片手で振り抜きをして脇を斬り、突きはそのまま弾き上げて突きを返し、薙ぎ払ってくる斬撃は両刃で受け止めスギロスを後ろへ弾きとばす。
「手数が信条なのだろ?たかが二刀流如きに圧倒されるなよ?」
「言わせておけば!」
強い者との戦いで限界を超えた力を出し旦那様の斬撃についていくスギロス。
「くそ!くそ!くそ!」
だが・・・。
相手が悪すぎた。
「そらよ!」
旦那様は私の剣を折った斬撃を放ち、スギロスを吹き飛ばす。
「まだだ、丁度いい場所に飛んだだろ?取れよ。」
スギロスが吹き飛ばされた先は、重剣がある場所。
どうやら狙ってそこへやったようだ。
「後悔させてやる!後悔させてやる!後悔させてやる!」
怒りが頂点に達したのか、あの状態になるのは珍しい。
力と速度は増すが精密度は落ちる。
本来のロングや替えのショートでは相性の悪いが重剣なら生きてくるだろう。
正直、私でも今のスギロスに勝てるか微妙な線だが旦那様は大丈夫だろうか?
ショートソードを投げ捨てて、足元の重剣を持ち上げるとスギロスは腕を引き剣を上段に構え、突撃していく。
「うらぁー!」
重い斬撃が上から横から重剣とは思えない速度で旦那様を襲う。
「重いな・・・、だがそれだけのこと。」
剣を十字に構え、斬撃を受け止め範囲外へと流していくが負担は大きいようで重剣とロングソードが交わる度に鈍い音が鳴りわたる。
「おおおぉ!!」
再び上がる歓声、ロングソードといっても刀身は厚いものではない。
それを受け流したことが旦那様の技量を物語、観戦してる者たちを沸かせたのだ。
だが、重剣から受けるひびや裂け目が剣を侵食していき、何度目かの防御の時に粉々に砕けてしまう。。
だが、それを気にすることもなく新しい剣を出して再び防御をしている。
どれだけの剣が折れただろうか。
防御を繰り返し砕けたものは十や二十はゆうに越えている。
「はぁ・・・!はぁ・・・!守ってばかりで攻撃しないとは一体何を考えているんだ!」
「それをペラペラ話す馬鹿もいないだろう。」
足元の鋼片と柄が足場を悪くしていく。
感触、音、そして砕け刺さる痛み。
それは体力を余計に消耗させ集中力を乱し、疲れを誘う。
怒り状態から冷めていったスギロスを待っていたのは自由に動けない足場と得体の知れない感覚、そして疲れ。
彼は甘く見ていたのだろう。
エルフィールという旦那様を。
私に勝った相手だから、実力が上になった自分なら勝てる。
最悪互角の勝負ができると。
だが、現実は違った。
現に見ているこちらですらよくいままでもったと思うくらいだ。
旦那様は強い、最上位の魔物娘、淫魔化し鍛え抜かれた男性、最高位の司祭や聖騎士、加護や祝福を受けた勇者でないと勝てないのかもしれない。
そう考えているとスギロスの動きが鈍くなってきた。
短期間で扱えるようになった重剣を、長時間振りまわし続けたツケが回ってきたようだ。
「くそっ!なぜだ・・・!?」
「体力を消費し過ぎたんだよ。配分を見誤ったな。」
「なに!?訓練でも実戦でもそんな事は・・・。」
「スパスィが居なくてお前さんが一番強かったんだろ?そのせいで時間のかかる戦闘や怒りに任せて重剣を振った経験がなかった。だったらそうなるもの当然だ。」
「・・・。」
「一つ学んだところで、こちらも一つ学ばせてもらおうか。・・・、死ぬなよ?」
何か会話をしたと思ったら、いきなり旦那様が後方へとさがりスギロスから距離を開ける。
すると何かが木霊しだした。
「七 属 召 喚 心 流 権 化・・・。」
「なんだ、これ・・・。」
観戦しているもの達もざわめき始める。
私も聞いたこともない異国の言葉それのせいだろう。
言葉にあわせて修錬場の中へ渦巻き始める魔力でも気でもない力。
「火 闘 流 争 水 静 流 流・・・。」
腕を真横に伸ばし、手を広げそこから何かを放つように言葉は続いていく。
「風 混 流 染 土 無 流 動・・・。」
「こ、これは詠唱?」
カタカタと何かが振動する音と旦那様の声だけが響き渡る。
スギロスは何が起こるか戸惑いながら、発動する前に潰しにかかろうとするが重剣の重さと疲労でゆっくりとしか動けない。
重剣が届く範囲にまでスギロスが近づき、振りかぶるが旦那様はその上空を跳躍し飛び越えて言葉を更に続ける。
「光 照 流 陽 闇 侵 流 心・・・。」
言葉の流れる時間経過により振動していたものが動きだして、音の正体がわかった。
それは砕けた鋼片、細かく砕けたものが地面とぶつかりあい音を鳴らしていたのだ。
「闘 静 混 無 照 侵 争 流 染 動 陽 心・・・。」
「真上を、飛ばれた・・・?」
「魂現 招来!」
最後の掛け声らしきものと共に鋼片が全てスギロスの方を向き、矢の様に飛んでいく。
「なんだと!?」
鋼片の先は鋭く、おびただしい数の破片が身を裂きに四方八方からスギロスへ向かう。
これでは防ぐこともかわすことも無理だと誰もが思ったが。
「うおおおおぉ!」
雄たけびと共に重剣を渾身の力を込めて振り、側面を使って飛んできた鋼片を叩き落とし行くがこぼれたものもあり。
それは肩を貫き、脇を裂き、頭をかすめ、足に刺さっていった。
「ほお、少しは防いだか。面白い。」
旦那様は素早く両手を組み、形を変えていく。
「流れるものよ 全てに存在するものよ 我が源に集え 我が声に集え・・・。」
今度は私達にも聞き取れる声が辺りに流れると、叩き落され更に砕けた鋼片が動き始める。
「介し吹き込め 介し舞い踊れ・・・。」
言葉とともに流れに乗り、複数の鋼片が風の様にスギロスへ襲いかかった。
「一点なら防ぐことは簡単なこと!」
痛みに耐えながら重剣を盾のように構え、防御の体勢をとって迎え撃つ。
雨の音のように鋼片は重剣へとぶつかっていき、細かくなった身を更に小さくしている。
「なんの攻撃かと思えば・・・。これは仕留め損ったお前のおごりだ!耐えれば!耐えれば勝てるんだ!」
「情けを与えるのではなく 救いを与えるように・・・。」
スギロスは勝機を見出したように防御を固めていくが旦那様はそのまま手の形を組み替えていき、言葉を続けていく。
何度も何度も雨が降る様に鋼片はスギロスへと降り注ぐ。
雨が止み、旦那様の攻撃が止んだ時。
それを待っているのだろう。
だが、止まない。
鋼片いや、鋼粉の雨は止むどころか強さを増して数を増やして重剣の傘へと降り注いでいった。
「慈悲を 慈愛を 二つの救いを抱き・・・。」
鋼粉の雨が降る音と別に他の音が聞こえてくる。
何かが削り取られる音、何かが身を細める音・・・。
それに最初に気がついたのはスギロスだった。
「いつまでこんな無駄な攻撃をするんだ。それにこの音・・・。まさか・・・!?」
「討ち拉がれ 砕け散れ!」
旦那様が再び最後の掛け声を叫ぶと鋼粉は更に速度を増して降り注いでいく。
防ぐ、この判断は正しかったがやはり彼は甘かった。
耐え切れれば、防ぎ切れれば勝てる。
そんな考えで防いでいたのだろう。
自分の尺で旦那様を計り、勝手に決めつけたもので勝機を見出しそれを待つ。
しかし、誰も知らないのだ。
彼の容量を、彼の限界を、彼の技を、彼の力を、彼の心を・・・。
豪雨に絶え間なくさらされた傘は、その身を朽ちさせ限界をむかえる。
刀身は紙の様に薄く、防ぐ術すら失い、鋼粉の雨に貫かれスギロスを濡らす。
「ああああぁぁぁぁ!?」
鋼粉を全身に浴び埋まっていき、雨の止んだ後そこにあったのは腕がだらしなく垂れ気絶した顔を晒して鋼粉に埋まった彼の姿だった。
「・・・。」
修錬場が静寂に包まれる。
審判や観戦した者達、私ですら声が出なかったのだ。
しばらくして審判が我に戻り手合わせの終わりを告げる。
「勝者!エルフィール!」
「おおぉぉぉぉ!」
そこの声でようやく観戦している者たちも我に戻り歓声を上げた。
「旦那様!」
「おう、スパスィ。勝ったぞ。」
何事もなかったかのように戻ってきた旦那様を迎え、勝利を喜ぶ。
「ええ!でも、あそこまでやる必要はないのでは?」
「いや、能力の戻り具合を確認したかったんだが・・・。正直やり過ぎたな。」
「で、スギロスは?」
「大丈夫、死んじゃいないさ。全身打撲と最悪骨折だが、すぐ治せるだろう。」
「・・・、旦那様。」
もはや手合わせと呼べるものではなくなったが決着がつき、晴れて旦那様とずっと旅ができるようになったのだ。
憲兵宿舎での最後の夜、部屋の荷物を整理していると扉が叩かれる。
旦那様が手伝いに来てくれたのかと思い扉を開けると、何かが飛びかかってきていきなり床に押し倒された。
「総隊長・・・。僕ですよ・・・。」
飛びかかって来たのはスギロスで、眼が血走っており正気な状態ではないのがわかる。
息も荒く、彼から恐怖を感じた。
「スギロス!お前!」
「総隊長がいけないんですよ?僕の気持ちを知らずにあんな奴を夫に選ぶから・・・。」
僕の気持ち?何を言っているんだこいつは・・・。
「離さないか!こんな事をして只で済むと思っているのか!」
「思ってますよ?だって貴方はもう総隊長じゃないんですから!だから僕のコレで、貴方に誰が夫にふさわしいか教えに来たんじゃないですか!」
奴がズボンを下ろし中からギンギンに反り返った肉棒が現れる。
「ひっ!?」
足掻き力尽くで脱出しようとするが、恐怖で全身に力がはいらない。
腕を振り、足を上げようとするが虚しく抑え込まれてしまう。
「まずは入れる前に解してあげましょうか。僕は優しいですからね。」
鈍く裂かれる音が鳴り、服が破かれ胸が露出してしまう。
「きゃぁ!?」
「僕の聞いたことのない声だ。もっと聞かせてくださいよ。」
触れてほしくない者の手が伸びて私の乳房へ沈み込み、優しく揉みしだかれる。
「痛いだろう!やめろ!」
「痛いですか・・・、ではこんなのはどうです?」
拒絶を吐き、痛みを訴えると今度は指先でなぞるように触れてきた。
触るか触られないかの感触、こそぐったくも快楽を引きだす動きに痛みではない何かがこみ上げてくる。
引き出すように、じらすようにじっくりと・・・。
「やめろと言っているんだ!そんな触り方をするな!」
「大丈夫ですよ。すぐ良くなりますから。」
指先は乳房をなぞり、時折乳首に触れてまた乳房へと移動していく。
こそぐったさは次第に微弱な気持ちよさへと変わっていき、私を侵食していった。
「おや?乳首が立ってきましたね?気持ちよかったですか?」
「誰が!お前の手なんかで、あっ!?」
ふいに乳首を指でつねられて電気が走るような感覚が襲ってくる。
今まで経験した事のない痛みでもない甘いものでない何かが。
何かが全身に合図するようにそれは走っていく。
「気持ちよくないのにそんな声を出すんですか・・・。では、気持ちよくなるまで続けましょうか。」
奴は乳房を揉みしだきながら顔を近づけてきた。
私はそれを拒もうと顔を背けると、耳鰭に熱い何かが這ってくる感触が・・・。
舌が、奴の舌が私の耳鰭を舐めている・・・。
「ん・・・っ!む・・・っ!」
「声を出すのを我慢しなくていいんですよ?気持ちいいんでしょ?」
「うるさい・・・、黙れ・・・。」
「おや、では確認してみましょうか。」
快楽に耐え、声を殺して逃げる機会をうかがうが。
奴の次の言葉で耐え、押し殺しているものがばれてしまう。
指が秘所にあてがわれ、擦られることにより下着に湿り気を与え私が快楽を受けていることがわかってしまった。
「さわ・・・っ。や・・・っ。」
「水っぽいですね。なんですか?これは・・・。」
「・・・。」
何も言えずにいると、全身に新たな刺激が襲ってくる。
下着の上から奴の指が秘所を擦りあげられ、耐えられない快楽が走り回っていく。
「ひ・・・っ!?やめ・・・、やめろ・・・。」
「おやおや、好きでもない男にマンコを擦られて濡れますか?変態ですね。」
「!?」
変態、無理やりやられている私が変態・・・。
濡れて感じているのは奴のせいなのに・・・。
「準備はよさそうですね。では、入れてあげます僕の雌蜥蜴に堕としてあげます!」
更に反り返って脈打つ肉棒が秘所に迫ってきた。
最後のあがきで声を張り上げ、叫んだ。
「嫌っ!嫌っ!嫌っ!旦那様!旦那様!助けて!助けて!エルフィール!エルフィール!」
必死に、今頼れる。
たった一つ頼れる存在、エルフィールの名を。
「無駄ですよ!彼、今取り込み中ですから!さあ!僕を受け入れてください!」
肉棒で下着の上から秘所を擦り、私の愛液を自分の肉棒に塗るスギロス。
それをされるだけでも身体は熱くなり、女であること魔物娘であることを嫌でも実感し、性を恨めしく思う。
「まだ溢れてきますよ。どうしようもない変態だ!でも、僕は貴方を愛してあげますよ!」
愛液を充分に塗り終えると、下着をずらし、秘所に熱い肉棒をあてがわれた。
絶望が、絶望が眼の前に迫ってきている。
「・・・。」
「いきますよ?」
先が、先が入って・・・。
もう駄目だ。
今入れられたら、中に入ってきたら・・・。
私はこいつに壊され、堕とされ、雌蜥蜴になってしまう・・・。
愛されることもなく好きでもない男の雌になる、絶望で心が壊れそうになり、唯一現実を見ない為に目を閉じる。
だが、スギロスは私の中に一向に入ってこなかった。
恐る恐る目を開けると、そこには宙に上がっているスギロスの姿が・・・。
「すまん。大丈夫か?」
そこには助けを求めた人物が、私の愛を捧げると決めた人物がスギロスを持ち上げていた。
「遅いぞ、遅いぞ!旦那様・・・。もう少しでこの外道に奪われる所だったんだからな・・・。」
「悪い、思いのほか数が多くてな。」
「えっ?」
どうやらスギロスが時間稼ぎのために旦那様に何か足止めをしていたらしい。
「お前・・・、なぜここにいる・・・。」
首を片手で持ちあげられ泡を吹き、苦しんでいるスギロスが旦那様を睨みつけている。
「あのな、大体わかるだろうが。嫉妬振りまいて惨敗した後、露骨にお前の部下達が手合わせ申込みに俺の所に来たらよ。気付かない方が馬鹿だわ。」
「あの役立た・・・、ガァ・・・。」
それ以上は聞きたくはない言わんがばかりにゴキッっと鈍い音をさせると、スギロスは琴切れた人形のようにだらりと首や手足が垂れた。
「自分のことぐらい自分で面倒見ろ。部下なんか使わずにな。」
そういってスギロスは部屋の外に放り出される。
「旦那様!旦那様!」
放り出された者のことなど構わずに起き上がり、愛しい人へと抱きつきにいく。
いつもはここで静止がかかるはずだが、待っていたのは旦那様の胸板。
そして優しい抱擁だった。
「怖かっただろう・・・。奴の行動はわかっていたはずなのに来るのが遅れてすまなかった。」
頭を撫でられ、抱きしめ来る力も強くなっていく。
旦那様の匂い、優しさ、抱きしめられ満たされるもの。
そして、雄を求める疼き。
また、女であり魔物娘の性を恨めしく思った。
旦那様を押し倒したい!
でも、押し倒せば嫌われるかもしれない・・・。
二つの思考が頭の中を駆け巡り、戦い、押され合い、考えができなくなっていく。
気がつけば旦那様を押し倒してキスをしていた。
「んちゅ・・・。ん・・・っ、むう・・・っ。旦那様・・・、旦那様・・・。」
舌を這わせて口の中を舐めていく。
唾液を舌で運び、なすりつけ、私を旦那様へと満たす。
旦那様は合わせて絡めてくれないが優しく頭を撫で続けてくれている。
「ひゃぁ・・・っ、きふ・・・っ、れも・・・っ、かみ・・・っ。」
触られる度に頭から気持ちいいいのが降りていき子宮がうずく、どうやら髪も性感帯みたいだ。
ずっとこうされて包まれていたかった、甘い匂い、甘い刺激、温かい感触。
だけど私の秘所の近くで何がか当たっている。
口を離して、下半身の方を見ると旦那様のズボンが張りあがっていて膨らみがあった。
「旦那様?」
「・・・。ずっと我慢してたんだが・・・、無理だった。すまん。」
我慢なんてしなくていいのにと思いながら旦那様の膨らみを解放してあげる。
出てきたものは、さっき見た肉棒よりも太くで大きいもの。
正直、怖かった。
愛しい人のものであっても私はあれで犯されかけたのだから・・・。
「無理はしなくていいんだぞ?」
「いや、心の準備だけさせてくれ。そしたら大丈夫・・・。」
大地に根ざしている巨木の様な肉棒は少し時間が立っても小さくはならないし、細くもならない。
ジッと脈打ち、熱を発してそびえたつ肉棒を見ているとまた大きくなったように思える。
「じっと見ないでくれ。恥ずかしい・・・。」
「こんなに太くて大きいものが入ってしまうのかと思って・・・。」
いつまでもこのままでは旦那様に悪いと、意を決して肉棒を握った。
「つ・・・っ!?」
「痛かったか?」
「急に触られたから、驚いただけだ。」
「そっか、じゃあ。入れるぞ?」
「準備は・・・?」
「どこぞの外道とさっきのキスで済んでるよ。」
肉棒を秘所にあてがい、擦りつけながら入れるべき所へと導いてく。
「あっ・・・。」
「ん・・・っ。」
互いの熱さを感じる部分が当たる為、声が漏れている。
漏れてるのは声だけでなく、愛液も多く溢れて手を肉棒を床を水浸しにした。
「旦那様・・・。」
擦れただけでこの状態。
入れたら、愛しい人のを入れたらどうなってしまうのかと。
肉欲と好奇心にかられ膣内へと肉棒を誘っていく。
ゆっくりとねっとりと太く大きいものが押しのけるように肉を裂き壁を削りながら入ってくる。
「はあああ・・・っ。あっ。な、なにこれ・・・。」
私の膣は得物を捕えたかのようにギュッと締め上げ奥へ奥へと飲み込んでいく。
「あふっ、はぅ・・・っ。くる・・・、奥・・・。きちゃう・・・。」
もっと奥へ導きたい、感じたいと押し込んでいくがゆっくりだと途中の何かに阻まれてしまい。
これ以上の快楽が得られない。
「あれぇ・・・。これ・・・・。」
「スパスィの処女膜だよ。」
純潔の証、初めての証、子を孕む為に通る最初の儀式。
でも、これ邪魔だな・・・。
もう先にあるものしか見えていない私は腰を上げていく。
「耐えられない・・・っ、上げるよ?破つよ?奥に・・・っ、もっと奥に!」
勢いをつけて降ろすと笠の部分が肉を掻き、包み込んだ肉棒が膣を押し広げる気持ちよさがそのまま全身を駆け巡る。
鈍い音が聞こえたが、それに構わず腰を動かし続けた。
「ひあゃ・・・っ、あっ!あ・・・!あ・・・!」
「スパスィ・・・。」
裂く、擦れる、拡がる、締まる。
その全てが身体中に快感を届けてくれ、眼の前に白い光が迫ってきた。
「あひっ、あっ。な、なにこれ・・・。なにかくる・・・。」
「で、でる・・・っ。」
私の膣内に熱いものが出されて、白い光に包まれていく。
「あっ、あふあああ・・・っ!」
包み込んだ光が晴れていくとまた身体に電気が走ってくる。
だが、最初ほど強くもなく耐えられないほどでもない。
「スパスィ・・・、激しいんだな君・・・。」
「えっ?旦那様?」
何をしているのか自分でもわからないが、意識がはっきりするにつれてわかってきた。
今、旦那様の上で腰を振り続けている・・・。
「あ・・・。」
それに気がつくと、身体は敏感に反応していく。
「また締め付けが・・・。」
「いや・・・っ、なん・・・、で・・・。」
身体は正直なもので、この自分を堕としてくれるものを離すまいと再び締め付けて快楽を貪り始めた。
「はっ・・・。あ、あっ。あ・・・。」
「あぁ・・・。ダメ・・・っ、凄いの・・・。」
艶声が漏れ、何も考えられなくなっていく。
肉と肉がぶつかり合い、水の跳ねる音と合わさり、さらに私と旦那様を高ぶらせ。
「スパスィ・・・、また・・・。」
「いいの、来て!注ぎ込んで!」
奥の奥、子宮の入り口を旦那様のものが叩き続けている。
肉も擦れ、掻かれてまた白い光が近付いてきた。
お互いの腰の動きも激しくなり、速度も上がっていき。
私をあの光がまた包みにやってくる。
「でるっ!」
旦那様の声とともに入口に叩きつけられ肉棒から大量の精液が私の中に入ってきた。
熱く、焼けるような精液が子宮口から中に直接出され壁に当たり隅々まで満たされていく。
「ああ、あはあああ・・・!」
奥へ奥へと全てがエルフィールに染められて、私は旦那様のものとなった。
「はあああ・・・。す、凄かった・・・。」
行為が終わり身体に残る余韻と締め付けてはなさない肉棒の感触に浸っていると、部屋の扉が開いていることに気付く。
「そういえば、開けっぱなしだった・・・。」
そこから見える複数の顔や頭、そして耳。
床に旦那様を押し倒し、繋がっている自分の姿。
行為中の自分の乱れた姿を、声を晒してしまった事に思考は凍り付き・・・。
「い・・・、い・・・。いやぁーっ!」
叫び声が宿舎内に響き渡った。
「では、本日をもってスパスィ・ネフリティスを退職とする。しかし、君が夫と旅に出るとはな。てっきりうちの憲兵署に就職させてくれるのかと思ったよ。」
「すいません。旦那様の目的を優先にしたいので・・・。」
「彼の目的。世界中を旅することだったね。」
「はい。」
「大変だろうけど頑張りなさい。」
「ありがとうございます。それと・・・。」
「スギロス統括長のことかね?」
「ええ・・・。」
「彼があんな行動をするとはね。正直驚いているよ。今は頭を冷やしてもらうために独房へ入れている。統括長職は解職だろうな・・・。」
「そうですか・・・。」
「気に病むことはない。君が悪い所は一つもないのだから、さあ夫が待っているのだろ?早く行ってあげなさい。」
「はい、今までありがとうございました。では、失礼します。」
署長室を後にして一つ溜息をつく。
旦那様の元へ戻りたいが気まずいのだ。
昨晩押し倒した一件の後、朝から会話がない。
嫌われてしまったかと考えてしまい話す事が出来ないでいる。
しかし、戻らないわけにもいかず、憲兵署の入り口で待ってくれている旦那様の元へと向かった。
「終わったか?」
「ああ・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
会話が続かずにお互い黙りこんでしまう。
とりあえず歩きだすが沈黙の方が続いてしまっている。
この空気に耐えきれずに私から話しかけようと口を開くと・・・。
『あの・・・。』
考えていたことは同じらしく同時に同じ声をかけてしまった。
「ぷっ・・・。」
「くすっ・・・。」
『あははははは。』
お互いに笑い合い、息が切れるまで笑いは続き。
『はあ、はあ、はあ・・・。』
周囲の人々の視線で二人とも我に返り笑いが収まる。
「旦那様、昨晩は押し倒してそのまましてしまってすまなかった。自分でも自制が効かなくて・・・。」
「そうか、こちらも身は固めないと言っておきながらスパスィにあんなことをしてしまって・・・。」
「互いに同じ事を考えていたようだな。」
「そのようだ。スパスィ、あそこまでした仲だ。責任を取る意味を込めて改めて一緒に旅をしてくれないか?」
「夫婦としてか?」
「それでも構わない。」
「いや、遠慮しておくよ。最初通り、仲間として私の全てを見てくれ。そして旦那様の眼鏡にかなったら妻にして欲しい。」
「スパスィ・・・。」
「さあ!次はどうしましょうか?旦那様!」
彼の前に出て、くるりと振り返り今後の予定を聞く。
「そうだな。また武器を調達しないと・・・。」
「だったら特注品を作ってみないか?」
街の一角の小さな鍛冶屋、そこは量産品から特注まで引き受けてくれる憲兵御用達の場所。
私の注文したものも出来ているはずなので旦那様のを注文するついでに取りに行こう。
「特注品かそれもいいな、なら出来るかどうか見積もってもらわないとな・・・。」
「何を作るつもりなんだ何を・・・。」
一抹の不安を抱えて、私達は鍛冶処「不二の鎚」へと向かっていった。
12/01/27 16:50更新 / 朱色の羽
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